説明

高架構造物の構築方法

【課題】簡易な工程及び構成で、地上の線路や道路等の使用に支障とならないように低コストかつ迅速に施工可能な高架構造物の構築方法を提供する。
【解決手段】高架橋の構築方法は、鉄道線路38の直上での最初の作業領域となる初期高架橋の施工工程S10と、初期高架橋46に搭載されたクレーン式杭打機20による仮設杭の施工工程S21と、施工された仮設杭50に梁パネル42と覆工板44とを架設する床版の架設工程S22とをクレーン式杭打機20を移動しながら繰り返し、鉄道線路38の直上に高架橋56を延長して構築していく高架橋の延長施工工程S20と、施工された高架橋56上から本設杭34を打設する本設杭の打設工程S30と、本設杭34に本設柱36を建て込んで仮設杭50と受け替える本設柱の受替工程S40と、仮設杭50を撤去する仮設杭の撤去工程S50と、本設床版62を敷設する床版の仕上施工工程S60とから構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高架構造物の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、いわゆる「開かずの踏み切り」対する解決策の一つとして鉄道線路の高架化の要求が高まっている。既設線路から鉄道高架橋へ高架化する施工法には、現況線路の隣に仮線用の用地を確保して線路を切替え、現況敷地に工事スペースを確保した後、高架橋を施工する仮線工法や、鉄道の運行に支障とならない夜間などの時間帯に線路を閉鎖して高架橋を施工する直上高架工法などがある。
【0003】
しかしながら、このような高架橋工法を都市部で実施する場合、仮線工法では用地確保のための用地買収に時間とコストを要し、直上高架工法においても終電から始発までの時間が短いために、現況線路内外への重機や資材の搬出入、段取り替え等の作業可能な時間が制限されて工期に日数を要してしまう。
【0004】
これに対し、従来より、例えば特許文献1及び2に記載されるような鉄道線路の高架橋の施工技術が提案されている。
特許文献1には、路線の両側にプレキャスト柱を建て込み、建て込まれたプレキャスト柱にプレキャスト梁及びプレキャストスラブを架設して高架橋を構築する方法が開示されている。これは、柱、梁、スラブのすべてをプレキャストとして予め製造しておくことで、現場作業を省力化することにより、工期の短縮を図ったものである。
また、特許文献2には、運行線路の両側にレールを敷設し、この運行線路の上部を跨ぐ門型の施工用架台を敷設したレールに走行自在にセットして、この施工用架台を移動させながら高架橋等の構造物を構築する方法が開示されている。これは昼夜を問わず列車の運行を妨げることなく、作業架台を走行しながら作業架台に搭載した各種機械により軌道の立体化工事を可能とするものである。
【0005】
さらに、例えば特許文献3には、既設高架橋の上を作業スペースとして有効利用して、高架橋の延長施工を行う技術も提案されている。
この特許文献3に記載された技術では、柱体間に架設される桟橋パネルが柱体の1支間分の大きさに設計されており、既に架設された既設桟橋パネル上に搭載されたクレーンによって、新たに架設する桟橋パネルを既設桟橋パネルに連結するとともに、既設桟橋パネルに設置された反力ポールにワイヤー等で斜張させながら片持ちさせて仮架設しておき、新たに架設した桟橋パネルの架設方向先端部の柱体連結部に、柱体となる鋼管を挿通して下部地盤に打設し、打設された柱体と新たな桟橋パネルとを柱体連結部で連結して、新たな桟橋パネルを柱体間に本架設し、これら一連の作業を反復することによって高架橋を構築していく。これは、特に、山間部などの桟橋下に森林が植生していたり、斜面となっていたりする場合において、桟橋上から桟橋を延長していく工事が可能となるので、桟橋下の植生伐採や地盤成形等をできるだけ少なくするとともに、工期の短縮を図ったものである。
【特許文献1】特開平11−247109号公報
【特許文献2】特開昭60−30707号公報
【特許文献3】特開平10−46523号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載される高架橋の構築方法では、施工にあたって鉄道線路の鉄道の運行に支障とならないような対策は講じられていない。
【0007】
また、特許文献2に記載される高架橋の構築方法では、施工用架台を設置するまでに、架線の架替や施工用架台用の線路の敷設を行わなければならず、工事が大掛かりなものとなって工期の長期化及び施工コストの増大を招くおそれがある。
【0008】
また、特許文献3に記載される高架橋の構築方法では、この構築方法を鉄道線路の高架橋の構築に適用することで、鉄道の運行に支障とならないように施工することは可能であるが、新たな桟橋パネルを既設桟橋パネルから延長させて架設していく際に、クレーンによって連結位置に移動された新たな桟橋パネルを、一旦、既設桟橋パネルに設置された反力ポールにワイヤー等で斜張させながら片持ちさせて仮架設してする工程が必要となる。このため、反力ポール及びワイヤーの資材等を準備及び調達する必要があるとともに、これら反力ポールにワイヤー等で斜張させながら片持ちさせて仮架設する作業に手間と時間がかかり、施工コストの増大及び工期の長期化を招くおそれもある。
【0009】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、簡易な工程及び構成で、地上の線路や道路等の使用に支障とならないように低コストかつ迅速に施工可能な高架構造物の構築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するため、本発明は高架構造物の構築方法であって、
地盤に打設された杭とその上に架設された床版上に、前記床版から水平方向に離間した位置で前記地盤に杭を打設可能な杭打機と、クレーンとを搭載する第1工程と、
前記架設された床版上に搭載された杭打機を用いて、前記架設された床版から高架構造物の延長方向に離間する前記地盤上の所定の位置に、前記地盤から上方へ突出した部分を柱として機能させるべく杭を打設する第2工程と、
前記クレーンを用いて、前記第2工程で打設された杭に新たな床版を架設する第3工程と、
前記第3工程で架設された床版へ前記杭打機と前記クレーンとを移動させる第4工程とを備え、
前記第2〜4工程を繰り返して前記高架構造物を延長して構築していくことを特徴とする(第1の発明)。
【0011】
本発明による高架構造物の構築方法によれば、一旦、床版上に杭打機とクレーンを搭載すれば、地盤への杭の打設や打設された杭への新たな床版の架設を、全て床版上から実施できるので、搭載後は施工中に床版下の供用線路や道路の使用を妨げることはない。これにより昼夜を問わず高架構造物の架設を行うことができ、工期短縮とともに施工コストの削減を図れる。また、供用線路や道路上に架設された床版上のスペースを作業基地等に利用できることにより供用線路や道路の敷地以外に確保すべき用地を節減でき、工期短縮及び工費の削減に寄与する。
【0012】
また、本発明による高架構造物の構築方法によれば、杭打機によって床版から高架構造物の構築方向の地盤に杭を打設した後、クレーンによってその杭の上に新たな床版を架設する施工順序であることにより、新たな床版を架設する際に、既設床版に反力ポールにワイヤー等を設置して斜張させながら片持ちさせるなどのような工程を要しないので、この工程に必要な資材等の施工コストの節減及び工期短縮が図れる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記杭打機と前記クレーンとを、杭打機能を有する移動式クレーンで兼用することを特徴とする。
【0014】
本発明による高架構造物の構築方法によれば、ブームの先端部に杭打機を有する移動式クレーンを用いることで、杭打機とクレーンとを兼用できるので、床版に搭載する建設機械の総重量を軽減できる。これにより一基の床版の耐積荷重を小さく設定できるので、工事を簡素化できる。また、一台で作業が行えることにより占用面積が減るので床版上のスペースを広く使用できる。
【0015】
第3の発明は、第1又は2の発明において、前記杭は仮設杭であり、前記床版を架設後、前記床版上から本設柱を建て込んで、この本設柱で前記床版を支持するとともに、前記仮設杭を撤去することを特徴とする。
【0016】
第4の発明は、第3の発明において、前記仮設杭として、下端にらせん状の羽又は傾斜した複数の羽を有し、管軸を中心に回転させることにより地盤に貫入又は地盤から抜管可能な鋼管を用いることを特徴とする。
【0017】
本発明による高架構造物の構築方法によれば、上記仮設杭を用いることにより、地盤に打設する際に生じる排土量が少ないので掘削土の処理が省力化できる。また、逆回転させることにより容易に抜管できるので作業効率を向上させることができる。さらに打撃を与えることなく回転を与えるのみで打設を行えるので騒音防止に寄与できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、簡易な工程及び構成で、地上の線路や道路等の使用に支障とならないように低コストかつ迅速に施工可能な高架構造物の構築方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい一実施形態について図面に基づき詳細に説明する。本実施形態は、本発明の高架橋の構築方法を鉄道線路の直上に高架橋を構築することに適用した例である。
【0020】
図1は、本実施形態にかかる高架橋の構築方法の工程フローを示す工程図である。
図1に示すように、本実施形態に係る高架橋の構築方法は、先ず鉄道線路の直上での最初の作業領域となる高架橋(以下、初期高架橋という)の施工工程S10と、初期高架橋に搭載された杭打機能を有する移動式クレーン(以下、クレーン式杭打機という)による仮設杭の施工工程S21と、施工された仮設杭に梁パネルと覆工板とを架設する床版の架設工程S22と、クレーン式杭打機の移動工程S23とを繰り返し、鉄道線路の直上に高架橋を延長して構築していく高架橋の延長施工工程S20と、施工された高架橋上から本設杭を打設する本設杭の打設工程S30と、本設杭に本設柱を建て込んで仮設杭と受け替える本設柱の受替工程S40と、本設柱に受け替えた後に仮設杭を撤去する仮設杭の撤去工程S50と、最後に仕上げとして本設床版を敷設する床版の仕上施工工程S60との各工程から構成される。
【0021】
これらの工程を実施するには、クレーン式杭打機を用いることで実現される。図2は、そのクレーン式杭打機の側面図であり、同図(a)は杭打ち時の状態、(b)は資材等の吊持時の状態を示している。なお、クレーン式杭打機には、例えば、特開昭60−112924号公報に記載されるようなものを用いる。
【0022】
図2(a)に示すように、クレーン式杭打機20は、自走可能な車台22とその上に旋回自在に設置されたクレーン本体24とからなる一般的な移動式クレーンであって、そのブーム26の先端部に杭打機28を備えたものであり、車台22から離間する地点に杭30を打設することができるようになっている。
【0023】
杭打機28は、例えば、杭30を挟持しながら杭30の長手軸を中心に回転力を与える機構を備え、杭30は、自重とクレーン式杭打機20からブーム26を介して与えられる下向き荷重により地盤27に押圧されながら回転することにより、地盤27に効率良く打設されるようになっている。
【0024】
また、図2(b)に示すように、クレーン式杭打機20は、杭打機28の不使用時にはブーム26に連結されたワイヤー32により資材等を吊上げることもできるようになっている。本高架橋の構築方法ではこのクレーン式杭打機20を用いることにより効果的に各工程を実施することができる。
【0025】
以下に各工程についてさらに詳細に説明する。
図3は、初期高架橋の施工工程S10を説明するための側面図であり、同図(a)は本設杭及び本設柱の設置作業、同図(b)は架設された初期高架橋46及びその上に載置されたクレーン式杭打機20を示す。
図3に示すように、初期高架橋の施工工程S10では、後工程(仮設杭の施工工程S21及び床版の架設工程S22)を実施するための最初の作業台となる高架橋の構築を行う。この工程は、本構築方法の一連の工程の中で鉄道線路38を占用する工程であるので、その施工を短時間に実施するために、初期高架橋46は上記の後工程を実施するための作業台として最小限の作業領域を確保できる規模のものであることが好ましい。
【0026】
初期高架橋の施工工程S10にあたっては、図3(a)に示すように、先ず、例えば、TBH(Top Boring Hole)工法を用いたTBH杭打機48によって本設杭34を場所打コンクリート杭で構築し、構築された本設杭34に本設柱36を、例えば、上記説明したクレーン式杭打機20を用いて建て込む。ここで、本設杭34及び本設柱36は、初期高架橋46が鉄道線路38及び架線40を跨ぐような配置になるように鉄道線路38の両脇に沿って所定の本数が設置される。
【0027】
そして、これら設置された本設柱36の上に床版41を設置する。床版41は、例えば、鋼部材を格子状又は梯子状に枠組みした梁パネル42と、梁パネル42上に敷設されるスチールデッキ等の覆工板44とから構成され、その設置にあたっては、先ず、梁パネル42を、例えば、クレーン式杭打機20のブーム26に連結されたワイヤー32により吊持させて本設柱36の上に架設し、本設柱36と梁パネル42とを、例えば溶接やボルト締結等によって固定する。なお、梁パネル42には、例えば、建て込みされた本設柱36の上端部と連結して固定可能なジョイントを予め備えるものを用いてもよい。
【0028】
さらに、架設された梁パネル42の上に覆工板44を敷設する。なお、梁パネル42と覆工板44の設置に際し、梁パネル42を架設する前に予め覆工板44を梁パネル42に敷設しておき、その覆工板44が敷設された梁パネル42を本設柱36に架設する手順で施工してもよい。
【0029】
このようにして架設された初期高架橋46の上にクレーン式杭打機20を搭載する(図3(b)参照)。なお、クレーン式杭打機20の移送には、例えば、大重量を吊持可能なクローラークレーン(図示しない)や鉄道クレーン(図示しない)等の重機を初期高架橋46の周辺に配備して用いる。
【0030】
図4は、仮設杭の施工工程S21を説明するための側面図である。
図4に示すように、初期高架橋の施工工程S10で架設された初期高架橋46上に搭載されたクレーン式杭打機20を用いて、初期高架橋46から高架橋を延長する方向に離間する地盤27上の所定位置に仮設杭50を打設する。ここで用いる仮設杭50の杭材には、例えば、回転圧入鋼管杭を用いる。なお、仮設杭50の地上から上方へ突出した部分は床版41を支持する仮設柱としての役割を有する。
【0031】
図5は、仮設杭50に用いる回転圧入鋼管杭51の下端部を拡大した側面図である。
図5に示すように、回転圧入鋼管杭51は、鋼管52の下端に螺旋状の羽54が溶接されて構成されており、所定方向の回転力が与えられることによって地盤に貫入され、また、逆方向の回転力が与えられることにより抜管できるようになっている。
このように、仮設杭50の打設は、回転圧入鋼管杭51を、クレーン式杭打機20のブーム26の先端に取り付けられた杭打機28により挟持させて回転力を与え、地盤27にその下端の羽54を押し付けることによって地盤27に貫入させることにより行う。
なお、仮設杭50は、床版の架設工程S22で新たに架設される床版の設置位置に対応するように鉄道線路38の両脇に沿って所定の本数が設置される。
【0032】
次に、床版の架設工程S22において、上記の工程で打設された仮設杭50の上に新たな床版41を設置する。
【0033】
図6は、床版の架設工程S22を説明するための側面図である。
図6に示すように、先ず、梁パネル42を、ブーム26に連結されたワイヤー32によって玉掛けし、クレーン式杭打機20により吊持して仮設杭50の上に架設する。
【0034】
なお、梁パネル42と仮設杭50との連結は、後工程(仮設杭の撤去工程S50)でなされる仮設杭の撤去作業を考慮して、容易に取り外しができるように、例えばボルト締結等を用いて固定されることが好ましい。
【0035】
そして、初期高架橋の施工工程S10と同様に覆工板44を梁パネル42上に敷設することにより、新たな床版41が初期高架橋46に延長して架設されることになる。
【0036】
このように仮設杭の施工工程S21及び床版の架設工程S22を、クレーン式杭打機20を、構築した高架橋上で移動させながら繰り返し実施する(高架橋の延長施工工程S20)ことにより、鉄道線路38の直上に高架橋56が延長して構築されていく。
【0037】
次にこのようにして所定の長さに亘って構築された高架橋56を支持する仮設杭50を本設柱36に受け替える。
本設柱36への受け替えにあたり、まず本設柱36を建て込むための本設杭34の打設を行う。
【0038】
図7は、本設杭の打設工程S30を説明するための側面図である。
図7に示すように、先に説明したTBH杭打機48は、掘削ロッド58を連結することによって高架橋56上から地盤27までビット60を到達させることできるようになっており、地盤27の所定位置に場所打コンクリート杭を打設していく。
本設杭34の打設後、本設柱36の建て込みを行って仮設杭50から本設柱36へ受け替えを行う。
【0039】
図8は、本設柱の受替工程S40を説明するための側面図である。
図8に示すように、クレーン式杭打機20の杭打機28に本設柱36をセットし、本設杭の打設工程S30で地盤27に打設された本設杭34に本設柱36を建て込み、建て込んだ本設柱36と梁パネル42とを固定する。
【0040】
なお、本設杭の打設工程S30及び本設柱の受替工程S40では、高架橋56上からTBH杭打機48が掘削ロッド58及びビット60が垂下できるように、またクレーン式杭打機20による本設柱36の建て込みができるように構築位置における覆工板44又は梁パネル42の鋼部材は取り外しておくものとする。また、構築位置に予めTBH杭打機48による杭打ち、及び本設柱36の建て込みが可能な構造を有する覆工板44又は梁パネル42を用いてもよい。
そして本設柱36への受け替えが完了した高架橋56については、仮設杭50の撤去が可能となる。
【0041】
図9は、仮設杭の撤去工程S50を説明するための側面図である。図9に示すように、仮設杭50を梁パネル42から取り外し、その仮設杭50の頭部をクレーン式杭打機20の杭打機28に再び挟持させて、貫入時の方向と逆回転になるように回転力を与えて抜管する。
【0042】
図10は、最後の工程である床版の仕上施工工程S60を説明するための側面図である。
図10に示すように、すべての仮設杭50の撤去後、本設床版62をクレーン式杭打機20の吊上げ機能を用いて敷設することで、本実施形態に係る鉄道線路38の直上における高架橋の構築方法が完了する。
【0043】
以上説明した本実施形態に係る高架橋の構築方法によれば、一旦、高架橋上にクレーン式杭打機20を搭載すれば、地盤27への仮設杭50の打設、打設された仮設杭50への新たな梁パネル42の架設、及び覆工板44の敷設を、全て高架橋56の上から実施できるので、施工中に高架橋56下の鉄道線路38を往来する列車の運行を妨げることはなく施工できる。これにより昼夜を問わず高架橋の架設を行うことができ、工期短縮とともに施工コストの削減を図れる。また、鉄道線路38に架設された高架橋56上のスペースを作業基地等に利用できることにより鉄道線路38の敷地以外に確保すべき用地を節減でき、工期短縮及び工費の削減に寄与する。
【0044】
また、クレーン式杭打機20は、ブーム26の先端部に杭打機28を備えており、杭打機としてだけでなくクレーンとしても利用できるので、高架橋に搭載する建設機械の総重量を軽減できる。これにより一基の高架橋の耐積荷重を小さく設定できるので、工事を簡素化できる。また、一台で作業が行えることにより占用面積が減るので床版41上のスペースを広く使用できる。
【0045】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法によれば、クレーン式杭打機20によって既設高架橋から高架橋の構築方向の地盤27に仮設杭50を打設した後、クレーン式杭打機20によってその仮設杭50の上に新たな床版41を架設する施工順序であることにより、新たな床版41を架設する際に、上記特許文献3に記載された工法のように高架橋に反力ポールにワイヤー等を設置して斜張させながら片持ちさせるなどのような工程を要しないので、この工程に必要な資材等の施工コストの節減及び工期短縮が図れる。
【0046】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法による仮設杭50によれば、仮設杭50を地盤27に打設する際に排土量が少ないので掘削土の処理が省力化できる。また、逆回転させることにより容易に抜管できるので作業効率を向上させることができる。さらに仮設杭50は、打撃を与えることなく回転を与えるのみで打設できるので騒音防止に寄与できる。
【0047】
なお、本実施形態に係る高架橋の構築方法では、仮設杭50に鋼管52の下端に螺旋状の羽54を有する回転圧入鋼管杭51を用いたが、鋼管の下端に傾斜した複数の羽を有する回転貫入鋼管杭64を用いてもよい。図11は、回転貫入鋼管杭64の下端を拡大したもので、(a)側面図、(b)下方から見た斜視図である。図11に示すように、回転貫入鋼管杭64は、鋼管52の下端に2枚の傾斜した傾斜羽66を有するもので、回転貫入鋼管杭と同様に回転力が与えられることによって地盤に貫入され、また、逆回転を与えられることにより抜管できるようになっている。
【0048】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法では、高架橋56を構築していく上で、先ず仮設杭50を打設し、その上部に梁パネル42、覆工板44などを配置して、更に本設杭34の打設及び本設柱36の建て込みを行う手順で施工を行うものとしたが、これに限らず、最初から仮設杭50を本設杭と本設柱とを兼ねたものとしてもよい。これにより、仮設杭50と本設柱36との受け替え作業が不要となり、工事が簡素化することによって工費の削減と工期短縮に寄与できる。
【0049】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法では、クレーン式杭打機20を高架橋56上に搭載することにより、杭打ち作業と梁パネル42の吊上げ作業とをクレーン式杭打機20の一台を用いて行ったが、これに限らず、吊上げ作業については他のクレーンを高架橋上に搭載することによって別途行ってもよい。
【0050】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法では、仮設杭50に回転圧入鋼管杭51を用いたが、これに限らず、鋼管又はH鋼などの鋼材を用いてもよい。この場合、仮設杭の撤去工程S50で仮設杭50に逆方向の回転力を与えることにより抜管することができないので、例えば、仮設杭50を地表面で切断し、その切断部から上側のみの仮設杭50を撤去するものとする。
【0051】
また、本実施形態に係る高架橋の構築方法では、鉄道線路38の直上に高架橋56を構築する施工を示したが、これに限らず、供用道路上に高架橋56を構築することにも適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本実施形態にかかる高架橋の構築方法の工程フローを示す工程図である。
【図2】クレーン式杭打機の側面図であり、同図(a)は杭打ち時の状態、(b)は資材等の吊持時の状態である。
【図3】初期高架橋の施工工程を説明するための側面図であり、同図(a)は本設杭及び本設柱の設置作業、同図(b)は架設された初期高架橋及びその上に載置されたクレーン式杭打機を示すものである。
【図4】仮設杭の施工工程を説明するための側面図である。
【図5】仮設杭に用いる回転圧入鋼管杭の下端部を拡大した側面図である。
【図6】床版の架設工程を説明するための側面図である。
【図7】本設杭の打設工程を説明するための側面図である。
【図8】本設柱の受替工程を説明するための側面図である。
【図9】仮設杭の撤去工程を説明するための側面図である。
【図10】床版の仕上施工工程を説明するための側面図である。
【図11】回転貫入鋼管杭64の下端を拡大したもので、(a)側面図、(b)下方から見た斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
20 クレーン式杭打機
22 車台
24 クレーン本体
26 ブーム
27 地盤
28 杭打機
30 杭
34 本設杭
36 本設柱
38 鉄道線路
40 架線
41 床版
42 梁パネル
44 覆工板
46 初期高架橋
50 仮設杭
56 高架橋
62 本設床版
S10 初期高架橋の施工工程
S20 高架橋の延長施工工程
S21 仮設杭の施工工程
S22 床版の架設工程
S23 クレーン式杭打機の移動工程
S30 本設杭の打設工程
S40 本設柱の受替工程
S50 仮設杭の撤去工程
S60 床版の仕上施工工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架構造物の構築方法であって、
地盤に打設された杭とその上に架設された床版上に、前記床版から水平方向に離間した位置で前記地盤に杭を打設可能な杭打機と、クレーンとを搭載する第1工程と、
前記架設された床版上に搭載された杭打機を用いて、前記架設された床版から高架構造物の延長方向に離間する前記地盤上の所定の位置に、前記地盤から上方へ突出した部分を柱として機能させるべく杭を打設する第2工程と、
前記クレーンを用いて、前記第2工程で打設された杭に新たな床版を架設する第3工程と、
前記第3工程で架設された床版へ前記杭打機と前記クレーンとを移動させる第4工程とを備え、
前記第2〜4工程を繰り返して前記高架構造物を延長して構築していくことを特徴とする高架構造物の構築方法。
【請求項2】
前記杭打機と前記クレーンとを、杭打機能を有する移動式クレーンで兼用することを特徴とする請求項1に記載の高架構造物の構築方法。
【請求項3】
前記杭は仮設杭であり、前記床版を架設後、前記床版上から本設柱を建て込んで、この本設柱で前記床版を支持するとともに、前記仮設杭を撤去することを特徴とする請求項1又は2に記載の高架構造物の構築方法。
【請求項4】
前記仮設杭として、下端にらせん状の羽又は傾斜した複数の羽を有し、管軸を中心に回転させることにより地盤に貫入又は地盤から抜管可能な鋼管を用いることを特徴とする請求項3に記載の高架構造物の構築方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2008−115628(P2008−115628A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−300671(P2006−300671)
【出願日】平成18年11月6日(2006.11.6)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【Fターム(参考)】