説明

高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物並びに高熱伝導性熱定着ロール及び高熱伝導性熱定着ベルト

【課題】架橋速度の安定化及びゴム物性の安定化が改善された高品質な高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物、及び高熱伝導性熱定着ロール、高熱伝導性熱定着ベルトを提供する。
【解決手段】(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記の特徴をもつ粉砕金属珪素粉末: 100〜800質量部、
熱量計測定装置(TGA)を用いて測定した300℃時における質量(W300)を110℃時の質量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下であることを満たす金属珪素粉末であるもの
(C)上記(A)成分を硬化しうる量の硬化剤
を含有することを特徴とする高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用のシリコーンゴム組成物、及びこの組成物を用いて形成された硬化物層を弾性層として有する高熱伝導性の熱定着ロール及び熱定着ベルトに関し、更に詳しくは粉砕金属珪素粉末の表面処理状態を管理することにより、シリコーンゴム未硬化物の架橋性、保存安定性の改善及び硬化物(ゴム弾性層)のゴム物性の向上を実現した高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物、並びにこの組成物を用いて形成された硬化物層を弾性層として有する高熱伝導性の熱定着ロール及び熱定着ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、電気絶縁性、耐熱性、耐候性、難燃性に優れているため、家電・コンピューターなどの電気電子用、輸送機部品、OA機器や建築用途など、様々な分野で使用されている。特に、近年では、その耐熱性を生かして複写機やレーザービームプリンターのヒーターロール、加圧ロールなどの定着ロールの被覆材として用いられてきた。
【0003】
また、近年においては、ベルト基材上にシリコーンゴム弾性層を有する定着ベルトが普及している。カラータイプの複写機やプリンターの増加に伴い、より鮮明な画像特性を得るため、ベルトには弾性層が必要と考えられている。また、省エネルギーの観点からは、この弾性層には高熱伝導率の特性が要求され、かつ低硬度、低圧縮歪の技術が要求される。
【0004】
これらのベルトには高熱伝導性のシリコーンゴムの上にフッ素ゴム又はフッ素樹脂を被覆するタイプが多く採用されている。
【0005】
また、ここで用いられるヒートロール/ベルト用のゴムは、常時150〜250℃の高温にさらされるため、低圧縮永久歪が要求される。しかしながら、シリコーンゴム自体の熱伝導性は高くないため、高い熱伝導性を有するフィラーを添加する方法が一般的に行われている。このようなシリコーンゴムとしては、特許文献1〜6(特開昭58−219259号公報、特開平3−221982号公報、特開平10−39666号公報、特開2000−089600号公報、特許第3904853号公報、特許第3002642号公報)にあるように、シリコーンゴムに熱伝導性フィラーとして、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、窒化珪素などが配合されているものである。しかしながら、熱伝導性を向上させるために多量の充填剤を配合することが必要になり、その結果、ゴムローラとして必要なゴム圧縮永久歪の悪化、耐熱性の低下や過度の充填剤の充填によってロール硬度が高くなってしまう、成形が困難になってしまう等の弊害があった。また充填剤自身の粉体密度の高さから充填剤の凝集や沈殿が問題となる事例があった。
【0006】
そこで、本出願人は、特許文献7(特開2007−171946号公報)において、熱伝導性フィラーに金属珪素粉末を配合することにより、高熱伝導性、耐熱性、低圧縮永久歪、低硬度等の特性を有し、ヒーターロール/ベルトとして利用した場合に長期間安定した定着性が得られるシリコーン製高熱伝導ロール/ベルトを提案した。
【0007】
かかるシリコーンゴム組成物は、前述の従来技術の欠点が解消され、高熱伝導性、低圧縮永久歪等に優れるほか、組成物の密度が低いため硬化前組成物が沈殿、凝集しにくく、容易に成型、加工が可能な定着ロール/ベルトとして極めて好適な材料であるが、その後の検討によると、シリコーンゴム組成物の硬化速度が低下したり(硬化しにくくなったり)、使用粉体のロットによりゴム硬度の低下が見られる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭58−219259号公報
【特許文献2】特開平3−221982号公報
【特許文献3】特開平10−39666号公報
【特許文献4】特開2000−089600号公報
【特許文献5】特許第3904853号公報
【特許文献6】特許第3002642号公報
【特許文献7】特開2007−171946号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、架橋速度の安定化及びゴム物性の安定化、特に、硬化物(ゴム弾性層)の硬度や圧縮永久歪が改善された高品質な高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物、及び高熱伝導性熱定着ロール、高熱伝導性熱定着ベルトを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために、熱伝導性が高く、かつ耐熱性にも優れる材料について種々検討した結果、シリコーンゴム組成物に配合される金属珪素の表面酸化膜の欠損部分が多く存在すると、組成物の硬化速度が低下したり(硬化しにくくなったり)、使用粉体のロットによりゴム硬度の低下が見られることを知見した。そこで、粉砕法によって製造された金属珪素粉末を所定の方法により表面処理し、表面状態を管理することにより、架橋阻害が無く、硬化物(ゴム弾性層)のゴム硬度が安定で圧縮永久歪特性が良好なシリコーンゴム組成物が得られ、該組成物の硬化物は、各種複写機やプリンターの定着ロール及び定着ベルトの弾性層として有効に用いられることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、下記に示す高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物並びに高熱伝導性熱定着ロール及び高熱伝導性熱定着ベルトを提供する。
〔請求項1〕
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記の特徴をもつ粉砕金属珪素粉末: 100〜800質量部、
熱量計測定装置(TGA)を用いて測定した300℃時における質量(W300)を110℃時の質量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下であることを満たす金属珪素粉末であるもの
(C)上記(A)成分を硬化しうる量の硬化剤
を含有することを特徴とする高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
〔請求項2〕
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、粉砕後60℃以上800℃以下の乾式熱処理を行った粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
〔請求項3〕
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、湿度30%以上に管理され、40℃以上100℃以下で熱処理を行った粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
〔請求項4〕
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、粉砕後に水洗又は水スラリー化された後、水分除去工程を経て得られた粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
〔請求項5〕
請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物を弾性層として有する高熱伝導性熱定着ロール。
〔請求項6〕
請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物を弾性層として有する高熱伝導性熱定着ベルト。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、架橋阻害が少なく、硬化物(ゴム弾性層)が安定なゴム硬度を有し、高熱伝導性、耐熱性、低圧縮永久歪、低硬度等の特性を有する高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物が得られ、斯かるシリコーンゴム組成物の硬化物を用いて形成された弾性層を有する高熱伝導性の熱定着ロール及び熱定着ベルトは、長期間安定した定着性が得られる定着部材となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物は、下記
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン、
(B)下記の特徴をもつ粉砕金属珪素粉末、
熱量計測定装置(TGA)を用いて測定した300℃時における質量(W300)を110℃時の質量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下であることを満たす金属珪素粉末であるもの
(C)硬化剤
を含有することを特徴とするものである。
【0014】
本発明の高熱伝導性熱定着ロール又は定着ベルト用シリコーンゴム組成物の(A)成分は、一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有し、室温で液状又は生ゴム状のオルガノポリシロキサンであり、下記平均組成式(1)で示されるものを用いることができる。
【0015】
1aSiO(4-a)/2 (1)
式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05、更に好ましくは1.98〜2.02の範囲の正数である。
【0016】
ここで、上記R1で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられるが、全R1の90モル%以上、特には、後述するアルケニル基以外の全てのR1がメチル基であることが好ましい。
【0017】
また、R1のうち少なくとも2個、好ましくは2〜50個、より好ましくは2〜20個程度がアルケニル基(炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6であり、特に好ましくはビニル基である。)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、オルガノポリシロキサン中1.0×10-6〜5.0×10-3mol/g、特に5.0×10-6〜1.0×10-3mol/gとすることが好ましい。アルケニル基の量が1.0×10-6mol/gより少ないと、架橋が不十分で、ゲル状になってしまう場合があり、また5.0×10-3mol/gより多いと、架橋密度が高くなりすぎて、脆いゴムとなってしまうおそれがある。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中(即ち、分子鎖非末端)の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよい。
このオルガノポリシロキサンの分子量については、室温(23℃)で液状又は流動性のない生ゴム状であり、重合度が50〜50,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは80〜20,000の範囲である。
【0018】
また、このオルガノポリシロキサンの構造は、基本的には主鎖が、例えば、ジメチルシロキサン単位、ジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルトリフルオロプロピルシロキサン単位、ビニルメチルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位(R12SiO2/2(R1は上記と同じ、以下同様))の繰り返しからなり、分子鎖両末端が、例えば、トリメチルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基、ビニルジフェニルシロキシ基、ビニルメチルフェニルシロキシ基、フェニルジメチルシロキシ基、ジフェニルメチルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基(R13SiO1/2)で封鎖された直鎖状構造を有するが、部分的には分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0019】
(B)成分は、本発明の組成物に熱伝導性を付与するための高熱伝導性無機粉体であり、本発明のシリコーンゴム組成物は、上記オルガノポリシロキサン(A)に高熱伝導性無機粉体として、粉砕金属珪素粉末(B)を配合したものである。金属珪素は良好な熱伝導性をもち、またモース硬度が低く、金属の特性として展性が低いため、高剪断を与えても金属粉自体が凝集しにくい特性をもつ。そのため、粉砕による微粒子化が容易で、ポリオルガノシロキサンへの分散性に優れる特性をもつ。
【0020】
金属珪素粉末の粉砕方法としては、特に限定されるものではないが、珪石を還元して金属珪素としたものをボールミル等既存の破砕機や粉砕器にて粉砕したもの、半導体製造工程等より発生する金属珪素(ウエハー)や切削くず等を原料として微粉化したものなどの粉砕法により粉末化したものが挙げられ、金属珪素の結晶構造の単結晶、多結晶は任意である。
【0021】
金属珪素粉末の表面には、粉砕直後より空気中の酸素によりごく薄い自然酸化膜が形成され、形成された膜はガラスと同じで熱や酸や汚れに強く、電気が流れにくく、熱に安定である。しかしながら、粉砕粉末化された金属珪素粉末は隣り合う粒子や圧縮される影響で酸素に触れることができない場合があり、十分に表面酸化膜が生成されていないことが判明した。
鋭意検討の結果、本発明者は、粉砕金属珪素粉末の表面酸化膜の形成度合いとシリコーンポリマーの架橋特性、ゴム物性を調査したところ、金属珪素粉末表面の自然酸化膜の出来具合を評価する方法として熱量計測定装置(TGA)を用いた方法を提案した。
【0022】
即ち、TGA測定時に常温から高温(〜600℃)に一定速度で加熱してゆく過程において、評価対象としての金属珪素表面(Metal−Si)が空気中の酸素(O2)による酸化が進み、シリカ(SiO2)化し、質量増加が観測される。具体的測定方法としては、空気を流入気体としてTGA測定を行い、十分に酸化膜が作製された300℃時における質量を110℃時の質量で割った値より粉砕金属珪素粉末自然酸化膜の状態の判断を行うものである。ここで110℃時の質量で割る理由としては粉体に付着した水分(付着水や湿度)による影響を排除するためである。
【0023】
具体的測定方法としては、常圧空気(酸素を含む)を50ml/min流入させ、分速5℃(5℃/min)の条件で25℃から600℃のTGA測定を行う。本発明に用いられる粉砕金属珪素粉末は、TGA測定により得られた300℃時における質量(W300)を110℃時の質量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下を満たすものがよく、より望ましくは1.06以下、更に望ましくは1.04以下であることが望ましい。
【0024】
W300/W110が1.08より大きいと(即ち、110℃の時点で表面酸化が十分進行していない状態であると)粉体表面に金属面(即ち、金属珪素面)が出ている割合が多く、シリコーンゴム架橋時に架橋阻害(未硬化)やゴム硬さ低下が発生し、更に圧縮永久歪が悪化(増大)する。また本測定の原理より110℃の時点で金属珪素表面に酸化膜が100%形成されていると、W300/W110は理論的には1.00となる。しかし、実際の測定では金属珪素に微量に含まれる不純物(有機物やほこり等)によりW300/W110が0.98程度に低下することがある。
【0025】
上記の条件を満たす粉砕金属珪素粉末の作製方法は特に限定されるものではないが、上記条件を満たす粉末を常温に放置した状態で得ようとすると、十分に空気に触れた状態を保持した状態で1ヶ月以上の長期にわたり放置する必要が生じる。
【0026】
そこで本発明では、短時間で上記条件を満たす方法として、特に下記の3つの方法が有効であることを見出した。
(i)粉砕後60℃以上800℃以下での乾式熱処理
(ii)湿度30%以上に管理され、40℃以上100℃以下での熱処理
(iii)粉砕後に水洗又は水スラリー化させた後、水分除去
【0027】
次にそれぞれの処理について詳細な説明を行う。
(i)については、大気中において加熱により表面酸化膜形成を強制的に促進させる方法である。処理温度は60℃〜800℃の温度で行い、好ましくは80℃〜600℃、より好ましくは120℃〜300℃が良い。処理温度が60℃未満だと表面酸化膜の形成に時間がかかり生産性の低下につながり、800℃を超えると粉塵爆発等が発生し易い状況となる。粉体処理時間はそれぞれの温度により異なるが、5分〜168時間程度で上記条件を満たすことが可能である。
【0028】
(ii)については、空気雰囲気を高温多湿にすることにより粉体の酸化をより促進させる方法である。この処理は(i)の乾燥空気よりも低温/短時間で効率よく酸化膜が形成可能である。上記処理条件は温度40℃〜100℃/湿度(RH、以下同様)30%以上であり、好ましくは温度40℃〜90℃/湿度30%〜80%、より好ましくは温度50℃〜80℃/湿度35%〜60%である。処理温度が40℃未満だと表面酸化膜の形成に時間がかかり生産性の低下につながり、100℃を超えると高温やけどや水蒸気爆発等が発生し易い状況となる。また湿度条件は30%未満であると表面酸化膜促進の効果が薄く、湿度が高すぎると酸素濃度が相対的に薄くなり酸化膜の形成に時間がかかってしまう。粉体処理時間は(i)の乾燥空気よりも短時間でよく、それぞれの温度/湿度により時間は異なるが5分〜72時間程度で上記条件を満たすことが可能である。
【0029】
また、上記(i),(ii)の方法で熱処理する場合に、粉体を空気流動させながら加熱させる方法(粉体流動槽)にて処理してもよい。
【0030】
(iii)については、一度粉砕した金属珪素粉末を水洗又は水スラリーとして湿化処理して表面に酸化膜を作製する方法である。湿化することにより酸素と金属珪素を効率よく結合させ表面酸化膜を作製することができる。このときの注意点としては金属珪素粉砕直後に水洗又は水スラリー化すると金属表面と水が直接反応し脱水素反応が起こる。従って水洗又は水スラリー化する場合は粉砕後少なくとも12時間程度常温放置後に40℃以下、望ましくは30℃以下の水温にて処理することが望ましい。処理時間は特に規定されないが、通常は5分〜12時間程度、望ましくは30分〜8時間程度の短時間で十分である。
【0031】
方法(iii)においては、水洗、水スラリー処理後に水分を除去する必要がある。水分の除去方法は特に指定されるものではないが、例えば遠心脱水後に、乾燥器によって80℃〜150℃程度に昇温したり、乾式遠心乾燥器や粉体流動槽等によって乾燥させてもよい。また、方法(i),(ii)の条件を用いて乾燥させてもよい。なお、乾燥後の粉砕金属珪素粉体の含有水分量は0.5質量%以下とすることが望ましい。
【0032】
本発明に使用する微粒子化した金属珪素粉末の純度は、特に限定されるものではないが、熱伝導性付与の観点から50%(質量%、以下同じ)以上(即ち、50〜100%)が好適であり、より好ましくは80%以上(80〜100%)、更に好ましくは95%以上(95〜100%)であることが望ましい。純度の高い金属珪素粉末は形成された表面の自然酸化膜に欠陥がなく、高温熱安定性が良好となる。
【0033】
また、本発明に使用する金属珪素粉末の粒子径は0.5μm〜20μm、特に1μm〜10μm、更には2μm〜8μm程度の平均粒子径をもつものが望ましい。平均粒子径が0.5μm未満の粒子は、製造が困難であると共に、多量に配合するのが困難となる場合があり、平均粒子径が20μmを超えると100μmを超える粗粒が混入し易く、ロールやベルトを薄層とした際に表面性能に問題が生じるおそれがある。
100μm以上の粗粒の混入は、本発明のロール/ベルトを作製した際、表面に50μm以上の凹凸が発生してしまう場合があり、良好なトナー定着性能が得られない場合がある。またロール/ベルトの肉厚を300μm以下の薄層タイプとした場合には、粗粒の粒子径が肉厚を上回る場合があり、顕著な凹凸が発生してしまい不適当である。金属珪素粉末のメッシュによる粗粒カットは任意に行うことができ、金属珪素粉末の粗粒は近年のロールやベルトの薄肉化を鑑みると45μmにて粗粒除去することが望ましい。
【0034】
また、充填剤の粒子径は、粉体の分級により希望する粒度のものを得ることができる。また、粒度分布をコントロールする方法としては、平均粒子径の異なる2種類以上の金属珪素粉末のブレンドにより調整することが一般的である(大きい粒子径のものと小さい粒子径のもののブレンドにより粒度分布をコントロールする)。
【0035】
なお、粒度分布測定における平均粒子径、標準偏差は、レーザー光回折法等による粒度分布測定装置を用いて、累積重量平均値D50(又はメジアン径)などとして求めることができる。
【0036】
また、(B)成分の金属珪素粉末は、更に上記の熱処理、湿式処理によって欠陥の少ない自然酸化膜を形成した後で、シリコーンゴム組成物の熱安定性や粉体の配合性の向上を目的として、シラン系カップリング剤又はその部分加水分解物、アルキルアルコキシシラン又はその部分加水分解物、有機シラザン類、チタネート系カップリング剤、オルガノポリシロキサンオイル、加水分解性官能基含有オルガノポリシロキサン等により更に表面処理することは任意である。
【0037】
(B)成分の金属珪素粉末の配合量は、(A)成分100質量部に対し100〜800質量部、好ましくは180〜400質量部である。100質量部未満ではシリコーンポリマーに対する金属珪素粉末の充填量が少なく、また架橋阻害や硬度低下の影響も軽微であるが、高い熱伝導性を得ることができず、800質量部を超えると、粉末の配合が非常に困難となり、ゴム強度等の物性も著しく低下してしまう。
【0038】
なお、本発明には、低圧縮永久歪や耐熱性を損なわない範囲で(B)成分以外の他の熱伝導性物質を併用してもよい。その場合は、本組成物に配合した熱伝導性物質全体の体積率(容積率)のうち50%以上、特に70%以上が本発明の金属珪素粉末であることが望ましい。
【0039】
他の熱伝導性物質としては既知の物質が利用可能で、特に限定されるものではないが、具体的には、アルミナ、アルミニウム、炭化珪素、窒化珪素、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、グラファイト等が挙げられ、平均粒子径は0.5μm〜20μm、特に1μm〜10μmのものが望ましい。また直径1μm〜10μm、繊維長3μm〜2,000μmの繊維状グラファイト、繊維長1μm以下のカーボンナノファイバー等が挙げられる。
【0040】
本発明の(C)成分の硬化剤は、既知の付加反応による硬化剤又は有機過酸化物硬化剤である。
【0041】
この場合、付加反応硬化剤は、(C−1)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと(C−2)付加反応触媒との組み合わせである。
【0042】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C−1)は、(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとヒドロシリル化付加反応により、組成物を硬化させる架橋剤として作用するものであり、下記平均組成式(2)
2bcSiO(4-b-c)/2 (2)
(式中、R2は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基である。またbは0.7〜2.1、特に0.8〜2.0、cは0.001〜1.0で、かつb+cは0.8〜3.0、特に1.0〜2.5を満足する正数である。)
で示され、一分子中に少なくとも2個(例えば2〜300個)、好ましくは3個以上(通常、3〜200個程度)、より好ましくは3〜100個、特に3〜50個の珪素原子結合水素原子(SiH基)を有するものが好適に使用される。
【0043】
この珪素原子結合水素原子は、分子鎖末端の珪素原子に結合したものであっても、分子鎖途中(分子鎖非末端)の珪素原子に結合したものであっても、これらの両方に結合したものであってもよい。
【0044】
ここで、R2としては、式(1)中のR1と同様の基を挙げることができるが、好ましくはアルケニル基等の脂肪族不飽和結合を有さないものがよい。
【0045】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO3/2単位とからなる共重合体などやこれらの例示化合物において、メチル基の一部又は全部をエチル基、プロピル基等の他のアルキル基、フェニル基等のアリール基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基などで置換したもの等が挙げられる。
【0046】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中の珪素原子の数(又は重合度)は2〜1,000、好ましくは3〜500、より好ましくは3〜300、特に好ましくは4〜150程度のものを使用することができる。
【0047】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜50質量部、より好ましくは0.1〜30質量部、更に好ましくは0.3〜30質量部、特に0.3〜20質量部とすることが好ましい。
【0048】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基に対する(C−1)成分中の珪素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比が0.5〜5モル/モル、好ましくは0.8〜4モル/モル、より好ましくは1〜3モル/モルとなる量で配合することもできる。
【0049】
付加反応触媒(C−2)は、(A)成分中の珪素原子に結合したアルケニル基と上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン(C−1)のSiH基とのヒドロシリル化付加反応を促進するための触媒であり、この付加反応触媒としては、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類との錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。なお、この付加反応触媒の配合量は触媒量とすることができるが、通常、白金族金属として(A)及び(C−1)成分の合計質量に対して0.5〜1,000ppm、特に1〜500ppm程度配合することが好ましい。
【0050】
一方、有機過酸化物硬化剤(C−3)としては、有機過酸化物硬化型オルガノポリシロキサン組成物において、(A)成分の架橋反応を促進するための触媒として使用されるものであればよく、従来公知のものを使用することができる。例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシカルボキシ)ヘキサン等が挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0051】
なお、有機過酸化物の添加量は触媒量であり、硬化速度に応じて適宜選択すればよいが、通常は(A)成分100質量部に対して0.1〜10質量部、好ましくは0.2〜2質量部の範囲とすることができる。
【0052】
また、本発明においては、上記付加架橋と有機過酸化物架橋とを併用してもよい。なお、液状オルガノポリシロキサン組成物の硬化には、付加架橋が推奨される。
【0053】
本発明のシリコーンゴム組成物は、上記成分に加えて、必要に応じ、ヒュームドシリカ、沈降シリカ、溶融シリカ、焼成シリカ、ゾル−ゲル法の球状シリカ、結晶シリカ(石英粉)、ケイソウ土等のシリカ微粒子(なお、これらシリカのうち、特に溶融シリカ、結晶シリカは、他の熱伝導性物質としても作用する)、炭酸カルシウム、クレイ、ケイソウ土、二酸化チタンのような補強、準補強性の、前記の熱伝導性物質以外の充填剤、補強剤となるシリコーン系のレジン、窒素含有化合物やアセチレン化合物、リン化合物、ニトリル化合物、カルボキシレート、錫化合物、水銀化合物、硫黄化合物等のヒドロシリル化反応制御剤、酸化鉄、酸化セリウムのような耐熱剤、ジメチルシリコーンオイル等の内部離型剤、接着性付与剤、チクソ性付与剤等を本発明の効果を損なわない範囲で任意に配合することができる。また、酸化鉄、酸化セリウム、オクチル酸鉄等の耐熱性向上剤、接着性や成形加工性を向上させるための各種カーボンファンクショナルシラン、難燃性を付与させる窒素化合物、ハロゲン化合物を添加混合してもよい。重合度が100以下の低分子量シロキサン、シラノール基含有シラン、アルコキシ基含有シラン等を分散助剤として添加してもよい。
【0054】
また導電性材料を添加して導電性シリコーンゴム組成物とすることは任意である。導電性材料の種類、配合量は制限されないが、導電性カーボンブラック、導電性亜鉛華、金属粉などが使用でき、また導電性材料は1種又は2種以上を併用してもよい。
【0055】
これら熱伝導性無機粉体の混合方法は、プラネタリーミキサーやニーダーなどの機器を用いて(A),(B)成分と常温で混合してもよいし、あるいは100℃〜200℃の高温で混合してもよい。
熱処理を行う場合、例えば(A),(B)成分及び微粉状シリカ系充填剤等を予め混合してベースコンパウンドを調製しておき、これに各種添加剤、カーボンブラック粉などを同様に混練機で混合して調製してもよく、更には硬化剤を添加、混合しても差し支えない。
【0056】
また、本発明のシリコーンゴム組成物は、粘度が5〜3,000Pa・s(23℃)であることが好ましく、より好ましくは、10〜1,000Pa・s(23℃)、最も好ましくは、20〜600Pa・s(23℃)である。シリコーンゴム組成物の粘度を上記値とするには、例えば、ベースポリマーである(A)成分のオルガノポリシロキサンとして粘度(23℃)が10Pa・s(10,000mPa・s)以下、特には0.01〜5Pa・s(10〜5,000mPa・s)程度の成分を使用することが望ましい。また、(A)〜(C)成分を含有する組成物を、希釈用有機溶媒を用いて希釈することによって、架橋前の組成物粘度を見かけ上、上記粘度範囲となるように調整してもよい。該希釈用有機溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0057】
また、本発明のシリコーンゴム組成物は、その硬化物の熱伝導率が1.0W/m・K以上、好ましくは1.5W/m・K以上、更に好ましくは2.0W/m・K以上であることが望ましい。硬化物の熱伝導率を上記値とするには、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、(B)成分の金属珪素粉末を、おおよそ160質量部以上の割合で配合することによって達成することができる。
なお、本発明において、粘度は回転粘度計等により測定することができ、熱伝導率は細線加熱法、レーザーフラッシュ法等の方法により測定することができる。
【0058】
このようにして得られた高熱伝導性シリコーンゴム組成物は、LIM射出成形、金型加圧成形など、通常シリコーンが成形される種々の成形法によって必要とされる用途に成形することができ、その成形条件は別に限定されないが、100℃〜400℃で数秒〜1時間の範囲が好ましい。また、成形後に2次加硫する場合においては、150℃〜250℃で1〜30時間の範囲で2次加硫することが好ましい。
【0059】
本発明の定着ロール又はベルトは、芯金/ベルト上に上記シリコーンゴム組成物の高熱伝導性硬化物層を形成するものであるが、この場合、芯金やベルトの材質、寸法等は要求に応じて適宜選定し得る。また、シリコーンゴム組成物の成形、硬化法も適宜選定し得る。
【0060】
例えば、アルミニウム又はSUS(ステンレススチール)芯金やベルト素材にポリアミド/ポリアミドイミドあるいは薄膜SUS、薄膜ニッケル電鋳を用いた基材に、シリコーンゴム組成物を注入成形、移送成形、射出成形、コーティング等の方法によって成形することができ、加熱により硬化される。シリコーンゴム層の厚さは、例えば、定着ロールの場合であれば、150μm〜10cm、特には200μm〜3cm程度、定着ベルトの場合であれば、50μm〜1cm、特には80μm〜0.5cm程度とすることが望ましい。
また、シリコーンゴム層の外周に、例えば0.1μm〜100μm、好ましくは1μm〜50μm程度の厚さで、更にフッ素樹脂もしくはフッ素ゴム層を設けてもよい。この場合、フッ素樹脂もしくはフッ素ゴム層は、フッ素系樹脂コーティング材やフッ素系樹脂チューブなどにより形成され、上記シリコーンゴム層を被覆する。ここで、フッ素系樹脂コーティング材としては、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)のラテックスや、ダイエルラテックス(ダイキン工業社製、フッ素系ラテックス)等が挙げられ、またフッ素系樹脂チューブとしては、市販品を使用し得、例えばポリテトラフルオロエチレン樹脂(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体樹脂(PFA)、フッ化エチレン−ポリプロピレン共重合体樹脂(FEP)、ポリフッ化ビニリデン樹脂(PVDF)、ポリフッ化ビニル樹脂などが挙げられるが、これらのうちで特にPFA、PTFEラテックスが好ましい。
【実施例】
【0061】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の粘度は23℃において測定した値であり、部は質量部である。また、実施例中、シリコーンゴム組成物の評価は次のようにして行った。
【0062】
ゴムシートの測定
・硬さ JIS K 6249 タイプAデュロメーター
・放熱性(熱伝導率) 京都電子社製 迅速熱伝導率計QTM−D3
・密度 JIS K 6249
・圧縮永久歪 JIS K 6249 180℃、25%圧縮、22時間
・粘度 TOKIMEC社製 回転粘度計BSタイプ
・架橋速度(T10/T90) モンサント社製 MDR2000、温度130℃、
2minMAX
【0063】
熱量計測定装置(TGA)測定条件
測定機器:METTLER社製 TGA850
流入気体:空気(酸素濃度20.9%)、
流入速度:50ml/min
昇温条件:分速5℃(5℃/min)、25℃→600℃
【0064】
また、実施例、比較例で使用した金属珪素粉末は以下の通りである。
金属珪素粉末(1) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、容器の上部が解放されているステンレス製容器にて常圧、空気中にて200℃/8時間熱処理したもの。
金属珪素粉末(2) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、容器の上部が解放されているステンレス製容器にて常圧、空気中にて600℃/1時間熱処理したもの。
金属珪素粉末(3) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉体流動加熱炉にて常圧、空気中にて120℃/15分熱処理したもの。
金属珪素粉末(4) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、容器の上部が解放されているステンレス製容器にて温度40℃/湿度80%の恒温恒湿槽にて48時間熱処理したもの。
金属珪素粉末(5) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、容器の上部が解放されているステンレス製容器にて温度80℃/湿度30%の恒温恒湿槽にて12時間熱処理したもの。
金属珪素粉末(6) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後24時間放置後の粉体を水温30℃にて水洗撹拌を20分行った。その後減圧濾過を行い、ケーク状として4時間放置した後、常圧、空気中にて150℃/24時間熱風乾燥器により水分除去したもの。
金属珪素粉末(7) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後24時間放置後の粉体をドラム式回転槽にて25℃の水噴霧を行いながら粉体を湿化させ、そのまま撹拌(回転)を30分行った。その後塊状となった粉体を2時間放置した後、5,000Pa以下の真空度にて常温減圧乾燥を行ったもの。
金属珪素粉末(8) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後20kg荷姿の紙袋に入れて保管され、常温保管にて一年経過したもので、外気に触れ易い容器上部から4cm以内の層より取り出した粉体。
金属珪素粉末(9) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後直ちにポリエチレン袋に保管され、48時間経過したもの。
金属珪素粉末(10) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後20kg荷姿の紙袋に入れて保管され、常温保管にて1ヶ月経過したもので、外気に触れ易い容器上部から4cm以内の層より取り出した粉体。
金属珪素粉末(11) ;粉砕法で作製された平均粒子径5.0μmの金属珪素粉末であり、粉砕後紙袋に入れて保管され、常温保管にて一年経過したもので、最も外気に触れにくい容器中心部から採取した粉体。
【0065】
[実施例1〜8、比較例1〜3]
分子鎖両末端がジメチルビニルシロキシ基で封鎖されたジメチルポリシロキサン(重合度500)60部、分子鎖両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、メチルビニルシロキサン単位(−Si(CH3)(CH=CH2)O−)中のビニル基として、側鎖にビニル基を持つジメチルポリシロキサン(重合度300、ビニル価0.000075mol/g)40部、比表面積が110m2/gである疎水化処理されたヒュームドシリカ(日本アエロジル(株)製R−972)1部、平均粒子径0.10μmの酸化鉄(Fe23)1部、純度96質量%の金属珪素粉末(1〜11)230部をプラネタリーミキサーに入れ、室温(23℃)で1時間撹拌を行った。この混合物を3本ロールにかけて充填剤の分散を行った後、再びプラネタリーミキサーに戻し、分子鎖両末端及び側鎖にSiH基を有するメチルハイドロジェンポリシロキサン(重合度17、SiH量0.0038mol/g)を1.2部、反応制御剤としてエチニルシクロヘキサノール0.05部、白金触媒(Pt濃度1質量%)0.1部を添加し、15分撹拌を続けてシリコーンゴム組成物を得た。上記シリコーンゴム組成物は撹拌直後に回転粘度計にて粘度測定、130℃における架橋速度測定を行った。
このシリコーンゴム組成物を120℃で10分間プレスキュアし、更に200℃で4時間オーブンキュアを行った後、硬さ、ゴム密度及び180℃/22時間後の圧縮永久歪を測定した後、厚さ12mmのシートについて、熱伝導率を測定した。
【0066】
【表1】

【0067】
以上の結果より、本発明のシリコーンゴム組成物(実施例)は、熱伝導性に優れ、良硬化性をもち、圧縮永久歪が低く、定着ロールや定着ベルト用の高熱伝導性シリコーンゴム組成物として優れた特徴を有することがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一分子中に少なくとも2個の珪素原子と結合するアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記の特徴をもつ粉砕金属珪素粉末: 100〜800質量部、
熱量計測定装置(TGA)を用いて測定した300℃時における質量(W300)を110℃時の質量(W110)で割った値、W300/W110が1.08以下であることを満たす金属珪素粉末であるもの
(C)上記(A)成分を硬化しうる量の硬化剤
を含有することを特徴とする高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項2】
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、粉砕後60℃以上800℃以下の乾式熱処理を行った粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、湿度30%以上に管理され、40℃以上100℃以下で熱処理を行った粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項4】
(B)成分の粉砕金属珪素粉末が、粉砕後に水洗又は水スラリー化された後、水分除去工程を経て得られた粉体であることを特徴とする請求項1記載の高熱伝導性熱定着ロール又は高熱伝導性熱定着ベルト用シリコーンゴム組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物を弾性層として有する高熱伝導性熱定着ロール。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか1項記載のシリコーンゴム組成物の硬化物を弾性層として有する高熱伝導性熱定着ベルト。

【公開番号】特開2010−256585(P2010−256585A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105922(P2009−105922)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】