説明

高圧処理装置に備える空気混入検知装置及び高圧処理装置

【課題】本発明は、従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置に備える空気混入検知装置及び高圧処理装置を提供することを目的とする。
【解決手段】圧力容器1内で液体Lを介して加圧することで被処理物2を高圧処理する高圧処理装置に備える空気混入検知装置であって、基準圧力値を記録する基準圧力値記録手段と、測定圧力値を記録する測定圧力値記録手段と、前記基準圧力値よりも前記測定圧力値が低い場合には、前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定する比較判定手段とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品を高圧処理する高圧処理装置に備える空気混入検知装置及び高圧処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば特開平6−14726号に開示されるような、圧力容器内で液体を介して加圧することで被処理物を高圧処理する高圧処理装置(以下、従来例)が種々提案されており、被処理物としての食品を高圧処理することで、風味を維持しながら殺菌したり嚥下向上を達成したりなどできる。尚、圧力容器内への加圧は液体を満たした圧力容器内に液体を圧送することで行われる。
【0003】
ところで、高圧処理時に圧力容器内に空気が混入していると、この空気は加圧により圧縮される際に弾性エネルギーとして中に保有することになる為、直ちに減圧されない環境を作ってしまい、よって、万一圧力容器が破損した場合でも高圧状態が維持されてしまう問題(一刻も早く減圧して危険状態を回避したいにもかかわらず高圧状態が維持されてしまう。)や、また、緩慢な減圧は作業能率低下の原因になるなどの問題がある。
【0004】
そこで、従来例には、前述した空気混入の問題を解消すべく、圧力容器内の液体中に混入した空気を強制的に抜く空気抜き部が設けられているが、実際、それでも空気抜き部の不動作等により空気が残存してしまう場合があり、このわずかな空気であっても減圧の緩慢化につながっているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−14726号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者等は、前述した問題点に着目し、種々の実験を繰り返し行った結果、従来見逃されてきた圧力容器内の空気の混入を簡易且つ確実に検知することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置に備える空気混入検知装置及び高圧処理装置を開発した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
圧力容器1内で液体Lを介して加圧することで被処理物2を高圧処理する高圧処理装置に備える空気混入検知装置であって、前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している際の非正常な圧力上昇をした場合に比し、前記圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点での基準圧力値を記録する基準圧力値記録手段と、前記基準圧力値を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される測定圧力値を記録する測定圧力値記録手段と、前記基準圧力値と前記測定圧力値とを比較して、前記基準圧力値よりも前記測定圧力値が低い場合には、前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定する比較判定手段とを備えていることを特徴とする高圧処理装置に備える空気混入検知装置に係るものである。
【0009】
また、前記基準圧力値は、種類が異なる被処理物2ごとに予め複数回高圧処理して得たものであることを特徴とする請求項1記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置に係るものである。
【0010】
また、前記基準圧力値として、前記圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点における複数の異なる加圧時間での複数の基準圧力値を用い、前記基準圧力値夫々と、前記基準圧力値夫々を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される前記測定圧力値夫々とを比較して、前記基準圧力値夫々よりも前記測定圧力値夫々が低い場合には、前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定するように前記比較判定手段は構成されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置に係るものである。
【0011】
また、前記圧力容器1内に空気が混入している非正常状態を検知した際、この非正常状態の検知信号を出力するように構成したこと特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置に係るものである。
【0012】
また、前記圧力容器1内に空気が混入している非正常状態を検知した際、この非正常状態の検知信号に基づき報知若しくは圧力上昇を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置に係るものである。
【0013】
また、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気混入検知装置3を備えたことを特徴とする高圧処理装置に係るものである。
【0014】
また、前記空気混入検知装置3で前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態を検知した際、前記空気混入検知装置3から出力される非正常状態の検知信号を入力して、前記圧力容器1内への加圧を停止する加圧制御機構を具備することを特徴とする請求項6記載の高圧処理装置に係るものである。
【0015】
また、前記空気混入検知装置3で前記圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態を検知した際、前記空気混入検知装置3から出力される非正常状態の検知信号を入力して、非正常状態であることを報知する報知機構を具備することを特徴とする請求項6,7のいずれか1項に記載の高圧処理装置に係るものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は上述のように構成したから、圧力容器内の空気の混入を簡易且つ確実に検知することができ、しかも、この検知が高圧処理開始後の早い段階で行えることになるから極めて有用であるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置に備える空気混入検知装置となる。
【0017】
また、請求項2,3記載の発明においては、より早く且つ精度良く圧力容器内の空気の混入を検知することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置に備える空気混入検知装置となる。
【0018】
また、請求項4,5記載の発明においては、圧力容器内に空気が混入している非正常状態を検知した際に良好に対応し得ることになるなど来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置に備える空気混入検知装置となる。
【0019】
また、請求項6記載の発明においては、前述した従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置となる。
【0020】
また、請求項7記載の発明においては、非正常状態を検知した際には加圧を停止することで無駄を可及的に防止することができるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置となる。
【0021】
また、請求項8記載の発明においては、非正常状態を検知した際にはこの非正常状態であることを報知することで良好に対応し得ることになるなど従来にない作用効果を発揮する画期的な高圧処理装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施例に係る高圧処理装置の概略説明図である。
【図2】本実施例に係る空気混入検知装置における検知状態を示すグラフである。
【図3】シミュレーションで使用される式である。
【図4】シミュレーションの結果を示すグラフである。
【図5】空気混入加圧実験の結果を示すグラフである。
【図6】食品加圧実験の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0024】
圧力容器1内で液体Lを介して加圧することで被処理物2を高圧処理する際、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入しているか否かを検知する。
【0025】
本発明に係る空気混入検知装置3の比較判定手段では、基準圧力値と測定圧力値とを比較して、基準圧力値よりも測定圧力値が低い場合には、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定するが、これは、本発明者等が見出した、圧力容器1内に空気が混入しているか否かで圧力上昇に差が出る現象、即ち、圧力容器1内に空気が混入していない若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していない正常状態と比べ、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態においては圧力上昇が遅延する現象を利用して行う方法であり、圧力容器1内に空気が混入しているか否かを検知するに極めて簡易且つ確実な方法である。
【0026】
しかも、本発明は、前述した検知で使用される基準圧力値として、圧力容器1内が非正常な圧力上昇をした場合に比し、圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点での基準圧力値を採用しており、単に前述した現象を利用して検知するだけでなく、最適な基準圧力値を得ることでより早い段階での検知を可能としている。
【0027】
即ち、この基準圧力値を得るための時間を、正常な圧力上昇と非正常な圧力上昇とで圧力値に差が出る境界を考慮した、高圧処理開始後の可及的に早い時間に設定することで、前述した検知を早い段階(圧力容器1内が比較的低圧の段階)で行えることになる。このことは、例えば高圧処理を早く中止したり、やり直す事ができ、しかも、これらの作業が低圧で安全な状態で行えるなど極めて有用であり、ひいては例えば空気抜き部の不動作のチェック機能にもなる。
【0028】
本発明者等は、実際に前述した圧力容器1内の空気の混入検知が有効であることを種々の実験を繰り返し行い確認している。
【0029】
具体的には、本発明者等は、先ず、空気と水では圧力上昇が大きく異なり、加圧開始からの圧力上昇に着目した。水の圧縮率は200MPaで7.4%、空気の圧縮率が200MPaで99.95%である。
【0030】
圧力容器体積Vと水の体積Vw,空気の体積Va及び夫々の圧縮率Cw,Caの断熱変化における関係は図3に示す式のように表すことができる。尚、水の圧縮率は理科年表より得た近似式であり、空気の圧縮率はボイル=シャルルの法則による。
【0031】
これらの式から予測される圧力曲線を図4に示す。ここでは圧力容器容量に対する空気混入率20%の予測を示す。
【0032】
圧力容器1内に空気が混入した場合、圧力上昇に伴い空気が水よりも圧縮されるため、顕著な圧力の上がりはじめまでに時間を要すると予測した(シミュレーション)。
【0033】
次に、実際に圧力容器1内(液体中)に空気を混入して加圧する空気混入加圧実験を行った。
【0034】
具体的には、前述したシミュレーションと同じ空気混入率における加圧実験を行い、その結果を図5に示す。尚、0[秒]は送圧開始時間を示す。
【0035】
空気混入無し(Air0%)の圧力曲線と、空気混入(Air20%)の圧力曲線を比較すると、圧力曲線に差が見られた。特に10MPa付近までの低圧側での差は顕著に表れている。尚、高圧処理装置の構造上、蓋を閉める際に空気が混入する。実験結果では空気混入無しの圧力曲線も圧力の上がり始めが遅れているが、これは混入した空気が空気抜き部から抜けている段階であり、この値を除くと前述したシミュレーションとより一致が見られた。
【0036】
従って、この空気混入加圧実験から、圧力容器1内に混入される空気が圧力上昇の遅延の原因となることが確認できた。
【0037】
次に、液体Lで満たした圧力容器1内に被処理物(食品)を配して液体Lを介して加圧する食品加圧実験を行った。
【0038】
具体的には、食品無しと食品有り(リンゴ及びピーマン)にて加圧実験を行い、その結果を図6に示す。
【0039】
食品無しの場合と食品有りの場合で圧力曲線に差が見られる。また、5MPa以降での各圧力曲線を比較すると、ピーマンを加圧したものでは圧力の上昇し始め(5MPa〜10MPa付近)において曲線が緩やかになっていた。これは食品内に含まれていた空気が影響したものと考える。
【0040】
従って、この食品加圧実験から、食品内に含まれていた空気が圧力上昇の遅延の原因となり、しかも、食品の種類(種類が異なる被処理物2)によっても圧力上昇が遅れるタイミングに差が生じることが分かった。このことから種類が異なる被処理物2ごとに基準圧力値を設定することも必要と考えられる。
【0041】
以上のように、本発明者等は、圧力容器1内に空気が混入している状態での増圧時の昇圧特性をシミュレーションで検討し、各実験において検証した結果、昇圧時の立ち上がり特性により圧力容器1内に空気が混入しているか否かを確実に検知できることを確認し、これをもとに本発明を完成している。
【0042】
また、基準圧力値として、圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点における複数の異なる加圧時間での複数の基準圧力値を用い、基準圧力値夫々と、基準圧力値夫々を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される測定圧力値夫々とを比較して、基準圧力値夫々よりも測定圧力値夫々が低い場合には、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定するように比較判定手段は構成されている場合には、より精度の高い検知が達成される。
【0043】
具体的には、前述したように圧力容器1内の空気の混入をより早く検知すべく、圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点での基準圧力値を得ているが、仮に基準圧力値を一つとし、且つ、この基準圧力値が正常時の圧力上昇と非正常時の圧力上昇とが乖離するギリギリの境界部分を狙った位置と考慮される加圧時間で基準圧力値を得るようにした場合、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入しているにもかかわらず、何らかの原因で一時的にも基準圧力値に達することも考えられ、この場合、比較判定手段にて空気は混入していない若しくは所定量よりも多い量の空気は混入していないと誤って判定してしまう場合が危惧される。
【0044】
そこで、複数の基準圧力値を用い、この基準圧力値夫々に対応する測定圧力値夫々で比較するようにして、基準圧力値夫々に対して測定圧力値夫々がいずれも低くないという結果が出ない限り、比較判定手段では空気は混入している若しくは所定量よりも多い空気が混入していると判定する構成とすれば、先の基準圧力値を得る為の加圧時間と後の基準圧力値を得る為の加圧時間との間隔を、例えば予め複数回データ取りすることで得られる信頼性の高い関係となる間隔に設定することで、前述したような誤った判定をすることのない極めて高精度な判定が行われることになる。
【実施例】
【0045】
本発明の具体的な一実施例について図面に基づいて説明する。
【0046】
本実施例は、圧力容器1内で液体Lを介して加圧することで被処理物2を高圧処理する高圧処理装置に備える空気混入検知装置3である。尚、本実施例では、被処理物2としては食品(食材そのものや、レトルトパックされた調理済み食品など)を採用しているが、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
【0047】
具体的には、高圧処理装置は既存構造であり、加圧処理部4と加圧構造部5を具備する。
【0048】
加圧処理部4は、図1に図示したように装置本体6に上部開口部を有する圧力容器1(ベッセル)を設けて構成されており、この圧力容器1は、後述する圧媒としての液体L(水)を5リットル収容し得るように構成されている。
【0049】
この圧力容器1の下端部には、後述する加圧構造部5に係る圧媒循環路7が接続されており、液体Lで満たされた状態で更に液体Lを圧送導入することで内部が加圧されるように構成されている。
【0050】
また、圧力容器1には上部開口部を密閉する開閉蓋8が設けられている。
【0051】
この開閉蓋8は、油圧ユニット9により制御される油圧シリンダー10の作動により上下昇降移動して圧力容器1の上部開口部を開閉し得るように構成されている。
【0052】
また、開閉蓋8には空気抜き部11が設けられている。
【0053】
この空気抜き部11は、空気抜き孔11aに図示省略の電磁弁を設けて構成されており、電磁弁は適宜空気抜き孔11aを必要時(主に圧力容器1内の加圧開始時)に開放して圧力容器1内の空気を外部へ抜くように構成されている。
【0054】
符号12は、油圧ユニット9により作動制御され開閉蓋8の閉じ状態をロックするインターロック構造部である。
【0055】
加圧構造部5は、図1に図示したように圧媒としての液体L(水)を循環する圧媒循環路7に液体Lを貯める貯液槽13と、この貯液槽13の液体Lを圧媒循環路7内に送出するポンプ14と、このポンプ14から送出された液体Lを加圧する増圧機15とを設けて構成されている。
【0056】
従って、ポンプ14を介して貯液槽13から導出される液体Lは、増圧機15で加圧されて圧媒循環路7内を圧送されることになり、液体Lで満たされた圧力容器1内に液体Lが順次導入されることで圧力容器1内は加圧されることになる。尚、圧媒としての液体Lは水に限られるものではなく、また、圧力容器1内を加圧する加圧手段も液体Lの圧送に限らずピストンなどの機械的構造でも良い。
【0057】
符号16は油圧ユニット、17は排水バルブ、18は緊急用排水バルブである。
【0058】
また、本実施例は、圧媒循環路7に空気混入検知装置3が設けられており、この空気混入検知装置3は、圧力センサー(作業用シーケンサ)に圧力容器1内の空気の混入を検知する為の種々の手段を設けて構成されている。
【0059】
具体的には、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している際の非正常な圧力上昇をした場合に比し、圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点での基準圧力値を記録する基準圧力値記録手段と、基準圧力値を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される測定圧力値を記録する測定圧力値記録手段と、基準圧力値と測定圧力値とを比較して、基準圧力値よりも測定圧力値が低い場合には、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定する比較判定手段とを備えている。
【0060】
尚、本明細書(及び請求項)で言う圧力容器1内に混入している所定量の空気とは混入していても実質問題が生じない程度の微量の空気であり、それとは反対に所定量よりも多い空気とは問題が生じる量の空気を示すものである。
【0061】
この基準圧力値は、種類が異なる被処理物2ごとに予め複数回高圧処理して得たものであり、この基準圧力値を取るために予め行う高圧処理の数を増やす程、後に行う空気混入の検知は高精度化する。
【0062】
また、本実施例では、基準圧力値として、図2に図示したように圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点における複数の異なる加圧時間での2つの基準圧力値A,A’を用い、2つの基準圧力値A,A’夫々と、2つの基準圧力値A,A’夫々を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される2つの測定圧力値夫々とを比較して、2つの基準圧力値A,A’夫々よりも該基準圧力値A,A’夫々に対応する2つの測定圧力値夫々が低い場合には、圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定するように比較判定手段は構成されている。尚、基準圧力値の数は2つに限らず、1つでも或いは、3つ以上でも良い。
【0063】
更に述べると、図2に図示したように基準圧力値A,A’は、圧力容器1内が正常な圧力上昇をした場合に示す加圧時間と圧力値から成る圧力曲線(空気混入率0%状態が示す実線)の任意の位置にして、圧力容器1内が非正常な圧力上昇をした場合に示す加圧時間と圧力値から成る圧力曲線(空気混入率20%が示す点線)から立ち上がり状に乖離する、正常な圧力上昇における圧力曲線の立ち上がり部位若しくはその近傍の部位における任意の位置である。
【0064】
実際に、この2つの基準圧力値A,A’は、ある被処理物2に対して何回も行ったデータ取りから得られた最低2つの基準圧力値であり、先の基準圧力値Aを得る為の加圧時間と後の基準圧力値A’を得る為の加圧時間との間隔を、前述したデータ取りから得られる信頼性の高い関係となる間隔に設定することで、誤った判定をすることのない極めて高精度な判定が行われることになる。
【0065】
また、本実施例では、空気混入検知装置3で圧力容器1内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態を検知した際、この非正常状態の検知信号を出力する検知信号出力機構を具備しており、この空気混入検知装置3から出力される非正常状態の検知信号を入力して、圧力容器1内への加圧を停止(ポンプ14を停止)する加圧制御機構及び非正常状態であることを報知する報知機構を加圧処理装置に設けている。尚、空気混入検知装置3に、非正常状態の検知信号に基づき報知させる機構(報知機構),圧力上昇を停止させる機構(加圧制御機構)のいずれか一方若しくは双方を設けても良く、更に、前述した報知機構,加圧制御機構を具備しつつ更に、非正常状態の検知信号を出力する検知信号出力機構を具備するようにしても良い。
【0066】
また、本実施例は、空気混入検知装置3を高圧処理装置の製造時から組み込んだ状態としているが、既存の高圧処理装置に後付けとして空気混入検知装置3を備えるようにしても良い。
【0067】
即ち、前述したように空気混入検知装置3として作業用シーケンサを採用しており、特殊な装置(新たなパソコン)を必要とせず簡易且つ確実に前述したシステムを構築することができ、高圧処理装置に組み込まれた作業用シーケンサに前述した各種手段をプログラムすることで高圧処理装置に前述した秀れた空気混入検知機能を簡易且つ確実に具備せしめることができる。
【0068】
本実施例は上述のように構成したから、圧力容器1内の空気の混入を簡易且つ確実に検知することができ、しかも、この検知が高圧処理開始後の早い段階で行えることになるから極めて有用である。
【0069】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0070】
L 液体
1 圧力容器
2 被処理物
3 空気混入検知装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器内で液体を介して加圧することで被処理物を高圧処理する高圧処理装置に備える空気混入検知装置であって、前記圧力容器内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している際の非正常な圧力上昇をした場合に比し、前記圧力容器内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点での基準圧力値を記録する基準圧力値記録手段と、前記基準圧力値を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される測定圧力値を記録する測定圧力値記録手段と、前記基準圧力値と前記測定圧力値とを比較して、前記基準圧力値よりも前記測定圧力値が低い場合には、前記圧力容器内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定する比較判定手段とを備えていることを特徴とする高圧処理装置に備える空気混入検知装置。
【請求項2】
前記基準圧力値は、種類が異なる被処理物ごとに予め複数回高圧処理して得たものであることを特徴とする請求項1記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置。
【請求項3】
前記基準圧力値として、前記圧力容器内が正常な圧力上昇をした場合に起きる顕著な圧力上昇を開始した時点若しくはそれに近い時点における複数の異なる加圧時間での複数の基準圧力値を用い、前記基準圧力値夫々と、前記基準圧力値夫々を得た加圧時間と同一の時間加圧した際に測定される前記測定圧力値夫々とを比較して、前記基準圧力値夫々よりも前記測定圧力値夫々が低い場合には、前記圧力容器内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入していると判定するように前記比較判定手段は構成されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置。
【請求項4】
前記圧力容器内に空気が混入している非正常状態を検知した際、この非正常状態の検知信号を出力するように構成したこと特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置。
【請求項5】
前記圧力容器内に空気が混入している非正常状態を検知した際、この非正常状態の検知信号に基づき報知若しくは圧力上昇を停止させるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の高圧処理装置に備える空気混入検知装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気混入検知装置を備えたことを特徴とする高圧処理装置。
【請求項7】
前記空気混入検知装置で前記圧力容器内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態を検知した際、前記空気混入検知装置から出力される非正常状態の検知信号を入力して、前記圧力容器内への加圧を停止する加圧制御機構を具備することを特徴とする請求項6記載の高圧処理装置。
【請求項8】
前記空気混入検知装置で前記圧力容器内に空気が混入している若しくは所定量よりも多い量の空気が混入している非正常状態を検知した際、前記空気混入検知装置から出力される非正常状態の検知信号を入力して、非正常状態であることを報知する報知機構を具備することを特徴とする請求項6,7のいずれか1項に記載の高圧処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−83227(P2011−83227A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−238471(P2009−238471)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 平成21年9月12日 社団法人日本機械学会発行「2009年度年次大会講演論文集Vol.5」に発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、独立行政法人科学技術振興機構、「食の高付加価値化に資する基盤技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(307010144)財団法人にいがた産業創造機構 (6)
【Fターム(参考)】