説明

高屈折率膜形成用組成物及びこの組成物を用いた露光方法

【課題】液浸媒体がレンズに接触することなく、液浸媒体がレンズに接触することなく、フォトマスク上にn値及びk値の変化が抑制された高屈折率膜を形成することができる高屈折率膜形成用組成物を提供する。
【解決手段】多環式の炭化水素環構造を有し、この炭化水素環構造上の少なくとも一つの炭素原子が主鎖を構成する構成単位(a1)を有する樹脂(A)と、この樹脂(A)を溶解可能な有機溶剤(S)とを含有する組成物。有機溶剤(S)は、シクロヘキサン構造を有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高屈折率膜形成用組成物及びこの組成物を用いた露光方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リソグラフィーにおけるパターンは、デバイス構造の微細化に伴い、微細化の一途をたどっている。現在では、リソグラフィーにより、線幅が90nm程度の微細なレジストパターンを形成することが可能となっているが、今後はさらに微細なパターン形成が要求されることが考えられる。
【0003】
このような微細なパターンの形成を達成するために、露光装置とそれに対応するレジスト組成物の開発が行なわれてきた。露光装置においては、Fエキシマレーザー、EUV(極端紫外光)、電子線、X線、軟X線等の光源波長の短波長化や、レンズの開口数(NA)の増大等の開発が行なわれてきた。
【0004】
しかしながら、光原波長の短波長化は、新たな露光装置が必要となる。また、高NA化では、解像度と焦点深度幅がトレードオフの関係にあるため、解像度を上げても焦点深度幅が低下してしまうことが問題となっている。
【0005】
このような問題を解決するために、液浸露光法(リキッドイマージョンリソグラフィー)という露光方法が開発されている。液浸露光法とは、露光時に、レンズと基板上のレジスト膜との間に、所定の厚さの純水等の液状の媒体を介在させる方法をいう。この媒体の存在により、レンズの開口数(NA)は、媒体の屈折率を掛けた値となり、同じ露光波長の光源を用いても、より短波長の光源を用いた場合や、高NAレンズを用いた場合と同様に、高解像性が達成されると同時に、焦点深度幅の低下も生じない。
【0006】
このような液浸露光法を用いれば、現存の装置に実装されているレンズを用いて、低コストで、より高解像度で、かつ、焦点深度にも優れるレジストパターンを形成することができる(特許文献1参照)。
【特許文献1】国際公開第2004/068242号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デバイス構造の微細化に伴い、上述した液体の屈折率よりも大きい媒体(例えば屈折率が1.5以上)が必要となってくる。
【0008】
また、純水等の液体を用いた液浸露光法を用いた場合、露光時にレジスト膜が直接、液体(液浸媒体)に接触するので、レジスト膜は液体による侵襲を受けることになる。そのため、レジスト膜に含まれる物質が、液浸媒体中へ溶出する等により、レジスト膜が変質してその性能が低下したり、溶出した物質によって液浸媒体の屈折率を局所的に変化したり、溶出した物質がレンズ表面を汚染したりする等により、リソグラフィー特性に悪影響を与えることが考えられる。すなわち、感度が劣化したり、得られるレジストパターンがT−トップ形状となったり、レジストパターンの表面荒れや膨潤が生じてしまうことがある。
また、高屈折率膜を形成しできたとしても、露光量が増えていくにつれて、k値及びn値が変化してしまうことがある。
【0009】
以上の課題に鑑み、本発明では、液浸媒体がレンズに接触することなく、フォトマスク上にn値およびk値の変化が抑制された高屈折率膜を形成することができる高屈折率膜形成用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、多環式の炭化水素環構造を有し、この炭化水素環構造上の少なくとも一つの炭素原子が主鎖を構成する構成単位を有する樹脂を用いることにより、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の第一の態様は、多環式の炭化水素環構造を有し、この炭化水素環構造上の少なくとも一つの炭素原子が主鎖を構成する構成単位(a1)を有する樹脂(A)と、この樹脂(A)を溶解可能な有機溶剤(S)とを含有する高屈折率膜形成用組成物である。
【0012】
また、本発明の第二の態様は、上記の高屈折率膜形成用組成物を用いて、フォトマスク上に高屈折率膜を形成し、このフォトマスクを介して、レジスト膜を露光する工程を有する露光方法である。
【0013】
ここで、本発明において、「高屈折率」とは、純水の屈折率(1.44)より大きいことをいい、好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは1.6以上をいう。屈折率の上限は特に限定されないが、好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.8以下である。また、「露光」とは、放射線の照射全般を含む概念をいう。また、「n値」とは、屈折率をいい、「k値」とは、消衰係数をいう。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高屈折率膜形成用組成物中の樹脂を、上記の構造を有する樹脂(A)としたことによって、レジスト膜及びレンズに直接接触することなく、フォトマスク上に屈折率の高い高屈折率膜を形成することができる。これによって、露光時の解像度を向上させることが可能となり、微細なパターンを形成することが可能となる。また、レジスト膜及びレンズに直接触れることがないため、上述したレンズの汚染のリスクが少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0016】
本発明に係る高屈折率膜形成用組成物は、樹脂(A)と、この樹脂(A)を溶解可能な有機溶剤(S)と、を含有する。
【0017】
[樹脂(A)]
樹脂(A)は、多環式の炭化水素環構造を有し、この炭化水素環構造上の少なくとも一つの炭素原子は、主鎖を構成する構成単位(a1)を有する。この構造単位を有することにより、樹脂(A)が構成単位(a)を有することにより、高屈折率膜を形成することが可能となる。これは、樹脂の主鎖に多環式の環式基が含まれることにより、樹脂の炭素密度が高くなっているためと推測される。また、このような構成単位としたことにより、レジスト膜やレンズへの汚染リスクを少なくすることが可能となる。
【0018】
「炭化水素環」は、脂肪族炭化水素環であることが好ましい。ここで「脂肪族」とは、芳香族性を持たないことをいう。脂肪族炭化水素環は、露光する光を透過するという観点から、飽和であることが好ましい。また、この炭化水素環の炭素数は、6から20であることが好ましく、炭素数7から12であることがさらに好ましく、炭素数7から10が最も好ましい。
【0019】
炭化水素環の炭素数を、6から20としたことによって、露光する光をよりよく透過し、k値(消衰係数)が良好な高屈折率膜を形成することが可能となる。なお、k値は0に近いほど好ましい。
【0020】
炭化水素環は、置換基を有していても、有していなくてもよい。具体的には、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカン等が挙げられる。具体的には、アダマンタン、ノルボルナン、イソボルナン、トリシクロデカン、テトラシクロドデカン等が挙げられる。置換基としては、炭素数1から6の直鎖、分岐又は環状のアルキル基が挙げられる。
【0021】
また、構成単位(a1)は、例えば、ポリシクロオレフィンから誘導されるもの等を用いることが好ましい。中でも入手が容易であるという点からポリシクロオレフィンから誘導される構成単位を用いることが好ましい。
【0022】
ここで、「ポリシクロオレフィン」とは、多環式の炭化水素環上に1個の二重結合(オレフィン二重結合)を有するものをいい、「ポリシクロオレフィンから誘導される構成単位」とは、オレフィン二重結合が開裂して構成される構成単位を意味する。ポリシクロオレフィンにおける炭化水素環としては、上記と同様のものを使用することが可能である。中でも入手が容易であるという点から、ノルボルナンを用いることが好ましい。
【0023】
本発明において、ポリシクロオレフィンから誘導される構成単位(a)は、置換基を有しているものが好ましい。具体的には、下記一般式(A−1)で表される基本骨格を有することが好ましい。
【化1】

[式中、Rは炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、nは0から3であり、mは0又は1である。]
【0024】
一般式(A−1)で表される構成単位には、m=0である構成単位(ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン(ノルボルネン)から誘導される構成単位)と、m=1である構成単位(テトラシクロ[4.4.0.12.5.1.7.10]−3−ドデセンから誘導される構成単位)が含まれる。
【0025】
置換基のRは、露光する光や熱に対して分解されないような基であれば特に限定されない。置換基の数(nの数)は、0又は1であるが、1であることが好ましい。
【0026】
さらに、置換基の結合位置は、主鎖を構成する炭素原子から最も離れた位置の炭素原子が好ましい。例えばsが0である場合、置換基は、その環骨格(ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプタン(ノルボルナン))の、5位又は6位のどちらかに結合していることが好ましく、sが1である場合、置換基は、その環骨格(テトラシクロ[4.4.0.12.5.1.7.10]−3−ドデカン)の8位又は9位のどちらかに結合していることが好ましい。
【0027】
中でも、k値が良好な高屈折率膜を形成することが可能な組成物を提供するという観点や、レジスト膜の変質やレンズの汚染を防止するという観点から、下記の化学式(A−2)で示される構成単位であることが好ましい。
【化2】

【0028】
樹脂(A)は、構成単位(a)以外の構成単位を有していてもよいが、k値が良好な高屈折率膜を形成することが可能な組成物を提供するという観点から、樹脂(A)中の構成単位(a)の割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10モル%以上であることが好ましく、80モル%から100モル%であることがより好ましく、100モル%であることが最も好ましい。
【0029】
樹脂(A)の製造方法としては、例えば、各構成単位を誘導するモノマーを、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)のような公知のラジカル重合開始剤を用いて重合させる方法が挙げられる。
【0030】
樹脂(A)の質量平均分子量(Mw)(ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算基準)は、特に限定するものではないが、1000から30000であることが好ましく、1000から20000であることがより好ましく、2000から10000であることが最も好ましい。質量平均分子量を30000よりも小さくすることにより、有機溶剤への溶解性が良好となる。また、質量平均分子量を1000よりも大きくすることによりエッチング耐性等が良好となる。また、分子量分布(Mw/Mn)は1.0から5.0が好ましく、1.0から3.5がより好ましい。なお、Mnは数平均分子量を示す。
【0031】
[有機溶剤(S)]
有機溶剤(S)としては、従来公知の有機溶剤から選択して用いることができる。屈折率調整膜は、レジスト膜の上に塗布して用いてもよいため、樹脂(A)を溶解するものであれば特に限定されず、従来レジスト溶剤として用いられているものの中から適宜選択して用いることができる。
【0032】
また、有機溶剤(S)は、樹脂(A)を溶解可能とするために、脂肪族化合物であることが好ましい。脂肪族化合物としては、その構造中に環を含まない鎖式化合物であってもよく、また、その構造中に環を有する環式化合物であってもよく、環式化合物が好ましい。また、環式化合物は、炭化水素であることが好ましく、特に飽和の炭化水素であることが好ましい。このような環式化合物としては、例えば、モノシクロアルカンや、ビシクロアルカン、トリシクロアルカン、テトラシクロアルカン等のポリシクロアルカン、これらの環にアルキル基等の置換基が結合した化合物等が挙げられる。
【0033】
鎖式化合物としては、例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン等が挙げられる。環式化合物としては、例えば、後述する一般式(s−1)で表される有機溶剤(S1)が挙げられる。
【0034】
また、有機溶剤(S)としては、環境に対する影響の小さい有機溶剤を選択することが好ましい。このような有機溶剤としては、出発原料が天然物質である有機溶剤が挙げられる。具体的には、植物の精油成分から得られるテルペン系溶剤(例えば後述するp−メンタン、o−メンタン、m−メンタン等の単環式モノテルペンや、ピナン等の二環式モノテルペンなど)等が挙げられる。
【0035】
<有機溶剤(S1)>
有機溶剤(S)のうち、特に好ましい有機溶剤(S1)としては、下記一般式(s−1)で表される化合物(以下、化合物(s−1)という)が、パターンを形成するレジスト膜と反応せず、本発明の効果に優れること、溶解性に優れていることや、環境に対する影響が少ないという点で好ましい。
【0036】
【化3】

[式中、RからRはそれぞれ独立に水素原子、又は直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であって、RからRのうち、少なくとも2つはアルキル基であり、これらのアルキル基は、シクロヘキサン環における前記アルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。]
【0037】
一般式(s−1)中、RからRのうち、少なくとも2つは直鎖状又は分岐状のアルキル基である。すなわち、化合物(s−1)は、RからRのうち2つが直鎖状又は分岐状のアルキル基であり、且つ他の1つが水素原子であってもよく、RからRがすべて直鎖状又は分岐状のアルキル基であってもよい。本発明においては、RからRのうち2つが直鎖状又は分岐状のアルキル基であることが好ましい。
【0038】
からRの直鎖状又は分岐状のアルキル基としては、炭素数1から5の低級アルキル基が好ましく、炭素数1から3がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等が挙げられる。中でも、メチル基又はイソプロピル基が好ましい。
【0039】
からRのうちの少なくとも2つのアルキル基は、それぞれ、同一でも異なっていてもよい。本発明においては、RからRの少なくとも1つが分岐状のアルキル基であることが好ましく、特に、少なくとも1つがイソプロピル基であることが好ましい。また、化合物(s−1)は、特に、イソプロピル基及びメチル基の両方を有することが好ましい。
【0040】
からRのアルキル基は、シクロヘキサン環におけるアルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。ここで、アルキル基が、「シクロヘキサン環におけるアルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成している」とは、アルキル基から水素原子を1つ除いた基(アルキレン基)によって、シクロヘキサン環上の、アルキル基が結合した炭素原子と、それ以外の炭素原子との間が架橋されていることを意味する。
【0041】
からRの結合位置は、特に限定されないが、少なくとも2つのアルキル基が、それぞれ、シクロヘキサン環の1位と4位(パラ位)、又は1位と3位(メタ位)に結合していることが好ましい。
【0042】
一般式(s−1)で表される化合物として、具体的には、p−メンタン、m−メンタン、o−メンタン、ピナン等が挙げられる。これらの構造を下記に示す。中でも、樹脂(A)を良好に溶解することから、有機溶剤(S1)がp−メンタンであることが好ましい。
【0043】
【化4】

【0044】
これらの有機溶剤(S1)は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。有機溶剤(S)中、有機溶剤(S1)の割合は、50質量%から100質量%の範囲内であることが好ましく、80質量%から100質量%がより好ましく、最も好ましくは100質量%である。
【0045】
本発明においては、有機溶剤(S)は、本発明の効果を損なわない範囲で、有機溶剤(S1)以外の有機溶剤(S2)を含有することもできる。
【0046】
<有機溶剤(S2)>
有機溶剤(S2)としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール;トルエン、ベンゼン、クメン等の芳香族化合物などを挙げることができ、緻密な膜が形成できる点から、クメンが好ましい。有機溶剤(S2)は単独で用いてもよく、2種以上混合して用いてもよい。
【0047】
有機溶剤の使用量は、特に限定されず、塗布することが可能な濃度で、膜厚に応じて適宜調整される。一般的には、固形分濃度が2質量%から20質量%となるような範囲であり、5質量%から15質量%の範囲であることが好ましい。
【0048】
[パターンの形成方法]
本発明に係る高屈折率膜形成用組成物を用いて、フォトマスク上に高屈折率膜を形成し、このフォトマスクを介してレジスト膜を露光してパターンを形成する方法を説明する。
【0049】
まず、フォトマスク上に、本発明に係る高屈折率膜形成用組成物を、例えばスピンナーのように公知の方法を用いて塗布した後、ベーク処理を行い、高屈折率膜を形成して、高屈折率膜を有するフォトマスクを作製する。
【0050】
次いで、例えばシリコンウェーハのような基板上に、公知のレジスト組成物を、上述と同様の方法で塗布し、80℃から150℃の温度条件下で、プレベーク(PAB)を40秒間から120秒間、好ましくは60秒間から90秒間施してレジスト膜を形成する。このレジスト膜に、例えばArF露光装置を用いて、ArFエキシマレーザー光を、上記の高屈折率膜が形成されたフォトマスクを介して選択的に露光する。
【0051】
このとき、露光光は、高屈折率膜を通過して、レジスト膜に到達することになる。また、外気を遮断してk値を安定化させるために、窒素雰囲気下のもとで露光することが好ましい。窒素の流量は、特に限定されるものではないが、k値をより安定化させるために、1L/分から10L/分であることが好ましく、1L/分から5L/分であることがより好ましい。
【0052】
この場合の露光に用いる波長は、特に限定されるものではなく、レジスト膜の特性によって適宜選択される。例えば、ArFエキシマレーザー、KrFエキシマレーザー、Fエキシマレーザー、極紫外線(EUV)、真空紫外線(VUV)、電子線、X線、軟X線等の放射線を用いて行うことができる。本実施形態の場合、露光波長は193nmであることが特に好ましい。
【0053】
次いで、これを80℃から150℃の温度条件下で、露光後加熱(PEB)を40秒間から120秒間、好ましくは60秒間から90秒間施す。
【0054】
最後に、これをアルカリ現像液、例えば0.1質量%から10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液を用いて現像処理することによりパターンを形成する。なお、基板とレジスト組成物の塗布層との間には、有機系又は無機系の反射防止膜を設けることも可能である。
【実施例】
【0055】
<実施例1>
下記の化学式(A−2)で示される構造単位を有するポリ(n−ブチルノルボルナン)(Mw=7800、Mw/Mn=3.21、Tg(ガラス転移点):115℃、水に対する接触角:106°)100質量部を、p−メンタン1300質量部に溶解して高屈折率膜形成用組成物を製造した。これを3枚の8インチシリコンウェーハ上にそれぞれ塗布してホットプレート上で150℃、60秒間加熱することで、200nmの膜を形成した。
【化5】

【0056】
次に、簡易型露光装置(リソテックジャパン株式会社製:商品名VUVES4500)を用いて、窒素流量(4L/min)のもと、ArFエキシマレーザー(193nm)で2枚のシリコンウェーハをそれぞれ1,1000,mJ/cmでオープンフレーム露光(マスクを介さないで露光)した。露光後の2枚シリコンウェーハ及び1枚の未露光のシリコンウェーハを、分光エリプソメーター(Woollam社製)にて、波長193nmにおけるn値、k値の解析を行った。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
これより、本発明に係る高屈折率膜形成用組成物が、露光時にn値及びk値が安定するような高屈折率膜を形成することが可能となることが示された。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
多環式の炭化水素環構造を有し、この炭化水素環構造上の少なくとも一つの炭素原子が主鎖を構成する構成単位(a1)を有する樹脂(A)と、この樹脂(A)を溶解可能な有機溶剤(S)とを含有する高屈折率膜形成用組成物。
【請求項2】
前記構成単位(a1)は、ポリシクロオレフィンから誘導されるものである請求項1に記載の高屈折率膜形成用組成物。
【請求項3】
前記構成単位(a1)は、下記の一般式(A−1)で示される構造を有する請求項1又は2に記載の高屈折率膜形成用組成物。
【化1】

[式中、Rは炭素数1から10の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、nは0から3であり、mは0又は1である。]
【請求項4】
前記樹脂(A)中の構成単位(a1)の割合は、樹脂(A)を構成する全構成単位に対し、10モル%以上である請求項1から3のいずれかに記載の高屈折率膜形成用組成物。
【請求項5】
前記有機溶剤(S)が、下記一般式(S−1)で示される構造を有する有機溶剤(S1)を含む請求項1から4いずれかに記載の高屈折率膜形成用組成物。
【化2】

[式中、RからRはそれぞれ独立に水素原子、又は直鎖状もしくは分枝状のアルキル基であって、RからRのうち、少なくとも2つはアルキル基であり、これらのアルキル基は、シクロヘキサン環における前記アルキル基が結合した炭素原子以外の炭素原子と結合して環を形成していてもよい。]
【請求項6】
請求項1から5いずれかに記載の高屈折率膜形成用組成物を用いて、フォトマスク上に高屈折率膜を形成し、このフォトマスクを介して、レジスト膜を露光する工程を有する露光方法。

【公開番号】特開2007−254680(P2007−254680A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−83892(P2006−83892)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】