説明

高濃度シリコーン廃液のCODCr低減方法

【課題】CODCr500mg/l以上の高濃度シリコーン廃液をCODCr100mg/l以下のレベルまで簡便且つ安定して低減する方法を提供する。
【解決手段】高濃度シリコーン廃液に対し、pH調整、フェントン処理、pHを高くすることによる析出ならびに凝集沈澱処理、活性汚泥処理、凝集沈澱処理を順に行い、最後に活性炭吸着処理を行い、高濃度シリコーン廃液のCODCrを低減させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度シリコーン廃液のCODCrを低減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンモノマー生産時には種々の廃棄物が生成する。これには、シリコーンモノマー生産時に発生するシリコーンを含む廃液と各クロロシランタンクベントガス等がある。各クロロシラン製造工程で発生するクロロシランのベントガスはアルカリスクラバーで塩酸ガス吸収されるが、クロロシランの加水分解によって生じる廃水に溶解したシロキサンあるいはシラノールがCODCr対象物となる。この主要な成分は、トリメチルシランモノオール、ジメチルシランジオール、メチルシラントリオール、あるいはダイマー、トリマー等である。
【0003】
CODCr規制は、この分解しにくいシリコーンが対象であり、その主発生源は、メチルクロライド製造時に発生するシロキサンを含む廃液とジメチルジクロロシラン加水分解オイル製造時に発生するシロキサンを含む廃液などである。
【0004】
この点を更に詳細に説明すると以下の通りである。
【0005】
メチルクロライドの原料である塩酸の大部分は、ジメチルジクロロシランの加水分解時、オイル製造時に発生する塩酸を再利用している。そのため、塩酸ガスにシロキサン蒸気圧分に相当する低沸点シロキサンが同伴され、最終的には未反応塩酸廃液に含まれて廃水として発生する。ジメチルジクロロシランの加水分解塩酸ガス発生は、吸熱反応のため、−10℃程度のかなり低温で操作されるが、それでもCODCr成分としては600mg/l以上含まれる。また、未反応のメタノールも、反応後できるだけ蒸留回収されるが、残存することが多い。
【0006】
廃水処理が一般的に実施されているCODCr濃度規制のみなら、CODCrの高いシリコーン廃液を集めてフェントン処理等の処理を行うことにより、約半分の濃度までCODCrを低減でき、この処理廃液を低濃度のシリコーン廃液で希釈し、規制値をクリアすることも可能である。しかしながら、水量規制も追加された総量規制下では、低濃度のシリコーン廃液で希釈する方法では限界がある。
【0007】
一方、有機物含有廃水の処理方法の1つとして、過酸化水素および鉄塩を添加して、フェントン反応により有機物を分解するフェントン法が知られており、活性炭処理と組み合わせた手法も提案されている(特許文献1)。
【0008】
しかしながら、従来提案されている方法では、CODCr500mg/l以上の高濃度シリコーン廃液をCODCr100mg/l以下のレベルまで簡便且つ安定して低減することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−277568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、CODCr500mg/l以上の高濃度シリコーン廃液をCODCr100mg/l以下のレベルまで簡便且つ安定して低減する方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記目的達成のため鋭意検討した結果、フェントン処理を含む前処理と活性炭吸着処理を組み合わせることが極めて有効であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち本発明は、高濃度シリコーン廃液に対し、pH調整、フェントン処理、pHを高くすることによる析出ならびに凝集沈澱処理、活性汚泥処理、凝集沈澱処理を順に行い、最後に活性炭吸着処理を行うことを特徴とする高濃度シリコーン廃液のCODCr低減方法である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
シリコーンモノマー製造廃液を、生物処理しやすさを示すBOD値に対して、化学的に分解できる指標(CODCr)として示すと、BOD比率が10%程度と小さく、非常に生物処理しにくい廃水に分類される。
【0014】
次亜塩素酸処理、オゾン処理でシリコーン分解を試みたが、溶解性シリコーンは、非常に安定でCODCrで10%も低下しないことが確認された。一方、酸化力の最も強いヒドロキシルラジカルを生成するフェントン処理では、次亜塩素酸処理、オゾン処理の10%以下に比べ、シリコーンに対して、CODCr比較で30〜60%分解することが確認された。
【0015】
溶解性シリコーンとは、トリメチルシランモノオール、ジメチルシランジオール、メチルトリシランジオールなどのモノシランと部分的に縮重合したジシラン、トリシランなども含まれる極性基を有する低分子シリコーンである。
この他にも塩酸を中和した中和塩などでシロキサン環状物も、イオン交換水には、25mg/l程度しか溶解しないものが、中和塩などで水への溶解度がアップしていく。
【0016】
本発明の高濃度シリコーン廃液のCODCr低減方法においては、前処理として、pH調整、フェントン処理、pHを高くすることによる析出ならびに凝集沈澱処理、活性汚泥処理、凝集沈澱処理を順に行う。
【0017】
これら前処理の各工程に特に制限はなく、従来知られている手法を適用することができる。
(pH調整・フェントン処理)
一般的に、高濃度シリコーン廃液は、中和処理後でpH6〜8程度である。過酸化水素は、酸性下では、安定で酸化力を発揮しないが、鉄イオンが共存すると、フェントン反応に基づくヒドロキシラジカルを生成し、強い酸化力を発揮する。実際には、これらの存在下にpHを調整し、具体的にはpH4.5以下、好ましくはpH2〜4で処理すると、ヒドロキシラジカルを生成し、水溶液中でほとんどの有機物や還元性物質を酸化し、最終的に二酸化炭素と水に分解する。
(析出・沈殿濃縮処理)
フェントン処理後に、pH10〜11まで高くすることにより、Fe(OH)3、Fe(OH)2が鉄化合物として析出し、除去できる。
(活性汚泥処理)
活性汚泥処理は、分解しにくい物質を吸着する性質もあるが、フェントン処理、電解処理などで分解され増加したBOD成分の処理と分解しにくい成分の一部吸着によりCODCr成分を取り込むことによるCODCrの低減効果がある。
【0018】
CODCr成分としては、(1)活性炭処理しにくい極性成分であるメタノール、ジメチルシランジオール、(2)非極性(シロキサン環状物など)、微極性の水溶性成分(トリメチルシランモノオール、シラノール一部縮合物など)が存在する。また、(3)亜硝酸(NO2)、水酸化第1鉄(Fe(OH)2)などの無機物も重クロム酸カリウムで酸化されるため、CODCrの数字を示す。前処理で少なくとも(1)成分、(3)成分を低減させ、活性炭処理で(2)成分を吸着除去することを特徴とする。例えば、化学的分解法として有効性の示された前処理であるフェントン処理では、分解しやすいメタノールが90%以上分解することが確認された。一方、水溶性シリコーンが分解して活性炭に吸着しにくい極性低分子でもあるジメチルシランジオールの増加を懸念したが、60%程減少することが確認された。吸着しにくいメタノール、ジメチルシランジオールが初期にそれぞれ、156mg/l、162mg/lあったものが、それぞれ11mg/l,57mg/lまで低下した。濃度的には、合わせて318mg/lから68mg/lまで低下したことになる。一方、CODCrで見ると、459mg/lから96mg/lまで低下したことになる。活性汚泥処理後の処理液は、高分子凝集剤等を添加後、沈殿槽にて汚泥を凝集沈殿させ、汚泥と処理液とに分けられる。
【0019】
この活性炭に吸着しにくい極性分子を前処理工程で可能な限り低下させ、その後に、活性炭吸着法で残存CODcr成分を吸着する方法である。ただ、粒状活性炭吸着量は、比較的少ないのですぐにCODCr100mg/lを超えてしまうので、少なくとも2系列を有し、半連続的に、あるいは連続的に、処理済粒状活性炭を温水、スチーム脱着、乾燥再生をおこなうことが不可欠となる。
【実施例】
【0020】
実施例1
CODCrの主発生源であるメチルクロライド製造時に発生するシロキサンのCODCrを測定したところ、2500mg/lであった。残存メタノール、ジメチルシランジオールは、初期にはそれぞれ156mg/l,162mg/l存在した。CODCrに換算すると、それぞれ234mg/l,225mg/lとなり、合わせて459mg/lと推定された。
【0021】
CODCrを100mg/l以下にするには、この活性炭吸着しにくい上記2成分を目安となる100mg/l程度まで前処理で低下させ、その後に、活性炭吸着塔を通す必要がある。
【0022】
サンプル264gに硫酸鉄7水和物4g添加攪拌しているところに、過酸化水素を5g添加と10g添加を実施した。これらの存在下にpH3でフェントン処理をしたところ、双方とも、メタノール、ジメチルシロキサンジオール由来のCODCr成分は、目安となる100mg/l程度まで低下することが確認された。その後に、粒状活性炭充填塔を通すことで、CODCr100mg/l以下の処理水が得られた。
【0023】
実施例2
CODCrの主発生源であるジメチルジクロロシランの加水分解時に発生するシロキサンを主成分とする廃液のCODCrを測定したところ2150mg/lであった。まず、過酸化水素および鉄塩を添加し、これらの存在下にpH3でフェントン処理をしたところ、4時間後にはCODCr925mg/lまで低下した。その後pHを高くすることによって鉄塩を十分析出沈殿分離させた。次に、活性汚泥処理したところCODCrは520mg/lまで低下した。最後に、活性汚泥を凝集沈澱させたものを濾紙濾過して取り除き、粒状活性炭をカラムにつめた活性炭吸着塔を通したところ、CODCr100mg/l以下を示した。
実施例2の操作によるデータを表1に示す。
【0024】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高濃度シリコーン廃液に対し、pH調整、フェントン処理、pHを高くすることによる析出ならびに凝集沈澱処理、活性汚泥処理、凝集沈澱処理を順に行い、最後に活性炭吸着処理を行うことを特徴とする高濃度シリコーン廃液のCODCr低減方法。

【公開番号】特開2010−247118(P2010−247118A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101595(P2009−101595)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000221111)モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社 (257)
【Fターム(参考)】