説明

高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末およびその製造方法

【課題】 酸化安定性に優れた高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末およびその製造方法を提供する。
【解決方法】 高度不飽和脂肪酸含有油脂に対し、フォスファチジルコリン含量55%以上のレシチン、および酵素分解レシチンの2種類を一定の比率で組み合わせて配合し、さらに鎖長が3〜6である大豆ペプチドを一定量添加して乳化し微粒子とした後、基剤を添加して噴霧乾燥法等により乾燥して粉末化することにより、酸化安定性に優れた高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、風味および酸化安定性に優れた高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、高度不飽和脂肪酸を含有する油脂の機能性が着目されている。特にn‐3系高度不飽和脂肪酸であるα‐リノレン酸、ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)を豊富に含む魚油、シソの実油、亜麻仁油等の油脂は、心血管系疾患の予防効果、脳の発達促進作用、記憶学習脳の維持向上作用、痴呆症の改善効果、視覚機能の維持向上作用、精神安定化作用、抗腫瘍作用、抗炎症作用等の様々な生理作用を示すことが報告されている。また、アラキドン酸、γ‐リノレン酸等のn‐6系高度不飽和脂肪酸を含む油脂についても、肝細胞の保護作用、胃潰瘍予防効果、月経困難症改善効果、血中コレステロール値低下作用、アトピー性皮膚炎改善作用等の生理効果を示すことが知られている。
【0003】
しかし、これらの高度不飽和脂肪酸を含有する油脂は一般的に安定性が悪く、きわめて酸化されやすい性質を有するものである。その為、実用に際してはゼラチン等の皮膜で包含されたカプセル型の食品として加工されることが多く、その他の用途への利用はきわめて限られている。
【0004】
一方、種々の食品への利用を目的として、酸化安定性の劣る高度不飽和脂肪酸含有油脂を安定性の良い粉末にする様々な試みがなされている(例えば、特許文献1〜11等)。具体的には、アラビノガラクタンに油脂を吸着して粉末化する方法(特許文献1)、油脂を乳化後、食物繊維を加えて乾燥し粉末化する方法(特許文献2)、油脂にモノグリセリドと抗酸化剤を添加して乳化後、タンパク質、糖質を加えて粉末化する方法(特許文献3)、油脂を乳化後、非水溶性および水溶性の被膜で二重にコーティングする方法(特許文献4)、油脂を多孔質澱粉粒に吸着後、ゼインにてコーティングする方法(特許文献5)、油脂を乳化後、不溶性繊維を粉末化基剤に使用する方法(特許文献6、特許文献7)、粉末油脂の表面をプルラン、ゼラチン等の被膜で保護する方法(特許文献8、特許文献9)、油脂を豆乳にて乳化後、乾燥して粉末化する方法(特許文献10)、油脂を乳化して粉末化する際に乳化物中の溶存酸素を低減化する方法(特許文献11)等が実施されている。しかし、いずれの方法においても、一般的な粉末油脂と比較して酸化安定性が劣る、魚油由来の生臭さが感じられる、粉末化原料由来の臭いを有する、等の何らかの問題点を有しており、このため風味および酸化安定性に優れ、広く一般的に利用可能な高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末が望まれている。
【特許文献1】特開平5‐64544号公報
【特許文献2】特開平5‐137506号公報
【特許文献3】特開平6‐172782号公報
【特許文献4】特開平6‐228589号公報
【特許文献5】特開平6‐240287号公報
【特許文献6】特開平7‐278586号公報
【特許文献7】特開平8‐134493号公報
【特許文献8】特開平9‐87656号公報
【特許文献9】特開平11‐269483号公報
【特許文献10】特許第3177947号明細書
【特許文献11】特開2003‐183691号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記のような従来の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の有する問題点を解決し、安定性が悪くて酸化されやすい魚油等の高度不飽和脂肪酸含有油脂を用いて、風味および安定性に優れ様々な食品に利用可能である高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは高度不飽和脂肪酸含有油脂を安定な粉末にする様々な技術について検討した。その結果、特定の成分組成のレシチン、好ましくは更に特定の鎖長の大豆ペプチドを油脂に対して特定量配合し、乳化して微粒子とした後に粉末化基剤を加えて乾燥することにより上記の課題が解決できることを見出した。即ち、本発明は、フォスファチジルコリン含量55%以上のレシチン、および酵素分解レシチンの2種類のレシチンを100:0〜50:50の比率で混合し、これらの合計量が、重量比で油脂に対して等量以上配合し、好ましくは更に鎖長3〜6の大豆ペプチドを油脂重量の1/10〜1/2量添加し、乳化して微粒子とした後、基剤を添加して乾燥することにより得られる高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、魚油等の一般に安定性が悪いと言われている高度不飽和脂肪酸含有油脂を特定の成分組成の食品用レシチン、好ましくは更に大豆ペプチドを添加して乳化微粒子にすることにより、優れた酸化安定性を付与することができる。また、この乳化溶液に賦形剤(粉末化基剤)を加えて乾燥して粉末化することにより、酸化安定性に優れ、外観、風味が良好な粉末とすることができる。さらに、本発明による高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末は種々の食品に添加可能であり、その食品の外観、風味に影響を与えないため、安定性が悪く食品に直接添加し難いものであった高度不飽和脂肪酸含有油脂を利用しやすくし、その用途を拡大するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明に用いられる高度不飽和脂肪酸含有油脂とは、例えばDHAおよび/またはEPAを含有する魚油、海藻油、α‐リノレン酸を含有するシソ油、エゴマ油、アマニ油、γ‐リノレン酸を含有する月見草油、ボラージ油、その他リノール酸、アラキドン酸やドコサペンタエン酸(DPA)を含有する油脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0009】
本発明に用いるレシチンは、食品用途に用いられる高フォスファチジルコリン(PC)含有レシチンおよび酵素分解レシチンである。上記レシチンは、大豆レシチンであっても、卵黄レシチンであってもよいが、大豆レシチンが好ましい。上記高PC含有大豆レシチンとしては、例えばPC含量35%であるSLP‐PC35、PC含量55%であるSLP‐PC55、およびPC含量70%以上であるSLP‐PC70(いずれも辻製油(株)製)等が知られているが、本発明においてはPC含量が55〜90%であることを要件とするが、好ましくは65〜80%、より好ましくは70%である。上記PC含量が、55%未満では乳化状態が不十分で油脂と水との分離が認められ、90%を超えるとレシチンの工業レベルでの生産が難しく、また、乳化時の粘性が高くなり作業性に劣る。上記酵素分解レシチンとしては、これらに限定されないが、SLP‐ホワイトリゾ、SLP‐ペーストリゾ(いずれも辻製油(株)製)等が挙げられ、本発明においては食品用の酵素分解大豆レシチンであれば同等品も使用可能である。
【0010】
本発明においては、上記レシチンの高度不飽和脂肪酸含有油脂に対する重量比(レシチン/油脂)は、等量(100%)〜300%であることを要件とするが、好ましくは150〜250%、より好ましくは180〜220%である。上記レシチンの高度不飽和脂肪酸含有油脂に対する重量比が100%未満では、乳化状態が不十分であり、目的とする安定な製剤が得られず、300%を超えると製品の品質には問題がないものの、内容油脂の含量が低下し、全体のボリュームが増えて、摂取量が多くなり、食するのが困難となる。
【0011】
更に、本発明においては、上記レシチンは、PC含量55%以上のレシチンと酵素分解レシチンを100:0〜50:50の重量比で含有することを要件とするが、好ましくは90:10〜60:40、より好ましくは80:20〜70:30である。上記PC含量55%以上のレシチンの配合量が50重量%未満では、乳化状態が不十分で油脂と水との分離が認められる。
【0012】
大豆ペプチドは、アミノ酸の鎖長2〜15程度のものが一般に知られているが、本発明に用いる大豆ペプチドは鎖長3〜6を有するものが望ましく、例えばハイニュートR、ハイニュートDC5(いずれも不二製油(株)製)が挙げられるが、同等品も使用可能である。本発明においては、上記の大豆ペプチドの配合量は、油脂重量の1/10〜1/2、好ましくは1/8〜1/3、より好ましくは1/6〜1/4であることが望ましい。上記大豆ペプチドの配合量が、1/10未満では乳化粒子の微粒化が促進されず、1/2を超えると逆に乳化粒子の微粒化促進が妨げられ、酸化安定性に劣る。
【0013】
本発明の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造方法は、
(a)高度不飽和脂肪酸を含有する油脂にレシチンを加えて乳化して、乳化微粒子を含有する乳化溶液を形成する工程、および
(b)該乳化溶液に粉末化基剤を加えて乾燥することにより、高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末を形成する工程
を含むことを特徴とする。
【0014】
上記(a)工程において、乳化は通常用いられる機器、例えばホモジナイザー等で撹拌して行う。更に、この乳化溶液に超音波乳化、膜乳化、高圧乳化などの処理を施して微粒子を形成させる。この際、上記レシチンを用いないと微粒子が形成されず、本発明の目的を達成することができない。更に、前述のような特定の配合量や種類の食品用レシチンを用いることにより、本発明の目的の達成がより容易となる。また、上記レシチンに加えて、上記大豆ペプチドを添加することにより、微粒子の形成が促進され、本発明の目的の達成がより容易となる。尚、上記大豆ペプチドは、上記(a)工程において、上記レシチンと共に添加することが好ましい。
【0015】
本発明の好ましい高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造方法は、
(a)高度不飽和脂肪酸を含有する油脂にレシチンおよび大豆ペプチドを加えて乳化して、乳化微粒子を含有する乳化溶液を形成する工程、および
(b)該乳化溶液に粉末化基剤を加えて乾燥することにより、高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末を形成する工程
を含むことを特徴とする。
【0016】
上記(a)工程において得られる微粒子の乳化粒子径が150〜530nm、好ましくは210〜340nm、より好ましくは210〜250nmであることが望ましい。上記乳化粒子径が150nm未満では工業的に微粒化の達成が困難であり、530nmを超えると酸化安定性に劣る。
【0017】
上記(b)工程において、上記(a)工程で得られた微粒子化された乳化溶液を一般的な方法により粉末化することが可能である。即ち、アラビアガム、デキストリン、カゼイン、プルラン、酵母細胞壁濃縮物等の粉末化基剤を溶解、希釈したのち、これらの溶液を乳化溶液と混合後、凍結乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥等で乾燥することにより目的とする高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末を得ることができる。
【0018】
また、本発明を実施する際に、あらかじめ油脂にコエンザイムQ10、カロテノイド、植物ステロール、トリテルペン、ビタミンA、D、E等の脂溶性機能性成分を溶解することにより、これらの機能性成分の吸収性に優れた高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末を得ることも可能である。
【実施例】
【0019】
以下に本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0020】
(実施例1)
精製魚油(日本化学飼料(株)製、DHA46%、EPA5%含有)5g、大豆レシチン(表1参照)5gを水100mLに加え、撹拌式ホモジナイザーPOLYTRON PT3100(KINEMATICA社製、)を用い5000rpmで10分間撹拌し乳化した。次に、この乳化溶液を超音波粉砕器VP‐15S(タイテック(株)製)にてOUTPUT 7で10分間処理し、乳化粒子を粉砕して微粒子化した。
【0021】
次に、これらの乳化溶液中の乳化粒子がどの程度微粒子化されているかを確認するため、粒径の測定を行った。測定には動的光散乱測定装置DLS‐6000HLC(大塚電子(株)製)を用い、各乳化溶液を0.22μmで濾過した蒸留水に適宜希釈して、12mmφのセルを用いて測定した。
【0022】
その結果、表1に示すように酵素処理レシチンとの組み合わせにおいて、PC含量55%以上のレシチン含量が0〜30%であるNo.3および6の乳化溶液は乳化粒子径が850および1100nmであるのに対し、PC含量55%以上のレシチンを50%(2.5g/5.0g)以上含有するNo.1、2、4、5および7の溶液は乳化粒子径が390〜530nmと小さく、微粒子化されていることが確認された。
【0023】
【表1】

【0024】
(実施例2)
シソの実油(サミット製油(株)製、α‐リノレン酸53%含有)5gに対して、SLP‐PC70とSLP‐ホワイトリゾ(いずれも辻製油(株)製)を重量比で7:3の比率で混合した大豆レシチンを1/10、1/5、1/2、等倍、2倍、および3倍量添加し、水100mLを加えて実施例1と同条件で微粒子化を行った。
【0025】
その結果、表2に示すように大豆レシチン量がシソの実油に対して1/2以下の試作No.8、9、10の溶液においては水層と油層が分離したが、等倍量〜3倍量を添加した試作No.10、11、12の溶液では分離が認められず、安定な乳化溶液が得られた。
【0026】
【表2】

【0027】
(実施例3)
亜麻仁油(サミット製油(株)製、α‐リノレン酸51%含有)5g、SLP‐PC70 2.5g、SLP‐ホワイトリゾ 2.5g(いずれも辻製油(株)製)を水100mLに加え、実施例1と同条件で乳化し微粒子化した。この際、ペプチド鎖長3〜4のハイニュートR、および5〜6のハイニュートDC5(いずれも不二製油(株)製)の2種類の大豆ペプチドを0.5〜2.5g添加して溶液を調製し、微粒子の生成に与える影響を実施例1と同じ方法により乳化粒子径を測定して評価した。
【0028】
その結果、表3に示すように大豆ペプチドを添加しない試作No.14の溶液の乳化粒子径が410nmであるのに対して、いずれの大豆ペプチドについても、亜麻仁油に対し等量(5.0g)添加した試作No.18、22の溶液においては粒径にほとんど変化がなく、微粒子化促進の効果は認められなかった。しかし、亜麻仁油(5.0g)に対して大豆ペプチドを1/10〜1/2量(0.5g〜2.5g)添加した試作No.15、16、17、19、20および21においては、乳化粒子径が210〜340nmとなり、微粒子化が促進されていた。すなわち、鎖長3〜6の大豆ペプチドを特定量添加することにより、乳化粒子の微粒子化をさらに促進する効果が得られることを見出した。
【0029】
【表3】

【0030】
(実施例4)
実施例1の試作No.3、4、6および7、並びに実施例3の試作No.17および19の各溶液を40℃で保存し、酸化に対する安定性をロダン鉄法により評価した。保存した各溶液200μLを分取し、9.6mLの75%エタノールに希釈後、さらに30%チオシアン酸アンモニウム水溶液100μLを添加した。さらに0.02M塩化第二鉄3.5%塩酸溶液100μLを加え、正確に3分後の500nmにおける吸光度を測定した。吸光度の測定は一日に一回として一週間連続して行い、乳化溶液中に含有される油脂の経時的な酸化度合いを評価した。
【0031】
その結果、図1に示すように、酵素処理レシチンとの組み合わせにおいてPC高含有レシチンを50%(2.5g/5.0g)以上含有し、乳化粒子が400〜530nmに微粒子化されている試作No.4および7の溶液においては、乳化粒子径が850〜1100nmである試作No.3および6の溶液と比較して酸化の経時的な上昇が抑制されていた。さらに大豆ペプチドを併用することにより乳化粒子径が210〜310nmまで微粒子化されている試作No.17および19の溶液においては、試作No.4および7の溶液よりもさらに酸化安定性が優れていることが確認された。
【0032】
(実施例5)
上記試作No.3、4、6、7、17および19の溶液を40℃で一週間保存し、劣化臭の発生を確認した。
【0033】
その結果、表4に示すように、PC高含有レシチンの配合量が少なく乳化粒子径が850〜1100nmである試作No.3および6の溶液においては明らかな魚臭が発生していた。しかし、酵素処理レシチンとの組み合わせにおいて、PC高含有レシチンを50%(2.5g/5.0g)以上含有し、乳化粒子径が400〜530nmまで微粒子化されている試作No.4および7の各溶液においては、40℃保存による劣化臭の発生がほとんど認められなかった。さらに大豆ペプチドを併用することにより乳化粒子径が210〜310nmまで微粒子化されている試作No.17および19の溶液においては劣化臭の発生が全く認められなかった。すなわち、乳化粒子が微粒子化されているこれらの乳化溶液の酸化安定性が優れていることが官能面においても確認された。
【0034】
【表4】

【0035】
(実施例6)
精製魚油(日本化学飼料(株)製、DHA46%、EPA5%含有)10g、大豆レシチンSLP‐PC70 5g、SLP‐ホワイトリゾ 5g(いずれも辻製油(株)製)、および大豆ペプチドハイニュートR(不二製油(株)製) 2gを水200mLに加え、撹拌式ホモジナイザーPOLYTRON PT3100(KINEMATICA社製、)を用い8000rpmで10分間撹拌し乳化した。次に、この乳化溶液を超音波粉砕器VP‐15S(タイテック(株)製)にてOUTPUT 9で10分間処理し、乳化粒子を粉砕して微粒子化した。この操作を10回繰り返し、合計2Lの乳化溶液を得た。次に、水2Lに賦形剤(粉末化基剤)であるクラスターデキストリン(江崎グリコ(株)製)200gを溶解し、この溶液を先に調製した乳化溶液と混合後、スプレードライヤーL‐8型(大川原化工機(株)製)を用いて噴霧乾燥を行った。なお、スプレードライヤーの運転条件として、入り口温度140℃、出口温度85℃、アトマイザー回転数30000rpm、サイクロン差圧120mmHO、流量2L/時に設定した。以上の工程により、DHA含有精製魚油粉末290gを得た。
【0036】
このようにして得られた粉末は、食しても魚油特有の生臭さが感じられず、外観、性状も良好で、種々の食品に添加して使用可能である。また、この粉末をスクリューキャップ付きバイアルに入れて40℃で1ヶ月間保存しても、外観の変化や劣化臭の発生は認められず、風味も良好に保たれていた。すなわち、本発明によるDHA含有油脂粉末は酸化安定性がよく、保存性が高いことが明らかとなった。
【0037】
(実施例7)
実施例6で得られたDHA含有精製魚油粉末に対して、表5に示す各種の粉末原材料を混合し、洋風スープ、野菜スープ、および和風スープの3種のスープパウダーを作製した。得られたスープパウダーはいずれも流動性が良好な粉末であり、70℃のお湯150ccを加えた際にも容易に溶解し、優れた分散性を示した。また、いずれのスープを飲用しても魚油由来の生臭さは感じられず、風味は良好であった。
【0038】
さらに、得られた3種のスープをスクリューキャップ付きバイアルに入れて40℃で1ヶ月間保存した。保存後のスープを70℃のお湯150ccに溶解したところ、容易にお湯に溶解し優れた分散性を示した。また、いずれのスープにも魚油由来の生臭さは感じられず、風味は良好であった。以上の結果より、本発明によるDHA含有油脂粉末は種々の食品に添加可能であり、添加した食品の風味を劣化させないことが確認された。
【0039】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の酸化安定性を説明するための、上記油脂粉末に用いる乳化溶液の吸光度の経時変化を示すグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高度不飽和脂肪酸を含有する油脂、レシチンおよび粉末化基剤を含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末であって、該レシチンの該油脂に対する重量比が100〜300%であり、該レシチンが、フォスファチジルコリン含量55〜90%のレシチンおよび酵素分解レシチンを、100:0〜50:50の重量比で含有する高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
【請求項2】
更に鎖長3〜6の大豆ペプチドを油脂重量の1/10〜1/2の量で含有する請求項1記載の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
【請求項3】
前記高度不飽和脂肪酸が、DHAおよび/またはEPAを含有する精製魚油、或いはDHAを含有する微細藻類由来油脂である請求項1または2記載の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末。
【請求項4】
高度不飽和脂肪酸を含有する油脂に、レシチン、或いはレシチンおよび大豆ペプチドを加えて乳化して、乳化微粒子を形成する工程を含む請求項1〜3のいずれか1項記載の高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造方法であって、該乳化微粒子が、粒径150〜530nmを有する高度不飽和脂肪酸含有油脂粉末の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2006−298969(P2006−298969A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−118453(P2005−118453)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(592004998)三基商事株式会社 (12)
【Fターム(参考)】