説明

高密度構造体の形成方法

本発明は、自己剥離可能な剥離ライナ(3)を用いて高密度構造体が形成されるべき基板(2)を提供するステップと、剥離ライナを通して基板内に高密度構造体の少なくとも一部を形成する少なくとも1つのキャビティ部(5a、5b)を形成するステップと、充填剤材料(7a、7b)で少なくとも1つのキャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップと、こうして形成された構造体を焼結するステップと、基板(2)から剥離ライナを取り除くステップとを含む、高密度構造体を形成する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高密度構造体を形成する方法に関する。特に、本発明は、高密度電気回路を形成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高密度構造体を形成する方法の実施形態は、米国特許第7,014,727号で知られている。周知の方法は、一部基板の体積中に、一部は基板の表面上に電気回路の適切なパターンを形成するように配置され、電気回路の少なくとも一部の構造体が形成されるべき基板を誘電材料によって積層するステップと、適切なキャビティ部を形成するために基板および誘電材料をミリング(mill)するステップと、基板内および誘電材料内にこうして形成されたキャビティ部を導電性物質で充填するステップとを含む。周知の方法では、誘電層は、基板の表面領域と実質的に整合していると考えられる。基板の表面から誘電層を取り除くために、周知の方法は、半導体層の上に追加層を積層する補足ステップと、誘電層と追加層との間の然るべき接着を可能にするためにこうして提供された構造体をベークする補足ステップとを含む。一部基板内に埋め込まれ、一部は基板の表面上に配置される電気回路であって、導電性材料および基板材料のみから成る電気回路を形成するために、誘電層とともに追加層を取り除くこと。
【0003】
周知の方法には多くの欠点がある。まずこの方法は、製造プロセスを不必要に複雑にする多くの処理ステップを含む。例えば、基板の表面に構造体を形成するために剥離可能な誘電材料が提供されるが、この材料は追加層を塗布することによってのみ取り除くことができる。さらに、周知の方法では、ベークするステップ中に追加層を誘電層の外面に接着する必要がある。その結果、誘電層と基板との間の表面接着力が誘電層と追加層との間の表面接着力よりも強い場合には、半導体層の残留物が取り残される場合もある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、改善された特性を有する高密度構造体を形成する低コストの方法を提供することを目的とする。
【0005】
この目的を達成するために、本発明による方法は、
−自己剥離可能な剥離ライナを用いて高密度構造体が形成されるべき基板を提供するステップと、
−剥離ライナを通して基板内に高密度構造体の少なくとも一部を形成する少なくとも1つのキャビティ部を形成するステップと、
−充填剤材料で少なくとも1つのキャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップと、
−こうして形成された構造体を焼結(sinter)するステップと、
−焼結するステップの後に基板から剥離ライナを取り除くステップと、
を含む。
【0006】
本発明の方法によれば、高密度構造体は、より厚い構造体を製造することができる基板の体積中に提供される。導電線が厚いほど線路の伝導率を向上させることになるので、高密度電気回路を製造するのにこの方法が使用される場合にこれは有効である。
【0007】
低コスト材料を使用することもできることは、本発明による方法の利点の1つである。しかしながら、適切な低コスト材料は、高温で焼結することができない。通常、このような材料は、100から150℃の範囲の温度で焼結される。例えば、デュポン(Dupont)社の5025Ag充填スクリーン印刷ペースト、インクテック(Inktec)社のPAシリーズナノAg充填スクリーン印刷ペーストなどのペーストは、焼結後にその最初の体積の60%〜80%まで収縮することもあることが分かっている。しかし当然のことながら、当業者であれば他の低コストペーストが本発明の方法に使用するのに適している場合もあることを認識している。
【0008】
収縮現象を緩和するために、剥離ライナは、充分厚く、好ましくは約5〜70μmの剥離ライナ厚にするほうが有利である。
【0009】
したがって、焼結後に剥離ライナを取り除いた後で、実質的にキャビティ部の内部に充填物が存在することになるか、あるいは充填物が基板表面と同一平面になるようにしてもよい。すなわち、キャビティ部の外側に充填物がはみ出していないことになる。このような事実から、必要に応じて、追加材料を収容する1つ以上の追加キャビティ部を作製するために第2の剥離ライナが提供されてもよい。
【0010】
キャビティ部は、例えば、以下のプロセス:光蒸散(photoablating)、エンボス加工(embossing)、または機械的ミリングのうちのいずれかによって、基板内に形成されてもよい。当然のことながら、前者の場合は、剥離ライナに対してレーザ蒸散可能な材料が選択されるべきである。例えば、適切な剥離ライナの例はPVA,PETに関連しており、PET剥離ライナには適切な接着材の薄い層が提供されてもよい。あるいは、静電的に基板上に配置することができるPET膜を使用してもよい。適切な充填剤材料の例は、Cu、AgまたはC含有ペーストに関連している。
【0011】
キャビティ部の形成およびキャビティ部の充填のようなあらゆる実質的な処理ステップの前に剥離ライナを基板の表面上に堆積させることによって、充填剤材料からの残骸または汚染物質のような望ましくない材料が堆積しないように基板の表面全体を保護する。これによって、高密度構造体、特に高密度電気回路の動作特性が改善される。
【0012】
セラミック基板に導電線を形成する方法の実施形態は、米国特許第3,956,052号で知られている。周知の方法では、焼結するステップの前に剥離ライナを基板から取り除く。セラミックは350℃超のような実質的に高温で焼結するほうがよいのでこれは必要である。その結果、剥離ライナは、焼結する前に取り除かれることになる一部のはみ出している充填剤材料を伴うことになる。
【0013】
周知の方法の欠点は、この方法が低い焼結温度を有する材料とともに用いるのに適さないことである。
【0014】
米国特許第5,798,121号文献には、基板の表面に導電線を製造する方法が記載されている。周知の方法は、その間に導電層を有する2枚の基板であって、基板のうちの1枚にコーティング層が提供される2枚の基板を積層するステップを含む。基板の表面に提供される導電線は、基板を通して横断ビアを開けることによって接続していてもよい。
【0015】
周知の方法の欠点は、まず基板の表面上に導電線が提供され、内部に導電線を有する構造体を提供するためにこのような基板を組み立てるステップが必要になることである。
【0016】
本発明による方法のさらなる利点は、この方法が実質的に何も材料が失われない付加的プロセスに相当するという事実に関連する。例えば、基板の表面に構造体を形成するために誘電層を堆積させる必要がない。剥離ライナは自己剥離可能であり、容易に剥離可能な剥離ライナまたは水溶性剥離ライナに関連してもよい。製造された高密度回路の完全性を損なうことなく基板から容易に引き離すこともできる水溶性剥離ライナを提供するのが有利であることが分かる。水は環境に優しい物質であり化学的に不活性なため、例えば、ポリビニルアルコールに基づく水溶性剥離ライナを提供するのが好ましい。当然のことながら、「自己剥離可能な」という用語は、一方で基板の表面から剥離ライナを取り除くために剥離ライナに追加接着層を塗布する必要がないという事実、および他方でこの層は水溶性であってもよいという事実に関連しているに過ぎない。
【0017】
剥離ライナは、基板の表面上にスピンコーティングされるか、あるいは積層されるのが好ましい。別の実施形態では、剥離ライナは、例えば、スロットダイコーティング(slot die coating)を使用するロールツーロール(roll−to−roll)プロセスでコーティングされてもよい。スピンコーティングは、剥離ライナの基板への必要かつ実質的に均質な接着が可能になるという利点を有することもできる。
【0018】
次に、本発明による方法では、低コスト材料、例えば、スクリーン印刷ペーストを使用してもよい。スクリーン印刷ペーストは、既存のスクリーン/ステンシル印刷技術を使用して堆積されてもよい。この技術によって本発明による方法のコスト効率性を確保することもできる。
【0019】
本発明による方法の実施形態では、少なくとも1つのキャビティ部内の充填剤材料によって提供される構造体の外面は、基板の外面と実質的に同一平面になっている。
【0020】
本発明による方法の別の利点は、キャビティ部が基板の体積中に提供され基板の表面上には提供されないので実質的に同一平面上の外面が得られるという事実にある。この特徴によって必要とされる数だけ追加キャビティ部を提供するのに必要な回数だけ剥離層の堆積を繰り返すことができるようになる。当然のことながら、適切な数のキャビティ部が異なる処理ステップの間に提供されてもよいという事実によって、これらのキャビティ部は高密度構造体の異なる機能のサブ構造体を埋め込むために使用されてもよく、したがって、異なる充填剤材料を含んでもよい。例えば、適切な一式の導電線を作製し、次に集積抵抗器を作製するために電気抵抗材料で充填された適切な数のキャビティ部を作製することが可能である。別の実施形態は、例えば、MEMSに適用される様々な光学構造、あるいは電気的構造と光導波路または流体構造との組み合わせに関連してもよい。当然のことながら、この実施形態では自己剥離可能な剥離ライナを使用する必要はないにしても、このような剥離ライナは上記の理由から有効である場合もある。
【0021】
本発明による方法の実施形態では、複数材料処理が、
−基板の表面上に第2の剥離ライナを提供するステップと、
−第2の剥離ライナを通して高密度構造体の追加部分を形成する少なくとも1つの追加キャビティ部を基板内に形成するステップと、
−追加充填剤材料で少なくとも1つの追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップと、
によって提供されてもよい。
【0022】
当然のことながら、追加剥離ライナは、第1の充填剤材料の構造体が基板内に形成された後、および最初の剥離ライナを取り除いた後に塗布される。さらに当然のことながら、このようなステップは、複数材料高密度構造体を形成するのに必要なだけ何回繰り返されてもよい。
【0023】
本発明による方法のさらなる実施形態では、充填剤材料でキャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップの場合および/または追加充填剤材料で追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップの場合に、スキージ(squeegee)処理が使用される。
【0024】
スキージ処理は、基板内に提供されるキャビティ部を速く確実に充填できるようにするために好ましい場合がある。キャビティ部を充填する別の可能性は、適切な低コスト代替品に相当するディスペンサ(dispenser)を使用する処理に関連してもよい。当然のことながら、本発明による剥離ライナが充填するステップの前に基板の表面上に提供されるという事実から、残された過剰な材料が実質的に基板の表面領域全体に延在するためにどんな過剰な材料もすべて剥離ライナとともに取り除くことになるので、スキージ充填またはディスペンサを使用するステップに特別な精度条件は設定されない。
【0025】
本発明による方法のさらなる実施形態では、充填剤材料および/または追加充填剤材料を少なくとも部分的に充填するステップの間に、少なくとも1つのキャビティ部および/または少なくとも1つの追加キャビティ部を過剰に充填するために過剰に提供される。
【0026】
この技術的方策は、充填剤材料は通常堆積後に収縮する傾向があるという見方に基づいている。前記収縮を考慮するために、充填剤材料は過剰に供給されてもよく、これによって基板内の少なくとも1つのキャビティ部を実質的に完全に充填することもできる。この特徴によって高密度構造体の動作特性は一層改善されることになる。あるいは、充填剤材料が収縮した後で充填するステップを繰り返すことも可能である。
【0027】
本発明による方法のさらなる実施形態では、高密度構造体の線路幅は、50マイクロメータのオーダである。
【0028】
本発明による方法は、構造体のパターン密度を高める実質的に狭い線路幅を有する高密度構造体の低コスト製造を可能にすることが分かる。
【0029】
本発明による方法のさらなる方法では、少なくとも1つのキャビティ部および/または少なくとく1つの追加キャビティ部の高さは、基板の厚さの20%〜70%の範囲、好ましくは基板の厚さの20%〜90%の範囲にある。
【0030】
高密度構造体の適切な素子を埋め込むためには、実質的に基板の全厚を利用するのが有利であることが分かる。特に、電気回路の場合、線路幅を広くすると線路の伝導率が実質的に増加する場合もあるので有利である。
【0031】
本発明による方法のさらなる実施形態では、剥離ライナの厚さは、1〜40マイクロメートル、さらに好ましくは3〜10マイクロメートルの範囲にある。このような剥離ライナは、基板から容易に剥離可能であるという利点を有する。さらに、薄い剥離ライナを使用すれば製造コストがさらに下がる。
【0032】
本発明による方法のさらなる実施形態では、少なくとも1つのキャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップおよび/または少なくとも1つの追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップは、
−少なくとも1つのキャビティ部および/または少なくとも1つの追加キャビティ部内に金属のシードを堆積させるステップと、
−少なくとも1つのキャビティ部および/または少なくとも1つの追加キャビティ部内に金属を無電解成長させるステップと、
を含む。
【0033】
この実施形態は、キャビティ部を充填する代替処理ステップを提供する。キャビティ部内に堆積されたシードから適切な材料の積層を無電解成長させることは、他の場所の望ましくない汚染を導入することなく実質的にキャビティ内だけにこのような材料が存在することになるという利点を有する。
【0034】
本発明による方法のさらなる実施形態では、少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部を含む基板が選択される基板に対して、この方法は、
−充填剤材料によって少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部が充填されないように保護するために、少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部の領域に剥離ライナを提供するステップと、
−剥離ライナを取り除いた後に少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部にデバイスを埋め込むステップと、
を含む。
【0035】
本発明による方法で使用される剥離ライナは、さらなる利点を有する。充填するステップの間に剥離ライナによって材料干渉から保護することができる予め製造されたキャビティ部を有する基板を使用することが可能である。このような予め製造されたキャビティ部は、適切なデバイス、例えば、チップが配置されるべきキャビティ部に関連するのが好ましい。
【0036】
当然のことながら、高密度構造体は、適切な複数の品目に関連してもよい。例えば、高密度構造体は、電気回路、光学構造体、流体相互接続、磁気構造体に関連してもよい。
【0037】
本発明のこのようなおよび他の特徴は、添付の図面を参照しながらさらに詳細に説明されることになる。図面中、類似の参照記号は類似の要素を示すものである。当然のことながら、図面は説明する目的で提示されているに過ぎず、添付の特許請求の範囲の範囲を限定するために使用してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明による方法の実施形態を示す概略図である。
【図2】複数材料パターンニングが使用される本発明による方法の実施形態を示す概略図である。
【図3】図2の方法を使用して処理される基板を示す略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
図1は、本発明による方法の実施形態を概略的に示す。方法10は、後から本明細書で説明されることになるステップ10a〜10dを含んでもよい。ステップ10aの間に適切な基板2が選択されてもよく、前記基板は、適切な材料の断片または層、例えば、箔(foil)を含んでもよい。あるいは、基板2は、タイプ2aの1つ以上の予め製造されたキャビティ部が提供される適切な材料の断片または層を含んでもよい。当然のことながら、キャビティ部2aは基板の厚さとその横寸法との両方に対して相対的に小さな構造体として描かれているが、キャビティ部2aは任意の望ましいサイズであってもよく任意の望ましい深さを有してもよい。予め製造されたキャビティ部2aは、本発明に従って基板上に提供される高密度構造体と協働すると考えられる適切なデバイスを収納するのに使用されるのが好ましい。
【0040】
ステップ10aでは、基板2に適切な剥離ライナが提供される。剥離ライナは、例えば、コーティング法を使用して適切に堆積されてもよい。あるいは、剥離ライナ3は、高密度構造体を製造する目的でパターンニングされると考えられる基板の表面上に積層されてもよい。
【0041】
ステップ10bでは、剥離ライナ3が提供された基板2は、好ましくは、レーザ光4aを発生させる、あるいは高密度構造体を少なくとも部分的に形成する材料で充填されると考えられる適切な数のキャビティ部5a、5bを基板2の材料内に提供する照射ユニット4を使用して処理される。レーザ光4aは、エキシマレーザを選択するのが好ましい。当然のことながら、レーザ光4aによって基板2内に提供されると考えられるキャビティ部は、相互接続されても分離されてもよい。照射ユニット4は、基板2をパターンニングするために基板2に対して平行移動されるのが好ましい。さらに、大量生産の目的で、キャビティ部は、適切なレーザマスクを使用して形成されてもよく、その場合、微細パターンを有するレーザマスクに沿って広いレーザ光が掃過されると考えられる。この方法は、高密度回路の個々のフィーチャを個別にパターンニングする必要がある場合と比較して、高密度構造体をより短時間に製造することもできる。さらに好ましくは、このような平行移動は、予め定義されたパターンニング方式に従ってコンピュータ制御される。制御プログラムは、例えば、基板2の特定領域に対してレーザ光4aの適切な滞留時間を定義することによって、キャビティ部のパターンだけでなくキャビティ部の深さを定義することもできる。当然のことながら、同じ深さを有するキャビティ部または異なる深さを有するキャビティ部が提供されてもよい。キャビティ部は、基板の厚さの20%〜70%の範囲、好ましくは基板の厚さの20%〜90%の範囲の高さを有するのが好ましい。
【0042】
ステップ10cでは、ステップ10bで基板2に提供されたキャビティ部5a、5bは、適切な充填剤材料で充填される。高密度構造体が電気回路に関連する場合、キャビティ部は、導電性材料で充填されてもよい。例として、キャビティ部51、5bは、スキージ処理を使用して適切な充填剤材料で充填されてもよい。この場合、適切なスキージ部材6を使用してキャビティ部5a、5b内にペースト7が圧入される。乾燥中のペーストの収縮を補償するため、キャビティ部内により多くの量のペーストを堆積させることができるようにキャビティ部5a、5bを充填するために、ペースト7は過剰に供給される。その結果、基板2に適切な数の充填されたキャビティ5a、5bが提供され、適切な数の予め製造されたキャビティ部3aは空のままであってもよい。ステップ10a〜10cを適切な回数繰り返すことによって、それぞれ異なる充填剤材料で充填された対応する適切な量のキャビティ部を提供することもできる。
【0043】
ステップ10dでは、高密度構造体が形成されている基板から剥離ライナ3が取り除かれる。その後、基板2は高密度構造体とともに乾燥および/または硬化(cure)されてもよい。剥離ライナ3が基板2の表面に不必要に付着しないように硬化する前に剥離ライナを取り除くのが好ましい。予め製造されたキャビティ部は、チップ7cのような適切なデバイスを収納するために使用されてもよい。
【0044】
図2は、複数材料パターンニングが使用される本発明による方法の実施形態を概略的に示す。方法20は、ステップ20a、20b、20c、20dを含んでもよい。ステップ20aでは、図1のステップ10dで提供される構造体が使用されてもよい。当然のことながら、この構造体は、少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部7cを有する基板を含んでもよい。本発明の方法の本実施形態によれば、ステップ20aでは、基板2の外面に追加剥離ライナ9が塗布され、その後追加剥離ライナ9を通して基板2に少なくとも1つの追加キャビティ部8a、8bを提供するステップが続く。追加剥離ライナは蒸散可能であるのが好ましく、追加キャビティ部は適切なレーザ光(図示せず)を使用して光蒸散することによって提供されるのが好ましい。
【0045】
ステップ20bでは、追加キャビティが、追加充填剤材料で少なくとも部分的に充填される。当然のことながら、追加充填剤材料は、無電解成長のシードであってもよく、あるいは塗布器(applicator)6を使用する適切なペースト7のスキージ処理を用いて提供されてもよい。その結果、ステップ20cでは、少なくとも2つの異なる充填剤材料で充填される多くのキャビティ部が基板2に提供される。最後に、ステップ20dで、追加剥離ライナ9は、機械的に引き離すことによって、あるいは適切な溶媒を適用することによって基板2の表面から取り除かれる。さらに当然のことながら、ステップ20a〜20dは、適切な数の異なる充填剤材料を有する適切な数のキャビティ部を基板2に提供するのに必要な回数だけ繰り返されてもよい。その結果、複数材料高密度構造体を製造することが低コスト処理方法で可能になる。
【0046】
図3は、図2の方法を使用して処理される基板の上面図を概略的に示す。方法30は、
−基板35の上面に剥離ライナ36を提供するステップと、
−高密度構造体を少なくとも部分的に構成する適切な一式のキャビティ部31a、31b、31c、31d、31e、31f、31gを提供するステップと、
を含む。
【0047】
当然のことながら、剥離ライナには適切な複数の材料が選択されてもよい。例えば,PET,ポリ(イミド)、PENまたはPC材料が使用されてもよい。基板35は、適切な小型電子デバイス、例えば、チップを収納すると考えられるキャビティ部32を含んでもよい。剥離ライナ36は自己剥離可能であるのが好ましく、自己剥離可能とは、追加剥離手段を適用することなく剥離ライナ36を基板から取り除くこともできる、あるいは適切な溶媒で剥離ライナ36を溶解することもできることを意味する。
【0048】
ステップ32では、形成されたキャビティ部が充填剤材料で適切に充填されるが、充填剤材料は図面の読みやすさのために図示されていない。キャビティ部31a’、31b’、31c’、31d’、31e’、31f’、31g’は、適切な導電性材料、例えば、金属を用いて、まずキャビティ部31a、31b、31c、31d、31e、31fにそれぞれのシードを提供し、次にそのキャビティ部に金属を無電解成長させることによって充填されてもよい。その結果得られる充填されたキャビティ部31a’、31b’、31c’、31d’、31e’、31f’、31g’の上面は、基板35の上面と実質的に同一平面となり、基板35の上面に沿って実質的に高い部分のない形状が得られる。剥離ライナ36を取り除くこともでき、基板35の上面に追加剥離ライナ37を提供することもできる点でこの方法は有効である。当然のことながら、キャビティ部31a’、31b’、31c’、31d’、31e’、31f’、31g’および32と、高密度構造体の追加素子を形成するのに使用される追加材料との間に材料干渉がないように、追加剥離ライナ37は、実質的に基板37の表面領域全体に及ぶ。
【0049】
ステップ33では、適切な追加材料で実質的に充填される適切な数の追加キャビティ部33a、33bが基板35に提供される。例えば、高密度構造体が電気回路に関連する場合には、キャビティ部31a’、31b’、31c’、31d’、31e’、31f’、31g’は、導電性材料、例えば、金属で充填されてもよく、一方、キャビティ部33a、33bは、抵抗材料で充填されてもよい。当然のことながら、キャビティ部33a、33bは、異なる材料で充填されても、あるいは基板35に追加デバイスを埋め込むために使用されてもよい。
【0050】
最後に、追加剥離ライナ37が取り除かれて、得られた高密度構造体が現れる。当然のことながら、ステップ33は、複数材料高密度構造体を形成するために基板35に適切な複数の異なる材料を集積することができる適切な回数だけ実施されてもよい。最終ステップとして、キャビティ部32は適切な小型電子デバイスで充填されてもよい。
【0051】
当然のことながら、本発明の特定の実施形態が上記で説明されてきたが、本発明は説明された方法以外の別な方法で実践されてもよい。さらに、様々な実施形態を参照しながら説明された個別の特徴は組み合わされてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高密度構造体を形成する方法であって、
−自己剥離可能な剥離ライナを用いて前記高密度構造体が形成されるべき基板を提供するステップと、
−前記剥離ライナを通して前記基板内に前記高密度構造体の少なくとも一部を形成する少なくとも1つのキャビティ部を形成するステップと、
−充填剤材料で前記少なくとも1つのキャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップと、
−前記こうして形成された構造体を焼結するステップと、
−焼結する前記ステップの後に前記基板から前記剥離ライナを取り除くステップと、
を含む方法。
【請求項2】
蒸散を使用して剥離可能な前記剥離ライナである請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記剥離ライナが、水溶性である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記剥離ライナが、前記基板の表面上にスピンコーティングあるいは積層される請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つのキャビティ部の前記充填剤材料によって提供される構造体の外面が、前記基板の外面と実質的に同一平面である先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
−前記基板の表面上に第2の剥離ライナを提供するステップと、
−前記第2の剥離ライナを通して前記高密度構造体の追加部分を形成する少なくとも1つの追加キャビティ部を前記基板内に形成するステップと、
−追加充填剤材料で前記少なくとも1つの追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填するステップと、
をさらに含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つのキャビティ部が、導電性構造体を埋め込むために使用され、前記少なくとも1つの追加キャビティ部が、前記高密度構造体の追加素子を埋め込むために使用され、前記追加素子が、電子部品、光学部品、流体部品相互接続、磁気構造体のグループから選択される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記充填剤材料で前記キャビティ部を少なくとも部分的に充填する前記ステップの場合および/または前記追加充填剤材料で前記追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填する前記ステップの場合に、スキージ処理が使用される先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記充填剤材料および/または前記追加充填剤材料を少なくとも部分的に充填する前記ステップの間に、前記少なくとも1つのキャビティ部および/または前記少なくとも1つの追加キャビティ部を過剰に充填するために過剰に提供される先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記高密度構造体の線路幅は、50マイクロメートルのオーダである先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも1つのキャビティ部および/または前記少なくとく1つの追加キャビティ部の高さが、前記基板の厚さの20%〜70%の範囲、好ましくは前記基板の厚さの20%〜90%の範囲にある先行する請求項6〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記剥離ライナの厚さが、1〜40マイクロメートル、さらに好ましくは3〜10マイクロメートルの範囲にある先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つのキャビティ部を少なくとも部分的に充填する前記ステップおよび/または前記少なくとも1つの追加キャビティ部を少なくとも部分的に充填する前記ステップが、
−前記少なくとも1つのキャビティ部および/または前記少なくとも1つの追加キャビティ部内に金属のシードを堆積させるステップと、
−前記少なくとも1つのキャビティ部および/または前記少なくとも1つの追加キャビティ部内に金属を無電解成長させるステップと、
を含む先行する請求項1〜7および10〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部を含む基板が選択される前記基板に対して、前記方法が、
−前記充填剤材料によって前記少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部が充填されないように保護するために、前記少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部の領域に前記剥離ライナを提供するステップと、
−前記剥離ライナを取り除いた後に前記少なくとも1つの予め製造されたキャビティ部にデバイスを埋め込むステップと、
を含む先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2011−528502(P2011−528502A)
【公表日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−518672(P2011−518672)
【出願日】平成21年7月14日(2009.7.14)
【国際出願番号】PCT/NL2009/050430
【国際公開番号】WO2010/008281
【国際公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【出願人】(508353293)ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパストナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー (41)
【Fターム(参考)】