説明

高炉内装入物のプロフィル測定装置および測定方法

【課題】大型高炉においても、高炉内の高濃度粉塵の影響を受けず、装置が小型かつ安価であって、短時間で測定可能な高炉内装入物のプロフィル測定装置および測定方法を提供する。
【解決手段】プロフィル測定装置1は、高炉2の炉頂部に設置されたマイクロ波距離計11と、マイクロ波距離計11のマイクロ波放射方向を高炉の直径方向に走査させる走査駆動装置12と、マイクロ波距離計11から得られた距離データおよび走査駆動装置12から得られた走査角度データを組み合わせて、高炉内装入物4の表面プロフィルを演算するデータ処理部14とを具備する。マイクロ波距離計11は、炉体3の中心を挟んでマイクロ波距離計11の設置位置と反対側にある高炉内装入物4までの距離を測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉内装入物の表面の形状(プロフィル)の測定装置および測定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、銑鉄の製造における高炉には、炉頂から装入物として、粉鉄鉱石を焼き固めた焼結鉱や塊状鉄鉱石等(以下では単に鉄鉱石または鉱石と記す)及びコークスが交互に装入されて堆積し、炉内に鉱石層およびコークス層が形成される。高炉下方にある羽口から吹き込まれる熱風とコークスとの反応によって生じるCOガスにより、鉄鉱石は加熱、還元され(間接還元)、また、一部はコークスにより直接的に還元されて、軟化融着帯を形成した後、溶滴となる。溶滴、すなわち溶銑は、コークス層の間を通過して炉底部に溜まる。炉内に形成された鉱石層およびコークス層は、炉内を徐々に降下する。
【0003】
以上の工程において、高炉に装入された鉄鉱石及びコークスによって形成される炉頂部の装入物分布を調整し、適正なガス分布を得ることは非常に重要である。高炉内炉頂部における装入物のプロフィル(表面形状)は、ベル式装入装置ではムーバブルアーマを、また、ベルレス式装入装置では分配シュートを介する装入物の落下軌跡により決定される。通常、炉頂部の装入物のプロフィルは、高炉の中心鉛直方向(軸心)を軸として中央部が低い略逆円錘形状をなしている。高炉内装入物のプロフィルは、高炉の操業にとって重要な情報であり、従来から炉内に装入され堆積した装入物のプロフィルを測定する方法が開発され、実用化されてきた。
【0004】
近年は、高炉炉頂部の縦断面の模式図である図4に示すように、炉体3の炉口部側面から、高炉2の軸心に向けて、マイクロ波距離計を備えた計測ランス9を挿入し、マイクロ波を高炉内装入物4へ向けて発信して、高炉内装入物4の表面までの距離を測定する方式(例えば特許文献1)が主流である。この方式は、炉体3内の高濃度の粉塵中でも、マイクロ波の減衰が小さいので距離測定が可能であるという利点があるものの、装置が大型かつ高価で、操作が複雑である。また、原料の装入時には、計測ランス9を炉体3の外へ退避させなければならないため、一日に数回程度しか使用できないという問題がある。
【0005】
そこで、マイクロ波の長所を維持しつつ、その短所である設備費の増大を回避することを目的として、例えば特許文献2に記載された技術が開示されている。これは、マイクロ波距離計の発信機及び受信機を組み込んだ測定ヘッド(計測ランス)を、原料装入装置よりも上方に設置し、レーダー発信器の放射方向が特定の角度で旋回でき、炉中の装入物の表面輪郭を測定するようにして、原料装入時にも計測ランスを炉外へ退避させずにレベル測定を行うものである。
【0006】
さらに、距離測定方式として、マイクロ波距離計の代わりにレーザを用いる方法が特許文献3に開示されている。また、特許文献4には、赤外線カメラを使用する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実公平1−12216号公報
【特許文献2】特開平6−212223号公報
【特許文献3】特開2000−310520号公報
【特許文献4】特開2008−96298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、高炉内の装入物表面は逆円錘形状であるため、特許文献2記載の首振り式のマイクロ波距離計では、炉内中心から手前側の装入物表面のプロフィルを測定する場合に、装入物表面に対するマイクロ波入射方向の角度が小さくなる。マイクロ波距離計は、マイクロ波を発射する電気信号と、装入物表面からの反射波を受信して得られる電気信号とをミキシングして測定するFMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式(周波数変調連続波方式)が多く、装入物表面に対するマイクロ波入射方向の角度が小さくなると、反射波の強度が弱くなり、測定精度が低下し、場合によっては測定不能となる。
【0009】
また、特許文献3で開示されているレーザを用いる方法および特許文献4で開示されている赤外線カメラを使用する方法は、いずれもマイクロ波を用いる方法に比べ、原理上、高炉内の高濃度粉塵などの影響を受けやすいという欠点がある。特に、大型高炉では、測定対象までの距離が長くなるため、粉塵の影響が大きく、測定精度に問題がある。
【0010】
このような従来の高炉内装入物の表面のプロフィルを測定する時の問題点に鑑みて、本発明は、特に大型高炉においても、高炉内の高濃度粉塵の影響を受けず、装置が小型かつ安価であって、装入装置の操業の邪魔にならずに短時間で測定可能な高炉内装入物のプロフィル測定装置および測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記問題を解決するため、本発明は、高炉の炉頂部に設置され、高炉内装入物の表面までの距離を測定するマイクロ波距離計と、前記マイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させる走査駆動装置と、前記マイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算するデータ処理部とを具備し、前記高炉の中心軸を挟んで前記マイクロ波距離計の設置位置と反対側にある前記高炉内装入物の表面までの距離を測定することを特徴とする高炉内装入物のプロフィル測定装置を提供する。
【0012】
また、高炉の炉頂部に、前記高炉の中心軸に対して対称位置にそれぞれ設置され、高炉内装入物の表面までの距離を測定する2つのマイクロ波距離計と、前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させる走査駆動装置と、前記2つのマイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算するデータ処理部とを具備し、前記データ処理部は、前記2つのマイクロ波距離計から得た2組の距離データおよび走査角度データに基づいて、前記装入物の表面に対する前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波の入射角度が50度よりも小さくならない範囲で、あらかじめ定めた走査角度範囲内は一方のマイクロ波距離計の距離データを、前記走査角度範囲外は他方のマイクロ波距離計の距離データを用い、これらの距離データを合成することにより前記高炉内装入物のプロフィルを演算することを特徴とする高炉内装入物のプロフィル測定装置を提供する。
【0013】
前記2つのマイクロ波距離計のマイクロ波が、同時に、同一速度で同一角度走査することが好ましい。
【0014】
また、本発明は、高炉の炉頂部に設置したマイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させ、前記高炉の中心軸を挟んで前記マイクロ波距離計の設置位置と反対側にある前記高炉内装入物までの距離を測定し、前記マイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算することを特徴とする高炉内装入物のプロフィル測定方法を提供する。
【0015】
さらにまた、高炉の炉頂部に、前記高炉の中心軸に対して対称位置にそれぞれ設置した2つのマイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向にそれぞれ走査させ、前記2つのマイクロ波距離計それぞれから入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データに基づいて、前記装入物の表面に対する前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波の入射角度が50度よりも小さくならない範囲で、あらかじめ定めた走査角度範囲内は一方のマイクロ波距離計の距離データを、前記走査角度範囲外は他方のマイクロ波距離計の距離データを用い、これらの距離データを合成するとともに走査角度データを組み合わせることにより、前記高炉内装入物のプロフィルを演算することを特徴とする高炉内装入物のプロフィル測定方法を提供する。
【0016】
前記マイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を固定して前記高炉内装入物の降下速度を測定し、前記走査駆動装置によりマイクロ波を走査して前記高炉内装入物のプロフィルを測定してもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、装置が小型且つ安価であり、高濃度粉塵下の高炉内においても短時間に高精度で高炉内装入物のプロフィルが測定できる。したがって、高炉の鉄鉱石やコークスの装入等の操業に影響を与えることなく、高頻度で、装入物表面のプロフィルの変化を正確に把握することができ、高炉の炉況悪化を未然に防止して、高炉の操業を安定化させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の測定装置を備えた高炉炉頂部の例を示す縦断面図である。
【図2】図1の測定装置の詳細な構成を示す拡大図である。
【図3】本発明の測定装置を備えた異なる高炉炉頂部の例を示す縦断面図である。
【図4】従来の測定装置を備えた高炉炉頂部を示す縦断面図である。
【図5】実施例で使用したマイクロ波距離計の構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を、図を参照して説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
図1に、本発明のプロフィル測定装置を取り付けた高炉2の例の模式図を示す。炉口部にはベルレス式装入装置5が設けられ、鉄鉱石やコークスが、分配シュート6を通って炉内に装入される。プロフィル測定装置1a、1bは、炉頂部の、例えば炉体3よりも外側に、高炉2の中心軸に対して対称位置にそれぞれ設置されている。図1において、高炉内の装入物4は平滑な表面を有する逆円錐形状に示したが、実際には焼結鉱やコークスの堆積層であり、マイクロ波の波長のオーダーでみれば粗度を有している。
【0021】
プロフィル測定装置1aは、図2に示すように、マイクロ波発信回路を備えたマイクロ波距離計11、走査駆動装置12、アンテナ(ホーン形)13、データ処理部14を有している。マイクロ波距離計11はFMCW方式であり、アンテナ13から放射した、周波数が連続的に変化するマイクロ波の測定対象物からの反射を検出し、放射から反射波の受信までの時間分だけ変化した周波数から距離を算出するものであって、市販品を用いて構成することができる。マイクロ波を用いることにより、温度や粉塵等の環境の影響を受けにくく、正確に測定できる。アンテナ13は、走査駆動装置12の作動により図2の矢印方向にアンテナ中心軸すなわちマイクロ波発射方向が、高炉内装入物の表面において、高炉2の中心軸を通る直径方向に回転して走査する。アンテナ13はケーシング15に収納され、ケーシング15と炉体3内部との間に測定窓16が設けられている。測定時には測定窓16が開いてマイクロ波を炉内に向けて放射する。高炉2の休風(高炉の短期休止状態)時には、測定窓16を閉じる。なお、測定時には、ケーシング15から高炉内部のガスが漏洩しない構造にするとともに、ケーシング15内への粉塵等の侵入を防止する目的で、窒素ガスによるパージを行うとよい(図示省略)。以上の構成は、図1の左側のプロフィル測定装置1bについても同様である。
【0022】
図1に示すように、例えば図の右側のプロフィル測定装置1aが直下のA点までの距離を測定する際には、マイクロ波は高炉内装入物4の表面に対して略直角に入射する。ところが、走査駆動装置12によりアンテナ13が回転し、測定位置がC点に近づくにつれて、高炉内装入物4の表面への入射角度が小さくなる。入射角度が小さくなると、反射波の強度が小さくなり、測定精度が低下する。一方、例えばB点において、右側のプロフィル測定装置1aから放射されたマイクロ波の入射角度θ1と、左側のプロフィル測定装置1bから放射されたマイクロ波の入射角度θ2とを比較すると、θ2の方が大きく、直角に近い。さらに、B点からC点に近づくにつれて、その差は開く。すなわち、B点からC点の間を測定するには、左側のプロフィル測定装置1bの測定データの方が反射波の強度が大きく、S/N比がよく測定できるので、測定精度が良い。このとき、B点からC点の間は、左側のプロフィル測定装置1bの設置位置の反対側であるため、高炉内装入物4までの距離は、右側のプロフィル測定装置1aよりも遠くなるが、マイクロ波を用いることにより、高炉2内の粉塵等の影響を受けにくいので、距離による測定精度の低下は無視できる。
【0023】
したがって、例えば、図1の右側のプロフィル測定装置1aについては、A点からB点まで、およびC点からD点までの測定データを採用し、左側のプロフィル測定装置1bは、E点からD点まで、およびC点からB点までの測定値を採用するように、データ処理部14において測定データを選択することにより、精度の高いプロフィル測定結果を得ることができる。測定範囲については、走査駆動装置12から得られる走査角度データで予め設定し、例えばマイクロ波の反射波の量が一定量以下になった位置を図1のB点またはD点と決めることができる。さらに、各プロフィル測定装置1a、1bの測定範囲は、高炉内装入物4の表面に対するマイクロ波の入射角度(例えばB点ではθ1およびθ2)が50度よりも小さくならない範囲に設定する。なお、図1のB点とD点は、高炉2の中心軸(鉛直上下方向)に対して対称位置であり、炉体3の側壁からB点までの距離aは、実際の高炉内装入物4の形状に応じて、例えば炉体3の半径の1/4〜1/3程度とされる。
【0024】
以下、図1、図2に示す2つのプロフィル測定装置1a、1bによる測定手順を説明する。
【0025】
先ず、両方のプロフィル測定装置1a、1bのアンテナ13の向きを初期位置(それぞれA点、E点を測定する位置)に固定し、それぞれのアンテナ13からマイクロ波を発信して、高炉内装入物4までの距離を測定する。この距離データを例えば1秒など所定の時間間隔で測定し、データ処理部14において、高炉内装入物4の降下速度を演算する。
【0026】
次に、高炉内装入物4のプロフィル測定を開始する。アンテナ13の初期位置から、予め設定した所定位置までの間、2つのプロフィル測定装置1a、1bを同時に、同一速度、同一角度でマイクロ波が走査するように、各走査駆動装置12によりアンテナ13を回転させる。所望の空間分解能に応じて予め設定した角度ごとに、各マイクロ波距離計11は高炉内装入物4までの距離を測定してその距離データを、また、各走査駆動装置12はそのときの走査角度データを、データ処理部14へ送る(往路測定)。なお、各走査駆動装置12の走査、および各マイクロ波距離計11による測定工程を、データ処理部14で制御させると良い。また、各走査駆動装置12には、それぞれのアンテナ13の走査角度を測定するロータリーエンコーダを設置しても良い。
【0027】
その後、往路測定と同様に、所定位置から初期位置までの間をマイクロ波が走査し、走査角度データおよび距離データをデータ処理部14へ出力する(復路測定)。
【0028】
データ処理部14は、入力された各走査角度データおよびそのときの距離データに基づいて、往路測定と復路測定による同一走査角度時の距離データを平均化することにより、測定中の高炉内装入物4降下の影響を排除した高炉内装入物4のプロフィルを演算する。なお、走査角度範囲が狭くて短時間で一連の測定が完了するときには、往路の測定データだけでも、十分な精度のプロフィルが得られる。
【0029】
さらに、データ処理部14において、2つのプロフィル測定装置1a、1bから得られたデータの演算結果より、それぞれのプロフィル測定装置1a、1bの所定の走査角度範囲から得られたデータを抜粋し、それらを組み合わせることにより、高炉内装入物4のプロフィルを決定する。なお、各プロフィル測定装置1a、1bの高炉2内での設置位置を、ある点Pを基準にして求めておき、予めデータ処理部14に設定しておけば、点Pに対する形状データとして、高炉内装入物4の表面のプロフィルを導出することができる。
【0030】
図3は、本発明にかかるプロフィル測定装置1を高炉2に1つだけ設けた例を示す。この場合、プロフィル測定装置1は、高炉内装入物4の表面に対するマイクロ波の入射角度が50度よりも小さくならない範囲で、例えば直下付近のA点からB点までの間、および、炉体3の中心軸に対して反対側のC点からD点までの間における測定結果を抜粋して、高炉内装入物4のプロフィルを演算する。高炉内装入物4の表面は、おおよそ中央のC点を頂点とした逆円錐形状であり、高炉2の中心軸に対して略対称形であるため、これらの測定結果から全体のプロフィルを推測しても、実際の状態に極めて近いプロフィル測定結果を得ることができる。あるいはまた、プロフィル測定装置1の設置位置の反対側のみを測定し、C点からE点までの間の測定データによって全体のプロフィルを推測しても構わない。また、プロフィル測定装置1を4箇所の高炉炉頂部に配置すると、さらに詳細なプロフィルを測定することが可能である。
【0031】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0032】
例えば、図1に示すように、高炉2に2つのマイクロ波距離計11を設けた場合、一方のみに走査駆動装置を設けてマイクロ波を走査させ、他方はマイクロ波放射方向を固定しても構わない。この場合、マイクロ波を走査させる方のマイクロ波距離計11によって、図3の例と同様にして高炉内装入物4のプロフィルを測定し、他方は高炉内装入物4の降下速度測定用として用いられる。
【0033】
また、データ処理部14は、マイクロ波距離計の近くに設置する必要はなく、さらに、複数のマイクロ波距離計の測定の制御およびデータ処理を1台で実行するようにしても良い。データ処理部は、例えばパーソナルコンピュータで構成することができ、その際に、上記の測定のシーケンスを制御、およびデータ処理を実行するためのコンピュータプログラムを作成してロードする。
【実施例1】
【0034】
高炉内装入物の表面に対するマイクロ波の入射角度による測定精度を実験により調査した。マイクロ波距離計は、図5に示すように、コントローラ22から導波管23、ホーンアンテナ24を介してマイクロ波25を放射する市販のFMCW方式のものを用いた。このマイクロ波距離計21の主な仕様は、使用周波数が10GHz帯、マイクロ波出力が0.3mW、測定距離が最大50m、測定精度が±10mmである。さらに、図示するように、ホーンアンテナ24の先端に、ホーンアンテナ24の先端径(200mm)と同径、長さ500mmの円筒26を取り付けて、マイクロ波25が広範囲に広がり過ぎるのを抑制した。測定対象物として焼結鉱を用い、測定範囲を1m×1mとし、測定位置に対するマイクロ波の入射角度が90度、70度、50度、30度のそれぞれの場合について、距離測定を行った。なお、本実施例では、測定対象の面を傾けることによって、マイクロ波の入射角度を変化させた。測定距離は、5000mm、7500mm、10000mmであり、それぞれ90度での測定値を基準とした。それぞれの角度において、90度での測定値に対する誤差の目標を±100mm以内とした。結果を表1に示す。
【0035】
【表1】

【0036】
表1に示すように、入射角度が70度および50度の場合は、いずれも誤差が±100mm以内であり、ほぼ正確に測定できたが、30度の場合には、誤差が極めて大きくなった。したがって、マイクロ波の入射角度が50度以上であれば、正確な距離が測定できることがわかった。なお、測定対象物がコークスの場合にも、ほぼ同様の結果が得られた。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、円筒状の容器内の逆円錐状の堆積物の表面形状の測定に適用できる。
【符号の説明】
【0038】
1、1a、1b プロフィル測定装置
2 高炉
3 炉体
4 高炉内装入物
5 ベルレス式装入装置
6 分配シュート
9 計測ランス
11、21 マイクロ波距離計
12 走査駆動装置
13 アンテナ
14 データ処理部
15 ケーシング
16 測定窓
22 コントローラ
23 導波管
24 ホーンアンテナ
25 マイクロ波
26 円筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の炉頂部に設置され、高炉内装入物の表面までの距離を測定するマイクロ波距離計と、
前記マイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させる走査駆動装置と、
前記マイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算するデータ処理部とを具備し、
前記高炉の中心軸を挟んで前記マイクロ波距離計の設置位置と反対側にある前記高炉内装入物の表面までの距離を測定することを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項2】
高炉の炉頂部に、前記高炉の中心軸に対して対称位置にそれぞれ設置され、高炉内装入物の表面までの距離を測定する2つのマイクロ波距離計と、
前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させる走査駆動装置と、
前記2つのマイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算するデータ処理部とを具備し、
前記データ処理部は、前記2つのマイクロ波距離計から得た2組の距離データおよび走査角度データに基づいて、前記装入物の表面に対する前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波の入射角度が50度よりも小さくならない範囲で、あらかじめ定めた走査角度範囲内は一方のマイクロ波距離計の距離データを、前記走査角度範囲外は他方のマイクロ波距離計の距離データを用い、これらの距離データを合成することにより前記高炉内装入物のプロフィルを演算することを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項3】
前記2つのマイクロ波距離計のマイクロ波が、同時に、同一速度で同一角度走査することを特徴とする、請求項2に記載の高炉内装入物のプロフィル測定装置。
【請求項4】
高炉の炉頂部に設置したマイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向に走査させ、前記高炉の中心軸を挟んで前記マイクロ波距離計の設置位置と反対側にある前記高炉内装入物までの距離を測定し、前記マイクロ波距離計から入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データを組み合わせて、前記高炉内装入物の表面プロフィルを演算することを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定方法。
【請求項5】
高炉の炉頂部に、前記高炉の中心軸に対して対称位置にそれぞれ設置した2つのマイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を、高炉内装入物の表面において前記高炉の中心軸を通る直径方向にそれぞれ走査させ、前記2つのマイクロ波距離計それぞれから入力された距離データおよび前記走査駆動装置から入力された走査角度データに基づいて、前記装入物の表面に対する前記2つのマイクロ波距離計それぞれのマイクロ波の入射角度が50度よりも小さくならない範囲で、あらかじめ定めた走査角度範囲内は一方のマイクロ波距離計の距離データを、前記走査角度範囲外は他方のマイクロ波距離計の距離データを用い、これらの距離データを合成するとともに走査角度データを組み合わせることにより、前記高炉内装入物のプロフィルを演算することを特徴とする、高炉内装入物のプロフィル測定方法。
【請求項6】
前記マイクロ波距離計のマイクロ波放射方向を固定して前記高炉内装入物の降下速度を測定し、前記走査駆動装置によりマイクロ波を走査して前記高炉内装入物のプロフィルを測定することを特徴とする、請求項4または5に記載の高炉内装入物のプロフィル測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−174371(P2010−174371A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119417(P2009−119417)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】