説明

高純度のモノペンタエリスリトールを製造する方法、およびその方法によって製造されたモノペンタエリスリトール

本発明は、高純度のモノペンタエリスリトールを製造する方法、及びその方法によって製造されたモノペンタエリスリトールに関する。ホルムアルデヒドを、アセトアルデヒドと、強塩基性水酸化物の存在下、水溶液中で反応させる。得られた反応混合物を蒸発させて50〜70重量%の乾燥度にし、その後で冷却する。これによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を分離する。ペンタエリスリトールを含有する水または水含有母液に溶解し、35〜55重量%の乾燥度にする。この溶液を、精製ステップで処理し、その直後に、高純度のモノペンタエリスリトールを40〜90℃の温度で結晶化し、残留母液から分離して、この母液を上記ステップに再循環する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高純度のモノペンタエリスリトール(モノペンタエリトリトール:monopentaerythritol)を製造(生成)する方法、およびこの方法によって製造されたモノペンタエリスリトールに関する。
【背景技術】
【0002】
ペンタエリスリトールは、4モルのホルムアルデヒドと1モルのアセトアルデヒドの間の反応によって合成でき、この反応はアルカリ性溶液中で行われることが長い間知られている。1モルのアセトアルデヒドが、まず3モルのホルムアルデヒドと反応して、ペンタエリスリトーズ(pentaerythritose)を形成し、次いで、この化合物が、さらに1モルのホルムアルデヒドおよびアルカリと反応して1モルのペンタエリスリトールと1モルの蟻酸塩(ホルメート:formate)を形成すると想定されている。上記反応は、以下の式によって表すことができ、ここで、Meは、例えばNaまたはKであり得る。
【0003】
1. CHCOH + 3HCHO → (HOCH(CHO)C
2. (HOCHCCHO + HCHO + MeOH
→ (HOCHC + HCOOMe
【0004】
必要以上の量のホルムアルデヒドを用いた場合、得られたペンタエリスリトールの収量はアセトアルデヒドに対して計算すると、僅かにより良好なこと、同時に、モノペンタエリスリトールの量は、ジペンタエリスリトールおよびより高次のペンタエリスリトール同族体(相同体:homologues)の量を減らして、増加することが一般に知られている。
【0005】
上記反応においては、モノペンタエリスリトールのみではなく、或る程度のジ−およびトリペンタエリスリトール、並びに、蟻酸塩も得られる。或る幾つかの応用例では、高純度のモノペンタエリスリトールを用いることによって、大きな利点が得られる。従って、より経済的に有利でありかつ信頼性のある方法で純粋な形態のモノペンタエリスリトールを製造できるようにしたいという強い要望が、長年あった。これまでは、ジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールが、モノペンタエリスリトールと共に容易に結晶化するため、その要望の実現は不可能であった。
【発明の開示】
【0006】
本発明によれば、今回、上記要望が、全く予想外に実現され、高純度のモノペンタエリスリトールを製造する方法がもたらされた。この方法では、ホルムアルデヒドを、強塩基、好ましくはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の存在下、水溶液中でアセトアルデヒドと、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド(ホルムアルデヒド:アセトアルデヒド)のモル比が5〜10:1、好ましくは6〜9:1で反応し、その直後に、反応混合物を中和する。本発明は、得られた反応混合物を50〜70重量%の乾燥度(dryness)になるまで蒸発させ、この後冷却すること、に特徴がある。それによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を、好ましくはバンドフィルタ(a band filter)または遠心分離機によって分離し、この結晶を35〜55重量%の乾燥度になるまで、ペンタエリスリトールを含有する水含有母液に溶解する。この溶液を精製ステップで処理し、この直後、高純度のモノペンタエリスリトールを40〜90℃、好ましくは45〜80℃の温度で結晶化し、残りの母液から分離する。この母液は、加工処理(処理)され、後に上記ステップに再循環される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明による合成は、通常(従来)の方法で行うことができる。水酸化ナトリウムを使用することが適切であるが、水酸化カリウムも可能な代替物である。この反応は発熱を伴う。合成中に温度が上昇する。最終温度は40〜70℃の間である。可能性として(場合によって)、冷却して温度を調節することができる。
【0008】
本発明によれば、炭処理(コール処理:coal treatment)および/またはイオン交換を含む精製ステップが適切に使用される。炭処理は、主に変色(discoloration:変退色)を除去するために使用され、イオン交換は、主に、蟻酸塩およびその他の不純物、例えばペンタエリスリトールモノホルマールを除去するために使用される。
【0009】
モノペンタエリスリトールの純粋な結晶を分離するために、バンドフィルタを工業規模(industrial scale)で適切に使用することができるが、遠心分離機も可能な代替手段である。
【0010】
得られた高純度のモノペンタエリスリトールの結晶は、最終処理(加工)ステップとして(で)適切に乾燥される。高純度のモノペンタエリスリトールは、本発明によれば、99重量%より高く(>99重量%)、好ましくは99.3〜99.9重量%の純度を有するモノペンタエリスリトールと定義される。
【0011】
本発明の一実施形態によれば、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド(ホルムアルデヒド:アセトアルデヒド)のモル比は、約5〜7:1であり、高純度のモノペンタエリスリトールは、約55〜90℃の温度で結晶化される。それによって、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのモル比が6:1であれば、高純度のモノペンタエリスリトールは約60〜80℃の温度で適切に結晶化される。
【0012】
本発明の別の実施形態によれば、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのモル比は、約7〜9:1であり、高純度のモノペンタエリスリトールは約40〜70℃の温度で結晶化される。これによって、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのモル比が9:1であれば、高純度のモノペンタエリスリトールは約45〜60℃の温度で適切に結晶化される。
【0013】
蒸発の際の圧力は、適切には、大気圧を超え、蒸発された反応混合物は、ペンタエリスリトールの結晶を取り出すために約25〜50℃、好ましくは約30〜40℃の温度に冷却される。
【0014】
本発明を、以下の実施例の具体例1〜8に関してより詳細に説明する。これらの具体例のうち、例1〜2は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比5.0:1.0を示し、例3〜5は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比6.0:1.0を示し、例6〜8は、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比9.0:1.0を示す。
【実施例】
【0015】
例1
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比5.0:1.0での反応によってペンタエリスリトールを製造した。その際、3.08重量部のアセトアルデヒドを、ホルムアルデヒド10.51重量部および45%水酸化ナトリウムを含有する水溶液7.47重量部を含有する水溶液に加えた。水とアセトアルデヒド(水:アセトアルデヒド)のモル比は66:1であった。その反応は発熱的であり、温度は50℃まで上昇した。反応混合物を蟻酸で中和して5.7のpHにした。ペンタエリスリトールの収率は、アセトアルデヒドに対して計算して約90%であった。これは、ペンタエリスリトール8.58重量部に相当する。
【0016】
その反応混合物を蒸発させて、62重量%の乾燥度にし、この後35℃に冷却した。これによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を分離した。残ったプロセス(加工処理:process)溶液を、追加のペンタエリスリトール(additional pentaerythritol)と蟻酸ナトリウムを取り出すために、別に処理した。
【0017】
そのペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、45重量%の乾燥度にした。この溶液を活性炭処理およびその後のイオン交換器により精製した。この後、この溶液を84℃まで冷却し、モノペンタエリスリトールの結晶を沈殿させた。その結晶を分離し、乾燥後に、99.5%の純度を有するモノペンタエリスリトール2.15重量部を得た。これは、得られたペタエリスリトールの総量の25%に相当する。その純度はガスクロマトグラフィによって測定した。
【0018】
6.43重量部を構成するペンタエリスリトールの残量は、技術的(技術的等級の)(テクニカル(グレード):technical (grade))ペンタエリスリトール(低純度のモノペンタエリスリトールと不純物を含むペンタエリスリトール)に加工(処理)された。
【0019】
例2
ペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、55重量%の乾燥度にしたこと、および、精製ステップの後に、この溶液を90℃に冷却したことを相違点として、例1による方法(プロセス:process)を繰り返した。これにより、得られたペンタエリスリトールの総量の40%に対応する量で、純粋なモノペンタエリスリトールを得た。
【0020】
例3
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比6.0:1.0での反応によってペンタエリスリトールを製造した。その際、3.08重量部のアセトアルデヒドを、ホルムアルデヒド12.61重量部および45%水酸化ナトリウムを含有する水溶液7.47重量部を含有する水溶液に加えた。水とアセトアルデヒドのモル比は64:1であった。その反応は発熱的であり、温度は50℃まで上昇した。反応混合物を蟻酸で中和して5.7のpHにした。ペンタエリスリトールの収率は、アセトアルデヒドに対して計算して約92%であった。これは、ペンタエリスリトール8.76重量部に相当する。
【0021】
その反応混合物を蒸発させて、62重量%の乾燥度にし、この後35℃に冷却した。これによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を分離した。残ったプロセス溶液を、追加のペンタエリスリトールと蟻酸ナトリウムを取り出すために、別に処理した。
【0022】
そのペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、45重量%の乾燥度にした。この溶液を活性炭処理およびその後のイオン交換器により精製した。この後、溶液を70℃まで冷却し、乾燥後に、モノペンタエリスリトールの結晶を沈殿させ、99.6%の純度を有するモノペンタエリスリトール5.43重量部を得た。これは、得られたペタエリスリトールの総量の62%に相当する。
【0023】
3.43重量部を構成するペンタエリスリトールの残量は、技術的(テクニカル:technical)ペンタエリスリトールに加工(処理)された。
【0024】
例4
ペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、55重量%の乾燥度にしたこと、および、精製ステップの後に、この溶液を78℃に冷却したことを相違点として、例3による方法を繰り返した。これにより、得られたペンタエリスリトールの総量の66%に対応する量で、純粋なモノペンタエリスリトールを得た。
【0025】
例5
ペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、35重量%の乾燥度にしたこと、および、精製ステップの後に、この溶液を62℃に冷却したことを相違点として、例3による方法を繰り返した。これにより、得られたペンタエリスリトールの総量の55%に対応する量で、純粋なモノペンタエリスリトールを得た。
【0026】
例6
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間の、9.0:1.0のモル比での反応によってペンタエリスリトールを製造した。その際、3.08重量部のアセトアルデヒドを、ホルムアルデヒド18.92重量部および45%水酸化ナトリウムを含有する水溶液7.47重量部を含有する水溶液に加えた。水とアセトアルデヒドのモル比は59:1であった。その反応は発熱的であり、温度は50℃まで上昇した。反応混合物を蟻酸で中和して5.7のpHにした。ペンタエリスリトールの収率は、アセトアルデヒドに対して計算して約93%であった。これは、ペンタエリスリトール8.86重量部に相当する。
【0027】
その反応混合物を蒸発させて、62重量%の乾燥度にし、この後35℃に冷却した。これによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を分離した。残ったプロセス溶液を、追加のペンタエリスリトールと蟻酸ナトリウムを取り出すために、別に処理した。
【0028】
そのペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、45重量%の乾燥度にした。この溶液を活性炭処理およびその後のイオン交換器により精製した。この後、溶液を54℃まで冷却し、乾燥後に、モノペンタエリスリトールの結晶を沈殿させ、99.7%の純度を有するモノペンタエリスリトール7.44重量部を得た。これは、得られたペタエリスリトールの総量の84%に相当する。
【0029】
1.42重量部を構成するペンタエリスリトールの残量は、技術的(テクニカル:technical)ペンタエリスリトールに加工(処理)された。
【0030】
例7
ペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、35重量%の乾燥度にしたこと、および、精製ステップの後に、この溶液を46℃に冷却したことを相違点として、例6による方法を繰り返した。これにより、得られたペンタエリスリトールの総量の80%に対応する量で、純粋なモノペンタエリスリトールを得た。
【0031】
例8
ペンタエリスリトールの結晶を、透明で温かい溶液、即ちペンタエリスリトールを含有する水ベースの母液に溶解し、55重量%の乾燥度にしたこと、および、精製ステップの後に、この溶液を60℃に冷却したことを相違点として、例6による方法を繰り返した。これにより、得られたペンタエリスリトールの総量の86%に対応する量で、純粋なモノペンタエリスリトールを得た。
【0032】
結晶化温度は、溶解時の乾燥度に依存するが、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの間のモル比にも依存する。その理由は、このモル比が、溶解されたペンタエリスリトールの組成を決定するからである。一般に、結晶化温度は、最も低いモル比で最も高く、各モル比では、結晶化温度は、最も高い乾燥度で最も高い。各モル比において、結晶化温度と乾燥度を組み合わせて高純度のモノペンタエリスリトールを得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホルムアルデヒドをアセトアルデヒドと、強塩基性水酸化物、好ましくはアルカリ金属水酸化物またはアルカリ土類金属水酸化物の存在下、水溶液中で、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドのモル比5〜10:1、好ましくは6〜9:1で反応させ、その直後に、反応混合物を中和する、高純度のモノペンタエリスリトールを製造する方法であって、
得られた反応混合物を蒸発させて50〜70重量%の乾燥度にし、この後冷却すること、これによって形成されたペンタエリスリトールの結晶を、好ましくはバンドフィルタまたは遠心分離機によって分離し、ペンタエリスリトールを含有する水含有母液に溶解し、35〜55重量%の乾燥度にすること、この溶液を、精製ステップで処理し、その直後に、高純度のモノペンタエリスリトールを40〜90℃、好ましくは45〜80℃の温度で結晶化し、残留母液から分離して、この母液を上記ステップに再循環すること、
を特徴とする、方法。
【請求項2】
前記水酸化物が水酸化ナトリウムであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製ステップは炭処理および/またはイオン交換を含むものであることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
最終ステップでの前記モノペンタエリスリトールの結晶がバンドフィルタによって分離されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
得られた前記モノペンタエリスリトールの結晶を乾燥することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの前記モル比が約5〜7:1であり、前記高純度のモノペンタエリスリトールが約55〜90℃の温度で結晶化されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの前記モル比が約6:1であり、前記高純度のモノペンタエリスリトールが約60〜80℃の温度で結晶化されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの前記モル比が約7〜9:1であり、前記高純度のモノペンタエリスリトールが約40〜70℃の温度で結晶化されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
ホルムアルデヒドとアセトアルデヒドの前記モル比が約9:1であり、前記高純度のモノペンタエリスリトールが約45〜60℃の温度で結晶化されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記蒸発された反応混合物が、ペンタエリスリトールの結晶を取り出すために、約25〜50℃、好ましくは約30〜40℃の温度に冷却されることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記蒸発の圧力が、大気圧を超えることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
請求項1乃至11のいずれかに従って製造されるモノペンタエリスリトールであって、99重量%より高い、好ましくは99.3〜99.9重量%の純度を有することを特徴とするモノペンタエリスリトール。

【公表番号】特表2009−525326(P2009−525326A)
【公表日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−553203(P2008−553203)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000100
【国際公開番号】WO2007/089197
【国際公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【出願人】(502456286)ペルストルプ スペシヤルテイ ケミカルズ アーベー (12)
【氏名又は名称原語表記】Perstorp Specialty Chemicals AB
【住所又は居所原語表記】S−284 80 Perstorp, Sweden
【Fターム(参考)】