説明

高血圧を処置するためのチアゾリジンジオン類似体

本発明は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有用であるチアゾリジンジオン類似体に関する。式(I)、この式中:RおよびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族、およびアルコキシから選択され、ここで、この脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されており;Rは、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されている脂肪族であり、およびR’は、Hであるか、RとR’は、一緒にオキソを形成し;Rは、Hであり;ならびに環Aは、フェニルである。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権主張
この出願は、2007年9月14日に出願された米国仮出願第60/972,639号(この全体の内容は、参考として本明細書に援用される)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、糖尿病、高血圧、糖尿病および炎症性疾患および炎症性疾患の治療および予防に有用な選択的チアゾリジンジオン類似体を含む医薬組成物を提供する。
【背景技術】
【0003】
過去数十年にわたって、科学者たちは、PPARγがインスリン増感性チアゾリジンジオン化合物についての一般に認められている作用部位であるとみなしてきた。
【0004】
ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体(PPAR)は、遺伝子発現を調節するリガンド活性化転写因子である核内ホルモン受容体スーパーファミリーのメンバーである。PPARは、自己免疫疾患および他の疾病、すなわち、真性糖尿病、心疾患および胃腸疾患、ならびにアルツハイマー病に関係づけられている。
【0005】
PPARγは、脂肪細胞分化および脂質代謝の重要な調節因子である。PPARγは、線維芽細胞、筋細胞、胸部細胞、ヒト骨髄前駆体、およびマクロファージ/単球をはじめとする他の細胞タイプにおいても見つけられる。加えて、アテローム性動脈硬化症の際のマクロファージ泡沫細胞内のPPARγが証明された。
【0006】
2型糖尿病の治療用にそもそも開発されたチアゾリジンジオンは、PPARγリガンドとしての高い親和性を一般に示す。チアゾリジンジオンが、それらの治療効果をPPARγとの直接相互作用によってもたらすという発見は、PPARγがグルコースおよび脂質恒常性の重要な調節因子であるという概念の確立に役立った。しかし、PPARγの活性化を伴う化合物は、ナトリウム再吸収および他の不快な副作用も誘発する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
一般に、本発明は、核転写因子PPARγの低減された結合および活性化を有する化合物に関する。PPARγ活性を示す化合物は、ナトリウム再吸収を助長する遺伝子の転写を誘導する。本発明の化合物は、核転写因子PPARγの低減された結合および活性化を有し、ナトリウム再吸収を増加させず、ならびに従って、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に、より有用である。有利なことに、低いPPARγ活性を有する化合物のほうが、高いPPARγ活性レベルを有する化合物より少ない副作用を示す。最も具体的に言うと、PPARγ結合および活性化活性を欠くために、これらの化合物は、単剤としても、他のクラスの抗高血圧薬と併用でも、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に特に有用である。高血圧、糖尿病、および炎症性疾患は、糖尿病および糖尿病前症における主リスク因子であるので、これらの化合物は、糖尿病および他の炎症性疾患の治療および予防にも有用である。
【0008】
1つの態様において、本発明は、式I:
【0009】
【化1】

(式中、
およびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、この脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されており;
は、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されている脂肪族であり、およびR’は、Hであるか、RとR’は、一緒にオキソを形成し;
は、Hであり;ならびに
環Aは、フェニルである)
の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有用な医薬組成物を提供する。
【0010】
本発明のもう1つの態様は、式Iの化合物と医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物で高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療する方法を提供する。
【0011】
本発明のもう1つの態様は、式Iの化合物とヒドロコロチアジド(hydrocholothiazide)などの少なくとも1つの利尿薬とを含む医薬組成物を提供する。他の態様は、式Iの化合物と、レニン−アンギオテンシン系の活性を制限する1つ以上の薬剤、例えば、アンギオテンシン協奏(concerting)酵素阻害剤、すなわちACE阻害剤、例えばラミプリル、カプトプリル、エナラプリル、もしくはこの種の他のもの、および/またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、すなわちARB、例えばカンデサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、もしくはこの種の他のもの;および/またはレニン阻害剤、とを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有用な医薬組成物を提供する。さらに他の態様は、式Iの化合物と、β−アドレナリン作動性受容体遮断薬およびカルシウムチャネル遮断薬、例えばアムロジピン、をはじめとする代替手段によって高血圧を制限する化合物とを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療するための有用な医薬組成物を提供する。
【0012】
本発明は、式Iの化合物と脂質低下剤とを含有する医薬合剤(pharmaceutical combination)も提供する。式Iの化合物は、それらのPPARγ節約(PPARγ−sparing)特性、およびトリグリセリドを低下させ、HDLコレステロールを上昇させる、脂質に対する有益効果のため、1つ以上のスタチン、すなわちHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えばアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、またはそれらの医薬的に許容される組み合わせとの併用に特に有用である。
【0013】
もう1つの態様において、本発明は、核転写因子PPARγの低減された結合および活性化を有し、ならびに従って、低減されたナトリウム再吸収およびより少ない用量制限副作用を生じさせる、インスリン増感剤に関する。それ故、式Iの化合物は、異常脂質血症および中心性肥満をはじめとするメタボリックシンドロームに関連したインスリン抵抗性のすべての態様を含む、糖尿病および他の代謝性炎症媒介疾患の治療および予防に、実質的に、より有効である。式Iの化合物は、他の炎症性疾患、例えば、関節リウマチ、狼瘡、重症筋無力症、脈管炎、慢性閉塞性肺疾患(COPD)および炎症性腸疾患、ならびに神経変性疾患、例えばアルツハイマー病、パーキンソン病、多発性硬化症(multiple schlerosis)、急性アレルギー反応、移植片拒絶反応、中心性肥満、異常脂質血症、糖尿病前症および糖尿病、の治療にも有用である。
【0014】
もう1つの態様において、本発明は、式Iの化合物とメトホルミンとを含む医薬組成物を提供する。
【0015】
さらにもう1つの態様において、本発明は、式Iの化合物と、第二の薬剤と、医薬的に許容される担体とを含む医薬組成物を提供し、この場合の第二の薬剤は、ジペプチジルペプチダーゼIV、すなわちDPP−4、阻害剤、例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、もしくはこの種の他のもの;スタチン、すなわちHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、アトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、もしくはこれらの任意の医薬的に許容される組み合わせ;GLP−1および−2アゴニスト;またはそれらの組み合わせから選択される。
【0016】
さらにもう1つの態様において、本発明は、免疫応答を抑制する、移植片拒絶反応を予防する、および自己免疫疾患を治療する療法をはじめとする、多数の炎症性疾患および状態の治療に有用である、式Iの化合物と糖質コルチコイドアゴニストの併用を提供する。例示的疾病および状態としては、関節リウマチ、狼瘡、重症筋無力症、筋ジストロフィー、脈管炎、多発性硬化症(multiple schlerosis)、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、炎症性腸疾患、急性アレルギー反応の治療、および移植片拒絶反応が挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本明細書において用いる場合、別の指示がない限り、以下の定義が適用されるものとする。
【0018】
I.定義
本発明のために、化学元素は、the Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edによって確認される。加えて、有機化学の一般原理は、「Organic Chemistry」,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および「March’s Advanced Organic Chemistry」,5th Ed.,Ed.: Smith,M.B.and March,J.,John Wiley & Sons,New York:2001に記載されており、これらのすべての内容が参照により本明細書に援用されている。
【0019】
本明細書に記載する場合、本発明の化合物は、上で一般的に例証されているように、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび化学種によって例示されるように、1つ以上の置換基で場合によっては置換されていることがある。
【0020】
本明細書において用いる場合、用語「糖質コルチコイドアゴニスト」は、コルチゾール受容体と結合するそれらの能力によって特徴づけられるステロイドホルモンを指す。糖質コルチコイドアゴニストの例としては、ヒドロコルチゾン、酢酸コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、フルドロコルチゾン、酢酸デオキシコルチコステロン(DOCA)、およびアルドステロンが挙げられるが、それらに限定されない。
【0021】
本明細書において用いる場合、用語「脂肪族」は、用語アルキル、アルケニル、アルキニルを包含し、下で述べるように、これらのそれぞれが場合によっては置換されている。
【0022】
本明細書において用いる場合、「アルキル」基は、1−12(例えば、1−8、1−6、または1−4)個の炭素原子を含有する飽和脂肪族炭化水素基を指す。アルキル基は、直線状である場合もあり、分岐している場合もある。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、n−ヘプチル、または2−エチルヘキシルが挙げられるが、それらに限定されない。アルキル基は、1つ以上の置換基、例えばハロ、ホスホ、環式脂肪族[例えば、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル]、複素環式脂肪族[例えば、ヘテロシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(環式脂肪族)カルボニル、もしくは(複素環式脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、もしくはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、環式脂肪族アミノ、もしくは複素環式脂肪族アミノ]、スルホニル[例えば、脂肪族−SO−]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、環式脂肪族オキシ、複素環式脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアリールアルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで置換されている場合がある(すなわち、場合によっては置換されている)。限定ではなく、置換アルキルの一部の例としては、カルボキシアルキル(例えば、HOOC−アルキル、アルコキシカルボニルアルキル、およびアルキルカルボニルオキシアルキル)、シアノアルキル、ヒドロキシアルキル、アルコキシアルキル、アシルアルキル、アラルキル、(アルコキシアリール)アルキル、(スルホニルアミノ)アルキル(例えば、(アルキル−SO−アミノ)アルキル)、アミノアルキル、アミドアルキル、(環式脂肪族)アルキル、またはハロアルキルが挙げられる。
【0023】
本明細書において用いる場合、「アルケニル」基は、2−8(例えば、2−12、2−6、または2−4)個の炭素原子と少なくとも1つの二重結合とを含有する脂肪族炭素基を指す。アルキル基と同様、アルケニル基は、直線状である場合もあり、または分岐している場合もある。アルケニル基の例としては、アリル、イソプレニル、2−ブテニル、および2−ヘキセニル挙げられるが、それらに限定されない。アルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ハロ、ホスホ、環式脂肪族[例えば、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル]、複素環式脂肪族[例えば、ヘテロシクロアルキルもしくはヘテロシクロアルケニル]、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル、(環式脂肪族)カルボニル、もしくは(複素環式脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、アミド[例えば、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ アルキルアミノカルボニル、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、アリールアミノカルボニル、もしくはヘテロアリールアミノカルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ、環式脂肪族アミノ、複素環式脂肪族アミノ、もしくは脂肪族スルホニルアミノ]、スルホニル[例えば、アルキル−SO−、環式脂肪族−SO−、もしくはアリール−SO−]、スルフィニル、スルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、環式脂肪族オキシ、複素環式脂肪族オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルコキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、またはヒドロキシで場合によっては置換されていることがある。限定ではなく、置換アルケニルの一部の例としては、シアノアルケニル、アルコキシアルケニル、アシルアルケニル、ヒドロキシアルケニル、アラルケニル、(アルコキシアリール)アルケニル、(スルホニルアミノ)アルケニル(例えば、(アルキル−SO−アミノ)アルケニル)、アミノアルケニル、アミドアルケニル、(環式脂肪族)アルケニル、またはハロアルケニルが挙げられる。
【0024】
本明細書において用いる場合、「アルキニル」基は、2−8(例えば、2−12、2−6、または2−4)個の炭素原子と少なくとも1つの三重結合とを含有する脂肪族炭素基を指す。アルキニル基は、直線状である場合もあり、または分岐している場合もある。アルキニル基の例としては、プロパルギルまたはブチニルが挙げられるが、それらに限定されない。アルキニル基は、1つ以上の置換基、例えば、アロイル、ヘテロアロイル、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ニトロ、カルボキシ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、スルホ、メルカプト、スルファニル[例えば、脂肪族スルファニルもしくは環式脂肪族スルファニル]、スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニルもしくは環式脂肪族スルフィニル]、スルホニル[例えば、脂肪族−SO−、脂肪族アミノ−SO−、もしくは環式脂肪族−SO−]、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルアミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルアミノカルボニル、ヘテロシクロアルキルアミノカルボニル、シクロアルキルカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニル、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノもしくはヘテロアリールアミノカルボニル]、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、環式脂肪族、複素環式脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アシル[例えば、(環式脂肪族)カルボニルもしくは(複素環式脂肪族)カルボニル]、アミノ[例えば、脂肪族アミノ]、スルホキシ、オキソ、カルボキシ、カルバモイル、(環式脂肪族)オキシ、(複素環式脂肪族)オキシ、または(ヘテロアリール)アルコキシで場合によっては置換されていることがある。
【0025】
本明細書において用いる場合、「アミド」は、「アミノカルボニル」と「カルボニルアミノ」の両方を包含する。単独でまたは別の基を伴って用いられているときのこれらの用語は、末端に用いられているときにはアミド基、例えば−N(R)−C(O)−Rまたは−C(O)−N(Rを、および内部に用いられているときには−C(O)−N(R)−または−N(R)−C(O)−を指し、この場合のRおよびRは、下で定義する。アミド基の例としては、アルキルアミド(例えば、アルキルカルボニルアミノもしくはアルキルアミノカルボニル)、(複素環式脂肪族)アミド、(ヘテロアラルキル)アミド、(ヘテロアリール)アミド、(ヘテロシクロアルキル)アルキルアミド、アリールアミド、アラルキルアミド、(シクロアルキル)アルキルアミド、またはシクロアルキルアミドが挙げられる。
【0026】
本明細書において用いる場合、「アミノ」基は、−NRを指し、この場合、RおよびRのそれぞれは、独立して、水素、脂肪族、環式脂肪族、(環式脂肪族)脂肪族、アリール、芳香脂肪族、複素環式脂肪族、(複素環式脂肪族)脂肪族、ヘテロアリール、カルボキシ、スルファニル、スルフィニル、スルホニル、(脂肪族)カルボニル、(環式脂肪族)カルボニル、((環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、アリールカルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(複素環式脂肪族)カルボニル、((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、(ヘテロアリール)カルボニル、または(複素芳香脂肪族)カルボニルであり、これらのそれぞれは、本明細書中で定義しており、場合によっては置換されている。アミノ基の例としては、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、またはアリールアミノが挙げられる。用語「アミノ」が末端基(例えば、アルキルカルボニルアミノ)でないとき、それは、−NR−によって表される。Rは、上で定義したのと同じ意味を有する。
【0027】
本明細書において用いる場合、単独で用られる、または「アラルキル」、「アラルコキシ」もしくは「アリールオキシアルキル」の場合のようにより大きな部分の一部として用いられる「アリール」基は、単環式環構造(例えば、フェニル);二環式環構造(例えば、インデニル、ナフタレニル、テトラヒドロナフチル、テトラヒドロインデニル);および三環式環構造(例えば、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、またはテトラヒドロアントラセニル、アントラセニル)を指し、この場合、前記単環式環構造は、芳香族であり、または前記二環式もしくは三環式環構造内の環の少なくとも1つは、芳香族である。前記二環式および三環式の基は、ベンゾ縮合2−3員炭素環式環を含む。例えば、ベンゾ縮合基としては、2つ以上のC4−8炭素環式部分と縮合しているフェニルが挙げられる。アリールは、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル];環式脂肪族;(環式脂肪族)脂肪族;複素環式脂肪族;(複素環式脂肪族)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(環式脂肪族)オキシ;(複素環式脂肪族)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(芳香脂肪族)オキシ;(複素芳香脂肪族)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ(ベンゾ縮合二環式もしくは三環式アリールの非芳香族炭素環上のもの);ニトロ;カルボキシ;アミド;アシル[例えば、(脂肪族)カルボニル;(環式脂肪族)カルボニル;((環式脂肪族)脂肪族)カルボニル;(芳香脂肪族)カルボニル;(複素環式脂肪族)カルボニル;((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニル;または(複素芳香脂肪族)カルボニル];スルホニル[例えば、脂肪族−SO−もしくはアミノ−SO−];スルフィニル[例えば、脂肪族−S(O)−もしくは環式脂肪族−S(O)−];スルファニル[例えば、脂肪族−S−];シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホニル;尿素;チオ尿素;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイルをはじめとする1つ以上の置換基で場合によっては置換されている。あるいは、アリールは、非置換である場合がある。
【0028】
置換アリールの非限定的な例としては、ハロアリール[例えば、モノ−、ジ(例えば、p,m−ジハロアリール)、および(トリハロ)アリール];(カルボキシ)アリール[例えば、(アルコキシカルボニル)アリール、((アラルキル)カルボニルオキシ)アリール、および(アルコキシカルボニル)アリール];(アミド)アリール[例えば、(アミノカルボニル)アリール、(((アルキルアミノ)アルキル)アミノカルボニル)アリール、(アルキルカルボニル)アミノアリール、(アリールアミノカルボニル)アリール、および(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)アリール];アミノアリール[例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)アリールもしくは((ジアルキル)アミノ)アリール];(シアノアルキル)アリール;(アルコキシ)アリール;(スルファモイル)アリール[例えば、(アミノスルホニル)アリール];(アルキルスルホニル)アリール;(シアノ)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;((アルコキシ)アルキル)アリール;(ヒドロキシ)アリール、((カルボキシ)アルキル)アリール;(((ジアルキル)アミノ)アルキル)アリール;(ニトロアルキル)アリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)アリール;((複素環式脂肪族)カルボニル)アリール;((アルキルスルホニル)アルキル)アリール;(シアノアルキル)アリール;(ヒドロキシアルキル)アリール;(アルキルカルボニル)アリール;アルキルアリール;(トリハロアルキル)アリール;p−アミノ−m−アルコキシカルボニルアリール;p−アミノ−m−シアノアリール;p−ハロ−m−アミノアリール;または(m−(複素環式脂肪族)−o−(アルキル))アリールが挙げられる。
【0029】
本明細書において用いる場合、「芳香脂肪族」、例えば「アラルキル」基は、アリール基で置換されている脂肪族基(例えば、C1−4アルキル基)を指す。「脂肪族」、「アルキル」および「アリール」は、本明細書中で定義している。芳香脂肪族基、例えばアラルキル基、の一例は、ベンジルである。
【0030】
本明細書において用いる場合、「アラルキル」基は、アリール基で置換されているアルキル基(例えば、C1−4アルキル基)を指す。「アルキル」および「アリール」は両方とも上で定義した。アラルキル基の一例は、ベンジルである。アラルキルは、1つ以上の置換基、例えば、脂肪族[例えば、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、もしくはハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、をはじめとする、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル]、環式脂肪族[例えば、シクロアルキルもしくはシクロアルケニル]、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミド[例えば、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、もしくはヘテロアラルキルカルボニルアミノ]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルで場合によっては置換されている。
【0031】
本明細書において用いる場合、「二環式環構造」は、2つの環を形成する8−12(例えば、9、10または11)員構造を含み、この場合、前記2つの環は、共同で少なくとも1個の原子(例えば、共同で2個の原子)を有する。二環式環構造としては、二環式脂肪族(例えば、ビシクロアルキルまたはビシクロアルケニル)、二環式複素脂肪族、二環式アリール、および二環式ヘテロアリールが挙げられる。
【0032】
本明細書において用いる場合、「環式脂肪族」基は、「シクロアルキル」基および「シクロアルケニル」基を包含し、これらのそれぞれが、下で示すように、場合によっては置換されている。
【0033】
本明細書において用いる場合、「シクロアルキル」基は、炭素原子数3−10(例えば、5−10)の飽和炭素環式単または二環式(縮合または架橋)環を指す。シクロアルキル基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニル、クビル、オクタヒドロ−インデニル、デカヒドロ−ナフチル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.3.2.]デシル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、アダマンチル、または((アミノカルボニル)シクロアルキル)シクロアルキルが挙げられる。
【0034】
「シクロアルケニル」基は、本明細書において用いる場合、1つ以上の二重結合を有する炭素原子数3−10(例えば、4−8)の非芳香族炭素環を指す。シクロアルケニル基の例としては、シクロペンテニル、1,4−シクロヘキサ−ジエニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル、ヘキサヒドロ−インデニル、オクタヒドロ−ナフチル、シクロヘキセニル、シクロペンテニル、ビシクロ[2.2.2]オクテニル、またはビシクロ[3.3.1]ノネニルが挙げられる。
【0035】
シクロアルキルまたはシクロアルケニル基は、1つ以上の置換基、例えば、ホスホル、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル]、環式脂肪族、(環式脂肪族)脂肪族、複素環式脂肪族、(複素環式脂肪族)脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(環式脂肪族)オキシ、(複素環式脂肪族)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(芳香脂肪族)オキシ、(複素芳香脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド[例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(環式脂肪族)カルボニルアミノ、((環式脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(芳香脂肪族)カルボニルアミノ、(複素環式脂肪族)カルボニルアミノ、((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、もしくは(複素芳香脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ [例えば、HOOC−、アルコキシカルボニル、もしくはアルキルカルボニルオキシ]、アシル[例えば、(環式脂肪族)カルボニル、((環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(複素環式脂肪族)カルボニル、((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、もしくは(複素芳香脂肪族)カルボニル]、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル[例えば、アルキル−SO−およびアリール−SO−]、スルフィニル[例えば、アルキル−S(O)−]、スルファニル[例えば、アルキル−S−]、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルで場合によっては置換されていることがある。
【0036】
本明細書において用いる場合、用語「複素環式脂肪族」は、へテロシクロアルキル基およびヘテロシクロアルケニル基を包含し、これらのそれぞれが、下に示すように、場合によっては置換されている。
【0037】
本明細書において用いる場合、「ヘテロシクロアルキル」基は、環原子の1個以上がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)である、3−10員単または二環式(縮合または架橋)(例えば、5から10員単または二環式)飽和環構造を指す。ヘテロシクロアルキル基の例としては、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリル、1,4−ジオキソラニル、1,4−ジチアニル、1,3−ジオキソラニル、オキサゾリジル、イソオキサゾリジル、モルホリニル、チオモルホリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロクロメニル、オクタヒドロチオクロメニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロピリンジニル(octahydropyrindinyl)、デカヒドロキノリニル、オクタヒドロベンゾ[b]チオフェンイル、2−オキサ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクチル、3−アザ−ビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6−ジオキサ−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニルが挙げられる。単環式ヘテロシクロアルキル基は、フェニル部分と縮合して、テトラヒドロイソキノリンなどの構造を形成する場合があり、これは、ヘテロアリールとして分類されるであろう。
【0038】
「ヘテロシクロアルケニル」基は、本明細書において用いる場合、1つ以上の二重結合を有し、環原子の1個以上がヘテロ原子(例えば、N、O、またはS)である、単または二環式(例えば、5から10員単または二環式)非芳香族環構造を指す。単環式および二環式複素環式脂肪族は、標準的な化学命名法に従って番号づけされる。
【0039】
ヘテロシクロアルキルまたはヘテロシクロアルケニルは、1つ以上の置換基、例えば、ホスホル、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル]、環式脂肪族、(環式脂肪族)脂肪族、複素環式脂肪族、(複素環式脂肪族)脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、(環式脂肪族)オキシ、(複素環式脂肪族)オキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(芳香脂肪族)オキシ、(複素芳香脂肪族)オキシ、アロイル、ヘテロアロイル、アミノ、アミド[例えば、(脂肪族)カルボニルアミノ、(環式脂肪族)カルボニルアミノ、((環式脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(アリール)カルボニルアミノ、(芳香脂肪族)カルボニルアミノ、(複素環式脂肪族)カルボニルアミノ、((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニルアミノ、(ヘテロアリール)カルボニルアミノ、もしくは(複素芳香脂肪族)カルボニルアミノ]、ニトロ、カルボキシ [例えば、HOOC−、アルコキシカルボニル、もしくはアルキルカルボニルオキシ]、アシル[例えば、(環式脂肪族)カルボニル、((環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、(芳香脂肪族)カルボニル、(複素環式脂肪族)カルボニル、((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニル、もしくは(複素芳香脂肪族)カルボニル]、ニトロ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、メルカプト、スルホニル[例えば、アルキルスルホニルまたはアリールスルホニル]、スルフィニル[例えば、アルキルスルフィニル]、スルファニル[例えば、アルキルスルファニル]、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルで場合によっては置換されていることがある。
【0040】
「ヘテロアリール」基は、本明細書において用いる場合、4から15個の環原子を有し、それらの環原子の1個以上がヘテロ原子(例えば、N、O、S、またはそれらの組み合わせ)である、単環式、二環式、または三環式環構造を指し、この場合、前記単環式環構造は、芳香族であり、または前記二環式もしくは三環式環構造内の環の少なくとも1つは、芳香族である。ヘテロアリール基は、2から3個の環を有するベンゾ縮合環構造を含む。例えば、ベンゾ縮合基としては、1つまたは2つの4から8員複素環式脂肪族部分と縮合しているベンゾ(例えば、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、またはイソキノリニル)が挙げられる。ヘテロアリールの一部の例は、アゼチジニル、ピリジル、1H−インダゾリル、フリル、ピロリル、チエニル、チアゾリル、オキサゾリル、イミダゾリル、テトラゾリル、ベンゾフリル、イソキノリニル、ベンズチアゾリル、キサンテン、チオキサンテン、フェノチアジン、ジヒドロインドール、ベンゾ[1,3]ジオキソール、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリル、シンノニル、キノリル、キナゾリル、シノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、イソキノリル、4H−キノリジル、ベンゾ−1,2,5−チアジアゾリル、または1,8−ナフチリジルである。
【0041】
限定ではないが、単環式ヘテロアリールとしては、フリル、チオフェニル、2H−ピロリル、ピロリル、オキサゾリル、タゾリル(thazolyl)、イミダゾリル、ピラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、1,3,4−チアジアゾリル、2H−ピラニル、4−H−ピラニル、ピリジル、ピリダジル、ピリミジル、ピラゾリル、ピラジル、または1,3,5−トリアジルが挙げられる。単環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号づけされる。
【0042】
限定ではないが、二環式ヘテロアリールとしては、インドリジル、インドリル、イソインドリル、3H−インドリル、インドリニル、ベンゾ[b]フリル、ベンゾ[b]チオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、インドリジル、イソインドリル、インドリル、ベンゾ[b]フリル、ベキソ[b]チオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダジル、ベンズチアゾリル、プリニル、4H−キノリジル、キノリル、イソキノリル、シンノリル、フタラジル、キナゾリル、キノキサリル、1,8−ナフチリジル、またはプテリジルが挙げられる。二環式ヘテロアリールは、標準的な化学命名法に従って番号づけされる。
【0043】
ヘテロアリールは、1つ以上の置換基、例えば、脂肪族[例えば、アルキル、アルケニル、もしくはアルキニル];環式脂肪族;(環式脂肪族)脂肪族;複素環式脂肪族;(複素環式脂肪族)脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アルコキシ;(環式脂肪族)オキシ;(複素環式脂肪族)オキシ;アリールオキシ;ヘテロアリールオキシ;(芳香脂肪族)オキシ;(複素芳香脂肪族)オキシ;アロイル;ヘテロアロイル;アミノ;オキソ(二環式もしくは三環式ヘテロアリールの非芳香族炭素環もしくは複素環上のもの);カルボキシ;アミド;アシル[例えば、脂肪族カルボニル;(環式脂肪族)カルボニル;((環式脂肪族)脂肪族)カルボニル;(芳香脂肪族)カルボニル;(複素環式脂肪族)カルボニル;((複素環式脂肪族)脂肪族)カルボニル;もしくは(複素芳香脂肪族)カルボニル];スルホニル[例えば、脂肪族スルホニルもしくはアミノスルホニル];スルフィニル[例えば、脂肪族スルフィニル];スルファニル[例えば、脂肪族スルファニル];ニトロ;シアノ;ハロ;ヒドロキシ;メルカプト;スルホキシ;尿素;チオ尿素;スルファモイル;スルファミド;またはカルバモイルで場合によっては置換されている。あるいは、ヘテロアリールは、非置換である場合がある。
【0044】
置換ヘテロアリールの非限定的な例としては、(ハロ)ヘテロアリール[例えば、モノ−およびジ(ハロ)ヘテロアリール];(カルボキシ)ヘテロアリール[例えば、(アルコキシカルボニル)ヘテロアリール];シアノヘテロアリール;アミノヘテロアリール[例えば、((アルキルスルホニル)アミノ)ヘテロアリールおよび((ジアルキル)アミノ)ヘテロアリール];(アミド)ヘテロアリール[例えば、アミノカルボニルヘテロアリール、((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール、((((アルキル)アミノ)アルキル)アミノカルボニル)ヘテロアリール、(((ヘテロアリール)アミノ)カルボニル)ヘテロアリール、((複素環式脂肪族)カルボニル)ヘテロアリール、および ((アルキルカルボニル)アミノ)ヘテロアリール];(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシ)ヘテロアリール;(スルファモイル)ヘテロアリール[例えば、(アミノスルホニル)ヘテロアリール];(スルホニル)ヘテロアリール[例えば、(アルキルスルホニル)ヘテロアリール];(ヒドロキシアルキル)ヘテロアリール;(アルコキシアルキル)ヘテロアリール;(ヒドロキシ)ヘテロアリール;((カルボキシ)アルキル)ヘテロアリール;(((ジアルキル)アミノ)アルキル]ヘテロアリール;(複素環式脂肪族)ヘテロアリール;(環式脂肪族)ヘテロアリール;(ニトロアルキル)ヘテロアリール;(((アルキルスルホニル)アミノ)アルキル)ヘテロアリール;((アルキルスルホニル)アルキル)ヘテロアリール;(シアノアルキル)ヘテロアリール;(アシル)ヘテロアリール[例えば、(アルキルカルボニル)ヘテロアリール];(アルキル)ヘテロアリール、ならびに(ハロアルキル)ヘテロアリール [例えば、トリハロアルキルヘテロアリール]が挙げられる。
【0045】
本明細書において用いる場合、「複素芳香脂肪族(例えば、ヘテロアラルキル基)は、ヘテロアリール基で置換されている脂肪族基(例えば、C1−4アルキル基)を指す。「脂肪族」、「アルキル」、および「ヘテロアリール」は、上で定義した。
【0046】
「ヘテロアラルキル」基は、本明細書において用いる場合、ヘテロアリール基で置換されているアルキル基(例えば、C1−4アルキル基)を指す。「アルキル」および「ヘテロアリール」は両方とも上で定義した。ヘテロアラルキルは、1つ以上の置換基、例えば、アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルで場合によっては置換されている。
【0047】
本明細書において用いる場合、「環式部分」および「環式基」は、環式脂肪族、複素環式脂肪族、アリールまたはヘテロアリール(これらのそれぞれは、前に定義した)をはじめとする、単、二および三環式環構造を指す。
【0048】
本明細書において用いる場合、「架橋二環式環構造」は、環が架橋されている複素環式脂肪族環構造または二環式環式脂肪族環構造を指す。架橋二環式環構造の例としては、アダマンタニル、ノルボルナニル、ビシクロ[3.2.1]オクチル、ビシクロ[2.2.2]オクチル、ビシクロ[3.3.1]ノニル、ビシクロ[3.2.3]ノニル、2−オキサビシクロ[2.2.2]オクチル、1−アザビシクロ[2.2.2]オクチル、3−アザビシクロ[3.2.1]オクチル、および2,6−ジオキサ−トリシクロ[3.3.1.03,7]ノニル挙げられるが、それらに限定されない。架橋二環式環構造は、1つ以上の置換基、例えば、アルキル(カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、およびハロアルキル、例えばトリフルオロメチル、を含む)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アルコキシ、シクロアルキルオキシ、ヘテロシクロアルキルオキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、アラルキルオキシ、ヘテロアラルキルオキシ、アロイル、ヘテロアロイル、ニトロ、カルボキシ、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシ、アミノカルボニル、アルキルカルボニルアミノ、シクロアルキルカルボニルアミノ、(シクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、アリールカルボニルアミノ、アラルキルカルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキル)カルボニルアミノ、(ヘテロシクロアルキルアルキル)カルボニルアミノ、ヘテロアリールカルボニルアミノ、ヘテロアラルキルカルボニルアミノ、シアノ、ハロ、ヒドロキシ、アシル、メルカプト、アルキルスルファニル、スルホキシ、尿素、チオ尿素、スルファモイル、スルファミド、オキソ、またはカルバモイルで場合によっては置換されていることがある。
【0049】
本明細書において用いる場合、「アシル」基は、ホルミル基、すなわちR−C(O)−(例えば、「アルキルカルボニル」とも呼ばれる、アルキル−C(O)−)を指し、この場合のRおよび「アルキル」は、前に定義した。アセチルおよびピバロイルがアシル基の例である。
【0050】
本明細書において用いる場合、「アロイル」または「ヘテロアロイル」は、アリール−C(O)−またはヘテロアリール−C(O)−を指す。アロイルまたはヘテロアロイルのアリールおよびヘテロアリール部分は、前に定義したように、場合によっては置換されている。
【0051】
本明細書において用いる場合、「アルコキシ」基は、アルキル−O−基を指し、この場合の「アルキル」は、前に定義した。
【0052】
本明細書において用いる場合、「カルバモイル」基は、構造−O−CO−NRまたは−NR−CO−O−Rを有する基を指し、この場合のRおよびRは、上で定義しており、およびRは、脂肪族、アリール、芳香脂肪族、複素環式脂肪族、ヘテロアリール、または複素芳香脂肪族であり得る。
【0053】
本明細書において用いる場合、「カルボキシ」基は、末端基として用いられているときには−COOH、−COOR、−OC(O)H、−OC(O)R;または内部の基として用いられているときには−OC(O)−もしくは−C(O)O−を指す。
【0054】
本明細書において用いる場合、「ハロ脂肪族」基は、1−3個のハロゲンで置換されている脂肪族基を指す。例えば、用語ハロアルキルは、基−CFを含む。
【0055】
本明細書において用いる場合、「メルカプト」基は、−SHを指す。
【0056】
本明細書において用いる場合、「スルホ」基は、末端に用いられているときには、−SOHもしくは−SO、または内部に用いられているときには−S(O)−を指す。
【0057】
本明細書において用いる場合、「スルファミド」基は、末端に用いられているときには構造−NR−S(O)−NR、および内部に用いられているときには−NR−S(O)−NR−を指し、この場合のR、R、およびRは、上で定義した。
【0058】
本明細書において用いる場合、「スルホンアミド」基は、末端に用いられているときには構造−S(O)−NRもしくは−NR−S(O)−R;または内部に用いられているときには−S(O)−NR−もしくは−NR−S(O)−を指し、この場合のR、R、およびRは、上で定義した。
【0059】
本明細書において用いる場合、「スルファニル」基は、末端に用いられているときには−S−R、および内部に用いられているときには−S−を指し、この場合のRは、上で定義した。スルファニルの例としては、脂肪族−S−、環式脂肪族−S−、アリール−S−、またはこの種の他のものが挙げられる。
【0060】
本明細書において用いる場合、「スルフィニル」基は、末端に用いられているときには−S(O)−R、および内部に用いられているときには−S(O)−を指し、この場合のRは、上で定義した。スルフィニル基の例としては、脂肪族−S(O)−、アリール−S(O)−、(環式脂肪族(脂肪族))−S(O)−、シクロアルキル−S(O)−、複素環式脂肪族−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−、またはこの種の他のものが挙げられる。
【0061】
本明細書において用いる場合、「スルホニル」基は、末端に用いられているときには−S(O)−R、および内部に用いられているときには−S(O)−を指し、この場合のRは、上で定義した。スルホニル基の例としては、脂肪族−S(O)−、アリール−S(O)−、(環式脂肪族(脂肪族))−S(O)−、環式脂肪族−S(O)−、複素環式脂肪族−S(O)−、ヘテロアリール−S(O)−、(環式脂肪族(アミド(脂肪族)))−S(O)−、またはこの種の他のものが挙げられる。
【0062】
本明細書において用いる場合、「スルホキシ」基は、末端に用いられているときには−O−SO−Rもしくは−SO−O−R、および内部に用いられているときには−O−S(O)−もしくは−S(O)−O−を指し、この場合のRは、上で定義した。
【0063】
本明細書において用いる場合、「ハロゲン」または「ハロ」基は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を指す。
【0064】
本明細書において用いる場合、単独でまた別の基を伴って用いられる、用語カルボキシに包含される、「アルコキシカルボニル」は、アルキル−O−C(O)−などの基を指す。
【0065】
本明細書において用いる場合、「アルコキシアルキル」は、アルキル−O−アルキル−などのアルキル基を指し、この場合のアルキルは、上で定義した。
【0066】
本明細書において用いる場合、「カルボニル」は、−C(O)−を指す。
【0067】
本明細書において用いる場合、「オキソ」は、=Oを指す。
【0068】
本明細書において用いる場合、用語「ホスホ」は、ホスフィネートおよびホスホネートを指す。ホスフィネートおよびホスホネートの例としては、−P(O)(Rが挙げられ、この場合のRは、脂肪族、アルコキシ、アリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、(環式脂肪族)オキシ、(複素環式脂肪族)オキシ アリール、ヘテロアリール、環式脂肪族またはアミノを指す。
【0069】
本明細書において用いる場合、「アミノアルキル」は、構造(RN−アルキル−を指す。
【0070】
本明細書において用いる場合、「シアノアルキル」は、構造(NC)−アルキル−を指す。
【0071】
本明細書において用いる場合、「尿素」基は、構造−NR−CO−NRを指し、ならびに「チオ尿素」基は、末端に用いられているときには構造−NR−CS−NR、および内部に用いられているときには−NR−CO−NRまたは−NR−CS−NRを指し、この場合のR、R、およびRは、上で定義した。
【0072】
本明細書において用いる場合、「グアニジン」基は、構造−N=C(N(R))N(R)または−NR−C(=NR)NRを指し、この場合のRおよびRは、上で定義した。
【0073】
本明細書において用いる場合、用語「アミジノ」基は、構造−C=(NR)N(R)を指し、この場合のRおよびRは、上で定義した。
【0074】
一般に、用語「ビシナル」は、2個以上の炭素原子を含む基上の置換基の配置を指し、この場合の置換基は、隣接炭素原子に付いている。
【0075】
一般に、用語「ジェミナル」は、2個以上の炭素原子を含む基上の置換基の配置を指し、この場合の置換基は、同じ炭素原子に付いている。
【0076】
用語「末端に」および「内部に」は、置換基内の基の位置を指す。基は、その基が、その化学構造の残部にさらに結合していないその置換基の端に存在するとき、末端のものである。カルボキシアルキル、すなわち、RO(O)C−アルキルが、末端に用いられているカルボキシ基の一例である。基は、その基が、その化学構造の置換基の中間に存在するとき、内部のものである。アルキルカルボキシ(例えば、アルキル−C(O)O−またはアルキル−OC(O)−)およびアルキルカルボキシアリール(例えば、アルキル−C(O)O−アリール−またはアルキル−O(CO)−アリール−)が、内部に用いられているカルボキシ基の例である。
【0077】
本明細書において用いる場合、「脂肪族鎖」は、分岐しているまたは直線状の脂肪族基(例えば、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基)を指す。直線状の脂肪族鎖は、構造−[CH−を有し、この場合のvは、1−12である。分岐脂肪族鎖は、1つ以上の脂肪族基で置換されている直線状の脂肪族鎖である。分岐している脂肪族鎖は、構造−[CQQ]−を有し、この場合のQは、独立して、水素または脂肪族基であるが、Qは、少なくとも一方の事例に関して脂肪族基であるものとする。用語脂肪族鎖は、アルキル鎖、アルケニル鎖、およびアルキニル鎖を含み、この場合のアルキル、アルケニル、およびアルキニルは、上で定義している。
【0078】
「場合によっては置換されている」というフレーズは、「置換されているまたは非置換」というフレーズと交換可能に用いている。本明細書に記載する場合、本発明の化合物は、上で一般的に例証されているように、または本発明の特定のクラス、サブクラスおよび化学種によって例示されるように、1つ以上の置換基で場合によっては置換されていることがある。本明細書に記載する場合、本明細書に記載の式に含まれている可変項R、R、およびRならびに他の可変項は、アルキルおよびアリールなどの特定の基を包含する。別様に述べていない限り、それらに含まれている可変項R、R、およびRならびに他の可変項についての特定の基のそれぞれが、本明細書に記載する1つ以上の置換基で場合によっては置換されていることがある。特定の基のそれぞれの置換基は、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、環式脂肪族、複素環式脂肪族、ヘテロアリール、ハロアルキルおよびアルキルのうちの1つから3つで場合によってはさらに置換されている。例えば、アルキル基は、アルキルスルファニルで置換されていることがあり、およびそのアルキルスルファニルは、ハロ、シアノ、オキソ、アルコキシ、ヒドロキシ、アミノ、ニトロ、アリール、ハロアルキル、およびアルキルのうちの1つから3つで場合によっては置換されていることがある。追加の例として、(シクロアルキル)カルボニルアミノのシクロアルキル部分は、ハロ、シアノ、アルコキシ、ヒドロキシ、ニトロ、ハロアルキル、およびアルキルのうちの1つから3つで場合によっては置換されていることがある。2つのアルコキシ基が、同じ原子または隣接原子に結合しているとき、それら2つのアルコキシ基は、それらが結合している原子(単数または複数)と一緒に環を形成することがある。
【0079】
一般に、用語「置換されている」は、用語「場合によっては」が前にあろうと無かろうと、指定置換基のラジカルでの所与の構造内の水素ラジカルの置換を指す。特定の置換基を上の定義の中でおよび下の化合物についての説明およびそれらの例の中で説明している。別の指示がない限り、場合によっては置換されている基は、その基のそれぞれの置換可能な位置に置換基を有することがあり、および任意の所与の構造内の1つより多くの位置が指定された基から選択される1つより多くの置換基で置換されていることがある場合、その置換基は、すべての位置で、同じ場合もあり、または異なる場合もある。ヘテロシクロアルキルなどの環置換基は、シクロアルキルなどの別の環に結合してスピロ−二環式環構造を形成することがある、例えば、両方の環が1個の共通の原子を共有する。通常の当業者には、本発明によって考えられている置換基の組み合わせが、安定なまたは化学的に可能な化合物を形成する結果となることがわかるであろう。
【0080】
「安定なまたは化学的に可能な」というフレーズは、本明細書において用いる場合、それらの生成、検出、ならびに好ましくはそれらの回収、精製、および本明細書に開示する目的の1つ以上のための使用に備える条件に付されたときに実質的に改変されない化合物を指す。一部の実施形態において、安定な化合物または化学的に可能な化合物は、水蒸気または他の化学反応性条件が不在の状態で、少なくとも1週間、40℃以下の温度で保持されたときに実質的に改変されないものである。
【0081】
本明細書において用いる場合、「有効量」は、治療する患者に対して治療効果をもたらすために必要な量と定義し、一般に、その患者の年齢、表面積および状態に基づいて決定する。(体表の平方メートルあたりのミリグラムに基づく)動物および人間についての投薬量の相互関係は、Freireichら,Cancer Chemother.Rep.,50:219(1966)によって説明されている。体表面積は、患者の身長および体重から近似的に決定することができる。例えば、Scientific Tables,Geigy Pharmaceuticals,Ardsley,New York,537(1970)参照。本明細書において用いる場合、「患者」は、人間を含めて、哺乳動物を指す。
【0082】
別の言明が無い限り、本明細書に描かれている構造は、その構造のすべての異性体(例えば、エナンチオ異性体、ジアステレオ異性体、および幾何異性体(または配座異性体))形態、例えば、それぞれの不斉中心についてのRおよびS立体配置、(Z)および(E)二重結合異性体、ならびに(Z)および(E)配座異性体を含むことも意味する。従って、本発明の化合物の単一の立体化学異性体ならびにエナンチオ異性体、ジアステレオ異性体、および幾何異性体(または配座異性体)混合物は、本発明の範囲内である。別の言明が無い限り、本発明の化合物のすべての互変異性体形態が、本発明の範囲内である。加えて、別の言明が無い限り、本明細書に描かれている構造は、1つ以上の同位元素濃縮原子の存在に関してのみ異なる化合物を含むことも意味する。例えば、ジュウテリウムもしくはトリチウムによる水素の置換または13C−もしくは14C−濃縮炭素による炭素の置換を除いて本構造を有する化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、生物学的アッセイにおける分析ツールもしくはプローブとして、または治療薬として、有用である。
【0083】
II.医薬組成物
効能のあるインスリン増感化合物は、高いPPARγ活性を有するはずであると、および逆に、低減されたPPARγ活性を有する化合物は、低減されたインスリン増感活性を生じさせるであろうと、一般に考えられている。この考えとは相反して、本発明のチアゾリジンジオン化合物は、ユニークなことに、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有効であり、且つ、PPARγとの低減された相互作用を有する。
【0084】
理論による拘束を受けることを望まないが、代謝性炎症は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を含む非常に多数の重要な疾病の中心的原因であると考えられる。さらに、本発明のチアゾリジンジオンは、ミトコンドリアメカニズムによって高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を予防するように機能すると考えられる。さらに、PPARγ相互作用に起因する用量制限副作用が、本発明の化合物、特に立体選択的異性体、では低減されるので、式Iの化合物は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に非常に有用である。
【0085】
加えて、本発明のチアゾリジンジオン類似体は、ミトコンドリアメカニズムによって機能するので、式Iの化合物は、代謝性炎症がその病理の基礎であるすべての疾病状態の治療または予防に有用である。
【0086】
さらに、PPARγ相互作用に起因する用量制限副作用が、本発明の化合物、特に立体選択的異性体、では低減されるので、式Iの化合物は、糖質コルチコイドアゴニストと併用したとき、炎症性疾患の治療に用いることができる。
【0087】
一般的組成物
本発明は、式I:
【0088】
【化2】

の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有用である医薬組成物を提供する。
【0089】
およびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、この脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されている。
【0090】
は、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されている脂肪族であり、およびR’は、Hであるか、RとR’は、一緒にオキソを形成する。
【0091】
は、Hである。
【0092】
環Aは、フェニルである。
【0093】
幾つかの実施形態において、Rは、Hである。一部の実施形態において、Rは、ハロ、例えばFまたはClである。一部の実施形態において、Rは、1−3個のハロで場合によっては置換されている脂肪族である。例えば、R特異的実施形態、Rである。Rは、アルコキシである。例えば、Rは、メトキシ、エトキシ、または−O−イソプロピルである。さらに他の実施形態において、Rは、1−3個のハロで置換されているアルコキシである。例えば、Rは、−OCHFまたは−OCFである。上述の実施形態のそれぞれにおいて、Rは、フェニル環のオルト、メタ、またはパラ位で置換されていることがある。一定の実施形態において、Rは、フェニル環のパラまたはメタ位で置換されている。
【0094】
幾つかの実施形態において、Rは、Hである。一部の実施形態において、Rは、ハロ、例えばFまたはClである。一部の実施形態において、Rは、1−3個のハロで場合によっては置換されている脂肪族である。例えば、R特異的実施形態、Rである。Rは、アルコキシである。例えば、Rは、メトキシ、エトキシ、または−O−イソプロピルである。さらに他の実施形態において、Rは、1−3個のハロで置換されているアルコキシである。例えば、Rは、−OCHFまたは−OCFである。上述の実施形態のそれぞれにおいて、Rは、フェニル環のオルト、メタ、またはパラ位で置換されていることがある。一定の実施形態において、Rは、フェニル環のパラまたはメタ位で置換されている。一部の実施形態において、RおよびRは、異なる置換基である。さらに他の実施形態において、RおよびRは、同じ置換基である。一部の実施形態において、Rが脂肪族であるとき、Rは、H以外である。
【0095】
幾つかの実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、この脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されているが、但し、RおよびRの一方がHであるときには、他方はエチルでないことを条件とする。
【0096】
幾つかの実施形態において、RおよびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、この脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されているが、但し、RおよびRの一方がHであるときには、他方は、フェニルの4位で置換されているエチルでないことを条件とする。
【0097】
幾つかの実施形態において、Rは、水素、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されているC1−6脂肪族である。例えば、Rは、場合によっては置換されている直線状もしくは分岐C1−6アルキル、場合によっては置換されている直線状もしくは分岐C2−6アルケニル、または場合によっては置換されている直線状もしくは分岐C2−6アルキニルである。他の例において、Rは、1−2個のヒドロキシまたはハロで場合によっては置換されているC1−6脂肪族である。他の例において、Rは、ヒドロキシで場合によっては置換されているC1−6アルキルである。幾つかの他の例において、Rは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t−ブチル、ペンチル、またはヘキシルであり、これらのそれぞれは、ヒドロキシで場合によっては置換されている。幾つかの追加の例において、Rは、メチルまたはエチルであり、これらのそれぞれは、ヒドロキシで置換されている。
【0098】
幾つかの実施形態において、R’は、Hである。一部の実施形態において、RとR’は、一緒にオキソを形成する。
【0099】
一部の実施形態において、RまたはRの一方がHであるとき、他方はエチルでない。
【0100】
幾つかの実施形態において、前記組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0101】
本発明のもう1つの態様において、式II:
【0102】
【化3】

(式中、R’は、Hであり、ならびにR、R、Rおよび環Aは、上で式Iにおいて定義されている)
の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を提供する。
【0103】
本発明の例示的組成物としては、約1mgから約200mg、例えば、約10mgから約120mgの間、約10mgから約100mgの間、または約15mgから約60mg、の式IまたはIIの化合物を有する単回単位剤形が挙げられる。
【0104】
式IまたはIIの幾つかの例示的化合物を下の表Aに表示する。
【表A】

【0105】
本発明のもう1つの態様は、式IまたはIIの化合物を含む医薬組成物を提供し、この場合、前記化合物は、3μMより大きい循環レベルを生じさせるように投薬したときにロシグリタゾンの活性を基準にして50%以下のPPARγ活性を有する、または同じ投薬量でピオグリタゾンより10倍小さいPPARγ活性を有する。
【0106】
本発明のもう1つの態様は、式IまたはIIの化合物を含む医薬組成物を投与することを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療方法を提供する。幾つかの代替方法の組成物は、医薬的に許容される担体をさらに含む。
【0107】
本発明のもう1つの態様は、式IIの化合物を含む医薬組成物を投与することを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療方法を提供し、この場合、前記化合物は、約70e.e.%以上の純度を有する。例えば、約80%e.e.以上(例えば、90%e.e.以上、95%e.e.以上、97%e.e.以上、または99%e.e.以上)の純度を有する式Iの化合物を含む医薬組成物を投与すること含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療方法。
【0108】
本発明の医薬組成物は、1つ以上の追加の抗高血圧薬または他の薬物も含む場合がある。本発明の1つの態様は、式IまたはIIの化合物と、少なくとも1つの利尿薬、例えばヒドロクロロチアジド、クロロタラドン(chlorothaladone)、クロロチアジド、またはそれらの組み合わせ、とを含む医薬組成物を提供する。他の態様は、式IまたはIIの化合物と、レニン−アンギオテンシン系の活性を制限する1つ以上の薬剤、例えば、アンギオテンシン協奏(concerting)酵素阻害剤、すなわちACE阻害剤、例えばラミプリル、カプトプリル、エナラプリル、もしくはこの種の他のもの、および/またはアンギオテンシンII受容体遮断薬、すなわちARB、例えばカンデサルタン、ロサルタン、オルメサルタン、もしくはこの種の他のもの;および/またはレニン阻害剤、とを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療に有用な医薬組成物を提供する。さらに他の態様は、式IまたはIIの化合物と、β−アドレナリン作動性受容体遮断薬およびカルシウムチャネル遮断薬、例えばアムロジピン、をはじめとする代替手段によって高血圧、糖尿病および炎症性疾患を制限する化合物とを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療するための有用な医薬組成物を提供する。
【0109】
本発明は、式IまたはIIの化合物と、1つ以上のスタチン、すなわちHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えばアトルバスタチン、セリバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、メバスタチン、シンバスタチン、ロスバスタチン、プラバスタチン、またはそれらの任意の医薬的に許容される組み合わせ、とを含む、脂質の低下に有用である医薬組成物も提供する。
【0110】
本発明のもう1つの態様は、式IまたはIIの化合物と、利尿薬(例えば、ヒドロクロロチアジド、クロロタラドン(chlorothaladone)、クロロチアジド)、アンギオテンシブ(angiotensive)変換酵素阻害剤、例えば、ACE阻害剤、例えばラミプリル、カプトプリル、エナラプリル、これらの組み合わせ、もしくはこの種の他のもの;アンギオテンシンII受容体遮断薬、すなわちARB、例えばロサルタン、オルメサルタン、テルミサルタン、これらの組み合わせ、もしくはこの種の他のもの;レニン阻害剤;β−アドレナリン作動性受容体遮断薬、スタチン、またはそれらの組み合わせをはじめとする1つ以上の抗高血圧薬との併用を提供する。
【0111】
III.一般合成スキーム
式IおよびIIの化合物は、市販のまたは公知の出発原料から公知の方法によって容易に合成することができる。式IまたはIIの化合物を生成するための例示的合成経路を下に、下のスキーム1に提供する。
【0112】
スキーム1:
【0113】
【化4】

スキーム1を参照して、出発原料1aを還元してアニリン1bを形成する。そのアニリン1bを臭化水素酸、アクリル酸エステル、および触媒、例えば酸化第一銅、の存在下でジアゾ化して、アルファ−ブロモ酸エステル1cを生成する。そのアルファ−ブロモ酸エステル1cをチオ尿素で環化して、ラセミチアゾリジンジオン1dを生成する。HPLCなどの任意の適するプロセスを用いて、そのラセミ混合物から式IIの化合物を分離することができる。
【0114】
下のスキーム2において、Rは、オキソ基であり、Rは、水素である。
【0115】
スキーム2:
【0116】
【化5】

スキーム2を参照して、塩基条件(例えば、NaOH水溶液)下で出発原料2aを4−ヒドロキシベンズアルデ(4−hydroxybenzalde)と反応させて位置異性体アルコール2bの混合物を得る。それをクロマトグラフィーによって分離した。ピロリジンを塩基として使用して、その位置異性体アルコール2bを2,4−チアゾリジンジオンと反応させて、化合物2cを得る。水素化ホウ素ナトリウムでのコバルト触媒還元により化合物2dを得、それを、例えば、ジメチルスルホキシドの存在下、五酸化リンで、酸化してケトン2eを得る。
【0117】
IV.使用、調合物、および投与
上で論じたように、本発明は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患のための治療薬として有用である化合物を提供する。
【0118】
従って、本発明のもう1つの態様では、医薬的に許容される組成物を提供し、これらの組成物は、本明細書に記載するとおりの化合物のいずれかを含み、および医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを場合によっては含む。一定の実施形態において、これらの組成物は、1つ以上の追加の治療薬を場合によってはさらに含む。
【0119】
本発明の一定の化合物が、治療用の自由な形態でまたは適切な場合にはそれらの医薬的に許容される誘導体もしくはプロドラッグとして存在し得ることも理解されるであろう。本発明によると、医薬的に許容される誘導体またはプロドラッグとしては、必要がある患者への投与に基づき、本明細書に別様に記載するような化合物またはその代謝産物もしくは残留物を直接または間接的にもたらすことができる、医薬的に許容される塩、エステル、そのようなエステルの塩または任意の他の付加体もしくは誘導体が挙げられるが、それらに限定されない。
【0120】
本明細書において用いる場合、用語「医薬的に許容される塩」は、堅実な医学的判断の範囲内であり、過度の毒性、刺激、アレルギー応答およびこれらに類するものを伴うことなく人間および下等動物の組織と接触する使用に適ており、ならびに妥当な損益比に見合っている塩を指す。「医薬的に許容される塩」は、レシピエントへの投与に基づき、本発明の化合物またはその阻害活性代謝産物もしくは残留物を直接または間接的にもたらすことができる、本発明の化合物の任意の非毒性塩、またはエステルの塩を意味する。
【0121】
医薬的に許容される塩は、当該技術分野において周知である。例えば、S.M.Bergeらは、医薬的に許容される塩をJ.Pharmaceutical Sciences,1977,66,1−19(参照により本明細書に援用されている)に詳細に記載している。本発明の化合物の医薬的に許容される塩としては、適する無機および有機酸および塩基から誘導されるものが挙げられる。医薬的に許容される、非毒性酸付加塩の例は、無機酸、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸および過塩素酸、とで、または有機酸、例えば酢酸、シュウ酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、コハク酸もしくはマロン酸、とで、またはイオン交換などの当該技術分野において用いられている他の方法を用いることによって、形成されたアミノ基の塩である。他の医薬的に許容される塩としては、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオン酸塩、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、グルコン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモン酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩、およびこれらに類するものが挙げられる。適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩およびN(C1−4アルキル)塩が挙げられる。本発明は、本明細書に開示する化合物の任意の塩基性窒素含有基の四級化も考えている。そのような四級化によって、水または油溶性または分散性生成物を得ることができる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびこれらに類するものが挙げられる。さらなる医薬的に許容される塩としては、適切な場合には、対イオン、例えば、ハロゲン化物イオン、水酸化物イオン、カルボン酸イオン、硫酸イオン、リン酸イオン、硝酸イオン、低級アルキルスルホン酸イオンおよびアリールスルホン酸イオンを使用して形成された非毒性アンモニウム、第四級アンモニウムおよびアミンカチオンが挙げられる。
【0122】
上で説明したように、本発明の医薬的に許容される組成物は、医薬的に許容される担体、アジュバントまたはビヒクルを追加で含み、これらは、本明細書において用いる場合、所望される個々の剤形に適するような、任意のおよびすべての溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散もしくは懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘もしくは乳化剤、保存薬、固体結合剤、滑沢剤およびこれらに類するものを含む。Remington’s Pharmaceutical Sciences,Sixteenth Edition,E.W.Martin(Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1980)には、医薬的に許容される組成物の調合に用いられる様々な担体、およびそれらを調製するための公知の技術が開示されている。いずれの従来の分散媒も、例えば、何らかの望ましくない生物学的作用を生ずることにより、またはその医薬的に許容される組成物のいずれかの他の成分(単数または複数)と有害な様式で別様に相互作用することにより、本発明の化合物と不相溶性である場合を除き、その使用は、本発明の範囲内であると考えられる。医薬的に許容される担体としての役割を果たすことができる材料の一部の例としては、イオン交換樹脂、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、血清タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、緩衝物質、例えばリン酸塩、グリシン、ソルビン酸またはソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、例えば硫酸カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン−ポリオキシプロピレン−ブロックポリマー、羊毛脂、糖、例えばラクトース、グルコースおよびスクロース;デンプン、例えばトウモロコシデンプンおよび馬鈴薯デンプン;セルロースおよびその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;粉末トラガカントゴム;麦芽;ゼラチン;タルク;賦形剤、例えばカカオ脂および坐剤ワックス;油、例えばピーナッツ油、綿実油、紅花油、ごま油、オリーブ油、トウモロコシ油および大豆油;グリコール、例えばプロピレングリコールまたはポリエチレングリコール;エステル、例えばオレイン酸エチルおよびラウリン酸エチル;寒天;緩衝剤、例えば水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウム;アルギン酸;発熱物質不含水;等張食塩水;リンガー溶液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝溶液、ならびに他の非毒性相溶性滑沢剤、例えばラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウム、ならびに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、着香剤および香料、保存薬および抗酸化物質が挙げられ(しかし、これらに限定されない)、これらも、その調合者の判断に従って、本組成物中に存在することがある。
【0123】
さらにもう1つの態様において、本発明は、式IまたはIIの化合物を含む医薬組成物を、その必要がある、好ましくは哺乳動物に投与することを含む、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療方法を提供する。
【0124】
本発明によると、前記化合物または医薬的に許容される組成物の「有効量」は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療するためまたはそれらの重症度を低下させるために有効な量である。
【0125】
前記医薬組成物は、本発明の方法に従って、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療するためにまたはそれらの重症度を低下させるために有効な任意の量および任意の経路を用いて投与することができる。
【0126】
必要な正確な量は、被験者の種、年齢および性別、感染の重症度、個々の薬剤、その投与方式、ならびにこれらに類するものに依存して、被験者ごとに異なるであろう。本発明の化合物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のため、好ましくは投薬単位形で調合される。本明細書において用いる場合の「投薬単位形」という表現は、治療すべき患者に適する薬剤の物理的に別個の単位を指す。しかし、本発明の化合物および組成物の1日の総使用量が、掛かりつけの医師によって堅実な医学的判断の範囲内で決定されるであろうことは理解されよう。任意の個々の患者または生物についての具体的な有効用量レベルは、治療する疾患およびその疾患の重症度;利用される具体的な化合物の活性;利用される具体的な組成物;その患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事;利用される具体的な化合物の投与回数、投与経路および排泄率;その治療の継続期間;利用される具体的な化合物と併用されるまたは同時に使用される薬物をはじめとする様々な要因、ならびに医療技術分野において公知の同様の要因に依存するであろう。用語「患者」は、本明細書において用いる場合、動物、例えば哺乳動物、およびより具体的にはヒトを意味する。
【0127】
本発明の医薬的に許容される組成物は、治療する感染の重症度に依存して、経口的に、直腸内に、非経口的に、槽内に、膣内に、腹腔内に、局所的に(例えば、粉末、軟膏もしくは滴剤により)、口腔内に、経口もしくは鼻スプレーとして、またはこの種の他のものでヒトまたは他の動物に投与することができる。一定の実施形態では、本発明の化合物を1日につき被験者体重の、約0.01mg/kgから約50mg/kgおよび好ましくは約1mg/kgから約25mg/kgの投薬レベルで経口的にまたは非経口的に投与して、所望の治療効果を得ることができる。あるいは、本発明の化合物を10mg/kgと約120mg/kgの間の投薬レベルで経口的にまたは非経口的に投与することができる。
【0128】
経口投与のための液体剤形としては、医薬的に許容されるエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられるが、それらに限定されない。活性化合物に加えて、前記液体剤形は、当該技術分野において一般に用いられている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤など、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(特に、綿実、落花生、トウモロコシ、胚芽、オリーブ、ヒマシおよびごま油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにこれらの混合物を含有する場合がある。不活性希釈剤に加えて、前記経口組成物は、アジュバント、例えば、湿潤剤、乳化剤、懸濁化剤、甘味料、着香剤および香料も含むことがある。
【0129】
注射用製剤、例えば、滅菌注射用水性または油性懸濁液は、適する分散または湿潤剤および懸濁化剤を使用して、公知の技術に従って調合することができる。前記滅菌注射用製剤は、例えば1,3−ブタンジオールのような非毒性で非経口的に許容される希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョンである場合もある。利用することができる許容されるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液、U.S.P.および等張塩化ナトリウム溶液などがある。加えて、従来、滅菌、固定油が溶媒または懸濁化媒質として利用されている。このために、合成モノ−またはジグリセリドをはじめとする任意の無菌固定油を利用することができる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を注射用製剤に使用することができる。
【0130】
前記注射用製剤は、例えば、細菌保留フィルターによる濾過によって、または使用前に滅菌水もしくは他の滅菌注射用媒質に溶解もしくは分散させることができる滅菌固体組成物の形態の滅菌剤を添合することによって、滅菌することができる。
【0131】
本発明の化合物の効果を延長するために、皮下または筋肉内注射からの化合物の吸収を遅らせることが望ましいことが多い。これは、劣った水溶性を有する結晶質または非晶質材料の懸濁液の使用によって遂行することができる。その時、前記化合物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、そしてまたそれは結晶サイズおよび結晶形態に依存し得る。あるいは、非経口投与化合物形態の遅延吸収は、油性ビヒクルに化合物を溶解または懸濁させることによって遂行することができる。注射用デポー形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生体分解性ポリマー中の化合物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって作られる。化合物のポリマーに対する比率および利用する個々のポリマーの性質に依存して、化合物放出速度を制御することができる。他の生体分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射用調合物は、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンの中に化合物を捕捉することによっても調製される。
【0132】
好ましくは、直腸内または膣投与のための組成物は、本発明の化合物と、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、従って、直腸または膣腔内で溶解して活性化合物を放出する、適する無刺激性賦形剤または担体、例えばカカオ脂、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックス、とを混合することによって調製することができる。
【0133】
経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、ピル、粉末、および顆粒が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの不活性の、医薬的に許容される賦形剤もしくは担体、例えばクエン酸ナトリウムもしくはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤もしくは増量剤、例えばデンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトールおよびケイ酸、b)結合剤、例えばカルボキシメチルセルロース、アルジネート、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロースおよびアラビアゴムなど、c)湿潤薬、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば寒天、炭酸カルシウム、馬鈴薯もしくはタピオカデンプン、アルギン酸、一定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶解遅延剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えばセチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えばカオリンおよびベントナイトクレー、ならびにi)滑沢剤、例えばタルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびこれらの混合物と混合する。カプセル、錠剤およびピルの場合、その剤形は、緩衝剤も含むことがある。
【0134】
同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールおよびこれらに類するものを使用してゼラチン軟および硬カプセル内の充填剤として利用することもできる。コーティングおよび外皮、例えば、腸溶コーティングおよび医薬調合技術分野において周知の他のコーティングを伴う、錠剤、糖衣丸、カプセル、ピルおよび顆粒の固体剤形を調製することもできる。それらは、乳白剤を場合によっては含有することがあり、および腸管の一定の部分でのみ、または優先的に、場合によっては遅延様式で、活性成分(単数または複数)を放出する組成のものである場合もある。使用することができる包埋組成物の例としては、高分子物質およびワックスが挙げられる。同様のタイプの固体組成物を、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤ならびに高分子量ポリエチレングリコールおよびこれらに類するものを使用してゼラチン軟および硬カプセル内の充填剤として利用することもできる。
【0135】
前記活性化合物は、上で述べたような1つ以上の賦形剤を伴うマイクロカプセル封入形態である場合もある。コーティングおよび外皮、例えば、腸溶コーティング、放出制御コーティングおよび医薬調合技術分野において周知の他のコーティングを伴う、錠剤、糖衣丸、カプセル、ピルおよび顆粒の固体剤形を調製することもできる。そのような固体剤形の場合、前記活性化合物は、少なくとも1つの不活性希釈剤、例えば、スクロース、ラクトースまたはデンプンと混合されることがある。そのような剤形は、通常の実施と同様に、不活性希釈剤以外の追加の物質、例えば、錠剤形成用滑沢剤ならびに他の錠剤形成助剤、例えばステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース、も含有することがある。カプセル、錠剤およびピルの場合、それらの剤形は、緩衝剤も含むことがある。それらは、乳白剤も場合によっては含有することがあり、および腸管の一定の部分でのみ、または優先的に、場合によっては遅延様式で、活性成分(単数または複数)を放出する組成のものである場合もある。使用することができる包埋組成物の例としては、高分子物質およびワックスが挙げられる。
【0136】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー剤、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分は、医薬的に許容される担体および必要に応じて任意の必要保存薬または緩衝剤と滅菌条件下で混合する。眼科用調合物、点耳剤、および点眼剤も本発明の範囲内であると考えられる。加えて、本発明は、経皮パッチの使用も考えており、これらは、身体への化合物の制御送達をもたらす付加利点を有する。そのような剤形は、適切な媒質に本化合物を溶解または分散させることによって調製される。吸収増進剤を使用して、皮膚を横断する化合物のフラックスを増加させることもできる。この速度は、速度制御膜を設けること、またはポリマーマトリックスもしくはゲル中に化合物を分散させること、のいずれかによって制御することができる。
【0137】
上で一般に説明したように、本発明の化合物は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患のための治療薬として有用である。
【0138】
高血圧、糖尿病、および炎症性疾患の治療薬としての本発明において利用される化合物の活性、またはさらに重要には、低減されたPPARγ活性は、当該技術分野において一般に説明されているおよび本明細書の実施例において説明する方法に従ってアッセイすることができる。
【0139】
本発明の化合物および医薬的に許容される組成物を併用療法に利用できること、すなわち、本化合物および医薬的に許容される組成物を1つ以上の他の所望の治療薬または医療手順、と同時に、の前にまたは後に施与できること、も理解されるであろう。併用レジメンで用いる療法(治療薬または手順)の個々の組み合わせは、所望の治療薬および/または手順の適合性ならびに達成すべき所望の治療効果を考慮に入れることとなる。利用する療法が、同じ疾患に対して所望の効果を達成する場合もあり(例えば、本発明の化合物は、同じ疾患を治療するために用いられる別の薬剤と同時に投与される場合がある)こと、またはそれらが、異なる効果(例えば、任意の有害作用の制御)を達成する場合があることも理解されるであろう。本明細書において用いる場合、特定の疾病または状態を治療または予防するために通常投与される追加の治療薬は、「治療するその疾病または状態に適切である」と判っている。
【0140】
本発明の組成物中に存在する追加の治療薬の量は、その治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物で通常投与される量より多くないであろう。好ましくは、本開示組成物中の追加の治療薬の量は、その薬剤を唯一の治療活性薬剤として含む組成物中に通常存在する量の約50%から100%にわたるであろう。
【0141】
本発明の化合物またはそれらの医薬的に許容される組成物は、植込み型医療器具、例えばプロテーゼ、人工弁、血管グラフト、ステントおよびカテーテル、をコーティングするための組成物に添合することもできる。従って、本発明は、もう1つの態様において、植込み型器具をコーティングするための組成物を含み、この組成物は、上で一般にならびに本明細書においてクラスおよびサブクラスに関して説明しているような本発明の化合物と、該植込み型器具のコーティングに適する担体とを含む。さらにもう1つの実施形態において、本発明は、組成物でコーティングされた植え込み型器具を含み、この組成物は、上で一般にならびにここでクラスおよびサブクラスにおいて説明している本発明の化合物と、該植込み型器具のコーティングに適する担体とを含む。適するコーティング剤、およびコーティングされた植込み型器具の一般的な作製は、米国特許第6,099,562号、同第5,886,026号および同第5,304,121号に記載されており、これらのそれぞれが参照により援用されている。前記コーティングは、概して、生体適合性ポリマー材料、例えば、ヒドロゲルポリマー、ポリメチルジシロキサン、ポリカプロラクトン、ポリエチレングリコール、ポリ乳酸、エチレンエチルアセテート、およびそれらの混合物である。前記コーティングをフルオロシリコーン、多糖類、ポリエチレングリコール、リン脂質またはそれらの組み合わせで場合によってはさらに被覆して、その組成物に制御放出特性を付与することができる。
【0142】
さらにもう1つの実施形態によると、本発明は、高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療するまたはそれらの重症度を低下させる方法を提供する。
【0143】
本発明のもう1つの態様は、生体サンプルまたは患者において(例えば、インビトロまたはインビボでの)高血圧、糖尿病、および炎症性疾患を治療することに関し、この方法は、式IまたはIIの化合物を含む医薬組成物を患者に投与すること、または前記生体サンプルと接触させることを含む。用語「生体サンプル」は、本明細書において用いる場合、限定ではないが、細胞培養物またはそれらの抽出物;哺乳動物またはその抽出物から得られる生検用材料;および血液、唾液、尿、糞便、精液、涙もしくは他の体液またはその抽出物を含む。
【0144】
本明細書において説明する本発明をさらに十分に理解するために、以下の実施例を示す。これらの実施例が例証のみを目的とするものであり、如何なる点においても本発明を制限すると解釈すべきでないことは理解されるはずである。
【実施例】
【0145】
実施例1:5−[4−(2−オキソ−2−フェニルエトキシ)ベンジル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン。
【0146】
【化6】

段階1.4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンズアルデヒドの調製。
【0147】
2−(4−フルオロフェニル)オキシラン(6.50g、54.0mmol;)にトルエン(85mL)、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(9.89g、81.0mmol)、PEG4000(ポリエチレングリコール、1.15g)および1M NaOH(85mL)を添加し、その攪拌混合物を78℃で一晩加熱した。室温に冷却後、その反応混合物をEtOAcで抽出し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた黄色の油を、0−10% EtOAc/DCMで溶離する中型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。より高いRスポットを主として含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.85g(14%)の表題化合物を黄色の油として得た。より低いRスポットを主として含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.64gの位置異性体を無色の粘稠油として得た。混合画分を併せ、30% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに再び付した。より高いR材料を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、追加の2.64g(20%)の表題化合物を無色の油として得た。より低いR材料を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、追加の1.82gの位置異性体を無色の粘稠油として得た。
【0148】
段階2:5−[4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンジリデン]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0149】
無水EtOH(75mL)中の4−[(2S)−2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ]ベンズアルデヒド(2.63g、10.8mmol)の攪拌溶液に2,4−チアゾリジンジオン(1.27g、10.8mmol)およびピペリジン(0.54mL、5.4mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。反応物を一晩還流させた。その反応混合物を放置して室温に冷却した。沈殿は形成しなかった。反応混合物のpHは、約5であった。酢酸(20滴)を添加した。その反応物を真空下で蒸発させた。その材料をシリカゲルに吸着させ、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、3.18g(86%)の表題化合物を淡黄色の固体として得た。C1815NOSについてのMS(ESI−) m/z 340.1(M−H)
【0150】
段階3:5−[4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンジル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0151】
THF(20mL)中の5−[4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンジリデン]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(1.50g、4.39mmol)の混合物に、HO(20mL)、1M NaOH(3mL)、塩化コバルト(II)・六水和物(0.60mg、0.003mmol;)およびジメチルグリオキシム(15mg、0.13mmol)を添加した。0.2M NaOH(3.6mL)中のテトラヒドロホウ酸ナトリウム(240mg、6.33mmol)の溶液を添加した。その反応混合物は、直ちに暗色に変わったが、非常に速やかに透明な黄色の外観を呈した。その溶液が暗色に変わるまで、酢酸を添加した(3滴)。約1時間後、その反応物は明るくなった。追加のNaBH、CoClおよびHOAcを添加して、濃い青−紫色を生じさせた。その色が消えたら、さらなるNaBHを添加した。HPLC分析が、反応が完了したことを示したら、それをHOとEtOAcとで分配し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で濃縮した。得られた泡沫状固体を、50% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.15g(76%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1817NOSについてのMS(ESI−) m/z 342.1(M−H)
【0152】
段階4:5−[4−(2−オキソ−2−フェニルエトキシ)ベンジル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0153】
DCM(35mL)中の5−[4−(2−ヒドロキシ−2−フェニルエトキシ)ベンジル]−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(1.00g、2.91mmol)の攪拌溶液にDMSO(2mL)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。五酸化リン(0.83g、2.91mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(1.8mL、13.1mmol)を添加した。その反応物を放置してゆっくりと室温に温めた。2時間後、その反応混合物をDCMと水とで分配し、有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた黄色の油を、25−35% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.40g(40%)の表題化合物を白色の固体として得た。エーテルでの研和によって、245mgの透明な生成物を得た。C1815NOSについてのMS(ESI−) m/z 340.1(M−H)
【0154】
実施例2:5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0155】
【化7】

段階1:4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンズアルデヒドの調製
トルエン(65mL)中の2−(4−フルオロフェニル)オキシラン(5.60g、40.0mmol)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(7.40g、61.0mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その反応物を78℃で一晩加熱した。室温に冷却後、その反応物をEtOAc(2x150mL)で抽出し、併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油を、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。より高いRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、生成物の位置異性体(2.38g)を白色の固体として得た。より低いRfスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.54g(22%)の表題化合物を無色の粘稠油として得た。
【0156】
段階2:5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
無水EtOH(75mL)中の前記アルデヒド(2.36g、10.8mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(1.06g、9.07mmol)およびピペリジン(0.45mL、4.50mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。一晩、還流させた後、その反応物を放置して室温に冷却し、その後、真空下で蒸発させた。その残留物をシリカゲルに吸着させ、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.88g(27%)の表題化合物を黄色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.1(M−H)
【0157】
段階3:5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
THF/HO(1:1、20mL)中の5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.87g、2.40mmol)の攪拌混合物に、1M NaOH(2mL)、塩化コバルト(II)・六水和物(0.30g、0.001mmol)、ジメチルグリオキシム(8.4mg、0.073mmol)、そして最後にテトラヒドロホウ酸ナトリウム(0.13g、3.53mmol)を添加した。その反応物は、濃い青/紫色に変わった。短時間の後、その暗色が消え始めたので、HOAcを添加して、より暗色を再生させた。色が消え、HOAcの添加によりそれを再生できなかったら、NaBHを添加して、より暗色を再生させた。その反応物を一晩、室温で攪拌させておいた。その反応物を水とEtOAcとで分配した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油を、35% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。化合物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.77g(88%)の淡黄色の固体を得た。その黄色の固体をTHF(8mL)およびHO(8mL)に溶解し、得られた溶液をCoCl(小さな結晶)および2,2’−ジピリジル(5mg)で処理した。最後に、NaBHを、濃い青色が持続するまで少しずつ添加した。その反応混合物をEtOAcとHOとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られたわずかに色の付いた油を、25−35% EtOAc/ヘキサンで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、527mg(60%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1816FNOSについてのMS(ESI−) m/z 360.1(M−H)
【0158】
段階4:5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
DCM(15mL)中の5−{4−[2−(4−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.52g、1.40mmol)の攪拌溶液にDMSO(0.5mL)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。五酸化リン(0.41g、1.44mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(0.90mL、6.48mmol)を添加した。その反応物を放置してゆっくりと室温に温め、その後、5時間攪拌した。その反応混合物をDCMとHOとで分配し、水性相をDCMで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた白色の固体を、10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.25g(48%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI+) m/z 359.9(M+H)。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.0(M−H)
【0159】
実施例3:5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0160】
【化8】

段階1:2−(2−フルオロフェニル)オキシランの調製
0℃でジオキサン(33mL)およびHO(78mL)中のo−フルオロスチレン(5.0g、41.0mmol;)および酢酸(2.33mL、40.9mmol)の溶液にN−ブロモスクシンイミド(8.02g、45.0mol)を3回で添加した。その反応物を放置して室温に温め、一晩攪拌した。炭酸ナトリウム(8.68g、81.9mmol)を少しずつ添加し、その後、1M NaOH(約10mL)を添加し、その反応物を室温で一晩攪拌した。その反応混合物を水とEtOAcとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させて、5.31g(94%)の表題化合物をわずかに色が付いた油として得、それをさらに精製せずに使用した。CFOについてのMS(ESI+) m/z 131.8(M+H)
【0161】
段階2:4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンズアルデヒドの調製
トルエン(65mL)中の2−(2−フルオロフェニル)オキシラン(5.30g、38.4mmol)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(7.0g、58.0mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その攪拌混合物を78℃で一晩加熱した。その反応物を放置して室温に冷却し、その後、EtOAc(2x150mL)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油をシリカゲルに吸着させ、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。2つの大きなスポットが存在する。高いほうのRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.10g(11%)の表題化合物を無色の油として得た。低いほうのRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.67g(7%)の位置異性体を無色の油として得た。
【0162】
段階3:5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0163】
無水EtOH(40mL)中のそのアルデヒド(2.36g、10.8mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(0.495g、4.23mmol)およびピペリジン(0.21mL、2.10mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。一晩還流させた後、その反応混合物を室温に冷却し、その後、真空下で蒸発させた。残留物をEtOAcに溶解し、この溶液を希HOAc水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた黄色の固体をDCMおよびアセトンで洗浄し、濾液を真空下で蒸発させた。この材料をシリカゲルに吸着させ、10−25% EtOAc/DCMを用いてクロマトグラフに付した。化合物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.51gの表題化合物を黄色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.0(M−H)
【0164】
段階4:5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0165】
THF/HO(1:1、16mL)中の5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.52g、1.40mmol)の攪拌溶液に、1M NaOH(2mL)、塩化コバルト(II)・六水和物(0.2mg、0.0009mmol)、2,2’−ビピリジン(50.8mg、0.33mmol)、そして最後にテトラヒドロホウ酸ナトリウム(0.11g、2.90mmol)を添加した。その反応物は、濃い青/紫色に変わった。短時間の後、その暗色が消え始めたので、HOAcを添加して、より暗色を再生させた。色が消え、HOAcの添加によりそれを再生できなかったら、NaBHを添加して、より暗色を再生させた。濃い青色が持続するまでNaBHおよびHOAcを少しずつ滴下して添加した。これを数回繰り返した後、HPLCは、その濃い青色が淡褐色溶液に取って代わられたという事実にもかかわらず、反応が完了したことを示した。その反応物を水とEtOAcとで分配した。有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油を、35% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。化合物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.32gの表題化合物を白色の固体として得た。C1816FNOSについてのMS(ESI−) m/z 360.1(M−H)
【0166】
段階5:5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
DCM(15mL)中の5−{4−[2−(2−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.29g、0.80mmol)の攪拌溶液にDMSO(0.5mL)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。五酸化リン(0.23g、0.80mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(0.50mL、3.6mmol)を添加した。その反応物を放置してゆっくりと室温に温めた。3時間後、水を添加し、相を分離した。水性相のpHを約7に調整し、その水性相をDCMで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた白色の固体を、10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.19g(66%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.0(M−H)
【0167】
実施例4:5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
【0168】
【化9】

段階1:2−(3−フルオロフェニル)オキシランの調製
0℃でジオキサン(33mL)およびHO(78mL)中のm−フルオロスチレン(5.00g、41.0mmol)および酢酸(2.33mL、40.9mmol)の溶液にN−ブロモスクシンイミド(8.02g、45.0mmol)を3回で添加した。その反応物を放置して室温に温めた。4時間後、2N NaOH(60mL)を添加し、その反応物を室温で一晩、攪拌させておいた。その反応混合物を水とEtOAcとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させて、6.30gの表題化合物をわずかに色の付いた油として得、それをさらに精製せずに使用した。
【0169】
段階2:4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンズアルデヒドの調製
トルエン(65mL)中の2−(3−フルオロフェニル)オキシラン(5.60g、40.5mmol)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(7.40g、61.0mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その攪拌混合物を78℃で一晩加熱した。その反応混合物を放置して室温に冷却し、その後、EtOAc(2x150mL)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油を、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。2つの大きなスポットが存在する。高いほうのRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.78g(17%)の表題化合物を白色の固体として得た。低いほうのRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.90g(9%)の位置異性体をほぼ無色の油として得た。
【0170】
段階3:5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
無水EtOH(40mL)中のそのアルデヒド(2.36g、10.8mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(0.90g、7.69mmol)およびピペリジン(0.76mL、7.7mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。6時間後、その反応混合物を放置して室温に冷却した。その混合物を真空下で蒸発させ、残留物をEtOAcに溶解した。この溶液を希HOAc水溶液、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた黄色の固体をMeOH/DCMに溶解し、シリカゲルに吸着させ、30% EtOAc/DCMで溶離するクロマトグラフに付した。化合物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、2.17g(86%)の表題化合物を黄色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.1(M−H)
【0171】
段階4:5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(1.00g、2.78mmol)をTHF(15mL)およびHO(10mL)に溶解した。その溶液に、塩化コバルトの小さな結晶を添加し、その後、2,2’−ビピリジン(98mg、0.63mmol)を添加した。NaBHを、青色が持続するまで、少しずつ添加した。その色は徐々に消えたが、ホウ化水素およびHOAcを少しずつ添加することによって繰返しそれを再生させた。HPLC分析が、反応が完了したことを示したら、その反応混合物をEtOAcとHOとで分配した。水性相のpHが約6になるまで、HOAcを添加した。その水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、20% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.72g(72%)の表題化合物を白色の固体として得た。この材料を、10−20% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに再び付した。C1816FNOSについてのMS(ESI−) m/z 360.1(M−H)
【0172】
段階5:5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
DCM(15mL)中の5−{4−[2−(3−フルオロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.62g、1.70mmol)の攪拌溶液にDMSO(0.5mL)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。五酸化リン(0.49g、1.72mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(1.1mL、7.72mmol)を添加した。その反応混合物を放置してゆっくりと室温に温めた。2時間後、HPLCは、反応が完了したことを示す。水を添加し、相を分離した。水性相のpHを2M NaOHで約7に調整し、その後、水性相をEtOAcで抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた白色の固体を、10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.25g(40%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1814FNOSについてのMS(ESI−) m/z 358.0(M−H)
【0173】
実施例5:5−{4−[2−(3−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0174】
【化10】

段階1:2−(3−メトキシフェニル)オキシラン
0℃でジオキサン(33mL)およびHO(78mL)中の3−ビニルアニソール(5.0g、37.0mmol)および酢酸(2.1mL、37.0mmol)の溶液にN−ブロモスクシンイミド(7.30g、41.0mmol)を3回で添加した。その反応物を放置して室温に温め、その後、2M NaOH(50mL)を添加した。その反応物を室温で一晩、攪拌させておいた。その後、その反応混合物を水とEtOAcとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させて、5.60g(100%)の表題化合物をわずかに色の付いた油として得た。
【0175】
段階2:4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンズアルデヒド
トルエン(65mL)中の2−(3−メトキシフェニル)オキシラン(5.60g、37.0mmol)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(6.80g、5.60mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その攪拌混合物を78℃で一晩加熱した。その反応混合物を放置して室温に冷却し、EtOAc(2x150mL)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油を、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。より高いRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.86g(18%)の表題化合物を透明無色の油として得た。より低いRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.90g(9%)の位置異性体をほぼ無色の油として得た。
【0176】
段階3:5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
無水EtOH(50mL)中の4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンズアルデヒド(1.76g、6.46mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(0.83g、7.11mmol)およびピペリジン(0.70mL、7.11mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。反応物を一晩還流させ、その後、真空下で蒸発させた。残留物をEtOAcに溶解し、この溶液を水(HOAcでpHを約5−6に調整したもの)、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、シリカゲルに吸着させた。20−30% EtOAc/DCMでのクロマトグラフィーの後、化合物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.38g(58%)の表題化合物を黄色の固体として得た。C1917NOSについてのMS(ESI−) m/z 370.1(M−H)
【0177】
段階4:5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(1.15g、3.10mmol)をTHF(15mL)に溶解した。HO(15mL)および十分なTHFを添加して透明な溶液を得た。塩化コバルトの小さな結晶を添加し、その後、2,2’−ビピリジン(109mg、0.70mmol)を添加した。NaBHを、青色が持続するまで、少しずつ添加した。色が徐々に消えたが、ホウ化水素およびHOAcを少しずつ添加することによって繰返しそれを再生させた。HPLC分析が、反応が完了したことを示したら、その反応混合物をEtOAcとHOとで分配した。水性相のpHが約6になるまで、HOAcを添加し、その後、その水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、20% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.82g(74%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1919NOSについてのMS(ESI−) m/z 372.0(M−H)
【0178】
段階5:5−{4−[2−(3−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
DCM(15mL)中の5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(3−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.62g、1.7mmol)の攪拌溶液にDMSO(0.5mL)を添加し、その溶液を0℃に冷却した。五酸化リン(0.52g、1.8mmol)を添加し、その後、トリエチルアミン(1.2mL、8.3mmol)を添加した。その反応物を放置してゆっくりと室温に温めた。2時間後、水を添加し、相を分離した。水性相のpHを2M NaOHで約7に調整した。その水性相をEtOAcで抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた白色の固体を、10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.33g(54%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1917NOSについてのMS(ESI+) m/z 372.0(M+H)。C1917NOSについてのMS(ESI−) m/z 370.1(M−H)
【0179】
実施例6:5−{4−[2−(2−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製。
【0180】
【化11】

段階1:2−(2−メトキシフェニル)オキシランの調製
0℃でジオキサン(33mL)およびHO(78mL)中の2−ビニルアニソール(5.0g、0.037mol)および酢酸(2.1mL、37.0mmol)の溶液にN−ブロモスクシンイミド(7.30g、40.1mmol)を3回で添加した。その反応物を放置して室温に温め、1時間後、2M NaOH(50mL)を添加した。その反応物を室温で一晩、攪拌させておいた。その反応混合物を水とEtOAcとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させて、7.56gのわずかに色の付いた油を得た。これをジオキサンに溶解し、2N NaOHを添加し、その反応物を室温で一晩攪拌した。水性処理を繰り返すことによって、5.60gの表題化合物をほぼ無色の油として得た。
【0181】
段階2:4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンズアルデヒドの調製
トルエン(65mL)中の2−(2−メトキシフェニル)オキシラン(5.60g、37.3mmol)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(6.80g、56.0mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その攪拌混合物を78℃で一晩加熱した。その反応物を放置して室温に冷却し、その後、それをEtOAc(2x150mL)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡色の油をシリカゲルに吸着させ、30−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。2つの大きなスポットが存在する。高いほうのRfスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.71g(17%)の位置異性体を褐色の油として得た。低いほうのRスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、2.05g(20%)の表題化合物を黄色の固体として得た。
【0182】
段階3:(5Z)−5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
無水EtOH(50mL)中の4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンズアルデヒド(1.71g、6.28mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(0.81g、6.91mmol)およびピペリジン(0.68mL、6.9mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させた。その反応物を一晩還流させ、その後、真空下で蒸発させた。残留物をEtOAcに溶解し、この溶液をHOAc水溶液(pH5−6)、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。その残留物をシリカゲルに吸着させ、20−40% EtOAc/DCMで溶離するシリカゲルでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.87g(80%)の表題化合物を淡黄色の固体として得た。C1917NOSについてのMS(ESI−) m/z 370.1(M−H)
【0183】
段階4:5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
(5Z)−5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(1.00g、2.69mmol)をTHF(20mL)に溶解した。水(20mL)を添加し、その後、十分な追加のTHFを添加して、透明な溶液を得た。塩化コバルトの小さな結晶を添加し、その後、2,2’−ビピリジン(95mg、0.61mmol)を添加した。その反応混合物を0℃に冷却した。NaBHを、青色が持続するまで、少しずつ添加した。その色は徐々に消えたが、ホウ化水素およびHOAcを少しずつ添加することによって繰返しそれを再生させた。HPLCが、反応が完了したことを示したら、その反応混合物をEtOAcとHOとで分配した。水性相のpHが約6になるまで、HOAcを添加し、その水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、20% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.63g(63%)の表題化合物を白色の固体として得た。C1919NOSについてのMS(ESI−) m/z 372.1(M−H)
【0184】
段階5:5−{4−[2−(2−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
0℃でDCM(8mL)中の五酸化リン(0.30g、1.10mmol)の攪拌溶液に、DCM(8mL)中の5−{4−[2−ヒドロキシ−2−(2−メトキシフェニル)エトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.20g、0.54mmol)の溶液を添加し、その後、ジメチルスルホキシド(0.20mL、2.80mmol)を添加した。15分間攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.28mL、1.60mmol)を添加した。45分後、その反応混合物を冷飽和NaHCOに投入し、EtOAc(x2)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、0−10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、175mg(88%)の表題化合物を淡黄色の固体として得た。C1917NOSについてのMS(ESI−) m/z 370.1(M−H)
【0185】
実施例7:5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
【0186】
【化12】

段階1:2−(3−クロロフェニル)オキシラン
0℃でジオキサン(33mL)およびHO(78mL)中のm−クロロスチレン(5.70g、41.0mmol)および酢酸(2.33mL、40.9mmol)の溶液にN−ブロモスクシンイミド(8.02g、45.0mmol)を3回で添加した。その反応物を放置して室温に温めた。4時間後、2N NaOH(60mL)を添加し、その反応物を室温で一晩、攪拌させておいた。その反応混合物を水とEtOAcとで分配し、水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させて、6.20gのわずかに色の付いた油を得、それをさらに精製せずに使用した。
【0187】
段階2:4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンズアルデヒド
トルエン(65mL)中の2−(3−クロロフェニル)オキシラン(6.20g、40.0mmol;)の攪拌溶液に、4−ヒドロキシベンズアルデヒド(7.30g、60.0mmol)、1M NaOH(65mL)およびPEG4000(ポリエチレングリコール、0.85g)を添加し、その攪拌混合物を78℃で3時間加熱した。その反応物を放置して室温に冷却し、その後、EtOAc(2x150mL)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。得られた淡褐色の油をシリカゲルに吸着させ、25−40% EtOAc/ヘキサンで溶離するクロマトグラフに付した。2つの大きなスポットが存在する。高いほうのRfスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.80g(10%)の所望の生成物を無色の油として得た。低いほうのRfスポットを含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.95g(8%)の位置異性体をほぼ無色の油、44B、として得た。多少の出発エポキシド(2.85g)も回収された。
【0188】
段階3:5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
無水EtOH(50mL)中の4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンズアルデヒド(1.08g、3.90mmol)の攪拌溶液に、2,4−チアゾリジンジオン(0.50g、4.29mmol)およびピペリジン(0.42mL、4.3mmol)を添加し、得られた溶液を加熱して還流させ、その後、一晩、室温で攪拌した。その反応混合物を真空下で蒸発させ、残留物をEtOAcに溶解した。この溶液をHOAc水溶液(pH5−6)、ブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物をシリカゲルに吸着させ、10−20% EtOAc/DCMで溶離するクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、1.31g(89%)の生成物を淡黄色の固体として得た。C1814ClNOSについてのMS(ESI+) m/z 375.0(M+H)。C1814ClNOSについてのMS(ESI−) m/z 374.1(M−H)
【0189】
段階4:5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン
5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジリデン}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.74g、2.00mmol)をTHF(20mL)に溶解した。水(20mL)を添加し、その後、すべての固体が溶解するまで、さらなるTHFを添加した。塩化コバルトの小さな結晶を添加し、その後、2,2’−ビピリジン(69mg、0.44mmol)を添加した。その反応混合物を0℃に冷却した。NaBHを、青色が持続するまで、少しずつ添加した。その色は徐々に消えたが、ホウ化水素およびHOAcを少しずつ添加することによって繰返しそれを再生させた。HPLCが、反応が完了したことを示したら、その反応混合物をEtOAcとHOとで分配した。水性相のpHが約6になるまで、HOAcを添加し、その後、その水性相をEtOAcで抽出した。併せた有機相をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、0−10% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、0.44g(59%)の粘着性黄色固体を得た。C1816ClNOSについてのMS(ESI−) m/z 376.1(M−H)
【0190】
段階5:5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
0℃でDCM(8mL)中の五酸化リン(0.38g、1.30mmol)の攪拌溶液に、DCM(8mL)中の5−{4−[2−(3−クロロフェニル)−2−ヒドロキシエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオン(0.25g、0.66mmol)の攪拌溶液を添加し、その後、ジメチルスルホキシド(0.23mL、3.30mml)を添加した。15分間攪拌した後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.34mL、2.00mmol)を添加した。45分後、その反応物を冷飽和NaHCOに注ぎ、その混合物をEtOAc(x2)で抽出した。併せた抽出物をブラインで洗浄し、乾燥させ(NaSO)、濾過し、真空下で蒸発させた。残留物を、0−15% EtOAc/DCMで溶離する小型シリカゲルカラムでのクロマトグラフに付した。生成物を含有する画分を併せ、真空下で蒸発させて、117mg(47%)の白色の固体を得た。C1814ClNOSについてのMS(ESI−) m/z 374.1(M−H)
【0191】
実施例8:5−{4−[2−(2−クロロフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
この表題化合物は、2−(2−クロロフェニル)オキシランなどの適切な出発原料を使用して、実施例7において説明したように調製することができる。
【0192】
実施例9:5−{4−[2−(4−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ]ベンジル}−1,3−チアゾリジン−2,4−ジオンの調製
この表題化合物は、2−(4−メトキシフェニル)オキシランなどの適切な出発原料を使用して、実施例5および6に記載したように調製した。C1917NOSについてのMS(ESI−)370.2 m/z(M−1)。
【0193】
実施例10:アッセイ
低減されたPPARγ受容体活性化を測定するためのアッセイ
PPARγ受容体の活性は、抗糖尿病性およびインスリン増感性の薬効を有し得る分子を選択するための選択基準になると一般に考えられているが、本発明は、この受容体の活性化がネガティブ選択基準になるだろうことを発見した。分子は、PPARγの、選択的なだけでなく、低減された活性化を有するため、この化合物空間から選択されることとなろう。PPARγ受容体のトランス活性化についてインビトロで行ったアッセイにおいて、最適な化合物は、ピオグリタゾンと比較して少なくとも10倍低減された効力、およびロシグリタゾンによって生じた全活性化の50%未満を有した。前記アッセイは、先ず、その分子とPPARγのリガンド結合ドメインとの直接相互作用の評価によって行う。これは、ロシグリタゾンを陽性対照として使用して蛍光により直接相互作用を測定する市販の相互作用キットで行うことができる。さらなるアッセイは、Lehmannらによって記載されたもの[Lehmann JM,Moore LB,Smith−Oliver TA:An Antidiabetic Thiazolidinedione is a High Affinity Ligand for Peroxisome Proliferator−activated Receptor(PPAR) J.Biol.Chem.(1995)270:12953]に類似した方法で行うことができるが、Vosperら[Vosper,H.,Khoudoli,GA,Palmer,CN(2003)The peroxisome proliferators activated receptor d is required for the differentiation of THP−1 moncytic cells by phorbol ester.Nuclear Receptor 1:9]の場合のようにルシフェラーゼをレポーターとして使用することとなろう。化合物ストックをDMSOに溶解し、0.1から100μMの最終濃度で細胞培養物に添加し、(ガラクトシダーゼをコードする)対照プラスミドの発現によって補正してレポーター遺伝子(ルシフェラーゼ)の誘導として相対活性化を計算することとなろう。ピオグリタゾンおよびロシグリタゾンを、上で説明したような参照化合物として使用することとなろう。
【0194】
インビトロでPPARγ受容体の低減された活性を示すことに加えて、本化合物は、動物において前記受容体の有意な活性化を生じさせないであろう。インビボでインスリン増感作用を完全に果たすように投与された化合物(下記参照)は、P2、肝臓における異所性脂肪生成についてのバイオマーカー[Matsusue K,Haluzik M,LambertG,Yim S−H, Oksana Gavrilova O,Ward JM,Brewer B,Reitman ML,Gonzalez FJ.(2003)Liver−specific disruption of PPAR in leptin−deficient mice improves fatty liver but aggravates diabetic phenotypes.J.Clin.Invest.;111:737]、の発現によって測定したとき、これらの条件下でP2発現を増加させるピオグリタゾンおよびロシグリタゾンとは対照的に、肝臓におけるPPARγの活性化を増加させないであろう。
【0195】
インスリン増感性および抗糖尿病性の薬効は、以前に報告されているように[Hofmann,C.,Lornez,K.,and Colca,J.R.(1991).Glucose transport deficiency corrected by treatment with the oral anti−hyperglycemic agent Pioglitazone.Endocrinology,129:1915−1925]、KKAマウスにおいて測定する。化合物を1%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.01% Tween 20中で調合し、毎日、経口強制栄養によって投与する。1日1回、4日の治療の後、後眼窩洞から治療血液サンプルを取り、Hofmannらに記載されているようにグルコース、トリグリセリドおよびインスリンについて分析する。グルコース、トリグリセリドおよびインスリンの最大低下の少なくとも80%を生じさせる化合物の用量は、これらのマウスの肝臓におけるP2の発現を有意に増加させないであろう。
【0196】
PPARγ受容体活性化の測定
PPAR−LBD/Fluoromone PPAR Green複合体と結合する試験化合物の能力を測定する市販の結合アッセイ(カリフォルニア州、カールズバッドのInvitrogen Corporation)を用いて、PPARγに結合する本発明の幾つかの例示的化合物の能力を測定した。これらのアッセイを3回にわたって行い、それぞれのアッセイには、それぞれの被験化合物濃度で4つの別のウエルを使用した(4重反復試験)。データは、3回の実験から得た値の平均およびSEMである。それぞれの実験においてロシグリタゾンを陽性対照として使用した。0.1−100マイクロモルにわたる、示されている濃度で化合物を添加した。
【0197】
本発明の例示的化合物で治療した糖尿病KKAyマウスにおけるグルコース、インスリン、およびトリグリセリド
以前に報告されたように[Hofmann,C.,Lornez,K.,and Colca,J.R.(1991).Glucose transport deficiency corrected by treatment with the oral anti−hyperglycemic agent Pioglitazone.Endocrinology,129:1915−1925]、KKAマウスにおいてインスリン増感性および抗糖尿病性の薬効を測定する。化合物を1%カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび0.01% Tween 20中で調合し、毎日、経口強制栄養によって投与する。1日1回、4日の治療の後、後眼窩洞から血液サンプルを取り、Hofmannらに記載されているようにグルコース、トリグリセリドおよびインスリンについて分析する。グルコース、トリグリセリドおよびインスリンの最大低下の少なくとも80%を生じさせる化合物の用量は、これらのマウスの肝臓におけるP2の発現を有意に増加させないであろう。
【0198】
化合物を懸濁によって調合し、KKAyマウスに93mg/kgで4日間、経口投与した。化合物を最初にDMSOに溶解し、その後、7−10%DMSO、1%メチルカルボキシセルロースナトリウムおよび0.01% Tween 20を含有する水性懸濁液に入れた。第5日に、マウスを絶食させ、最終投与のおよそ18時間後に血液サンプルを取った。標準的なアッセイ法によってパラメーターを測定した。データは、平均およびSEM N=6−12マウスである。
【表B】

【0199】
実施例1、2、3、4および5の化合物は、約5ng/mL未満の血漿インスリンレベルを示し、ならびに実施例6は、約15ng/mLと20ng/mLの間の血漿インスリンレベルを示し;実施例1、2、3、4および5は、約100mg/dLと200mg/dLの間の血漿トリグリセリドレベルを示し、ならびに実施例6は、約300mg/dLと400mg/dLの間の血漿トリグリセリドレベルを示し;実施例1、2、3、4および5は、約350mg/dLと425mg/dLの間の血漿グルコースレベルを示し、ならびに実施例6は、約450mg/dLと525mg/dLの間の血漿グルコースレベルを示した。
【0200】
本発明のPPARγ節約化合物は、核転写因子の直接的で部分的な活性化に起因する副作用を制限することにより、糖尿病およびメタボリックシンドロームなどの代謝性炎症によって引き起こされる疾病の治療に、より有効であろう。
【0201】
本発明の化合物は、低減されたPPARγ活性化を示すため、これらの化合物は、異なるメカニズムによってGLP1またはインスリンの作用または分泌を増加させるように機能する、抗糖尿病活性を有する他の化合物、例えばメトホルミン、DDP−4阻害剤または他の抗糖尿病薬、との併用に適すると予測される。具体的に言うと、低減されたPPARγ相互作用のため、これらの化合物は、特に好適には脂質低下性スタチン、例えばアトルバスタチンまたはこの種の他のもの、と併用すると、代謝性炎症性疾患に関連した異常脂質血症の治療にも有用であろう。式Iの化合物と他の抗糖尿病化合物との併用は、PPAR活性化化合物との併用より糖尿病の治療に有効であろうということも予測される。それらは、体積拡大、浮腫および骨量減少を含み得るPPARγ活性化に随伴する副作用を回避するであろうからである。
【0202】
他の実施形態
本発明を、発明を実施するための形態に関連して説明したが、上の説明が添付の特許請求の範囲により定義される、本発明の範囲を例証するためのものであり、制限するためのものではないことは、理解されるはずである。他の態様、利点および変形は、後続の特許請求の範囲内である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化13】

(式中、
およびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、該脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されており;
は、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されている脂肪族であり、およびR’は、Hであるか、RとR’は、一緒にオキソを形成し;
は、Hであり;ならびに
環Aは、フェニルである)
の化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を患者に投与することを含む高血圧の治療方法。
【請求項2】
が、Hである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
が、H、メチル、メトキシ、エトキシ、−O−イソプロピル、−OCHFまたは−OCFである、請求項1−2に記載の方法。
【請求項4】
が、Hである、請求項1−2に記載の方法。
【請求項5】
が、H、ハロまたはアルコキシである、請求項1−4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
が、Hである、請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
が、ハロである、請求項1−5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
が、前記フェニル環のパラまたはメタ位にある、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
が、前記フェニル環のメタ位にある、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
が、FまたはClである、請求項8−9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
が、アルコキシである、請求項1−5に記載の方法。
【請求項12】
が、前記フェニル環のメタまたはオルト位にある、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
が、前記フェニル環のメタ位にある、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
が、メトキシ、エトキシ、または−O−イソプロピルである、請求項12−13に記載の方法。
【請求項15】
が、−OCHFまたは−OCFである、請求項12−13に記載の方法。
【請求項16】
R’が、Hである、請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
が、ヒドロキシである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
およびR’が、一緒にオキソを形成する、請求項1−15のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
式Iの化合物が、
【化14】

である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記組成物が、利尿薬、スタチン、アンギオテンシンII受容体遮断薬、レニン阻害剤、ベータアドレナリン遮断薬、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項1−19に記載の方法。
【請求項21】
請求項1−19に記載の化合物を含む医薬組成物を患者に投与することを含む、炎症性疾患の治療方法。
【請求項22】
前記組成物が、糖質コルチコイドアゴニストをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記糖質コルチコイドアゴニストが、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレジゾン(predisone)、プレドニゾロン、メチルプレドニゾン、ベタメタゾン、およびトリアムシノロン(triameclinolone)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記炎症性疾患が、関節リウマチ、狼瘡、重症筋無力症、筋ジストロフィー、脈管炎、慢性閉塞性肺疾患、炎症性腸疾患、多発性硬化症(multiple schlerosis)、急性アレルギー反応、および移植片拒絶反応である、請求項21−23に記載の方法。
【請求項25】
請求項1−19に記載の化合物を含む医薬組成物。
【請求項26】
利尿薬、スタチン、アンギオテンシンII受容体遮断薬、レニン阻害剤、ベータアドレナリン遮断薬、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
糖質コルチコイドアゴニストをさらに含む、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項28】
前記糖質コルチコイドアゴニストが、コルチゾン、ヒドロコルチゾン、プレジゾン(predisone)、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、およびトリアムシノロン(triameclinolone)である、請求項26に記載の医薬組成物。
【請求項29】
請求項1−19に記載の化合物を含む医薬組成物を患者に投与することを含む糖尿病の治療方法。
【請求項30】
式Iの化合物:
【化15】

(式中、
およびRのそれぞれは、独立して、H、ハロ、脂肪族およびアルコキシから選択され、ここで、該脂肪族およびアルコキシは、1−3個のハロで場合によっては置換されており;
は、ハロ、ヒドロキシ、または場合によっては置換されている脂肪族であり、およびR’は、Hであるか、RとR’は、一緒にオキソを形成し;
は、Hであり;ならびに
環Aは、フェニルである)。
【請求項31】
およびR’が、一緒にオキソを形成する、請求項30に記載の化合物。
【請求項32】
5−(4−(2−(2−クロロフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−(3−クロロフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−(2−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−(3−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−(3−メトキシフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−オキソ−2−フェニルエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;
5−(4−(2−(4−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン;または
5−(4−(2−(2−フルオロフェニル)−2−オキソエトキシ)ベンジル)チアゾリジン−2,4−ジオン
から選択される、請求項31に記載の化合物。

【公表番号】特表2010−539171(P2010−539171A)
【公表日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−524882(P2010−524882)
【出願日】平成20年9月15日(2008.9.15)
【国際出願番号】PCT/US2008/010723
【国際公開番号】WO2009/038681
【国際公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(508279443)メタボリック ソリューションズ ディベロップメント カンパニー (10)
【Fターム(参考)】