説明

高温保存特性に優れたリチウム二次電池用非水系電解液

【課題】優れた高温保存特性を有するので、電気自動車及びハイブリッド電気自動車などの高温で作動すべき二次電池に好ましく用いられるリチウム二次電池用電解液及びこれを含むリチウム二次電池の提供。
【解決手段】リチウム塩及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用非水系電解液であり、下記の化学式で表示される1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムイオンを陽イオンとして含む塩が含有されることを特徴とする電解液及びこれを含むリチウム二次電池。


(上記の式で、Xは、ハロゲン、ClO、B10Cl10、PF、CFSO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、CHSO、CFSO、CSO、(CFSO)(CSO)、CFSO及び低級脂肪族カルボン酸からなる群から選択される。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高温保存特性に優れたリチウム二次電池用非水系電解質に関するもので、一層詳しくは、リチウム塩、有機溶媒及び高温保存特性向上のための添加剤として特定のイミダゾリウム塩を含む非水系電解液に関するものである。特に、本発明に係る非水系電解液は、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの高温で作動すべき車両用二次電池において、優れた高温保存特性を発揮することができる。
【背景技術】
【0002】
モバイル機器に対する技術開発と需要が増加するにつれて、エネルギー源としての二次電池の需要が急激に増加しており、二次電池のうち、高いエネルギー密度と放電電圧を示すリチウム二次電池が広く用いられている。
【0003】
リチウム二次電池は、集電体上に活物質がそれぞれ塗布された正極と負極との間に多孔性の分離膜が介在され、この多孔性の分離膜が介在された電極組立体に、リチウム塩を含む非水系電解質が含浸されて構成される。主に、正極活物質は、リチウムコバルト系酸化物、リチウムマンガン系酸化物、リチウムニッケル系酸化物、リチウム複合酸化物などからなり、負極酸化物は、炭素系物質からなる。
【0004】
しかしながら、リチウム二次電池においては、正極活物質であるリチウム転移金属酸化物と電解液の反応が高温で促進され、正極の抵抗を増加させる副産物を生成することで、高温での保存寿命が急激に低下するという問題点がある。
【0005】
最近、二次電池は、化石燃料を用いる既存のガソリン車両、ディーゼル車両などによる大気汚染などを解決するために提示された電気自動車(EV)、ハイブリッド電気自動車(HEV)などの動力源としても注目を受けており、その使用量が一層増加すると予想されるので、高温保存特性に対する問題点が大きく浮き彫りになっている。
【0006】
したがって、電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの次世代の動力源として適切に用いられるように、高温保存時にも優れたサイクル特性を示し、性能低下のないリチウムイオン電池の開発が切実に要求されている。
【0007】
これと関連して、本発明では、後述するように、高温保存特性向上のための添加剤として特定のイミダゾリウム系無機塩を含む非水系電解液を提示している。
【0008】
イミダゾリウム系化合物を電解液に用いる技術は、その一部が既に知られている。例えば、日本特許出願公開第2003−229333号は、主に電解コンデンサや電気二重層コンデンサ用電解液に、主要な陽イオン供給源としてのイミダゾール化合物を用いる技術を開示している。また、日本特許出願公開第2002−260966号は、電気二重層キャパシタ用電解液として、プロピレンカーボネート、スルホランなどの有機溶媒に、主要な陽イオン供給源としての1,3―ジメチル―2―フルオロイミダゾリウムテトラフルオロボレートなどの含フッ素イミダゾリウム塩を用いる技術を開示している。
【0009】
しかしながら、上記の出願は、一般的にリチウム二次電池と異なる構成の電解コンデンサ、電気二重層キャパシタなどに用いられる電解液に関するもので、電解液の主要な陽イオン供給源としてイミダゾリウム塩を用いるので、高温保存特性の向上を目的とし、特定のイミダゾリウム系無機塩を添加剤として用いる本発明とは異なった概念を有する。
【0010】
一方、日本特許出願公開第2002−110231号は、リチウム塩を含む二次電池用非水系電解液に、安全性向上及び充分なレベルの電池性能確保のためにイミダゾリウム塩を添加する技術を開示している。上記の出願は、イミダゾリウム塩の陽イオン成分として、1,3―ジメチルイミダゾリウムイオン、1―エチル―3―メチルイミダゾリウムイオン、1―メチル―3―エチルイミダゾリウムイオン、1―ブチル―3―メチルイミダゾリウムイオンなどのジアルキルイミダゾリウムイオンと、1,2,3―トリメチルイミダゾリウムイオン、1,2―ジメチル―3―エチルイミダゾリウムイオン、1,2―ジメチル―3―プロピルイミダゾリウムイオン、1―ブチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムイオンなどのトリアルキルイミダゾリウムイオンなどを例示しており、陰イオン成分として、BF、PF、ClO、CFSO、N(CFSO、N(CSO、N(CFSO)(CSO)、C(CFSO、C(CSOなどを例示している。すなわち、上記の出願は、リチウム二次電池用非水系電解液に、物性向上のための添加剤としてイミダゾリウム塩を用いることを提示している。
【0011】
しかしながら、上記の出願は、多様なイミダゾリウム塩の使用可能性のみを例示しており、これら無機塩の特性を述べていない。すなわち、上記の出願の詳細な説明には、上述した多様な種類の物質を例示しているが、その実施例には、1―エチル―3―メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートのみの実験結果を示している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本出願の発明者たちは、深度ある研究と多様な実験を繰り広げた結果、数多くのイミダゾリウム塩のうち、下記の化学式1で定義する特定のアルキル置換基構造の陽イオンを含むイミダゾリウム塩を電解液に添加する場合、その他のイミダゾリウム塩を添加した場合よりも遥かに優れた高温保存特性を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るリチウム二次電池用非水系電解液は、リチウム塩及び有機溶媒を含む高温保存特性に優れたリチウム二次電池用非水系電解液であり、下記の化学式1で表示される1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムイオンを陽イオンとして含む塩(イミダゾリウム塩)が含有されることを特徴とする。
【化1】

上記の式で、Xは、ハロゲン、ClO、B10Cl10、PF、CFSO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、CHSO、CFSO、CSO、(CFSO)(CSO)、CFSO及び低級脂肪族カルボン酸からなる群から選択される。
【0014】
したがって、本発明に係る電解液は、陽イオン成分として特定の置換基のトリアルキルイミダゾリウムイオンを含むイミダゾリウム塩を電解液に添加することで、著しく向上した高温保存特性を示す。
【0015】
前記化学式1のイミダゾリウム塩は、電解液で解離がよく起こり、解離された陽イオンと陰イオンは、それぞれリチウム二次電池の正極と負極で反応する。前記イミダゾリウム陽イオンにおいて、イミダゾール環構造の特定位置に置換された2個のメチル基及び1個のエチル基は、電子供与体として作用し、電極表面に対する保護膜の形成を助けて電解液の分解を抑制するものと推測される。すなわち、本発明に係るイミダゾリウム塩は、初期の充放電条件で電極活物質に対して保護機能を提供するSEI(Solid Electrolyte Interphase)膜の堅固な形成を助けるものと推測される。したがって、高温でSEI膜の部分的破壊による電解液の分解反応で誘発される電池の内部抵抗増加及び発熱現象を防止することで、電池の高温保存特性を大いに向上させる。
【0016】
本出願の発明者たちの実験によると、上記のような高温保存特性の顕しい向上は、前記化学式に示すように、特定位置に所定の低級アルキル基が置換されたイミダゾリウム陽イオンを含む塩によって得られると確認された。すなわち、以後の実験例からも確認されるように、置換基のうち一つまたは二つのみがアルキル基に置換されたイミダゾリウム塩に比べて、高温保存特性が15%以上向上するので、一般的に予想可能な効果以上の顕しい効果上昇を得られる。
【0017】
陰イオン成分として、前記Xには、上述した日本特許出願公開第2002−110231号の実施例で特定されたBFが除かれている。本出願の発明者たちの実験によると、陰イオン成分としてBFを含むイミダゾリウム塩を含有した電解液は、所望の程度の高温保存特性を発揮することができない。
【0018】
特に、前記Xの好ましい例としては、ヘキサフルオロホスフェート(PF)が挙げられる。
【0019】
前記化学式1のイミダゾリウム塩は、電解液の全体重量を基準にして0.5〜5重量%含有されることが好ましい。すなわち、イミダゾリウム塩の添加量が過度に少ない場合、添加による効果を得ることが難しく、その反対に、イミダゾリウム塩の添加量が過度に多い場合、電解液の粘度上昇などの問題点を誘発するので好ましくない。
【0020】
本発明の非水系電解液を構成する前記リチウム塩は、有機溶媒によく溶解される物質であり、例えば、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、CFSOLi、クロロボランリチウム、低級脂肪族カルボン酸リチウム、4フェニルホウ酸リチウム、イミドなどを用いるが、これらのうち、LiPFを用いることが好ましい。
【0021】
電解液を構成する主要成分である有機溶媒は、例えば、N―メチル―2―ピロリジノン、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ブチレンカーボネート(BC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ガンマ―ブチロラクトン、1,2―ジメトキシエタン、テトラヒドロキシフラン、2―メチルテトラハイドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3―ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ホルム酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、スルホラン、メチルスルホラン、1,3―ジメチル―2―イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラハイドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒を用いるが、これらに限定されることはない。
【0022】
前記有機溶媒としては、リチウム塩の解離度が高いポリプロピレンカーボネート(PC)、またはPCと線状カーボネートとの混合溶媒が用いられる。
【0023】
本発明の非水系電解液には、電解液分解による負極の老化及び/または劣化を一層防止するために、分子構造が環状で、環内にC=C不飽和結合を有するエステル化合物(例えば、ビニレンカーボネート)を少量だけ添加することができる。
【0024】
また、電解液には、充放電特性及び難燃性などを改善するために、例えば、ピリジン、トリエチルホスファイト、トリエタノールアミン、環状エーテル、エチレンジアミン、n―グリム(glyme)、ヘキサリン酸トリアミド、ニトロベンゼン誘導体、硫黄、キノンイミン染料、N―置換オキサゾリジノン、N,N―置換イミダゾリジン、エチレングリコールジアルキルエーテル、アンモニウム塩、ピロール、2―メトキシエタノール、三塩化アルミニウムなどが添加される。場合によっては、不燃性を与えるために四塩化炭素、三フッ化エチレンなどのハロゲン含有溶媒がさらに含まれ、高温保存特性を向上させるために二酸化炭酸ガスがさらに含まれる。
【0025】
本発明は、正極、負極及び分離膜の電極組立体に前記非水系電解液が添加されたリチウム二次電池を提供する。
【0026】
前記正極は、例えば、正極集電体上に正極活物質、導電材及びバインダーの混合物を塗布した後、乾燥して製造されるが、必要によっては、前記混合物に充填剤をさらに添加することもある。
【0027】
一般的に、前記正極集電体は、3〜500μmの厚さで製造される。この正極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、または、アルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したものが用いられる。また、集電体は、その表面に微細な凹凸を形成して正極活物質の結合力を高めることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態が可能である。
【0028】
前記正極活物質は、主に、リチウムコバルト酸化物(LiCoO)、リチウムマンガン系酸化物、リチウムニッケル酸化物(LiNiO)などの層状化合物や、1またはそれ以上の転移金属に置換された化合物と;リチウム銅酸化物(LiCuO)と;LiV、LiFe、V、Cuなどのバナジウム酸化物と;化学式LiNi1−x(ここで、M=Co、Mn、Al、Cu、Fe、Mg、BまたはGaで、x=0.01〜0.3である)で表現されるNiサイト型リチウムニッケル酸化物と;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaで、x=0.01〜0.1である)などからなる。
【0029】
一つの好ましい例で、前記正極活物質としては、リチウムコバルト系酸化物やリチウムニッケル系酸化物より優れた安全性及び低廉な価格を有するリチウムマンガン系金属酸化物を主成分として用いることができる。
【0030】
前記リチウムマンガン系金属酸化物の好ましい例としては、化学式Li1+xMn2−x(ここで、xは、0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOなどのリチウムマンガン酸化物と;化学式LiMn2−x(ここで、M=Co、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaで、x=0.01〜0.1である)またはLiMnMO(ここで、M=Fe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物と;化学式においてLiの一部がアルカリ土金属イオンに置換されたLiMnなどが挙げられる。
【0031】
通常、前記導電材は、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1〜50重量%添加される。この導電材は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などの黒鉛と;カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラックなどのカーボンブラックと;炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維と;フッ化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末と;酸化亜鉛、チタン酸カリウムなどの導電性ウイスカーと;酸化チタンなどの導電性金属酸化物と;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが用いられる。
【0032】
前記バインダーは、活物質と導電材などの結合と、集電体に対する結合を助ける成分であり、通常、正極活物質を含む混合物の全体重量を基準にして1〜50重量%添加される。このバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルローズ(CMC)、澱粉、ヒドロキシプロピルセルローズ、再生セルローズ、ポリビニルピロリドン、テトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン―プロピレン―ジエン三元重合体(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレンブチレンゴム、フッ素ゴム、多様な共重合体などが挙げられる。
【0033】
前記充填剤は、正極の膨脹を抑制する成分として選択的に用いられるもので、当該電池に化学的変化を誘発しない繊維状材料であれば、特別に制限されることなく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオリフィン系重合体と、ガラス繊維及び炭素繊維などの繊維状物質が用いられる。
【0034】
負極は、負極集電体上に負極材料を塗布、乾燥して製作されるが、必要によっては、上述した成分がさらに含まれる。
【0035】
一般的に、前記負極集電体は、3〜500μmの厚さで製造される。この負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに導電性を有するものであれば、特別に制限されることなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、塑性炭素、または、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理したもの、アルミニウム―カドミウム合金などが用いられる。また、負極集電体は、正極集電体と同様に、表面に微細な凹凸を形成して負極活物質の結合力を強化させることもでき、フィルム、シート、ホイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布体などの多様な形態で用いられる。
【0036】
前記負極活物質としては、例えば、難黒鉛化炭素、黒鉛系炭素などの炭素と;LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe1−xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン;0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)などの金属複合酸化物と;リチウム金属と;リチウム合金と;ケイ素系合金と;錫系合金と;SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Biなどの金属酸化物と;ポリアセチレンなどの導電性高分子と;Li−Co−Ni系材料などが用いられる。
【0037】
一つの好ましい例で、前記負極活物質として難黒鉛化炭素などの非黒鉛系炭素材料が主成分として用いられる。したがって、黒鉛系炭素材料が50%未満で混合された負極活物質を用いることで、電解質溶媒として高誘電率を有しながらも、低温で相対的に粘度の低いプロピレンカーボネート(PC)の使用を可能にする。
【0038】
前記分離膜は、正極と負極との間に介在されるもので、高いイオン透過度及び機械的強度を有する絶縁性の薄い薄膜が用いられる。一般的に、分離膜の気孔直径は0.01〜10μmで、厚さは5〜300μである。この分離膜としては、例えば、耐化学性及び疎水性を有するポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマーと、ガラス繊維またはポリエチレンなどからなるシートや不織布などが用いられる。電解質としてポリマーなどの固体電解質が用いられる場合、固体電解質が分離膜を兼ねることもある。
【0039】
本発明に係る二次電池は、多様な形態で製造される。例えば、電極組立体は、ジェリー―ロール型、スタック型などで製作され、電池の形態は、円筒形缶、角形缶または金属層と樹脂層を含むラミネートシートの電池ケースなどに内蔵された形態である。これは、当業界で広く知られたものであるので、これに対する詳細な説明は省略する。
【0040】
本発明に係るリチウム二次電池は、高出力・大容量の電池または電池パック用単位電池として用いることが好ましく、特に、優れた高温保存特性が要求される電気自動車、ハイブリッド電気自動車などの車両用動力源として用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0041】
本発明に係るリチウム二次電池用非水系電解液は、特定のイミダゾリウム塩を含むことで、高温保存特性を大いに向上できるので、電気自動車及びハイブリッド電気自動車などの高温で作動すべき二次電池に広くかつ効果的に適用される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
以下、本発明を実施例に基づいて詳しく説明するが、この実施例によって本発明の範疇が限定されることはない。
【0043】
[実施例1]
エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)及びジエチルカーボネート(DEC)を4:3:3の重量比で混合した非水系電解液溶媒に、リチウム塩1M―LiPFを溶解させ、全体重量を基準にして1.5重量%のビニレンカーボネート(VC)と3重量%の1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを添加して電解液を製造した。活物質としてリチウムマンガン酸化物を含む正極と、活物質としてハードカーボンを含む負極とを分離膜と一緒に積層し、前記電解液を付加してラミネート型リチウムイオン電池を構成した。
【0044】
[比較例1]
1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを添加しない点を除けば、上記の実施例1と同一の方法で電解液を製造して電池を構成した。
【0045】
[比較例2]
1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートの代りに、1―エチル―3―メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートを添加した点を除けば、上記の実施例1と同一の方法で電解液を製造して電池を構成した。
【0046】
[比較例3]
1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートの代りに、1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを添加した点を除けば、上記の実施例1と同一の方法で電解液を製造して電池を構成した。
【0047】
[比較例4]
1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェートの代りに、1,2,3―トリメチルイミダゾリウムテトラフルオロボレートを添加した。
【0048】
[実験例1]
上記の実施例1及び比較例1〜4で製造された各電池に対し、高温特性実験を行った。高温特性実験は、電池を65℃で5週間保管した後、常温で抵抗増加を測定し、その測定結果に対するデータを図1に示した。図1に示すように、保存して2週後の抵抗増加率を比較すると、実施例1の電池は、電解液にイミダゾリウム塩を添加しない比較例1の電池に比べて抵抗が約60%以上大きく減少し、その他のイミダゾリウム塩を添加した比較例2〜4の電池に比べて70%以上大きく減少した。このように減少した抵抗増加率は、従来のイミダゾリウム塩の添加によって予想可能な範囲を脱した顕しい数値に該当する。さらに、本発明に係る実施例1の電池の抵抗増加率は、保存して12週まで増加して約7%の増加率を示した後、それ以上増加せずに安定化しており、長期間の高温保存時にも安定的な特性を示す。
【0049】
したがって、上記の実験例の結果を通して、本発明に係るイミダゾリウム系化合物を添加したリチウム二次電池用電解液を用いたとき、高温保存特性を大いに改善できることが分かる。
【0050】
本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば、上記の内容に基づいて本発明の範疇内で多様に応用及び変形可能であろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実験例1の高温保存特性実験による実施例1と比較例1〜4の電池に対する抵抗増加率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム塩及び有機溶媒を含むリチウム二次電池用非水系電解液であって、
下記の化学式(1)で表示される1―エチル―2,3―ジメチルイミダゾリウムイオンを陽イオンとして含む塩を含有してなることを特徴とする、電解液。
【化1】

[上記式中、
Xは、ハロゲン、ClO、B10Cl10、PF、CFSO、CFCO、AsF、SbF、AlCl、CHSO、CFSO、CSO、(CFSO)(CSO)、CFSO及び低級脂肪族カルボン酸からなる群から選択される。]
【請求項2】
前記Xが、ヘキサフルオロホスフェート(PF)であることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項3】
前記化学式1のイミダゾリウム塩が、電解液の全体重量を基準にして0.5〜5重量%含有されることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項4】
前記電解液が、溶媒としてポリプロピレンカーボネート(PC)、またはPCと線状カーボネートとの混合溶媒を用いることを特徴とする、請求項1に記載の電解液。
【請求項5】
正極、分離膜及び負極構造の電極組立体に、請求項1乃至4の何れか一項に記載の非水系電解液を含んで構成された、リチウム二次電池。
【請求項6】
前記電池が、正極活物質としてリチウムマンガン系金属酸化物を含むことを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池。
【請求項7】
前記リチウムマンガン系金属酸化物が、化学式Li1+XMn2−X(式中、Xは、0〜0.33である)、LiMnO、LiMn、LiMnOであるリチウムマンガン酸化物、
化学式LiMn2−X(式中、MがCo、Ni、Fe、Cr、ZnまたはTaであり、Xが0.01〜0.1である)またはLiMnMO(式中、MがFe、Co、Ni、CuまたはZnである)で表現されるリチウムマンガン複合酸化物、或いは、
化学式においてLiの一部がアルカリ土金属イオンに置換されたLiMnであることを特徴とする、請求項6に記載のリチウム二次電池。
【請求項8】
前記電池が、負極活物質として非黒鉛系炭素材料を含むことを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池。
【請求項9】
前記電池が、高出力・大容量の電池または電池パック用単位電池として用いられることを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池。
【請求項10】
前記電池が、電気自動車またはハイブリッド電気自動車の動力源として用いられることを特徴とする、請求項5に記載のリチウム二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−218384(P2008−218384A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−206620(P2007−206620)
【出願日】平成19年8月8日(2007.8.8)
【出願人】(502202007)エルジー・ケム・リミテッド (224)
【Fターム(参考)】