説明

高圧液相エピタキシャル成長装置

【課題】 コンパクトな装置で、多数の基板を同時に処理することができ、高圧容器の気密性にも優れ、また同様品質の窒化物単結晶が得られる高圧液相エピタキシャル成長装置を提供する。
【解決手段】
本発明に係る高圧液相エピタキシャル成長装置は、高圧容器1と、前記高圧容器1の内部に設けられた断熱構造体2と、前記断熱構造体2の内側に設けられたヒータ3と、種結晶が形成された基板を収容する処理容器11を複数有する。前記各処理容器11は前記ヒータ3の内側で上下方向に配置される。前記各処理容器11を同一動作にて水平状態から傾斜状態に揺動させるカム26および従動ロッド27が高圧容器1の内部に設けられ、前記カム26を駆動する電動機29がヒータ3から離隔した高圧容器1の下部に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薄い膜状の窒化物単結晶等を種結晶として、高圧の窒素等を含むガス雰囲気下で、III 族金属元素とNa,Ca等のアルカリまたはアルカリ土類金属元素の混合融液から窒化物を種結晶上にエピタキシャルに析出させて大きな窒化物単結晶を製造する装置に関するものである。窒化物の代表例としては、GaN,AlNを挙げることができる。
【背景技術】
【0002】
III 族元素の窒化物の一つである窒化ガリウム(GaN)は、青色発光素子(例えば、LED:Light Emitting Diode,LD:Laser Diode)の材料として注目されており、工業的には、サファイア単結晶基板上にGaNをCVD法により析出させることにより製造されている。しかし、特にLD用の場合、長期的な安定性(寿命)の観点から、サファイア基板はGaN薄膜との格子定数の差異(13.8%)や熱膨張係数の差異(25.5%)があるため、理想的な基板とはいえない。このため、同一の材料すなわちGaNからなる基板が種結晶を提供する基板として理想的とされている。
【0003】
通常、GaN以外の化合物半導体の場合には、同一の材料からなる単結晶基板を得るために同一組成の融液からバルク結晶成長させる方法が採用されており、蒸気圧が高い成分系ではその成分の蒸気圧を維持しながら、すなわち高圧下で結晶成長させる方法が採用されている。GaNの場合に、この方法を採用するには、GaNの物性上から、2150℃以上、5.6GPa以上の高温高圧の状態で析出させることが必要である。しかしながら、このような高圧下では数インチを越えるような単結晶の育成は工業的には実施不可能である。このため、溶融したGaをNaフラックスで希釈した溶液法による単結晶の製造が検討されている。
【0004】
この溶液法によれば、750−800℃、窒素ガス圧力5MPa程度の条件でGaNの析出による単結晶の製造が可能である。もっとも、この方法では結晶の成長速度が遅く、また結晶も10−20mm程度までしか成長させることができない。この原因としては、Ga−Na溶液中でのNの拡散速度が小さいこと、GaとNの反応が緩慢であること、などが挙げられる。
【0005】
前者の問題を改善するには、種結晶もしくはすでに精製したGaN結晶と高圧の窒素ガス空間の間に存在するGa−Na溶液層の厚さ(拡散距離)を短くする方法やGa−Na溶液に適度の対流を生じさせて実質的な拡散速度の向上を図ることが考えられる。また、後者の問題については、Ga−Na溶液に触媒的な機能を持つ成分を混合したり、窒化反応性が窒素よりも大きいアンモニア(NH3 )を窒素に混合する方法などが考えられ、特開2002−293696号公報(特許文献1)には、窒素の一部をアンモニアで置換する方法が提案されている。
【0006】
一方、高圧窒素雰囲気下でのGa−Na溶液からのGaNの液相エピタキシャル成長用の装置については、「Novel Liquid Phase Epitaxy (LPE) Growth Method for Growing Large GaN Single Crstals: Introduction of Flux Film Coated-Liquid Phase Epitaxy (FFC-LPE) Method」(Jpn. J. Appl. Phys., Vol 42, (2003), PP. L879-L881)(非特許文献1)に、シャーレ状をしたボロンナイトライド製の処理容器(坩堝)に種結晶となるGaN板結晶(15mm×15mm)を置き、処理容器の揺動により、Ga−Na溶液がGaN種結晶の表面を間欠的に覆うようにし、その表面が窒素ガスに暴露されたり、溶液で覆われるようにした液相エピタキシャル装置(800℃,窒素圧1MPa未満)が提案されている。より具体的には、耐圧容器と、その耐圧容器内に設けられた電気炉と、その電気炉内に設けられた、種結晶基板を収容するためのシャーレ状の処理容器とを備え、前記電気炉が前記耐圧容器の側壁を貫通する支持軸によって支持され、前記耐圧容器の外側に前記支持軸を回動させる電動機が設けられたものである。
【特許文献1】特開2002−293696号公報
【非特許文献1】Novel Liquid Phase Epitaxy (LPE) Growth Method for Growing Large GaN Single Crstals: Introduction of Flux Film Coated-Liquid Phase Epitaxy (FFC-LPE) Method (Jpn. J. Appl. Phys., Vol 42, (2003), PP. L879-L881)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記高圧液相エピタキシャル成長装置は、構造上、処理容器を電気炉に収容し、耐圧容器の容器壁を貫通する支持軸で前記電気炉を回動自在に支持し、この支持軸を耐圧容器の外側に設けた電動機によって回動し、処理容器を電気炉ごと揺動させる構造となっている。このような構造では、処理容器に比して大重量の電気炉を揺動させることになるため、装置の大形化が避けられず、また耐圧容器の内部に供給された窒素ガスの圧力が高くなれば、容器壁の貫通部での支持軸の回動と気密性の両立が困難になる。また、多数の基板を同時に処理する場合、多数の処理容器を積み重ねて炉内に配置すると、支持軸の軸線の近くに配置された処理容器と、離れた位置に配置された処理容器では揺動の際の傾き動作が異なるため、処理溶液の被覆状態も異なり、各処理容器で処理した単結晶の品質の同一性が確保されない。一方、多数の処理容器を支持軸の軸線から等距離になるように、処理容器を炉内に並置すると、支持軸の回動により処理容器は同一の傾き動作で揺動するようになるが、電気炉やこれを収容する耐圧容器が支持軸の軸線方向(横方向)に伸び、装置の大形化のみならず大きな設置スペースが必要となる。
本発明はかかる問題に鑑みなされたもので、コンパクトな装置で、多数の基板を同時に処理することができ、高圧容器の気密性にも優れ、また品質が一様な単結晶が得られる高圧液相エピタキシャル成長装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る高圧液相エピタキシャル成長装置は、高圧容器と、前記高圧容器の内部に設けられた断熱構造体と、前記断熱構造体の内側に設けられたヒータと、種結晶が形成された基板を収容する処理容器を複数有し、前記各処理容器は前記ヒータの内側で上下方向に配置され、前記各処理容器を同一動作にて水平状態から傾斜状態に揺動させる揺動機構が高圧容器の内部に設けられ、前記揺動機構を駆動する駆動源が前記ヒータから離隔した高圧容器の下部に設けられたものである。
【0009】
この高圧液相エピタキシャル成長装置によると、複数の処理容器はヒータの内側に上下方向に配置され、揺動機構はヒータとは別に前記処理容器のみを揺動させるので、処理容器が多数であっても、装置をコンパクトにすることができる。また、各処理容器を揺動させる揺動機構及びその駆動源が高圧容器内に設けられるので、高圧容器の容器壁を貫通して回動する部材を設ける必要がなく、このため簡単なシール構造で優れた気密性を確保することができる。さらにまた、前記揺動機構は、各処理容器を同一動作にて揺動させるので、処理容器が多数の場合でも、各処理容器に収容された基板に対して処理溶液を間欠に被覆する揺動条件が同じになり、引いては各処理容器に収容される種結晶付きの基板に対しても同様の熱履歴、成長条件を付与することができる。このため、処理容器の配置位置に拘わらず同様な品質の単結晶を同時に得ることができる。このため、本発明の装置は同一品質を有する窒化物単結晶を容易に多量生産することができる。
【0010】
上記高圧液相エピタキシャル成長装置において、前記各処理容器は、その外周部の一端が前記高圧容器の内部に立設された支持部材に回動自在に連結され、前記揺動機構は、前記各処理容器の外周部の他端が回転自在に連結されたリンクロッドと、前記リンクロッドを上下動させる昇降手段を備えた構造とすることができる。
このように各処理容器を、支持部材及びリンクロッドを含む揺動リンク機構の一節とすることで、簡単な構造で、ヒータの内側の狭い領域において全ての処理容器を同一条件で容易に上下に揺動させることができる。
【0011】
また、前記昇降手段は、前記高圧容器の下部に回転自在に設けられたカムと、上端部が前記リンクロッドの下端部に当接すると共に下端部が前記カムの外周面に当接して昇降する従動ロッドを備え、前記駆動源は、前記カムを回転させる電動機で構成することができる。
このようなカム、従動ロッドを用いた昇降手段とすることで、簡単な構成でリンクロッドを昇降させ、引いては全ての処理容器を同一条件で容易に揺動させることができる。また、高温の処理部に設けられるリンクロッドと、カム及び駆動源が設けられる低温部とが従動ロッドで連動されるため、低温部への熱影響を可及的に抑制することができ、カムや駆動源の耐久性を向上させることできる。
【0012】
また、前記各処理容器は、高温高圧処理の際に発生した原料蒸気の拡散を防止する蒸気拡散防止チャンバに収容される構造とすることが好ましい。
前記蒸気拡散防止チャンバを設けることによって、高温の処理部で蒸発した原料蒸気が低温の高圧容器の下部において凝結、固化することを防止することができ、これによって発生するヒータや電動機の電気絶縁性等の劣化を防止することができ、耐久性に優れた装置を提供することができる。
【0013】
また、前記処理容器は、前記支持部材及びリンクロッドに連結される連結部を有する本体部と、前記本体部に付設され、ボロンナイトライドで形成され、前記基板を収容する基板収容部とを有する構造とすることができる。
処理容器をこのような二重構造とすることにより、基板収容部を処理物と反応したり、汚染するおそれがないものの、高価なボロンナイトライドで形成する一方、連結部の加工が必要な本体部を加工が容易で安価な材料、例えば黒鉛で形成することができ、処理容器の製造コストを低減することができる。特に、本発明の装置では複数の処理容器が同時に使用されるため、処理容器のコスト低減効果は大きい。
【発明の効果】
【0014】
以上述べたように、本発明の高圧液相エピタキシャル成長装置によれば、複数の処理容器は上下方向に配置され、ヒータとは別に処理容器のみを揺動させる揺動機構も高圧容器内に設けられるため、装置および設置スベースをコンパクトにすることができ、簡単なシール構造で優れた気密性を確保することができる。さらに、処理に際して各処理容器は同一動作にて揺動されるので、処理容器が複数の場合でも、処理容器の配置位置に拘わらず同一品質を有する単結晶を容易に多量生産することができる。III 族元素の窒化物は、光記憶技術における記憶量の大容量化に必要な青色あるいはさらに短波長の紫外線域の光を発光する発光素子への利用が期待されており、その基板の多量生産を可能にした本発明の装置は、光通信・情報分野の発展に寄与するところ多大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係る高圧液相エピタキシャル成長装置の断面構造を示しており、この装置は、高圧容器1と、前記高圧容器1の内部に設けられ、上部が閉塞され下部が開口された筒状の断熱構造体2と、前記断熱構造体2の内側に設けられた筒状ヒータ3を備える。前記高圧容器1は、筒状の胴部5と、前記胴部5の上部開口をシールリング9を介して着脱自在に閉塞する上蓋6と、前記胴部5の下部開口をシールリング9を介して着脱自在に閉塞する下蓋7とで構成される。前記上蓋6には、高圧容器1の内部に高圧の窒素ガスを供給すると共に処理後にこれを排出するガス導入排出孔8が開設されている。前記筒状ヒータ3は、上部ヒータ3Aと下部ヒータ3Bとからなり、図示省略した温度センサーからの温度信号に基づいて、上下方向における温度分布が均一になるように、それぞれ独立して温度制御される。なお、図例では筒状ヒータ3は2段構造としたが、2段以上の多段に構成してもよい。
【0016】
前記筒状ヒータ3の内側には、処理容器11が上下方向に一定間隔を置いて配置されている。これらの処理容器11を一括して「処理容器群」と呼ぶ場合がある。前記処理容器群の下方には断熱体13が設けられ、前記下蓋7の上面中央部には設置板15を介して、電動機等を収容する断熱収容部14が設けられ、その上に前記断熱体13が設置されている。
【0017】
前記処理容器11は、高純度の黒鉛で形成されており、図2(1) に示すように、平面視が八角形で、その中央部が開口するトレー形状の形態を有している。その外周部の一端側及び他端側に第1連結部17、第2連結部18が形成され、前記第1連結部17は、処理容器群に隣接して立設された柱状の支持部材21に取付け取外し自在に設けられた第1回動軸22に回動自在に取付けられており、前記第1連結部17と第1回動軸22とでヒンジ機構が構成されている。他方、他端部側の第2連結部18は、前記支持部材21の反対側に設けられたリンクロッド24に取付け取外し自在に設けられた第2回動軸25に回動自在に取付けられており、前記第2連結部18と第2回動軸25とでヒンジ機構が構成されている。すなわち、前記支持部材21と、各処理容器11と、リンクロッド24とは、リンクロッド24の昇降動作により各処理容器11が第1回動軸22を中心としてに上下方向に揺動する揺動リンク機構を構成している。
【0018】
一方、前記高圧容器1の下部には、カム26と、そのカム26の回転に従って上下動する従動ロッド27を備えたカム装置が設けられている。前記従動ロッド27の下端は前記カム26の外周面に当接し、その上端は前記リンクロッド24の下端に当接している。前記カム26の回転軸は、断熱収容部14に収容された電動機29に連動連結されて回転駆動される。カム26の回転軸と電動機29とは適宜の減速機を介して連動連結してもよい。また、カム26は、連続的に回転させてもよく、あるいはリンクロッド24が上死点、下死点間を移動するように所定の角度を往復回動するようにしてもよい。この場合、カム26の回転角度の制御が重要となるので、使用する電動機29としてパルスモータが推奨される。
【0019】
ここで、前記カム装置の動作を説明する。図1の状態では、従動ロッド27は上死点にあり、カム26が回転すると下死点に下降し、各処理容器11は図2(2) から図3に示すように、同一動作にて下方に傾斜する。そして、カム26が図1に示す位置に戻ると、各処理容器11は元の水平位置に復帰する。このように、カム26の回転により、従動ロッド27を介してリンクロッド24が昇降し、各処理容器11は同一の動作で第1回動軸22を中心として水平位置と傾斜位置との間を揺動する。
【0020】
上記高圧液相エピタキシャル成長装置による窒化物単結晶の製造例について説明する。
まず、図2に示すように、各処理容器11に種結晶となる窒化物薄膜が形成された基板(種結晶基板)Wを載置した後、図1のように高圧容器1をセットし、高圧窒素ガスを注入し、筒状ヒータ3により、各処理容器11が同様の処理温度となるように加熱する。
前記種結晶基板Wは、図3に示すように、処理容器11を傾斜させた際に、基板の表面が高圧窒素に曝されるように、処理容器11の中央に置かずに、支持部材21側に偏るように載置することが好ましい。各処理容器11には、種結晶基板Wの他、種結晶を成長させる原料となるGaなどのIII 属金属元素及びフラックスとなるアルカリもしくはアルカリ土類の金属の所定量が供給される。
【0021】
所定の処理温度、処理圧力になった後、カム装置を駆動して各処理容器11を図2(2) と図3に示すように上下に揺動させる。各処理容器11が水平状態にあるときには、フラックスと共に溶融した金属元素からなる処理溶液が種結晶基板Wの表面を覆った状態であるが、傾斜状態になると種結晶基板Wの表面が処理溶液で濡れた状態、すなわち非常に薄い処理溶液で覆われた状態となり、高圧の窒素ガスに暴露される。これにより、III 属金属元素と窒素が化合して種結晶の表面で種結晶と同じ結晶方位を有する窒化物の結晶が、いわゆるホモエピタキシャル成長し、種結晶から大きな単結晶に成長する。所定サイズの単結晶が得られた後、加熱を止め、冷却後窒素ガスを排出し、処理容器群を下蓋7とともに高圧容器1の胴部5から下降して炉外に取り出し、単結晶を処理容器11から回収する。そして、次の処理のために、種結晶基板や処理溶液原料を処理容器11に供給する。
【0022】
上記実施形態では、処理容器11として黒鉛製容器を用いたが、その材質は黒鉛に限らず、耐熱性があり、処理物と反応したり、処理物を汚染しないようなものであればよい。特に、処理物と同じIII 属金属元素の窒化物であるボロンナイトライドは、耐久性に富み、好適であるが、非常に高価であるので、図2(1) に示すように、ヒンジ機構を構成する連結部17,18を含む全体をボロンナイトライドで形成することは経済的ではない。そこで、ボロンナイトライドを用いる場合、図4に示すように、処理容器11を、前記連結部17,18が形成される外周部を構成する本体部11Aと、その内側に装着されるシャーレ形状の基板収容部11Bとで構成し、前記本体部11Aを黒鉛で形成し、前記基板収容部11Bをパイロリティクボロンナイトライドで形成するとよい。
【0023】
また、上記実施形態では、リンクロッド24を上下動させる昇降手段としてカム装置を用いたが、昇降手段とてはこれに限るものではなく、ラック・ピニオン機構を用いることもできる。また、リンクロッド24を昇降させる手段として、図5に示すように、常時進出状態に保持される従動ロッド31と、これを電磁力の作用で下方へ降下させる電磁コイル(駆動源)32とで構成することができる。前記従動ロッド31は、その下端部に強磁性材料からなる電磁片が取付けられており、非磁性材で形成された管状ポート33に収納されている。管状ポート33の下部外側には前記電磁コイル32が付設され、電磁コイル32に電流を印加することによって前記電磁片が下方へ吸引され、従動ロッド31は下降し、電流の印加を止めることで従動ロッド31はコイルバネの弾発力により上昇する。
【0024】
ところで、フラックスの形成のために添加されるアルカリもしくはアルカリ土類の金属は、大気圧下での融点や沸点が低く、高温下では溶融し、かつ飽和蒸気圧が高いという物性を有する。このため、GaN単結晶の製造を例にとれば、フラックスの形成原料としてNaを添加した場合、高温の処理部(結晶成長部)ではNaが蒸発してGaN単結晶の成長の促進効果が低下する一方、高圧容器内の下部等の低温部分では蒸発したNa蒸気が凝結あるいは温度によっては固化して、ヒータ3や電動機29の電気絶縁性を損なうおそれがある。
【0025】
このような危惧を解消するには、図5に示すように、断熱体13の上に処理容器11、支持部材21A、リンクロッド24を収容する蒸気拡散防止チャンバ35を設けることが好ましい。また、蒸気拡散防止チャンバ35には、チャンバ内外の圧力差による破損を防止するため、チャンバの内部と高圧容器1の下部とを連通する連通パイプ(図示省略)を設けることが好ましい。なお、図例では蒸気拡散防止チャンバ35の底板36に前記支持部材21Aが立設され、また前記管状ポート33が取付けられている。前記従動ロッド31は前記底板36の開口を通して、その先端が前記リンクロッド24の下端に当接している。その他、図1に示した実施形態と同様の部材は同符号が付されている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】実施形態に係る高圧液相エピタキシャル成長装置の断面説明図である。
【図2】(1) は支持部材およびリンクロッドに連結された処理容器の平面図、(2) はその断面図である。
【図3】リンクロッドの下降時における処理容器の傾斜状態を示す断面図である。
【図4】処理容器の他例を示す断面図である。
【図5】他の実施形態に係る高圧液相エピタキシャル成長装置の断面説明図である。
【符号の説明】
【0027】
1 高圧容器
2 断熱構造体
3 ヒータ
6 固定チャンバ部
11 処理容器
17,18 第1,第2連結部
21,21A 支持部材
22 リンクロッド
22,24 第1,第2回動軸
26 カム
27 従動ロッド
29 電動機(駆動源)
35 蒸気拡散防止チャンバ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧容器と、前記高圧容器の内部に設けられた断熱構造体と、前記断熱構造体の内側に設けられたヒータと、種結晶が形成された基板を収容する処理容器を複数有し、前記処理容器は前記ヒータの内側で上下方向に配置された高圧液相エピタキシャル成長装置であって、
前記各処理容器を同一動作にて水平状態から傾斜状態に揺動させる揺動機構が高圧容器の内部に設けられ、前記揺動機構を駆動する駆動源が前記ヒータから離隔した高圧容器の下部に設けられた高圧液相エピタキシャル成長装置。
【請求項2】
前記各処理容器は、その外周部の一端が前記高圧容器の内部に立設された支持部材に回動自在に連結され、
前記揺動機構は、前記各処理容器の外周部の他端が回転自在に連結されたリンクロッドと、前記リンクロッドを上下動させる昇降手段を備えた請求項1に記載した高圧液相エピタキシャル成長装置。
【請求項3】
前記昇降手段は、前記高圧容器の下部に回転自在に設けられたカムと、上端部が前記リンクロッドの下端部に当接すると共に下端部が前記カムの外周面に当接して昇降する従動ロッドを備え、前記駆動源は、前記カムを回転させる電動機で構成された請求項2に記載した高圧液相エピタキシャル成長装置。
【請求項4】
前記各処理容器は、高温高圧処理の際に発生した原料蒸気の拡散を防止する蒸気拡散防止チャンバに収容された請求項1から3のいずれか1項に記載した高圧液相エピタキシャル成長装置。
【請求項5】
前記処理容器は、前記支持部材及びリンクロッドに連結される連結部を有する本体部と、前記本体部に付設され、ボロンナイトライドで形成され、前記基板を収容する基板収容部とを有する請求項1から4のいずれか1項に記載した高圧液相エピタキシャル成長装置。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−176369(P2006−176369A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−372387(P2004−372387)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】