説明

高圧力バルーン

医療器具のファイバーにより補強された複合バルーンは、ファイバーのウェブを予め形成された基層バルーンの外面に取り付ける工程と、組立体を形成すべく同ウェブをマトリックス材料に包含させる工程と、複合バルーンを形成すべく予め形成された外層バルーン内に組立体を挿入する工程とにより予め形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
カテーテルシャフトとカテーテルバルーンを備える医療器具は血管拡張、ステント搬送、薬物搬送、センサ及び刃等の外科的器具の搬送及び操作を含む幅広い様々な適用例にてますます使用される。
【背景技術】
【0002】
これらの器具にて使用されるバルーンの望ましい物理的特性は適用例に応じて異なるが、多くの適用例において、高強度を備えた堅固なバルーンが要求され、高い柔軟性及び追従性(trackability)が非常に望ましい。
【0003】
20000psi(約137895kPa)を越える壁強度を有する市販の高強度のバルーンはPET、ナイロン、ポリウレタン、及び様々なブロック共重合体熱可塑性エラストマーを含む幅広い種類の高分子材から形成されてきた。
【特許文献1】米国特許第4896669号明細書
【特許文献2】米国特許第4706670号明細書
【特許文献3】米国特許第5647848号明細書
【特許文献4】米国特許第5201706号明細書
【特許文献5】米国特許第5330429号明細書
【特許文献6】米国特許第5827289号明細書
【特許文献7】米国特許第6156254号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非常に高い圧力を要する適用例は、例えば透析患者において繰り返し血液のアクセスに使用される長期にわたるバイパス、ポートや移植片にて、或いはこれらの内部にて発現する狭窄を再び開くことである。これらの狭窄は通常極めて石灰化され、治療を成功させるためには必ず非常に高い圧力にさらされる必要がある。更に、通常アクセスする器具が内部に接続される血管は非常に大きい。従って、5mmを越えるバルーン径にて20atm(約2.027MPa)を越える圧力が使用可能であるという圧力の特性を有するバルーンが要求されている。
【0005】
ファイバーにより補強された医療バルーンに関する文献は、発明者がBehateである特許文献1、発明者がAndersenである特許文献2、発明者がJorgensenである特許文献3、発明者がNoguchiである特許文献4及び特許文献5、発明者がReileyである特許文献6、及び発明者がAndrewsである特許文献7を含む。
【0006】
上述した技術は、ここで言及した特許、刊行物やその他の情報が本発明に関して「従来技術」であることを認容することを意図したものではない。更にこのセクションは、調査が実施されたと、或いは37C.F.R.1.56(a)に規定されるようなその他の適切な情報がないと解釈されるものではない。
【0007】
本発明の範囲を限定することなく、請求される本発明実施形態の要約を以下に記載する。本発明の要約された実施形態のさらなる詳細及び/又は本発明のさらなる実施形態については、以下の「発明の詳細な説明」に記載される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明はファイバーにより補強された重合複合バルーンと、重合複合バルーンを予め形成する方法に関する。本発明の別の態様はより詳細には、ファイバーにより補強された医療器具の複合バルーンに関する。本発明の態様において、バルーンは下部に位置するバルーンの層と、下部に位置するバルーンの層の上部に設けられたファイバーウェブと、ウェブを包含するマトリックス材料とを備える。
【0009】
本発明の一態様において、バルーンは、下部に位置するバルーンの層と、下部に位置するバルーンの層の上部に設けられたファイバーウェブと、ウェブを包含するマトリックス材料と、ファイバーウェブ及びマトリックス材料の上部に設けられる径方向に配向された高分子材から成る上部に位置するバルーンの層とを備える。
【0010】
一態様において、本発明はファイバーにより補強された複合バルーンを予め形成するための製造方法に関する。本発明の一態様において方法は、予め形成された基層バルーンを提供する工程と、ファイバーのウェブを基層バルーンの外面に取り付ける工程と、基層バルーン及びファイバーマトリックスの組立体を形成すべくウェブをマトリックス材料により包含させる工程と、予め形成された外層バルーンを提供する工程と、基層バルーン及びファイバーマトリックスの組立体を予め形成された外層バルーン内に挿入する工程と、ファイバーにより補強された複合バルーンを形成すべく組立体及び外層バルーンを連結する工程とを含む。
【0011】
実施例において、本発明はバルーンと上述した製造方法に関する。バルーンは約0.51乃至約0.73の範囲のファイバーマトリックス比を有する。ファイバーマトリックス比はバルーンの全体的な厚みに対する中間のファイバー及びマトリックス材料の厚みとして定義される。
【0012】
本発明の特徴を示すこれらの実施形態及び他の実施形態は、本明細書に添付され、本願の一部をなす請求の範囲において明確に記載される。しかしながら、本発明ならびに本発明の効果及び目的をよりよく理解するためには、本願の一部を形成する図面と、例示され、説明される本発明の実施形態に関する説明事項とを参照すべきである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本願において言及された全ての米国特許及び特許出願ならびに他の刊行物は、その全体が本明細書において開示されたものとする。
本発明は様々な形態で実施することができるが、本明細書においては、特定の実施例について詳細に記載する。実施例の記載は、本発明の原理を例示するものであり、本発明を例示された特定の実施例に限定するものではない。
【0014】
本願においては、特に明示されない限り、各図面における同様の符号は同様の特徴を示すものである。
本発明によるバルーンは医療器具の使用に特に好適であり、例えば、バルーンの血管形成カテーテル上にて、ステント搬送システム、潅流バルーン器具、カッティングバルーン(cutting balloon)、冷凍形成器具等における医療器具の使用に好適である。通常これらはカテーテルやプローブ器具上に取り付けられる。
【0015】
図1乃至5において、本発明の処置の態様が示される。図1及び2は胴体領域102,104、円錐形領域106,108、及び本体領域110からなる基層バルーン100を示す。実施例において、基層バルーン100は径方向に配向された熱可塑性高分子材の単層122から形成可能である。
【0016】
図3は図2のものにファイバーウェブ126及びマトリックス材料128を添加した後のものを示す。ファイバーウェブ126はマトリックス材料128によって包含される。
図4は図3のものに外層バルーン140を取り付けて複合バルーン200を完成させたものを示す。マトリックス材料28及びファイバーウェブ126は基層バルーンによって設けられる層122及び外層バルーンによって設けられる層140によって挾持される。
【0017】
図5は図4に示す実施例における複合バルーンの壁部142の単離した部分を示す。
(基層バルーン)
態様において本発明は複合バルーンやその製造方法に関し、これらにおいてウェブ材料は複合バルーンの一部となる基層バルーンの構造体上に適用するファイバーから形成される。
【0018】
基層バルーンは医療器具バルーンを製造する周知の方法により予め形成される。例えば、半結晶性高分子材料の管状パリソンが径方向に拡張されるか、或いは長尺方向に伸長させた状態にて径方向に拡張されて基層バルーンを形成する。任意により基層バルーンは複合バルーンに組み込まれるに先立って更に加工されてもよい。基層バルーンを予め形成するために使用される押し出されたパリソンは、型枠内に、或いは制限のないブロー成形により径方向に拡張される。これに代えて、パリソンは径方向の拡張に先立ってバルーン円錐形領域及び胴体領域の厚みを減少支えるために様々な方法により拡張や変形されるに先立って長尺方向に予め伸長されてもよい。
【0019】
ブロー工程は張力下における加圧を使用し、続いて材料が加熱された後に、加熱した流体に迅速に浸漬され、様々な加圧により順次浸漬され、圧縮した流体又は非圧縮流体によりパルス状に加圧される。加熱はパリソン内に射出される加圧流体を加熱することによっても可能である。これらの技術の例は本明細書中に記載の特許文献や米国特許第4963313号明細書、米国特許第5306246号明細書、米国特許第5714110号明細書、米国特許第5304340号明細書に開示される。加熱による成形、加熱による収縮、及び/又は架橋結合等の径方向に拡張したバルーンの性質を変形する様々な周知の方法も基層バルーンの形成に使用可能である。米国特許第5403340号明細書、欧州特許第540858号明細書、及び国際公開第98/03218号パンフレットを参照のこと。
【0020】
基層バルーンは管状パリソンを径方向に拡張することにより形成されるいかなる材料からも形成可能であり、通常熱可塑性高分子材が挙げられる。上記のように使用される材料に関する文献は、ポリアミドのバルーンを開示する発明者がPinchuk等である米国特許第4906244号明細書及び発明者がKanekoである米国特許第5328468号明細書、ポリウレタンブロック共重合体から形成されるバルーンを開示する発明者がGaharaである米国特許第4950239号明細書及び発明者がAnderson等である米国特許第5500180号明細書、ポリエーテルブロックアミド共重合体及びポリエステルブロックエーテル共重合体から形成されるバルーンを開示する発明者がWang等である米国特許第5556383号明細書及び発明者がWang等である米国特許第6146356号明細書、高い曲げ弾性率を有するポリエステルブロックエーテル共重合体から形成されるバルーンを開示する発明者がSimhambhatla等である米国特許第6270522号明細書、ポリアリレンサルファイド(polyarylene sulfide)から形成されるバルーンを開示する発明者がKanekoである米国特許第5344400号明細書、並びにポリエーテルエーテルケトンの層を有するバルーンを開示する発明者がReinhart等である米国特許第5833657号明細書を含む。発明者がNobuyoshi等である米国特許第5250069号明細書、発明者がHamilton等である米国特許第5797877号明細書、及び発明者がHamlinである米国特許第5270086号明細書はこれらのバルーンを形成するために使用される材料を更に開示している。
【0021】
これらの材料は低密度ポリエチレン、鎖状低密度ポリエチレン、中高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(エチレンビニルアセテート)(EVA)、ポリ(エチレンビニルアルコール)(EVOH)及びEVA/EVOH三元重合体、ポリオレフィンイオノマー、低分子量ポリスチレンと混合され、任意によりポリプロピレンと、エチレン及びブチレンに代わるブタジエンやイソプレンに代表される類似の組成物とを混合されたエチレンブチレンスチレンブロック共重合体、ポリ(塩化ビニル)、ポリウレタン、ポリエステル、及び共重合体ポリエステル、ポリカーボネート、熱可塑性エラストマー、シリコンポリカーボネート共重合体、ポリアミド、ANS(アクリロニトリル・スチレン)、Derlin(登録商標名)ポリアセタール、(PEI)ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びPES(ポリエーテルスルフォン)を含む。これらの材料の物理的ブレンド及び共重合体も使用可能である。
【0022】
配向可能な高分子材は基層バルーンを形成するために好適な材料間にある。好適な配向可能な高分子材は芳香族ポリエステル、特にポリエチレンテレフタレートを含む。PET高分子材は約0.5以上、例えば0.6乃至1.3の初期の固有粘度を有する。ポリ(エチレンナフタレート)(PEN)及びポリ(ブチレンテレフタレート)等の高強度を備えたその他のポリエステル材料も使用可能である。エチレンテレフタレート、エチレンナフタレート、ブチレンテレフタレート、及び/又はブチレンナフタレートの繰り返し単位を組み込むポリエステル共重合体も使用可能である。発明者がWang等である米国特許第5330428号明細書に開示されるテレフタル酸ジメチル、イソフタル酸ジメチル、及びエチレン・グリコールから形成されるランダム共重合体等のポリエステル共重合体も使用可能である。
【0023】
使用されるポリアミドの例はナイロン6、ナイロン64、ナイロン610、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン46、ナイロン9、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、及びこれらの混合体を含む。
【0024】
基層バルーンはThermedics社から販売されているTecothane(登録商標)等のポリウレタンから形成可能である。Tecothane(登録商標)はメチレンジイソシアネート(MDI)、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、及び1,4−ブタンジオール鎖延長剤から合成される熱可塑性芳香族ポリエーテルポリウレタンである。Tecothane(登録商標)1065D及び1075Dが例として挙げられる。使用可能なその他のポリウレタンは高強度工学熱可塑性ポリウレタンであるアイソプラスト(登録商標Isoplast)301、及びPellethane(登録商標)を含む。両者はDow Chemical Co.により販売されている。ポリウレタンのバルーン材料を示す文献は発明者がGaharaである米国特許第4950239号明細書、発明者がAnderson等である米国特許第5500180号明細書、発明者がWang等である米国特許第6146356号明細書、及び発明者がZhang等である米国特許第6572813号明細書を含む。
【0025】
基層バルーンはポリアミド又はポリエーテルのブロック共重合体からも形成可能である。ポリアミド又はポリエーテルのブロック共重合体は通常頭字語のPEBA(PolyEther Block Amide)によって識別される。これらのブロック共重合体のポリアミド及びポリエーテルセグメントはアミド結合により連結されてもよいが、セグメントがエステル結合した高分子材、即ちポリアミド又はポリエーテルポリエステルが最も好適である。これらのポリアミド/ポリエーテル/ポリエステルのブロック共重合体はジカルボン酸ポリアミド及びポリエーテルジオールの溶融状態重縮合反応によって形成される。結果として得られるものはポリアミド及びポリエーテルのブロックから形成される短連鎖ポリエステルである。
【0026】
ポリアミド又はポリエーテルポリエステルはPebax(登録商標)により市場にて販売されている。好適な市場にて入手可能な高分子材は、ショアD硬度が60以上であるPebax(登録商標)33シリーズ高分子材、特にPebax(登録商標)6333、7033、及び7233である。これらの高分子材はエステル基により結合されるナイロン12セグメント及びポリ(テトラメチレンエーテル)セグメントから形成される。
【0027】
ポリエステル又はポリエーテルセグメントのブロック共重合体も使用可能である。これらの高分子材は少なくとも2つのポリエステルセグメント及び少なくとも2つのポリエーテルセグメントから形成される。ポリエーテルセグメントは本発明において有用なポリアミド又はポリエーテルブロック共重合体について上述したものと同一である。ポリエステルセグメントは芳香族ジカルボン酸及び2乃至4の炭素ジオールのポリエステルである。
【0028】
ポリエステル又はポリエーテルセグメントのブロック共重合体のポリエーテルセグメントはエーテル結合間に少なくとも2つ以上10未満の鎖状飽和脂肪族炭素原子を有する脂肪族ポリエーテルである。より好適にはエーテルセグメントはエーテル結合間に4乃至6の炭素を有し、最も好適にはポリエーテルセグメントはポリ(テトラメチレンエーテル)セグメントである。好適なテトラメチレンエーテルセグメントに代えて使用可能なその他のポリエーテルの例はポリエチレン・グリコール、ポリプロピレン・グリコール、ポリ(ペンタメチレンエーテル)、及びポリ(ヘキサメチレンエーテル)を含む。ポリエーテルの炭化水素部は任意で分岐されてもよい。例は2エチルヘキサンジオールのポリエーテルである。通常これらの分岐は2つ未満の炭素原子を含む。ポリエステルセグメントの分子量は好適には約150乃至2500であり、より好適には250乃至1000である。
【0029】
ポリエステル又はポリエーテルセグメントのブロック共重合体のポリエステルセグメントは芳香族ジカルボン酸及び2乃至4の炭素ジオールのポリエステルである。ポリエステル又はポリエーテルブロック共重合体のポリエーテルセグメントを用意するために使用される好適なジカルボン酸はオルト−フタル酸、メタ−フタル酸、パラ−フタル酸、ナフタレンカルボン酸やメタ−テルフェニル4,4’ジカルボン酸である。好適なポリエステル又はポリエーテルブロック共重合体はDSM Engineering Plasties社から販売されているArnitel(登録商標)EM740等のポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(テトラメチレンオキサイド)、及びHytrel(登録商標)8230等のDuPont社から販売されているHytrel(登録商標)高分子材である。
【0030】
好適な熱可塑性ポリイミドは米国特許第5096848号明細書に開示され、日本の東京に所在するMitsui Toatsu Chemicals,Inc.から登録商標名Aurumにて市場にて販売されている。
【0031】
液晶高分子材の例はHoechst Celanese社から販売されているVectra(登録商標)、ユニチカ株式会社から販売されているRodrun(登録商標)、DuPont社から販売されているLX及びHXシリーズの高分子材及びZenite(登録商標)の高分子材、住友化学株式会社から販売されているSumikosuper(登録商標)及びEkonol(登録商標)、Grandmont社から販売されているGranlar(登録商標)、及びAmoco社から販売されているXydar(登録商標)の製品を含む。液晶高分子材は基層バルーンにおいて使用される場合にその他の熱可塑性高分子材と混合される。これらのその他の熱可塑性高分子材はPET、ナイロン12、或いはPebax(登録商標)7033又は7233やArnitel(登録商標)EM740やHytrel(登録商標)8230等のブロック共重合体等である。液晶高分子材はブレンドポリマーのマトリックス材中のフィラメントとして配置される。
【0032】
これに代えて、基層バルーンは型枠上の硬化性組成物の重合により得られ、例えば、係属中の米国特許出願公開番号第2005−0015046(A1)号、及び米国特許出願公開番号第2006−0008606(A1)号のうち少なくともいずれか一方に開示されている。
【0033】
基層バルーンは例えば2,3atm(約202.7kPa乃至約304kPa)の低圧力にて膨張される場合に充分に堅固な性質を得られる厚さにて形成され、これによりバルーン上に位置されるファイバーウェブを形成するようにそこにファイバーが直接取り付け可能となる。好適には基層バルーンは略径方向に配向されるか、二軸配向(径方向及び長尺方向に)される。基層バルーンは単壁当たり約5マイクロメートル乃至約50マイクロメートル(0.0002インチ乃至0.002インチ)の壁厚、例えば8マイクロメートル乃至30マイクロメートル(0.0003インチ乃至0.0012インチ)の壁厚、好適には約10マイクロメートル乃至約25マイクロメートル(0.0004インチ乃至0.0010インチ)の壁厚を有する。
(ファイバーウェブ)
ウェブを形成する様々な技術が周知である。好適なウェブは編組物(braids)、織物、網体、螺旋巻き、ニットや、粗紡であってもよい。例えば異方性の長尺方向の延長と径を拡張する性能が望ましい場合にウェブは異なる材料から形成されてもよい。
【0034】
ファイバーの選択及びウェブのパターンは複合バルーンの膨張特性に影響を付与し得る。基層バルーンに付加されるファイバーの張力は特に弾性ファイバーが全体的に又は部分的に使用される場合に複合バルーンの膨張にも影響を付与し得る。しかしながら好適な実施例において、複合バルーンは長尺方向及び径方向の両者において略非膨張性を備え、この場合にファイバーは非常に低い伸長性を有し、パターンは最小限に拡張するように選択される。これらの実施例において織物や編組物は特に好適なウェブの態様である。円形の編組機が使用され、ファイバーが基層バルーンに取り付けられる。
【0035】
ウェブのパターンはいかなる角度によるファイバーの交差であってもよい。通常少なくとも一式のファイバーが基層バルーンの周囲に螺旋状に巻かれる。少なくとも実施例において、一組の長尺状をなすファイバーが設けられ、基層バルーンの少なくとも一部の上方を長手軸に対して平行に延びる。長尺状をなすファイバーは非弾性的であってもよい。実施例において長尺状をなすファイバーは織り混ぜられるか編み込まれウェブのパターンとなり、バルーンの周囲を螺旋状に巻かれる。例えば螺旋状のファイバーは長尺状をなすファイバーの上方及び下方にて、個別に、或いは交互にまとめられて交差し、織物や編組物となる。複数の異なる角度にて延びる交差ファイバーが使用可能である。例えば、長尺状をなすファイバーは45°及び135°にて延びるファイバーの両者によって交差される。実施例において、編組の角度は68°乃至70°であってもよい。特に機械的な編組機を使用して形成されるファイバーウェブにおいて、最適に補強する交差の角度はファイバーの交差間の最適な間隙と両立しない。
【0036】
個別のファイバーの群が所望の交差の角度にて間隙を減少させるように使用される。例えば、2乃至6のファイバーの交差群は2乃至5のファイバーによって1対1の交差に比較してよりよい結果をもたらすだろう。群は異なる寸法を有し、例えば縦に2、45°の螺旋部に4、135°の螺旋部に4を有する。
【0037】
ファイバーはモノフィラメントであってもマルチフィラメントであってもよい。好適な寸法が使用可能である。例えば実施例において、ファイバーの径は1乃至50マイクロメートルの範囲にあり、即ち10乃至100デニルの範囲にある。実施例においてデニルは25乃至50の範囲にある。更に本発明の範囲を逸脱しなければこれらの寸法の範囲は実施例において逸脱してもよい。
【0038】
マルチフィラメントのファイバーにおける個別のフィラメントは寸法が10以下のデニルを有し、例えば1乃至5デニルの寸法を有する。マルチフィラメントのファイバーにおいてより大きなフィラメントが使用されてもよい。マルチフィラメントのファイバーは様々な材料から成るファイバーの混紡であってもよい。
【0039】
ファイバーの材料はポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、液晶高分子材、ポリイミド、炭素、ガラス、好物繊維、或いはこれらの組み合わせであってもよい。ポリエステルはポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、及びポリトリメチレンテレフタレート(PTT)を含む。ポリアミドはナイロン、ケブラー(登録商標)等のアラミド繊維を含む。液晶高分子材はVectran(登録商標)を含む。ポリオレフィンは超高分子量ポリエチレンを含み、例えばオランダのDSM Dyneema BVm Heerlen社から販売されているダイニーマ(登録商標)、Honeywell社から販売されているSpectra(登録商標)、並びに非常に高密度なポリエチレン及びポリプロピレンファイバーである。実施例において弾性繊維が使用されてもよい。本発明の実施例において、ファイバーは米国特許第55783474号明細書、米国特許第5958582号明細書、及び/又は米国特許第6723267号明細書に開示されるアラミド線維、液晶高分子材や、超高分子量ポリエチレン等の非常に低い延伸性、変形性を有する高強度を備えた材料である。カーボン・ナノチューブやカーボンナノファイバーから成るファイバーが好適である。実施例においてその他の炭素材料も好適である。
【0040】
一実施例において、ファイバーは多数のファイバーの層から成る。しかしながら、その他の実施例において、ファイバーはバルーン外形を最小限にすべく単一のファイバーの螺旋構造が使用される領域を交差間に有する。螺旋構造は単一の螺旋構造によって覆われる領域を増加させてファイバー及びバルーン全体の外形を最小限にするために取り付けられる場合に平坦に加工されてもよい。
(摩擦増大)
基層バルーンの円錐部に取り付けられるウェブの結合性を補助するために、摩擦増大材料が基層バルーン及びウェブ間の境界面にて少なくとも円錐形部上を覆って設けられてもよい。ウェブのファイバーは摩擦増大材料によりコーティングされてもよく、又は摩擦増大材料の層がウェブのファイバーを取り付けるに先立って基層バルーンの少なくとも円錐形部に取り付けられてもよい。或いはその両者であってもよい。摩擦増大材料は基層バルーン及びウェブの間の境界面にて、バルーンの部分上を覆って設けられてもよく、例えば、胴体部及び本体部のうち少なくともいずれか一方に設けられてもよい。
【0041】
摩擦増大材料はより高い摩擦係数を有する高分子材であってもよく、摩擦係数はファイバーがウェブ形成において円錐形部からずり落ちたり外れたりしないように充分高い。摩擦係数は研磨した鋼材表面に対してASTM規格D3702にて好適に規定され、約0.7以上の値が推奨され、特に約0.8以上の値が推奨される。例示的な材料はゴムのような弾性を備えた熱可塑性高分子材であり、例えばスチレン−オレフィン系ブロック共重合体及びアクリロニトリルブロック共重合体である。実施例においてウレタンベースの熱可塑性エラストマー、エステルベースの熱可塑性エラストマー、オレフィンベースの熱可塑性エラストマー、及びアミドベースの熱可塑性エラストマーが好適である。実施例において線形低密度ポリエチレン、非常に低密度なポリエチレン、ポリエチレン−α−オレフィン共重合体や、ポリカーボネートウレタン共重合体が好適である。
【0042】
摩擦増大材の一群はスチレン−オレフィン系熱可塑性エラストマーを含む。スチレン−オレフィン系熱可塑性エラストマーは分子中に柔軟な部分と堅固な部分とを有するブロック共重合体である。柔軟な部分はオレフィンの重合により得られる一群であり、例えば、ポリイソブチレンブロック、ポリブタジエンブロック、或いはポリイソプレンブロックである。堅固な部分を構成する要素はスチレンのブロックの一群であり、例えば、スチレン及びその派生物から選択される1つか少なくとも2つのタイプを有する複合物から得られる。例えば、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−第三級ブチルスチレン、1,1−ジフェニルエチレン等である。
【0043】
スチレン−オレフィン系熱可塑性エラストマーの例はスチレン−イソブチレン−スチレンブロック共重合体(SIBS)、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS構造体)、及びこれらを変形したブロック共重合体を含む。SIBS、SBS、SEBS、SIS、SEPS、及びSEEPSのそれぞれにおけるスチレン(又はその派生物)の含有量は共重合体中に10乃至50重量%の範囲にあり、より好適には15乃至45重量%の範囲にある。実施例において、SIBSは約17重量%のスチレンを有する。
【0044】
摩擦増大コーティング材は接着剤であってもよい。例えば接着剤はファイバーの取り付けにおいて少なくとも仮留めするものであってもよい。接着剤は感圧式材料、ホットメルト材、溶剤、散布剤や硬化剤であってもよい。本発明の実施例において、接着剤はファイバーの取り付け後に更にファイバー及びバルーン間を接着するように構成される。接着力は最初の仮留めの接着に比較してより強力である。部分的に硬化した放射線硬化性アクリレートコーティング材が例として挙げられる。
【0045】
摩擦増大コーティング材は溶剤や散布剤により塗布されてもよい。ホットメルト接着剤や硬化性接着剤の場合において、コーティング材は円滑に塗布される。好適なコーティング材の厚みは約1マイクロメートル乃至約25マイクロメートルの範囲にあり、例えば約2マイクロメートル乃至約20マイクロメートル、或いは約5マイクロメートル乃至約10マイクロメートルの範囲にある。
(マトリックス材料)
ポリマーマトリックス材料はウェブ上、及び基層バルーンの暴露された部分上に設けられる。マトリックス材料は使用される技術下において少なくとも部分的にマトリックス材料に暴露される材料に結合する必要がある。暴露される材料は1つ以上のウェブファイバー材料、基層バルーン、及び仮に使用されるなら摩擦増大材料であってもよい。マトリックス材料は摩擦増大材料と同一であるか、類似したものであってもよい。マトリックス材料は基層バルーンのバルク材と同一であるか、類似するものであってもよく、或いは摩擦増大材料及び基層バルーン材料の両者と全く異なる材料であってもよい。実施例においてマトリックス材料は熱により活性化可能であり、即ち、塗布後に接着性能が熱により活性化可能である。
【0046】
マトリックス材料は溶剤や散布剤により塗布されてもよい。実施例において塗布後に調整される硬化液はマトリックス材料として使用されてもよい。マトリックス材料は溶融により適用されてもよく、例えば、スプレーにより、或いはウェブ上に押し出すことにより適合されてもよい。
【0047】
使用可能なマトリックス材料の例は上述したスチレン−オレフィン系の熱可塑性エラストマーを含む。ポリウレタン、例えばシリコン変性ポリウレタンが使用可能である。米国特許出願公開第2006−0008606(A1)号明細書により詳細に開示されるような紫外線硬化性組成物が使用されてもよい。
【0048】
ホットメルト接着性能を有する溶剤や散布剤、或いは高分子製剤、即ち乾燥後にも加熱により活性化可能であり、続いて基剤に取り付けられるように接着されるものが使用されてもよい。
【0049】
実施例においてマトリックス材料及び摩擦増大材料は組み合わせによりファイバー材料のフィラメントを基層バルーンに結合させる。
(外層バルーン)
外層バルーンは基層バルーンとファイバーウェブとマトリックス材料との組立体上に設けられ、複合バルーンを形成する。
【0050】
外層バルーンは肉薄なモールド成形されたバルーンであり、周知の医療器具のバルーンの製造方法により予め形成される。例えば、基層バルーンを形成するためにここで開示されたいかなる手段によっても形成される。外層バルーンの材料は基層バルーン用に上述したものと同一の材料から選択可能である。外層バルーンの材料は基層バルーンの材料と同一であっても異なるものであってもよい。
【0051】
外層バルーンは内径が基層バルーン及びウェブとマトリックスの組み合わせを受承するように形成される。実施例において外層バルーンは径方向に配向されるか、二軸配向(径方向及び長尺方向に)される。
【0052】
外層バルーンは好適な壁部の厚みを有する。実施例において、壁厚は基層バルーンのものと比較して、例えば単壁当たり約5マイクロメートル乃至約50マイクロメートル(0.0002インチ乃至0.002インチ)、例えば約8マイクロメートル乃至約30マイクロメートル(0.0004インチ乃至0.0012インチ)、好適には約10マイクロメートル乃至約25マイクロメートル(0.0004インチ乃至0.0010インチ)であってもよい。
(複合バルーンの形成)
上記層の組み合わせは上述したように柔軟性を備え、高い強度と高い破裂圧力とを有する複合バルーンを形成する。複合バルーンの形成において、基層バルーン122は従来技術によるモールド形成工程を使用して形成可能にして、且つ変形可能である。モールド成形された基層バルーンは膨張され両端が密封される。基層バルーン122は任意により感圧式接着剤等の摩擦増大材料124によりコーティングされてもよい。ファイバーウェブ126は好適にはSpectra(登録商標)やVectran(登録商標)等のファイバーの編組として基層バルーン122の表面に取り付けられる。続いてファイバーウェブ126はマトリックス材料128により包含される。実施例において、乾燥時にホットメルト接着性能を有する溶剤や散布剤、或いは高分子製剤が使用されてもよい。
【0053】
溶剤が乾燥後に圧力が解放される。基層バルーン122、ファイバーウェブ126、及びマトリックス材料128の組立体が続いて予め形成された外層バルーン140内に挿入される。外層バルーン140は基層バルーン122に比較して僅かに大きいか同一の寸法を有する。外層バルーン140の基端側胴体部及び末端側胴体部は挿入が容易になるように基層バルーン122の基端側胴体部及び末端側胴体部より大きい。
【0054】
挿入後に複合バルーンは膨張され、基層バルーン及び外層バルーンが形成された温度より高い温度に加熱される。例えば、基層バルーン及び外層バルーンが約90℃乃至約100℃の範囲の温度にて膨張される場合に約110℃乃至約130℃の範囲の加熱温度、例えば約115℃が使用される。好適な加熱時間は約15秒乃至約5分であり、例えば約1分である。加熱による膨張圧力は好適には基層バルーンや外層バルーンのうちより高い方の圧力、例えば40psi乃至50psi(約275.8kPa乃至約344.75kPa)の範囲とおおよそ同じであるか、より高い圧力である。加熱においてマトリックス材料は好適に外層バルーンに固着すべく活性化され、一体的に積層される。
【0055】
実施例において、加熱設定温度はバルーン成形温度より高い温度に代えて接着剤活性化温度により設定される。
通常基層及び外層を形成する条件は略同一であり、従ってこれらは加熱中に類似の反応を示す。しかしながら実施例において、加熱中に外層バルーンが僅かに収縮して基層バルーンが変化しない状態を保持するか僅かに膨張するように、異なる温度や圧力の条件にて基層バルーン及び外層バルーンが形成されることが有効である。これらの技術は外層バルーンの接着マトリックス材料に対する接着圧力を高め、全体的なバルーンの厚みを更に最小限にするようにこれらの間のファイバーのストランドを平坦にすることを補助する。
【0056】
実施例において、外層バルーン上にはコーティングが全くないが複合バルーンは円滑な材料のコーティングを有するか、周知のように薬品から成るコーティングを有する。例えば、米国特許第5135516号明細書、米国特許第5026607号明細書、米国特許第5304121号明細書、米国特許第5576072号明細書、米国特許第5503631号明細書、米国特許第5509899号明細書、米国特許第5693034号明細書、米国特許第6110483号明細書、米国特許第5702756号明細書、米国特許第6528150号明細書、及び米国特許第6673053号明細書を参照すること。
【0057】
複合バルーンの単壁の厚みは約50マイクロメートル乃至250マイクロメートルであり、好適には約50マイクロメートル乃至約230マイクロメートルである。実施例において、単壁の厚みは約50マイクロメートル乃至約80マイクロメートルであり、目標は60マイクロメートルである。
【0058】
これらのバルーンの壁の強度は約15000psi(103421kPa)を越え、通常少なくとも約18000psi(124106kPa)であり、多くの場合において約25000psi乃至約40000psi(約172414kPa乃至約275862kPa)の範囲にある。バルーンの径は約1.5mm乃至約14mmの範囲にある。得られた複合バルーンは繰り返される膨張に対する耐久性及び強度も示す。試験において、本発明の複合バルーンは20atm(約2026kPa)にて100回転をパスした。
(ファイバーマトリックス材対バルーンの厚みの比率)
態様において本発明は全体的なバルーンの厚みのために使用されるファイバーとマトリックス材料との比率に関する。
【0059】
図5において、複合バルーンの壁部142は全体的な厚み144を有する。厚み144を以下複合バルーン壁厚144として示す。ファイバーウェブ126及びマトリックス材料128の組み合わせの厚み146はファイバーマトリックスの厚み146として示す。医療用バルーンの外形を最小限にするために、それと同時に破裂圧力を高く保持するために、本発明はファイバーウェブを形成するために使用されるファイバーストランドの径を最小限にすることも意図する。これらのファイバーの径を減少させるためにファイバーウェブ126を構成するファイバーは好適には取り付けられる場合により広い領域を覆うべく展開するように加工される。
【0060】
ファイバーの広がりによる効果を計測するためにファイバーマトリックス比(R)が画定される。比率(R)はファイバーの単一のストランドが基層及び外層の間に位置する部分における全体的なバルーンの厚みに対するファイバー及びマトリックス材料の層の厚みの比率を示す。
【0061】
ファイバーマトリックス比は30の無作為な計測に基づいて好適に計算され、全体的な厚みを決定する。ファイバーマトリックス比は走査電子顕微鏡やその他の好適な装置を使用して計算される。抽出標本の厚みが10mm平方の領域にわたって計測される。本発明の出願人はファイバーマトリックス比がファイバーにより補強されたバルーンにおいて外形を最小限にすることと高い破裂圧力を保持することとの均衡を最適化するために有効なツールであることを発見した。実施例において約0.51乃至約0.73のRの数値を有する、ファイバーにより補強されたバルーンは好適な特性を示すことが発見された。
【0062】
後述する例は本発明の予備的な最適化されたものではない試行を示す。
(例)
基層バルーンはPebax(登録商標)7233の高分子材から成る押出管を径方向に拡張することにより準備された。基層バルーンはおおよそ0.0016インチ(約40.64マイクロメートル)の本体領域における平均的な二重の壁厚を有した。モールド成形による径はおおよそ8mmであり、モールド成形による本体の長さはおおよそ2cmである。基層バルーンは従来技術の工程に従ったエチレンオキシドにより殺菌された。この段階において、3つのバルーンが比較のために操作され、編み組みされずにそのままの状態を保持された。
【0063】
基層バルーンは末端部にて加熱により密封された。基端部は空気圧式のシリンジに連結され、バルーン要素が堅固な剛性(1,2atm(約101.3kPa乃至約202.7kPa)の内圧)を得るまで加圧された。
【0064】
感圧式の接着剤のコーティング、即ちH.B.Fullerより販売されているHL−2081が、加圧されたバルーン要素をトルエン中に25%の接着剤の溶液内に手作業で浸漬し、溶液からバルーン要素を引き出して乾燥させることにより、基層バルーンの外側表面に対して塗布された。編組機がDSM社から販売されているダイニーマの50デニルのファイバーから、膨張されたバルーン要素の周囲にファイバーのウェブを編むために使用された。68乃至70°の編組の角度を有する単層編組体を得るための方法により編み組みが進められるように、速度が調整された。
【0065】
加圧されたバルーン要素は続いてトルエン中の10%のホットメルト接着剤HM−0230の溶液内に浸漬され、バルーン要素が溶液から引き出されて完全に乾燥された。
Pebax(登録商標)7233の高分子材の外層バルーンが同様の方法によって、基層バルーンと同一の寸法により準備された。上述した工程により形成されて得られたバルーンはファイバーマトリックス比が0.73であり、平均の破裂圧力が30atm(約3040kPa)であった。
【0066】
上述された開示事項は、例示的なものであり、包括的なものではない。 上記記載は、当業者に対して、多くの変更例や別例を提案するものである。個々の図面において示され上述した様々な要素は、所望に応じて組み合わせたり、組み合わせるために変更されてもよい。これら別例および変更例は、本願の請求の範囲内に含まれるものであり、「〜からなる、〜を備える、〜で構成される」という語は、「〜を含む」という意味であり、「〜に限定される」という意味ではない。
【0067】
さらに、従属請求項に記載された特定の特徴は、発明の範囲内において他の方法で互いに組み合わせることができ、本願は、従属請求項に記載された特徴のその他全ての組み合わせによる他の実施例についても、範囲が及ぶものとする。例えば、請求項の公開のために、従属請求項は、多数項従属形式が管轄内で認められている場合には、その請求項で言及される既述の事項を全て含む先行する全ての請求項を引用する多数項従属形式で二者択一的に書かれていると解釈されるべきである。(例えば、直接請求項1に直接従属している各請求項は、先行する全ての請求項に従属するものと二者択一的に解釈される。)多数従属形式が禁止されている管轄区域においては、後続の各従属項についても、これら下位従属項に列挙される特定請求項以外の先行語を有する先行する一請求項にそれぞれ単独に従属する形式で択一的に記述されたものと解釈されるべきである。
【0068】
これにより本発明の明細書を締めくくる。当業者には、本願に記載された特定の実施例と均等である他の技術は、特許請求の範囲に包含されるものであることが理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】一部が断面を示す基層バルーンの側面図。
【図2】図1の線2に沿った断面の拡大図。
【図3】本発明の実施例による方法の工程を示す図。
【図4】本発明の実施例による方法の工程を示す図。
【図5】図4の線5に沿った断面の拡大図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部に位置するバルーンの層と、下部に位置するバルーンの層の上部に設けられたファイバーウェブと、同ウェブを包含するマトリックス材料と、同ファイバーウェブ及びマトリックス材料の上部に設けられる径方向に配向された高分子材から成る上部に位置するバルーンの層とを備えることを特徴とするファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項2】
前記マトリックス材料は接着剤により基層バルーンの層とファイバーウェブと上部に位置するバルーンの層とに結合されることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項3】
前記予め形成された外層バルーンは径方向に配向されることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項4】
前記下方に位置するバルーンの層もまた径方向に配向されることを特徴とする請求項3に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項5】
前記下方に位置するバルーンの層及び上部に位置するバルーンの層の両者は二軸配向されることを特徴とする請求項4に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項6】
前記マトリックス材料は接着剤から成ることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項7】
前記マトリックス材料は加熱により活性化可能な接着剤であることを特徴とする請求項6に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項8】
前記ファイバーウェブのファイバーは1マイクロメートル乃至50マイクロメートルの径を有することを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項9】
前記ファイバーウェブのファイバーは約10デニル乃至約100デニルの範囲の線形質量密度を有することを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項10】
前記複合バルーンは0.51乃至約0.73のファイバーマトリックス比Rを有することと、Rは基層バルーン及び外層バルーン間のファイバー及びマトリックス材料の厚みを全体の壁厚で割ったものとして定義されることとを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項11】
前記下方に位置するバルーンの層及びファイバーウェブの間に摩擦増大材料から成る層を更に備えることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項12】
前記摩擦増大材料は弾性重合体から成ることを特徴とする請求項11に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項13】
前記ファイバー材料はアラミドと超高分子量ポリオレフィンと液晶高分子材とこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項14】
前記下部に位置するバルーンの層はポリウレタンと、ポリエステル及び共重合ポリエステルと、ポリカーボネートと、ポリアミド/ポリエーテルブロック共重合体と、ポリエステル/ポリエーテルセグメントから成るブロック共重合体と、シリコンポリカーボネート共重合体と、ポリアミドと、熱可塑性ポリイミドと、ポリアセタールと、液晶高分子材と、ポリエーテルエーテルケトンと、ポリエーテルスルホンと、これらの組み合わせから成る群から選択される高分子材から成ることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項15】
前記上部に位置するバルーンの層はポリウレタンと、ポリエステル及び共重合ポリエステルと、ポリカーボネートと、ポリアミド/ポリエーテルブロック共重合体と、ポリエステル/ポリエーテルセグメントから成るブロック共重合体と、シリコンポリカーボネート共重合体と、ポリアミドと、熱可塑性ポリイミドと、ポリアセタールと、液晶高分子材と、ポリエーテルエーテルケトンと、ポリエーテルスルホンと、これらの組み合わせから成る群から選択される高分子材から成ることを特徴とする請求項1に記載のファイバーにより補強された重合複合バルーン。
【請求項16】
カテーテルやプローブ上に取り付けられる請求項1に記載のバルーンを備える医療器具。
【請求項17】
予め形成された基層バルーンを提供する工程と、
ファイバーのウェブを同基層バルーンの外面に取り付ける工程と、
基層バルーン及びファイバーマトリックスの組立体を形成すべく同ウェブをマトリックス材料により包含させる工程と、
予め形成された外層バルーンを提供する工程と、
該基層バルーン及びファイバーマトリックスの組立体を予め形成された外層バルーン内に挿入する工程と、
ファイバーにより補強された複合バルーンを形成すべく該組立体及び外層バルーンを連結する工程とを含むことを特徴とする医療器具のファイバーにより補強された複合バルーンを予め形成する方法。
【請求項18】
前記予め形成された外層バルーンは径方向に配向されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記予め形成された基層バルーンもまた径方向に配向されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記基層バルーンの層及び外層バルーンの層の両者は二軸配向されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記マトリックス材料は、接着剤から成ることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項23】
前記マトリックス材料は、加熱により活性化可能な接着剤であることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項24】
前記ファイバーウェブのファイバーは1マイクロメートル乃至50マイクロメートルの径を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項25】
前記ファイバーウェブのファイバーは約10デニル乃至約100デニルの範囲の線形質量密度を有することを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項26】
前記ファイバーウェブ及びマトリックス材料はファイバーマトリックス比Rが0.51乃至約0.73である複合バルーンを提供するために設けられることと、Rは基層バルーン及び外層バルーン間のファイバー及びマトリックス材料の厚みを全体の壁厚で割ったものとして定義されることとを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項27】
ファイバーウェブを取り付けるに先立って基層バルーンの少なくとも円錐形部に摩擦増大材料の層を取り付ける工程を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項28】
前記複合バルーンをカテーテルやプローブ上に取り付ける工程を更に含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項29】
前記ファイバー材料はアラミドと超高分子量ポリオレフィンと液晶高分子材とこれらの混合物から成る群から選択されることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項30】
前記基層バルーンは圧力下にて膨張され、ウェブのファイバーがそこに取り付けられることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項31】
前記下部に位置するバルーンの層はポリウレタンと、ポリエステル及び共重合ポリエステルと、ポリカーボネートと、ポリアミド/ポリエーテルブロック共重合体と、ポリエステル/ポリエーテルセグメントから成るブロック共重合体と、シリコンポリカーボネート共重合体と、ポリアミドと、熱可塑性ポリイミドと、ポリアセタールと、液晶高分子材と、ポリエーテルエーテルケトンと、ポリエーテルスルホンと、これらの組み合わせから成る群から選択される高分子材から成ることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項32】
前記基層バルーン及びファイバーマトリックスの組立体を予め形成された外層バルーン内に挿入する工程は、外層バルーンを反転させ、続いて該組立体を覆って外層バルーンを反転させる工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−534093(P2009−534093A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−506483(P2009−506483)
【出願日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際出願番号】PCT/US2007/002223
【国際公開番号】WO2007/123588
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(500332814)ボストン サイエンティフィック リミテッド (627)
【Fターム(参考)】