説明

高屈折率プラスチックレンズ及びその製造方法

【課題】高屈折率で優れた耐衝撃性を有し、かつ密着性の良好な高屈折率プラスチックレンズ、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材11、基材フィルム16の両面に接着層14、15を有する熱可塑性フィルム12、及び第2のレンズ基材13が、この順に接合されている高屈折率プラスチックレンズ1。フィルム用保持部を有する光学レンズ製造用ガスケットに熱可塑性フィルム12を保持させ、前記ガスケットの両端開口部に一対のモールドをはめ込み、前記ガスケットに前記熱可塑性フィルム12を保持させた状態で前記ガスケットと前記熱可塑性フィルム12と前記一対のモールドとが形成する両空間に光学樹脂用重合性組成物を注入し、重合硬化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率プラスチックレンズ、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は軽量かつ靭性に富み、染色も比較的容易なことから各種光学要素、特に眼鏡用レンズに近年多用されている。眼鏡用レンズには、低比重、高透明性、低黄色度、高屈折率、高アッベ数、強靭性等が要求され、高屈折率はレンズの薄肉化を可能とする。
【0003】
近年では、薄肉化を目的として、屈折率1.7以上の高屈折率光学材料を与えるエピスルフィド系化合物を用いた光学材料用重合性組成物が提案されている。
また、エピスルフィド系光学材料からなるプラスチックレンズの耐衝撃性を向上させることを目的に、イソシアネート基またはイソチオシアネート基を含む化合物を添加して重合硬化させて得られるプラスチックレンズ(例えば、特許文献1参照。)や、エピスルフィド光学用樹脂に耐衝撃性が良好なポリチオウレタン樹脂を積層させた複合プラスチックレンズが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開平11−352302号公報
【特許文献2】特開2008−132783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、イソシアネート基またはイソチオシアナート基を含む化合物を添加すると、重合体中の高屈折率原子(例えば硫黄原子)の含有量が低下するため、光学材料の屈折率が低下するという欠点がある。また、エピスルフィド光学用樹脂とポリチオウレタン樹脂とを積層させた複合プラスチックレンズでは、積層部分の密着性が悪いという問題がある。
本発明は、上記問題点に鑑み、高屈折率で優れた耐衝撃性を有し、かつ密着性の良好な高屈折率プラスチックレンズ、及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明を例示する第一の態様によれば、エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材、基材フィルムの両面に接着層を有する熱可塑性フィルム、及び第2のレンズ基材が、この順に接合されていることを特徴とする高屈折率プラスチックレンズが提供される。
【0006】
また、本発明を例示する第二の態様によれば、フィルム用保持部を有する光学レンズ製造用ガスケットに熱可塑性フィルムを保持させ、前記ガスケットの両端開口部に一対のモールドをはめ込み、前記ガスケットに前記熱可塑性フィルムを保持させた状態で前記ガスケットと前記熱可塑性フィルムと前記一対のモールドとが形成する両空間に光学樹脂用重合性組成物を注入し、重合硬化させるプラスチックレンズの製造方法であって、前記ガスケットと前記熱可塑性フィルムと前記一対のモールドとが形成する両空間のうち、少なくとも一方の空間に注入する光学樹脂用重合性組成物は、エピスルフィド化合物を主成分とする光学樹脂用重合性組成物であり、前記熱可塑性フィルムは基材フィルムの両面に接着層が設けられていることを特徴とする、前記第一の発明の高屈折率プラスチックレンズの製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、高屈折率レンズの欠点である耐衝撃性に優れ、かつ熱可塑性フィルムとの密着性が良好な高屈折率プラスチックレンズを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の高屈折率プラスチックレンズ、及びその製造方法について詳細に説明する。
【0009】
図1は、本発明の高屈折率プラスチックレンズの一例を示す断面図である。図1において、本発明の高屈折率プラスチックレンズ1は、エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材11、基材フィルム16の両面に接着層14、15を有する熱可塑性フィルム12、及び第2のレンズ基材13が、この順に接合されている。エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材11、熱可塑性フィルム12及び第2のレンズ基材13が接合されているので、耐衝撃性に優れる高屈折率プラスチックレンズとすることができる。熱可塑性フィルム12が基材フィルム16の両面に接着層14、15を有していることにより、エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材と熱可塑性フィルム12との密着性が良好となり、第2のレンズ基材と熱可塑性フィルム12との密着性も良好となる。
【0010】
第1のレンズ基材を構成するエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂としてはエピスルフィド基を1個以上含有するモノマーを主成分としてこれを重合して得られる高屈折率を有する樹脂であれば特に限定されないが、そのモノマーとして具体的には以下に挙げられるエピスルフィドの1種又は2種以上の混合物が挙げられ、屈折率を上げるために硫黄原子、スズ原子、セレン原子を含む無機化合物を添加しても良い。主成分とは、第1のレンズ基材を構成する光学用樹脂のエピスルフィド樹脂の含有割合が50%以上であることを意味し、好ましくは90%以上であり、100%であってもよい。
【0011】
鎖状脂肪族骨格を有するエピスルフィドとしては、ビス(β−エピチオプロピル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)ジスルフィド、ビス(β−エピチオプロピル)トリスルフィド、ビス(β−エピチオプロピルチオ)メタン、ビス(β−エピチオプロピルジチオ)メタン、ビス(β−エピチオプロピルジチオ)エタン、ビス(β−エピチオプロピルジチオエチル)スルフィド、ビス(β−エピチオプロピルジチオエチル)ジスルフィド、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)エタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1,2−ビス(β−エピチオプロピルチオ)プロパン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1,3−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ブタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−3−(β−エピチオプロピルチオメチル)ブタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ペンタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)ペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)ヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕エタン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2−[〔2−(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオエチル〕チオ]エタンテトラキス(β−エピチオプロピルチオメチル)メタン、テトラキス(β−エピチオプロピルジチオメチル)メタン、1,1,1−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)プロパン、1,2,3−トリス(β−エピチオプロピルジチオ)プロパン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,5−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアペンタン、1,6−ビス(β−エピチオプロピルジチオメチル)−2−(β−エピチオプロピルジチオエチルチオ)−4−チアヘキサン、1−(β−エピチオプロピルチオ)−2,2−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−4−チアヘキサン、1,5,6−トリス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3−チアヘキサン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4−(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,5ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,4,5−トリス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,8−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6−ジチアオクタン、1,9−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5−(β−エピチオプロピルチオメチル)−5−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,7−ジチアノナン、1,10−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,6−ビス〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオ〕−3,6,9−トリチアデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,8−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−5,7−〔(2−β−エピチオプロピルチオエチル)チオメチル〕−3,6,9−トリチアウンデカン、1,11−ビス(β−エピチオプロピルチオ)−4,7−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−3,6,9−トリチアウンデカン等が挙げられる。
【0012】
エステル基とエピチオアルキルチオ基を有する鎖状化合物としては、テトラ〔2−(β−エピチオプロピルチオ)アセチルメチル〕メタン、1,1,1−トリ〔2−(β−エピチオプロピルチオ)アセチルメチル〕プロパン、テトラ〔2−(β−エピチオプロピルチオメチル)アセチルメチル〕メタン、1,1,1−トリ〔2−(β−エピチオプロピルチオメチル)アセチルメチル〕プロパン等があげられる。
【0013】
脂肪族環状骨格を有するエピスルフィドとしては、1,3または1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキサン、1,3または1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)シクロヘキサン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルジチオメチル)−1,4−ジチアン、2,5−ビス(β−エピチオプロピルチオエチルチオメチル)−1,4−ジチアン等の脂肪族環状骨格を1個有する化合物や、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)シクロヘキシル〕スルフィド等の脂肪族環状骨格を2個有する化合物が挙げられる。
【0014】
芳香族骨格を有するエピスルフィドとしては、1,3または1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ベンゼン、1,3または1,4−ビス(β−エピチオプロピルチオメチル)ベンゼン、1,3または1,4−ビス(β−エピチオプロピルジチオメチル)ベンゼン、等の芳香族骨格を1個有する化合物や、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕メタン、2,2−ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕プロパン、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(β−エピチオプロピルチオ)フェニル〕スルフォン、4,4’−ビス(β−エピチオプロピルチオ)ビフェニル等の芳香族骨格を2個有する化合物が挙げられる。さらには、これらの化合物のβ−エピチオプロピル基の水素の少なくとも1個がメチル基で置換された化合物も具体例となる。
【0015】
第1のレンズ基材を構成するエピスルフィド樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製のMR−174(商品名、屈折率1.74)を好適に用いることができる。第1のレンズ基材を構成するエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂の屈折率は1.70以上が好ましく、1.74以上が好ましく、1.74〜1.78の光学用樹脂とすることができる。
【0016】
また、第2のレンズ基材を構成する光学用樹脂としては特に限定されないが、ジアリルカーボネート系、アクリレート系、ポリチオウレタン系、エピスルフィド系、エピスルフィド化合物とイソシアネート化合物の混合系などの光学用樹脂が挙げられる。高屈折率を維持するためにはポリチオウレタン樹脂又はエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂が好ましく、さらに耐衝撃性を著しく向上し、かつ染色性をも著しく向上させるためには高屈折率を有するポリチオウレタン樹脂を主成分とする光学用樹脂を用いることが最も好ましい。ここで主成分とは、第2のレンズ基材を構成する光学用樹脂の、例えばポリチオウレタン樹脂の含有割合が50%以上であることを意味し、好ましくは90%以上であり、100%であってもよい。
【0017】
第2のレンズ基材を構成するエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂については上記の第1のレンズ基材を構成するエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂と同様の樹脂を用いることができる。第2のレンズ基材を構成するポリチオウレタン樹脂としては、例えば、三井化学株式会社製のMR−7(商品名、屈折率1.67)またはMR−8(商品名、屈折率1.60)を挙げることができる。第2のレンズ基材を構成する光学用樹脂の屈折率は1.60以上が好ましく、1.67以上が好ましく、1.67〜1.70の光学用樹脂とすることができる。
【0018】
基材フィルム16を構成する樹脂としては、良好な透明性を有し、かつ一般的に耐衝撃性が良好であると認識されている樹脂であれば特に限定されないが、具体的にはポリカーボネート、ポリ(チオ)ウレタン、PET、ポリビニルアルコール、ポリアリレン等が挙げられ、好ましくはポリカーボネート、PET、ポリビニルアルコールであり、さらに好ましくはポリカーボネートである。
【0019】
基材フィルム16の厚さとしては、80〜650μmであることが好ましく、120〜550μmであることがより好ましく、180〜450μmであることが特に好ましい。基材フィルム16及びその両面に設けられた接着層14、15を合わせた熱可塑性フィルム12の厚さは、100〜700μmであることが好ましく、150〜600μmであることがより好ましく、200〜500μmであることが特に好ましい。基材フィルム16又は熱可塑性フィルム12の厚さを前記下限値よりも厚くすることにより、本発明の高屈折率プラスチックレンズを強靭性に優れたものにすることができる。また、熱可塑性フィルム12の厚さを上限値よりも薄くすることにより、本発明の高屈折率プラスチックレンズの屈折率を高くすることができ、レンズを薄く設計することができる。基材フィルム16をポリカーボネート製とすることにより、前記厚さのフィルムを好適に採用することができる。
【0020】
基材フィルム16及び熱可塑性フィルム12としては、平板状のフィルムを用いることもできるが、プラノレンズ状のフィルムを用いることがより好ましい。熱可塑性フィルム12の曲率をレンズ凸面の曲率に近づけることにより、レンズ凸面側の例えば第2のレンズ基材13を薄くすることができ、その結果、高屈折率プラスチックレンズ1を薄く設計することができる。セミフィニッシュレンズのレンズ凸面側のレンズ基材をレンズ凹面側のレンズ基材よりも薄くすることにより、セミフィニッシュレンズのレンズ凸面側を研磨加工することなく、レンズ凹面側のみを研磨加工する方式を採用することができる。特に、第2のレンズ基材の屈折率が第1のレンズ基材の屈折率よりも小さい場合には、レンズ凸面側を第2のレンズ基材とし、第2のレンズ基材を第1のレンズ基材よりも薄くすることにより、プラスチックレンズ全体の平均屈折率を高く設計することができる。
【0021】
本発明の高屈折率プラスチックレンズにおいて、基材フィルム16の一方の面には、第1のレンズ基材11との接着性向上のための接着層14が設けられており、基材フィルム16の他方の面には、第2のレンズ基材13との接着性向上のための接着層15が設けられている。接着層14、15の材料としては、第1のレンズ基材11、第2のレンズ基材13と熱可塑性フィルムとの接着性を向上させるものであれば特に限定はされないが、具体的には(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、(チオ)ウレタン系樹脂、及びポリエステル系樹脂が挙げられ、好ましくは(メタ)アクリレート系樹脂、エポキシ系樹脂、(チオ)ウレタン系樹脂である。より好ましくは、(メタ)アクリレート系重合性組成物又はエポキシ系重合性組成物を、活性エネルギー線の照射により硬化させた(メタ)アクリレート系樹脂又はエポキシ系樹脂である。基材フィルム16をポリカーボネート製とした場合、エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材と良好に接着することはできない。基材フィルム16と第1のレンズ基材11との間に接着層14を設けることにより、基材フィルム16と第1のレンズ基材11との間の密着性を良好にすることができ、基材フィルム16と第2のレンズ基材13との間に接着層15を設けることにより、基材フィルム16と第2のレンズ基材13との間の密着性を良好にすることができる。
【0022】
(メタ)アクリレート系重合性組成物としては、活性エネルギー線の照射による硬化性を有することが、硬化時間、安全性、生産性の面から好ましく、活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。(メタ)アクリレート系重合性組成物は(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーが好ましい。この重合性オリゴマーとしては多官能の(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、例えば、ウレタン(メタ) アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーおよびエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーが好ましく、この中でもウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーがさらに好ましい。
【0023】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなウレタン(メタ)アクリレート系オリゴマーは、構造中にウレタン結合と(メタ)アクリル基を有するオリゴマーでポリイソシアネートとポリオールおよびヒドロキシ(メタ)アクリレート等の組み合わせからなるものである。
ポリイソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、トルイジンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート等の芳香族系や、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が一般的であるがこれらに限定されるものではない。ポリオールとしては、多価アルコールにプロピレンオキサイドやエチレンオキサイドを付加したポリエーテル系ポリオールや、アジぺート、ポリカプロラクトン、オリゴカーボネート等のポリエステル系ポリオールが例示される。
ヒドロキシ(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等があげられる。
【0024】
前記ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、多くのものが市販され、容易に入手することができる。これらのウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーとしては、例えば、ビームセット575、ビームセット551B、ビームセット550B、ビームセット505A−6 、ビームセット504H 、ビームセット510、ビームセット502H 、ビームセット575CB、ビームセット102(以上、荒川化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、フォトマー6008、フォトマー6210(以上、サンノプコ株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、NKオリゴU−4HA、NKオリゴU−108A、NKオリゴU−1084A、NKオリゴU−200AX、NKオリゴU−122A、NKオリゴU−340A、NKオリゴU−324A、NKオリゴUA−100、NKオリゴMA−6(以上、新中村化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)ロニックスM−1100、アロニックスM−1200、アロニックスM−1210、アロニックスM−1310、アロニックスM−1600、アロニックスM−1960(以上、東亞合成株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、AH−600、AT−606、UA−306H(以上、共栄社化学株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、カヤラッドUX−2201、カヤラッドUX−2301、カヤラッドUX−3204、カヤラッドUX−3301、カヤラッドUX−4101、カヤラッドUX−6101、カヤラッドUX−7101、カヤラッドUX−4101(以上、日本化薬株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、紫光UV−1700B、紫光UV−3000B、紫光UV−3300B、紫光UV−3520TL、紫光UV−3510TL紫光UV−6100B、紫光UV−6300B、紫光UV−7000B、紫光UV−7210B、紫光UV−7550B、紫光UV−2000B、紫光UV−2250TL、紫光UV−2010B、紫光UV−2580B、紫光UV−2700B(以上、日本合成化学工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、アートレジンUN−9000PEP、アートレジンUN−9200A、アートレジンUN−9000H、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−5200、アートレジンUN−2111A、アートレジンUN−330、アートレジンUN−3320HA、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−3320HC、アートレジンUN−3320HSアートレジンUN−6060P(以上、根上工業株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、LaromerUA19T、LaromerLR8949、LaromerLR8987、LaromerLR8983(以上、BASF社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、ダイヤビームUK6053、ダイヤビームUK6055、ダイヤビームUK6039、ダイヤビームUK6038、ダイヤビームUK6501、ダイヤビームUK6074、ダイヤビームUK6097(以上、三菱レイヨン株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl254、Ebecryl264、Ebecryl265、Ebecryl1259、Ebecryl4866、Ebecryl1290K、Ebecryl5129、Ebecryl4833、Ebecryl2220(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製ウレタン(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)などをあげることができる。これらのウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーは耐溶剤性や透明シートとの密着性、重合性組成物との密着性の点から多官能のウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーであることが好ましい。これらの多官能のウレタン(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、NKオリゴU−4HAおよびEbecry1264が好ましい。
【0025】
前記ポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなポリエステル(メタ)アクリレート系オリゴマーは、多塩基酸と、多価アルコールと、(メタ)アクリル酸との脱水縮合反応によって合成されるものであり、例えば、アロニックスM−6100、アロニックスM−7100、アロニックスM−8030、アロニックスM−860、アロニックスM−8530、アロニックスM−8050(以上、東亞合成株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、LaromerPE44F、LaromerLR8907、LaromerPE55F、LaromerPE46T、LaromerLR8800(以上、BASF社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl80、Ebecryl657、Ebecryl800、Ebecryl450、Ebecryl1830、Ebecryl584(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、フォトマーRCC13−429、フォトマー5018(以上、サンノプコ株式会社製ポリエステル(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)等があげられる。これらのポリエステル(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、Ebecryl80が好ましい。
【0026】
前記エポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーとしては、特に限定はなく様々なエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーを用いることができる。このようなエポキシ(メタ)アクリレート系オリゴマーは、エポキシ系オリゴマーに(メタ)アクリル酸を付加させた構造のもので、ビスフェノールA−エピクロルヒドリン型、変性ビスフェノールA型、アミン変性型、フェノールノボラック−エピクロルヒドリン型、脂肪族型、脂環型等がある。例えば、LaromerLR8986、LaromerLR8713、LaromerEA81(以上、BASF社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、NKオリゴEA−6310、NKオリゴEA−1020、NKオリゴEMA−1020、NKオリゴEA−6320、NKオリゴEA−7440、NKオリゴEA−6340(以上、新中村化学工業株式会社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)、Ebecryl3700、Ebecryl3200、Ebecryl600(以上、ダイセル・ユー・シー・ビー株式会社製エポキシ(メタ)アクリレート系のオリゴマーの商品名)等があげられる。これらのエポキシ(メタ)アクリレート系重合性オリゴマーの中でも、NKオリゴEA−1020が好ましい。
【0027】
前記(メタ)アクリレート系重合性モノマーとしては、特に限定はなく様々な(メタ)アクリレート系重合性モノマーを用いることができる。このような(メタ)アクリレート系重合性モノマーとしては、炭素数2 から20の脂肪族アルコール、ジオールおよび多価アルコールのモノ、ジおよびポリ(メタ)アクリレート化合物や、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールで分岐された脂肪族エーテル結合、エステル結合、カーボネート結合を含む炭素数30以下である末端ヒドロキシ化合物のポリ(メタ)アクリレート体や、それらの骨格中に脂環式化合物や芳香族化合物を有する化合物等が挙げることができる。
具体的には、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、ブタンジオールモノアクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、シクロペンテニル(メタ)アクリレート、シクロペンタニル(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール(メタ)アクリレート、イソボニル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、シクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、イソボニルジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールA ジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等を挙げることができる。これらのアクリレート系重合性モノマーの中でも、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、PO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートが好ましい。
前記(メタ)アクリレート系重合性組成物に含まれる(メタ)アクリレート系重合性化合物としては、単一の(メタ)アクリレート系重合性化合物を用いることもでき、また、2種以上の(メタ)アクリレート系重合性化合物を組み合わせて用いることもできる。
【0028】
以上のような様々な(メタ)アクリレート系重合性組成物は、(メタ)アクリレート系の重合性オリゴマーと重合性モノマー混合物として用いることもできる。
【0029】
エポキシ系重合性組成物としては、活性エネルギー線の照射による硬化性を有することが、硬化時間、安全性、生産性の面から好ましく、活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。エポキシ系重合性組成物についてはその主成分としてヒドロキノン、カテコール、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールスルフォン、ビスフェノールエーテル、ビスフェノールスルフィド、ハロゲン化ビスフェノールA、ノボラック樹脂等の多価フェノール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるフェノール系エポキシ化合物;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−または1,4−シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA、ビスフェノールA・エチレンオキサイド付加物、ビスフェノールA・プロピレンオキサイド付加物等の多価アルコール化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるアルコール系エポキシ化合物;アジピン酸、セバチン酸、ドデカンジカルボン酸、ダイマー酸、イソフタル酸、テレフタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘット酸、ナジック酸、マレイン酸、コハク酸、フマール酸、トリメリット酸、ベンゼンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ナフタリンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸等の多価カルボン酸化合物とエピハロヒドリンの縮合により製造されるグリシジルエステル系エポキシ化合物;エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、ビス−(3−アミノプロピル)エーテル、1,2−ビス−(3−アミノプロポキシ)エタン、1,3−ビス−(3−アミノプロポキシ)−2,2’−ジメチルプロパン、1,2−、1,3−または1,4−ビスアミノシクロヘキサン、1,3−または1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,3−または1,4−ビスアミノエチルシクロヘキサン、1,3−または1,4−ビスアミノプロピルシクロヘキサン、水添4,4’−ジアミノジフェニルメタン、イソホロンジアミン、1,4−ビスアミノプロピルピペラジン、m−またはp−フェニレンジアミン、2,4−または2,6−トリレンジアミン、m−またはp−キシリレンジアミン、1,5−または2,6−ナフタレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−(4,4’−ジアミノジフェニル)プロパン等の一級ジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジメチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、N,N’−ジメチル−1,6−ジアミノヘキサン、N,N’−ジメチル−1,7−ジアミノヘプタン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N’−ジエチル−1,2−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,3−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,4−ジアミノブタン、N,N’−ジエチル−1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2−メチルピペラジン、2,5−あるいは2,6−ジメチルピペラジン、ホモピペラジン、1,1−ジ−(4−ピペリジル)−メタン、1,2−ジ−(4−ピペリジル)−エタン、1,3−ジ−(4−ピペリジル)−プロパン、1,4−ジ−(4−ピペリジル)−ブタン等の二級ジアミンとエピハロヒドリンの縮合により製造されるアミン系エポキシ化合物、上述の多価アルコール、フェノール化合物とジイソシアネートおよびグリシドール等から製造されるウレタン系エポキシ化合物等を挙げることができる。
【0030】
本発明の高屈折率プラスチックレンズ1の製造方法は、フィルム用保持部を有する光学レンズ製造用ガスケットに熱可塑性フィルム12を保持させ、前記ガスケットの両端開口部に一対のモールドをはめ込み、前記ガスケットに前記熱可塑性フィルム12を保持させた状態で前記ガスケットと前記熱可塑性フィルム12と前記一対のモールドとが形成する両空間に光学樹脂用重合性組成物を注入し、重合硬化させる。本発明の高屈折率プラスチックレンズ1の製造方法において用いられる光学レンズ製造用ガスケットとしては、フィルム用保持部を有するものであれば限定されないが、例えば、特開2008−93825号公報等に開示された、機能性レンズの製造用ガスケットを用いることができる。
【0031】
本発明の高屈折率プラスチックレンズ1の製造方法において、前記ガスケットと前記熱可塑性フィルム12と前記一対のモールドとが形成する両空間のうち、少なくとも一方の空間に注入する光学樹脂用重合性組成物は、エピスルフィド樹脂を主成分とする光学樹脂用重合性組成物であり、前記熱可塑性フィルム12は基材フィルム16の両面に接着層14、15が設けられている。
【0032】
本発明の高屈折率プラスチックレンズは、必要に応じて、所定の目的形状(例えば、眼鏡用プラスチックレンズ)とした後に又はする前に、片面又は両面にコーティング層を形成して用いることができる。コーティング層としては、プライマー層、ハードコート層、反射防止膜層、防曇コート膜層、汚れ防止膜層等が挙げられる。
【0033】
本明細書では、所定の目的形状を有する光学材料又は汎用的な形状(例えば、セミフィニッシュレンズ)の光学基材を「基板」ということがある。基板上に後述するハードコート層を形成する場合は、必要に応じて、基板とハードコート層の間にプライマー層を形成することも可能である。プライマー層を形成することにより、その上に形成するハードコート層と基板との密着性を向上させることが可能であり、また耐衝撃性を向上させることも可能である。
【0034】
プライマー層を形成するには、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂、メラニン系樹脂、ポリビニルアセタールを主成分とするプライマー組成物などが使用される。上記プライマー組成物は、さらに塗布性の改善を目的とした各種レベリング剤あるいは耐候性の向上を目的とした紫外線吸収剤や酸化防止剤、さらに染料や顔料、フォトクロミック染料やフォトクロミック顔料その他、膜性能を高めたり機能を付加したりするための公知の添加剤を併用することができる。
【0035】
上記プライマー組成物を基板へ塗布又は固化させることによりプライマー層を形成することができる。塗布方法は、スピンコート法、ディッピング法など公知の方法を用いることができる。CVD法や真空蒸着法などの乾式法で形成することも可能である。基板の表面は、必要に応じて、アルカリ処理、プラズマ処理、紫外線処理などの前処理を行っておくこともできる。プライマー層の硬化後の膜厚は、0.1〜10μmであり、好ましくは0.2〜3μmである。プライマー層の膜厚が0.1μm未満であると耐衝撃性の改善が十分でなく、また10μmを超えると耐衝撃性の点では問題がないが、耐熱性と面精度が低下する。
【0036】
ハードコート層は、基板表面に耐摩耗性、耐湿性、耐温水性、耐熱性、耐候性等を付与するために、有機ケイ素系化合物等に酸化チタン、酸化ジルコニウム等の高屈折率の無機酸化物微粒子等を加えてなるハードコート液を塗布し、硬化させて形成する。
【0037】
また、染色可能なハードコート層を使用することにより光学材料を着色することもできる。基板の表面にハードコート層を形成後に、分散染料、昇華性染料、反応性染料、塩基性染料、酸性染料等をハードコート層に浸漬させ、ハードコート層の表面近傍あるいはハードコート全体を着色する。あるいは、あらかじめハードコート液に染料を分散させ、ハードコート液を塗布し、硬化させ、着色されたハードコート層を基板表面に形成する。
【0038】
さらに、光照射により青色に着色するフォトクロミック性能を有するハードコート層を形成することもできる。フォトクロミック性能としては、青色へのフォトクロミック性能を発現するものであれば特に限定されないが、ハードコート層へ青色へのフォトクロミック化合物を含有させる方法により形成できる。この青色へのフォトクロミック化合物としては、酸化チタン粒子及び/又は酸化チタン含有複合粒子等が具体例として挙げられ、比較的膜厚を厚く出来るハードコート層として光学材料表面に形成することが望ましい。なお、フォトクロミック性能の付与は、ハードコート層以外の層でも可能である。
【0039】
ハードコート層は、ハードコート液を基板上に塗布後、硬化して形成するが、硬化方法としては、熱硬化方法、触媒による効果方法、エネルギー線照射による硬化方法等が挙げられる。ハードコート層の硬化膜の厚さは、一般に、乾燥後で0.3〜30μmが好ましくしく、また、得られた硬化膜の屈折率は、本発明の高屈折率プラスチックレンズの屈折率が1.7以上を有することから、それに適応し、光学材料の屈折率との差が、±0.1の範囲にあるようにするのが好ましい。
【0040】
さらに必要に応じて、ハードコート層の上にSiO、TiO等の無機酸化物からなる単層又は多層の反射防止膜層を形成することができる。多層膜反射防止膜とすることが好ましく、その場合、低屈折率膜と高屈折率膜とを交互に積層する。高屈折率膜としては、ZnO、TiO、CeO、Sb、SnO、ZrO、ZrO、Ta等の膜があり、低屈折率膜としては、SiO膜等が挙げられる。反射防止膜層は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、イオンビームアシスト法、CVD法などの乾式法を用いて形成することができる。
【0041】
反射防止膜層の上には、必要に応じて防曇コート膜層又は汚れ防止膜層を形成させることが可能である。
【0042】
本発明の高屈折率プラスチックレンズは、高屈折率を有することに加えて耐衝撃性に優れるので、プラスチックレンズ、フィルター等の光学材料に用いることができ、特に眼鏡用プラスチックレンズとして好適に用いることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0044】
(実施例1〜2)
1.両面に接着層を有する熱可塑性フィルムの製造
厚み0.3mmのポリカーボネートフィルムの両面に1,9−ノナンジオールアクリレート(大阪有機化学(株)製、ビスコート#215)60重量部、ウレタンアクリレートオリゴマー(新中村化学工業(株)製、U−4HA)37重量部、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン(チバ・スペシャリティ−・ケミカルズ社製、ダロキュア1173)3重量部の混合物をバーコーター#24を用いて均一に塗布し、その上から厚さ40μmのポリエチレンフィルムをかぶせ2500mJ/cmの紫外線で均一に硬化させ、アクリレート系接着層を両面に形成した厚み0.3mmの熱可塑性フィルムを得た。接着層の厚みは片面約20μm、両面で40μmであり、接着層を含めた熱可塑性フィルムの厚みは0.34mmであった。次にこの両面接着層付き熱可塑性フィルムを曲率半径300mmの半球状金型で200℃、10分間曲げ加工を行い、円形状の打ち抜き機で打ち抜き、曲率半径約260mmのプラノレンズ状ポリカーボネートフィルムとした。
【0045】
2.プラノレンズ状ポリカーボネートフィルムの挟み込み
1.で製造したプラノレンズ状ポリカーボネートフィルムのポリエチレンフィルムを慎重に剥離させ、度数(近視)S−1.50の眼鏡レンズ製造用硝子母型の間に、プラスチックレンズ中心部分でレンズ凸面からフィルムまでの距離が0.4mmになるようにフィルムをセットし、プラスチックレンズのトータルの厚みを1.15mmになるようにテープ型組機(タカラ社製テープ型組機)で母型端面をシールした。
【0046】
3.熱可塑性フィルム挿入高屈折率プラスチックレンズの製造
表1に示されるような光学用樹脂組成物の組合せで、2.の型組母型に光学用樹脂の重合性組成物を供給し、加熱重合後、両側の母型をはずして度数(近視)S−1.50の眼鏡用レンズ(高屈折率プラスチックレンズ)を得た。
【0047】
4.評価方法
3.で得られた度数(近視)S−1.50の眼鏡用レンズ(高屈折率プラスチックレンズ)を用いて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
(1)レンズ中心部分での各層の実際の厚み及びトータル厚み測定
幾何中心を通るようにレンズをダイヤモンドカッターで切断し、断面を鏡面研磨して光学顕微鏡を用いて各層の実際の厚みを測定した。またトータル厚みはレンズ厚み計を用いて測定した。
(2)FDA4倍テスト
レンズ凸面側の中心に高さ1.27mから64.8gの鋼球を自然落下させてその時のレンズ破損状態を観察した。
(3)ツーポイント加工テスト(穴あけテスト)
レンズにドリル加工機で直径2mmの穴を空け、ルーペで穴の壁面等にカケ、クラックが発生していないか観察した。
(4)染色性テスト
染料を分散剤、染色助剤と共に水に溶解させたレンズ染色用水溶液を90℃に加熱したものにレンズを5分間浸漬し、染色濃度(%)を測定した。
(5)外観評価(レンズ黄味、透明性)
レンズの黄味、透明性を目視で評価した。
【0048】
【表1】

【0049】
(比較例1)
熱可塑性フィルムを使用せずに表1のような光学用樹脂の組合せで、特開2008−132783号公報に開示されたと同様に、度数(近視)S−1.50の眼鏡用レンズを成形した。上記実施例に記載の項目について評価を行い、結果を表1に示した。
【0050】
(比較例2)
熱可塑性フィルムを使用せずにエピスルフィド樹脂組成物のみで度数(近視)S−1.50の眼鏡用レンズを成形した。上記実施例に記載の項目について評価を行い、結果を表1に示した。
【0051】
比較例1、2のプラスチックレンズではいずれもFDA4倍テストで良好な結果が得られず、比較例2のプラスチックレンズではツーポイント加工テストでも微細なカケが観察されたのに対して、実施例1、2の高屈折率プラスチックレンズは、FDA4倍テストの結果でレンズに変化はなく、ツーポイント加工テストも良好な結果であり、優れた耐衝撃性を有し、かつ密着性も良好であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の高屈折率プラスチックレンズの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1…高屈折率プラスチックレンズ、11…第1のレンズ基材、12…熱可塑性フィルム、13…第2のレンズ基材、14、15…接着層、16…基材フィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる第1のレンズ基材、基材フィルムの両面に接着層を有する熱可塑性フィルム、及び第2のレンズ基材が、この順に接合されていることを特徴とする高屈折率プラスチックレンズ。
【請求項2】
前記基材フィルム及びその両面に設けられた接着層を合わせた熱可塑性フィルムの厚さが100〜700μmである請求項1記載の高屈折率プラスチックレンズ。
【請求項3】
前記基材フィルムがポリカーボネート樹脂からなる請求項1又は2記載の高屈折率プラスチックレンズ。
【請求項4】
前記第2のレンズ基材がエピスルフィド樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる請求項1〜3のいずれか一項記載の高屈折率プラスチックレンズ。
【請求項5】
前記第2のレンズ基材がポリチオウレタン樹脂を主成分とする光学用樹脂からなる請求項1〜3のいずれか一項記載の高屈折率プラスチックレンズ。
【請求項6】
フィルム用保持部を有する光学レンズ製造用ガスケットに熱可塑性フィルムを保持させ、前記ガスケットの両端開口部に一対のモールドをはめ込み、前記ガスケットに前記熱可塑性フィルムを保持させた状態で前記ガスケットと前記熱可塑性フィルムと前記一対のモールドとが形成する両空間に光学樹脂用重合性組成物を注入し、重合硬化させるプラスチックレンズの製造方法であって、
前記ガスケットと前記熱可塑性フィルムと前記一対のモールドとが形成する両空間のうち、少なくとも一方の空間に注入する光学樹脂用重合性組成物は、エピスルフィド化合物を主成分とする光学樹脂用重合性組成物であり、前記熱可塑性フィルムは基材フィルムの両面に接着層が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項記載の高屈折率プラスチックレンズの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−66648(P2010−66648A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234420(P2008−234420)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(300035870)株式会社ニコン・エシロール (51)
【Fターム(参考)】