説明

高比表面積炭化ケイ素触媒フィルター及び担体

本発明は、多孔質セラミック材料から形成されたハニカム型構造体に関する。ここでこの構造体は、この構造体を形成する前記多孔質セラミック材料が下記の構成要素を含有すること:
50〜95質量%の炭化ケイ素SiC、及び
5〜50質量%の少なくとも1種のセラミック酸化物相;
10%超の気孔率、0.5m/g超の比表面積、及び少なくとも二峰型の気孔サイズ分布を更に有すること;
を特徴とする。
本発明はまた、このような構造体を得るための方法、及びこのような構造体に触媒を堆積して得られる触媒担体又はフィルターに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒構造体、特にディーゼル型内燃機関の排気管において使用される触媒構造体の分野に関する。好ましくは、本発明は、ディーゼルエンジン内でのディーゼル燃料の燃焼によって生成される汚染ガス及びすすを一緒に除去することを可能にする触媒フィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンからのガスの処理及びすすの除去を可能にする触媒フィルターは、従来技術においてよく知られている。これらの構造体全体は通常、ハニカム構造を有しており、構造体の一方の面は、処理されるべき排ガスの取り入れを可能にし、且つ他方の面は、処理済みの排ガスの排出を可能にする。構造体は、取り入れ面と排出面との間に、多孔質壁によって分離された互いに平行な軸を有する一組の導管又は通路を含む。導管は、取り入れ面側に開口している流入室と排出面側に開口している流出室とを画定するようにして、導管の端部の一方又は他方で塞がれている。通路は、排ガスがハニカム本体を貫流するときに、出口通路に加わるために入口通路の側壁を貫流することを強制されるようにして、順序正しく交互に塞がれる。これによって、粒子又はすすは、ろ過体の多孔質壁上に堆積し、そして蓄積する。
【0003】
周知の様式において、粒子フィルターはその使用中、ろ過段階(すすの蓄積)及びそれに続く再生段階(すすの除去)を行われる。ろ過段階では、エンジンによって放出されるすす粒子を保持し、そしてフィルター内部に堆積させる。再生段階では、フィルターのろ過特性を復活させるために、すす粒子をフィルター内部で燃焼させる。通常、フィルターは多孔質セラミック材料、例えば炭化ケイ素から形成される。
【0004】
触媒フィルターの例は、例えば特許文献1〜5に記載されている。
【0005】
すすの処理に関する問題に加えて、気体の汚染物質(すなわち主に窒素酸化物(NO)又は硫黄酸化物(SO)及び一酸化炭素(CO)、又は未燃焼炭化水素)を有害性が比較的小さいガス(例えば気体の窒素(N)又は二酸化炭素(CO))に転化させることは、付加的な触媒処理を必要とする。
【0006】
1つの同一工程で気体及び固体の汚染物質を処理するためには、上記の粒子フィルターに触媒機能を加えることが望まれる。従来から用いられている方法によれば、ハニカム構造体を、触媒又は触媒前駆体を含む溶液に浸漬する。
【0007】
このような方法は一般に、水(又は別の極性溶剤)中に溶解されている触媒前駆体又は触媒を含有する溶液、又は触媒粒子の水懸濁液に浸漬する少なくとも1つの含浸工程を含む。このような方法の例が、特許文献6に記載されている。
【0008】
周知の様式において、含浸は1又は2以上の工程で実施することができる。含浸工程は、できる限り均一に触媒を構造体内に堆積させることを目的としている。
【0009】
通常、触媒は、貴金属(Pt、Pd、Rh)、及び随意に希土類酸化物、例えば白金と酸化セリウムとの混合物Pt/CeOを含む活性成分を含む。活性成分は通常の場合、不均一触媒作用においてよく知られている技術で、高比表面積を有する酸化物担体、例えばアルミナ、酸化チタン、シリカ、セリン、酸化ジルコニウムの毛孔内に堆積させる。
【0010】
上記のような粒子フィルターをエンジンの排気管内に導入すると、このエンジンの性能を損なうおそれのある圧力低下を及ぼすことが更に知られている。従って、フィルターの気孔率は、このような障害を回避するのに十分に大きいように選ばれ、一般には20〜75%である。
【0011】
圧力低下は、フィルターが触媒機能を有する場合に、更に大きくなる。これは、触媒コーティング、上記のような触媒担体を、構造体の壁上及び/又は気孔内に堆積させると、排気管内のフィルターの存在に起因する圧力低下がさらに増大する傾向があることによる。この制限により、堆積させる触媒の量、ひいては排ガスの触媒処理の効率は、現在のところ限定されている。
【0012】
したがって、マイクロ構造(気孔率、気孔サイズ、及び分布)が、ガスの処理効率を高めるようにして、増大された量の触媒の堆積を可能にし、しかも圧力低下の著しい増大を招くことのないろ過構造体を得ることが必要とされている。
【0013】
1つの可能な解決手段は例えば、アクリル樹脂のような合成樹脂タイプ、又は澱粉のような有機ポリマータイプの多量の孔形成剤を初期混合物中に存在させ、それによって、炭化ケイ素粒子の網状構造体の気孔率を増大させることである。しかしながら、気孔率の増大は同時に、フィルターの機械特性を深刻に低下させ、それによってフィルターの作業性能を低くする。
【0014】
【特許文献1】ヨーロッパ特許出願公開第816,065号公報
【特許文献2】ヨーロッパ特許出願公開第1,142,619号公報
【特許文献3】ヨーロッパ特許出願公開第1,455,923号公報
【特許文献4】国際公開第2004/090294号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2004/065088号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,866,210号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従って本発明の目的は、上記の問題点への対処を可能にする新規ハニカム構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
一般的な形態において、本発明は、アルミナ及び炭化ケイ素の粒子の混合物を含むハニカム構造体に関し、ここでこのハニカム構造体は、
a)単純なフィルター、すなわち無触媒フィルターとして現在使用されている炭化ケイ素構造体の気孔率とほぼ等しいか又は著しくは異ならない気孔率を有し;且つ
b)高比表面積を有する。
【0017】
「高比表面積」という表現は、本明細書中の説明では、0.5m/g超の比表面積を意味するものと理解される。情報としては、出願人によって実施された試験は、現在使用されているSiCフィルターの比表面積が0.2m/g以下であることを示した。比表面積がこのように増大することによって、構造体の比表面積を増大させるために構造体内に堆積されなければならない担体の量を実質的に減少させること、又は本発明に従って得られる比表面積の最高値によって担体の存在を無意味にすることさえも可能になり、この場合には、活性成分だけを堆積させる。
【0018】
欧州特許第1,070,687号公報によって、ディーゼルエンジンの排ガスのための粒子フィルターとして使用することができ、また70〜97質量%の炭化ケイ素と、3〜30質量%の酸化物バインダー相、例えばアルミナAlとを含むハニカムモノリシック構造体が公知である。上記の発明の目的は、1650℃以下の低下させた硬化温度で、このようなモノリスを得る方法を提供することである。しかし、この方法において記載された高い温度、及び5〜60μmを中心とする一峰型の孔分布により、得られる比表面積は0.5m/g未満である。特に欧州特許第1,070,687号明細書は、触媒フィルター又は担体としてこの構造体を使用する可能性に関しては言及していない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
より具体的には、第1の実施態様によれば、本発明は、多孔質セラミック材料から形成されたハニカム型構造体であって、
このハニカム型構造体を形成する多孔質セラミック材料が、下記の構成要素を含有すること:
50〜95質量%の炭化ケイ素SiC、
5〜50質量%の少なくとも1種のセラミック酸化物相;且つ
前記構造体が更に、10%超の気孔率、0.5m/g超、好ましくは1m/g超、特に好ましくは1.5m/g超の比表面積、及び少なくとも二峰型の気孔サイズ分布を有すること、
を特徴とする、ハニカム型構造体に関する。
【0020】
セラミック酸化物相は例えば、初期比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超、又は10m/g超の、酸化物相の1種又は2種以上の前駆体から得られる。
【0021】
好ましくは、前駆体の質量の少なくとも5%が、ナノスケールの粉末からなる。好ましくは、5〜50質量%、例えば10〜40質量%のナノスケール粉末を使用する。出願人によって実施された試験は、このようなナノスケール粉末の存在が有利には、硬化後に、最終構造体において少なくとも二峰性の気孔分布を得ることを可能にすることを示した。
【0022】
酸化物相の例は、アルミニウム、希土類、特にセリウム又はランタン、ジルコニウム、チタン及びケイ素の酸化物、並びにケイ素アルミン酸塩である。
【0023】
好ましくは、ハニカム構造体は、下記の構成要素を含有する:
50〜95質量%の炭化ケイ素SiC;
初期比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超、又は10m/g超の少なくとも1種のアルミナ及び/又は少なくとも1種のアルミン酸塩から得られる、5〜50質量%の少なくとも1種の単独又は混合セラミック酸化物相。
【0024】
有利には、構成セラミック材料の全気孔率が、20〜65%、好ましくは30〜60%である。
【0025】
本発明による構造体内の気孔サイズ分布は、少なくとも二峰型である。例えば気孔の一方の部分は、平均直径5〜60μm、好ましくは5〜20μmを中心としたサイズを有しており、そして気孔の他方の部分は、平均直径約1.5〜1μm、又は1.5μm未満、又は1μm未満、そして好ましくは1.5〜0.0015μmを中心としたサイズを有している。
【0026】
本発明は具体的には、ハニカムろ過要素、又は接合セメントによって互いに結合された複数のハニカムろ過要素を含む中央部分を有する構造体に関する。ここで、このろ過要素は、多孔質壁によって分離された互いに平行な軸を有する一組の隣接する導管又は通路を含み、この導管は、気体が多孔質壁を貫流するようにして、導管の端部の一方又は他方で栓によって塞がれていて、ガス取り入れ面側に開口している流入室とガスの排出面側に開口している流出室とを画定している。
【0027】
例えば、このようなろ過構造体は、1cm当たり7.75〜62個の通路を有し、通路の断面積が、0.5〜9mmであり、通路を分離する壁の厚さが、約0.2〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.5mmである。
【0028】
1つの可能性によれば、構造体におけるセラミック酸化物相の質量比率は、10%超であり、好ましくは20%超であり、又は30%さえをも超える。
【0029】
本発明はまた、上記のような構造体の製造方法に関する。ここで、この構造体は、炭化ケイ素粒子と、比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超、又は10m/g超の単独又は混合酸化物、又は酸化物の混合物との初期混合物から得られる。これらの酸化物は例えば、例えばベーマイトの場合のように自然に凝集される少なくとも1つのナノスケール部分、又は例えばファンデルワールス結合に関与する合成化学ルートによって凝集される少なくとも1つのナノスケール部分を含む粉末の形態で、初期混合物中に導入できる。
【0030】
例えば、これらの酸化物は、高比表面積を有するアルミナ、又はアルミン酸塩、又はアルミナ及び/又はアルミン酸塩混合物を含んでいてよい。
【0031】
一般に、炭化ケイ素粒子の直径d50は、125μm未満、典型的には5〜125μmである。
【0032】
1つの実施態様では、この方法は、初期混合物を混練して、結合ペーストの形の均質生成物をもたらす工程、ハニカム形状のモノリスを形成するようにして、この生成物を好適なダイを通して押し出す工程、得られたモノリスを、例えば加熱及び/又はマイクロ波によって乾燥させる工程、及び硬化工程を含む。
【0033】
硬化工程は、例えば下記の条件で実施できる:
中性ガス、例えばアルゴンの雰囲気において、1700℃以下、好ましくは1600℃以下、好ましくは1300〜1600℃の温度;又は
酸素含有雰囲気、例えば空気雰囲気において、1400℃以下、好ましくは1350℃以下、好ましくは1200〜1350℃の温度。
【0034】
この方法の1つの可能な実施態様によれば、最初の工程において、少なくとも1つのタイプの粒子サイズ分布を有する炭化ケイ素と、高比表面積を有する1種又は2種以上の酸化物相、例えばアルミナ及び/又はアルミン酸塩と、随意に気孔形成剤とを少なくとも含む混合物を混練し、次いで少なくとも1種の有機可塑剤及び/又は有機バインダー及び水を添加する。
【0035】
この方法の1つの可能な実施態様では、炭化ケイ素を、少なくとも2つのタイプの粒子サイズ分布を有する粉末の混合物、例えば粒子の一部が10μm未満のサイズを有し、そして粒子の一部が10μm超のサイズを有する粒状混合物中に導入する。このような方法は有利には、最終的に得られる構造体の気孔サイズを比較的良好に制御できる。
【0036】
本発明の1つの可能な実施態様では、本発明のモノリス構造体を形成する材料にとって望ましい気孔率を制御することを目的として、直径d50が5〜125μmの炭化ケイ素粒子の集合と、所期気孔サイズの関数として選択される0〜30質量%、例えば5〜20質量%の量の少なくとも1種の気孔形成剤とを添加する。
【0037】
例えば、乾燥工程において、得られた未焼成セラミックモノリスを、周囲温度から110℃までの温度で、又はマイクロ波によって、化学結合されていない水の含有率を1質量%未満にするのに十分な時間にわたって乾燥させる。
【0038】
粒子フィルターを製造する場合、この方法は更に、よく知られた技術によって、モノリスの各端部において通路1つおきに栓をする工程を含む。
【0039】
硬化工程中、モノリス構造体は一般に、酸素含有雰囲気において、約750℃〜1400℃、好ましくは1200〜1350℃の温度にし、又は中性雰囲気において、約750℃〜1700℃、好ましくは1300〜1600℃の温度にする。
【0040】
本発明は更に、触媒担体又はフィルターに関する。ここでこの触媒担体又はフィルタは、典型的に少なくとも1種の貴金属、例えばPt、Pd、Rh、及び随意に酸化物、例えばCeO、ZrO、CeO−ZrOを含む少なくとも1種の担持された又は好ましくは担持されていない活性触媒相を、好ましくは含浸によって堆積させた上記のような構造体から得られるものである。
【0041】
このような構造体は特に、ディーゼルエンジン又はガソリンエンジンの排気管における触媒担体としての、又はディーゼルエンジンの排気管における粒子フィルターとしての用途を有する。
【0042】
下記非限定的な例から、本発明及びその利点がよりよく理解される。例において、全てのパーセンテージは質量で示されている。
【実施例】
【0043】
例1:
混練機において、下記のものを混合した:
メディアン粒子直径d50が約40μmの3000gのSiC(本発明においては、直径d50は、個体群の50質量%がこの値未満であることが見いだされる粒子直径を意味する);
比表面積が30m/gのγ−アルミナの形態の1300gのアルミナ粉末(このうちの30質量%が、ナノスケールのベーマイトの形態である);及び
150gのメチルセルロース型の有機バインダー。
【0044】
質量パーセントは、SiCに関しては69.8%であり、アルミナ粉末に関しては30.2%である。バインダーは、粉末及び粒子の乾燥質量に対して3.49%の量で加えた。
【0045】
水を添加し、そしてダイを通して表1に示す寸法を有するハニカム構造体を押し出すことを可能にする可塑性を有する均質なペーストが得られるまで、混合物を混練した。
【0046】
【表1】

【0047】
次いで、得られた未焼成モノリスを、マイクロ波によって、化学結合していない水の含有率を1質量%未満にするのに十分な時間にわたって乾燥させた。
【0048】
それぞれのモノリス面の通路を、例えば国際公開第2004/065088号パンフレットに記載されたよく知られた技術によって交互に塞いだ。
【0049】
次いで、最高温度1300℃に達するまで、20℃/時の昇温速度で、モノリスを空気中で硬化させ、これを5時間にわたって保持した。
【0050】
気孔率及び平均気孔サイズが、水銀ポリシメーターによって測定したときに、それぞれ37%及び6μmであるモノリスを最終的に得た。
【0051】
走査電子顕微鏡による分析によって、アルミナによって取り囲まれたSiC粒子の存在によって特徴付けられる実質的に均質な構造体が示され、粒子間の接触領域が確認された。
【0052】
Micromeritics9500型のポリシメーターを用いて実施された高圧水銀ポリシメーター分析は、気孔サイズ分布が二峰型であることを示した。気孔の一部は平均直径7μmを中心とするサイズを有し、そして気孔の他方の部分は、平均直径0.15μmを中心とするサイズを有していた。モノリスのBET分析は、こうして得られたモノリスの比表面積が1.7m/gであることを示した。
【0053】
例2:
この例では、例1において記載したのと同じ反応物質から出発して、モノリスを合成した。例1において記載したのと同一の押し出し工程、乾燥工程、及び栓工程の後で、最高温度1600℃に達するまで、20℃/時の昇温速度で、モノリスをアルゴン中において硬化させ、これを5時間にわたって保持した。
【0054】
気孔率及び平均気孔サイズが、水銀ポリシメーターによって測定したときに、それぞれ37%及び6μmであるモノリスを最終的に得た。
【0055】
走査電子顕微鏡による分析によって、アルミナによって取り囲まれたSiC粒子の存在によって特徴付けられる実質的に均質な構造体が示され、粒子間の接触領域が確認された。
【0056】
Micromeritics9500型のポリシメーターを用いて実施された高圧水銀ポリシメーター分析は、気孔サイズ分布が二峰型であることを示した。気孔の一部は平均直径7μmを中心とするサイズを有し、そして気孔の他方の部分は、平均直径0.15μmを中心とするサイズを有していた。モノリスのBET分析は、こうして得られたモノリスの比表面積が1.1m/gであることを示した。
【0057】
例3(比較):
この例では、専ら炭化ケイ素からなる壁を有する従来技術のモノリスを合成した。このために、アルゴン下における2100℃超の温度での硬化の後でSiCだけからなる壁を有するフィルターを最終的に得るようにして、アルミナ粉末を供給しなかったことを除いて、例1におけるのと同じ反応物質を混合した。
【0058】
この基準フィルターで測定された気孔率は、37%であり、比表面積は0.12m/gであった。気孔サイズ分布は一峰型であり、気孔サイズは、約9μmを中心としていた。
【0059】
例1及び2と比較例3との比較により、気孔率が炭化ケイ素フィルターと実質的に等価であるが、比表面積が著しく改善された構造体を、本発明によって得ることが可能であることが明らかである。
【0060】
上記の説明及び例では、簡単のために、ディーゼルエンジンの排気管を出る排ガス中に存在する気体状の汚染物質及びすすの除去を可能にする触媒粒子フィルターとの関連において、本発明を記載した。
【0061】
しかしながら本発明は、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジンを出る気体状の汚染物質の除去を可能にする触媒担体にも関連する。このタイプの構造体の場合、ハニカム通路は、これらの端部の一方又は他方で塞がれることはない。本発明の実施は、これらの担体に適用されると、担体の全気孔率に影響を及ぼすことなしに、担体の比表面積、ひいては担体内に存在する活性相の量を増大させるという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質セラミック材料から形成されたハニカム型構造体であって、
前記構造体を形成する前記多孔質セラミック材料が、下記の構成部分を含むこと:
50〜95質量%の炭化ケイ素SiC、及び
5〜50質量%の少なくとも1種のセラミック酸化物相;並びに
前記構造体が更に、10%超の気孔率、0.5m/g超の比表面積、及び少なくとも二峰型の気孔サイズ分布を有すること;
を特徴とする、ハニカム型構造体。
【請求項2】
初期比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超、又は10m/g超の前記酸化物相の少なくとも1種の前駆体から得られる、請求項1に記載のハニカム型構造体。
【請求項3】
前記前駆体の質量の少なくとも5%が、ナノスケールの粉末からなる、請求項2に記載のハニカム型構造体。
【請求項4】
前記酸化物相が、アルミニウム、希土類、特にセリウム又はランタン、ジルコニウム、チタン及びケイ素の酸化物、及びケイ素アルミン酸塩からなる群から選択される、請求項1に記載のハニカム型構造体。
【請求項5】
50〜95質量%の炭化ケイ素SiC、及び
初期比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超の少なくとも1種のアルミナ及び/又は少なくとも1種のアルミン酸塩から得られる、5〜50質量%の少なくとも1種の単独又は混合セラミック酸化物相、
を含むこと;並びに
10%超の気孔率、0.5m/g超の比表面積、及び少なくとも二峰型の気孔サイズ分布を更に有すること、
を特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム型構造体。
【請求項6】
前記構成セラミック材料の全気孔率が20〜65%である、請求項1〜5のいずれかに記載の構造体。
【請求項7】
前記気孔の一方の部分が、平均直径5〜60μm、好ましくは5〜20μmを中心としたサイズを有しており、そして前記気孔の他方の部分が、平均直径約1.5μm又はそれ未満、好ましくは1.5〜0.0015μmを中心としたサイズを有している、請求項1〜6のいずれかに記載の構造体。
【請求項8】
中央部分が、ハニカムろ過要素、又は接合セメントによって互いに結合された複数のハニカムろ過要素を含み、前記ろ過要素が、多孔質壁によって分離された互いに平行な軸を有する一組の隣接する導管又は通路を含み、前記導管が、気体が前記多孔質壁を貫流するようにして、前記導管の端部の一方又は他方において栓によって塞がれていて、ガス取り入れ面側で開口している流入室とガス排出面側で開口している流出室とを画定している、請求項1〜7のいずれかに記載のろ過構造体。
【請求項9】
1cm当たり7.75〜62個の通路を含み、前記通路の断面積が0.5〜9mmであり、前記通路を分離している壁の厚さが、約0.2〜1.0mm、好ましくは0.2〜0.5mmである、請求項8に記載のろ過構造体。
【請求項10】
前記構造体が、炭化ケイ素粒子と、比表面積が2m/g超、好ましくは5m/g超の単独又は混合酸化物、又は酸化物の混合物との初期混合物から得られる、請求項1〜9のいずれかに記載の構造体の製造方法。
【請求項11】
前記単独又は混合酸化物の質量、又は前記酸化物の混合物の少なくとも5質量%が、ナノスケールの粉末からなる、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記酸化物が、アルミナ、又はアルミン酸塩、又はアルミナ及び/又はアルミン酸塩混合物を含む、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記炭化ケイ素粒子の直径d50は、125μm未満、典型的には5〜125μmである、請求項10〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の構造体の製造方法であって、初期混合物を混練して、結合ペーストのの均一生成物をもたらす工程、ハニカム形状のモノリスを形成するようにして、前記生成物を好適なダイを通して押し出す工程、前記得られたモノリスを乾燥させる工程、随意に集成工程及び硬化工程を含む、請求項10〜13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
最初の工程の間に、少なくとも1つのタイプの粒子サイズ分布を有する炭化ケイ素と、高比表面積を有する1種又は2種以上の酸化物相、例えばアルミナ及び/又はアルミン酸塩と、随意に気孔形成剤とを少なくとも含む混合物を混練し、次いで少なくとも1種の有機可塑剤及び/又は有機バインダー及び水を添加する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記炭化ケイ素を、少なくとも2つのタイプの粒子サイズ分布を有する粉末の混合物中に導入することを特徴とする、請求項10〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
直径d50が5〜125μmの炭化ケイ素粒子の集合と、所期気孔サイズの関数として選択される0〜30質量%の量の少なくとも1種の気孔形成剤とを添加することを特徴とする、請求項10〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
乾燥工程において、得られた未焼成セラミックモノリスを、マイクロ波によって、又は所定の温度で、化学結合していない水の含有率を1質量%未満にするのに十分な時間にわたって乾燥することを特徴とする、請求項10〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記モノリスの各端部において、通路1つおきに栓をする工程を含む、請求項10〜18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
硬化工程において、モノリス構造体を、酸素含有雰囲気で、約750℃〜1400℃、好ましくは1200〜1350℃の温度にし、又は中性雰囲気で、約750℃〜1700℃、好ましくは1300〜1600℃の温度にすることを特徴とする、請求項10〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
触媒担体又はフィルターであって、典型的に少なくとも1種の貴金属、例えばPt及び/又はRh及び/又はPd、及び随意に酸化物、例えばCeO、ZrO、CeO−ZrOを含む、少なくとも1種の担持された、又は好ましくは担持されていない活性触媒相を、堆積、好ましくは含浸することによって、請求項1〜9のいずれかに記載の構造体から得られる、触媒担体又はフィルター。
【請求項22】
ディーゼルエンジン又はガソリンエンジンの排気管における触媒担体としての、又はディーゼルエンジンの排気管における粒子フィルターとしての、請求項21に記載の構造体の使用。

【公表番号】特表2009−502710(P2009−502710A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523422(P2008−523422)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050730
【国際公開番号】WO2007/012776
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(508004498)
【Fターム(参考)】