説明

高濃度脂肪アルコールスルフェート製剤

本発明は、35重量%超の脂肪アルコールスルフェート(FAS)を含んでなる濃厚脂肪アルコールスルフェート製剤に関する。該製剤は水を含むが、FASに加えてポリオールまたは油溶性ベタインも含む。該製剤は、洗剤および洗浄剤の製造に適しているが、化粧品、特にデンタルケア製品の製造にも適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、アルキルスルフェート界面活性剤に基づく濃厚界面活性製剤、その使用、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪アルコールスルフェートは、多数の洗剤および洗浄剤だけでなく化粧品、例えば、シャンプー、皮膚洗浄組成物、皮膚用石鹸および練り歯磨きにも使用される、既知のアニオン性界面活性剤である。
【0003】
アルキルスルフェートは、一般に、適当な脂肪アルコールをSOガスで硫酸化することによって工業的に製造される。その過程で粗生成物として生じるアルキル硫酸を、その後、適当なアルカリ、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液の存在下で中和し、アルキルスルフェートを得る。そのような方法の終わりに、最大30重量%のアニオン性界面活性剤を含む界面活性剤含有水性製剤を得る。
【0004】
そのような製剤を輸送するため、輸送がより容易になる乾燥生成物を得る目的で、水がしばしば除去される。しかしながら、水の除去は、多くのエネルギーを消費し、従って高価である、工程段階を構成する。直接製造された水性組成物自体を輸送することは有利ではない。そうすることで、僅かな比較的少量の活性物質(最大30重量%)および多量の水が輸送される。更に、乾燥脂肪アルコールスルフェートの配合には時間を要する。液状脂肪アルコールスルフェートの使用は一般に、シャンプー、皮膚洗浄組成物、皮膚用石鹸、および練り歯磨きのメーカー側に、20%を超えるバッチ時間短縮をもたらす。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、前記問題を回避するために、ポンプ輸送可能な、液状または若干ペースト状である高濃度脂肪アルコールスルフェート製剤を提供する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある種の添加剤を添加することによって、比較的高濃度のポンプ輸送可能な、即ち低粘性の脂肪アルコール製剤が得られることが見出された。
【0007】
従って、本特許出願はまず、
少なくとも
(a)組成物の総重量に基づいて35重量%の、一般式(I):
O−SOX (I)
[式中、Rは、6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の脂肪族アルキルおよび/またはアルケニル基であり、Xは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される1種以上の脂肪アルコールスルフェートと、
(b)ポリオール、および/またはベタイン、および/または脂肪酸アルキルアミド、並びに
(c)水
を含んでなる組成物を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
しばしば「脂肪アルコールスルフェート」とも称される、アルキルスルフェートおよび/またはアルケニルスルフェートは、式(I):
O−SOX (I)
[式中、Rは、6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の脂肪族アルキルおよび/またはアルケニル基であり、Xは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される、第一級アルコールの硫酸化生成物を意味すると理解される。本発明において使用できるアルキルスルフェートの典型的な例は、下記アルコールの硫酸化生成物である:カプロンアルコール、カプリルアルコール、カプリンアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、パルモレイルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、エライジルアルコール、ペトロセリニルアルコール、アラキルアルコール、ガドレイルアルコール、ベヘニルアルコールおよびエルシルアルコール、並びに工業用メチルエステル画分またはRoelenのオキソ合成由来のアルデヒドを高圧水素化することにより得られるそれらの工業用混合物。硫酸化生成物は、好ましくはアルカリ金属塩、特にナトリウム塩の状態で使用され得る。
【0009】
ナトリウム塩状態の、C16/18獣脂脂肪アルコールおよび/または同程度の炭素鎖分布の植物性脂肪アルコールに基づくアルキルスルフェートが特に好ましい。ドデシルアルコールに基づくアルキルスルフェートは、デンタルケア組成物およびデンタルクリーニング組成物に使用されるので、特に重要であり得る。しかしながら、12〜14個の炭素原子を有する脂肪アルコールからの脂肪アルコールカットが更に好ましく、この場合、例えば脂肪アルコールの量に基づいて、10重量%未満、好ましくは5重量%未満、特に3重量%未満の、極めて少量のC16脂肪アルコール画分しか含まないカットを使用することが本発明では特に好ましい。更に、飽和脂肪アルコールおよび前記カットが本発明ではとりわけ好ましい。
【0010】
本発明の組成物は、高濃度である、即ち、本特許出願において組成物全体に基づいて少なくとも35重量%の脂肪アルコールスルフェートを含んでなるといった事実を特徴とする。しかしながら、特許請求されている技術的教示に従った本発明の組成物は、組成物の総重量に基づいて、好ましくは35重量%超、より好ましくは36重量%〜70重量%、特に40〜60重量%、特に好ましくは40〜50重量%の量で脂肪アルコールスルフェートを含んでなり得る。
【0011】
本発明の本質的特徴は、ポリオール、またはベタインおよび/または脂肪酸アルキルアミドの存在である。ただし、この3つの群のうち、ポリオールが好ましい選択肢である。
【0012】
本発明に適したポリオールは、好ましくは2〜15個の炭素原子および少なくとも2個のヒドロキシル基を有する。ポリオールは更なる官能基、特にアミノ基を含有することもでき、および/または窒素で変性されていてもよい。典型的な例は以下である:グリセロール;アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、および100〜1000ダルトンの平均分子量を有するポリエチレングリコール;1.5〜10の自己縮合度を有する工業用オリゴグリセリル混合物、例えば、40〜50重量%のジグリセロール濃度を有する工業用ジグリセロール混合物;メチロール化合物、例えば、特に、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール;低級アルキルグルコシド、特に、アルキル基に1〜8個の炭素原子を有するもの、例えば、メチルグルコシドおよびブチルグルコシド;5〜12個の炭素原子を有する糖アルコール、例えば、ソルビトールまたはマンニトール;5〜12個の炭素原子を有する糖、例えば、グルコースまたはスクロース;アミノ糖、例えばグルカミン;ジアルコールアミン、例えば、ジエタノールアミンまたは2−アミノ−1,3−プロパンジオール。好ましいポリオールは、グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはソルビトールからなる群から選択される。グリセロールおよびソルビトールが特に好ましい。
【0013】
ベタインは、アミン化合物のカルボキシアルキル化、好ましくはカルボキシメチル化によって主に生成される、既知の界面活性剤である。好適には、出発物質を、ハロカルボン酸またはその塩、特にクロロ酢酸ナトリウムと縮合させて、ベタイン1モルにつき塩1モルを生成させる。更に、不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸の付加も可能である。油、即ちトリグリセリドの反応によって得られるベタインが特に好ましい。例として、N,N−ジメチル−N−(ココアミドプロピル)アンモニウムアセトベタイン(Dehyton PK 45 - Cognis)を挙げることができる。
【0014】
油溶性ベタインが好ましい。
【0015】
脂肪酸アルキルアミドは、同様に、それ自体知られている化合物である。脂肪酸アルキルアミドはまた、狭義には脂肪酸アルカノールアミドを包含すると理解される。脂肪酸ジエタノールアミドまたは脂肪酸モノエタノールアミドが、本発明では特に好ましい。これに関連して、7〜21個の炭素鎖長さを有する飽和または不飽和、分枝または非分枝の脂肪酸を含んでなる、このタイプの化合物が更に好ましい。それらは、例えば"Comperlan"の名称で本特許出願人よって販売されている。ヤシ脂肪酸モノエタノールアミドに基づく脂肪酸アルキルアミドが特に好ましい。油溶性脂肪酸アルキルアミドが特に好ましいと思われる。
【0016】
組成物中にはポリオールだけでなくベタインおよび/または脂肪酸アルキルアミドが、組成物の総重量に基づいて、10〜45重量%、好ましくは15〜40重量%、特に25〜35重量%の量で存在する。ポリオール、ベタインおよび/または脂肪酸アルキルアミドの混合物を使用することが好ましい。
【0017】
本発明の組成物は、脂肪アルコールスルフェート、ポリオールまたはベタインまたは脂肪酸アルキルアミド、および水を必ず含んでなるが、他の成分、例えば無機塩または非イオン性界面活性剤を更に含んでなることもできる。しかしながら、3つの特定成分のみからなる組成物が特に好ましい。
【0018】
水性組成物は、好ましくは8より大きいpHを有する。pHは好ましくは9〜12の範囲であり、特に好ましくは10〜12の範囲である。組成物は、液体状態またはペースト状態、好ましくは低粘性のポンプ輸送可能なペースト状態であり得る。25℃でブルックフィールドに従って測定された典型的な粘度(スピンドル3または4、10rpm)は、500〜10000mPas、好ましくは1000〜8000mPasである。
【0019】
本発明において好ましい組成物は、組成物全体の重量に基づいて、(a)36〜45重量%の、式(I)で示されるアルキルスルフェート、(b)28〜45重量%の、ポリオール(ここで、グリセロールおよび/またはソルビトールが好ましい)、またはベタイン、および/または脂肪酸アルキルアミド、(c)10〜34重量%の水を含んでなる。
【0020】
濃厚脂肪アルコール製剤は、好ましくは、水/ポリオールまたはベタイン混合物の存在下で硫酸脂肪アルコールエステルを中和することによって製造される。従って、本発明の更なる主題は、一般式:R−OSOHで示される未中和アルキルスルフェートを所定量のアルカリと一緒に、(A)水と(B)ポリオールまたはベタインとの混合物に連続的に添加する、少なくとも35重量%の式(I)で示されるアルキルスルフェートを含んでなる前記製剤の製造方法であって、(A)と(B)との体積比を3:1〜1:3の値に調節し、アルカリの量がアルキルスルフェートを完全に中和するのに適しており、式(I)で示される中和アルキルスルフェートの濃度が少なくとも35重量%に達するまで、(A)と(B)との混合物と、未中和アルキルスルフェートおよびアルカリとの混合を継続する、方法に関する。
【0021】
脂肪アルコールの硫酸化は、SOを用いて既知の方法で実施される。次いで、粗硫酸化生成物を(A)と(B)との混合物に計量添加し、加えて、同時の混合および中和が起こるように、アルカリ金属水酸化物水溶液、好ましくは水酸化ナトリウム水溶液を好適には独立して計量添加する。脂肪アルコールスルフェート製剤の所望の濃度範囲に達するまで、この処理を実施する。続いて、所望により、更なる添加剤または成分を計量添加することもできる。その後、プロセス生成物を例えば漂白および/または芳香付けすることもできる。(A)と(B)との量比を互いに変えることが有利であり得る。ここで、3:1〜1:1、特に2:1〜1.5:1の範囲の体積比がとりわけ好ましい。
【0022】
本発明の更なる主題は、洗剤または洗浄剤、或いは化粧品、例えばヘアシャンプーまたは練り歯磨き若しくは類似ケア製品を製造するための、前記組成物の使用に関する。本教示における濃厚アルキルスルフェートを含んでなる、洗剤、洗浄剤および/または化粧品も同様に、保護が求められる発明の主題である。
【実施例】
【0023】
C12:65〜71重量%;C14:22〜28重量%;C16:3〜6重量%の定性的組成を有する脂肪アルコール混合物を、SOプラントで硫酸化した。次いで、硫酸化粗生成物を、30%濃度のNaOH水溶液と一緒に、ステンレス製中和容器内の、重量比3:1のポリオールと水との混合物に連続的に計量添加した。中和が起こった後、最終生成物を取り出した。最終生成物は、42重量%の硫酸化脂肪アルコール含量を有していた。pHは11であった。色は50(APHA、20重量%濃度溶液)と測定された。
【0024】
このようにして、以下の組成(全データの単位:重量%)を有する生成物(前記定性的組成の脂肪アルコール混合物に従った脂肪アルコールスルフェート)を製造した。
【0025】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも
(a)組成物の総重量に基づいて35重量%の、一般式(I):
O−SOX (I)
[式中、Rは、6〜22個、好ましくは12〜18個の炭素原子を有する、直鎖または分枝の脂肪族アルキルおよび/またはアルケニル基であり、Xは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属、アンモニウム、アルキルアンモニウム、アルカノールアンモニウムまたはグルカンモニウムである。]
で示される1種以上の脂肪アルコールスルフェートと、
(b)少なくとも1種のポリオール、および/または脂肪酸アルキルアミド、および/またはベタイン、並びに
(c)水
を含んでなる組成物。
【請求項2】
組成物の総重量に基づいて、35重量%超、好ましくは36重量%〜70重量%、特に40〜60重量%、特に好ましくは40〜50重量%の量で脂肪アルコールスルフェートを含んでなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
グリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはソルビトールからなる群から選択されるポリオールを含んでなり、ここで、グリセロールおよび/またはソルビトールが特に好ましい、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
組成物の総重量に基づいて、10〜45重量%、好ましくは15〜40重量%、特に25〜35重量%の量で成分b)を含んでなる、請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
組成物の総重量に基づいて、5〜40重量%、好ましくは10〜30重量%、特に15〜25重量%の量で水を含んでなる、請求項1〜4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
組成物全体の重量に基づいて、
(a)36〜45重量%の、式(I)で示されるアルキルスルフェート、
(b)28〜45重量%の、ポリオール、ベタイン、および/または脂肪酸アルキルアミド、
(c)10〜34重量%の水
を含んでなる、請求項1〜5のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
液体または低粘性ポンプ輸送可能ペーストの状態である、請求項1〜6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
一般式:R−OSOHで示される未中和アルキルスルフェートおよびアルカリを、(A)水と(B)ポリオールまたは油溶性ベタインとの混合物に連続的に添加することを含む、少なくとも35重量%の式(I)で示されるアルキルスルフェートを含んでなる請求項1に記載の製剤の製造方法であって、(A)と(B)との体積比を3:1〜1:3の値に調節し、アルカリの量がアルキルスルフェートを完全に中和するのに適しており、式(I)で示される中和アルキルスルフェートの濃度が少なくとも35重量%に達するまで、(A)と(B)との混合物と、未中和アルキルスルフェートおよびアルカリとの混合を継続する、方法。
【請求項9】
洗剤または洗浄剤、或いは化粧品、例えばヘアシャンプーまたは練り歯磨きを製造するための、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項10】
請求項1に記載の脂肪アルコールスルフェート製剤を含んでなる、洗剤、洗浄剤、または化粧品。

【公表番号】特表2010−539262(P2010−539262A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524384(P2010−524384)
【出願日】平成20年9月6日(2008.9.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/007295
【国際公開番号】WO2009/036902
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(505066718)コグニス・アイピー・マネージメント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング (191)
【氏名又は名称原語表記】Cognis IP Management GmbH
【Fターム(参考)】