説明

高融点ガラス材料あるいは高融点ガラスセラミック材料の製造装置及び方法

【課題】本発明は、破片材料あるいは原材料が1760℃を超える溶融塊に溶融され、溶融塊が生成され、及び溶融塊がイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金からなる抜取管(4)を通して出てくるプロセスを用いた高融点ガラス材料または高融点ガラスセラミック材料の製造方法及び装置に関する。
【解決手段】本発明に従って、天然ガス組成からなる周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の一部の温度は、前記抜取管から溶融塊を注ぎ出す期間を除いて、常に1000℃以下となるように制御あるいは調節される。これにより本発明装置の酸化的分解を防止することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は2007年5月17日に出願されたドイツ特許出願102007023497.1−45、「ガラス材料、ガラスセラミック材料、あるいはセラミック材料の製造方法及び装置」を基礎とする優先権主張出願であり、このドイツ特許出願の内容は参照のため本願に取り入れられている。本願は、2007年5月31日に公表されたドイツ特許DE10348466B4、「高融点ガラスあるいはガラスセラミック材料、及びガラスあるいはガラスセラミック材料の製造方法及び装置」、2007年12月6日に公表されたドイツ特許DE10362074B4、「高融点ガラスあるいはガラスセラミック材料及びその使用方法」、及び2004年10月13日に出願された対応日本特許出願第2004−298326号、「高融点ガラス材料、高融点ガラスセラミック材料、ガラス材料あるいはガラスセラミック材料の製造装置及び方法」の関連出願である。なお、上記特許及び特許出願の内容は参考として本願に取り入れられている。
本発明は高融点ガラス材料、ガラスセラミック材料あるいはセラミック材料、特に1800℃以上の融点をもつガラス材料、ガラスセラミック材料あるいはセラミック材料の製造方法及び装置に関する。より詳細には、本発明は、不連続作業工程による、高融点ガラス材料あるいはガラスセラミック材料から成る、例えばロッドあるいは他の固形部材、及び管あるいは他の中空部材等の成形部材の製造方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、広くは、極めて低含量の網状改質剤、特にアルカリ酸化物を含むガラス材料あるいはガラスセラミック材料、及び高含量の高融点酸化物、例えばSiO、Al、ZrO、NbあるいはTa等を含むガラス材料あるいはガラスセラミック材料に関する。上記のガラス材料種あるいはガラスセラミック材料種は約1700℃程度のかなりの高融点を有する。このような材料を製造するためには、例えば溶融ガラスを清澄するため、溶融ガラスをかなりの高温まで長時間加熱しなければならない。このようなかなりの高温で連続作業するためには、るつぼの設計に関して新たな要求が求められる。
【0003】
不連続操業で管状部材及び棒状部材を製造する従来型装置には、溶融容器として用いられる通常Pt及びPt合金、例えばPtRh30から成る坩堝が備えられている。上記貴金属のいずれか1種から成る管が、坩堝下において、坩堝の加熱とは無関係な1または2以上の加熱回路によって加熱された管と溶着される。これにより熱成形加工にとって重要な管の温度設定を坩堝の温度設定から切り離して行うことが可能となる。
【0004】
このような構成とすることの価値は多くの例において実証されている。しかしながら、最高温度が約1760℃までに制限され、かつ温度が高くなればなるほど装置の寿命が大きく制限される欠点がある。しかしながら、極めて少含量の網状改質剤、特にアルカリ酸化物しか含まないガラス材料あるいはガラスセラミック材料、あるいは高含量の例えばAl、SiO、ZrO、Nb、またはTa等の高融点酸化物を含むガラス材料あるいはガラスセラミック材料は、一定条件下において高い溶融温度を必要とし、あるいは可能な最高温度において不経済に長い処理期間、溶融というよりも焼結されなければならない。
【0005】
EP1160208A2には、ガラス成形部材の連続製造に用いる坩堝が開示されている。この坩堝は、ガラス融点に対して耐久性な金属、すなわちモリブデンあるいはタングステンから作製される。坩堝壁中の酸化物が溶融ガラス中へ拡散してガラスに脱色を生じ、あるいはガラス中に封入されることを防止するため、坩堝の壁は高温でなければ溶融しない低反応性金属の層で内張りされている。この内張りはレニウム、オスミウム、イリジウム、あるいはこれら金属の合金から成っている。
【0006】
坩堝の二重壁構造化はかなり高価となり、また用いる高温におけるモリブデンあるいはタングステンの燃焼を抑制するために坩堝の内側及び外側領域に水素含有保護ガス雰囲気を確立することができるかなり複雑な構造とする必要がある。しかしながら、この水素含有ガスによって種々の問題が引き起こされる。第一にこのガスは可燃性であるため高額な安全システムを必要とすること、第二に構造材料が脆弱化する可能性があること、第三に、これは溶融ガラスに関して極めて重要なことであるが、水素含有ガスによって種々の酸化段階にあるガラス成分及び容易に還元される成分の使用が妨げられることである。例えば、通常の還元清澄剤であるAs、Sb及びSnOを用いることができず、高価であるが比較的効率の悪いヘリウムを用いて清澄を行わなければならない。
【0007】
この装置には混合物を送るためのチャネル系が必要であり、また精密形状化のためのガラス粘度を決めるために不可欠な成形用ダイを備える抜取管を用いることは不可である。このことは、この装置が清澄剤(混入物)を含まない超純粋な石英ガラスに適することを意味している。従って、この装置は、連続作業方式における高精密ガラス部品の経済的かつ単純な製造には、一般論として複雑過ぎると共に高価過ぎる装置と言える。
【0008】
US6482758B1には高融点結晶性ガラス材料製造用のイリジウム製坩堝の使用に関する開示がある。しかしながら、本開示によれば、この坩堝は清澄及び先端切り出し後に加熱装置から取り外される。このような方式は、例えば実験室規模での試験のように坩堝が比較的小形な場合に適するものである。何故なら、坩堝の重量ゆえに大形の坩堝を手動で取外すことは容易ではなく、またたとえリフト装置を用いても、坩堝の壁厚が極端に厚くない限り、坩堝自体の重量で坩堝が変形する可能性があるからである。さらに、この装置は、管延伸のような複雑あるいは限定的な成形加工に用いることは不可であり、ブロック形状の圧縮型中での注入成形にのみ使用可能である。縁部上で成形されるガラス材料中において結晶化しやすいガラス材料の場合には、さらに別の欠点、すなわち無制御温度勾配及び/または上側縁部上の蒸発生成物によって望まれない結晶化が引き起こされる欠点がある。
【0009】
また、先行技術より、イリジウム製坩堝及びイリジウムを高含量で含む合金から成る坩堝も公知である。この種の坩堝は、結晶生長、例えば既知のツォクラルスキー法を用いる結晶生長に用いられる。この場合、出発材料は再度高温において溶融される。しかしながら、結晶は全く別の加工特性をもつ全く異なるクラスの物質である。例えば、結晶生長中における公知の清澄処理及び清澄剤の添加は省略される。生長した結晶形状は、種結晶及び一般的に極めて複雑な抜き取り装置の成形によって決まるため、成形も全く異なる。それゆえ、結晶抜き取り装置をガラス材料の製造に用いることはできない。結晶は一定温度で突然固化するため、管系を含む成形加工、及び数100℃に及ぶ温度低下とそれに後続する粘度上昇は原則として不可能である。
【0010】
US4,938,198には、溶融ガラスを収容する容器及び該容器を収容するコンテナを備えた強還元性リン酸ガラス材料の製造装置及び方法が開示されている。前記溶融ガラス収容容器には管状の出口が備えられ、これら容器及び管状出口は酸素透過性白金あるいは酸素透過性白金合金から成り、前記コンテナは酸素雰囲気状態で前記容器及び管状出口を収容するように設計されている。
【0011】
US4,938,198には、溶融物収容容器をイリジウムあるいはイリジウム合金を用いて作製すべきではないことも言及されている。イリジウムを加工して容器を作製することはかなり難しく、また容器外面を高価なロジウム等の不活性金属でコーティングしなければならなくなるからである。
【0012】
JP02−022132Aには、1000〜2000℃の温度範囲内における溶融ガラスの製造装置が開示されている。また、この公報には、高温における溶融物の存在によって生ずる溶融ガラス収容容器の腐食を防止するために、イリジウムが高融点材料として原則的に適することも開示されている。しかしながら、加熱、耐火材料の選択、熱成形、使用ガラス材料、装置制御、イリジウムあるいはイリジウム合金の安定化に関する特定の基準は開示されていない。
【0013】
図2は、US2005/0109062A1及び日本特許出願第2004−298326号の対応ドイツ特許DE10348466B4に従った抜取管104を備えた溶融ガラス収容容器として機能する坩堝102の略部分断面図である。参考のため、この公報の内容を本願に取り入れている。本図の上側部分に示すように、坩堝102には、適当な大きさに切断され、かつ溶着によって溶着継ぎ目に沿って完全に結合されているシートから作製された坩堝壁106が設けられている。このシートに適当に形成された切り欠きによって、基部109が適切に形状化され、かつ図示されていない溶着継ぎ目を用いて坩堝壁の残部へ結合されることが確保されている。
【0014】
前記抜取管として機能する、数個のセグメント110〜114から成る抜取管104は基部109の中央部分から突き出している。図示例において、抜取管104の断面は円形である。抜取管104の断面形状は他の異なる形状であってもよい。これらセグメント110〜114のそれぞれは適当な大きさに切断され、かつ関連する溶着継ぎ目116に沿って管状体へ結合された一枚のシートから作製される。最上部のセグメント110は円錐状セグメントであり、このセグメントは坩堝102の基部109へ連結されている。円錐形状であることにより、坩堝102の円筒形部分から抜取管104への溶融ガラスの流入が促進される。他のセグメント111〜114はほぼ真直ぐである。抜取管104の上側部分Aにおいて、セグメント110〜113は、以下において説明されるように、イリジウム製であるか、あるいはイリジウムを高含量含む材料から作製される。抜取管104の下側部分B中のセグメント114あるいは数個のセグメント(図示せず)は耐酸化性合金、好ましくはPtRh30あるいはPtRh20から作製される。
【0015】
抜取管104の下端には、抜取管104から出てきた溶融ガラスを形状化して成形部品を製造する熱成形装置として機能する引抜ダイス115がある。抜取管104はセグメント110〜114の壁を流れる電流によって抵抗加熱される。
【0016】
円錐状セグメント110は溶着継目によって坩堝102の基部へ連結されている。イリジウムあるいはイリジウム高含量材料から成る他のセグメント111〜113も好ましくは溶着接合によって相互に連結される。イリジウム、あるいはイリジウムを少なくとも50重量%含むイリジウム高含量合金と、抜取管104の部分Bのセグメント114の作製に用いられる他の耐酸化性合金は、溶融温度において大きく異なる。そのため、低融点耐酸化性合金から成るセグメント114を溶着接合によってイリジウムあるいはイリジウム高含量合金から成るセグメント113へ連結させることは不可である。これらセグメントの連結は、セグメント113をセグメント114中へぴったり嵌合させる一種のプラグ連結によって行われる。作業温度が高いと、種々材料の「過剰溶融」が起こり、これによって種々の異なる材料の付着結合が引き起こされる。セグメント113の外径とセグメント114の内径は、前記プラグ連結が形成された時に、セグメント114の低融点耐酸化性合金から成る材料を含む一種のビーズがセグメント113の材料の周りに配置されるように互いに適合され、これにより抜取管104は部分Aと部分Bとの間の移行部分139において密封される。
【0017】
図1は、本出願人によるUS2005/0109062A1及び日本特許出願第2004−298326号の対応ドイツ特許DE10348466B4に従った不連続操業による高融点ガラス材料あるいは高融点ガラスセラミック材料製造装置の略断面図を示す。装置101には図2に示した坩堝102が含まれ、この坩堝はコンテナ下部119とコンテナ上部120から成るコンテナ中に収容される。坩堝102は、坩堝102の上端部がコンテナ上部120の上端部を越えて突き出さないようにコンテナ内に収容される。コンテナ上部120はカバー121によって覆われる。このように設計されたコンテナは周辺雰囲気から適切に密閉されるため、坩堝102が収容されているコンテナ内部に保護ガス雰囲気を確立させることにより、坩堝102及び抜取管104(図2参照)の部分Aのイリジウムあるいはイリジウム高含量材料に対して生ずる望ましくない酸化を防止することが可能である。
【0018】
坩堝102の周囲には、坩堝102の周囲を螺旋状に目に見える程度に傾斜して延びる水冷型誘導コイル103が配置されている。誘導コイル103は坩堝102の外壁に対して僅かな間隔、好ましくは約60〜80mmの間隔を空けて配置される。誘導コイル103と坩堝102の間には、坩堝102を放射状に取り囲む耐火性シリンダがあり、このシリンダはその底部において第二基部126と第一基部125によって密閉されている。このようにして耐火性シリンダ123の内周面と坩堝102の外周面との間に生じた空間には、坩堝102が約2000℃の高温においても十分寸法安定であることを確保するため、MgOペレットが充填される。ペレット充填部124中のペレットは熱的にも寸法的にも安定でなければならず、また特定の温度において耐酸化性でなければならない。そのため、好ましくはMgOがペレット充填材料として用いられなければならないが、本発明においてはこの充填材料はMgOに限定されず、例えばZrOを用いることも可能である。ペレット充填部124中のペレットは円形とは異なる外面形状をしていてもよい。しかしながら、シリンダ123の内周面と坩堝102の外周面との間の空間には十分なガス流、特に保護ガス流が保持され、この不活性保護ガスが流れることによって坩堝102中のイリジウムあるいはイリジウムを少なくとも50重量%含むイリジウム高含量材料に対して生ずる望ましくない酸化が防止される。
【0019】
ペレット充填部124中のペレットの長径が少なくとも約2.0mm、より好ましくは少なくとも約2.5mm、さらに好ましくは少なくとも約3.0mmであれば前記空間中に充分なガス流を確保することが可能である。
【0020】
しかしながら、図1及び2に従った装置の操作により、一定操作期間後、例えば2〜3ヶ月後、抜取管の欠陥、特に抜取管の周壁における漏れが生じ、それによって溶融ガラスの側部への望ましくない制御不能な漏れが生じることが示された。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は、高融点ガラス材料あるいは高融点ガラスセラミック材料より高い信頼性をもって適する品質で製造可能な方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題は請求項1項に従った方法及び請求項30項に従った装置によって達成される。さらに有利な実施態様は従属請求項の主題として記載されている。
【0023】
従って、本発明は、抜取管を備えた溶融ガラス収容容器が用いられ、該容器がコンテナ内に配置され、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金から作製される場合は前記容器及び抜取管、さらに保護雰囲気が、前記容器及び抜取管の一部が保護雰囲気下でコンテナ中に受け取られそれによってイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金の酸化が防止されるように、コンテナ内に形成されている、US2005/0109062A1及び日本特許出願第2004−298326号の対応ドイツ特許DE10348466B4に従った高融点ガラスまたはガラスセラミック材料の製造方法を取り扱っている。前記方法に於いて、抜取管の前方自由端はコンテナ底部に配置された開口部を通って周辺雰囲気中へ延びている。本発明に従って、コンテナ外部にある抜取管の前方自由端の温度は、抜取管から溶融ガラスが流れ出る段階を除いて、この部分が常に約1000℃以下、好ましくは950℃以下の温度に保持されるように制御あるいは調節される。
【0024】
上記の工程制御あるいは調整を行うことにより、前述した抜取管の欠陥を実質的に2〜3カ月を超えるさらに長期の作業期間に亘って確実に防止することができる。本願発明者の試験により、DE10348466B4に従った装置において、前記抜取管の欠陥の原因は常にイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金からなる抜取管の前記部分と耐酸化性合金、例えばPtRh20からなる部分との連結にあることが示されている。さらに、入念な金属組織的試験において、発明者は耐酸化性合金からなる部分の白金グループ元素、特にPtあるいはRhが、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金からなる部分中へ拡散してこの材料中に空隙を残すことを見出している。これらの空隙は時間を経て蓄積するので抜取管の材料中に孔が形成される。これら孔の全数が一定範囲を超えると異なる材料からなる抜取管の二つの部分間の連結が充分な剛性あるいは強度をもはや示さなくなるので前記連結は機械的負荷によって最終的に崩壊する。上記欠陥の別の原因として抜取管材料中の不均質性に起因する加熱電流の局部的ピークがある。本発明によれば抜取管はその全体がイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金から作製されるため、前記抜取管の欠点は本発明に従うことによって取り除かれる。すなわち、駆動熱力学的応力はもはや存在しないため、合金成分の拡散はもはや生じ得ない。
【0025】
上記先行技術から結論できるように、酸化性周辺雰囲気へ暴露される坩堝あるいは抜取管の部分はガス状酸化イリジュウムの蒸発下において急速に分解される。かかる理由から、上記先行技術においては、坩堝及び抜取管の第一部分が保護雰囲気下でコンテナ内に受け取られ、周辺雰囲気へ暴露される抜取管の前方自由端をイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金以外の材料、即ち白金グループからなる耐酸化性合金で作製する構成が採られている。しかしながら本願発明者の熟考された試験によれば、適切な工程制御及び任意的な別手段を講じても、周辺雰囲気へ暴露される抜取管の前方自由端を形成するイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金の酸化的分解を確実に防止することは不可能である。
【0026】
本発明に従った前記酸化的分解を防止する第一の方策として、適切な温度管理を行うことがある。この方策は、周辺雰囲気へ暴露される抜取管の前方自由端を少なくとも不連続操業期間中の主要な期間に亘って十分低温に保持することが可能であれば、前記酸化的分解は実質的には起こらないとの驚くべき発見に基づくものである。白金グループ元素の酸化特性に関しては、J.C.Chastonの「白金金属と酸素の反応」、Platinum metals review, 1965, vol.9(2), 51-56頁において言及されている。この文献では、イリジウムあるいはイリジウムを高含量含む材料の新しいあるいは未処理の表面を加熱に際して極めて薄い酸化物層で被覆すると、この層がおそらく酸化物層のさらなる生長を抑制するバリアとして働くことが明らかにされている。約400℃以上までさらに加熱すると、酸化物層の生長が開始されることが観察される。この酸化物層はそれでも制御不能な酸化的分解に対する保護層として機能する。意外にも、抜取管の前方自由端の少なくとも形状を限定し、また周辺雰囲気を用いて限定量を交換することにより、周辺雰囲気へ暴露されている抜取管の前方自由端外面上の酸化物層によって1000℃以下の温度において前記抜取管の酸化的分解が十分抑制されることが明らかにされている。しかしながら、本発明に従った工程管理に関しては、周辺雰囲気へ暴露されている抜取管の前方自由端が高温に置かれる全期間が最小となるように注意が払われなければならない。
【0027】
さらに別の実施態様によれば、周辺雰囲気へ暴露されている抜取管の前方自由端は、前述した酸化的分解を十分程度まで抑制するために、溶融ガラスが抜取管から注がれあるいは流出される段階を除き、常に前述した限界温度である1000℃よりもずっと低い約950℃以下の温度に保持されるように温度管理される。
【0028】
さらに別の実施態様に従った前記酸化的分解を抑制する別の方法では、ガラス材料からなるプラグ又はストッパを用いて抜取管の前方自由端の内側部分が周辺雰囲気の影響から保護される。意外にも、本願発明者のさらなる試験において、ガラス材料が抜取管の前方自由端の内側部分を周辺雰囲気の影響から保護するために非常に適することから、前記前方自由端をイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金を用いて作製可能なことが見出された。これに関し、用いるガラス種の特に軟化温度に依存するが、坩堝中で既に溶融しているガラスを用いることが便宜上有利である。適当なガラスプラグの作製のため、抜取管のオリフィスはクロージャー部材を用いて閉じられ、この部材は好ましくは冷却され、また銅などの金属から作製される。ガラスプラグは好ましくは製造されるガラスと同じ組成あるいは別の組成から成り、後に抜取管中に置かれた冷条件下で破片状態で存在する。その後、抜取管はその中に置かれた破片材料あるいは原材料の軟化温度をはるかに超える温度まで加熱される。抜取管のオリフィスはクロージャー部材によって閉じられるため、挿入された破片材料あるいは原材料は挿入および加熱中に抜取管から流れ出ることはできない。加熱処理中、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金の悪化が始まる前記約1000℃、好ましくは約950℃の限界温度は超えてはならない。抜取管の下部において溶融気密ガラスからなる小形のプラグが作製され、このプラグはひび割れや隙間を生ずることなく抜取管の材料に接し、また好ましくは冷却される前記クロージャー部材と近接状態にある。本発明に従った上記方式により抜取管の前方自由端の内側部分は周辺雰囲気から密閉される。
【0029】
さらに別の実施態様によれば、前記破片材料あるいは原材料を投入あるいは挿入する工程、抜取管を破片材料あるいは原材料の軟化温度以上まで加熱する工程、及びプラグの形成まで抜取管を冷却する工程を、抜取管の全体がプラグで密封されるまで、即ち坩堝へ向かう移行部分まで必要な頻度で繰り返すことが可能である。この実施態様においては、コンテナ内に配置されている坩堝及び抜取管の前記部分はUS2005/01909062A1の対応ドイツ特許DE10348466B4に記載された方式で周辺雰囲気から保護される。この特許のさらに別の実施態様によれば、坩堝及び抜取管を別個の加熱手段を用いて加熱できれば坩堝自体を加熱する必要は全くない。
【0030】
抜取管中に入れられあるいは挿入される破片材料はガラス破片であるので、ガラス原材料の溶融中に抜取管内面あるいは坩堝の望ましくない酸化を引き起こすガスが放出されることはない。好ましくは、前記ガラスプラグの作製に於いては温度勾配の急な温度調節を用いて抜取管の温度を軟化温度以上まで急激に上昇させ、またその後で再び急激に下降させることが可能である。これに関し、抜取管の前方自由端が能動的に冷却される場合には、好ましくは周辺雰囲気に暴露される抜取管の前方自由端に隣接して追加の冷却手段を設けて冷却を補完することが可能である。しかしながら、さらに別の実施態様においては、クロージャー部材が能動的に冷却され、かつ該部材は金属から作製されるため、クロージャー部材を抜取管の材料と密着させることにより前方自由端からの急速な熱の放散を確実に行うことが可能である。
【0031】
特に製造されるガラスの軟化温度が1000℃以上である場合、いずれか他の非酸化性ガラスの破片を用いて抜取管内に前記プラグを形成することが可能である。このような実施態様においては、抜取管に作製されるガラスとして組成の異なる破片材料を中に置きあるいは挿入する工程、抜取管をその中に置かれる破片材料の軟化温度以上まで加熱する工程、及び抜取管を冷却してプラグを形成する工程が、気密状態で抜取管を密封するガラスプラグが抜取管内に形成されるまで必要な回数反復される。
【0032】
ガラスプラグの形成に別のガラス種が用いられる別の実施態様においては、装置内に流れが全く生じない段階、即ち抜取管がクロージャー部材で閉じられている段階において、抜取管の成分と坩堝の成分が混入しないように、抜取管中の温度が坩堝中の温度よりも少なくとも100℃低くなるように調節される。このような実施態様において溶融ガラスが流れ出る場合、最初の注型部分は廃棄され、抜取管の全量が注ぎ出された場合のみ溶融ガラスはガラスあるいはガラスセラミック材料からなる成形体の製造に使用される。しかしながら、抜取管の容積は坩堝の容積に比べて小さいため、このような方法は経済的に実施可能である。ガラス種が変更され、あるいは装置構成が変更されない限り、最初の注型後、後続するすべてのサイクルにおいて、抜取管は製造されるガラスで満たされる。
【0033】
注型工程(不連続工程)を除くすべての工程に亘って、例えば銅製のクロージャー部材を能動的に冷却して出来るだけ多くの熱を放散させて前記酸化的分解の決定的原因となる温度を1000℃以下、好ましくは950℃以下に保持することにより、コンテナ外側にある抜取管の前方自由端を保護することが可能である。
【0034】
当業者には明らかであるように、コンテナ外側にある抜取管の前方自由端の内面は、ガラス種の特性によって異なるが、たとえその時の温度が1000℃以上であっても、注型工程あるいは不連続作業中であってもガラスを注ぎ出すことによって保護される。それゆえ、別の実施態様に於いて、溶融ガラスを抜取管から注入成形しあるいは注ぎ出す工程において、コンテナの外側にある抜取管の前方自由端の外面を制御不能な酸化的分解から保護するためにさらに別の方策を取ることが必要である。
【0035】
さらに別の実施態様においては、コンテナの外側にある抜取管の前方自由端の外面へ不活性保護ガスを吹き付けることによって前記保護が成し遂げられる。この実施態様においては、上端が閉じられている円筒形の空隙中に抜取管の前方自由端が配置されているために抜取管のオリフィスの隣接部分が限定され及び上方が閉ざされた形状となっているため、限られた量しか酸素を含む周辺雰囲気とのガス交換は起こらない。この空隙が十分量の不活性保護ガスで満たされれば、抜取管の前方自由端の酸化的分解を確実に抑制することが可能である。
【0036】
さらに別の実施態様においては、不活性保護ガスを抜取管の外面上方へ向ける有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材がコンテナ外側の抜取管の前方自由端上へ設けられる。好ましくは、この有孔あるいは多孔部材は金属で作製され、この部材によって前方自由端の温度管理及び能動冷却が効率的に促進される。この代替例としてセラミックあるいは金属製の焼結部材を用いることが可能である。
【0037】
別の実施態様において、前記多孔部材は金属あるいは金属フォームから成る焼結部材である。前記有孔あるいは多孔部材は、例えば冷媒循環装置を用いて能動冷却可能である。これに関し、冷却状態で、かつ液体及びガス状態で有孔あるいは多孔部材中へ不活性保護ガスを流し込むことも可能である。
【0038】
別の実施態様においては、N及びまたは貴ガスを含む不活性保護ガス、あるいはこれらガス双方からなる不活性保護ガスが用いられる。別の実施態様においては、有害な酸素を抑制するのみならず、化学反応、即ち水素酸化によって取り除くために、Hと不活性保護ガスを混合することも可能である。
【0039】
前述した抜取管の外面遮蔽に加え、あるいはそれに代えて、保護ガス雰囲気が崩壊した場合、あるいは坩堝材料の蒸発を減じる追加の安全策として、耐火性セラミック材料からなる気密な薄層をコンテナ外側の前方自由端外面へ上張りすることも可能である。この耐火性セラミック材料は特にプラズマ溶射法を用いて処理可能である。耐火性セラミック材料の上張りに関する詳細は、US2004/0067369A1に対応する本願出願人によるWO02/44115A2において言及されている。この公報の内容は参考のため本願に取り入れられている。このような耐火性セラミック材料は特にZrO、Y、MgOあるいはこれらの混合物から構成可能である。前記上張りに関し、前記層は十分に厚く形成されるため気密であるが、温度変化が頻繁に起こることによるフレーク化は生じない。
【0040】
本願における高融点ガラス材料あるいは高融点セラミック材料は、特に従来型坩堝の白金含有材料によって決まる標準的最高温度である1760℃を超える工程において製造されるガラス材料あるいはガラスセラミック材料を意味することが理解されなければならない。これは溶融ガラスの融点が1760℃以下となる可能性を排除するものではない。以下において詳しく説明するように、本発明によれば約2000℃、さらには約2200℃の温度も達成可能である。本発明に従って溶融ガラスの溶融及び清澄に要する高温が達成可能であるので、特に光透過性、熱膨張性及び熱膨張係数の異なる2種ガラス材料を結合する移行ガラス材料としての利用に関して驚くほど有利な特性を持つ高融点ガラス材料あるいはガラスセラミック材料を得ることが可能である。
【0041】
本発明はコーティングガラスあるいは真空装置の蒸発ガラスにも使用される。かかる使用においては、ひときわ高温となることにより、特に高温での高度な精製を要する溶融ガラス中への気泡の混入が全く起こらなくなるように、また同様に特に高温での高度な精製を要する真空条件下における発泡を生ずる溶解ガスが溶融ガラス中に全く含まれないように、溶融ガラスにアルカリ酸化物が含まれないようにすることが必要である。
【0042】
本発明者は、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金を用いる場合、前述したかなりの高温が容易に達成可能であることを見出した。イリジュウム自体の融点は約2410℃〜約2443℃であり、イリジュウム高含量合金の融点はそれよりわずかに低い。このことは本発明において約2400℃までの処理温度が原則として可能なことを意味するが、安全上の理由から例えば局部的過熱、不適切な温度測定、あるいはイリジュウムの粒子間境界生長による安定性低下を防止するため、前記上限から約100℃〜約200℃の温度間隔が守られなければならない。本発明者らによって実施された広範な試験により、前述した高温においても、イリジュウムと溶融ガラスとの反応はかなり低いことが示された。
【0043】
本発明によれば、酸素存在下における高温でのイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金からの酸化物生成は、装置、特に容器及び抜取管の第一部分のイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金が保護ガス雰囲気下で収容されるようにコンテナを設計することにより意外なほど簡単な方法で防止することが可能である。この方法の有利な特徴は長期間に亘って安定な装置を得られることである。本発明に係るコンテナ及び装置の構成、操作及び設計の詳細はUS2005/0109062A1及び日本特許出願第2004−2983265に対応する本願出願人のドイツ特許DE10348466B4に記載されている。この公報の内容は参考として本願に引用されている。
【0044】
別の好ましい実施態様においては、坩堝及び抜取管を形成するイリジュウムの含量は少なくとも約99%、より好ましくは少なくとも約99.5%、さらに好ましくは少なくとも約99.8%である。特に好ましくは前記イリジュウムの貴金属含量は少なくとも99.5%である。白金族の他の元素がイリジュウムに混入していてもよいが、好ましくはその濃度は約1000ppm未満である。原則として、イリジュウム合金と同様に適する合金として、イリジュウムを少なくとも95%、より好ましくは少なくとも約96.5%、さらに好ましくは少なくとも約98%を含む白金族金属合金がある。上記材料は容易にシート形状に製造し、所望のデザインの容器あるいは抜取管に形状化が可能である。たとえ壁圧の薄い形状としても、前記高温においてなお適切な寸法安定性を保持する。
【0045】
さらに別の実施態様においては、互いに独立して制御あるいは調節可能な少なくとも2台の加熱装置を用いて前記容器及び抜取管が加熱される。このことは、例えば溶融ガラスを清澄するために実際の容器を前述したかなりの高温に保持し、他方抜取管あるいは少なくともその前方自由端をガラスプラグの軟化温度以下の温度に保持できることを保証するものである。さらに、溶融ガラスの熱成形中に装置中に適当な温度勾配、例えば容器中及び抜取管中に僅かに異なる温度を設定することも可能である。
【0046】
抜取管を外部加熱装置、例えば抜取管を取り巻く外側誘導コイルを用いて加熱することが可能である。好ましくは、抜取管は抵抗加熱によって電気的に加熱される。特に好ましくは、抜取管の壁へ加熱電流が直接印加される。
【0047】
さらに別の実施態様においては、溶融ガラス収容容器は溶融ガラスに対する断熱を与え及び/または溶融ガラスを周辺雰囲気から保護するカバーで被覆される。このカバーはセラミック材料で作製可能である。好ましくは、前記カバーには、溶融ガラス原材料が溶け切ったときにさらに原材料を加えられるように例えば旋回方式あるいは転置方式で開けることができる蓋が備えられる。好ましくは、前記蓋は、耐酸化性合金、好ましくは低コストで入手でき、十分な寸法安定性をもち、かつ低反応性であるPtRh20合金から作製される。しかしながら、イリジュウムあるいはイリジュウム合金を蓋に用いることも可能である。この場合、抜取管の酸化保護の場合と同様に、耐酸化性貴金属あるいはその合金とイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金を組み合わせて蓋に用いることも可能であり、その場合イリジュウムあるいはイリジュウム合金を保護ガス雰囲気としたコンテナ内部に配置し、耐酸化性貴金属あるいはその合金を保護ガス雰囲気としたコンテナ外部に配置することも可能である。本実施態様においては金属合金として好ましくはPtRh20合金が用いられる。
【0048】
さらに別の実施態様においては、前記容器及びカバーを圧力密封型に構成可能である。これに関し、容器の上縁部及びカバーの内周部は丸く滑らかとし、容器の上端部へ例えば金属リング等の密封手段を与えることが可能である。この実施態様においては、過圧状態化でガスが容器内部へ入り込んで抜取管からの溶融ガラスの流出がさらに促進されるように容器にはガス取込口が設けられる。前記容器中が過圧状態となることにより、容器から溶融ガラスが出る時の静水圧の減少も確保される。前記容器中の過圧状態を制御あるいは調節するために、容器あるいはカバー中に設けられた圧力センサからの信号を受信する制御あるいは調整装置を設けることも可能である。
【0049】
容器中を一定の過圧状態とするために、好ましくは不活性ガスが用いられる。この不活性ガスは、特に好ましくはコンテナ中に保護ガス雰囲気を形成するために用いるガスと同一組成のガスが用いられる。
【0050】
さらに別の実施態様においては、適当な保護ガス雰囲気を形成するために少なくとも一時的に不活性保護ガスがコンテナに供給される。これに関し、コンテナにはガス取込口が設けられ、この取込口を用いて不活性保護ガスがコンテナ内部に送られ、コンテナとガス貯造部とが連絡される。好ましくは、不活性保護ガスはコンテナ内部が中性ないし僅かな酸性状態に維持されるように設計される。
【0051】
保護ガスとして特に好ましいガスは、取扱いが簡単で安価に入手できるアルゴンまたは窒素である。本発明者らはさらなる一連の試験において、酸素含量が約5×10−3%〜約5%、より好ましくは約0.5%〜約2%である混合物が容器に用いられる材料とガラス成分との反応、特に後続の合金生成に伴うガラス成分の還元を抑制できることから有利なことを見出した。坩堝中の内面上張り用の基質としてタングステンあるいはモリブデンが主に用いられる従来型坩堝に対して、本発明においては水素含有保護ガスの使用を完全に省いて構造の簡素化及びガラス組成に関し広範囲な適用が可能とされている。さらに、本発明においては例えばAs、Sb、SnO等の通常のレドックス精製剤の使用が可能である。原則として、溶融ガラスの精製中に生ずる発砲を減ずるために高価なHeの使用を省くことも可能である。
【0052】
保護ガス雰囲気を形成するために保護ガスをコンテナ中へ連続的に通すことも可能である。好ましくは、容器には、コンテナ中に配置される容器に断熱効果を付与するだけでなく、コンテナ内部に一定量の保護ガスを保持する働きをするカバーが備えられる。このようにして保護ガス雰囲気の流れを低流速で確実に平衡化することが可能である。
【0053】
さらに別の実施態様によれば、前記コンテナの内部における保護ガスの交換を完全に抑制出来るようにコンテナを圧力密封式に設計することも可能である。加圧状態を確立するために圧力解除弁をコンテナ内に設けることも可能である。さらに、コンテナ内部から不活性保護ガスを放出するためにガス抜き取り口を設けることも可能である。
【0054】
さらに別の実施態様では、前記容器はその周囲に巻きつけられた誘導コイルによって加熱される。この誘導コイルの基本形状は好ましくは容器の基本形状に適合され、容器は好ましくは誘導コイル内に中心対称的に配置される。誘導コイルは容器から適当な短い間隔を空けて配置され、また好ましくは容器の高さの上方まで延びている。好ましくは、誘導コイルは、より均質な温度分布が得られるように0°以外の傾斜を持つ螺旋状に巻きつけられる。しかしながら、誘導コイルを容器周囲に、その側面から矩形部分を見たときに誘導コイルの個々の部分の傾斜がほぼ0°となるような波型に巻きつけることも可能である。好ましくは、この誘導コイルは水冷型である。
【0055】
さらに別の実施態様では、容器側壁と誘導コイル間に容器と同じ基本形状をもつ耐熱ジャケットが設けられる。容器の断面が円形である場合には、このジャケットはシリンダ形状にデザインされる。このシリンダあるいはジャケットに使用される材料は容器周囲の周辺雰囲気に対して耐久性でなければならない。そのため,このような材料としては,好ましくは約1750℃の温度においてもなお寸法安定性をもつ、例えばZrOあるいはAlファイバーからなるセラミック繊維保護布が用いられる。繊維材料は固体セラミック材料より熱伝導率が低いため繊維材料を用いる方が有利である。しかしながら、例えば硅線石のような適当な安定性と1750℃においても断熱効果のあるセラミック材料を用いることも可能である。
【0056】
さらに別の実施態様では、容器側壁と前記ジャケットまたはシリンダとの間に耐熱性ペレットが充填される。これらのペレットは必ずしも円形でなくてもよく、例えば長円形または不規則形状であってもよい。容器の外壁上及びシリンダまたはジャケットの内壁上に置かれる充填剤には、容器周囲の圧力及び機械的効力の吸収を均質化させる効果がある。すなわち充填剤によって例えば容器の側壁が軟化されることにより、容器の変形が防止される。すなわち結論的に温度が約2000℃、好ましくは2200℃となっても、本発明によれば、ガラスの溶融及び精製に用いる容器について適切な寸法安定性を得ることが可能である。さらに耐熱性ジャケットとして使用される前記材料に適当な断熱効果を与えることも確保される。
【0057】
さらに別の実施態様では、保護ガス雰囲気の形成に用いた不活性ガスを充填したペレット中へ通過させることにより、容器における酸化物形成が防止される。本発明者らによるさらなる一連の試験により、ペレット充填部のペレットの直径を少なくとも約2.0mm、より好ましくは少なくとも約2.5mm、さらに好ましくは少なくとも約3.0mmとすることにより、適当なガス通過流が得られることが見出されている。しかしながら、原則として、ペレットの表面形状を不規則形から立方体に近い基本形状とすることにより、適当なガス通過流を得ることも可能である。好ましくは、ペレット充填部中のペレットには充分な耐熱性、耐酸化性及び寸法安定性をもつ酸化マグネシュウムが含まれる。ZrOを用いることも可能である。
【0058】
別の実施態様に於いては、代替例として容器側壁とジャケットまたはシリンダとの間に一層のMgOレンガまたは石が配置される。これによりペレット充填部の燒結またはスランプダウンを防止することが可能である。このようにして坩堝を完全に閉じることが確保されるため、例え作業時間が延長されても確実に断熱性を持続することが可能である。さらに、後に挿入される熱素子等用の孔を寸法安定なMgOレンガまたは石中に形成して、温度測定に要する労力を大幅に減ずることも可能である。
【0059】
本発明の別の観点に従って、上述した高融点ガラス材料あるいはガラスセラミック材料の製造装置が提供される。
【0060】
好ましくは、上記装置は二つの異なる操作モードで連続作動される。第一の操作モードでは、容器中へ混合物が投入されて溶融が完了される。次いで容器の温度が前述したかなりの高温まで上昇され、その温度において溶融ガラスが公知の方法で清澄される。この温度は後続の溶融ガラスに対して選択される処理(プロセス)温度よりも高い。第一操作モードでは、抜取管の温度は、好ましくは抜取管を遮断しかつ溶融ガラスの流出を防止するプラグあるいはストッパを形成するために溶融ガラスが固化あるいは硬化する、かなり低い温度に維持される。そのため、さらに均質な最終生成物を得るために後の熱成形中に出てくる溶融ガラスの最初の部分を分離して取り除くことが可能である。精製処理中、熱ロスを補完する為に、抜取管の加熱を止め、あるいは適切に制御または調節することも可能である。
【0061】
次の第二操作モードでは、精製処理後に溶融ガラスの温度が実際の加工温度まで低下され、また抜取管が処理(プロセス)温度まで加熱される。この第二操作モードでは、前記容器および抜取管を同一温度に保ってもよいし、あるいは異なる温度としてもよい。
【0062】
本発明においては、第一操作モード期間中、温度を少なくとも約1800℃、好ましくは少なくとも約2000℃、さらに好ましくは少なくとも約2200℃とすることが可能である。これらの温度においては、原則としていかなるガラス組成物を処理することも可能である。
【0063】
本発明によれば、特に好ましくは、約80重量%〜約90重量%のSiO、約0重量%〜約10重量%のAl、約0〜約15重量%のB及び約3重量%未満のROからなるガラス組成物が用いられ、前記においてAl及びBは総量で約7重量%〜約20重量%であり、またRはLi、Na、K,Rb及びCsから選択されるアルカリ元素を表す。以下においてさらに詳細に説明するように、このような方法により特に光透過率、熱膨張性及び均質性においてさらに有利な特性をもつ移行ガラス材料を得ることが可能である。さらに、より有利な特性を持つ菫青石を製造することも可能である。
【0064】
得策として、ガラス組成へさらに高融点酸化物を加えることができるが、その例としてMgOを約20重量%まで、及び/またはTiO2,ZrO,Nb,Ta,WO、MoO、あるいはそれらの混合物を約10重量%、より好ましくは5重量%まで含ませることが可能である。
【0065】
別の実施態様において、SiO2の一部、即ちSiO2の50%までをGeO及びまたはP5で置き換えることも可能である。
【0066】
上述した特性をもつ容器中の溶融ガラスを、第一操作モード期間中あるいは精製処理中、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金からなる攪拌装置を用いて攪拌することが特に有利であることが見出されている。溶融ガラスを還元するためにガスを吹き込むため、攪拌装置をガス貯蔵部と連絡することも可能である。さらに、この攪拌装置で溶融物をさらに均質化することも可能である。また溶融及び精製を促進させることも可能である。ガスの吹き込みによって、ガラスの乾燥あるいはNIR(近赤外域)におけるOH(水分吸収帯)の還元も達成可能である。この吹き込みによってガラス中へのガスの残存量を減じることができるため、後続の再熱処理において有利である。本発明に従ったガラスのさらに好ましい使用方法として、コーティングあるいは蒸発ガラスとしての利用がある。
【0067】
独立して請求可能な本発明のさらに別の観点では、約80重量%〜約90重量%のSiO、約0重量%〜約10重量%のAl、約0〜約15重量%のB、及び約3重量%未満のROからなる高融点ガラス材料あるいは高融点ガラスセラミック材料が提供される。ただし前記に於いてAl及びBは総量で約7重量%〜約20重量%である。本発明によるガラス材料あるいはガラスセラミック材料は、基質厚が約20mmであるときの約400nm〜800nmの可視波長域における透過率が少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約75%、さらに好ましくは少なくとも約80%であることを特徴とする。好ましくは、これらガラス材料あるいはセラミック材料は本発明装置あるいは本発明方法を用いて提供される。上述した組成及び可視波長域における有利な高透過率をもつガラス材料あるいはガラスセラミック材料は、先行技術によっては現在まで知られていない。これらのガラス材料は、例えば溶鉱炉あるいは同様な装置の観察窓用ガラスとして利用可能である。
【0068】
好ましくは、基質の厚さが20mmであるときの約1350nmの水分吸収帯域における透過率は少なくとも約75%であり、及び/または基質の厚さが20mmであるときの約2200nmの透過率は少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約55%である。このような近赤外スペクトル域における有利な高光透過率は前記組成からなるガラス材料に関しては従来技術では知られていない。
【0069】
本発明のさらに別の観点は、例えば熱膨張における大きな差異(α値:石英ガラス0.5x10−6−1、デュランガラス3.3x10−6−1)により達成が困難である石英ガラスとデュランガラスとの融合接合を確立するために熱膨張係数の異なる二種のガラスを結合する本発明に従ったガラス材料の移行ガラス材料としての使用に関する。好ましくは、本発明に従ったガラス材料の膨張特性は相互に極めて適合性がよく、本発明においてはそれらのガラス材料は、α=1.3x10−6−1ないしα=2.0x10−6−1からα=2.7x10−6−1であり、許容誤差が約0.1x10−6−1である状態において一体に融合される。
【発明を実施するための最良の課題】
【0070】
以下において、添付図面に示された好ましい実施例を参照しながら、本発明についてさらに説明する。以下における説明から、本発明の明らかなサブジェクトマターであるさらなる特徴、利点及び解決されるべき問題が理解可能である。
【0071】
図3に示すように坩堝2の上部は細く形状化されているため、坩堝2を取り巻く加熱装置によって坩堝2中に収容された溶融ガラスの均質な加熱が行われる。坩堝2の円筒部分のオリフィス比h/Lは好ましくは少なくとも約2.0以上、より好ましくは約3.0以上、さらに好ましくは約4.0以上であり、上記に於いてhは坩堝2の円筒部分の最大内高を表し、Lは坩堝2の円筒部分の側壁からの最大距離あるいは直径を表す。
【0072】
図2に同様に示すように、基部9は溶融ガラスの流出を助長させるため20°までの範囲内、好ましくは約10°の範囲内の角度αで内側へ半径方向に傾斜している。原則として基部9を上反りあるいは平面形状とすることも可能である。
【0073】
好ましい実施態様に従って、坩堝2の坩堝壁6は長さ510mm、厚さ約1.0mmのシート一枚から作製される。坩堝2の円筒部分の公称(名目)容積は約17lである。大容積の坩堝を作製するために、円筒部分の高さを増すか、円筒部分6の高さと直径の双方を一定の開口比h/Lに対応させて増すことが可能である。この場合、坩堝2の円筒部分6を取り囲む加熱装置(図3参照)は坩堝2の円筒部分6の長径及び高さを経て均質な温度分布が形成されるように構成されることが理解されるべきである。
【0074】
図3は、図1に従った従来型装置と原則的に同じ構成による本発明に従った装置の構成を模式的に示した図である。
【0075】
図1の装置と異なる点は、特に坩堝2の抜取管4の全体が前述したイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金から作製される点である。コンテナ20の底部の開口部を通して抜取管4の前方自由端がコンテナ下部19中へ突き出している。この配置に於いて、抜取管4の前方自由端はとりわけ抵抗加熱によって加熱可能である。コンテナ下部19はその底部端に中心孔を有し、コンテナ下部19の中心開口部33中を通過している蓋320によって閉じられる。抜取管4の前端へ溶着され、あるいは少なくとも抜取管4の前端へ接しているシート321によってコンテナ下部19の中心開口部33が覆われているので、抜取管前方の比較的短い部分だけが周辺雰囲気と接触する。コンテナ上部20とコンテナ下部19は連結フランジ45の部分で互いに連結される。コンテナ上部20とコンテナ下部19のそれぞれは冷媒ポート35、36及び37、38のそれぞれを介して別個に冷却可能である。コンテナ上部20の坩堝2の側壁と耐火性材料からなるシリンダ23の間には図1に示したペレット充填部に代えてMgOからなる一層の板が配置される。供給口28の拡張部には温度センサを収容するためのスリーブ27がMgO板中に形成される。温度センサワイヤー及び熱電対40のラグワイヤー用の送り口41も抜取管4のオリフィスに近いコンテナ下部19中に形成される。
【0076】
坩堝2の上側リムは平面に形状化される。図3に示すように、この上側リム7上に蓋31が置かれ、この蓋によって坩堝2中に収容された溶融ガラスの断熱が確保され、同時に溶融ガラスが周辺雰囲気から保護される。蓋31は上側リム7上へ設置可能である。この蓋31を上側リム7上へ置いて該リムと連結させることも可能なため、坩堝2を一定程度気密方式で閉じることができ、それゆえ溶融ガラスの高さより上方の坩堝内部へ図示されていないガス取入口を介してガス、好ましくは保護ガスを流入させることにより坩堝2内の雰囲気を一定の過圧状態とすることが可能である。この過圧状態を利用して例えば抜取管4から溶融ガラスの放出によって減じられる溶融ガラスの静水圧を補うことが可能である。
【0077】
坩堝壁6及び抜取管4はイリジュウム含量が少なくとも約99%、より好ましくは少なくとも99.5%、さらに好ましくは少なくとも約99.8%であるイリジュウムから作製されるため、それらの融点は約2400℃である。特に好ましい材料はイリジュウム含量が少なくとも約99.8%のイリジュウム及び白金族元素の含量が少なくとも99.95%の材料である。この材料において、Pt、Rh及びWの最大含量はそれぞれ1000ppmであり、Feの最大含量は約500ppmであり、Ruの最大含量は約300ppmであり、Niの含量は約200ppmであり、Mo及びPdの最大含量はそれぞれ約100ppmであり、Cu,Mg,Os及びTiの最大含量はそれぞれ約30ppmであり、Ag,Al,As,Au,B,Bi,Cd,Cr,Mn,Pb,Si,Sb,V,Zn及びZrの最大含量はそれぞれ約10ppmである。
【0078】
坩堝壁6及び抜取管4に使用可能な他の材料として白金族元素からなる合金以外のイリジュウム合金であってイリジュウムを少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96,5%、さらに好ましくは少なくとも約98%を含む材料を挙げることが出来る。このような材料を加工する場合、これらの材料が比較的脆くかなりの高温でのみ延性となることに注意すべきである。
【0079】
好ましい例示的実施態様においては、誘導コイル3は約10kHzの周波数で約50kWの接続負荷を伴うコンバータによって駆動される。このコイルにより長期間の作動においても坩堝2の円筒部分中に於いて2000℃以上の温度を達成することが可能である。
【0080】
第一底部材25によって坩堝に支持され、コンテナ下部19の底部上に支持される第二底部材26上へ耐火性シリンダ23及び誘導コイル3が配置される。この第二底部材26によってこの配置が機械的に支えられ、さらに十分な断熱効果も与えられる。第二底部材26の厚さは上記観点から適切に選定される。第二底部材26に用いられる材料は十分に熱安定性、寸法安定性及び耐酸化性でなければならない。好ましい例示的実施態様において、この第二底部材26はZrSiOから作製される。底部材26を二つの部分に分けることもでき、上側部分をZrSiOで作成し、下側部分を標準的耐火性材料(例えばL300)で構成することも可能である。
【0081】
第一底部材25及び第一底部材26には一個のオリフィスがあり、このオリフィスを通して抜取管4がコンテナ下部19へ達している。底板321中の中心オリフィスを通して抜取管4の前端が最終的に周辺雰囲気へ暴露される。抜取管4はコンテナ下部19の下側円筒部分によって取り囲まれている。抜取管下部の小部分(符号15で示された部分)とは別に耐酸化性貴金属からなる抜取管4はコンテナ下部に配置され、かつクロージャー部材として機能する蓋320によって気密状態で閉じられ、それによってコンテナ下部19中への雰囲気の侵入が防止される。
【0082】
本発明においては、抜取管4の短い部分が周辺雰囲気に暴露されることが好ましい。従って、図3に示した移行部分の位置は単なる説明のためのものであり実際に測定された位置と解釈されてはならない。
【0083】
図3に示すように、コンテナ下部19中にはガス取込口22があり、この取込口によってコンテナ内部へ保護ガスが供給される。ガス取込口22は図示されていないガス導管及び図示されていないガス貯蔵部へ連絡されている。それゆえ、コンテナは保護ガスで充満され、コンテナ中に収容された坩堝2の周りを保護ガスが流れるので坩堝及び抜取管4の第一部分のイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金の酸化物形成が効率的に防止される。
【0084】
保護ガスによってコンテナ内部は中性ないし僅かな酸化状態に維持される。そのため、酸素を約5x10−3%〜約5%、より好ましくは約0.5%〜約2%含む保護ガスを用いることが可能である。用いられる保護ガスは低反応性であり、イリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%〜微量含むイリジュウム合金とのみ反応する。特に適する不活性かつ低反応性保護ガスはアルゴンあるいは窒素である。前述した少量の酸素の添加により坩堝材料とガラス成分との反応(後続する合金生成に伴うガラス成分の還元)を抑制することが可能である。さらに、坩堝内部は保護ガスで充満されるため坩堝内壁が雰囲気中の酸素による酸化から保護される。
【0085】
さらに別の実施態様においては、坩堝2とコンテナ19/20との間の外側は、還元され得る成分を含む溶融ガラスが存在しないため、中性または僅かな還元性保護ガス雰囲気下に保たれる。ついで、前述したように蓋18および31を通してガス送り口を介して坩堝2内部へ中性あるいは僅かに酸化性である保護ガス雰囲気を加えることが可能である。これに関し、白金と異なりイリジュウムがガス透過性であることは利点である。
【0086】
コンテナは、その内部において十分流れを平衡化させて十分な保護ガス雰囲気を確保することができるため、圧力密封型とする必要はない。しかしながら、原則として、周辺雰囲気からコンテナ内部への酸素の侵入をより効果的に防止するためにコンテナ5を圧密式に設計することも可能である。
【0087】
本発明によれば、坩堝にイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金を用いることにより、融点を約2000℃以上とすることが可能である。これにより溶融処理が物理的及び化学的観点が大幅に加速される。処理時間が大きく減じられ、同時に品質も向上する。その結果として、本発明により、驚くほど有利な新たな特性をもつガラス材料あるいはガラスセラミック材料の製造が可能となる。
【0088】
総論として、本発明に従った装置は二つの異なる操作モードで作動される。最初に、蓋18が開かれ、一定量のガラス材料あるいはそれに対応する原材料が連続的に坩堝2中へ投入される。このような低温における溶融期間中坩堝2の温度も対応的に低く選定することも可能であるが、好ましくは坩堝2の温度は低温での溶融段階においても約1800℃以上に保たれる。
【0089】
溶融ガラスのさらなる処理、特に精製において、坩堝2の温度は誘導コイル3を用いて後の溶融ガラスの処理温度よりずっと高い温度に維持される。本発明に従って極めて高温が得られることは精製処理がより効果的に行えることを意味している。この第一操作モードにおいては、抜取管の温度はかなりの低温かつ溶融ガラスの温度以下に保持される。溶融ガラスの注型あるいは注ぎ出しを除いて、周辺帯域へ暴露される抜取管の前部自由端が1000℃以下、より好ましくは950℃以下に保持されるように注意しなければならない。これにより、抜取管4中に粘性のあるあるいは固化した溶融ガラスからなるストッパあるいはプラグが形成され、これにより坩堝2からの溶融ガラスの流出が防止され、さらに抜取管4の内面の酸化的分解が防止される。精製処理中、溶融ガラス中において従来の精製剤が活性化される。図示されていない攪拌装置を坩堝2中に配置するかあるいはカバー31を通して挿入することにより坩堝2中の溶融ガラスを攪拌することが可能である。本発明に従って、この攪拌装置は前述したイリジュウムあるいはイリジュウムを少なくとも50重量%含むイリジュウム合金から作製される。本発明に従って実際の攪拌装置を用いてガス、例えば還元性ガスを吹き込むことを可能である。
【0090】
液状溶融ガラスと高粘性あるいは固化したストッパとの間の移行部分は固定されず、好ましくは抜取管4の内部に位置される。このことは極めて均質な溶融ガラスが坩堝2内部に生成されることを意味している。
【0091】
第一操作モード中、コンテナ下部19の下側円筒部分を適切に配置することより、熱放射によって抜取管4を適切に冷却することを確保することができるので、抜取管4を必ずしも加熱する必要がない。しかしながら、原則として、第一操作モードにおいて加熱あるいは冷却の制御あるいは調節を行うことも可能である。
【0092】
図3に示すように、抜取管4のオリィフィスはクロージャー部材として機能する銅板50によって閉じられ、この銅板の上側にはオリィフィス中へ延び、かつ抜取管4の内面とぴったり接触することによってオリィフィスを閉じる先細形のマンドレル51が形成される。その代替例として、クロージャー部材として機能する銅板50の上面を平面に形状化することも可能である。図4はこのようなクロージャー部材50を透視図で示している。図3に模式的に示すように、冷却チャネル52がクロージャー部材中にドリル形成あるいは機械加工される。送り込み通路として2本の銅管53、54が前記孔中にハンダ付けされる。クロージャー部材中には水あるいはいずれか他の適当な冷媒、あるいは空気、空気・水・エアゾール、オイル等を流すことが可能である。クロージャー部材50は、適当な冷却システムへ連結した後、坩堝の抜取管4下方へその広い面を用いて配置される。例示的実施態様においては、クロージャー部材50の寸法は100mmx40mmx20mmであり、内径13mm、外形15mm、長さ350mmの銅管が冷媒用の送り通路として用いられる。マンドレル51及びクロージャー部材50の平らな上面を抜取管4の前部自由端と全面接触させることにより充分な熱接触を確立して、周辺雰囲気に暴露される抜取管4の前部自由端を十分に冷却することが可能である。得策として、前述した溶融ガラスの精製期間中、抜取管4の前部自由端を1000℃以下、より好ましくは950℃以下の温度に保持することが可能である。
【0093】
精製後、坩堝2中において適切な均質の溶融ガラスが得られたら、坩堝2中の溶融ガラスの温度を処理温度まで下げて第二操作モードへ切り換え、同時に抜取管4が加工温度まで加熱される。この処理温度は溶融ガラスが所望の粘度となるように、あるいは成形部品の製造に適するように選定される。処理温度は溶融ガラスの融点より高いが、誘導コイル3からの熱出力及び抜取管4に於ける加熱電流熱出力を変えることによって変更可能である。坩堝2及び抜取管4を異なる温度、例えば約10〜40℃の温度差に保持することも可能である。
【0094】
第二操作モードにおいては、抜取管4中のストッパあるいはプラグが溶融あるいは軟化するので、抜取管4から溶融ガラスが流出する。この場合、溶融ガラスは抜取管4の輪郭及び/またはさらに別の熱成形装置、例えば図3に符号15で示された引き抜きダイスによって成形される。本発明によれば、棒状体等の固形部材及び管状体等の中空部材のいずれもが製造可能である。
【0095】
ガラス成形部品に代えて、出てきた溶融ガラスを水に入れて冷やし、さらに粉末へ加工することも可能である。
【0096】
さらに別の実施態様において、坩堝2中に収容されるガラス種として別のガラス種を用い、1000℃以下、より好ましくは950℃以下の軟化温度を用いて抜取管4中にストッパあるいはプラグを形成可能である。この場合、好ましくは、いずれかの非酸化性ガスが用いられる。抜取管の中身と坩堝の中身が混じり合うのを防止するため、クロージャー部材は抜取管中の温度が坩堝の温度よりも少なくとも100℃低くなるまで冷却される。しかしながら、この実施態様の場合、別のガラス種からなる注型の最初の部分は廃棄されなければならない。
【0097】
以下において、図5A及び5Bを参照しながら、周辺雰囲気へ暴露される抜取管4の前部自由端外面を保護するさらに別の方法について説明する。図5Aに示すように、円筒状あるいは環状の有孔あるいは多孔部材42が抜取管4の周囲に配置され、この部材を通して保護ガスが抜取管4の前部自由端外面全体へ当てられる。部材42は好ましくは抜取管と接触した状態で抜取管を封入する。好ましくは、抜取管4を加熱する例えば誘導コイル等の加熱装置が部材42の外周あるいは外側に配置される。この部材42によって好ましくは周辺雰囲気へ暴露されるコンテナ下部(符号3)の円筒状中空部分が満たされる。加熱装置(図示せず)と抜取管4の間により良い熱伝導を確立するため、部材42は好ましくは特に有孔金属シリンダ、中空の円筒状金属焼結体、あるいは中空円筒状金属フォームから作製される。適当な保護ガスとしてはN、公知の貴ガス、あるいはこれらガスとHの混合ガスが挙げられる。
【0098】
一時的に、部材42をさらに加熱することも可能である。このような冷却はガスあるいは液体状態で強冷された保護ガスを送り込むことによって達成される。付加的冷却手段、特に中へ冷媒を流すことができる冷却チャネルを部材42、あるいはその内部に設けることも当然可能である。
【0099】
図5Bは別の例示的実施態様であり、この図では周辺雰囲気へ暴露される抜取管4の前端外面は耐火性セラミック材料からなる気密な薄層で被覆され、このセラミック材料は前記外面上へ特にプラズマ溶射によってコーティングされる。この外面コーティングの詳細はWO02/44115A2、本出願人による対応特許US2004/0067369A1、同じくEP1722008A2に記載されている。これら文献の内容は参考として本願に言及する。
【0100】
坩堝2の外面全体あるいはその一部を同様な方法で特にプラズマ溶射を用いて耐火性セラミック材料で被覆することも当然可能である。
【0101】
本発明に従った装置は原則としてすべての既知のガラス材料種の製造に使用可能である。しかしながら、特に好ましくは、網状構造改質剤、特にアルカリ酸化物の含量が極めて低いガラス材料あるいはガラスセラミック材料、あるいは例えばSiO,Al,NbあるいはTaO等の高融点酸化物の含量が高いガラス材料あるいはセラミック材料の製造に用いられる。本発明に従ったガラス材料あるいはセラミック材料は、約80〜約90重量%のSiO、約0〜約10重量%のAlO、約0〜約15重量%のB及び約3重量%未満のROからなり、前記Al及びBの含量は総量で約7〜約20重量%であり、RはLi、Na、K、Rb及びCsから選択されるアルカリ元素を示す。上記組成を持つガラス材料は、先行技術から公知な坩堝を用いては製造不可であるか、製造できても少なくとも満足される品質では得られない。最大で前記ガラス材料のSiOの半量(50%)までGeO及び/またはPで置き換えることが可能である。Pの混合物の場合、SiOのように作用するAlが存在しなければAlPOが生成される。
【0102】
より有利な態様として、ガラス材料へさらに高融点酸化物、例えばMgOを最大で20重量%まで、TiO、SrO、Nb、Ta、WOまたはMoO、またはそれらの混合物を最大で約10重量%、より好ましくは最大で約5重量%まで、さらに含ませることが可能である。さらに任意的成分としてCaO、SrO及びBaOを含ませることも可能である。
【0103】
本発明の好ましい利用方法として、低熱膨張係数ガラス材料と高熱膨張係数ガラス材料、例えば熱膨張係数0.5x10−6−1のシリカガラスと熱膨張係数約3.3x10−6−1のデュランガラスの間の融合接合部を形成するいわゆる移行ガラス材料の製造がある。本発明に従って、以下に述べる接合対象となる2種ガラスに特に適合する熱膨張係数移行ガラス材料の製造が可能である。
【0104】
製造可能なさらに他のガラス材料としては、同様にアルカリ酸化物を含まないコーティングまたは蒸発ガラス及びディスプレイガラスがある。
【0105】
本発明に従ったガラス材料あるいはセラミック材料の組成及び特徴のさらなる詳細は、本出願人によるDE10348466A1または対応特許出願US2005/0109062A1、及び日本特許出願第2004―298326号に記載されている。これらは参照のため本願に記載している。
【0106】
表1に本発明及び下記実施例に従って製造された異なる移行ガラス材料について測定された組成及び熱膨張係数を要約して示す。
【0107】
【表1】

【0108】
Schott社の品番8228、8229及び8230で示される移行ガラス材料の熱膨張係数はそれぞれ1.3x10−6−1、2.0x10−6−1及び2.7x10−6−1、であるので、シリカガラスとデュランガラスの間の融合接合部の形成に特に適している。表1に記載したガラス材料種の屈折率は全て約1.47未満である。縦行4及び5に示したガラス材料種は従来の先行技術に従ったイリジュウム無含有坩堝では製造不可である。
【0109】
本発明によって極めて高温が達成可能なため、従来得られなかった特性を示す組成をもつ新種のガラス材料及びセラミック材料を製造することが可能である。このような材料の一例として、図6に表1に8228で示したガラス材料種のスペクトル透過率を示す。図6には、本発明装置を用い、及び以下に詳述される実施例1に従って製造されたガラス種8228の1760℃におけるスペクトル透過率が先行技術による従来型のイリジュウム無含有坩堝との比較において示されている。図6に於いて、上側の曲線は本発明の実施例1に従って製造されたガラス種8228のスペクトル透過率を示し、下側の曲線は先行技術に従って製造されたガラス材料種8228のスペクトル透過率を示す。
【0110】
高融点原材料の使用に加えて、無害な高温精製剤、例えばSnOをAsに代えて用いることも高融点ゆえに可能である。従って、必要とされる精製剤の量も、それに対応して、PtRh30製坩堝の場合に必要とされる量よりも少なくなる。溶融できないか、あるいは高粘性ゆえに溶融に極めてコストを要するガラス組成物であっても、イリジュウム製坩堝によって安価に製造可能である。高温に加え、イリジュウムにはガラス材料中に生ずる着色(RH)が少ないと言うPtRh30合金に優る利点がある。このことは光学的要求に適合する製品の製造が可能なことを意味する。この点については図6に示される通りである。イリジュウム製坩堝中で溶融されるサンプルの可視域における透過率は明らかに向上されている。上記場合には視覚的にわずかな黄変がみられるが、PtRh30を用いた場合には明らかな赤褐色が注型中に生じる。水分帯の赤外スペクトル域における形成は減じられるが、これは融点が極めて高い結果である。
【0111】
本発明装置を用いて溶融可能な他のガラス材料種を以下に挙げる。
【0112】
菫青石類似ガラスセラミック材料は、40〜60重量%のSiO、25〜45重量%のAl及び10〜20重量%のMgOから成る。より有利な態様においては、前記ガラス組成物にはさらTiO、ZrO、Nb,Ta、WOまたはそれらの混合物を最大約10重量%、好ましくは最大約5重量%まで含ませることが可能である。MoOも原則的に含有可能であるが、使用法によってはガラスの変色を生ずる。
【0113】
上記説明により当業者には自明なように、本発明には独立請求項として個別に請求可能な多数の観点が含まれている。
【0114】
上述した方法を用いて、原則として、いかなる組成をもつガラスセラミック材料であっても製造可能である。好ましくは、ガラスセラミック材料は、以下に列記する特許または特許出願、すなわちUS5,212,122に対応するEP0220333B1、US5,446,008に対応するDE4321373C2、US5,922,271に対応するDE19622522C1、US09/507,315に対応するDE19907038A1、WO02/16279に対応するDE19939787A1、US09/829,409に対応するDE10017701C2、US09/828,287に対応するDE10017699A1及びUS6,515,263に対応するEP1170264A1に開示された組成を用いて製造される。これらの内容は本願中に明示される。
【0115】
本出願を検討すれば当業者には明らかであるように、本願のサブジェクトマターを本発明の精神及び添付された特許請求の範囲を逸脱することなく変形しあるいは変更することが可能である。従って、本発明の範囲内及び添付された請求項の範囲内に含まれるいかなる変形及び変更も本願の保護範囲に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【図1】従来技術に従った高融点ガラス材料あるいはガラスセラミック材料の製造装置の略断面図である。
【図2】図1に従った装置中に設けられる抜取管を備えた坩堝の略部分断面図である。
【図3】本発明に従った装置の略断面図である。
【図4】図3に従った装置中の抜取管を閉じるためのクロージャー部材の透視図である。
【図5(a)】別の実施態様に従った本発明装置の抜取管の前方自由端の略断面図である。
【図5(b)】別の実施態様に従った本発明装置の抜取管の前方自由端の略断面図である
【図6】本発明に従った一例となるガラスのスペクトル透過率を示した図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融塊の温度が処理期間中1760℃を越えているプロセスであって、
破片材料あるいは原材料を溶融して溶融塊とする工程、
前記溶融塊を精製する工程、及び
前記溶融塊をイリジウムあるいはイリジウムを少なくとも50重量%含むイリジウム合金から成る抜取管(4)を通して注ぎ出す工程から成る前記処理によって高融点ガラス材料、ガラスセラミック材料、あるいはセラミック材料を製造する方法であって、
自然のガス組成をもつ周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の一部分の温度が、前記抜取管から溶融塊を注ぎ出す期間中を除き、常に1000℃未満になるように制御あるいは調節されることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分の温度が、前記抜取管から溶融塊を注ぎ出す期間を除き、常に950℃未満になるように制御あるいは調節されることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
第一の所定の組成をもつ前記破片材料あるいは原材料が溶融塊を収容するための容器(2)中に投入され、
前記容器には抜取管(4)が設けられ、
前記容器(2)はイリジウムあるいはイリジウムを少なくとも50重量%含むイリジウム合金から成り、
前記容器(2)はコンテナ(19、20)内に配置され、及び
前記コンテナ(19、20)内には、前記容器(2)及び前記抜取管の部分(10〜13)が、前記イリジウムあるいは前記イリジウム合金の酸化物生成を防止するための保護ガス雰囲気下で前記コンテナ内に収容されるように保護ガスが供給され、及び
前記第一の所定の組成をもつ破片材料あるいは原材料を投入する前記工程が、
前記抜取管(4)のオリフィスを遮蔽する工程、
第二の所定の組成をもつ破片材料あるいは原材料を前記抜取管(4)中へ入れる工程、及び
前記第二の組成をもつ前記破片材料あるいは原材料の軟化温度以上まで前記抜取管(4)を加熱し、及び前記抜取管(4)を塞ぐ溶融気密ガラスから成るストッパを形成するために前記抜取管(4)を冷却する工程から成ることを特徴とする請求項1項または2項記載の方法。
【請求項4】
前記第二の組成をもつ前記破片材料あるいは原材料の軟化温度以上まで前記抜取管(4)を加熱する工程及び前記ストッパを形成するために抜取管(4)を冷却する工程が、抜取管(4)全体が一杯に満たされるまで繰り返されることを特徴とする請求項3項記載の方法。
【請求項5】
前記容器(2)が、前記抜取管(4)内に前記ストッパを形成するために加熱されないことを特徴とする請求項3項または4項記載の方法。
【請求項6】
前記第一及び第二組成が同一であるか、あるいはそれぞれの組成が1000℃未満、より好ましくは950℃未満の軟化温度をもつことを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記第一組成から成る破片材料あるいは原材料の軟化温度が1000℃を越え、前記第一及び第二組成が異なり、かつ前記第二組成から成る破片材料あるいは原材料が非酸化性ガラスの破片であることを特徴とする請求項3〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第二組成をもつ破片材料あるいは原材料にFe、As、Sb及び/またはAsが含まれないことを特徴とする請求項7項記載の方法。
【請求項9】
前記第二組成をもつ破片材料あるいは原材料の軟化温度以上まで抜取管(4)を加熱する工程中、及び前記ストッパを形成するために抜取管が冷却されて前記抜取管中の温度が前記容器(2)中の温度より少なくとも100℃低い温度に保持される期間中、前記容器(2)が加熱されることを特徴とする請求項3,4,6〜8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記抜取管から前記溶融塊が注ぎ出される期間を除き、周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分から熱が能動的に放散されることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記抜取管(4)の前記オリフィスを遮蔽するクロージャー部材(50)を用いて周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分から熱が放散されることを特徴とする請求項10項記載の方法。
【請求項12】
前記クロージャー部材(50)を通って冷媒が流れることを特徴とする請求項11項記載の方法。
【請求項13】
周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分の外面が、前記溶融ガラスが前記抜取管(4)から注ぎ出される際に不活性保護ガスによって保護されることを特徴とする請求項1〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記不活性保護ガスが、有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材(42)を用いて、周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分外面全体へ向けられることを特徴とする請求項13項記載の方法。
【請求項15】
前記有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材(42)が冷却されることを特徴とする請求項14項記載の方法。
【請求項16】
前記保護ガスがN及び/または貴ガスであるか、あるいはN及び/または貴ガスを含むことを特徴とする請求項14項または15項記載の方法。
【請求項17】
前記保護ガスにさらにHが含まれることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項18】
前記容器(2)が、周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分外面が耐火性セラミック材料から成る気密な薄層によって被覆されるように設けられることを特徴とする請求項1〜17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分外面がプラズマ溶射によって処理されることを特徴とする請求項18項記載の方法。
【請求項20】
第一操作モードにおいて、前記容器(2)中の溶融塊が精製のためまず前記溶融塊の処理温度よりずっと高い温度に保持され、同時に前記抜取管(4)が、溶融塊によって前記抜取管(4)を遮蔽するストッパが形成される温度に保持され、及び
第二操作モードにおいて、前記容器(2)中の前記溶融塊の温度が精製後に処理温度まで降下され、同時に前記抜取管(4)が前記処理温度まで加熱されてストッパが溶解し、及び溶融塊が前記抜取管(4)から流れ出ることを特徴とする請求項1〜19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記第一操作モード中の温度が少なくとも1800℃、より好ましくは少なくとも2000℃、さらに好ましくは少なくとも2200℃であることを特徴とする請求項20項記載の方法。
【請求項22】
ガラス組成が80〜90重量%のSiO、0〜10重量%のAl、0〜15重量%のB、及び3重量%未満のROから成り、前記Al及びBの含量の総量が7〜20重量%であり、及びRがLi、Na、K、Rb及びCsから選択されるアルカリ元素を示すことを特徴とする請求項1〜21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
SiOの最大50重量%までがGeO及び/またはPによって置き換えられ、Pで置き換えられる場合、ガラス組成物に好ましくはAlの存在部分があることを特徴とする請求項22項記載の方法。
【請求項24】
ガラス組成物に、さらに高融点酸化物として、MgOが最大20重量%、及び/またはTiO、ZrO、Nb、Ta、WO、MoO、あるいはこれらの混合物が最大で10重量%、より好ましくは最大で5重量%含まれることを特徴とする請求項22項または23項記載の方法。
【請求項25】
ガラス組成物にさらに酸化物としてCaO、SrO及び/またはBaO、さらにMgOが含まれることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項26】
ガラスがディスプレイガラスであることを特徴とする請求項25項記載の方法。
【請求項27】
第一操作モード中の温度が少なくとも1800℃、より好ましくは1850℃であり、ガラス組成物に40〜60重量%のSiO、25〜45重量%のAl及び10〜20重量%のMgOが含まれることを特徴とする請求項20項記載の方法。
【請求項28】
溶融塊が抜取管(4)あるいは抜取管(4)上へ設けられた熱成形装置(15)から出て来た時に成形部材へと形状化されることを特徴とする請求項1〜27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記ガラスあるいはガラスセラミック材料の、基板厚が20mmであるときの、可視波長域中の400〜800nmにおける透過率が少なくとも65%、より好ましくは少なくとも75%、さらに好ましくは少なくとも80%となるように、溶融塊が溶融され及び精製されることを特徴とする請求項22項記載の方法。
【請求項30】
前記ガラスあるいはガラスセラミック材料の、基板厚が20mmであるときの、水分吸収帯波長域中の1350nmにおける透過率が少なくとも75%となり、及び/または、基板厚が20mmであるときの、水分吸収帯波長域中の2200nmにおける透過率が少なくとも50%、より好ましくは少なくとも55%となるように、溶融塊が溶融され及び精製されることを特徴とする請求項22項及び20項記載の方法。
【請求項31】
溶融塊の温度が処理期間中1760℃を越えている処理により高融点ガラス材料、ガラスセラミック材料あるいはセラミック材料を製造する装置であって、
少なくとも、
破片材料あるいは原材料を溶融して溶融塊とし、及び前記溶融塊を精製するための容器(2)、
前記溶融塊を不連続工程で注ぎ出すイリジウムあるいはイリジウムを少なくとも50重量%含むイリジウム合金から成る抜取管(4)、及び
自然のガス組成をもつ周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の一部分の温度が、前記抜取管から溶融塊を注ぎ出す期間中を除き、常に1000℃未満になるように制御あるいは調節する装置から構成されることを特徴とする前記装置。
【請求項32】
前記制御あるいは調節手段によって、周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分の温度が、前記抜取管から溶融塊を注ぎ出す期間を除き、常に950℃未満に保持されるように、加熱装置(3)が制御あるいは調節されることを特徴とする請求項31項記載の装置。
【請求項33】
前記抜取管(4)のオリフィスを任意に開放あるいは遮蔽するために該オリフィスを遮蔽する可動クロージャー手段(50)をさらに含むことを特徴とする請求項31項または32項記載の装置。
【請求項34】
冷媒を前記クロージャー手段(50)中へ流すことにより、周辺雰囲気と接触している前記抜取管(4)の前記部分から熱を能動的に放散させることを特徴とする請求項33項記載の装置。
【請求項35】
前記制御あるいは調節手段によって、前記溶融塊が前記抜取管から注ぎ出される期間、前記クロージャー手段(50)中を通る前記冷媒の流速が制御あるいは調節され、より具体的には前記クロージャー手段を通る前記冷媒の流れが減じられ、あるいは止められることを特徴とする請求項34項記載の装置。
【請求項36】
前記クロージャー手段に前記抜取管(4)のオリフィスを閉じるための先細形突出部(51)が設けられることを特徴とする請求項33〜35のいずれかに記載の装置。
【請求項37】
前記容器(2)及び前記抜取管(4)に第一加熱装置(3)及び第二加熱装置がそれぞれ連結されて、前記容器(2)及び前記抜取管(4)を別個に加熱することが可能なことを特徴とする請求項31〜36のいずれかに記載の装置。
【請求項38】
前記制御あるいは調節手段によって、前記抜取管(4)中の温度が前記容器(2)中の温度よりも少なくとも100℃低く保持されるように、前記第一及び第二加熱装置(3)が制御あるいは調節されることを特徴とする請求項37項記載の装置。
【請求項39】
前記制御あるいは調節手段によって、前記抜取管(4)中の温度が前記容器(2)中の温度よりも少なくとも100℃低く保持されるように、前記第一及び第二加熱装置(3)及び前記クロージャー手段(50)を通る冷媒の流速が制御あるいは調節されることを特徴とする請求項37項及び35項記載の装置。
【請求項40】
さらに有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材(42)が含まれ、前記部材が周辺雰囲気と接触状態にある前記抜取管(4)の前記部分周囲に配置され、かつ周辺雰囲気と接触状態にある前記抜取管(4)の前記部分外面の全体へ不活性保護ガスが向けられるように構成されることを特徴とする請求項31〜39のいずれかに記載の装置。
【請求項41】
前記有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材(42)が冷却可能であることを特徴とする請求項40項記載の装置。
【請求項42】
前記有孔あるいは多孔の円筒状あるいは環状部材(42)が前記部材へ送られる保護ガスの貯蔵部と連結され、及び前記保護ガスがN及び/または貴ガスであるか、あるいは前記保護ガスにN及び/または貴ガスが含まれることを特徴とする請求項40項または41項記載の装置。
【請求項43】
周辺雰囲気と接触状態にある前記抜取管(4)の前記部分外面が耐火性セラミック材料から成る気密な薄層によって被覆されることを特徴とする請求項31〜42のいずれかに記載の装置。
【請求項44】
周辺雰囲気と接触状態にある前記抜取管(4)の前記部分外面がプラズマ溶射によって前記層で被覆されることを特徴とする請求項43項記載の装置。
【請求項45】
前記制御あるいは調節手段によって、加熱装置及び/または前記クロージャー部材の温度が、
第一操作モードにおいて、まず前記容器(2)中の溶融塊が該溶融塊の生成処理温度よりも遥かに高い温度に保持され、同時に前記抜取管(4)が溶融塊によって前記抜取管(4)を遮蔽するストッパが形成される温度に保持され、及び
第二操作モードにおいて、前記容器(2)中の前記溶融塊の温度が精製後の処理温度まで降下され、同時に前記抜取管(4)が前記処理温度まで加熱されてストッパが溶融され、溶融塊が前記抜取管(4)から流れ出るように、制御あるいは調節されることを特徴とする請求項31〜44のいずれかに記載の装置。
【請求項46】
前記制御あるいは調節手段が、第一操作モード中の温度が少なくとも1800℃、より好ましくは少なくとも2000℃、さらに好ましくは少なくとも2200℃となるように構成されることを特徴とする請求項45項記載の装置。
【請求項47】
前記抜取管(4)の前記オリフィスから溶融塊が出てくる時に該溶融塊を成形するための熱成形装置(15)が、前記抜取管(4)に、あるいはその上にさらに設けられることを特徴とする請求項31〜46のいずれかに記載の装置。
【請求項48】
前記容器(2)及び前記蓋を覆うための蓋(18、31)が圧力密封型であることを特徴とする請求項31〜47のいずれかに記載の装置。
【請求項49】
前記容器(2)に前記容器内部へ不活性ガスを送り込むガス取入口が設けられ、さらに前記内部に前記不活性ガスの圧力を制御あるいは調節するための制御あるいは調節装置が設けられることを特徴とする請求項48項記載の装置。
【請求項50】
ガラス材料あるいはガラスセラミック材料、特に1800℃を越える融点をもつガラス材料あるいはガラスセラミック材料の製造のための請求項31〜49のいずれかに記載された装置の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5(a)】
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【図5(b)】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−285402(P2008−285402A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−128370(P2008−128370)
【出願日】平成20年5月15日(2008.5.15)
【出願人】(504299782)ショット アクチエンゲゼルシャフト (346)
【氏名又は名称原語表記】Schott AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr.10,D−55122 Mainz,Germany
【Fターム(参考)】