説明

高血圧症治療に有用な複合体

【課題】 優れた高血圧症治療薬の提供。
【解決手段】 オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗作用、カルシウムチャンネル拮抗作用、血圧降下作用、血管拡張作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、利尿作用、腎障害抑制作用、過酸化脂質生成阻害作用、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)モデルラットの腎症、高脂血症および高血圧症の抑制作用、および、腎炎抑制作用を示す、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体;
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を含有する医薬、好適には、高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための医薬、より好適には、高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための医薬、最も好適には、高血圧症の治療もしくは予防のための医薬;ならびに、
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、アンジオテンシンII受容体拮抗剤およびカルシウムチャンネル拮抗剤は、高血圧症または心疾患等の治療もしくは予防のための医薬として広く用いられている。レニン−アンジオテンシン系の抑制薬であるアンジオテンシンII受容体拮抗剤は、レニン依存性の高血圧症に特に有効であり、心血管や腎臓の障害に対して保護作用を示す。また、カルシウムチャンネル拮抗剤は、血管拡張作用に加えナトリウム利尿作用を有することから、体液貯留性(レニン非依存性)の高血圧症にも有効である。したがって、アンジオテンシンII受容体拮抗剤およびカルシウムチャンネル拮抗剤から形成される複合体は、両薬剤の有する利点を併せ持ち、病因によらず安定かつ十分な高血圧症の治療もしくは予防効果を示すことが期待される。
【0003】
4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]イミダゾール−5−カルボン酸(以下、オルメサルタンという)またはその薬理上許容されるエステル、特に、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル 4−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)−2−プロピル−1−[2’−(1H−テトラゾール−5−イル)ビフェニル−4−イルメチル]イミダゾール−5−カルボキシレート(以下、オルメサルタンメドキソミルという)は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗剤であり、高血圧症および心疾患等の治療もしくは予防のための医薬として有用であることが知られている(特公平7−121918、USP5616599)。また、(±)−2−アミノ−1,4−ジヒドロ−6−メチル−4−(3−ニトロフェニル)−3,5−ピリジンジカルボン酸 3−(1−ジフェニルメチルアゼチジン−3−イル)エステル 5−イソプロピルエステル(以下、アゼルニジピンという)は、優れたカルシウムチャンネル拮抗剤であり、高血圧症および心疾患等の治療もしくは予防のための医薬として有用であることが知られている(特公平3−31715、USP4772596)。
【0004】
アンジオテンシンII受容体拮抗剤およびカルシウムチャンネル拮抗剤から形成される塩は、WO03/035046に記載されているが、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される塩または複合体は、これまで知られていない。
【特許文献1】特公平7−121918号公報
【特許文献2】米国特許第5616599号明細書
【特許文献3】特公平3−31715号公報
【特許文献4】米国特許第4772596号明細書
【特許文献5】国際公開第03/035046号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
オルメサルタンの薬理上許容されるエステルは、イミダゾール環上にエステル基を有するため加水分解等を受けやすく、その安定性はpHに依存して変化しやすいことが理解される。また、アゼルニジピンの保存安定性は、pHに依存して変化することが知られている(WO01/76958)。以上より、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体の製造においては、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルの安定性がアゼルニジピンの有する塩基性基(アゼチジニル基、アミノ基およびジヒドロピリジル基)により影響を受け、あるいは、構成成分であるアゼルニジピンの安定性がオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルの有する酸性基(1H−テトラゾール−5−イル基および/またはカルボキシル基)により影響を受けることが予想される。したがって、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を製造するためには、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンの安定性に影響を与えずに複合体を生成するのに適した製造条件を見出す必要があり、当該複合体の製造には困難性があると考えられる。
【0006】
本発明者等は、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体について鋭意研究を行った結果、以下のことを見出した:
(i)工夫された製造条件下においてオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体が製造され得る;
(ii)当該複合体は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗作用、カルシウムチャンネル拮抗作用、血圧降下作用、血管拡張作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、利尿作用、腎障害抑制作用、過酸化脂質生成阻害作用、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)モデルラットの腎症、高脂血症および高血圧症の抑制作用、および、腎炎抑制作用を示す;ならびに、
(iii)当該複合体は、医薬、好適には、高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための医薬、より好適には、高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための医薬、最も好適には、高血圧症の治療もしくは予防のための医薬として有用である。
本発明はこれらの知見に基づいて完成された。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗作用、カルシウムチャンネル拮抗作用、血圧降下作用、血管拡張作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、利尿作用、腎障害抑制作用、過酸化脂質生成阻害作用、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)モデルラットの腎症、高脂血症および高血圧症の抑制作用、および、腎炎抑制作用を示す、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体;
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を含有する医薬、好適には、高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための医薬、より好適には、高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための医薬、最も好適には、高血圧症の治療もしくは予防のための医薬;ならびに、
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体の製造方法を提供する。
【0008】
本発明は、特に、
(1)オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体、
(2)オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルがオルメサルタンメドキソミルである(1)に記載された複合体、
(3)オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンのモル比が1:1である(2)に記載された複合体、
(4)銅のKα1線の照射で得られる粉末X線回折図において、面間隔が15.2、13.6、6.38、5.82、4.63、および、4.21オングストロームに主要なピークを示す(2)または(3)に記載された複合体、
(5)複合体が塩である(1)乃至(4)のいずれかに記載された複合体、
(6)複合体が塩の結晶である(1)乃至(4)のいずれかに記載された複合体、
(7)複合体が共晶である(1)乃至(4)のいずれかに記載された複合体、
(8)以下の工程を含む(1)乃至(7)のいずれかに記載された複合体の製造方法:
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンの不活性溶媒溶液を冷却下にて静置することにより複合体を析出させる工程、
(9)以下の工程を含む(1)乃至(7)のいずれかに記載された複合体の製造方法:
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンの不活性溶媒溶液から溶媒を蒸散させることにより複合体を析出させる工程、
(10)(1)乃至(7)のいずれかに記載された複合体を有効成分として含有する医薬、
(11)高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための(10)に記載された医薬、または、
(12)高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための(10)に記載された医薬、および、
(13)高血圧症の治療もしくは予防のための(10)に記載された医薬
を提供する。
【0009】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体において、構成成分であるオルメサルタンは、以下の構造式(I)を有する化合物であり、構成成分であるアゼルニジピンは、以下の構造式(II)を有する化合物である。
【0010】
【化1】


【0011】
本発明において、オルメサルタンの薬理上許容されるエステルは、オルメサルタンの有するカルボキシル基がエステル基に変換された化合物を意味する。薬理上許容されるエステルを形成するエステル基は、通常知られているエステル基であれば特に限定はなく、好適には、温血動物の生体内で加水分解のような生物学的方法により開裂してカルボキシル基を生成し得るエステル基である。当該エステル基を構成する基(当該エステル基を−COORで表した場合にRで表される基)は、例えば、メトキシメチル、1−エトキシエチル、1−メチル−1−メトキシエチル、1−(イソプロポキシ)エチル、2−メトキシエチル、2−エトキシエチル、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、イソプロポキシメチル、ブトキシメチル、t−ブトキシメチルのような(C1−C4アルコキシ)−(C1−C4アルキル)基;2−メトキシエトキシメチルのようなC1−C4アルコキシ化(C1−C4アルコキシ)−(C1−C4アルキル)基;フェノキシメチルのような(C6−C10アリールオキシ)−(C1−C4アルキル)基;2,2,2−トリクロロエトキシメチル、ビス(2−クロロエトキシ)メチルのようなハロゲン化(C1−C4アルコキシ)−(C1−C4アルキル)基;メトキシカルボニルメチルのような(C1−C4アルコキシカルボニル)−(C1−C4アルキル)基;シアノメチル、2−シアノエチルのようなシアノ(C1−C4アルキル)基;メチルチオメチル、エチルチオメチルのようなC1−C4アルキルチオメチル基;フェニルチオメチル、ナフチルチオメチルのようなC6−C10アリールチオメチル基;2−メタンスルホニルエチル、2−トリフルオロメタンスルホニルエチルのようなハロゲンで置換されてもよい(C1−C4アルキルスルホニル)−(C1−C4低級アルキル)基;2−ベンゼンスルホニルエチル、2−トルエンスルホニルエチルのような(C6−C10アリールスルホニル)−(C1−C4アルキル)基;ホルミルオキシメチル、アセトキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ピバロイルオキシメチル、バレリルオキシメチル、イソバレリルオキシメチル、ヘキサノイルオキシメチル、1−ホルミルオキシエチル、1−アセトキシエチル、1−プロピオニルオキシエチル、1−ブチリルオキシエチル、1−ピバロイルオキシエチル、1−バレリルオキシエチル、1−イソバレリルオキシエチル、1−ヘキサノイルオキシエチル、2−ホルミルオキシエチル、2−アセトキシエチル、2−プロピオニルオキシエチル、2−ブチリルオキシエチル、2−ピバロイルオキシエチル、2−バレリルオキシエチル、2−イソバレリルオキシエチル、2−ヘキサノイルオキシエチル、1−ホルミルオキシプロピル、1−アセトキシプロピル、1−プロピオニルオキシプロピル、1−ブチリルオキシプロピル、1−ピバロイルオキシプロピル、1−バレリルオキシプロピル、1−イソバレリルオキシプロピル、1−ヘキサノイルオキシプロピル、1−アセトキシブチル、1−プロピオニルオキシブチル、1−ブチリルオキシブチル、1−ピバロイルオキシブチル、1−アセトキシペンチル、1−プロピオニルオキシペンチル、1−ブチリルオキシペンチル、1−ピバロイルオキシペンチル、1−ピバロイルオキシヘキシルのような(C1−C7脂肪族アシルオキシ)−(C1−C4アルキル)基;シクロペンチルカルボニルオキシメチル、シクロヘキシルカルボニルオキシメチル、1−シクロペンチルカルボニルオキシエチル、1−シクロヘキシルカルボニルオキシエチル、1−シクロペンチルカルボニルオキシプロピル、1−シクロヘキシルカルボニルオキシプロピル、1−シクロペンチルカルボニルオキシブチル、1−シクロヘキシルカルボニルオキシブチルのような(C5−C6シクロアルキルカルボニルオキシ)−(C1−C4アルキル)基;ベンゾイルオキシメチルのような(C6−C10アリールカルボニルオキシ)−(C1−C4アルキル)基;メトキシカルボニルオキシメチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(メトキシカルボニルオキシ)ブチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)ペンチル、1−(メトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、エトキシカルボニルオキシメチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(エトキシカルボニルオキシ)ブチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)ペンチル、1−(エトキシカルボニルオキシ)ヘキシル、プロポキシカルボニルオキシメチル、1−(プロポキシカルボニルオキシ)エチル、1−(プロポキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(プロポキシカルボニルオキシ)ブチル、イソプロポキシカルボニルオキシメチル、1−(イソプロポキシカルボニルオキシ)エチル、1−(イソプロポキシカルボニルオキシ)ブチル、ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(ブトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(ブトキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(ブトキシカルボニルオキシ)ブチル、イソブトキシカルボニルオキシメチル、1−(イソブトキシカルボニルオキシ)エチル、1−(イソブトキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(イソブトキシカルボニルオキシ)ブチル、t−ブトキシカルボニルオキシメチル、1−(t−ブトキシカルボニルオキシ)エチル、ペンチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(ペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(ペンチルオキシカルボニルオキシ)プロピル、ヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(ヘキシルオキシカルボニルオキシ)プロピルのような(C1−C6アルコキシカルボニルオキシ)−(C1−C4アルキル)基;シクロペンチルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(シクロペンチルオキシカルボニルオキシ)ブチル、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシメチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)エチル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)プロピル、1−(シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ)ブチルのような(C5−C6シクロアルキルオキシカルボニルオキシ)−(C1−C4アルキル)基;(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル、(5−エチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル、(5−プロピル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル、(5−イソプロピル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル、(5−ブチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチルのような[5−(C1−C4アルキル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチル基;(5−フェニル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル、[5−(4−メチルフェニル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチル、[5−(4−メトキシフェニル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチル、[5−(4−フルオロフェニル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチル、[5−(4−クロロフェニル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチルのような[5−(C1−C4アルキル、C1−C4アルコキシもしくはハロゲンで置換されてもよいフェニル)−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル]メチル基;または、フタリジル、ジメチルフタリジル、ジメトキシフタリジルのようなC1−C4アルキルもしくはC1−C4アルコキシで置換されてもよいフタリジル基であり得、好適には、ピバロイルオキシメチル基、フタリジル基または(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基であり、より好適には、(5−メチル−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基である。
【0012】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンを構成成分として含有する固体であって、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンを機械的または物理的に混合したものと区別されるものであれば特に限定はなく、好適には、塩または共晶であり、より好適には、塩である。
【0013】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体において、構成成分であるオルメサルタンは、2個の酸性基(1H−テトラゾール−5−イル基およびカルボキシル基)を有し、構成成分であるオルメサルタンの薬理上許容されるエステルは、1個の酸性基(1H−テトラゾール−5−イル基)を有し、構成成分であるアゼルニジピンは、3個の塩基性基(アゼチジニル基、アミノ基およびジヒドロピリジル基)を有する。本発明のオルメサルタンおよびアゼルニジピンから形成される複合体が塩である場合、構成成分であるオルメサルタンおよびアゼルニジピンのモル比は、1:2、1:1、3:2、2:1、または、3:1であり得、好適には、1:1であり、その各々のモル比の構成成分で形成された塩は、本発明に包含される。本発明のオルメサルタンの薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体が塩である場合、構成成分であるオルメサルタンの薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンのモル比は、1:1、2:1または3:1であり得、好適には、1:1であり、その各々のモル比の構成成分で形成された塩は、本発明に包含される。本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体が共晶である場合、各構成成分のモル比に特に限定はなく、好適には、1:1である。その各々のモル比の構成成分で形成された共晶は、本発明に包含される。
【0014】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体において、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンには、光学異性体、幾何異性体および/または回転異性体が存在することがある。その各々の異性体またはそれらの混合物は、本発明の複合体の構成成分となり得る。
【0015】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、水和物または溶媒和物として存在することができ、その各々またはそれらの混合物は本発明に包含される。
【0016】
本発明において、オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、製造条件および結晶化条件により、複数の異なる内部構造および物理化学的性質を有する結晶(結晶多形)を生成することがあり得る。その各々の結晶またはそれらの混合物は、本発明に包含される。また、本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、アモルファス状の固体として生成することがあり得る。そのようなアモルファス状の固体は、本発明に包含される。
【0017】
本発明において、結晶とは、その内部構造が三次元的に原子または原子の集合した分子の規則正しい繰返しからなる固体を示し、そのような規則正しい内部構造を有さないアモルファス状(無定形)の固体とは区別される。ある固体が結晶であるか否かは、結晶学的に周知の方法(例えば、粉末X線結晶解析、示差走査熱量分析等)で調べることができる。例えば、ある固体について銅のKα1線の照射で得られるX線による粉末X線結晶解析を行い、そのX線回折図において明確なピークが観測される場合には、その固体は結晶であると決定される。異なるX線回折図を示す固体は、異なる結晶形を有する結晶であると決定される。また、X線回折図においてピークは観測されるがそのピークが明確でなく幅広い場合には、その固体は結晶化度の低い結晶であると決定され、そのような結晶化度の低い結晶は本発明の結晶に包含される。X線回折図において明確なピークが観測されない場合には、その固体はアモルファス状であると決定される。
【0018】
本発明において、共晶とは、溶液から同時に析出する2種以上の化合物の結晶の混合物をいい、2種以上の化合物の結晶を機械的または物理的に混合したものとは区別される。共晶においては構成成分である2種以上の化合物は一定の温度で同時に融解する。
【0019】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体において、オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、例えば、図1に示されるような、銅のKα1線(波長λ=1.54オングストローム)の照射で得られる粉末X線回折図において、面間隔dが15.2、13.6、6.38、5.82、4.63、および、4.21オングストロームに主要なピークを示すものであり得る。ここで主要なピークは、面間隔dが6.38オングストロームに示されるピークの強度を100としたときの相対強度が40以上のピークから選択される。図1において、面間隔dが15.2、13.6および6.38オングストロームに示されるピークは、オルメサルタンメドキソミルまたはアゼルニジピンの各々の粉末X線回折図には現われない複合体固有のピークである。図1の粉末X線回折図において、縦軸には回折強度[単位:カウント/秒(cps)]を示し、横軸には回折角度2θ[単位:度(°)]を示す。また、面間隔d[単位:オングストローム(Å)]は、式2dsinθ=nλにおいてn=1として算出することができる。
【0020】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンを各々単独で使用する場合に比較して、以下の利点を有する:
(i)アンジオテンシンII受容体拮抗剤の有する心血管や腎臓の障害に対する保護作用、および、カルシウムチャンネル拮抗剤の有するナトリウム利尿作用を併せ持つ;
(ii)上記(i)に記載された作用に基づき病因(レニン依存性またはレニン非依存性)によらず安定かつ十分な高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防効果を示す;ならびに、
(iii)各構成成分の相互作用により経口吸収性、血中濃度、体内動態、または、薬効の持続性が改善され、相加的なまたは相乗的な上記(ii)に記載された疾患の治療もしくは予防効果を示し得る。
【0021】
また、本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルあるいはアゼルニジピンを各々含有する別個の製剤を併用する場合に比較して、製剤製造上の労力の軽減および患者の服薬時における負担軽減の点で利点を有する。
【発明の効果】
【0022】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗作用、カルシウムチャンネル拮抗作用、血圧降下作用、血管拡張作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、利尿作用、腎障害抑制作用、過酸化脂質生成阻害作用、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)モデルラットの腎症、高脂血症および高血圧症の抑制作用、および、腎炎抑制作用を示し、溶解性、経口吸収性、血中濃度、体内動態、薬効の持続性、安全性、および、毒性の点で医薬品化合物として優れた性質を有する。したがって、本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、温血動物用(好適には、ヒト用)の医薬、好適には、高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための医薬、より好適には、高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための医薬、最も好適には、高血圧症の治療もしくは予防のための医薬として有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体において、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルは、特公平7−121918またはUSP5616599に記載された方法で製造することができ、構成成分であるアゼルニジピンは、特公平3−31715またはUSP4772596に記載された方法で製造することができる。
【0024】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、以下の方法により製造することができる:
(A−1)オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンを混合して加熱下にて不活性溶媒に溶解した後、室温まで冷却する;
(A−2)A−1工程で得られた溶液を冷却下にておよび閉鎖系にて静置する;
(A−3)A−2工程で得られた溶液を室温下にておよび開放系にて静置し、溶媒を蒸散させる;および、
(A−4)A−3工程で析出した固体を減圧下にて乾燥する。
上記工程において、必要に応じてA−2工程を省略することができるが、より安定な複合体を得るためにはA−2工程を行うことが好ましい。A−1工程の後に必要に応じて、複合体の析出を開始させるために種となる少量のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を加えることができ、少量の複合体を加えることが好ましい。
【0025】
また、本発明の複合体は、以下の方法によっても製造することができる。
(B−1)オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンを混合して加熱下にて不活性溶媒に溶解した後、室温まで冷却する;
(B−2)B−1工程で得られた溶液の溶媒の一部を減圧下にて留去する;
(B−3)B−2工程で得られた溶液を室温下にておよび開放系にて静置し、溶媒を蒸散させる;および、
(B−4)B−3工程で析出した固体に貧溶媒を加えて濾取する;および、
(B−5)B−4工程で得られた固体を減圧下にて乾燥する。
上記B−4工程に代えて、以下の工程を行なってもよい:
(B−4a)B−3工程で析出した固体を凍結乾燥する。
B−1工程の後に、必要に応じて種となる少量のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を加えることができ、少量の複合体を加えることが好ましい。
【0026】
A−1およびB−1工程で使用される不活性溶媒は、反応を阻害せず出発物質をある程度溶解し目的とする複合体を生成するものであれば特に限定はなく、好適には、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタンのようなエーテル類であり、より好適には、1,4−ジオキサンである。
【0027】
A−2工程における静置のための温度は、複合体が析出し始める温度であれば特に限定はなく、好適には、−50℃乃至0℃であり、より好適には、−20乃至0℃である。A−2工程における静置のための時間は、複合体が析出し始める時間であれば特に限定はなく、好適には、1乃至96時間であり、より好適には、12乃至72時間である。
【0028】
A−3工程における溶媒の蒸散は、常圧下から減圧下にて行うことができ、好適には、常圧下またはわずかな減圧下(例えば、わずかに減圧に調整されたドラフト中等)にて行われ、より好適には、常圧下にて行われる。A−3工程における室温は、好適には、10乃至30℃である。A−3工程における静置のための時間は、溶媒がほぼ全て蒸散する時間であれば特に限定はなく、好適には、1乃至48時間であり、より好適には、6乃至24時間である。A−3工程において、溶媒はほぼ全て蒸散すればよく、完全に蒸散する必要は無い。
【0029】
A−4工程またはB−5工程における乾燥は、通常50mmHg以下の減圧下にて行われ、好適には、5mmHg以下の減圧下にて行われる。A−4工程またはB−5工程における乾燥のための温度は、複合体が分解せず複合体中の残留溶媒がほぼ全て留去される温度であれば特に限定はなく、好適には、20乃至70℃であり、より好適には、40℃乃至60℃である。A−4工程またはB−5工程における乾燥のための時間は、複合体中の残留溶媒がほぼ全て留去される時間であれば特に限定はなく、好適には、12時間乃至20日間であり、より好適には、5日間乃至15日間である。
【0030】
B−2工程において、減圧留去後の溶媒量は、好適には、減圧留去前の溶媒量の1/10乃至1/2量であり、より好適には、1/4乃至1/2量である。
【0031】
B−3工程における溶媒の蒸散は、常圧下から減圧下にて行うことができ、好適には、常圧下またはわずかな減圧下(例えば、わずかに減圧に調整されたドラフト中等)にて行われ、より好適には、常圧下にて行われる。B−3工程における室温は、好適には、10乃至30℃である。B−3工程における静置のための時間は、溶媒がほぼ全て蒸散する時間であれば特に限定はなく、好適には、30分間乃至24時間であり、より好適には、1時間乃至12時間である。B−3工程において、溶媒はほぼ全て蒸散すればよく、完全に蒸散する必要は無い。
【0032】
B−4工程において使用される貧溶媒は、析出した固体を全くまたはほとんど溶解しない不活性溶媒であれば特に限定はなく、好適には、n−ヘキサン、n−ペンタン、石油エーテル、シクロヘキサンのような脂肪族炭化水素類であり、より好適には、n−ヘキサンである。
【0033】
B−4a工程における凍結乾燥のための時間は、複合体中の残留溶媒がほぼ全て留去される時間であれば特に限定はなく、好適には、1時間乃至5日間であり、より好適には、6時間乃至2日間である。
【0034】
上記各工程においては、構成成分であるオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルの安定性がアゼルニジピンの有する塩基性基(アゼチジニル基、アミノ基およびジヒドロピリジル基)により影響を受けず、あるいは、構成成分であるアゼルニジピンの安定性がオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルの有する酸性基(1H−テトラゾール−5−イル基および/またはカルボキシル基)により影響を受けない条件にコントロールされることが好ましい。
【0035】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を医薬として使用する場合には、それ自体(原末のまま)で投与することができ、あるいは、適宜の薬理学的に許容される、賦形剤、希釈剤等と混合して、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤もしくはシロップ剤等の製剤として経口的に、または、注射剤もしくは坐剤等の製剤として非経口的に(好適には、経口的に)投与することができる。
【0036】
これらの製剤は、賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、乳化剤、安定剤、矯味矯臭剤、希釈剤等の添加剤を用いて、周知の方法で製造される。
【0037】
賦形剤は、例えば、有機系賦形剤または無機系賦形剤であり得る。有機系賦形剤は、例えば、乳糖、白糖、葡萄糖、マンニトールもしくはソルビトールのような糖誘導体;トウモロコシデンプン、バレイショデンプン、α−澱粉、デキストリンのような澱粉誘導体;結晶セルロースのようなセルロース誘導体;アラビアゴム;デキストラン;または、プルランであり得る。無機系賦形剤は、例えば、軽質無水珪酸、合成珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、メタ珪酸アルミン酸マグネシウムのような珪酸塩誘導体;燐酸水素カルシウムのような燐酸塩;炭酸カルシウムのような炭酸塩;または、硫酸カルシウムのような硫酸塩であり得る。
【0038】
滑沢剤は、例えば、ステアリン酸;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムのようなステアリン酸金属塩;タルク;コロイドシリカ;ビーズワックス、ゲイ蝋のようなワックス類;硼酸;アジピン酸;硫酸ナトリウムのような硫酸塩;グリコール;フマル酸;安息香酸ナトリウム;D,L−ロイシン;ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸マグネシウムのようなラウリル硫酸塩;無水珪酸、珪酸水和物のような珪酸類;または、上記賦形剤における澱粉誘導体であり得る。
【0039】
結合剤は、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、マクロゴール、または、上記賦形剤で示された化合物であり得る。
【0040】
崩壊剤は、例えば、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、内部架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムのようなセルロース誘導体;架橋ポリビニルピロリドン;または、カルボキシメチルスターチ、カルボキシメチルスターチナトリウムのような化学修飾されたデンプン・セルロース類であり得る。
【0041】
乳化剤は、例えば、ベントナイト、ビーガムのようなコロイド性粘土;水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムのような金属水酸化物;ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウムのような陰イオン界面活性剤;塩化ベンザルコニウムのような陽イオン界面活性剤;または、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルのような非イオン界面活性剤であり得る。
【0042】
安定剤は、例えば、メチルパラベン、プロピルパラベンのようなパラヒドロキシ安息香酸エステル類;クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェニルエチルアルコールのようなアルコール類;塩化ベンザルコニウム;フェノール、クレゾールのようなフェノール類;チメロサール;デヒドロ酢酸;または、ソルビン酸であり得る。
【0043】
矯味矯臭剤は、例えば、サッカリンナトリウム、アスパルテームのような甘味料;クエン酸、リンゴ酸、酒石酸のような酸味料;または、メントール、レモンエキス、オレンジエキスのような香料であり得る。
【0044】
希釈剤は、通常希釈剤として用いられる化合物であり得、例えば、ラクトース、マンニトール、グルコース、スクロース、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、微結晶性セルロース、水、エタノール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、デンプン、ポリビニルピロリドン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムまたはこれらの混合物である。
【0045】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体の投与量は、患者の症状、年齢、体重等の種々の条件により変化し得る。経口投与の場合には、投与量は成人につき1回当たり下限0.5mg/kg(好適には、1mg/kg)および上限100mg/kg(好適には、50mg/kg)であり得る。非経口的投与の場合には、投与量は成人につき1回当たり下限0.05mg/kg(好適には、0.1mg/kg)、上限20mg/kg(好適には、10mg/kg)であり得る。当該投与は、成人につき1日当たり1乃至6回、症状に応じて行うことができる。
【実施例】
【0046】
以下に実施例、試験例および製剤例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0047】
以下の実施例において、オルメサルタンメドキソミルは、特公平7−121918またはUSP5616599に記載された方法で製造することができ、アゼルニジピンは、特公平3−31715またはUSP4772596に記載された方法で製造することができる。

(実施例1)オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体(製造方法1)
オルメサルタンメドキソミル(56mg, 0.1mmol)およびアゼルニジピン(58mg, 0.1mmol)を1,4−ジオキサン(1.0ml)に加熱下にて溶解し、室温まで冷却した後、密閉系にておよび0℃にて64時間静置した。つづいて当該溶液を開放系にておよび室温下にて16時間静置して、溶媒を蒸散させた。析出した固体を50℃および5mmHg以下の条件下にて12日間乾燥して、淡黄色粉状の標記複合体(114mg,定量的)を得た。
高速液体クロマトグラフィ−(HPLC):
カラム:関東化学逆相HPLCカラム Mightysil RP-18 6mm I.D.×150mm;
移動層:アセトニトリル/水=7/3;
流量:1ml/min;
波長:254nm;
保持時間:1.9min, 14.8min.
融点:134-136℃.
1H-NMR (CDCl3) δ (ppm): 0.87 (3H, t, J =7.5 Hz), 1.05 (3H, d, J =6.0 Hz), 1.24 (3H, d, J= 6.0 Hz), 1.59-1.68 (8H, m), 2.13 (3H, s), 2.36 (3H, s), 2.51 (2H, t, J=8.0 Hz), 2.88 (1H, brs), 3.43 (1H, brs), 3.79 (2H, brs), 4.56 (1H, s), 4.89-4.95 (4H, m), 5.12-5.13 (1H, m), 5.36 (2H, s), 5.71 (1H, brs), 6.78 (2H, d, J =8.0 Hz), 7.07 (2H, d, J =8.0 Hz), 7.20-7.47 (12H, m), 7.52 (1H, t, J =8.0 Hz), 7.58-7.62 (2H, m), 7.81 (1H, d, J =8.0 Hz), 8.02 (1H, d, J =7.0 Hz), 8.21 (1H, s).
MS (FAB) m/z: 1140 (M+H+).
Anal. Calcd for C61H62N10O12: C,64.93; H,5.58; N,12.10. Found: C,65.00; H,5.54; N,12.43。
【0048】
実施例1において得られた複合体の粉末X線回折図を図1に示す。

(実施例2)オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体(製造方法2)
オルメサルタンメドキソミル(279mg, 0.5mmol)およびアゼルニジピン(291mg, 0.5mmol)を1,4−ジオキサン(3.5ml)に加熱下にて溶解し、室温まで冷却した後、少量の実施例1で得られたオルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を加え、密閉系にておよび0℃にて16時間静置した。つづいて当該溶液を開放系にておよび室温下にて16時間静置して、溶媒を蒸散させた。析出した固体を50℃および5mmHg以下の条件下にて10日間乾燥して、淡黄色粉状の標記複合体(570mg,定量的)を得た。
【0049】
実施例2において得られた複合体の物理化学的データは、実施例1において得られた複合体のものと一致した。

(実施例3)オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体(製造方法3)
オルメサルタンメドキソミル(1.68g, 3.0mmol)およびアゼルニジピン(1.75g, 3.0mmol)を1,4−ジオキサン(10ml)に加熱下にて溶解し、室温まで冷却した後、少量の実施例1で得られたオルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を加え、減圧下にて約7mlの溶媒を留去した。つづいて得られた溶液を開放系にておよび室温下にて2時間静置して、溶媒を蒸散させた。析出した固体にn−ヘキサンを加えて固体を濾取した。得られた固体を50℃および5mmHg以下の条件下にて7日間乾燥して、淡黄色粉状の標記複合体(3.42g,定量的)を得た。
【0050】
実施例3において得られた複合体の物理化学的データは、実施例1において得られた複合体のものと一致した。

(実施例4)オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体(製造方法4)
オルメサルタンメドキソミル(559mg, 1.0mmol)およびアゼルニジピン(583mg, 1.0mmol)を1,4−ジオキサン(3.3ml)に加熱下にて溶解し、室温まで冷却した後、実施例1で得られた少量のオルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体を加え、減圧下にて約2mlの溶媒を留去した。つづいて得られた溶液を開放系にておよび室温下にて2時間静置して、溶媒を蒸散させた。析出した固体を16時間凍結乾燥した。得られた固体を50℃および5mmHg以下の条件下にて10日間乾燥して、淡黄色粉状の標記複合体(1.14g,定量的)を得た。
【0051】
実施例4において得られた複合体の物理化学的データは、実施例1において得られた複合体のものと一致した。

(試験例1)アンジオテンシンIIによる血圧上昇の抑制試験
本試験は、以下に示す通り行うことができる。本試験の方法は、特公平7−121918またはUSP5616599等にも記載されている。
【0052】
チオバルビタールナトリウム(イナクチン:登録商標、100mg/kg腹腔内投与)で麻酔した雄のウィスター−今道ラット(体重:300g乃至400g)の大腿動脈および大腿静脈にそれぞれ血圧測定用および試験化合物注入用のカニューレを挿入して設置した。次いで、血圧をモニターしながらアンジオテンシンIIを50ng/kgで約10分ごとに静脈内投与して、昇圧反応(約50mmHgの血圧増加)を観察した。反応高が一定になった後、試験化合物をアンジオテンシンII投与の2分前に静脈内投与した。試験化合物の投与量を漸増して、アンジオテンシンII昇圧の抑制率(%)より試験化合物のID50値(mg/kg)を算出した。上記操作において、アンジオテンシンIIは0.5%牛血清アルブミン(BSA)に、試験化合物は100%ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解して使用した。
【0053】
上記試験の結果、本発明の複合体は、優れた血圧上昇抑制効果を示す。

(試験例2)高血圧ラットにおける血圧降下作用試験
25乃至29週齢の雄性高血圧自然発症ラットの股動脈に血圧測定用のカニューレを、股静脈に試験化合物投与用のカニューレをそれぞれ挿入して、麻酔下で試験化合物を静脈内投与し、120分間にわたり経時的に血圧を測定した。
【0054】
上記試験の結果、本発明の複合体は、優れた血圧降下作用を示す。

(試験例3)カルシウムチャネル阻害活性試験
L型カルシウムチャネルのソースとしてブタ心臓ミクロソームを、またL型カルシウムチャネルのリガンドとして3H−ニトレンジピンを用いた。HEPES(50 mM,pH 7.4)緩衝液中でミクロソーム(0.2 mg蛋白/ml)、3H−ニトレンジピン(0.1 nM)および試験化合物を室温で30分間反応させ、ミクロソーム膜画分に結合した3H−ニトレンジピンを液体シンチレーションカウンターで測定した。得られたカウント数から10μMの非標識ニトレンジピン存在下でのカウント(非特異的結合量)を引き、特異的結合量を求めた。各試験化合物について、特異的結合の濃度と阻害率の関係をロジスティック曲線に近似させ、IC50値(特異的結合の50%阻害濃度)を求めた。別にScatchardプロットから求めたニトレンジピンのKd(解離定数)を用いて、以下の式から各試験化合物のKi(阻害定数)を求めた。
【0055】
Ki = IC50 / (1 + [L] / Kd) ([L]は3H−ニトレンジピンの濃度を示す)
上記試験の結果、本発明の複合体は、優れたカルシウムチャネル阻害活性を示す。

(製剤例1)錠剤
実施例1の化合物(20.0mg)、乳糖(154.0mg)、トウモロコシデンプン(25.0mg)、および、ステアリン酸マグネシウム(1.0mg)(計200mg)の粉末を混合し、打錠機により打錠して1錠200mgの錠剤とする。この錠剤は必要に応じて糖衣を施すことができる。

(製剤例2)カプセル剤
実施例2の化合物(20.0mg)、乳糖(128.7mg)、トウモロコシデンプン(70.0mg)、および、ステアリン酸マグネシウム(1.3mg)(計220mg)の粉末を混合して、60メッシュのふるいに通した後、この粉末を3号ゼラチンカプセルに入れてカプセル剤とする。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、優れたアンジオテンシンII受容体拮抗作用、カルシウムチャンネル拮抗作用、血圧降下作用、血管拡張作用、心保護作用、抗動脈硬化作用、利尿作用、腎障害抑制作用、過酸化脂質生成阻害作用、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM)モデルラットの腎症、高脂血症および高血圧症の抑制作用、および、腎炎抑制作用を示し、溶解性、経口吸収性、血中濃度、体内動態、薬効の持続性、安全性、および、毒性の点で医薬品化合物として優れた性質を有する。したがって、本発明のオルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体は、温血動物用(好適には、ヒト用)の医薬、好適には、高血圧症;心疾患(狭心症を含む);動脈硬化症;腎障害;高血圧症に起因する心疾患、動脈硬化症および腎障害;糖尿病合併症(糖尿病に起因する腎症、高脂血症および高血圧症を含む);腎疾患;および、糸球体腎炎(IgA腎症[バーシャー(Berger)病]、膜性腎症、増殖性糸球体腎炎、硬化性糸球体腎炎、巣状糸球体硬化症、および、微小変化型ネフローゼ症候群等の病型の糸球体腎炎を含む)の治療もしくは予防のための医薬、より好適には、高血圧症、心疾患(狭心症を含む)、糖尿病合併症、および、糸球体腎炎の治療もしくは予防のための医薬、最も好適には、高血圧症の治療もしくは予防のための医薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】オルメサルタンメドキソミルおよびアゼルニジピンから形成される複合体の粉末X線回折図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンから形成される複合体。
【請求項2】
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルがオルメサルタンメドキソミルである請求項1に記載された複合体。
【請求項3】
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンのモル比が1:1である請求項2に記載された複合体。
【請求項4】
銅のKα1線の照射で得られる粉末X線回折図において、面間隔が15.2、13.6、6.38、5.82、4.63、および、4.21オングストロームに主要なピークを示す請求項2または3に記載された複合体。
【請求項5】
複合体が塩である請求項1乃至4のいずれかに記載された複合体。
【請求項6】
複合体が塩の結晶である請求項1乃至4のいずれかに記載された複合体。
【請求項7】
複合体が共晶である請求項1乃至4のいずれかに記載された複合体。
【請求項8】
以下の工程を含む請求項1乃至7のいずれかに記載された複合体の製造方法:
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンの不活性溶媒溶液を冷却下にて静置することにより複合体を析出させる工程。
【請求項9】
以下の工程を含む請求項1乃至7のいずれかに記載された複合体の製造方法:
オルメサルタンまたはその薬理上許容されるエステルおよびアゼルニジピンの不活性溶媒溶液から溶媒を蒸散させることにより複合体を析出させる工程。

【図1】
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【公開番号】特開2006−298764(P2006−298764A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−117949(P2005−117949)
【出願日】平成17年4月15日(2005.4.15)
【出願人】(000001856)三共株式会社 (98)
【Fターム(参考)】