説明

高圧縮成形用ろ過布

【課題】高圧縮成形用ろ過布を提供すること。
【解決手段】本発明の高圧縮成形用ろ過布は、湿式圧縮成形器、高圧脱水器などの種々の産業分野装備に高圧ろ過用に適用され、高圧状態で固体粒子をろ過し、液状粒子(水分)は速やかに吸収・排出されるようにフィルタ層10、ろ過層20、吸入層30、コーティング層40を主な構成要素として備えてなる。
これにより、本発明は、異なるデニール及び材質の原糸製のろ過層と吸入層がフィルタ層の両面に一体に形成されて高圧条件に柔軟性よく収縮・弛緩作用されながらろ過性能が向上し、また、吸入層が低デニールの原糸製であるため溶融加工により高い粗度のコーティング層を形成することにより、圧縮成形時にコーティング層と摩擦される成形物の外観が滑らかに維持される効果がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高圧縮成形用ろ過布に係り、さらに詳しくは、高圧条件下で液状粒子は吸収・排出させ、微細な固体粒子はろ過する高圧縮成形用ろ過布に関する。
【背景技術】
【0002】
産業用ろ過布は、微細な隙間を用いて、水、油などの液状粒子は通過させ、固体粒子はろ過するフィルタ部材であり、空気や液体、固体ろ過により、水処理/空気浄化/圧縮成形物を得る部品産業など全分野において汎用されている。
【0003】
これらの中で、スラリー状態の混合物を圧縮して含水率を減少させ、成形物を得る湿式圧縮成形分野におけるろ過布の使用は一般的である。
【0004】
しかしながら、機械的圧力によりスラリーを脱水する場合、スラリー粒子が液体と一緒に移動してろ過布を閉塞してしまうため、これを克服するためにかなりの圧力を加えることを余儀なくされ、このとき、ろ過布が損傷されるだけではなく、多大なエネルギーが消耗されるといった短所がある。
【0005】
従来、高機能性ろ過用不織布として、例えば、下記の特許文献1は、厚物不織布層/合繊糸不織布層/海島型複合繊維などから構成された多層不織布を提供して微細粉塵はもとより、液体ろ過用としての使用可能性を示唆しているが、高圧下で繰り返し使用する場合に損傷され易い可能性がある。
【0006】
また、下記の特許文献2に記載の化繊糸を用いた高密度ろ過布は、緯糸の表面層と裏面層が一定に変化しながら二重に織り上げた高密度のろ過布であるが、これは、主としてろ過性能を向上させるために開発されたろ過布であるため、高圧縮用に繰り返し使用する場合には依然として多くの問題点を抱えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】大韓民国特許公開公報第1998−0029645号公報
【特許文献2】大韓民国実用新案公告番号第20−0202148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一方、本発明が適用可能な湿式圧縮成形分野において、自動車、家電製品、産業機械など種々の分野において広範に使用されるフェライト(焼結)磁石を例に取る。
【0009】
フェライト磁石の生産工程は、酸化鉄から塩素を分離して水と一緒に混合してホウ酸を適量添加してスラリー状を構成し、水分を遠心分離して脱水した後、か燒ロータリーキルンに供給して乾燥、成球及びか燒反応を施して溶滓を製造、冷却させた後、粉砕機において粉砕してフェライト粉末を得る。そして、前記フェライト粉末を分散媒体に分散させて所定濃度のスラリー(成形用スラリー)を調製し、磁場中において金型により圧縮成形して成形体を得て焼結するものである。
【0010】
前記過程のうち、スラリー中に含まれている水分を脱水する工程において、フェライト成形体にひび割れが発生するなど不良品が多数発生し、その結果、製品の歩留まりが大幅に低下する問題が深刻であった。
【0011】
また、製品歩留まりを高め、且つ、工程時間を短縮させるために、金型内スラリーの注入速度及び圧縮速度を高めたり、金型上の水分排出通路を広げる方案が講じられているが、スラリーの注入速度やピストンの圧縮速度及び水分が排出される速度よりも、繊維フィルタの水分吸収率の方が高速ではない場合、金型の内部に投入されたスラリーそのものにおける圧力が増大して原料が注入口に逆流されてしまい、スラリーが正常に加圧されないなど成形体の低密度による不良品の発生が問題視されていた。
【0012】
前記過程において湿式異方性フェライト磁石生産用に適用されたろ過布の機能を具体的に述べると、スラリーを金型に注入して圧縮を行うと、ろ過布を通じてスラリー内に含まれていた水分は吸収されて外部に排出され、固体粒子はろ過布によりろ過されて金型の形状に固形化される。
【0013】
このとき、金型の圧縮力が300〜350kg/cm2程度の高圧にて働くため、従来のろ過布を使用する場合に容易に引きちぎれたり隙間が拡張されてろ過機能を正常に行うことができない結果、水分と一緒に微細な固体粒子(例えば、1〜2ミクロン)が排出されてしまうという不都合があった。
【0014】
また、ろ過布を介した水分排出速度が磁石の生産性に関連するにも拘わらず、高圧によるろ過布の引きちぎれを懸念して金型を低圧にて徐々に加圧すれば、生産性が大幅に低下(例えば、1サイクルタイムが70秒以上かかる)されることはもとより、スラリーが正常に圧縮されず、磁石成形後の組織の低密度により合計生産量の30%程度が不良として処理される(例えば、圧縮成形後の水分残留量が15%以上のときに不良として処理される)のが現状である。
【0015】
加えて、圧縮成形時に固体粒子がろ過布に摩擦された状態で加圧されるため、ろ過布の表面物性が成形物の表面粗度に直接的に影響してしまう。すなわち、上述した従来のろ過布を使用するときに表面の高い粗度により成形物の外観が滑らかに仕上がらないことはもとより、微細な原糸の毛羽(起毛)が成形物と一緒に固着されて金型を開放するときにろ過布が一緒に分離/離脱したり、成形物が破砕されるといった不都合があった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、反復的に加えられる高い圧力に耐えられるように弾性及び機械的強度に優れており、しかも、液状粒子を素早く排出して湿式圧縮成形による生産性を高め、さらに、圧縮成形された成形物の外観を滑らかに維持するための高圧縮成形用ろ過布を提供するところにある。
【0017】
上述した目的を達成するために、本発明の高圧縮成形用ろ過布は、ポリエチレンテレフタレート(PET)原糸、ナイロン−6原糸及びこれらの混合糸よりなる群から1種以上の原糸を選択してレノ組織に織り上げられた網目状フィルタ層10と、前記フィルタ層10の一方の面にニードルパンチされ、PET原糸、ナイロン原糸及びこれらの混合糸よりなる群から選ばれる1種以上の原糸製のファイバからなるろ過層20と、前記フィルタ層10の他方の面にニードルパンチされ、PET原糸製のファイバからなる吸入層30と、前記吸入層30の表面を溶融加工(melting)して高密度に形成されるコーティング層40と、を備えることを特徴とする。
【0018】
このとき、前記フィルタ層10は、1インチ当たりに13〜15x2の密度を有する400〜440デニールの経糸と、1インチ当たりに16〜17の密度を有する820〜860デニールの緯糸もしくは1インチ当たりに15〜16の密度を有する420デニールx2の緯糸と、から織り上げられることを特徴とする。
さらに、フィルタ層10がレノ組織で織り上げられていることを特徴としている。
【0019】
さらに、前記フィルタ層10は、ろ過層20と吸入層30をニードルパンチする時に15〜17%の収縮率を有することを特徴とする。
【0020】
さらに、前記ろ過層20のPET原糸とナイロン原糸としては3〜6デニールの原糸を使用し、これらの混合糸は55〜70%:30〜45%の割合にて混合してなることを特徴とする。
【0021】
さらに、前記吸入層30のPET原糸は、1〜3デニールの範囲内で選択された異なるデニールを有する2種以上の原糸を選択的に混合してなることを特徴とする。
【0022】
さらに、前記コーティング層40は、吸入層30の表面を280〜330℃の熱源Hにより熱処理した後、カレンダーロールRを密着させて微細な凹凸が減少されるように高密度に成形加工されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明による吸収力及び弾性に優れた繊維フィルタは、ピストンの継続する摩擦に耐えることができ、水分をより素早く吸入/排出して低密度による不良を防止することができる他、圧縮成形工程の生産サイクルを短縮して安価での量産を可能にするという効果を奏する。
【0024】
以上の作用効果をさらに詳述すると、第一に、高強度の糸を用いて高密度のレノ組織に織り上げられたフィルタ層によりろ過布全体の弾性及び機械的強度が大幅に高まることにより、高圧条件、特に、流線型の成形物を成形する圧縮条件において柔軟性よく収縮・弛緩されながらろ過層及び吸入層が初期状態に維持されるように保持する効果がある。
【0025】
第二に、異なるデニール及び材質の原糸製のろ過層と吸入層がフィルタ層の両面に一体に形成されるため、微細な固体粒子までろ過しながら、水分などの液状粒子は素早く吸入・排出することにより、湿式圧縮成形工程の生産性が大幅に向上する効果がある。
【0026】
第三に、吸入層が低デニールの原糸製であるため自体平滑度に優れていることはもとより、溶融加工時に容易に熱成形されてより高い平滑度のコーティング層を形成することにより、圧縮成形時にコーティング層と摩擦される成形物の外観が滑らかに維持され、成形体の表面にひび割れが発生することが防止される効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明による高圧縮成形用ろ過布の構成を示す縦断面図。
【図2】本発明による高圧縮成形用ろ過布の構成を示す縦断面図。
【図3】本発明による高圧縮成形用ろ過布の構成を示す縦断面図。
【図4】本発明による高圧縮成形用ろ過布のコーティング層を形成する状態を示す構成図。
【図5】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて板状の成形物を圧縮成形する状態を示す構成図。
【図6】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて流線型の成形物を圧縮成形する状態を示す構成図。
【図7】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を示す構成断面図。
【図8】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を示す構成断面図。
【図9】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を示す構成断面図。
【図10】本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を示す構成断面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面に基づき、本発明の好適な実施形態を詳述する。
【0029】
図1から図3は、本発明による高圧縮成形用ろ過布の構成を示す縦断面図であり、図4は、本発明による高圧縮成形用ろ過布のコーティング層を形成する状態を示す構成図であり、図5及び図6は、本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて板状、流線型の成形物を圧縮成形する状態を示す構成図であり、図7から図10は、本発明による高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を示す構成断面図である。
【0030】
本発明は高圧縮成形用ろ過布に関するものであり、高圧縮成形用ろ過布100は、湿式圧縮成形機、高圧脱水機などの様々な産業分野装備に高圧ろ過用に適用され、高圧状態で固体粒子をろ過し、液状粒子(水分)は素早く吸収・排出されるように、フィルタ層10、ろ過層20、吸入層30、コーティング層40を主な構成要素として備えてなる。
【0031】
本発明によるフィルタ層10は、ポリエチレンテレフタレート原糸、ナイロン−6原糸及びこれらの混合糸よりなる群から1種以上の原糸を選択して織り上げられた網目状のものである。製織時には、綾織、 平織などの通常の製織方法を採択することができるが、レノ織に織り上げられることが好ましい。
【0032】
フィルタ層10は、ろ過布100が高圧条件下において優れた耐久性が維持されるように保持する補強層であって、PET原糸の優れた吸収性とナイロン−6原糸の高強力弾性及び伸縮性をいずれも満足させるために40〜60%:40〜60%の割合の混合糸を使用することが好ましい。
【0033】
そして、レノ組織は、図3に示すように、同一線上に位置する複数の経糸のうち一方の経糸が他方の経糸を中心に左右往復運動しながら複数の経糸が撚られ、それらの間に緯糸が織り込まれるような製織方法であって、稠密な組織を有することが特徴である。
【0034】
本発明のフィルタ層10をレノ組織に織り上げると、組織の特性から、伸縮性に優れていて弾性変形による限界点が向上するため、高圧が働くときに柔軟性よく収縮・弛緩される結果、引きちぎれが防止される。また、網目状の構造に構成されて、反復使用による組織の変形が防止されてろ過布100を初期状態に維持する補強材の役割を果たす。しかしながら、レノ組織よりも伸縮性に劣るものの、綾織(布目を斜め方向に突き出るように織り上げる方法)、平織(縦糸と横糸を1本ずつ交互に切り替えて織り上げる方法)などの組織にフィルタ層10を形成する構成も本発明の権利範囲に属するものであるということは言うまでもない。
【0035】
このとき、フィルタ層10の経糸は400〜440デニールであり、且つ、1インチ当たりに13〜15x2の密度に構成され、緯糸は820〜860デニールであり、且つ、1インチ当たりに16〜17の密度に構成されるか、もしくは、420デニールx2であり、且つ、1インチ当たりに15〜16密度に構成される。
【0036】
フィルタ層10は、下記の<表1:製織密度による時間当たりの水分排出率(%)を示す実験表>から明らかなように、緯糸と経糸の製織密度が高ければ液状粒子の排出速度が高速化し、製織密度が低ければ相対的に液状粒子の排出速度が遅くなる。
【0037】
【表1】

【0038】
これは、フィルタ層10の製織密度が高密度になるほど膨潤現象(繊維が水分を吸収すると、その体積が増大して繊維の長手方向または径方向に寸法が増大する現象)による水分吸収量も増大するため、水分排出が素早く行われる。
【0039】
このため、フィルタ層10は製織密度による水分排出率を考慮して、最大の製織密度を得るために経糸420デニールx2:緯糸840デニールであり、且つ、1インチ当たりに(15x2)x17の密度に織り上げられることが好ましい。
【0040】
さらに、フィルタ層10は、両面に後述するろ過層20と吸入層30をニードルパンチにより形成時に15〜17%収縮された状態でろ過布100を構成する。すなわち、ろ過層20と吸入層30を構成するPET原糸、ナイロン原糸をレノ組織に織り上げられたフィルタ層10の上にニードルパンチすると、フィルタ層30の経糸と緯糸との間にPET原糸、ナイロン原糸が織り込まれてフィルタ層10が収縮され、このとき、フィルタ層10の15〜17%収縮されるようにニードルパンチするため、収縮・弛緩による弾性力が向上されて、図5に示すように、板状成形物はもちろん、図6に示すように、流線型の成形物を圧縮成形する高圧条件下においても金型に適合して柔軟性よく変形されてろ過機能を行うことになる。
【0041】
ここで、ニードルパンチによるフィルタ層10の収縮率が14%以下であれば、収縮・弛緩範囲が縮小されて圧縮条件下において引きちぎれる恐れがあり、また、18%以上の収縮率を有すると、フィルタ層10の密度が低下してろ過機能を正常に行うことができず、しかも、素材の使用量が増大されるという問題点がある。
【0042】
また、本発明によるろ過層20は、フィルタ層10の一方の面にニードルパンチされ、PET原糸、ナイロン原糸及びこれらの混合糸よりなる群から選ばれた1種以上の原糸製のファイバからなる。ろ過層20は、湿式圧縮成形により成形物を製造する用途に使用する時に後述する吸入層30とフィルタ層10を介してろ過されて排出される水分を素早く吸入・排出するようにニードルパンチされるが、ここで、ニードルパンチは、基本的に、積層された繊維層の表面または裏面において種々のニードルを用いて反復的に上下運動によりパンチすることにより、機械的に絡み合って所定の厚さと繊維密度を有する繊維層を形成する通常の製造法である。
【0043】
そして、ろ過層20を構成するPET原糸とナイロン原糸としては3〜6デニールの原糸を使用し、これらの混合糸は55〜70%:30〜45%の割合にて混合してなる。ろ過層20は、PET原糸、ナイロン原糸及びこれらの混合糸が有するそれぞれの物性、すなわち、弾性力及びろ過性、吸収力などを考慮して形成され、上述した物性をいずれも備えるためにPET原糸とナイロン原糸との混合糸から形成される。
【0044】
また、ろ過層20は反復的に加えられる圧力に対する復元力及び通気性に優れるように比較的に高デニールである3〜6デニールを使用するが、混合糸の場合に、PET原糸としては吸収力を高めるために6デニールの原糸を60%使用し、ナイロン原糸はろ過性及び弾性力が向上されるように3デニールの原糸を40%の割合にて混合することが好ましい。
【0045】
このように、ろ過層20がPET原糸とナイロン原糸との混合ファイバ製であるため、反復的な高圧の外力が働いても容易に変形されず、初期状態に復元されながらフィルタ層10を介してろ過されて排出された液状粒子、すなわち、水分を迅速に吸収することになる。
【0046】
また、本発明による吸入層30は、フィルタ層10の他方の面にニードルパンチされ、PET原糸製のファイバからなる。吸入層30は、ろ過布100を湿式圧縮成形により成形物を製造する用途に使用する時に後述するコーティング層を挟んで成形物と摩擦される面であり、固体粒子を1次的にろ過し、水分だけを排出させる役割を果たす。
【0047】
このとき、吸入層30のPET原糸は、1〜3デニールの範囲内で選択された異なるデニールを持った2種類以上の原糸を選択的に混合してなる。吸入層30は、比較的に低デニールである1〜3デニールの吸収性に優れたPET原糸を用いて高密度組織にファイバを形成することにより、1ミクロン程度の固体粒子までろ過されながら水分排出性能は良好に維持される。
【0048】
また、吸入層30は、吸収性能だけを考慮して低デニールの原糸を高密度組織に形成すれば、弾性力が低下する。このため、吸収性能に影響を与えないながらも、自己の弾性力を有するように1.5デニールのPET原糸と3デニールのPET原糸を50:50%の割合にて混合してファイバを形成することが好ましい。
【0049】
そして、吸入層30を構成するPET原糸が3デニール以下の低デニールのものであるため、後述する溶融加工時に熱により容易に成形されてコーティング層40の表面がより均一に平滑度が維持されるというメリットがある。
【0050】
さらに、本発明によるコーティング層40は、吸入層30の表面を溶融加工して高密度に形成される。コーティング層40はろ過布100を湿式圧縮成形により成形物を製造する用途に使用する時に成形物と直接的に摩擦される部分であり、圧縮成形後に成形物の外観が滑らかに仕上がるように高密度に形成される。
【0051】
コーティング層40は、図4に示すように、吸入層30の表面を加熱するが、熱源により溶融され過ぎるか、あるいは、溶融速度が遅延されないように280〜330℃の温度、好ましくは、310℃の温度条件下で熱処理した後、カレンダーロールRを押し付けて微細な凹凸が減少されるように高密度に成形加工される。このため、吸入層30の表面がコーティング層40により高密度の滑らかな面に維持されることにより、PET原糸の毛羽(起毛)により成形物の表面が破砕されたり引きちぎれるなどの不良発生率が未然に解消される結果、成形物の外観粗度が良好に維持される。
【0052】
図7から図10に基づき、このように構成された本発明の高圧縮成形用ろ過布を用いて湿式異方性フェライト磁石の圧縮成形して製作する過程を詳述する。先ず、図7に示すように、スラリー投入口60を介してフェライト粉末と水分が混合されたスラリー原料Aの投入が完了すると、図8及び図9に示すように、下金型50のピストン80が前記スラリー原料Aをろ過布100と上金型52に達するまで加圧し、これにより、スラリー原料A内の水分Cはコーティング層40、吸入層30、フィルタ層10、ろ過層20の隙間を介して排出され、固体粒子Bはろ過されてケーキ状にろ過布100とピストン80との間に圧縮されてフェライト磁石の形状を呈する成形物として形成される。
【0053】
このとき、スラリー原料Aと直接的に摩擦されるコーティング層は高い粗度により成形物の表面を滑らかに形成し、また、吸入層30は太さの異なるPET材質の原糸が混合されたファイバ製であることから、水分Cが素早く吸収・排出される。
【0054】
そして、フィルタ層10は、強度が高く、しかも、優れた伸び性を有するナイロン−6の材質から形成されて反復的に加えられるピストン80の圧縮および摩擦に良好に耐えることができて、ろ過布の変形が防止される。また、フィルタ層10は固体粒子Bをろ過しながら隙間の間に水分が排出され、排出された水分Cはろ過層20に吸入されて上金型52の排出溝70を介して外部に脱水される。
【0055】
このとき、前記ろ過層20は、吸入機能に優れており、しかも、摩擦に良好に耐える弾性機能まで備えて、水分Cの吸入及びピストン80の加圧による摩擦現象にも上手く耐えるようになっている。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上述べたように、本発明のろ過布100は、弾性力に優れた材質から形成され、しかも、吸湿力に優れていることから、湿式異方性フェライト磁石を製作する圧縮成形工程におけるスラリー原料A内の水分Cの脱水効率が高くなって、組織の低密度によるフェライト成形体の不良率が低下しながらも、圧縮成形の工程サイクルが高速化して製品の歩留まりが高くなるというメリットがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエチレンテレフタレート(PET)原糸、ナイロン−6原糸及びこれらの混合糸よりなる群から1種以上の原糸を選択して織り上げられた網目状フィルタ層(10)と、
前記フィルタ層(10)の一方の面にニードルパンチされ、PET原糸、ナイロン原糸及びこれらの混合糸よりなる群から選ばれる1種以上の原糸製のファイバからなるろ過層(20)と、
前記フィルタ層(10)の他方の面にニードルパンチされ、PET原糸製のファイバからなる吸入層(30)と、
前記吸入層(30)の表面を溶融加工して高密度に形成されるコーティング層(40)と、
を備えることを特徴とする高圧縮成形用ろ過布。
【請求項2】
前記フィルタ層(10)は、1インチ当たりに13〜15x2の密度を有する400〜440デニールの経糸と、1インチ当たりに16〜17の密度を有する820〜860デニールの緯糸もしくは1インチ当たりに15〜16の密度を有する420デニールx2の緯糸と、から織り上げられることを特徴とする請求項1に記載の高圧縮成形用ろ過布。
【請求項3】
前記フィルタ層(10)は、レノ組織に織り上げられることを特徴とする請求項1に記載の高圧縮成形用ろ過布。
【請求項4】
前記フィルタ層(10)は、ろ過層(20)と吸入層(30)をニードルパンチする時に15〜17%の収縮率を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の高圧縮成形用ろ過布。
【請求項5】
前記ろ過層(20)のPET原糸とナイロン原糸としては3〜6デニールの原糸を使用し、これらの混合糸は55〜70%:30〜45%の割合にて混合してなることを特徴とする請求項1に記載の高圧縮成形用ろ過布。
【請求項6】
前記吸入層(30)のPET原糸は、1〜3デニールの範囲内で選択された異なるデニールを有する2種以上の原糸を選択的に混合してなることを特徴とする請求項1に記載の高圧縮成形用ろ過布。
【請求項7】
前記コーティング層(40)は、吸入層(30)の表面を280〜330℃の熱源(H)により熱処理した後、カレンダーロール(R)を密着させて微細な凹凸が減少されるように高密度に成形加工されることを特徴とする請求項1または6に記載の高圧縮成形用ろ過布。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−531722(P2010−531722A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513095(P2010−513095)
【出願日】平成20年6月2日(2008.6.2)
【国際出願番号】PCT/KR2008/003032
【国際公開番号】WO2009/002024
【国際公開日】平成20年12月31日(2008.12.31)
【出願人】(509352820)
【氏名又は名称原語表記】LEE,Dong−Gul
【住所又は居所原語表記】806ho,GyeongnamTown 8−dong,113,Hwanggeum 1(il)−dong,Suseong−gu,Daegu Metropolitan 706−040 Republic of Korea
【出願人】(509352831)
【氏名又は名称原語表記】LEE,Dong−Hyeop
【住所又は居所原語表記】1607ho,CastlegoldParkApts 1101−dong,365,Hwanggeum 1(il)−dong,Suseong−gu,Daegu Metropolitan 706−040 Republic of Korea
【Fターム(参考)】