説明

高純度ベンズアゼピン誘導体の製造方法

【課題】極めて純粋なガランタミン若しくは極めて純粋なガランタミン誘導体の製造方法の提供。
【解決手段】極めて純粋なガランタミン若しくは極めて純粋なガランタミン誘導体の製造方法に関し、それに際して開始がパラジウムの触媒作用下で脱臭素されるラセミ体臭素ナルウェジンからなされる。この場合、不溶性の形態のパラジウム触媒が容易に分離可能な形態に転化されるように酸素若しくは過酸化物の存在下で実施される反応混合物の処理が本発明に不可欠である。さらなる反応が、鏡像異性体純粋のガランタミンを形成するための鏡像異性体純粋のナルウェジンの還元により実施され、それに際して、環窒素原子での対応する置換が達成されるようにそれがその後アルキル化若しくは脱アルキル化される。再結晶のようなさらなる精製により、5ppmより下のパラジウムの残留部分が達成され、その結果製薬学的原料としての直接使用が可能にされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、式IA
【0002】
【化1】

【0003】
および式II
【0004】
【化2】

【0005】
式中、R1は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキルにより場合によっては置換され;R2は、少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルチオニル、アリールチオニル、アラルキルチオニル、アルキルオキシチオニル、アリールオキシチオニル、アラルキルオキシチオニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキサミド、チオカルボキサミドにより場合によっては置換されている低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され;R3は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニルにより場合によっては置換され、および、かくしてZは製薬学的に許容できる有機酸の陰イオン若しくは無機陰イオンである、
の一般式I
【0006】
【化3】

【0007】
の極めて純粋な4a,5,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−6H−ベンゾフロ[3a,3,2−ef][2]ベンズアゼピン誘導体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0008】
ガランタミンはヒガンバナ科(Amaryllidaceae)型の植物に主に存在する高い薬理学的活性をもつアルカロイドである。とりわけ、より選択的なアセチルコリンエステラーゼ阻害剤としてのその作用、およびアルツハイマー病のような神経変性疾患の処置における関連した応用が強調されるべきである。天然に存在するコーカサススノードロップ、ガランタス ウォロノイ(Galanthus Woronoyi)から単離される量は、しかしながら製薬学的原料の必要性を満たすのに十分でない。1960年代の終わり以来、従って、ガランタミン合成は、しかしながら乏しい総収量を伴う長くかつ不経済な反応経路をときに示すことが知られている。
【0009】
特許文献1によれば、ガランタミン合成のより経済的な経路は、臭素ナルウェジンがトリフェニルホスフィンの添加を伴う酢酸パラジウム(II)で脱臭素される場合に、出発原料としての臭素ナルウェジンの特異的選択により提供されるはずである。しかしながら得られるラセミ体ナルウェジンは約700〜800ppmのパラジウムを含有するが、それは活性炭での反復処理後でさえ分離され得ない。また、発明者の特許文献2に記述されるラセミ体ナルウェジンの還元のような付加的な反応段階において、パラジウムが反復処理にもかかわらず反応最終生成物中でさらに検出される。700〜800ppmの大きさでパラジウムを有するガランタミン若しくはガランタミン誘導体は、しかしながら、生物体中でパラジウムラジカルにより生じられる望ましくない副作用が起こり得るため、アルツハイマー病の処置のための手段のような製薬学的剤の製造に適しない。結果、<5ppmの境界値が製薬学的剤の経口投与について標準化されている。非特許文献1を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】第WO−A−97/110777号明細書
【特許文献2】第WO−A−96/12692号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】“Note for Guidance on Specification Limits for Residues of Metal Catalysts”(金属触媒の残渣の規格限界に関する指針の注記)CPMP/SWP/QWP/4446/00
【発明の概要】
【0012】
[発明の要約]
本発明の目的は、従って、式Iのガランタミン誘導体について上で挙げられた標準化さ
れた境界値を維持し得る上で挙げられた型の方法を示すことである。
【0013】
本発明により、一般式(I)をもつ上で挙げられた化合物の製造方法が提案され、それにより、ラセミ体臭素ナルウェジン(III)が、反応段階1で酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィンで脱臭素され;酸素接触若しくは過酸化物の添加下にラセミ体ナルウェジン(IV)を含有する反応混合物を反応段階2で処理しかつ鏡像異性体純粋のナルウェジン(V)に転化し;そしてそれにより一般式(VI)の鏡像異性体純粋のガランタミンが還元により反応段階3で得られ;ならびに、一般式(I)の化合物がO−アルキル化により反応段階4で得られるか、若しくは、一般式(IA)の化合物がO−アルキル化ならびにその後の塩形成により反応段階4’で得られるか、または一般式(II)の化合物がO−アルキル化、N−脱メチル化およびN−アルキル化により反応段階4”で得られる。
【0014】
一代替として、本発明により、一般式(I)若しくは(II)をもつ上で挙げられた化合物の製造方法が提案され、それにより、反応段階1においてラセミ体臭素ナルウェジン(III)が酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィンで脱臭素され;反応段階2において、ラセミ体ナルウェジン(IV)を含有する反応混合物が過酸化物の使用で処理されかつ鏡像異性体純粋のナルウェジン(V)に転化され;そしてそれにより、反応段階3において式(VI)の鏡像異性体純粋のガランタミンが還元により得られ;ならびに、反応段階4において、一般式(I)の化合物がO−アルキル化により得られるか、若しくは、反応段階4’において、一般式(IA)の化合物がO−アルキル化ならびにその後の塩形成により得られるか、または、反応段階4”において、一般式(II)の化合物がO−アルキル化、N−脱メチル化およびN−アルキル化により得られる。
【0015】
【化4】

【0016】
本発明の方法の有利な配置はサブクレームの主題である。
【0017】
[発明の詳細な記述]
本発明は、本発明を実施するための態様に基づき下により詳細に説明され、それにより言及が反応図による方法の段階になされる。
【実施例】
【0018】
段階1:一般式(III)のラセミ体臭素ナルウェジンをDMFに溶解しかつNaCO2H、PPH3、酢酸パラジウム(II)ならびに水酸化ナトリウムと混合する。本反応混合物を94℃に加熱しかつこの温度で6時間保ち、これに際して反応の経過をクロマト
グラフィーによって追跡する。その後、反応混合物を処理し、それに際してDMFを蒸留分離し、そしてラセミ体ナルウェジン(IV)を水を添加することにより沈殿させかつ分離する。
【0019】
段階2.1:得られるラセミ体ナルウェジン(IV)をエタノール/トリエチルアミンの混合物に溶解し、そして活性炭および濾過助剤と混合する。該混合物を強く攪拌しながら1ないし4時間還流し、それに際して空気−窒素混合物に例えば5容量%の酸素を含む反応槽を通過させる。一方で活性炭での処理および他方で酸素接触により、既知の検出可能なパラジウム部分と比較して有意に95%以上のパラジウム部分の低減を達成し得ることが十分に驚くべきことに見出された。これは以下の表に基づきより詳細に説明されるはずである。
【0020】
【表1】

【0021】
表の形態のこの一覧から、748ないし813ppmのパラジウムラジカルがラセミ体ナルウェジン混合物中で検出され得ることを見ることができる。これらの比率のパラジウムを含む反応最終生成物は製薬学的剤の製造のためのさらなる使用に適しない。同時の酸素接触を伴う本発明の活性炭での反応混合物の処理により、パラジウム触媒は不溶性の酸化された形態に転化され、その結果26未満、好ましくは24未満、とりわけ好ましくは14未満のppm範囲の分離が可能である。
【0022】
代替の方法の一変形において、得られるラセミ体ナルウェジン(IV)をまた30エタノール/トリエチルアミンの混合物に溶解し、そして活性炭および濾過助剤と混合するが;しかしながら、本混合物をその後、強く攪拌しかつ1ないし4時間還流しながら0.1〜1重量%の過酸化水素とゆっくりと混合する。十分に驚くべきことに、一方で活性炭での処理および他方で過酸化水素の使用により、パラジウム部分が既知の検出可能なパラジウム部分と比較して濾過後に有意に減少され得ることもまた本方法の変形で見出された。測定された値を以下の表に見ることができる。
【0023】
【表2】

【0024】
別の方法の変形において、ラセミ体ナルウェジン(IV)、エタノール、トリエチルア
ミン、活性炭および濾過助剤よりなる混合物を、強く攪拌しかつ1ないし4時間還流しながら0.1〜1重量%のメタクロロ過安息香酸と混合する。また、本方法の変形において、一方で活性炭での処理および他方でメタクロロ過安息香酸の使用により、パラジウム部分が既知の検出可能なパラジウム部分と比較して濾過後に有意に減少され得ることが、十分に驚くべきことに見出された。測定された値を下表に引用する。
【0025】
【表3】

【0026】
段階2.2:段階2.1により得られる反応混合物を冷却し、そして(−)ナルウェジン結晶を接種し、その結果一般式(V)をもつ鏡像異性体純粋の(−)ナルウェジンが得られる。
【0027】
段階3:再結晶の後に得られる一般式(V)をもつ鏡像異性体純粋の(−)ナルウェジンを、第WO−A−96/12692号明細書に記述されるとおり、THF中L−セレクトリド(L−selectride)の1モル濃度5溶液と混合し、1時間攪拌させ、エタノールと混合し、そして蒸発により濃縮する。鏡像異性体選択的還元により、一般式(VI)の鏡像異性体純粋のガランタミンが得られる。1回若しくはそれ以上反復される再結晶により5ppm未満のパラジウムの残留部分が達成される。従って、合成段階2.1により酸素若しくは過酸化物で処理することにより、パラジウム触媒は不溶性の酸化された形態に転化され、それは精製の経過の間の再結晶により容易に分離され得る。
【0028】
段階4:一般式(VI)の化合物を、酸素原子に基R2を挿入するためのO−アルキル化にかけることができる。
【0029】
例:SPH−1313
10gのガランタミンを100mlのピリジンに溶解しそして塩化アセチルを25℃でゆっくりと添加する。それを室温で5時間および50℃で5時間攪拌する。その後ピリジンを除去し(spun off)、そして残渣を水に溶解しかつ酢酸エチルで振り出す。有機層を回転し(spun in)そして粗生成物をエタノールから再結晶する。収率43.6%。
測定されたパラジウム含量は<5ppmであった。
【0030】
段階4’:段階4’は、例えば臭化物のような対アニオンZ−と製薬学的に許容できる塩を形成するために例えば臭化水素酸塩のような酸との別の反応を実施するという差違を伴い、段階4に同様に実施する。
【0031】
段階4”:式(VI)の化合物を、その後のN−およびO−誘導体化を伴うN−脱メチル化にかけることができる。
【0032】
例 SPH−1297:
1.0mlのクロロギ酸ビニルおよび1.2gの1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレンを保護雰囲気下に50mlのジクロロメタン中1gのガランタミンの溶液に添加する。該反応混合物を65℃で18時間攪拌し、溶媒を蒸留分離し、そして粗生成物をエタノールから再結晶する。
収率82.0%。
測定されたパラジウム含量は<5ppmであった。
一般式(I)、(IA)若しくは(II)をもつ化合物は、必要な場合は、5ppm未満の残留部分が達成されるように再結晶によりさらに精製し得る。上で挙げられた態様は、R2がカルボニル、カルボニルオキシ基およびカルボキサミドを表す置換基パターンをR2が示すように実施した。本例示的選択はしかしながら保護の範囲の制限とみなし得ない。一般式(I)、(IA)および(II)の化合物の薬理学的作用は測定されるIC50値に基づき実証される。アセチルコリンエステラーゼ(AChEI)若しくはブチリルコリンエステラーゼ(BuCHEI)の50%阻害が存在するいずれかの濃度を後者が表すためである。満足すべき阻害値(下の調査を参照)は、加えて、一般式(I)、(IA)若しくは(II)の化合物がアルツハイマー病のような神経変性疾患の処置のための製薬学的剤の製造に適することの表示である。
【0033】
【表4】

【0034】
【表5】

【0035】
【表6】

【0036】
【表7】

【0037】
【表8】

【0038】
【表9】

【0039】
【表10】

【0040】
上で挙げられた好ましい意味は別にして、一般式(I)、(IA)および(II)中の置換基Rはまた、
i) 水素、低級(C−C10、場合によっては分枝状若しくは置換されている)ア
ルキル基、またはシクロアルキル基、C−C10置換シリル基(例えばトリエ
チルシリル、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル若しくはジメチルフ
ェニルシリル)、C−C10−α−アルコキシアルキル基、例えばテトラヒド
ロピラニル、テトラヒドロフラニル、メトキシメチル、エトキシメチル、2−メ
トキシプロピル、エトキシエチル、フェノキシメチル若しくは1−フェノキシエ
チル;
ii) O−CS−NHR(チオウレタン)、ここでRはi)で示される意味を有し

iii)以下の意味
【0041】
【化5】

をもつO−CO−NHR
iv) O−CO−HR、ここでRはi)で挙げられる意味、とりわけ
【0042】
【化6】

【0043】
のようなアミノ酸(双方の鏡像異性体)の置換パターンをもつエステルを有する、
も意味し得る。
【0044】
要するに、本発明のパラジウム触媒作用により得られる脱臭素ナルウェジンの処理により、すなわち酸素若しくは過酸化物との接触により、使用されるパラジウム触媒を不溶性の酸化物の形態に転化しかつ単純な方法で分離し得ることを述べることができる。安全の規制に完全に従った反応混合物のこの処理により、パラジウムラジカルを5ppmより下に減少させることが十分に驚くべきことに可能であり、その結果極めて純粋なガランタミン若しくは極めて純粋なガランタミン誘導体を得ることができ、それらは例えばアルツハイマー病の処置のためのもののような製薬学的剤の製造で直接使用し得る。
【0045】
本発明により得ることができる化合物ならびにそれらの製薬学的に許容できる酸付加塩は、神経変性過程の処置のための製薬学的剤の有効成分を使用し得、それに際して、主目的は急性の症状および徴候の改善でなく、しかしむしろ関連する過程の遅延および改変をもたらすことである。
【0046】
II型糖尿病の枠組み内で、インスリンを産生するランゲルハンス島細胞の細胞変性におけるアミロイドフラグメントの役割の増大する証拠が存在する。該細胞変性は制御されないカルシウムイオン流により増強され得る。
【0047】
本発明により得ることができる化合物ならびにそれらの製薬学的に許容できる酸付加塩は、例えば島細胞の変性疾患(例えばII型糖尿病のような)の処置のための製薬学的剤の有効成分として使用し得る。
【0048】
本発明により得ることができる化合物は、後に続くとおり使用し得る製薬学的剤の有効成分として使用し得る:
a)アルツハイマー病の処置のため、
b)パーキンソン病の処置のため、
c)ハンチントン病(舞踏病)の処置のため、
d)多発性硬化症の処置のため、
e)筋萎縮性側索硬化症の処置のため、
f)癲癇の処置のため、
g)卒中の影響の処置のため、
h)頭蓋脳傷害の影響の処置のため、
i)それらが低酸素、無酸素、仮死、心停止、中毒後、ならびに乳児の難産の合併症若し
くは麻酔で観察されるところの、脳中の拡散酸素および栄養素不足の影響の処置およ
び予防のため、
j)またとりわけ脳腫瘍の局所放射線治療若しくは化学療法により損傷された若しくはさ
れているニューロンのアポトーシス変性の予防的処置のため、ならびに
k)細菌性髄膜炎の処置のため、ならびに
l)とりわけアミロイド関連細胞変性の結果としてのアポトーシス成分を伴う疾患の処置
のため、
m)とりわけそれが島細胞のアミロイド変性に付随して起こる場合の糖尿病の処置のため 、
n)アルツハイマー病の患者の筋強度および持久力を増大させるため。
【0049】
本発明により得ることができる化合物若しくはそれらの製薬学的に許容できる酸付加塩、例えば臭化水素酸塩、塩酸塩、メチル硫酸塩、メチルヨウ化物、酒石酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩など(下表を参照されたい)は、経口で、直腸で、または皮下、筋肉内、静脈内若しくはくも膜下腔内注入(injection)若しくは注入(infusion)により、あるいは脳室内に、例えば植え込み型容器によって患者に投与し得る。
【0050】
本発明により得ることができる化合物の考えられる塩の例を下表に引用する。
【0051】
【表11】

【0052】
【表12】

【0053】
有効成分としての本発明により得られる化合物の投与における典型的な投薬量比率は、使用される化合物の性質に依存し、ならびに、静脈内投与の場合は、患者の身体的状態および他の投薬に基づき1日および体重1キログラムあたり0.01ないし2.0mgの範囲にある。
【0054】
以下の特定の製剤を適用し得る。すなわち
0.5ないし50mgを含有する錠剤およびカプセル剤
1mlあたり0.1ないし30mgの有効成分を含有する非経口投与のための溶液
0.1ないし15mg/mlの濃度の経口投与のための液体製剤
1mlあたり1若しくは5mgの有効成分の濃度の脳室内投与のための液体製剤。
【0055】
該化合物は0.1ないし10mg/日が放出される経皮系でもまたあり得る。
【0056】
経皮計量系は、浸透促進剤、例えばジメチルスルホキシド若しくはカルボン酸、例えばオクタン酸、ならびに現実的に見える(realistic−looking)ポリアクリレート、例えば、軟化剤例えばミリスチン酸イソプロピルを包含するヘキシルアクリレート/ビニルアセテート/アクリル酸コポリマーと一緒のいずれかの場合に0.1ないし30mgの有効成分を遊離塩基若しくは塩として含有する貯蔵層よりなる。カバーとして、例えば0.35mmの厚さをもつ有効成分不透性の外層、例えば金属被覆シリコン処理ポリエチレン貼付剤を使用する。接着層を製造するため、例えば有機溶媒中のジメチルアミノメチアクリレート(methyacrylate)/メタクリレートコポリマーを使用する。
【0057】
とりわけ、多くの場合にコリンエステラーゼ阻害作用を示す本発明により得られる化合物は、老人性認知症、アルツハイマー病などの治療的および/若しくは予防的有効成分として適する。本発明により得ることができる化合物は新たな極めて純粋な形態の四環性(tetracyclic)縮合複素環化合物である。
【0058】
要するに、本発明の一態様は後に続くとおり表し得る。すなわち
本発明は、極めて純粋なガランタミン若しくは極めて純粋なガランタミン誘導体の製造方法に関し、それに際して開始がパラジウムの触媒作用下で脱臭素されるラセミ体臭素ナルウェジンからなされる。この場合、不溶性の形態のパラジウム触媒が容易に分離可能な形態に転化されるように酸素若しくは過酸化物の存在下で実施される反応混合物の処理が本発明に不可欠である。さらなる反応が、鏡像異性体純粋のガランタミンを形成するための鏡像異性体純粋のナルウェジンの還元により実施され、それに際して、環窒素原子での対応する置換が達成されるようにそれがその後アルキル化若しくは脱アルキル化される。再結晶のようなさらなる精製により、5ppmより下のパラジウムの残留部分が達成され、その結果製薬学的原料としての直接使用が可能にされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I、IAおよびII:
【化1】

式中、R1は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキルにより場合によっては置換され;R2は、少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルチオニル、アリールチオニル、アラルキルチオニル、アルキルオキシチオニル、アリールオキシチオニル、アラルキルオキシチオニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキサミド、チオカルボキサミドにより場合によっては置換されている低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され;R3は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニルにより場合によっては置換され、および、かくして、Zは製薬学的に許容できる有機酸の陰イオン若しくは無機陰イオンである、
の極めて純粋な4a,5,9,10,11,12,−ヘキサヒドロ−6H−ベンゾフロ[3a,3,2−ef][2]ベンズアゼピン誘導体の製造方法であって、反応段階1において、ラセミ体臭素ナルウェジン(II)が酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィンで脱臭素され;反応段階2において、ラセミ体ナルウェジン(IV)を含有する反応混合物が酸素接触下で処理されかつ鏡像異性体純粋のナルウェジン(V)に転化され;そして、それに際して、反応段階3において、式(VI)の鏡像異性体純粋のガランタミンが還元により得られ、ならびに、反応段階4において、一般式(I)の化合物がO−アルキル化により得られるか、若しくは反応段階4’において、一般式(IA)の化合物がO−アルキル化ならびにその後の塩形成により得られるか、または反応段階4”において、一般式(II)の化合物がO−アルキル化、N−脱メチル化およびN−アルキル化により得られることを特徴とする方法。
【請求項2】
反応段階2における酸素接触が空気−窒素混合物を用いて実施される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
空気−窒素混合物が0.2ないし20容量%の酸素を含有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
酸素接触が活性炭の存在下で実施される、請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
反応段階3および/若しくは反応段階4が、1つ若しくはそれ以上の精製段階、好ましくは再結晶に対し下流である、請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
一般式I、IAおよびII:
【化2】

式中、R1は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキルにより場合によっては置換され;R2は、少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルチオニル、アリールチオニル、アラルキルチオニル、アルキルオキシチオニル、アリールオキシチオニル、アラルキルオキシチオニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルボキサミド、チオカルボキサミドにより場合によっては置換されている低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され;R3は水素、ヒドロキシ、アルコキシ、低級アルキル(C2−C10)よりなる群から選択され、それらは少なくとも1個のハロゲン、低級アルケニル(C2−C10)、低級アルキニル(C2−C10)、アリール、アラルキル、アリールオキシアルキル、ホルミル、アルキルカルボニル、アリールカルボニル、アラルキルカルボニル、アルキルオキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、アラルキルオキシカルボニル、アルキルスルホニル、アラルキルスルホニル、アリールスルホニルにより場合によっては置換され、および、かくして、Zは製薬学的に許容できる有機酸の陰イオン若しくは無機陰イオンである、
をもつ極めて純粋な4a,5,9,10,11,12,−ヘキサヒドロ−6H−ベンゾフロ[3a,3,2−ef][2]ベンズアゼピン誘導体の製造方法であって、反応段階1において、ラセミ体臭素ナルウェジン(II)が酢酸パラジウム(II)およびトリフェニルホスフィンで脱臭素され;反応段階2において、ラセミ体ナルウェジン(IV)を含有する反応混合物が過酸化物の使用で処理されかつ鏡像異性体純粋のナルウェジン(V)に転化され;そして、それに際して、反応段階3において、式(VI)の鏡像異性体純粋のガランタミンが還元により得られ、ならびに、反応段階4において、一般式(I)の化合物がO−アルキル化により得られるか、若しくは反応段階4’において、一般式(IA)の化合物がO−アルキル化ならびにその後の塩形成により得られるか、または反応段階4”において、一般式(II)の化合物がO−アルキル化、N−脱メチル化およびN−アルキル化により得られることを特徴とする方法。
【請求項7】
反応段階2において、無機過酸化物、好ましくは過酸化水素が過酸化物として使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
反応段階2において、有機過酸化物、好ましくはメタクロロ過安息香酸が過酸化物として使用される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
過酸化物に加えて活性炭もまた反応段階2に存在する、請求項6ないし8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
1個若しくはそれ以上の精製段階、好ましくは再結晶が反応段階3および/若しくは反応段階4に対し下流である、請求項6ないし9のいずれか1つに記載の方法。

【公開番号】特開2010−6806(P2010−6806A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145219(P2009−145219)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(507031701)サノヘミア・フアルマツオイテイカ・アクチエンゲゼルシヤフト (6)
【Fターム(参考)】