説明

高密度配線基板の製法およびそれを用いて製造した高密度配線基板、電子装置ならびに電子機器

【課題】高密度配線基板及びそれを用いた電子装置、電子機器の提供。
【解決手段】リジット配線基板、FPC、TAB用配線テープなどの高密度配線基板の製法において、銅箔などの金属箔のケミカルエッチン用、または銅などの導電性アディティブめっき用のレジストパターンの形成に、石英基板、サファイア基板、金属基板などにミクロン、サブミクロン、あるいはナノメートルサイズのパターンを形成した印刷版によるインプリント方式を用いる。さらに金属箔上へのレジスト膜形成、ケミカルエッチング、またはアディティブめっき、レジストパターン剥離工程の全工程、またはこれらの一部の工程に、レジストパターン形成のためのインプリント工程を、インラインとして含むことを特徴とする、高密度配線基板の製造方法、およびこれを用いて製造した配線基板ならびにこれを用いた電子装置、電子機器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型携帯機器、高機能電子機器などに用いられる高密度配線基板分野に関するものである。デジタルカメラ、携帯電話のほか、バイオ、医療などに用いられる小型、高機能分野の電子装置、電子機器が含まれる。
【背景技術】
【0002】
現在、高密度配線基板の製造方法には、銅箔などの金属箔を用いてフォトケミカルエッチングするサブトラクティブ法、および銅めっきなどの導電性金属のめっきにより製造するアディティブ法がある。サブトラクティブ法ではケミカルエッチング用のレジストパターンをまずフォトプロセスを用いて形成する。その後塩化第二鉄などのエッチング水溶液によりエッチングして配線を形成し、最終的にレジストパターンを剥離して完成する。この製造プロセスを図1に示す。図1はサブトラクティブ法によるFPC(Flexible Printed Circuit)やTAB(Tape Automated Bonding)の製造プロセスを示している。FPCやTABは、通常薄い銅箔をポリイミドなどの樹脂フィルムにラミネートした材料を用いるため、連続巻取り方式による製造方法が用いられている。
【0003】
図1(a)は電気絶縁性樹脂テープ9に金属箔10を貼り合わせた材料(以下MCL;Metal Clad Laminate と記述する)に感光性樹脂(以下フォトレジスト11と記述)を塗布するレジストコーティングプロセスを示す。MCL1の製法には銅箔などの金属箔を、接着材を用いてポリイミドなどの電気絶縁性樹脂テープ9からなるフィルムに貼り合わせる方法がある。またポリイミドフィルムなどに直接、蒸着やスパッタリングなどの気相成膜法で下地導電層をまず形成し、その後銅などの電気めっきにより導電層を厚くする方法でも製造されている。銅箔などの金属箔の厚さは通常10〜20μm、またポリイミドなどの電気絶縁性樹脂テープの厚さは20〜50μmである。このMCL材料は薄く、連続巻取りが容易であることから、通称リールツーリール方式の製造プロセスに適している。またこのMCL材料は、FPC用では幅200mm〜500mm、長さ100〜200m、またTAB用では幅35〜125mm、長さ50〜150mである。このMCL材料にフォトレジストコーター4を用いて、液状フォトレジストをコーティングする。フォトレジストのコーティング法には通常ローラーコーターが用いられるが、フォトレジストをドライフィル化し、加熱ロールを用いて貼り合わせる方法も用いられている。溶剤を含む液状フォトレジストでは、コーティング後に有機溶媒を乾燥させるベーキング工程が必要である。
これらのフォトレジストは、波長が例えば365nm、254nmの紫外線により硬化または分解する特徴がある。このために、フォトレジストのコーティング工程は、紫外線を含んだ自然光や照明灯などの光を遮断した部屋で行う必要がある。
【0004】
図2(b)は、フォトレジストを塗布したMCLに、フォトマスク露光機5を用いて露光を行っている工程を示す。この工程では微細なパターンを描画したフォトマスクを用いるので、無塵室内で行われる。この工程もまた、紫外線を含んだ自然光や照明灯などの光を遮断した部屋で行う必要がある。この工程で使用される露光機は非常に高価であるばかりでなく、超高圧水銀灯のランプ寿命が短く、ランニングコストの高いことが問題になっている。図1に示すように、フォトレジストコーティング(a)と露光(b)は連続ではなく別工程となっている。これは、コーティング工程が脱脂、酸洗などの湿式工程を含むために、精密光学機器である露光機を腐食環境から保護するのが目的である。
【0005】
図1(c)は、現像工程を示す。現像は現像装置6によって行われる。フォトレジストには紫外線によって硬化するネガ型フォトレジスト、および紫外線によって分解するポジ型がある。現像工程は、ネガ型では光硬化していない部分のフォトレジストを、またポジ型では光硬化によって分解した部分のフォトレジストを溶解し除去するのが目的である。この現像工程は、現像液に界面活性剤やアルカリ、溶解助剤などを含む湿式プロセスとなっている。このため現像も、露光工程とは隔離された部屋で行われる。現像によりフォトレジストパターン12が形成される。
【0006】
図1(d)はケミカルエッチングプロセスを示す。この工程はケミカルエッチング装置7により、塩化第二鉄などの酸化性の水溶液を用いて、銅箔などの金属箔を溶解除去するものである。ケミカルエッチング装置は強い酸化性の酸を用いるために、露光プロセスとは完全に隔離した部屋で行われる。
図1(e)は、フォトレジストの剥離工程を示す。剥離には高濃度のアルカリ水溶液を用いた剥膜装置8が使用される。このため剥離工程も、露光プロセスとは分離した独立ラインとなっている。
【0007】
近年地球環境保護の観点から、温暖化の原因となるCO2の削減が大きく叫ばれている。このためには、製造プロセスを短縮し、また高価な装置を使わなくても製造可能な新製造プロセスの構築が強く望まれている。しかしながら、携帯電話、デジタルカメラなどの小型電子機器用の高密度配線基板においては、ますます搭載される電子部品の機能が向上し、より高密度な配線基板が必要になっている。
この高密度配線基板の技術課題を整理した文献には下記の非特許文献がある。この文献では、2014年までの高密度配線基板の配線幅、配線間隔のITRSのロードマップと、開発動向が示されている。
【非特許文献1】プリント配線基板技術の課題点、あるべき姿を探る、実装技術21(6)pp.32−39
【0008】
この文献に示されるように、配線基板には配線密度の向上のみでなく、信号処理速度アップに対応した精密配線が求められている。具体的には、伝送線路としての配線の幅の均一性や、配線間隔の一定性が重要となっている。このために露光機やケミカルエッチング装置は、露光解像度の向上や、エッチングのばらつきを抑制する高性能マシンの開発なども進められている。従来のフォトケミカルエッチングプロセスでは、以上説明したように、工程がすべて分離されているために歩留まりが悪く、高密度配線基板の製法に向いていない欠点がある。このために現在、フォトケミカルエッチングプロセスによる高密度配線基板の量産には限界が生じている。現在配線ピッチ限界は、裁断された枚葉式基板のプロセスで60μm程度、また長尺材料を巻き取りながら製造するTABでは30μmとなっている。
【0009】
図1はケミカルエッチングを用いるサブトラクティブ方式による高密度配線基板の製造プロセスを示したが、銅めっきなどで配線を形成するアディティブ方式の製法でも問題は同じである。アディティブ法では、ケミカルエッチングの替わりに、現像の後に電気銅めっきを行うものであり、このほかの工程はサブトラクティブ法に類似の工程になっている。ただしセミアディティブ法では、使用するMCLはサブトラクティブ法と異なり、通常1.0μm程度の厚さの下地銅導電層を、気相成膜法や化学めっきでポリイミドフィルムなどの表面に形成した材料を用いる。この下地導電層は、電気銅めっきによる配線パターン形成後、フォトレジストの剥膜の後で化学溶解除去される。
【0010】
以上FPC、TABなどの電気絶縁性樹脂テープを用いる高密度配線基板の製法に関して説明したが、高密度配線基板の製法にはこのほかに、リジット配線基板の製法がある。リジット配線基板では、電気絶縁性樹脂にガラスエポキシなどの硬質の基板を用いる。このため製造プロセスはリールツーリール法ではなく、裁断された基板の搬送方式となっているが、リジット配線基板の製法は、基板搬送方式であるほかは、以上説明したFPC、TABの製造プロセスと基本的に同じである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の解決しようとする課題は、背景技術で述べた従来技術の課題を解決することにある。発明が解決しようとする課題を以下に示す。
1)レジストコーティング、レジストパターン形成、ケミカルエッチング、剥膜、の一連の高密度配線基板製造プロセスを簡略化し、各工程の連結が可能な、高密度配線基板の新製造プロセスを提供すること。
2)製造プロセスの簡略化により、製造装置コストおよび製造設備コストの低減を図ること。
3)製品歩留まりの向上により、製造原価の低減を図ること。
4)製造プロセスの簡略化によるCO2の削減を達成すること。
5)高密度配線基板の配線密度をより高め、配線基板の小型化、軽量化を図ること。
6)高密度配線基板の高密度化、小型化、軽量化により、電子機器の高機能化、小型軽量化を図ること。
【発明の効果】
【0012】
本発明の効果は下記の通りである。
1)レジストコーティング、レジストパターン形成、ケミカルエッチング、剥膜、の一連の製造プロセスの簡略化によって、各工程の連結が可能となる。このことによって、装置および設備の設置面積の縮小と並行して、一貫した製造プロセスの構築が可能になる。
2)製造プロセスの簡略化により、製造装置コスト及び製造設備コストの低減が可能となる。
3)製造プロセスの簡略化によって、高密度配線基板の製品歩留まりが向上し、製造原価低減を達成できる。
4)製造プロセスの簡略化により、製造プロセスから排出されるCO2を削減でき、地球環境の保護に貢献できる。
5)高密度配線基板の配線密度の一層の高密度化により、配線基板の小型化、軽量化を図ることができる。従来のフォトケミカルエッチングでは、配線幅15μm、配線ピッチ30μmが限界であるが、本発明によって、配線幅2〜10μm、配線ピッチ5〜20μmの配線形成が可能になる。
6)配線基板の高密度化、小型化軽量化により、電子機器の高機能化、小型軽量化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明におけるインプリント方式により、高密度配線基板を製造するための最良の形態を図2により説明する。図2(a)はレジストコートから剥膜までをすべてインライン化した、レジストプリコート方式の装置構成を示す。まずインプリントレジストコーター14で電気絶縁性樹脂テープ9上の金属箔10の全面にインプリントレジスト17をプリコートした後、インプリント金型15によって、直接にパターンを形成する。図に示すように、インプリント金型には凹凸のパターンが形成されており、このパターンをインプリントレジストの面に加圧して押し当てることによって、インプリントパターン18が形成される。インプリントレジストには熱可塑性レジスト、ゴム系レジスト、感光性レジストなどを用いる。熱可塑性樹脂としては、アクリル樹脂系、スチロール樹脂系、アセテート樹脂系が、またゴム系では、ポリブタジエン系やポリイソプレン系などを用いることができる。また感光性樹脂では、通常のフォトケミカルエッチング用のネガ型、ポジ型の両方を用いることができる。ネガ型である光硬化性樹脂では、インプリント金型には紫外線を透過できる石英基板、サファイア基板などを用いる。これら基板を用いて作ったインプリント金型を、金属箔上に塗布した光硬化性樹脂に押し当てて、金型上部から紫外線を照射して樹脂を硬化させる。またポジ型の感光性樹脂は光分解型の樹脂なので、紫外線を通さない金型でも構わない。ポジ型では、剥膜装置8でインプリントレジストを剥膜する前に紫外線を照射すると、光分解し剥膜が容易になる。熱可塑性樹脂、感光性樹脂いずれの場合でも、ケミカルエッチング装置7、剥膜装置8を経て配線基板が完成する。
【0014】
図2(a)のレジストプリコートによるインプリント方式では、金属箔上のレジストにはインプリント金型の逆パターンが形成される。この逆パターンの凹部には、通常薄い樹脂膜が残存している。これはインプリントによって排除しきれなかたレジストの残膜である。この残膜厚さは凸部の1/10以下なので、ケミカルエッチングの前工程での除去が可能である。ケミカルエッチング装置7にはこの残膜除去処理が含まれているが、図2(a)ではこれを省略している。残膜除去には、PH10程度のアルカリ水溶液や、有機溶剤を用いる。この残膜除去処理では、凸部のレジスト厚さも減少するが、凹部に比較して厚く溶解除去されないので、インプリントレジストはケミカルエッチングに十分耐えることができる。
【0015】
図2(b)は、ダイレクトインプリント方式を示す。この方式ではインプリントレジストコーター14を用いる必要がないので工程をより短縮できる。ダイレクトインプリント法は、インプリント金型にインプリントレジストを塗布してから、金属箔へ直接転写するものである。この転写方式では、金型の凸部にインプリントレジストを塗布する方法と、金型凹部にインプリントレジストを充填させて転写する方式の両方が可能である。金型の凹部にインプリントレジストを充填する場合には、凸部にインプリント樹脂の付着を防止する離型材処理を行う。図2(b)では、インプリント、ケミカルエッチング、剥膜、のインライン化された3工程のみでの高密度配線の製造が可能になる。ダイレクトインプリント法では、残膜の除去処理が不要な特徴がある。
また最良の実施形態として、インプリントからレジスト剥離までの全工程のインライン化に限らず、レジストプリコートとインプリント、レジストインプリントとケミカルエッチング、またはレジストインプリントからレジスト剥離までをインライン化した製法などの一部インライン化も含まれる。以下に最良の実施形態の中の幾つかの実施例を説明する。
以上説明したように、インプリント法では精密光学機器である、フォトマスクマスク露光機を用いないので、配線基板製造プロセスの各工程のインライン化が可能になる。
【実施例1】
【0016】
実施例1では、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂をインプリントレジストとして用いる、レジストプリコート(図2(a))法による高密度配線基板の製造方法を説明する。
熱可塑性樹脂には例えば、PMMA(ポリメチルメタクリレート)などのアクリル系樹脂系のIPA(イソプロピルアルコール)溶液などの溶剤希釈樹脂を用いることが可能である。また熱硬化性樹脂では、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂では、エポキシ樹脂と硬化剤の2液系の配合剤をインプリントレジストとして用いる。
最初に、電気絶縁性樹脂テープ9としてポリイミドフィルムを準備し、これに金属箔10として薄い銅箔を貼り合わせたCCL(Copper Clad Laminate)材料を準備する。ポリイミドフィルムは、例えば厚さが25、50μm、幅70、105mm、長さ100〜200mのものを用いる。このポリイミドフィルムの全面に、厚さ9μmまたは12μmの銅箔を熱硬化性のエポキシ系接着材、または変性ポリイミド系などの熱可塑性接着材を用いて貼り合わせると、銅箔/ポリイミドィルムの2層CCLが完成する。また2層CCLは、ポリイミドフィルムの上にスパッタリングにより、クロムやチタンの薄膜を形成し、この上にさらに気相法で銅を成膜し、その後無電解銅めっきや電気銅めっきで銅の厚付けを行う方式でも製造できる。これは無接着材型の2層CCL材料とよばれるが、この2層CCL材料を用いても構わない。これらの材料はいずれも、TAB用、FPC用などとして一般に市販されている。この銅箔/ポリイミド2層CCL材料は、図2に示すように、送り出しリール2に巻き取った状態で用いる。
【0017】
次に2層CCL材料をリールから送り出しながら、インプリントレジストコーター14を用いて、位置決め穴19を除いた銅箔の全面にインプリントレジストをプリコートする。2層CCL材料には、その幅方向の両側にインプリント用の位置決め穴19が抜き金型によるパンチング法などで加工されている。この位置決め穴19は、フォトマスク露光においても用いられているものである。インプリント金型には、2層CCLの位置決め穴の穴ピッチ形状に合わせた凸部が設けられており、この凸部を位置決め穴に挿入して位置合わせすると、位置決め穴に対して正確に位置決めされたインプリントを行うことができる。
インプリントレジストの塗布厚さは、溶剤を乾燥させた状態で2〜10μmの範囲とするのが良い。熱可塑性樹脂では塗布後に溶剤を乾燥させると、インプリントレジストの樹脂膜が銅箔の表面に形成にされる。図2(a)では乾燥は省略しているが、インプリントレジストコーター14の中には乾燥炉が内蔵されている。インプリントされるインプリントレジストの膜厚は、プリコートする溶媒希釈型樹脂の樹脂含有量や初期のプリコート厚さによって制御することができる。
【0018】
図2(a)に示すように,インプリント金型15を用いてインプリントレジスト17をインプリントすると、インプリントパターン18を形成することができる。インプリント金型にはニッケル電鋳金型を用いることができる。ニッケル電鋳金型は、例えば70mm幅のCCL材料では、幅67mm、長さ75mm、厚さ0.5mmの形状とする。ニッケル電鋳金型は例えば、石英基板上にフォトレジストでパターンを形成し、そのパターン上にチタンやクロムの膜をスパッタリング法で形成してから、電気ニッケルめっきの手法を用いて電鋳加工し、その後電鋳層を石英基板から剥離しフォトレジストを除去することによって製造することができる。またインプリント金型としては、電鋳金型のほか、石英基板やサファイア基板、シリコンウエハーなどにパターンを形成した金型も用いることができる。
図3に電鋳金型を用いたインプリントパターンのSEM写真を示す。図3のSEM写真は、幅2、5μmの凸部21を持つパターンの外観を示している。図3は、PMMA系樹脂を4μmの厚さにプリコートし、ステージ16を75℃に加熱し、インプリント付加荷重3kgf/cm2でインプリントを行ったものである。ステージ加熱はステージ内蔵型の温度制御された電熱ヒーターによって可能である。ステージの加熱によって、PMMA系樹脂を軟化させることができ、より低荷重でインプリントすることが可能になる。
【0019】
インプリントパターンの形成後、インライン化されたケミカルエッチング装置7により銅配線を形成させ、さらに剥膜装置8でインプリントレジストを剥離すると金属箔パターン13が露出し、高密度配線基板20が完成する。銅のケミカルエッチングには、塩化第二鉄水溶液や銅アンモニア水溶液などを用いることができる。PMMA系のインプリントレジストのインプリントにおいても、インプリントパターンの凹部に薄いPMMA系樹脂膜が残るが、この残膜はケミカルエッチングの前の簡単なアルカリ洗浄で除去することが可能である。
これらインプリントレジストコーターから剥膜装置までの一連の工程は、送り出しリール2、巻き取りリール3の間に連続した工程として配置し、インライン化することが可能である。装置の全長は主にエッチング時間に関係する銅箔の厚さによるが、送り出しリール、巻き取りリールなどの付帯装置を含めて15m以内に収めることができる。以上実施例1では、代表的な例として主にPMMA系樹脂のプリコートによるインプリント法で説明したが、ケミカルエッチングに耐える樹脂であれば、PMMA系樹脂以外の熱可塑性樹脂や、熱硬化性樹脂を用いることが可能である。熱硬化性樹脂では、例えば樹脂と硬化剤の2液系エポキシ樹脂などがある。エポキシ樹脂は無溶剤なので溶剤乾燥工程が不要である反面、インプリント後の加熱硬化処理が必要となる。
【実施例2】
【0020】
実施例2では、ダイレクトインプリント法(図2(b))によって高密度配線基板を製造する方法を説明する。ダイレクトインプリント法においても、実施例1同様、インプリントレジストとして熱可塑性樹脂であるPMMA(ポリメチルメタクリレート)系樹脂のIPA(イソプロピルアルコール)溶液などの溶媒希釈型樹脂を用いることができる。また熱硬化性樹脂では、例えばエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂では、エポキシ樹脂と硬化剤の2液系の配合剤をインプリントレジストとして用いる。
実施例1同様、電気絶縁性樹脂テープ9としてポリイミドフィルムを準備し、これに金属箔10として銅箔を貼り合わせたCCL材料を準備する。
次に2層CCL材料をリールから送り出しながら、銅箔上に溶媒希釈PMMA系樹脂のダイレクトインプリントを行う。2層CCLには実施例1同様、その幅方向の両側にインプリント用の位置決め穴19が抜き金型によるパンチング法などで加工されている。インプリント金型には、実施例1同様に2層CCLの位置決め穴の穴ピッチ形状に合わせた凸部が設けられており、この凸部を位置決め穴19に挿入して位置合わせすると、位置決め穴に対して正確に位置決めされたインプリントを行うことができる。PMMA系樹脂のインプリント金型への塗布厚さは、2〜10μmの範囲が好ましい。インプリント後に銅箔上のインプリントレジストに含まれる溶剤を乾燥させると、無溶剤樹脂膜が銅箔の表面に形成される。図2(b)ではこの乾燥は省略している。形成されるインプリントレジストの樹脂膜厚さは、インプリント金型に塗布する溶媒希釈樹脂の樹脂含有量や金型への塗布厚さにより制御することができる。
【0021】
実施例2では、インプリント金型には実施例1同様、ニッケル電鋳金型を用いることができる。ニッケル電鋳金型を用いる場合は実施例1同様の方法で製造する。ダイレクトインプリント金型としては、電鋳金型のほか、石英基板やサファイア基板、シリコンウエハーなどにパターンを形成した金型も用いることができる。これらインプリント金型にインプリントレジストを塗布する方法を図4に示す。レジストトレイ25にはインプリントレジスト17が満たされている。この上にはレジスト吸着ステージ23があって、レジスト吸着ステージはレジストトレイからインプリントレジストを吸い上げる。レジスト吸着ステージは、例えば多孔質のフッ素系の樹脂でできている。レジスト吸着ステージ上にインプリント金型15を押し当てると、インプリントレジストはインプリント金型の凸部に付着する。そしてインプリント金型を引き上げると付着レジスト24が形成される。次にこの状態でCCLの金属箔上にインプリント金型を押し当てるとインプリントパターンが形成される。これを繰り返すことによって、連続的にインプリントを行うことができる。インラインにおいては、インプリントする間CCLの送りが停止するが、インプリントタイムは5秒以内なので、間歇的にCCLを走行させることが可能である。また連続走行をさせたい場合には、インプリント工程の前後に、CCLの一定の長さを滞留させる部分を設けることによって、インプリントの前後の工程は連続走行が可能になる。
図4ではインプリント金型の凸部にインプリント樹脂を付着させるダイレクトインプリント方法を説明したが、インプリント金型の凹部に樹脂を付着させる方法でも構わない。この場合には、インプリント金型の凸部に、インプリント樹脂の付着を抑制する離型材の処理を行う。離型材にはシリコーン系、フッ素系の高分子材料を用いると効果的である。
【0022】
インプリントパターンの形成後、インライン化されたケミカルエッチング装置7により銅配線を形成させ、さらに剥膜装置8でインプリントレジストを剥離すると高密度配線基板20が完成する。ダイレクトインプリント方式では、実施例1のプリコート法に見られる、インプリントパターン凹部へのPMMAの薄い樹脂残膜は生じない。このため残膜除去処理は不要である。
これらダイレクトインプリントから剥膜装置までの一連の工程は、送り出しリール2、巻き取りリール3の間に連続した工程として配置し、インライン化することが可能である。装置の全長は主にエッチング時間に関係する銅箔の厚さによるが、送り出しリール、巻き取りリールなどの付帯装置を含めて10m以内に収めることができる。
【実施例3】
【0023】
実施例3では、インプリントレジストに感光性樹脂を用いる光インプリント法による製法例を説明する。光インプリント法による製法では、実施例1において、インプリントレジストとして感光性樹脂を用いるものである。感光性樹脂にはフォトケミカルエッチングに通常用いられている、フォトレジストを用いることができる。感光性樹脂にはネガ型、ポジ型があるが、ネガ型の光硬化型では、インプリント金型に紫外線透過型の石英金型やサファイア金型などを用いる。インプリント金型を押し当てると同時に金型上部から紫外線を照射して樹脂を硬化させ、その後インプリント金型の離型を行うとインプリントパターンがCCLの銅箔上に形成される。また光照射によって分解するポジ型レジストでは、紫外線を遮断したイエロールームでインプリントからケミカルエッチングまでを行い、最終のレジスト剥離で紫外線を照射してインプリントレジストを剥離除去する。
【0024】
ネガ型レジストには光重合開始材を配合したゴム系、ノボラック樹脂系などが、またポジ型には光分解増感剤を配合したノボラック樹脂系などがある。光インプリント法による高密度配線基板の製造においても、インプリントレジストのプリコート法では、樹脂残膜が形成される。しかしこの樹脂残膜は薄いので、ケミカルエッチング前の残膜除去工程で簡単に除去が可能である。
光インプリントレジストのプリコート法による高密度配線基板の製法においても、送り出しから巻き取りまでを含めた装置全長は、15m以内に収めることが可能である。インプリント金型をインプリントレジストがコートされたCCL面に押し当て、次にインプリント金型をインプリントレジストから離型するとき、インプリント金型へのインプリントレジストの付着が生じる場合がある。これは実施例1の場合も同様であるが、このインプリントレジストの付着を防止するためには、インプリント金型への離型材処理が効果的である。離型材にはシリコーン系、フッ素系のものを用いると効果的である。
感光性樹脂を用いるインプリント法による配線基板の製法においても、紫外線ランプは必要であるが、フォトケミカルエッチングのような精密光学機器であるマスク露光機を必要としない。このため、配線基板製造プロセスの各工程を分離、隔離することなく、各工程を連結したインラインプロセスが可能になる。
【実施例4】
【0025】
実施例4では、ダイレクトインプリント法に感光性インプリントレジストを用いた高密度配線基板の製法例を説明する。実施例2において、インプリントレジストとして感光性樹脂を用いることによって、感光性インプリント樹脂によるダイレクトインプリントが可能である。光硬化型のネガ型感光性インプリントレジストを用いる場合には、石英やサファイア製の紫外線透過型のインプリント金型を用いる。また光分解型のインプリントレジストでは、紫外線を透過しない電鋳金型でも構わない。ネガ型の場合は、インプリント時に紫外線をインプリント金型の上部から照射すると、感光性樹脂が硬化してケミカルエッチングに耐えるインプリントパターンが形成される。またインプリント金型の離型後に紫外線を照射して樹脂を硬化することも可能である。ポジ型の場合には、紫外線を遮断したイエロールームでインプリントからケミカルエッチングまでを行い、インプリントレジストの剥離の前にインプリントレジストに紫外線を照射してインプリントレジストを分解すると、インプリントレジストの剥離が容易になる。これらネガ型、ポジ型のインプリントレジストは実施例3と同様の感光性樹脂を用いることができる。光インプリントレジストを用いたダイレクトインプリント法による高密度配線基板の製造おいても、送り出しリールから巻き取りリールまでの装置全長は、10m以内に収めることが可能である。
【実施例5】
【0026】
実施例5ではレジストインプリント法でめっきレジストパターンを形成し、アディティブ銅めっきを行って高密度配線基板を製造する方法を説明する。実施例5では、銅箔の厚さが0.3〜1.0μm程度の薄い銅層を有するCCL材料を用いる。この薄い銅層を持つCCL材料は、蒸着やスパッタリング、または無電解銅めっき法で製造されており、多くの種類のCCLが市販されている。この材料を用いて実施例1同様のプロセスでインプリントレジストパターンを形成する。その後レジストパターンの開口部に電気銅めっきを行って、銅の厚さを厚く成長させる。電気銅めっきの電極にはCCL材料の薄い銅層を用いる。必要な電気銅めっきの厚さは高密度配線基板の通電容量や信頼性から決定される。電気銅めっきの後、インプリントレジストを剥離し、インプリントレジスト直下のCCLの薄い銅層をケミカルエッチングすると銅の配線パターンが形成される。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明の産業上の利用分野は、デジタルおよびアナログ電子機器全般用の高密度配線基板である。またメモリーカードやICカード用基板にも応用できる。
さらに液晶ディスプレイやその他表示パネル用のドライバーIC搭載接続用のCOF(Chip On Film)にも応用が可能である。デジタル電子機器の代表では、デジタルテレビやデジタルカメラがある。デジタルテレビやデジタルカメラにはマザーボードのほかに、半導体チップをパッケージするための薄型の高密度配線基板がある。これら薄型高密度配線基板は、複数の半導体チップをパッケージしてシステムを構成するSIP(System In Package)にも使われている。SIP用の配線基板は、電子機器の小型化のために現在急速に小型化と高密度化が進んでいる。しかしこの基板を製造するには従来のフォトケミカルエッチングプロセスでは、配線密度の限界とその製造プロセスの長さから来る歩留まりの低下で限界が生じている。
また携帯電話では、アナログ回路であるRFモジュールにも応用できる。RF回路におけるアンプやフィルターなどのモジュール化により、送受信部の配線基板の小型化を図ることができる。携帯電話は、SIPによるベースバンド部の小型化とともに、RF回路の小型化が達成されると、携帯電話の軽量化、薄型化、小型化がより一層可能になる。
配線基板の製造プロセス簡略化と高密度化により、電子機器の小型化軽量化のほかに、CO2の削減と廃棄物の削減にも繋がり、地球環境の保護に大きく貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】従来法による高密度配線基板の製造プロセス
【図2】本発明による高密度配線基板の製造プロセス
【図3】本発明によるインプリントパターン
【図4】ダイレクトインプリント法の説明図
【符号の説明】
【0029】
1 MCL
2 送り出しリール
3 巻き取りリール
4 フォトレジストコーター
5 フォトマスク露光機
6 現像装置
7 ケミカルエッチング装置
8 剥膜装置
9 電気絶縁性樹脂テープ
10 金属箔
11 フォトレジスト
12 フォトレジストパターン
13 金属箔パターン
14 インプリントレジストコーター
15 インプリント金型
16 ステージ
17 インプリントレジスト
18 インプリントパターン
19 位置決め穴
20 高密度配線基板
21 インプリント凸部
22 インプリント凹部
23 レジスト吸着ステージ
24 付着レジスト
25 レジストトレイ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リジット配線基板、FPC、TAB用配線テープなどの高密度配線基板の製法において、銅箔などの金属箔のケミカルエッチン用、または銅などの導電性アディティブめっき用のレジストパターンの形成に、石英基板、サファイア基板、金属基板などにミクロン、サブミクロン、あるいはナノメートルサイズのパターンを形成した印刷版によるインプリント方式を用い、さらに金属箔上へのレジスト膜形成、ケミカルエッチング、またはアディティブめっき、レジストパターン剥離工程の全工程、またはこれらの一部の工程に、レジストパターン形成のためのインプリント工程を、インラインとして含むことを特徴とする、高密度配線基板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、レジスト膜形成、インプリント法によるレジストパターン形成、ケミカルエッチング、またはアディティブめっき、さらに最終工程としての、レジストパターン剥離の全工程を長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴する、高密度配線基板の製造方法。
【請求項3】
請求項1において、レジスト膜形成およびインプリント法によるレジストパターン形成を、長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴する、高密度配線基板の製造方法。
【請求項4】
請求項1において、インプリント法によるレジストパターン形成およびケミカルエッチングまたは銅などのアディティブめっきを長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴する、高密度配線基板の製造方法。
【請求項5】
請求項1において、インプリント法によるレジストパターン形成、およびケミカルエッチングまたは銅などのアディティブめっき、ならびにレジストパターンの剥離を長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴する、高密度配線基板の製造方法。
【請求項6】
銅箔などの金属箔のケミカルエッチン用、または銅などの導電性アディティブめっき用のレジストパターンの形成に、石英基板、サファイア基板、金属基板などにミクロン、サブミクロン、あるいはナノメートルサイズのパターンを形成した印刷版によるインプリント方式を用い、さらに金属箔上へのレジスト膜形成、ケミカルエッチング、またはアディティブめっき、レジストパターン剥離工程の全工程、またはこれらの一部の工程に、レジストパターン形成のためのインプリント工程を、インラインとして含むことを特徴とした、請求項1記載の高密度配線基板の製造方法を用いて製造した高密度配線基板。
【請求項7】
レジスト膜形成、インプリント法によるレジストパターン形成、ケミカルエッチング、またはアディティブめっき、さらに最終工程としての、レジストパターン剥離の全工程を長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴とした、請求項2記載の高密度配線基板の製造方法を用いて製造した高密度配線基板。
【請求項8】
レジスト膜形成およびインプリント法によるレジストパターン形成を、長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴とした、請求項3記載の高密度配線基板の製造方法を用いて製造した高密度配線基板。
【請求項9】
インプリント法によるレジストパターン形成およびケミカルエッチングまたは銅などのアディティブめっきを長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴とした、請求項4記載の高密度配線基板の製造方法を用いて製造した高密度配線基板。
【請求項10】
インプリント法によるレジストパターン形成、およびケミカルエッチングまたは銅などのアディティブめっき、ならびにレジストパターンの剥離を長尺材料の連続した一連の巻き取り方式、または裁断された板材料の、連続した一連の搬送方式で行うことを特徴とした、請求項5記載の高密度配線基板の製造方法を用いて製造した高密度配線基板。
【請求項11】
請求項6、7、8、9、10に示す高密度配線基板に、抵抗、コンデンサー、インダクタなどの受動素子、IC、LSI、VLSIなどの半導体素子、ならびにセンサー、アンテナなどの機能素子を実装した電子装置。
【請求項12】
請求項11の電子装置を組み込んだ、携帯電話、パソコン、デジタルカメラなどの小型高機能電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−142092(P2007−142092A)
【公開日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−332827(P2005−332827)
【出願日】平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願人】(504203572)国立大学法人茨城大学 (99)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【出願人】(505427160)山本理化工業株式会社 (1)
【出願人】(505427171)株式会社ハイペック (1)
【出願人】(504191486)
【Fターム(参考)】