説明

高品質な飲料・食品の製造方法

【課題】 本発明は、乳製品、果汁、野菜汁において、加熱処理によって生じる不快成分を効率的に低減ないし除去する方法の開発を目的とする。
【解決手段】 上記した液体の少なくともひとつについて、中空糸膜に通液することにより、他の品質には影響を及ぼすことなく不快成分(ジメチルスルフィド、2−ブタノン、2−ペンタノン、p−シメン等)を選択的に低減ないし除去することができ、得られた液体を使用することによって、風味、品質のすぐれた飲食品を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高品質な飲料・食品の製造方法に関するものであり、更に詳細には、飲料や食品の原料としても使用される乳製品や果汁(野菜汁も含む)などの液状食品を中空糸膜に通液することで、これら原料中に含まれる不快成分を除去し、これらの原料を用いて品質のよい飲食品を製造する方法に関するものである。
【0002】
また、本発明では、乳製品や果汁(野菜汁を含む)を飲食品原料としてだけではなく、それ自体を飲食品として使用する場合も包含される。なお、本発明において、不快成分の除去には不快成分の低減も含まれる。
【背景技術】
【0003】
これまでに飲料・食品の風味向上、劣化防止の為の技術が多数開発されている。飲料や食品製造時に用いられる原料について、乳製品や果汁といった農産物由来の原料は1次加工の段階において、一度加工後に加熱殺菌をされたものを使用するのが一般的である。例えば乳製品である牛乳については生乳をホモゲナイズ等の処理後、LTLT、HTST、UHT等の加熱殺菌を実施したものが原料として使用される。その他にも全脂粉乳または脱脂粉乳といった原料でも加熱濃縮後にスプレードライが実施されており、熱による成分の変化を受けている。また果汁については青果を搾汁後、加熱による酵素失活や加熱濃縮したものが原料として、飲料・食品の製造に用いられることがある。
【0004】
これら原料では一度加熱処理されることで、原料の成分が一部変化することがこれまでに報告されている。例えば牛乳では加熱処理により含硫化合物やケトン類が増加することも明らかとなっている。また果汁についても、レモンでは加熱によりp−cymene等の物質が増加し、風香味に影響を与えることが明らかとなっている。
【0005】
このような変化する成分や香りについて、分離、除去する方法もこれまでに検討されてきている。特にデアレーションや樹脂処理を始めとした処理方法が数多く提示されており、デアレーション処理については脱気時に特定の成分も除去が可能であるが、処理時に熱が発生し対象液の品質劣化が生じる。また樹脂処理については樹脂への成分・香りの吸着度を均一にコントロールするのが難しく、さらに樹脂の再生といった作業性面からも成分や香りの除去にはやや課題があった。
【0006】
膜を利用した分離除去としては、製造工程において特定の有用成分を膜によって分離したり、果汁の加熱濃縮時の凝集水を膜に透過させることで不快成分を除去する技術がこれまでに報告されている。しかし、前者の場合有用成分と一緒に不快成分も分離され、また、後者の場合は加熱濃縮を伴わない原料は不適であり、工程も複雑であるため十分なものではなかった。
【0007】
飲料・食品の高品質化技術について、液体中の溶存酸素を窒素置換で除去し、液体中の溶存酸素を低減させる知見はこれまでに報告されているが、不快成分除去による高品質化についての検証については報告されていない。
【特許文献1】特許第3083798号公報
【特許文献2】特表2004−501757号公報
【特許文献3】特開平8−280353号公報
【特許文献4】特開平6−141825号公報
【特許文献5】特許第2805593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
乳製品、果汁、野菜汁において、加熱工程によって生成する不快成分(例えば、含硫化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド等)、ケトン類(2−ブタノン、2−ペンタノン等)、p−cymene(パラ−シメン)等の少なくともひとつ)を効率よく除去(ないし低減)する方法を開発する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明者らは、各方面から検討の結果、物理的ないし機械的な方法に着目して、各種研究を行い、乳製品について、中空糸膜に通液したところ、風味や品質は何ら影響されることなく、加熱によって生成する不快成分である含硫化合物やケトン類が選択的に除去(ないし低減)されることをはじめて見出した。そして、この新知見に基づき、更に検討の結果、果汁や野菜汁の加熱処理によって生成する不快成分であるp−シメンも、同じく中空糸膜処理によって、除去(ないし低減)できることもはじめて確認した。
【0010】
本発明は、これらの有用新知見に基づき更に研究の結果、遂に完成されたものであって、加熱処理された液状飲食品を中空糸膜処理することにより、加熱工程によって生成した不快成分を除去することを基本的技術思想とするものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0011】
(処理する液体)
対象となる液体としては1回以上加熱処理された乳製品、果汁、野菜汁が挙げられる。
【0012】
乳製品としては、生乳以外の加熱処理された乳原料が挙げられ、牛乳、全脂粉乳や脱脂粉乳、生クリーム、濃縮乳など乳製品を含有した液体が挙げられる。これら乳製品は殺菌、濃縮、乾燥などの工程において、一般的に行われる手法にて加熱処理されている。
【0013】
果汁としては、加熱処理されたオレンジ、アップル、グレープフルーツ、レモン、パイン、ピーチ、グレープ等のストレート果汁、濃縮果汁を用いる事ができ、野菜汁としては、ニンジン、トマト、キャベツ、ほうれん草、などのストレート野菜汁、濃縮野菜汁を用いる事ができる。これらの果汁や野菜汁は、1種のみでも良いし、2種以上を混合しても良い。これら果汁や野菜汁は殺菌、酵素失活(ブランチング)、濃縮などの工程において、一般的に行われる手法にて加熱処理されている。
【0014】
(中空糸膜に通す液体)
中空糸膜に通液する液体は、水で希釈しても構わないし、また、上記で示した乳製品または果汁、野菜汁に対し、副原料としてコーヒー抽出液、茶抽出液、ココアや油脂類などが加わったものも用いる事ができる。さらに、糖類、乳化安定剤や酸・塩類、香料やアミノ酸、ビタミン類、甘味料などの公知の食品添加物類が入った状態で、次に行う中空糸膜に通液しても問題なく処理することができる。
【0015】
また、通液処理する乳製品、果汁、野菜汁は、これらの濃縮液、ストレート(100%)液、希釈液などの調合する前の状態の液体、もしくは副原料や添加物が入った調合した後の状態の液体(調合液)のいずれの液体でも問題ないが、処理にかかる作業効率上、濃縮液や希釈倍率の低い液体(通液処理量が少ない液体)のほうが望ましい。
【0016】
(製造工程での処理)
中空糸膜に通液処理する乳製品、果汁、野菜汁を原料タンク内に入れた後、調合タンクへ移行させる。製造工程中に中空糸膜を設置する場合、連続的に通液して中空糸膜処理を実施する場合(1度だけ中空糸膜に通液する場合)と循環して通液処理する場合と2パターン挙げられる。
【0017】
連続的に通液して中空糸膜処理を実施する場合(1度だけ中空糸膜に通液する場合)は、各タンクヘ送液する配管中に中空糸膜を設置する。この場合、原料タンクへ入れる前の配管に中空糸膜を設置しても良いし、原料タンクから調合タンクヘ移行する配管に中空糸膜を設置することができる。また、調合液を処理する場合は調合タンクから容器に充填するまでの配管に設置しても問題ない。さらに配管への設置は1箇所でも良いし、2箇所以上設置しても良い。
【0018】
循環通液処理する場合は、原料タンクまたは調合タンクから再び同タンクに戻る配管に中空糸膜を設置する。十分な効果を得るために、タンク内液を2回以上、好ましくは2〜4回中空糸膜で通液処理することが必要である。この場合不快成分の除去効率が良くなり、より品質の良い液体を得ることができる。この効果は4回より多い場合でも十分に得られるが、製造時間やコストがかかる為2〜4回が適している。
【0019】
中空糸膜にて処理する際は密閉状態で行われ、中空糸膜の内部もしくは外部のいずれか一方に処理する液体を通液させた場合、もう一方は真空状態とする。不快成分は通液させた際に膜を透過し真空状態のほうへ移動し、膜通液後に不快成分を除去した液体を得ることができる。
【0020】
本発明を実施するには、乳製品(又はその含有物)等の処理対象液体を、上記したように、中空糸膜で処理すればよい。中空糸膜としては、緻密構造を有する気液分離膜であるのが望ましい。
【0021】
通常、中空糸膜を並行(スパイラル状が好ましい)に束ね、ハウジング内に充填・封止したモジュールを用いる。例えば、中空糸膜の外側に処理対象液体を流し、中空糸膜の内側を減圧して不快成分を除去する外部かん流型中空糸膜モジュールが使用可能である。
【0022】
このようなモジュールを用いることにより、処理対象液体から不快成分を効率的に除去することができる。例えば、モジュール中央の供給口から処理対象液体を流し込むと、この液体は並行(スパイラル状が好ましい)に束ねた複数の中空糸膜の層を横切るように外側に向って流れる。この間に該液体は中空糸膜の外表面と接触する。このとき、中空糸膜の内側は、モジュールの入口及び出口の2カ所の端部に設けた封止部の脱気口から真空ポンプなどにより減圧状態にされており、該液体中の不快成分は中空糸膜の内側に移動して排除される。その結果、不快成分が除去ないし低減された該液体を、モジュール側面の処理済液体取出口から連続的に得ることができる。
【0023】
このような中空糸膜であればすべてのタイプのものが使用可能であって、市販されているモジュールも適宜使用することができる(例えば、大日本インキ化学工業(株):商品名「SEPAREL EFシリーズ」)。
【0024】
(中空糸膜処理で除去ないし低減できる不快成分)
本発明で行う中空糸膜による通液処理によって、含硫化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド等)やケトン類(2−ブタノン、2−ペンタノンその他)、p−cymene(パラ−シメン)等を除去ないし低減することができる。これらの物質は、加熱すると増加し、飲用時に不快感を与える物質(不快成分)である。なお、本発明において、不快成分の除去には、完全に除去する場合のほか、完全除去ではない低減も包含される。
【0025】
(中空糸膜の材質)
中空糸膜の材質としては酢酸セルロース膜や硝酸セルロースやポリ−4−メチルペンテン−1を用いることが可能であるが、通液する液体種の汎用性面からポリ−4−メチルペンテン−1が最も適している。
【0026】
(中空糸膜での処理量)
中空糸膜を用いて不快成分の低減を行う際には、乳製品・果汁・野菜汁ともに通液時の真空圧力(MPa(abs))と流束(L/m2・min)が通液条件として大きく関与してくる。通液条件は乳製品・果汁・野菜汁ともに真空圧力は0〜0.05範囲内で、流束は0.1〜10で、真空圧力/流束の比が0〜0.5内であることが必要である。この範囲外の場合、含硫化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド等)、ケトン類、p−cymene等の不快成分を低減させる事ができない場合があったり、もしくは不快成分以外の成分を過剰に除去する事がある。
【0027】
(中空糸膜での処理温度)
なお、乳製品、果汁・野菜汁ともに処理液温は0〜60℃内で実施可能であるが、60℃以上の場合は品質に影響を与える成分の変化も起きる可能性が高いため効率的ではない。好ましくは温度の影響をあまり受けない0℃から30℃以下の範囲で実施するのが望ましい。
【0028】
(処理済み液の保存方法)
前記処理を実施した液体は、必要であれば上記副原料を適宜添加後、加熱殺菌等実施し、缶、瓶、PET容器、紙製容器、プラスチック容器、アルミ包材等に充填、密封しても良いし、得られた液体に必要であれば上記副原料を適宜添加後、そのまま飲食しても効果を確認することができる。
【0029】
加熱処理した乳製品、果汁、野菜汁の少なくともひとつを中空糸膜処理して得た液体は、そのままパッケージにすることで、本発明に係る不快成分が除去された飲食品とすることができる。また、乳製品、果汁、野菜汁の少なくともひとつに、更に、副原料、食品添加物等を添加したものを中空糸膜処理して得た液体も、そのままで、本発明に係る不快成分が除去された飲食品とすることができる。
【0030】
また、上記した中空糸膜処理して得た液体は、いずれも、上記のように、それ自体を飲食品としてそのまま使用できるほか、これを原料として用い、常法にしたがって処理することにより、各種の飲食品を製造することができ、このようにして得られた飲食品も不快成分が除去されており、本発明に係る不快成分が除去された飲食品に包含される。
【0031】
(得られる飲食品)
このように不快成分を効率的に除去できる飲食品としては、乳製品を用いた飲食品として、ミルク入りコーヒー、ミルク入り紅茶、ミルク入りココア、抹茶ミルク、イチゴミルク、などの嗜好飲料、ミルクや生クリームが入ったスープ、シチュー、などが例示される。
【0032】
果汁や野菜汁を用いた飲食品として、100%ジュース、果汁飲料や野菜飲料(50%、30%、10%など)、複数の果汁や野菜汁を用いたミックスジュース、フルーツティー(果汁入り紅茶)、レモンティー、などが例示される。
【発明の効果】
【0033】
加熱処理を施した飲食品は加熱臭といわれる不快成分を生じることが多く、これらを効率的に不快成分だけを除去する方法として中空糸膜は他の除去、分離手法より優れている。
【0034】
原料処理段階で発生した不快成分を取り除かずに飲料や液体食品を製造すると、不快成分がそのまま製品に含有することになることから、本発明のような処理を実施し、不快成分を製品に極力移行しないようにすることは飲料や液体食品などの製品のおいしさを向上させるものであり且つ品質保持期間を延長できる。
【0035】
また、中空糸膜で処理を実施すると、不快成分を除去するだけでなく、液体中の溶存酸素が除去されるため、製造中、製造後の酸化劣化を軽減することができ、より品質の良いものを得ることができる。
【0036】
本発明にしたがって中空糸膜処理した場合、処理対象液として全脂粉乳を例にとれば、含硫化合物(ジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィド等)は10〜60%以上、例えば20〜70%程度低減させることができ、また、ケトン類は5〜30%以上、例えば10〜50%程度低減させることができ、更に中空糸膜処理をくり返したりすることによって、これらの不快成分を完全に除去することも可能である。また、レモン果汁を例にとれば、p−シメンは5〜30%以上、例えば10〜20%程度低減させることができ、上記と同様に中空糸膜処理をくり返したりすることによって不快成分を完全に除去することも可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例によって更に詳述するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0038】
(実施例1;全脂粉乳の中空糸膜処理による品質向上)
(実施例1)
全脂粉乳を108g/Lとなるよう熱湯に溶解し、30℃以下に冷却後、大日本インキ社製中空糸膜(EF−002AP)に真空度0.002MPa(abs)、流束1.5にて通液した。これをホールディングチューブ出口温度138℃、ホールド時間60秒のUHT殺菌にて殺菌処理を行い、PET容器に充填し、密封した。
【0039】
(比較例1)
全脂粉乳を108g/Lとなるよう熱湯に溶解し、30℃以下に冷却した。これをホールディングチューブ出口温度138℃、ホールド時間60秒のUHT殺菌にて殺菌処理を行い、PET容器に充填し、密封した。
【0040】
(比較例2)
全脂粉乳を108g/Lとなるよう熱湯に溶解し、30℃以下に冷却し、窒素ガスにて置換を行い液体中の溶存酸素を除去後、全脂粉乳溶解液を得た。これをホールディングチューブ出口温度138℃、ホールド時間60秒のUHT殺菌にて殺菌処理を行い、PET容器に充填し、密封した。
【0041】
実施例1と比較例1および2の全脂粉乳溶解液を使用して、香気成分量の比較を実施した。GC−MS(Hewlett−Packard社GCsystem HP6890Series)を使用し、固層マイクロ抽出法(SPME法)にて分析した。分析条件としては、スプリット方式で注入、キャピラリー(DB−WAX)カラムを使用。ヘリウムガス1.0ml/minにて流しながら、40℃で3分ホールド→5℃/分で240℃まで昇温→240℃で5分ホールドで香気成分の分離・定量を実施した。結果を表1に示す。
【0042】
(表1)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例1 比較例1 比較例2
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
ジメチルスルフィド 100 190 127
2−ブタノン 100 140 140
2−ペンタノン 100 120 105
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0043】
上記結果は、実施例1の各化合物の含有量を100とした場合の比較例1、2それぞれの含有量の比を示している。飲用時に不快感を与えるジメチルスルフィドなどの含硫化合物や2−ブタノン、2−ペンタノンなどのケトン類の含有量として、比較例1が一番多く、ついで比較例2が多かった。実施例1がジメチルスルフィドや2−ブタノン、2−ペンタノンなどのケトン類を一番除去している事がわかった。
なお、比較例2は窒素置換を実施していることから溶存酸素に起因するものではなく、膜処理により、不快成分が除去されたことがわかる。
【0044】
上記結果から明らかなように、ジメチルスルフィドは20〜47%程度低減され、ケトン類は5〜30%程度低減されていることがわかる。
【0045】
(実施例2;レモン果汁の中空糸膜処理による品質向上)
(実施例2)
100%ストレートレモン果汁を95℃30秒の加熱処理で酵素失活し30℃以下に冷却後、大日本インキ社製中空糸膜(EF−002AP)に真空度0.002MPa(abs)、流束1.5にて通液した。これを93℃30秒にて加熱殺菌後に瓶に充填、密封した。
【0046】
(比較例3)
100%ストレートレモン果汁を95℃30秒の加熱処理で酵素失活し30℃以下に冷却後、93℃30秒にて加熱殺菌後に瓶に充填、密封した。
【0047】
(比較例4)
100%ストレートレモン果汁を95℃30秒の加熱処理で酵素失活し30℃以下に冷却後、窒素ガスにて置換を行い液体中の溶存酸素除去後、93℃30秒にて加熱殺菌後に瓶に充填、密封した。
【0048】
実施例2と比較例3および4のレモン果汁を使用して、香気成分量の比較を実施した。GC−MS(Hewlett−Packard社GCsystem HP6890Series)を使用し、固層マイクロ抽出(SPME)樹脂にレモン果汁中の各種成分を吸着させて固層マイクロ抽出法(SPME法)にて分析した。分析条件としては、スプリット方式で注入、キャピラリー(DB−WAX)カラムを使用。ヘリウムガス1.0ml/minにて流しながら、40℃で3分ホールド→5℃/分で240℃まで昇温→240℃で5分ホールドで香気成分の分離・定量を実施した。結果を表2に示す。
【0049】
(表2)
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
実施例2 比較例3 比較例4
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
p−シメン 100 114 102
―――――――――――――――――――――――――――――――――――
【0050】
表2の結果から実施例2のp−cymeneの含有量を100とした場合の比較例3、4それぞれの含有量の比を示している。飲用時に不快感を与える香気成分p−cymeneの含有量として、比較例3が一番多く、ついで比較例4が多かった。実施例2がp−cymeneを一番除去している事がわかった。
なお、比較例4は窒素置換を実施していることから溶存酸素に起因するものではなく、膜処理により、不快成分が除去されたことがわかる。
【0051】
上記結果から明らかなように、p−シメンは2〜12%程度低減されたことがわかる。
【0052】
以上の結果から、本発明によれば、高品質な飲料・食品を製造・提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空糸膜を使用すること、を特徴とする飲食品中の不快成分を除去する方法。
【請求項2】
中空糸膜処理の対象が加熱工程を経た乳製品、果汁、野菜汁の少なくともひとつ、あるいは、その含有物であること、を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
該含有物が、乳製品、果汁、野菜汁の少なくともひとつについて、これを希釈したもの、あるいは、これに副原料を添加したものであること、を特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
加熱工程を経た乳製品中のジメチルスルフィド、ジメチルジスルフィドなどの含硫化合物や2−ブタノン、2−ペンタノンなどのケトン類の少なくともひとつを除去すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
加熱工程を経た果汁及び/又は野菜汁中のp−シメンを除去すること、を特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
更に、溶存酸素も除去すること、を特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法で製造してなる飲食品。
【請求項8】
不快成分が低減ないし除去されてなること、を特徴とする請求項7に記載の飲食品。

【公開番号】特開2006−246855(P2006−246855A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−71935(P2005−71935)
【出願日】平成17年3月14日(2005.3.14)
【出願人】(591134199)株式会社ポッカコーポレーション (31)
【Fターム(参考)】