説明

高層建造物の雷害対策装置

【課題】雷が発生する前に落雷を予測し、風車ブレードへの落雷の直撃確率を減少させることのできる、新規の風力発電設備の雷害対策装置を提供する。
【解決手段】雷雲の極性を検出する極性検出手段と、風力発電設備の一部を構成する風車ブレードに雷雲と同じ極性の電圧を印加する電圧印加手段と、風車ブレードに印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させる電圧反転手段とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高層建造物の雷害対策装置に関し、特に風力発電設備の雷害対策装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の風力発電機は大型大容量化し、地上高は100m以上にもなる。世界各地で風力発電機ブレードへの落雷の被害についての報告がある。主な被害は風車ブレードの破損、発電機やギアボックスの損傷である。そして、この対策として、風車ブレードで雷を受け止め大地に流す技術の開発や、風車ブレードへの落雷状況の解析や接地の取り方の改善が行われている(例えば、特許文献1を参照。)。
【0003】
従来の雷害対策としては、例えば、避雷針を風力発電装置に設置し、避雷針で雷を受け主柱を通し大地に放電させる方法が知られている。しかし、風車ブレードは避雷針よりも上空に突出するため、ブレードへの落雷が多く発生するという問題があった。また、風車ブレード先端付近にレセプターとして金属製の円形プレートを配置し、レセプターで雷を受け主柱を通し大地に放電させる方法も知られている。しかし、雷の大電流により、ギアボックスや発電機が破壊される虞があった。また、レセプターは雷により溶損するため、交換が必要となるという欠点があった。
【0004】
一般的に雷害対策としては、上記のような落雷時の対策のほか、落雷を予測した対応が有効である。従来、衛星画像等の落雷の光により雷の発生状況を観測し、雷雲の進展速度から各地域の雷予測が行われている。しかし、従来地形や建造物の種類や大きさにより落雷の可能性が異なり、また、雷が発生してからでなければ落雷を予測できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−223148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の問題を解決し、雷が発生する前に落雷を予測し、風車ブレードへの落雷の直撃確率を減少させることのできる、新規の風力発電設備の雷害対策装置を提供することを目的とし、さらには、風力発電設備に限らず、落雷による被害を受けやすい一般の高層建造物の雷害対策装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1記載の高層建造物の雷害対策装置は、雷雲の極性を検出する極性検出手段と、高層建造物の一部を構成する構造体に雷雲と同じ極性の電圧を印加する電圧印加手段と、前記構造体に印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させる電圧反転手段とを備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明の請求項2記載の高層建造物の雷害対策装置は、請求項1において、前記高層建造物は風車ブレード、発電機、風車主柱を備えた風力発電設備であり、前記構造体は風車ブレードであり、この風車ブレードは前記発電機と電気的に絶縁されていることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項3記載の高層建造物の雷害対策装置は、請求項2において、前記極性検出手段は大地表面と前記風車主柱の先端部分との電位差を測定し、前記電圧印加手段はこの電位差が所定の値を超えたときに電圧を印加するように構成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の請求項1記載の高層建造物の雷害対策装置によれば、極性検出手段により雷雲の極性を検出し、電圧印加手段により高層建造物の一部を構成する構造体に雷雲と同じ極性の電圧を印加することにより、構造体への落雷の直撃確率を減少させることができる。また、電圧反転手段により構造体に印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させることにより、帰還雷撃に対応することができる。
【0011】
本発明の請求項2記載の高層建造物の雷害対策装置によれば、風力発電装置の風車ブレードへの落雷の直撃確率を減少させることができる。
【0012】
本発明の請求項3記載の高層建造物の雷害対策装置によれば、大地表面と風車主柱の先端部分との電位差が所定の値を超えたときに電圧を印加することにより、雷が発生する前に落雷を予測し、風車ブレードへの落雷の直撃確率を減少させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高層建造物の雷害対策装置について、以下、風力発電設備の雷害対策装置を例にとって説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、種々の変形実施が可能である。
【実施例1】
【0014】
本実施例の風力発電設備の雷害対策装置は、風力発電装置の風車ブレードに雷雲と同じ極性の電圧を印加することで雷に対してシールド(電界緩和)を行い、風力発電装置への落雷の直撃確率を減少させるための装置である。そして、本実施例の風力発電設備の雷害対策装置は、雷雲の極性を検出する極性検出手段と、風力発電装置の一部を構成する風車ブレードに雷雲と同じ極性の電圧を印加する電圧印加手段と、風車ブレードに印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させる電圧反転手段とを備えている。
【0015】
本実施例の風力発電設備の雷害対策装置が設置される風力発電装置は、風車ブレード、発電機、風車主柱を備えたものである。風車支柱の先端には発電機が設けられ、風を受けた風車ブレードにより生起された回転力が発電機に伝達されて発電を行うようになっている。また、風車ブレードに電圧を印加する必要があるため、風車ブレードと発電機の接続部にセラミックスなどの絶縁材料からなる歯車又はギアが配置されることにより、風車ブレードは発電機と電気的に絶縁されている。
【0016】
極性検出手段は大地表面と風車主柱の先端部分との電位差を測定し、電圧印加手段はこの電位差が所定の値を超えたときに風車ブレードに電圧を印加して、風車ブレードを雷雲と同じ極性に帯電させるように構成されている。風車ブレードへの印加電圧は、電圧が高すぎるとコロナ放電を発生して局所的に放電しやすい状態を形成してしまうため、風車ブレード先端部に直流4〜6kV程度の電位が発生するように印加するのが好ましい。そして、大地表面と風車主柱の先端部分との電位差が所定の値を超えたときに電圧を印加することにより、雷が発生する前に落雷を予測し、風車ブレードへの落雷の直撃確率を減少させることができるようになっている。一方、大地表面と風車主柱の先端部分との電位差が所定の値以下の場合は、電圧は印加されない。なお、極性検出手段、電圧印加手段は従来技術により容易に回路構成が可能である。
【0017】
また、雷放電後、約150msで逆極性の雷放電が発生する現象が知られている。これは、最初の雷放電により雷雲の極性が反転して逆向きの電流が流れる現象であり、この逆極性の雷放電は帰還雷撃と呼ばれる。この帰還雷撃に対応するため、電圧反転手段は、極性検出手段により雷雲の極性が反転したことが検知された場合に、風車ブレードに印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させるように構成されている。すなわち、雷雲の極性が反転した場合に、風車ブレード先端部の電圧の極性が雷放電後100ms以内に反転するようになっている。一方、雷放電後に雷雲の極性が反転しない場合には、電圧反転手段は動作しない。なお、電圧反転手段は従来技術により容易に回路構成が可能である。
【実施例2】
【0018】
風車ブレードの材質は、近年FRP(ガラス繊維強化プラスチック)が使われており、導電性、すなわち電圧伝搬速度が遅くなることが考えられる。そこで、長さ約20cmの木片に3kV程度の電圧を印加する実験を試みた。
【0019】
ネオントランス(AC 0〜15kV)とダイオード、コンデンサからなる整流回路を作り、電圧を調整することで木片の一端に直流約3kVの高電圧を印加した。木片の他方を非接触静電電圧計で観測したところ、約2.5kVの電圧印加を観測した。
【0020】
なお、実際の風車ブレードでは、水分、塩分等が付着しており、特に雷雲発生時は湿潤の可能性が高い。このため、電圧伝搬速度に影響する材質の抵抗率は木片以下になると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
雷雲の極性を検出する極性検出手段と、高層建造物の一部を構成する構造体に雷雲と同じ極性の電圧を印加する電圧印加手段と、前記構造体に印加された電圧の極性を雷放電後100ms以内に反転させる電圧反転手段とを備えたことを特徴とする高層建造物の雷害対策装置。
【請求項2】
前記高層建造物は風車ブレード、発電機、風車主柱を備えた風力発電設備であり、前記構造体は風車ブレードであり、この風車ブレードは前記発電機と電気的に絶縁されていることを特徴とする請求項1記載の高層建造物の雷害対策装置。
【請求項3】
前記極性検出手段は大地表面と前記風車主柱の先端部分との電位差を測定し、前記電圧印加手段はこの電位差が所定の値を超えたときに電圧を印加するように構成されたことを特徴とする請求項2記載の高層建造物の雷害対策装置。

【公開番号】特開2012−164446(P2012−164446A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−22215(P2011−22215)
【出願日】平成23年2月4日(2011.2.4)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【Fターム(参考)】