説明

高屈折率付与剤、樹脂組成物、及びその硬化物

【課題】高屈折率で尚且つ低粘度のエポキシ化合物、当該エポキシ化合物を含む樹脂組成物及びその硬化物の提供。
【解決手段】下記式(1)


で表されるエポキシ化合物。該エポキシ化合物及び硬化剤、硬化触媒又はシアン酸塩を含むエポキシ樹脂組成物。該エポキシ樹脂組成物の硬化物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂組成物に添加することで高屈折率を付与する化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光記録媒体、光学レンズ、光学素子、光導波路等の光学製品においても、その基材、接着材料、保護材料、もしくは封止材料として、フェノール系、エポキシ系あるいはアクリル系などの樹脂組成物が使用されている(例えば、特許文献1〜5参照)。このような用途にはポリスチレンなどのビニル系の共重合体やポリメチルメタクリレートなどが用いられているが、耐熱性の求められる分野においては信頼性の面で不安があった。一方で、エポキシ樹脂硬化物は耐熱性、吸湿性などの信頼性は高いものの、その屈折率は1.5前後であり、このような分野に求められる屈折率としては不十分であった。
【0003】
【特許文献1】特開平10−130601号公報
【特許文献2】特開2000−281725号公報
【特許文献3】特開2003−26763号公報
【特許文献4】特開2001−123045号公報
【特許文献5】特開平6−273631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、樹脂の屈折率を高めるためには、屈折率の高い透明酸化物微粒子を樹脂に混合するという方法が採られている。しかしながらこの方法では、屈折率を高めるためには微粒子の量を増やさねばならず、結果として樹脂の粘度が高くなり、成型性や機械強度などの面で問題となるため、この方法で屈折率を高めるには限界があった。
【0005】
本発明は、高屈折率で尚且つ低粘度のエポキシ化合物、該エポキシ化合物を含む樹脂組成物及びその硬化物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明は
(1)下記式(1)
【0007】
【化1】

で表されるエポキシ化合物、
(2)前項(1)記載のエポキシ化合物及び硬化剤、硬化触媒又はシアン酸塩を含むエポキシ樹脂組成物、
(3)前項(2)記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物、
(4)下記式(2)
【0008】
【化2】

【0009】
で表されるフェニルフェノールとエピハロヒドリンとをアルカリ金属存在下で反応させることにより得られる下記式(3)
【0010】
【化3】

【0011】
で表されるエポキシ化合物と、前記式(2)で表されるフェニルフェノールとを付加反応させて得られる下記式(4)
【0012】
【化4】

【0013】
で表される化合物中のアルコール性水酸基を、エピハロヒドリンとアルカリ金属存在下で反応させることを特徴とする前項(1)記載の式(1)で表されるエポキシ化合物の製造法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明のエポキシ樹脂は屈折率が高く、しかも低粘度であるため、高輝度光半導体封止用組成物の原料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明におけるエポキシ化合物は、下記式(2)
【0016】
【化5】

【0017】
で表されるフェニルフェノールとエピハロヒドリンとをアルカリ金属存在下で反応させることにより得られる下記式(3)
【0018】
【化6】

【0019】
で表されるエポキシ化合物と、前記式(2)で表されるフェニルフェノールとを付加反応させて得られる下記式(4)
【0020】
【化7】

【0021】
で表される化合物中のアルコール性水酸基を、エピハロヒドリンとアルカリ金属存在下で反応させることにより得ることが出来る。
【0022】
本発明に用いる前記式(2)で表されるフェニルフェノールとしては、オルトフェニルフェノール、メタフェニルフェノール、パラフェニルフェノールが挙げられる。前記式(3)で表されるフェニルフェノールのエポキシ化物は公知の方法、即ち、エピハロヒドリン中にフェニルフェノールとアルカリ金属水酸化物を添加してエポキシ化反応を行い、反応終了後、水洗により生成塩を除去して未反応のエピハロヒドリンを加熱減圧下で留去することにより得ることが出来る。
【0023】
エピハロヒドリンとしては、エピクロロヒドリンやエピブロモヒドリンを用いることが出来る。エピハロヒドリンの量はフェニルフェノール1モルに対し通常1〜10モル、好ましくは1.5〜5モルである。
【0024】
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は固体のまま使用しても、或いはその水溶液を使用しても良く、水溶液を使用する場合は連続的に反応系内に添加すると同時に、減圧下または常圧下で水及びエピハロヒドリンを留出させ、分液により水を除去してエピハロヒドリンのみを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量はフェニルフェノール1モルに対して通常1.0〜1.5モルであり、好ましくは1.05〜1.2モルである。反応温度は通常20〜110℃、好ましくは25〜100℃であり、反応時間は通常0.5〜15時間、好ましくは1〜10時間である。
【0025】
エポキシ化反応の際にメタノール、エタノール及びイソプロパノール等のアルコール類やジメチルスルホキシド及びジメチルスルホン等の非プロトン性極性溶媒を添加することは反応を促進させる上で好ましい。アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対して通常2〜50質量%、好ましくは4〜30質量%である。非プロトン性極性溶媒を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対して通常10〜150質量%、好ましくは15〜120質量%である。
【0026】
また、エピハロヒドリンとフェニルフェノールの混合溶液に、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド及びトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩を触媒として添加し、アルカリ金属水酸化物の固体または水溶液を加えて25〜100℃で1〜10時間反応させる方法でもよい。4級アンモニウム塩の使用量はフェニルフェノール1モルに対して通常0.1〜10質量部であり、好ましくは0.2〜8質量部である。
【0027】
このエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下で過剰のエピハロヒドリン及び溶剤などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ樹脂とするために、回収したエポキシ化合物をトルエン、メチルイソブチルケトン等に溶解させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて閉環を確実にすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は、フェニルフェノール中の水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0028】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、加熱減圧下で溶剤を除去することにより前記式(3)で表されるフェニルフェノールのエポキシ化物が得られる。
【0029】
次いで、前述の方法により得られたフェニルフェノールのエポキシ化物とフェニルフェノールとを付加反応させる。この反応に用いるフェニルフェノールとしてはオルトフェニルフェノール、メタフェニルフェノール、パラフェニルフェノールが挙げられる。尚、本発明のエポキシ樹脂の製造方法においては、
(A):フェニルフェノールをエポキシ化する工程
及び
(B):エポキシ化フェニルフェノールとフェニルフェノールとを付加反応させる工程
の2つの工程でフェニルフェノールを使用するが、両工程で使用するフェニルフェノールは同一(例えば(A)、(B)いずれの工程でもオルトフェニルフェノールを使用)でも、異なって(例えば(A)工程でオルトフェニルフェノールを使用し、(B)工程ではパラフェニルフェノールを使用)も良い。
【0030】
付加反応においては、フェニルフェノールの1水酸基当量に対してフェニルフェノールのエポキシ化物1エポキシ当量を使用する。反応は無溶剤下で行ってもよく、反応温度の制御のために溶剤を用いてもよい。溶剤を用いる場合はアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、トルエン及びキシレン等が挙げられる。溶剤の使用量はフェニルフェノールとフェニルフェノールのエポキシ化物の合計質量に対して通常10〜200質量%であり、好ましくは20〜150質量%である。
【0031】
付加反応において、触媒を用いることは反応を速やかに進行させる上で好ましい。用い得る触媒としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド及びトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩や、トリフェニルメタン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。4級アンモニウム塩を用いた場合、次工程のアルコール性水酸基のエポキシ化触媒としても使用できるので特に好ましい。触媒の使用量はフェニルフェノールのエポキシ化物1エポキシ当量に対して0.005〜1質量%が好ましく、更に好ましくは0.01〜0.5質量%である。
【0032】
反応温度は通常60〜180℃であり、80〜160℃が好ましい。反応時間は通常0.5〜10時間であり、好ましくは1〜8時間である。反応の進行状況はGPC(ゲルパーミエイションクロマトグラフィー)等を用いて追跡することが出来る。
【0033】
次いで、付加反応により得られた前記式(4)で表される化合物中のアルコール性水酸基をアルカリ金属水酸化物の存在下でエピハロヒドリンと反応させる。エピハロヒドリンとしてはエピクロロヒドリンやエピブロモヒドリンを用いることが出来る。エピハロヒドリンの量は前記式(4)で表される化合物のアルコール性水酸基1モルに対し通常2〜20モル、好ましくは3〜15モルである。
【0034】
アルカリ金属水酸化物としては水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等が挙げられる。アルカリ金属水酸化物は固体のまま使用しても、あるいはその水溶液を使用しても良く、水溶液を使用する場合は連続的に反応系内に添加すると同時に、減圧下または常圧下で水及びエピハロヒドリンを留出させ、分液により水は除去してからエピハロヒドリンを反応系内に連続的に戻す方法でもよい。アルカリ金属水酸化物の使用量は前記式(4)で表される化合物のアルコール性水酸基1モルに対して通常1.0〜3モルであり、好ましくは1.2〜2.5モルである。反応温度は通常20〜80℃であり、好ましくは25〜70℃である。反応時間は通常1〜20時間であり、好ましくは1.5〜15時間である。
【0035】
エポキシ化反応を促進させる上で触媒を用いることは好ましい。用い得る触媒としてはテトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラエチルアンモニウムブロマイド及びトリメチルベンジルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩が好ましい。4級アンモニウムの使用量は前記式(4)で表される化合物中のアルコール性水酸基1モルに対して通常0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜8質量部である。
【0036】
上記のエポキシ化反応の反応物を水洗後、加熱減圧下で過剰のエピハロヒドリン及び溶剤などを除去する。また更に加水分解性ハロゲンの少ないエポキシ化合物とするために、回収したエポキシ樹脂をトルエン、メチルイソブチルケトンなどに溶解させ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の水溶液を加えて閉環を確実にすることも出来る。この場合、アルカリ金属水酸化物の使用量は前記式(4)で表される化合物中のアルコール性水酸基1モルに対して通常0.01〜0.3モル、好ましくは0.05〜0.2モルである。反応温度は通常50〜120℃、反応時間は通常0.5〜2時間である。
【0037】
反応終了後、生成した塩を濾過、水洗などにより除去し、加熱減圧下で溶剤を除去することにより前記式(1)で表される本発明のエポキシ化合物が得られる。
【0038】
本発明の製造法により得られるエポキシ化合物は、硬化剤、硬化触媒、シアン酸塩などと組み合わせることにより、硬化性樹脂組成物として使用することが出来る。具体的な用途例としては、光半導体用封止材、プリント配線基板、ソルダーレジストなど、従来エポキシ樹脂が用いられるいずれの用途でも使用できるが、本発明のエポキシ化合物の硬化物の特徴である高屈折率が要求される光学用途分野で使用することが好ましい。光学用途分野の具体例としては、光記録媒体、光学レンズ、光学素子、光導波路等が挙げられる。
【0039】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について具体的に説明する。
前項(2)又は(3)記載のエポキシ樹脂組成物において、本発明のエポキシ化合物は単独で、または他のエポキシ樹脂と併用して用いることが出来る。併用する場合、全エポキシ樹脂中に占める本発明のエポキシ化合物の割合は通常5〜50質量%であり、好ましくは10〜40質量%である。本発明のエポキシ化合物は1官能であるため、50質量%を越えると硬化が不十分になり、耐熱性、機械物性等などを著しく低下させる。
【0040】
本発明のエポキシ樹脂組成物に併用し得る他のエポキシ樹脂としては、脂環式エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、上記のエポキシ樹脂の芳香環のみを核水添したエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂は単独または2種以上を本発明のエポキシ化合物と併用して用いることができる。
【0041】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えば硬化物の光透過性(透明性)が求められる用途においては、それ自体が透明性を有しているものが好ましく、同時に作業性の面では、常温(25℃)で液状のものが好ましい。具体的には、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ドデシル無水コハク酸、無水メチルナジック酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸とヘキサヒドロ無水フタル酸の混合物、メチルノルボルナン−2,3−ジカルボン酸無水物、無水2,4−ジエチルグルタル酸、フタル酸無水物、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコール無水トリメリット酸無水物、ビフェニルテトラカルボン酸無水物等の芳香族カルボン酸無水物、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等の脂肪族カルボン酸の無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ナジック酸無水物、ヘット酸無水物、ハイミック酸無水物等の脂環式カルボン酸無水物等が挙げられる。
【0042】
更に、光透過性が必要でない用途や、必要な用途においても光透過性の妨げにならない範囲であれば、上記好ましい硬化剤以外の硬化剤を単独で使用したり、好ましい硬化剤と他の硬化剤を組み合わせて使用したりすることが出来る。他の硬化剤としては、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤等エポキシ樹脂の硬化剤として通常用いられているものであれば特に制限はない。
【0043】
フェノール系硬化剤としては例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、4,4’−ビフェニルフェノール、テトラメチルビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールF、ジメチルビスフェノールF、テトラメチルビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチル−4,4’−ビフェノール、ジメチル−4,4’−ビフェニルフェノール、1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−[4−(1,1−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニル]プロパン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリスヒドロキシフェニルメタン、レゾルシノール、ハイドロキノン、ピロガロール、ジイソプロピリデン、テルペン骨格を有するフェノール類、フェノール化ポリブタジエン、フェノール、クレゾール類、エチルフェノール類、ブチルフェノール類、オクチルフェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ナフトール類、テルペンジフェノール類等、及びこれらの各種フェノールを原料とするノボラック樹脂、更にはキシリレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン骨格含有フェノールノボラック樹脂、ビフェニル骨格含有フェノールノボラック樹脂、フルオレン骨格含有フェノールノボラック樹脂、フラン骨格含有フェノールノボラック樹脂等の各種ノボラック樹脂等が挙げられる。
【0044】
アミン系硬化剤としては例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族アミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルフォン、メタキシレンジアミン、芳香族アミンとアルデヒド類との縮合物などの芳香族アミン、ポリアミドアミン等が挙げられる。
【0045】
本発明のエポキシ樹脂組成物における硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して0.7当量に満たない場合、或いは1.2当量を越える場合、いずれも硬化が不完全になり、良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0046】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化剤と併用して硬化促進剤を用いることが出来る。用い得る硬化促進剤は、通常のエポキシ樹脂の硬化促進剤として機能するものであればよく、また、本発明のエポキシ樹脂組成物においては、硬化促進剤を2種以上組み合わせて使用しても差し支えない。硬化促進剤の具体例としては、2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−フェニルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾール−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−ウンデシルイミダゾール−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−エチル,4−メチルイミダゾール−(1’)]エチル−s−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−[2’−メチルイミダゾール−(1’)]エチル−s−トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2−メチルイミダゾールイソシアヌル酸の2:3付加物、2−フェニルイミダゾールイソシアヌル酸付加物、2−フェニル−3,5−ジヒドロキシメチルイミダゾール、2−フェニル−4−ヒドロキシメチル−5−メチルイミダゾール及び1−シアノエチル−2−フェニル−3,5−ジシアノエトキシメチルイミダゾール等の各種イミダゾール類、並びにそれらイミダゾール類とフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレンジカルボン酸、マレイン酸及び蓚酸等の多価カルボン酸との塩類、ジシアンジアミド等のアミド類、1,8−ジアザ−ビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7等のジアザ化合物、及び前記化合物のフェノール類、多価カルボン酸類、テトラフェニルボレートとの塩類、又はホスフィン酸類との塩類、テトラブチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムブロマイド、トリオクチルメチルアンモニウムブロマイド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート等の他のホスフィン類、2,4,6−トリスアミノメチルフェノール等のフェノール類、アミンアダクト、及びこれら硬化促進剤をマイクロカプセルにしたマイクロカプセル型硬化促進剤等が挙げられる。硬化促進剤は、本発明のエポキシ樹脂を含むエポキシ樹脂全体100質量部に対して通常5質量部以下の範囲で使用されるが、経時安定性、及び着色性等の面から3質量部以下の範囲で使用することが好ましい。
【0047】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化触媒としては光重合開始剤や熱重合開始剤等が挙げられるが、これらのうち好ましいのはカチオン重合開始剤であり、その中でも光カチオン重合開始剤が特に好ましい。光カチオン重合開始剤としてはヨードニウム塩、スルホニウム塩、ジアゾニウム塩等のオニウム塩を有するものが挙げられ、これらは単独または2種以上で使用することができる。該光カチオン重合開始剤の使用量は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して、好ましくは、0.01〜50質量部であり、より好ましくは、0.1〜10質量部である。
【0048】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、硬化触媒の働きを促進する目的で重合開始補助剤や光増感剤等を加えることが出来る。
重合開始補助剤の具体例としては、例えば、ベンゾイン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノールプロパン−1−オン、N,N−ジメチルアミノアセトフェノン、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノン、2−アミルアントラキノン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アセトフェノンジメチルケタール、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーズケトン等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。光ラジカル重合開始剤等の重合開始補助剤の使用量は、樹脂成分100質量部に対して30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
【0049】
また、光増感剤の具体例としては、アントラセン、2−イソプロピルチオキサトン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、アクリジンオレンジ、アクリジンイエロー、ホスフィンR、ベンゾフラビン、セトフラビンT、ペリレン、N,N−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、N,N−ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等を挙げることができる。光増感剤の使用量は、エポキシ樹脂成分100質量部に対して30質量部以下、好ましくは10質量部以下である。
これら重合開始補助剤や光増感剤は、2種類以上を併用して用いても構わない。
【0050】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有するシアン酸塩としては、前記フェノール系硬化剤とハロゲン化シアンとを反応させて得られるシアネートエステル化合物等、従来公知のシアネート化合物が挙げられる。シアン酸塩は1種のみで用いても、2種以上を併用で用いても構わない。
本発明のエポキシ樹脂組成物におけるシアン酸塩の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。
【0051】
本発明のエポキシ樹脂組成物には、更に必要に応じてその他の化合物や添加剤等の副資材を含んでいてもよい。その他の副資材としては、例えば各種溶剤、希釈剤、重合性モノマー、重合性オリゴマー、各種熱硬化性樹脂、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、着色顔料、染料、可塑剤、エラストマー、硬化遅延剤、ガラスフリット、微粒子ガラスやシリカ粒子等の無機フィラー、有機フィラー、シランカップリング剤、離型剤等が挙げられる。これら副資材の種類や添加量は具体的用途に合わせて選択すればよく、特に限定されない。
【0052】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、本発明のエポキシ化合物及び硬化剤、硬化触媒又はシアン酸塩と、更に必要により副資材を、押出機、ニーダー、ロール等を用いて均一に混合することにより得られる。得られたエポキシ樹脂組成物に目的や用途毎の処理(加工)を施した後に、エポキシ化合物と硬化剤や硬化触媒との組み合わせに合わせて加熱及び/又は紫外線等の照射を行うことにより本発明のエポキシ樹脂組成物の硬化物が得られる。
【実施例】
【0053】
次に本発明を更に実施例により具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り質量部である。尚、実施例及び比較例に記載の物性値は、以下の方法で測定した。
エポキシ当量:JIS K7236に準拠した方法
屈折率:多波長アッベ屈折計DR−M2(株式会社アタゴ製)を用いて波長1.589 nm(D線)における屈折率を測定
融点: DSC分析
【0054】
実施例1
(前記式(3)で表されるフェニルフェノールのエポキシ化物の合成)
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素パージを施しながら、オルトフェニルフェノール200部、エピクロロヒドリン435部、メタノール32.9部を加えて70℃まで昇温して溶解させた後、液温を維持しながら100分かけてフレーク状水酸化ナトリウム48.5部を加え、更に1時間反応させた。その後水洗を2回行って生成塩や触媒等を除去し、更に過剰の未反応エピクロロヒドリンを加熱減圧下で留去した後、残留物にメチルイソブチルケトン480部を加えて溶解させた。70℃に昇温した後、30%水酸化ナトリウム水溶液11.8部を加え1時間反応させた後、水洗を3回行い、油層から加熱減圧下で溶剤等を留去することにより、式(3)で表されるエポキシ化合物(R−1)248部を得た。
【0055】
(前記式(4)で表される化合物の合成)
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに、窒素パージを施しながら、前述の方法により得られた式(3)で表されるエポキシ化合物(R−1)434部、オルトフェニルフェノール291部、テトラメチルアンモニウムクロライド1.0部を加えて120℃まで昇温して融解させた後、液温を維持しながら5時間反応させ、式(4)で表される化合物(R−2)652部を得た。
【0056】
(前記式(1)で表される本発明のエポキシ化合物の合成)
温度計、冷却管、分留管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら前述の方法により得られた式(4)で表される化合物(R−2)362.5部、エピクロロヒドリン790部、テトラメチルアンモニウムクロライド1.0部を加えて45℃まで昇温して溶解させた後、液温を維持しながら100分かけてフレーク状水酸化ナトリウム55部を加え、更に4時間反応させた。その後水洗を2回行って生成塩や触媒等を除去し、更に過剰の未反応エピクロロヒドリンを加熱減圧下で留去した後、残留物にメチルイソブチルケトン600部を加えて溶解させた。70℃に昇温した後、30%水酸化ナトリウム水溶液20部、メタノール15部を加え1時間反応させた後、水洗を3回行い、油層から加熱減圧下で溶剤等を留去することにより、常温(25℃)で粘性固体の本発明のエポキシ化合物(E−1)を得た。得られたエポキシ化合物(E−1)のエポキシ当量は431g/eq.、屈折率は1.62であった。
【0057】
実施例2
実施例1で得られた本発明のエポキシ化合物(E−1)30部、ビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名 エピコート828、株式会社JER社製)70部、硬化剤としてトリフェニルホスフィン0.1部をメチルエチルケトン100部に均一に溶解させワニスを調整した。次いで、アプリケーターを用いてPETフィルム上に乾燥後の厚さが200μmになるように均一に塗布し、160℃のオーブン中で2時間乾燥・硬化を行って、フィルム状の硬化物を得た。下記の条件にてこの硬化物の屈折率を測定したところ、1.64という非常に高い値を示した。
【0058】
比較例1
本発明のエポキシ化合物(E−1)30部をビスフェノールA型エポキシ化合物(商品名 エピコート828、株式会社JER社製)30部に変更した(即ち、ビスフェノールA型エポキシ化合物のみ100部を使用した)こと以外は実施例2と同じ方法で得られたフィルム状硬化物の屈折率は1.47であった。
【0059】
実施例2と比較例1の結果から、本発明のエポキシ化合物を添加することによって、硬化物の屈折率が大幅に上昇することは明らかである。
【0060】
実施例3
オルトフェニルフェノールをパラフェニルフェノールに変更したこと以外は実施例1と同じ方法によって、黄白色結晶の本発明のエポキシ化合物(E−2)を得た。得られたエポキシ化合物(E−2)のエポキシ当量は416g/eq.、融点は48.3℃、屈折率は1.61であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

で表されるエポキシ化合物。
【請求項2】
請求項1記載のエポキシ化合物及び硬化剤、硬化触媒又はシアン酸塩を含むエポキシ樹脂組成物。
【請求項3】
請求項2記載のエポキシ樹脂組成物の硬化物。
【請求項4】
下記式(2)
【化2】

で表されるフェニルフェノールとエピハロヒドリンとをアルカリ金属存在下で反応させることにより得られる下記式(3)
【化3】

で表されるエポキシ化合物と、前記式(2)で表されるフェニルフェノールとを付加反応させて得られる下記式(4)
【化4】

で表される化合物中のアルコール性水酸基を、エピハロヒドリンとアルカリ金属存在下で反応させることを特徴とする請求項1記載の式(1)で表されるエポキシ化合物の製造法。

【公開番号】特開2009−256246(P2009−256246A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107683(P2008−107683)
【出願日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)
【Fターム(参考)】