説明

高結晶化度と高分子量の乳酸ポリマーを製造する方法

本発明は、高結晶化度と高分子量の乳酸ポリマーを調製する方法であって、活性な末端基を有するプレポリマーを形成するためにラクチドを溶融重合するステップ、続いて固相重合するステップを含む方法に関する。前記重合は、ラクチド、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む触媒錯体の存在下で実行される。前記溶融重合後のラクチド残渣は、98℃からプレポリマーの融点より低い温度までの温度範囲において反応混合物を加熱することにより除去される。前記触媒錯体中のオリゴマーに対する金属の比は、0.1〜10の範囲、好ましくは0.5〜5の範囲、より好ましくは0.8〜1.5の範囲である。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む触媒系の存在下で、高結晶化度と高分子量を有する乳酸ポリマーを調製する方法であって、ラクチドを溶融重合するステップ、続いて固相重合するステップを含む方法に関する。
【0002】
本発明は、また、高結晶化度と高分子量を有する乳酸ポリマーを調製するための触媒系であって、ラクチド、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む触媒系に関する。
【0003】
[背景]
ポリ乳酸は、広い応用範囲を有する生分解性ポリマーである。それは、繊維製品に、パッケージ用途に、縫合糸、持続放出性カプセル及び薬物送達システムを含む医療用途に、並びに骨折のための補強材に用いられている。また、それは、1軸及び2軸延伸フィルム、繊維、並びに押し出し成形品に広く加工されている。ポリ乳酸ポリマーの分子量と結晶化度は、それから形成される製品の品質の重要な決定要因である。ポリマーの力学特性は、分子量と結晶化度に強く依存している。低分子量のポリマーでは、引張り強度はごくわずかであり、分子量の増加につれて、比較的実用的な値にまで増加し、最終的には漸近値に達する。それゆえ、低分子量を有するポリマーは、紡糸、フィルム加工のような工程を経由して有意義には加工できない。ポリ乳酸の結晶化度は、その保存寿命を延ばすための重要なパラメーターである。高結晶化度のポリ乳酸は、最も低いガス透過度を有し、そのために、ポリマーバルク中へガスの分子が侵入するのを防止する。大気からの水蒸気は、ポリマー中への拡散が妨害され、その結果、ポリマー劣化が減少するそうしたガス状種の1つである。なぜなら、たとえ非常に少量の水分であっても高分子鎖の加水分解による劣化を引き起こし得るからである。ガス及び水に対するバリヤー性は、パッケージ用途にとっても非常に重要である。
【0004】
米国特許第5508378号明細書には、(a)ポリ乳酸を得るためにラクチドを溶融重合するステップ、及び(b)高分子量ポリ乳酸(70,000〜4,30,000Daの間の範囲の平均分子量を有する)を得るために、ステップ(a)で得たポリ乳酸を、最終ポリマーの融点より低い温度で加熱することにより固相重合するステップを含む、2段階プロセスで、高分子量ポリ乳酸を製造する方法が記載されている。このプロセスでは、溶融重合ステップで5〜56.6重量%で存在するラクチド残渣は、ステップ(b)で60時間にも及ぶ固相での追加的な重合に関与し、結果として分子量の、0.93〜2.4倍の増加をもたらす。
【0005】
Shinnoらは、0.1モル%の2−エチルヘキサン酸第1スズを触媒として用いるL−ラクチドの重合を開示している(K.Shinno、M.Miyamoto及びY Kimura Macromolecules、第30巻(201号)、6438〜6444頁(1997年))。2段階の方法において、最初に、ポリ(L−ラクチド)の融点より高い温度で、L−ラクチドの溶融重合を行い、次いで、結晶化温度に近い温度で、固相で後重合を継続する。第2段階(温度を140から120℃へ変化させるとき)でポリ(L−ラクチド)が結晶化するにつれて、モノマーの消費が100%に到達することが見出された。しかし、ポリマーの分子量は、固相重合ステップの間で増加しないことが観察された。
【0006】
Moonらは、乳酸から出発して高分子量ポリ乳酸を製造するために、乳酸の溶融重合に続いて固相重合することを開示している(S I Moon、C Lee及びY Kimura、Polymer、第42巻、5059〜5062頁、2001年)。この方法により、合計の重合時間が32時間で、最高分子量600000Daが得られた。しかし、飽和点を過ぎると急激にポリマーの分子量が低下することが観察されている。
【0007】
このように、従来の重合方法での分子量増加は限られており、たとえ分子量が増加しても高分子量に到達するために必要な時間が長くなる。さらに、形成されるポリマーの結晶化度が限られていることが観察されており、それゆえ、ポリマーは容易に劣化する。このことは、成長している高分子鎖にラクチドモノマー単位が付加されるという重合機構の本質的な限界に関連していると思われる。
【0008】
[発明の詳細な説明]
したがって、本発明は、高結晶化度と高分子量を有する乳酸ポリマーを調製する方法であって、活性な末端基を有するプレポリマーを形成するためにラクチドを溶融重合するステップ、続いて固相重合するステップを含み、前記重合が、ラクチド、金属オクトエート及び乳酸オリゴマーを含む触媒系の存在下で実行され、前記溶融重合後のラクチド残渣が、98℃からプレポリマーの融点より低い温度までの温度範囲において反応混合物を加熱することにより除去される方法を提供する。プレポリマーに活性な末端基を導入すると分子量と結晶化度の増加が促進されるが、おそらくは、固相での追加的な重合中のプレポリマー−プレポリマーの反応によるのであろう。本発明の方法は、分子量が100000〜約200000の範囲で、結晶化度が50〜98%の範囲、より好ましくは70〜98%の範囲のポリ乳酸を与える。
【0009】
本発明は、また、高結晶化度と高分子量の乳酸ポリマーを調製するための触媒系であって、ラクチド、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む金属錯体である触媒系を提供する。
【0010】
高結晶化度と高分子量のポリ乳酸を製造するための前記方法は、2段のステップ、即ち、溶融重合ステップと固相重合ステップを含む。前記溶融重合ステップにおいては、主出発物質として用いられるラクチドは、開環重合(ring opening polymerization)を経由して溶融状態で重合されてプレポリマーを与え、前記固相重合ステップにおいては、固相状態で、ポリ乳酸の融点より低い温度で、活性な末端基のためにプレポリマーが互いに反応する。
【0011】
本発明の方法の溶融重合ステップにおいては、反応は、最初、相対的に高い温度で実行され、形成中のプレポリマーになんらの分解や着色も見られない。その後、ポリ乳酸は、所望の形状に、例えば、粒状に成形される。溶融重合のための反応温度は、100℃〜200℃の範囲、好ましくは140°〜180℃の範囲、より好ましくは145℃〜165℃の範囲である。重合反応は、0.00001〜10重量%、より好ましくは0.001〜2重量%の範囲の量で触媒を用い、ラクチドを含む反応混合物を0.5〜5時間、加熱することにより実行される。得られるプレポリマーは、2,000〜50,000の範囲の平均分子量を有し、ラクチドを、0.001〜10重量%の量で含む。固相重合ステップの前に、ポリ乳酸プレポリマーは、0.25時間〜10時間、好ましくは1時間〜4時間、ポリマーの融点より低い温度にまで冷却される。次いで、98℃からポリマーの融点未満までの好ましい範囲で、減圧下で反応混合物を加熱することにより、ラクチド残渣を除去する。ポリ乳酸ポリマーの分子量は、予備重合時間、重合温度、及び加える触媒の量を制御して、調節する。固相重合の温度は、好ましくはポリマーの融点より低い温度に設定される。反応は、好ましくは減圧下、150℃の温度で、反応器の中で実行される。固相重合の時間は、通常、1から20時間まで、好ましくは5と12時間の間である。反応時間短縮のために、固相重合の進行につれて反応温度を上昇させる。最終ポリマー生成物の融点は、固相反応温度につれて増加し、約190℃まで上昇し得る。固相重合の間に生成される少量のラクチドは、固相重合を非凝縮性のガスの存在下又は減圧下で実行することにより、除去される。固相重合の間に形成されるポリ乳酸は、50〜98%の範囲及びより好ましくは70〜98%の範囲の高度の結晶化度を有する。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、ラクチドモノマーは、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトングリコリドのようなラクトンと共重合される。
【0013】
別の実施形態では、溶融重合ステップにより得られるポリ乳酸プレポリマーは、粒状、フィルム、繊維及びペレット形態などの所望の形状に、成形機を用いて成形され、さらに、その形状を保持しながら固相で固相重合が実行される。
【0014】
本発明の触媒系は、(i)ラクチド(ii)乳酸オリゴマー及び(iii)金属又は金属化合物から有機溶媒中で調製される。適当な溶媒に、上記成分の混合物を、溶媒の又は溶媒混合物の沸点より低い温度で溶解する。反応混合物を、調製される金属−オキソ有機化合物に応じて、15分〜24時間の間攪拌する。触媒錯体の形成後、真空(vacuum)を用いるか用いないで、蒸発又はろ過の操作で溶媒を除去する。錯体中のオリゴマーに対する金属の比は、0.1〜10の範囲、好ましくは0.5〜5の範囲及びより好ましくは0.8〜1.5の範囲である。
【0015】
錯体形成のために用いる金属は、周期律表の第II、III、IV又はV族から選ばれる。代わりに、これらの金属の酸化物又はこれらの金属の塩も用いられる。金属/金属化合物には、亜鉛粉、スズ粉、アルミニウム及び他の金属;酸化スズ、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、及び他の金属酸化物;塩化第1スズ、塩化第2スズ、臭化第1スズ、フッ化アンチモン、塩化亜鉛、塩化マグネシウム、塩化アルミニウム及び他の金属ハロゲン化物;乳酸スズ、乳酸亜鉛、スズオクタノエート、及び他の金属の有機カルボン酸塩;チタンイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド及び少なくとも1つの末端水酸基を有する他の金属の他の金属アルコキシドが含まれる。
【0016】
触媒系の調製のための乳酸オリゴマーは、乳酸から形成される。重合反応の間又は高分子鎖が成長する際に、直鎖若しくは分岐のアルコキシ基又は/及び水酸基が、乳酸及び/又は乳酸エステル分子の一方の末端から脱離し、(i)別の乳酸エステル分子、(ii)又は乳酸分子又は(iii)成長している高分子鎖、の反対側の末端にある水酸基から、水素が切り離されるときに、オリゴマー化反応が起こる。このようにして、式ROHの縮合反応副生成物が形成される、式中、Rは、H又は直鎖若しくは分岐のどちらかであるC〜Cの基である。
【0017】
触媒錯体の調製に用いる有機溶媒には、ベンゼン、トルエン、キシレン及びメシチレンなどの炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素溶媒、クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化溶媒;テトラヒドロフラン、ジブチルエーテル3−メトキシトルエンなどのエーテル溶媒が含まれる。これらの溶媒は、単独で又は混合物として用いられる。
【0018】
本発明の方法に用いるラクチドは、D、L、若しくはDL異性体、又は、D及びL異性体の混合物、からなる群から選ばれる。さらに、ラクチドモノマーは、任意選択で、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトングリコリドなどのラクトンと共重合される。
【0019】
前記重合法に用いる触媒は、重合過程の間に1つ又は複数の部分に分けて加える。本発明の触媒錯体の様々な成分は、個別に加えるか、又はラクチド、金属オクトエート及び乳酸オリゴマーの錯体の形で加える。触媒は、0.00001〜10重量%の量で、より好ましくは0.001〜2重量%の量で用いる。
【0020】
以下に続く例では、分子量の決定は、PLゲル、5μ混合D(2×300mm)カラムを装着したWatersGPC(Waters2414 RI検出器)により、160〜4×10の分子量範囲を包含するクロロホルム中のポリスチレン標準を用いて実行した。プレポリマー及び高分子量ポリ乳酸ポリマーの融点(T)及び結晶化度(X)は、温度範囲20〜300℃で、NETZSCH STA 409PC Luxx示差走査熱量計により決定した。光学純度(%L含有量)は、[α]589nm=−89°の5%フルクトース溶液で較正してJasco DPI−370デジタル偏光計を用いて測定した。
【0021】
[例]
(例1)
L−ラクチドの重合を従来の重合ルートで、スズオクトエートを触媒として用い、2段階で実行した。溶融重合は160℃で2時間実行した。重合は、真空シールされたガラスアンプル中で実行した。最初に、ガラスアンプルに乾燥したL−ラクチド2gを入れ、次いで、触媒に対するL−ラクチドのモル比を1000に保ちながら、トルエン中0.1Mの第1スズオクトエート140μlを加えた。アンプルを高真空下で封じ、オイルバス中へ浸漬した。重合が完了した後、ガラスアンプルを取り出し、次いで、溶融した反応ポリマー混合物を冷却し、その後、サンプルを分析のために取り出した。得られたポリ乳酸は、113200の平均分子量、及び29.6%の結晶化度を有していた。そのようにして得られたポリマーをさらに反応器中に移し、固相重合を150℃で10時間実行した。GPCによる分子量分析により、得られたポリ乳酸は、108500の平均分子量、及び45.4%の結晶化度を有することが分かった。
【0022】
〔触媒の調製〕
(例2)
乾燥したL−ラクチド72mgを、窒素雰囲気下で50mgの丸底フラスコ中へ10mlのトルエンとともに入れ、30分間攪拌した。この溶液を、あらかじめ200mgのスズオクタノエート(Sigma Aldrich製)を入れておいた別の丸底フラスコ中へ移した。次いで、乳酸オリゴマー500mgを反応混合物中に加え、さらに10mlのトルエンで希釈した。反応混合物を室温で5時間攪拌した。トルエンは最終的に反応混合物から室温、真空下で除いた。こうして形成されたスズオクタノエート−オリゴマー−ラクチドの乾燥した触媒錯体をL−ラクチドのROPのために使用した。
【0023】
(例3)
乾燥したL−ラクチド346mgを、窒素雰囲気下で100mgの丸底フラスコ中へ30mlのベンゼンとともに入れ、30分間攪拌した。この溶液を、あらかじめ81mgのスズオクタノエート(Sigma Aldrich製)を入れておいた別の丸底フラスコ中へ移した。次いで、分子量1393ダルトンの乳酸オリゴマー1.606gを反応混合物中に加え、さらに20mlのベンゼンで希釈した。反応混合物を室温で5時間攪拌した。ベンゼンは最終的に反応混合物から室温、真空下で除いた。形成されたスズオクタノエート−オリゴマー−ラクチドの触媒錯体をL−ラクチドの開環重合のために使用した。
【0024】
(例4)
乾燥したL−ラクチドを、窒素雰囲気下で100mgの丸底フラスコ中へ30mlのトルエンとともに入れ、30分間攪拌した。この溶液を、あらかじめアルミニウムイソプロポキシド(Sigma Aldrich製)を入れておいた別の丸底フラスコ中へ移した。次いで、乳酸オリゴマー1.000gを反応混合物中に加え、さらに20mlのトルエンで希釈した。反応混合物を室温で5時間攪拌した。アルミニウムに対するラクチドの比を20に保った。トルエンは最終的に反応混合物から室温、真空下で除いた。アルミニウムイソプロポキシド−オリゴマー−ラクチドの乾燥した触媒錯体をL−ラクチドのROPのために使用した。
【0025】
(例5)
末端にコンデンサー及び受器を、並びにスクリュー型インペラーを有する機械攪拌機を取り付けた三つ口の管状反応器に、375gの乳酸(90w/w%の水溶液)を入れた。溶液を30rpmで攪拌し、窒素気流下で2時間、温度制御された管状ヒーターで150℃に加熱した。その後、攪拌と加熱を継続し、圧力を真空ポンプで2時間かけて徐々に下げた。次いで、溶融した反応混合物を室温にまで冷却して、重量平均分子量522の乳酸オリゴマー300gを得た。このオリゴマー13gを別の三つ口の100ml管状反応器に取り、200メッシュの粒径を有する亜鉛粉5.22gと一緒に、8時間、120℃で攪拌した。その後、反応混合物を熱水に溶かし、ろ液を回収し、さらに乾燥して亜鉛オリゴマー触媒を得た。
【0026】
〔溶融重合〕
(例6)
2gのラクチドを管状反応器に入れた。例2で調製した触媒錯体30mgを反応混合物中に加え、オイルバス中に浸漬して混合物を減圧下、1時間、160℃の温度で加熱した。すべてのL−ラクチドが溶融し、設定した温度に到達して後に反応時間を測定した。得られたポリ乳酸は、26,000の平均分子量、及び61%の結晶化度を有した。ポリ乳酸プレポリマーを、さらに110℃、2時間、0.05mmHgで加熱して、ラクチドを含まないポリ乳酸プレポリマーを得た。
【0027】
(例7)
10gのラクチドを管状反応器に入れた。例2で調製した触媒錯体150mgを反応混合物中に加えた。管状反応器をオイルバス中に浸漬して混合物を減圧下、1時間、160℃の温度で加熱した。すべてのL−ラクチドが溶融し、設定した温度に到達して後に反応時間を測定した。得られたポリ乳酸は、18,000の平均分子量、及び58%の結晶化度を有した。ポリ乳酸プレポリマーを、さらに110℃、2時間、0.05mmHgの高真空下で結晶化させて、ラクチドを含まないポリ乳酸プレポリマーを得た。
【0028】
〔固相重合〕
(例8)
例6で形成されたポリ乳酸プレポリマーを米粒サイズのペレットに加工した。ポリ乳酸プレポリマーを反応器に移し、固相重合反応を150℃で、5時間実行した。ペレットには溶融接着も着色も見られなかった。GPCによる分子量分析により、得られたポリ乳酸は、100,000の平均分子量、及び85%の結晶化度を有することが分かった。
【0029】
(例9)
例6で形成されたポリ乳酸プレポリマーを米粒サイズのペレットに加工した。ポリ乳酸プレポリマーを反応器に移し、固相重合反応を150℃で、10時間実行した。ペレットには溶融接着も着色も見られなかった。GPCによる分子量分析により、得られたポリ乳酸は、228000の平均分子量、及び98%の結晶化度を有することが分かった。
【0030】
(例10)
例7で形成されたポリ乳酸プレポリマーを米粒のサイズのペレットに加工した。ポリ乳酸プレポリマーを反応器に移し、固相重合反応を、150℃、10時間実行した。ペレットには溶融接着も着色も見られなかった。GPCによる分子量分析により、得られたポリ乳酸は、153000の平均分子量、及び95%の結晶化度を有することが分かった。
【0031】
(例11)
例7で形成された溶融プレポリ乳酸を使って手動で延伸したポリ乳酸繊維を固相重合反応に利用した。得られた繊維を反応器に移し、反応を150℃、10時間実行した。繊維には溶融接着も着色も見られなかった。GPCによる分子量分析により、得られたポリ乳酸は、多分散性指数1.8を示し、153000の平均分子量を有することが分かった。
【0032】
(例12)
例6で形成されたポリ乳酸プレポリマーを、1mm以下のサイズの粉に加工し、粉体混合物をガラス反応器に入れる。流速2.5リットル/分の窒素ガスの存在下で、固相重合を150℃、12時間、固相で実行する。反応の終了後、ポリ乳酸は、粉体混合物になんらの溶融接着を起こすことなく、112,000の平均分子量を有している。また、生成物に着色も起こらない。
【0033】
次の表に、本発明の方法により調製されたポリ乳酸ポリマーの特性を、従来のルートで調製したポリ乳酸の特性と比較してある。
【0034】
【表1】

【0035】
表(表1)から、本発明の方法で調製されたポリ乳酸ポリマーが実質的により高い分子量を有しており、従来ルートで調製したポリマーと比較して実質的により高い結晶化度を有することを認めることができる。また、本発明のポリ乳酸が、従来ルートにより得たポリ乳酸より高い融点を有することも認めることができる。
【0036】
上記の記載は単に例示的なものであって、本発明は次の特許請求の範囲及びその全範囲の均等物により規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高結晶化度と高分子量を有する乳酸ポリマーを調製する方法であって、活性な末端基を有するプレポリマーを形成するためにラクチドを溶融重合するステップ、続いて固相重合するステップを含み、前記重合が、ラクチド、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む触媒系の存在下で実行され、前記溶融重合後のラクチド残渣が、98℃からプレポリマーの融点より低い温度までの温度範囲において反応混合物を加熱することにより除去される、方法。
【請求項2】
ラクチド、有機金属オキソ化合物及び乳酸オリゴマーを含む触媒系とともに実行され、前記有機金属オキソ化合物が、周期律表の第II族、第III族又は第IV族の金属を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
0.00001〜10重量%の量、より好ましくは0.001〜2重量%の量で存在する触媒系とともに実行される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法中で用いるラクチドが、D−ラクチド、L−ラクチド、DLラクチド、又は、D及びL−ラクチドの混合物、である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法中で用いるラクチドが、β−プロピオラクトン、δ−バレロラクトン及びε−カプロラクトングリコリドからなる群から選択されるラクトンと共重合される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法の溶融重合ステップにより形成される、2000〜50000の範囲の分子量を有するプレポリマー。
【請求項7】
請求項1に記載の方法により調製される高分子量のポリマーであって、前記ポリマーが、100000〜約200000の分子量、並びに50〜98%の範囲及びより好ましくは70〜98%の範囲の結晶化度を有する、高分子量のポリマー。
【請求項8】
記載なし
【請求項9】
ポリ乳酸ポリマーを調製するための触媒系であって、前記触媒系が、ラクチド、金属オクトエート及び乳酸オリゴマーを含む錯体であり、前記錯体中のオリゴマーに対する金属の比が、0.1〜10の範囲、好ましくは0.5〜5の範囲、より好ましくは0.8〜1.5の範囲である、触媒系。
【請求項10】
有機金属オキソ化合物が、周期律表の第II族、第III族、第IV族又は第IV族の金属を含む、請求項8に記載の触媒系。
【請求項11】
触媒成分が、錯体の形に形成されるか又は個別に加えられる、請求項8〜10のいずれか一項に記載の触媒系。
【請求項12】
ポリ乳酸を製造するための触媒系を調製する方法であって、ラクチド、乳酸オリゴマー及び有機金属オキソ化合物、の混合物を有機溶媒中へ溶解するステップと、混合物を攪拌するステップと、真空を用いて又は用いないで溶媒を除去するステップとを含む、方法。

【公表番号】特表2010−523755(P2010−523755A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501670(P2010−501670)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/IN2008/000225
【国際公開番号】WO2009/007989
【国際公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【出願人】(509269872)インディアン インスティテュート オブ テクノロジー, ボンベイ (3)
【Fターム(参考)】