説明

高透明シリコーン組成物並びに該組成物で封止した発光半導体装置

【解決手段】表面に下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを処理前のシリカ質量に対して4%以上グラフト化したシリカ粒子を含有する高透明シリコーン組成物。


(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2はメチル基又はエチル基、aは1〜50、bは0又は1、dは0又は1、c及びeは0〜10の整数であり、a+b+dは3〜52の整数を示す。)
【効果】本発明によれば、シリコーン組成物に配合して高透明性で腐食性ガスの透過性が小さく、被覆保護性に優れた硬化物を与えるシリカ粒子を配合した発光半導体装置の封止に好適なシリコーン組成物を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のオルガノポリシロキサンを表面にグラフト化したシリカ粒子を多量に充填することで、透明性を維持しながら酸素等のガス透過性を低下させた硬化物を与えるシリコーン組成物、特にLED等に代表される光半導体装置の封止に最適なシリコーン組成物、並びにその硬化物で封止した発光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン組成物は、耐候性、耐熱性、透明性等の特性や、硬度、伸び等のゴム的性質に優れた硬化物を形成することから種々の用途に使用されている。特に、最近ではシリコーン樹脂が耐熱性や耐紫外線性などが優れていることから青色や白色の高輝度LED等の発光半導体装置の封止材として幅広く応用されるようになってきた。しかし、一方、従来のシリコーン樹脂では膨張係数やガス透過性が大きいため、温度サイクルなどで樹脂にクラックが発生しやすいうえ、断線などの不具合が生じている。また、腐食性ガスが封止したシリコーン樹脂を透過してLED等の光反射板の銀表面を腐食し、輝度を低下させるなどの問題も発生している。
【0003】
なお、本発明に関連する先行技術としては下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2005−524737号公報
【特許文献2】特開2004−179644号公報
【特許文献3】特開平10−284759号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、シリコーン組成物に配合して透明性を維持しつつ膨張係数やガス透過性の小さい硬化物を与えるシリカ粒子を配合したシリコーン組成物、及びこの硬化物で封止することにより耐衝撃性、耐温度サイクル性に優れ、かつ腐食性ガスの透過により封止保護されたLEDチップ等の被封止部品の腐食が防止され、信頼性に優れたLED等の発光半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、付加硬化型又は縮合硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計(即ち、後述する(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンと(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとの合計、あるいは後述する(D)成分の水酸基又は加水分解性基封鎖オルガノポリシロキサンと(E)成分の加水分解性基含有シラン及び/又はその部分加水分解縮合物との合計)100質量部に対して、表面を下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンでグラフト化処理したシリカ粒子を5〜400質量部、特に50〜250質量部、更には100〜200質量部添加することにより、高透明性を有し、膨張係数や腐食性ガスの透過性が小さい硬化物を形成でき、この硬化物で封止することで耐衝撃性、耐温度サイクル性に優れ、例えば腐食性ガスの透過による光反射板の銀表面の腐食が防止された高信頼性のLED等の発光半導体装置が得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0007】
従って、本発明は下記のシリカ粒子を配合するシリコーン組成物及び発光半導体装置を提供する。
〔1〕 付加硬化型又は縮合硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計100質量部に対して、表面に下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを処理前のシリカ質量に対して4%以上グラフト化したシリカ粒子を5〜400質量部含有することを特徴とする高透明シリコーン組成物。
【化1】

(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2はメチル基又はエチル基、aは1〜50、bは0又は1、dは0又は1、c及びeは0〜10の整数であり、a+b+dは3〜52の整数を示す。)
〔2〕 硬化物が400〜800nmで80%以上の光透過率を有する〔1〕記載のシリコーン組成物。
〔3〕 付加硬化型シリコーン組成物が、
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒
を含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のシリコーン組成物。
〔4〕 縮合硬化型シリコーン組成物が、
(D)分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、
(E)珪素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシランもしくはその部分加水分解縮合物、
(F)縮合触媒
を含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕記載のシリコーン組成物。
〔5〕 更に、蛍光体を含有する〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のシリコーン組成物。
〔6〕 シリカ粒子の平均粒径が1nm以上1,000nm未満である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシリコーン組成物。
〔7〕 〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のシリコーン組成物の硬化物で封止した発光半導体装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリコーン組成物に配合して高透明性で腐食性ガスの透過性が小さく、被覆保護性に優れた硬化物を与えるシリカ粒子を配合した発光半導体装置の封止に好適なシリコーン組成物を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るシロキサンをグラフト化したシリカは、シリカに対し下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンをグラフト化したものである。
【0010】
使用するシリカとしては、ナノサイズ(即ち、平均粒径が1nm以上1,000nm未満で、好ましくは5〜500nm、より好ましくは10〜200nm)の湿式や乾式の煙霧シリカや溶融シリカ等が代表的なものである。例えば日本アエロジル(株)のアエロジル200(平均粒径:12nm)、アエロジル300、エロジル RX300やトクヤマ製 レオロシールHM−30S等の疎水性表面処理シリカ、更に200nm以下に分級されたアドマファイン((株)アドマテックス製)等が使用可能である。
【0011】
従来も各種カップリング材やオルガノポリシロキサンで表面処理したシリカを用いた高強度のシリコーン樹脂が知られている(例えば、特許第3029680号公報)。これらはいずれもシリカと特定構造のシリコーン化合物、及びシリコーン樹脂をニーダー等で混練し熱処理することで高強度のシリコーン樹脂を得ている。個々で使用する特定のシリコーン化合物は重合度が4の化合物である。また、この種のシリコーン樹脂では透明性の良好なものは得ることができない。
【0012】
本発明では、下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを確実にシリカ表面にグラフト化したシリカ粒子を用いる。グラフト化が不十分の場合、特に低波長領域における透明性が確保できなくなる場合がある。
【0013】
【化2】

(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2はメチル基又はエチル基、aは1〜50、bは0又は1、dは0又は1、c及びeは0〜10の整数であり、a+b+dは3〜52の整数を示す。)
【0014】
この場合、R1としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0015】
表面処理に用いられるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものが例示される。
【化3】

【0016】
上記したオルガノポリシロキサンは、重合度(又は主鎖を構成するシロキサン単位中に存在する珪素原子数)が5以上54以下でなければならない。5未満ではグラフト化したシリカをシリコーン組成物に混合しても十分な光透過性を得ることができない。また、54を超えるとシリカ表面との反応が進行しにくいため、長時間を有するといった問題がある。望ましくは重合度6〜44、より望ましくは10〜34のものである。
【0017】
また、使用するシリコーン組成物がオルガノポリシロキサンとしてジメチルポリシロキサンを主体とする組成物の場合は良好な光透過性を得るため、グラフト化するオルガノポリシロキサンも珪素に置換した置換基はメチル基やエチル基等を主体としたものが好ましい。一方、置換基がフェニル基主体のオルガノポリシロキサンを用いるシリコーン組成物においては、グラフト化するオルガノポリシロキサンもフェニル基の比率を組成物の比率に合わせた方がよい。
【0018】
付加反応で硬化するシリコーン組成物においては、グラフト化するオルガノポリシロキサンにビニル基を含有するものを使用すると光透過性と強度の両立が可能となる。
【0019】
シリカ粒子表面へのオルガノポリシロキサンのグラフト反応は、一般に溶剤中で上記表面処理剤とシリカを入れ、50〜200℃の温度で、1〜50時間還流させることにより行うことができる。
【0020】
代表的な溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶剤などが使用できる。この種の溶剤を混合させて還流温度を50〜200℃に調整してもよい。更に、他の溶剤でも問題がなければ使用可能である。
【0021】
グラフト化反応においては、シリカ100質量部に対し、処理剤量を10〜50質量部、溶剤量は100〜500質量部の割合で混合し反応させることが好ましい。処理材量が10質量部未満では目標とするグラフト化率を達成することができないおそれがある。また、50質量部を超えると、グラフト化率の割にコストがかかりすぎて、経済的に合わない場合が生じる。
【0022】
表面にオルガノポリシロキサンをグラフト化したシリカ粒子は、反応終了後、遠心分離などで溶剤と粒子を分離し、乾燥することで容易に得ることができる。
【0023】
なお、高透明性を得るためには、シリカ表面への処理剤のグラフト化率は表面処理前のシリカの質量に対して4%以上であることが好ましい。より好ましくは4〜30%、更に好ましくは5〜15%である。これが不十分であるとシリコーン樹脂に表面を処理したシリカを充填しても十分な透明性が得られない。このグラフト化率は、シリカの種類、式(1)のオルガノポリシロキサンの種類、使用量等を選定することによって達成し得る。
【0024】
本発明のシリコーン組成物は、上記オルガノポリシロキサンをグラフト化したシリカを配合したもので、この場合、シリコーン組成物としては、付加硬化型又は縮合硬化型のものが好ましい。付加硬化型シリコーン組成物としては、
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒
を必須成分として含有する。
【0025】
ここで、(A)成分のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、1分子中に珪素原子と結合するアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンが用いられ、これは付加硬化型シリコーン組成物のベースポリマーとして使用されている公知のオルガノポリシロキサンであり、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によるポリスチレン換算重量平均分子量が、通常3,000〜300,000程度で、常温(25℃)で100〜1,000,000mPa・s、特に200〜100,000mPa・s程度の粘度を有するものが好ましく、下記平均組成式(2)で示されるものが用いられる。なお、この粘度は回転粘度計による値である。
3aSiO(4-a)/2 (2)
(式中、R3は互いに同一又は異種の炭素数1〜10、好ましくは1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、aは1.5〜2.8、好ましくは1.8〜2.5、より好ましくは1.95〜2.05の範囲の正数である。)
【0026】
上記R3で示される珪素原子に結合した非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等が挙げられる。
【0027】
この場合、R3のうち少なくとも2個はアルケニル基(特に炭素数2〜8のものが好ましく、更に好ましくは2〜6である。)であることが必要である。なお、アルケニル基の含有量は、珪素原子に結合する全有機基中(即ち、前記平均組成式(2)におけるR3としての非置換又は置換の一価炭化水素基中)0.01〜20モル%、特に0.1〜10モル%とすることが好ましい。このアルケニル基は、分子鎖末端の珪素原子に結合していても、分子鎖途中の珪素原子に結合していても、両者に結合していてもよいが、組成物の硬化速度、硬化物の物性等の点から、本発明で用いるオルガノポリシロキサンは、少なくとも分子鎖末端の珪素原子に結合したアルケニル基を含んだものであることが好ましい。
【0028】
上記オルガノポリシロキサンの構造は、通常、主鎖がジオルガノシロキサン単位((R32SiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基((R33SiO1/2単位)で封鎖された基本的には直鎖状構造を有するジオルガノポリシロキサンであるが、部分的にはR3SiO3/2単位やSiO4/2単位を含んだ分岐状の構造、環状構造などであってもよい。
【0029】
珪素原子の置換基は、基本的には上記のいずれであってもよいが、アルケニル基としては好ましくはビニル基、その他の置換基としてはメチル基、フェニル基が望ましい。
【0030】
(A)成分の例としては、下記一般式で示される化合物等が挙げられる。
【0031】
【化4】

【0032】
なお、上記一般式中のRは、R3と同様であるが、アルケニル基は含まない。m、nはm≧1、n≧0の整数であり、このオルガノポリシロキサンの重量平均分子量又は粘度を上記値とする数である。
【0033】
また、本発明においては、レジン構造のオルガノポリシロキサンを上記のオルガノポリシロキサンと併用して使用することができる。このレジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンは、SiO2単位、R4k5pSiO0.5単位及びR4q5rSiO0.5単位からなるレジン構造のオルガノポリシロキサン(但し、上記式において、R4はビニル基又はアリル基、R5は脂肪族不飽和結合を含まない一価炭化水素基であり、kは2又は3、pは0又は1で、k+p=3、qは0又は1、rは2又は3で、q+r=3である。)であることが好ましい。なお、R5の一価炭化水素基としては、上記R3と同様の炭素数1〜10、特に1〜6のものが挙げられる。
【0034】
ここで、レジン構造のオルガノポリシロキサンは、SiO2単位をa単位、R4k5pSiO0.5単位をb単位、R4q5rSiO0.5単位をc単位とした場合、これら単位割合は、モル比として、
(b+c)/a=0.3〜3、特に0.7〜1
c/a=0.01〜1、特に0.07〜0.15
であることが好ましく、またこのオルガノポリシロキサンは、GPCによるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000の範囲であるものが好適である。
【0035】
上記レジン構造のオルガノポリシロキサンは、硬化物の物理的強度及び表面のタック性を改善するために配合されるものであり、(A)成分中、20〜70質量%の量で配合されることが好ましく、より好ましくは30〜60質量%の量で配合される。レジン構造のオルガノポリシロキサンの配合量が少なすぎると、上記効果が十分達成されない場合があり、多すぎると、組成物の粘度が著しく高くなったり、硬化物にクラックが発生しやすくなる場合がある。
【0036】
(B)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、特に3個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。ここで、(B)成分は、(A)成分と反応し、架橋剤として作用するものであり、その分子構造に特に制限はなく、従来製造されている例えば線状、環状、分岐状、三次元網状構造(樹脂状)等各種のものが使用可能であるが、1分子中に2個以上の珪素原子に結合した水素原子(SiH基)を有する必要があり、好ましくは2〜300個、より好ましくは3〜200個、更に好ましくは4〜100個程度有することが望ましい。またこのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中の珪素原子数(又は重合度)が、通常2〜300個、好ましくは3〜200個、より好ましくは4〜100個程度のものを使用することができる。オルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、下記平均組成式(3)で示されるものが用いられる。
6bcSiO(4-b-c)/2 (3)
【0037】
上記式(3)中、R6は炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基であり、このR6としては、上記式(1)中のR3と同様の基を挙げることができるが、脂肪族不飽和結合を有さないことが好ましい。また、bは0.7〜2.1、cは0.001〜1.0で、かつb+cが0.8〜3.0を満足する正数であり、好ましくはbは1.0〜2.0、cは0.01〜1.0、b+cが1.5〜2.5である。
【0038】
1分子中に少なくとも2個、好ましくは3個以上含有されるSiH基は、分子鎖末端、分子鎖途中のいずれに位置していてもよく、またこの両方に位置するものであってもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよい。
【0039】
式(2)のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして具体的には、例えば1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)メチルシラン、トリス(ハイドロジェンジメチルシロキシ)フェニルシラン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・メチルフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、(CH32HSiO1/2単位と(CH33SiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位とからなる共重合体、(CH32HSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C65)SiO2/3単位とからなる共重合体等が挙げられる。
【0040】
この(B)成分の添加量は、(A)成分中の珪素原子と結合するアルケニル基1個に対して珪素原子に結合した水素原子がモル比で0.1〜5.0当量となる量であり、好ましくは0.5〜3.0当量、より好ましくは0.8〜2.0当量の範囲とされる。0.1当量より少ない場合は架橋密度が低くなりすぎ、シリコーン硬化物の耐熱性に悪影響を与えるおそれがあり、また、5.0当量より多い場合には脱水素反応による発泡の問題が生じ、更に耐熱性に悪影響を与えるおそれがある。
【0041】
(C)成分の白金族金属系触媒は、(A)成分と(B)成分との硬化付加反応(ハイドロシリレーション)を促進させるための触媒として使用されるものである。白金族金属系触媒は、公知のものを用いることができるが、白金もしくは白金化合物を用いることが好ましい。白金化合物には、白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール変性物、塩化白金酸とオレフィン、アルデヒド、ビニルシロキサン又はアセチレンアルコール類等との錯体等が例示される。
【0042】
なお、この白金族金属系触媒の配合量は、希望する硬化速度に応じて適宜増減すればよいが、通常は(A)成分に対して白金族金属の質量換算で0.1〜1,000ppm、好ましくは1〜200ppmの範囲とすればよい。
【0043】
一方、縮合硬化型シリコーン組成物は、
(D)分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、
(E)珪素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシランもしくはその部分加水分解縮合物、
(F)縮合触媒
を含有する。
【0044】
この場合、(D)成分は、25℃における粘度が100〜500,000mPa・s、特に500〜100,000mPa・sであることが好ましく、分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたオルガノポリシロキサンは縮合硬化型シリコーン組成物のベースポリマーである。(D)成分は、分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されていることが必要である。このようなオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(4),(5)又は(6)で表されるα,ω−ジヒドロキシ(又はジオルガノオキシ)−ジオルガノポリシロキサンが例示される。
【0045】
【化5】

(式中、R7は同一又は異種の置換又は非置換の1価炭化水素基であり、d及びnは一般式(4),(5),(6)で表されるジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度を100〜500,000mPa・s、好ましくは500〜100,000mPa・sの範囲にするような値である。eは2又は3である。)
【0046】
上記式中、Xはエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、メチルエチレン基等の炭素数2〜6、特に2〜4のアルキレン基であり、R7は炭素数1〜12、特に1〜10のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクタデシル基等のアルキル基、ビニル基、ヘキセニル基等のアルケニル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基等のシクロアルキル基、ベンジル基、β−フェニルエチル基等のアラルキル基、フェニル基、キセニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、及びこれらの基の水素原子の一部又は全部がシアノ基やハロゲン原子で置換された基、例えばβ−シアノエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基のような有機基等で置換した基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。
【0047】
OR8で示される加水分解性基としては、例えば、アセトキシ基、オクタノイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基等のアシロキシ基;ジメチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基等のケトオキシム基(即ち、イミノキシ基);メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等のアルコキシ基;メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシプロポキシ基等のアルコキシアルコキシ基;ビニロキシ基、イソプロペニルオキシ基、1−エチル−2−メチルビニルオキシ基等のアルケニルオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基等のアミノ基;ジメチルアミノキシ基、ジエチルアミノキシ基等のアミノキシ基;N−メチルアセトアミド基、N−エチルアセトアミド基、N−メチルベンズアミド基等のアミド基等が挙げられる。
【0048】
これらの加水分解性基は、例えば、トリアルコキシシロキシ基、ジアルコキシオルガノシロキシ基、トリアシロキシシロキシ基、ジアシロキシオルガノシロキシ基、トリイミノキシシロキシ基(即ち、トリケトオキシムシロキシ基)、ジイミノキシオルガノシロキシ基、トリアルケノキシシロキシ基、ジアルケノキシオルガノシロキシ基、トリアルコキシシロキシエチル基、ジアルコキシオルガノシロキシエチル基等の2個又は3個の加水分解性基含有シロキシ基あるいは2個又は3個の加水分解性基含有シロキシアルキル基等の形で直鎖状ジオルガノポリシロキサンの分子鎖両末端に位置していることが好ましい。
【0049】
OR8としてはアルコキシ基が好ましく、この場合、特にR8はメチル基、エチル基、イソプロピル基、ヘキシル基、オクタデシル基等の鎖状アルキル基であり、メチル基、エチル基が好ましい。
【0050】
7、OR8はそれぞれ同一のものばかりでもよく、異種のものが混在してもよい。これらの中でも、合成の容易さ、硬化後の機械的性質と未硬化の組成物の粘性のバランス等の点から、R7の90モル%以上又は全部がメチル基であり、メチル基以外の基がある場合はビニル基又はフェニル基であることが好ましい。
【0051】
このようなオルガノポリシロキサンの具体例としては、例えば、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端シラノール基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端メチルジメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリエトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端2−トリメトキシシロキシエチル基封鎖ジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0052】
(E)成分の1分子中に少なくとも3個の珪素原子結合加水分解性基を含有するシランもしくはその部分加水分解縮合物(即ち、少なくとも1個、好ましくは2個以上の加水分解性基が残存するオルガノポリシロキサン)は硬化剤として作用する成分であるが、(E)成分のベースポリマーがシラノール基以外の珪素原子結合加水分解性基を1分子中に少なくとも2個含有するものである場合には組成物への配合を省略することができる。前記シランとしては、式:R9fSiY4-f(式中、R9は置換又は非置換の炭素数1〜10、特に1〜8の一価炭化水素基、Yは加水分解性基、fは0又は1である。)で表されるものが好ましい。前記R9としては、特に、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基等のアリール基が好ましい。前記Xとしては、前記(D)成分における珪素原子結合加水分解性基(OR8)として例示したものと同じものが挙げられ、例えば、アルコキシ基、アルケノキシ基、ケトオキシム基、アセトキシ基、アミノ基、アミノキシ基等が挙げられる。
【0053】
このようなシラン又はその部分加水分解縮合物の具体例としては、例えば、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、エチルオルソシリケート等、及びこれらの部分加水分解縮合物が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0054】
本組成物において、上記シラン又はその部分加水分解縮合物の含有量は、通常、(D)成分100質量部対し0.01〜20質量部であることが好ましく、特に、0.1〜10質量部であることが好ましい。この含有量が上記範囲の下限未満の量であると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下したり、また、接着性が低下する傾向があり、一方、上記範囲の上限を超える量であると、得られる組成物の硬化が著しく遅くなったりする傾向がある。
【0055】
なお、この硬化剤(架橋剤)としての(E)成分は、前記(D)成分が一般式(4)で示されるような分子鎖末端が水酸基で封鎖されたオルガノポリシロキサンである場合には必須とされるものであるが、(D)成分が一般式(5)又は(6)で示されるような分子鎖末端が加水分解性基で封鎖されたオルガノポリシロキサンである場合には、この(E)成分は特に必須とされるものではなく、必要に応じて適宜配合してもよい任意成分である。
【0056】
また、(F)成分の縮合触媒は任意の成分であり、上記シラン又はその部分加水分解縮合物が、例えば、アミノキシ基、アミノ基、ケトオキシム基等を有する場合には、使用しなくてもよい。このような縮合触媒としては、例えば、テトラブチルチタネート、テトライソプロピルチタネート等の有機チタン酸エステル;ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等の有機チタンキレート化合物;アルミニウムトリス(アセチルアセトナート)、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等の有機アルミニウム化合物;ジルコニウムテトラ(アセチルアセトナート)、ジルコニウムテトラブチレート等の有機ジルコニウム化合物;ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジ(2−エチルヘキサノエート)等の有機スズ化合物;ナフテン酸スズ、オレイン酸スズ、ブチル酸スズ、ナフテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機カルボン酸の金属塩;ヘキシルアミン、燐酸ドデシルアミン等のアミン化合物、及びその塩;ベンジルトリエチルアンモニウムアセテート等の4級アンモニウム塩;酢酸カリウム、硝酸リチウム等のアルカリ金属の低級脂肪酸塩;ジメチルヒドロキシルアミン、ジエチルヒドロキシルアミン等のジアルキルヒドロキシルアミン;グアニジル基含有有機珪素化合物等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上組み合わせても使用することができる。
【0057】
本組成物において、上記(F)成分の縮合触媒を用いる場合、その配合量は、特に制限されず、触媒としての有効量でよいが、通常、(E)成分100質量部に対して0.01〜20質量部であることが好ましく、特に、0.1〜10質量部であることが好ましい。この触媒を用いる場合、この触媒の含有量が上記範囲の下限未満の量であると、架橋剤の種類によっては得られる組成物が十分に硬化しなくなることがあり、一方、上記範囲の上限を超えると、得られる組成物の貯蔵安定性が低下することがある。
【0058】
本発明は、上記のような付加反応硬化型又は縮合硬化型シリコーン組成物に上記式(1)で示されるオルガノポリシロキサンによって表面をグラフト化したシリカ粒子を配合する。この場合、上記オルガノポリシロキサンをグラフト化したシリカを、付加反応硬化型又は縮合反応硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計(即ち、上記(A),(B)成分の合計又は上記(D),(E)成分の合計)100質量部当り5〜400質量部、特に50〜250質量部、更には100〜200質量部配合することで、透明性に優れ、低膨張、低ガス透過性の硬化物を与えるシリコーン組成物が得られる。
【0059】
また、ナノサイズのシリカ表面にオルガノポリシロキサンをグラフトさせたシリカをシリコーン組成物中に均一に分散させた系にYAG等の蛍光体を混合しても、シリコーン組成物の硬化時に蛍光体の沈降を防止できるといった特徴も持っている。通常、この種の沈降を防止するのにナノサイズのシリカを添加する方法が知られているが、この方法ではチキソ性が高くなり作業性が低下してしまう(特表2005−524737号公報)。
【0060】
本発明ではグラフト化したナノサイズのシリカを多量に添加配合してもチキソ性の発現は全く認められない。本発明のシリコーン組成物においてはチキソ性もなく、流動性も良好で蛍光体の沈降も認められないといった優れた特徴を持っている。
【0061】
本発明の組成物には、接着性を付与するため、1分子中に珪素原子に結合した水素原子(SiH基)、珪素原子に結合したアルケニル基(例えばSi−CH=CH2基)、アルコキシシリル基(例えばトリメトキシシリル基)、エポキシ基(例えばグリシドキシプロピル基、3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基)から選ばれる官能性基を少なくとも2種、好ましくは2又は3種含有する直鎖状又は環状の珪素原子数が4〜50個、好ましくは4〜20個程度のオルガノシロキサンオリゴマーや下記一般式(7)で示されるオルガノオキシシリル変性イソシアヌレート化合物及び/又はその加水分解縮合物(オルガノシロキサン変性イソシアヌレート化合物)等の接着助剤を任意成分として必要に応じて配合することが好ましい。
【0062】
【化6】

(式中、R10は、下記式(7)
【化7】

で表される有機基又は脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基であるが、少なくとも1個は式(8)の有機基であり、R11は水素原子又は炭素数1〜6の一価炭化水素基、sは1〜6、特に1〜4の整数である。)
【0063】
この場合、R10の脂肪族不飽和結合を含有する一価炭化水素基としては、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の炭素数2〜8、特に2〜6のアルケニル基が挙げられる。また、R11の一価炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基等のアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基等の上記R10として例示したものと同様のアルケニル基、フェニル基等のアリール基等の炭素数1〜8、特に1〜6の一価炭化水素基が挙げられ、好ましくはアルキル基である。
【0064】
このような接着助剤としては下記のものが例示できる。
【化8】

(式中、m,nはそれぞれm+nが2〜50、好ましくは4〜20を満足する正の整数である。)
【0065】
【化9】

【0066】
【化10】

【0067】
このような有機珪素化合物のうち、得られる硬化物の接着性が特に優れている化合物としては、1分子中に珪素原子結合アルコキシ基とアルケニル基もしくは珪素原子結合水素原子(SiH基)を有する有機珪素化合物であることが好ましい。
【0068】
本発明において、任意成分である接着助剤の配合量は、ベースポリマーと硬化剤との合計100質量部に対して、通常10質量部以下(即ち、0〜10質量部)、好ましくは0.01〜5質量部、より好ましくは0.1〜1質量部程度配合することができる。接着助剤の配合量が少なすぎると基材に対する接着性に劣る場合があり、多すぎると硬化物の硬度や表面タック性に悪影響を及ぼす場合がある。
【0069】
本発明のシリコーン組成物は、上述したオルガノポリシロキサンを表面にグラフト化したシリカとシリコーン組成物の他の各成分をプラネタリーミキサーや3本ロールなどで均一に混合することによって調製されるが、勿論、付加硬化型シリコーン組成物においては、アセチレンアルコール等の硬化抑制剤を少量添加して1液として用いることもできる。
【0070】
本発明のシリコーン組成物を硬化してなる硬化物は、シリカ粒子を高充填しても光透過性に優れたものであり、通常400〜800nmにおいて80%以上(80〜100%)、特に90%以上(90〜100%)、とりわけ95%以上(95〜100%)の光透過率を保持できるものである。
【0071】
本発明の組成物は、LED素子封止用、特に青色や白色LEDや紫外LEDの素子封止用として有用なものである。青色LEDを用いて白色化するために各種公知の蛍光体粉末を添加することができる。代表的な黄色蛍光体として一般式A35012:M(式中、成分Aは、Y,Gd,Tb,La,Lu,Se及びSmからなるグループからなる少なくとも1つの元素を有し、成分Bは、Al,Ga及びInからなるグループからなる少なくとも一つの元素を有し、成分MはCe,Pr,Eu,Cr、Nd及びErからなるグループからなる少なくとも一つの元素を有する)のガーネットのグループからなる蛍光体粒子を含有するのが特に有利である。青色光を放射する発光ダイオードチップを備えた白色光を放射する発光ダイオード素子用に蛍光体として、Y3Al512:Ce蛍光体及び/又は(Y,Gd、Tb)3(Al,Ga)512:Ce蛍光体が適している。その他の蛍光体として、例えば、CaGa24:Ce3+及びSrGa24:Ce3+、YAlO3:Ce3+,YGaO3:Ce3+、Y(Al,Ga)O3:Ce3+、Y2SiO5:Ce3+等が挙げられる。また、混合色光を作製するためにはこれらの蛍光体の他に希土類でドープされたアルミン酸塩や希土類でドープされたオルトケイ酸塩などが適している。本発明の組成物にこの種の蛍光体を樹脂層の厚みにより組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計(即ち、(A),(B)成分の合計又は(D),(E)成分の合計)100質量部に対して0.5〜200質量部配合することで青色を白色に変換できる。蛍光体は一般的に比重が重いためシリコーン組成物が硬化する過程で沈降してしまい、目的とする均一分散をさせることが非常に難しい。しかし、本発明の組成物を使用することでこの種の不具合を解消することができる。
【0072】
本発明の組成物でLED等の発光半導体装置を封止する場合は、熱可塑性樹脂からなるプレモールドパッケージに搭載されたLED素子に該組成物を塗布すること、及び該組成物を硬化させて該LED素子上に該硬化物を形成させることにより、該LED素子を該硬化物で封止することができる。また、該組成物をトルエンやキシレン等の有機溶媒に溶解して生成したワニスの状態で、該LED素子に塗布することができる。
【0073】
本発明の組成物は、その他にも、その優れた耐熱性、耐紫外線性、透明性等の特性から、下記のディスプレイ材料、光記録媒体材料、光学機器材料、光部品材料、光ファイバー材料、光・電子機能有機材料、半導体集積回路周辺材料等の用途にも用いることができる。
【0074】
−1.ディスプレイ材料−
ディスプレイ材料としては、例えば、液晶ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等の液晶用フィルム等の液晶表示装置周辺材料;次世代フラットパネルディスプレイであるカラープラズマディスプレイ(PDP)の封止材、反射防止フィルム、光学補正フィルム、ハウジング材、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;プラズマアドレス液晶(PALC)ディスプレイの基板材料、導光板、プリズムシート、偏向板、位相差板、視野角補正フィルム、接着剤、偏光子保護フィルム等;有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイの前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等;フィールドエミッションディスプレイ(FED)の各種フィルム基板、前面ガラスの保護フィルム、前面ガラス代替材料、接着剤等が挙げられる。
【0075】
−2.光記録材料−
光記録材料としては、例えば、VD(ビデオディスク)、CD、CD−ROM、CD−R/CD−RW、DVD±R/DVD±RW/DVD−RAM、MO、MD、PD(相変化ディスク)、光カード用のディスク基板材料、ピックアップレンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等が挙げられる。
【0076】
−3.光学機器材料−
光学機器材料としては、例えば、スチールカメラのレンズ用材料、ファインダプリズム、ターゲットプリズム、ファインダーカバー、受光センサー部等;ビデオカメラの撮影レンズ、ファインダー等;プロジェクションテレビの投射レンズ、保護フィルム、封止材、接着剤等;光センシング機器のレンズ用材料、封止材、接着剤、フィルム等が挙げられる。
【0077】
−4.光部品材料−
光部品材料としては、例えば、光通信システムでの光スイッチ周辺のファイバー材料、レンズ、導波路、素子の封止材、接着剤等;光コネクタ周辺の光ファイバー材料、フェルール、封止材、接着剤等;光受動部品・光回路部品である、レンズ、導波路、接着剤等;光電子集積回路(OEIC)周辺の基板材料、ファイバー材料、素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【0078】
−5.光ファイバー材料−
光ファイバー材料としては、例えば、装飾ディスプレイ用照明・ライトガイド等;工業用のセンサー類、表示・標識類等;通信インフラ用及び家庭内のデジタル機器接続用の光ファイバー等が挙げられる。
【0079】
−6.半導体集積回路周辺材料−
半導体集積回路周辺材料としては、例えば、LSI、超LSI材料用のマイクロリソグラフィー用のレジスト材料等が挙げられる。
【0080】
−7.光・電子機能有機材料−
光・電子機能有機材料としては、例えば、有機EL素子周辺材料;有機フォトリフラクティブ素子;光−光変換デバイスである光増幅素子、光演算素子、有機太陽電池周辺の基板材料;ファイバー材料;これらの素子の封止材、接着剤等が挙げられる。
【実施例】
【0081】
以下、合成例、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部、Meはメチル基、Etはエチル基を示す。
【0082】
[合成例1]
ナノシリカのグラフト化
リフラックスコンデンサーを備えたフラスコにアエロジル200(平均粒径12nm、日本アエロジル(株)製)50部、下記構造を有するポリシロキサン(1)(信越化学工業(株)製)25部、キシレン500部を入れて、150℃で24時間還流させることでグラフト反応を行った。反応終了後、遠心分離装置を用い、グラフト化したシリカとキシレンと未反応ポリシロキサンを分離し、更に500部のキシレンを加え、撹拌する操作を2回行い、次いで遠心分離を繰り返して未反応のポリシロキサンを除去した。その後、分離したシリカを120℃で4時間乾燥することで、グラフト化したシリカ(1)を得た。得られたシリカ(1)のグラフト化率はTGAにより測定した結果、8.7%であった。また、FT−IRによる分析でもグラフト化を確認した。
同様の方法で表1に示した混合比でグラフト化を行い、5種類のグラフト化したシリカ(2)〜(6)を得た。
【0083】
【表1】

【0084】
【化11】

【0085】
[実施例1〜4、比較例1,2]
下記式(i)
【化12】

(但し、L=450)
で示される両末端ビニルジメチルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン75部にSiO2単位50モル%、(CH33SiO0.5単位42.5モル%及び(CH2=CH)(CH32SiO0.5単位7.5モル%からなるレジン構造のビニルメチルシロキサン(VMQ)25部、下記式(ii)
【化13】

(但し、L=10、M=8)
で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5.3部(即ち、上記ビニル基含有ジメチルポリシロキサン(i)及び(ii)中のビニル基に対するSiH基のモル比が1.5となる量に相当する)、及び、塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金濃度1質量%)を0.05部加え、よく撹拌して得たシリコーン組成物100部に合成例1で製造したシリカ(1)〜(6)をそれぞれ100部添加して、プラネタリーミキサーで混合することで、液状シリコーン組成物1〜6を調製した。シリコーン組成物5はミキサー混合で粉体状となり、以下の評価はできなかった。シリコーン組成物1〜4と6を150℃×4時間の条件で硬化させた。
得られた硬化物の物性をJIS K6301に従い、測定した。なお、硬さはスプリング式TypeA型試験機による。その結果を表1に示す。
【0086】
また、ガラス基板上に銅に銀メッキを施した基板を置き、その上から前記組成物を厚さ0.3mmに塗布し、70℃,1時間で硬化させ、評価サンプルを作製した。この評価サンプルを体積2リットルの密閉容器に入れると共に、この密閉容器に(NH42S20gとH2O10gを入れ、H2Sガスを発生させた密閉状態で23℃において表2に示す時間で放置し、銅に銀メッキを施した基板の腐食の発生を評価した。結果を表2に示す。
また、この組成物を150℃×4時間の条件で厚さ1mmの硬化被膜を作製し、波長が400〜800nmにおける光透過率を測定した。また、JIS Z0208に規定された方法に準拠して透湿率を測定した。結果を表2に示す。
【0087】
【表2】

○:腐食無 △:一部変色 ×:黒色に変色(完全腐食)
【0088】
[実施例5,6、比較例3〜5]
合成例1で製造したシリカ(1)の配合量100部を、25部、150部、500部、0部、3部にそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様にして、液状シリコーン組成物7〜11を調製した。シリコーン組成物9は高粘度のペースト状となり、作業性が悪く、良好な物性測定用の試験片が作製できなかった。シリコーン組成物9以外の組成物を用い、80℃×4時間の条件で硬化させた。
得られた硬化物の物性、腐食試験及び光透過率を、実施例1と同様に測定した。結果を表3に示す。
【0089】
【表3】

○:腐食無 △:一部変色 ×:黒色に変色(完全腐食)
【0090】
[実施例7]
下記式(iii)
【化14】

(但し、L=450)
で示される両末端トリメトキシシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン100部にチタンキレート触媒(商品名TC−750:マツモトファインケミカル社製)0.1部を加え、よく撹拌して得たシリコーン組成物100部にシリカ(1)を50部添加して、液状シリコーン組成物12を調製した。
23℃/50%RH,24hrで硬化した以外は実施例1と同様に硬化物の物性、腐食試験及び光透過率を測定した。
硬化物の硬さは68(Type A)、伸び95%、引っ張り強さは5(MPa)であった。
また、腐食試験では8時間経過してもほとんど腐食は起こっていなかった。
更に、可視光範囲での光透過率は96%と良好であった。
【0091】
[実施例8、比較例6]
シリコーン組成物1とシリコーン組成物10 100部にYAG系黄色蛍光体粉末を10部混合し、それぞれの組成物を得た。
この組成物を厚さ2mm、一辺が3mm角の熱可塑性樹脂で成形した容器に入れ、60℃で1時間、150℃で2時間のステップキュアを行い、シリコーン組成物を硬化させた。
硬化後、パッケージを切断し、蛍光体の沈降度合いを調べた。その結果、シリコーン組成物1に蛍光体を充填したものは蛍光体の沈降は認められなかった(実施例8)。しかし、シリコーン組成物10に充填した系では蛍光体の沈降が認められた(比較例6)。
【0092】
[実施例9〜14、比較例7〜9]
凹部の開口部を有するLED用プレモールドパッケージ(厚さ1mm、一辺が3mmで開口部、直径2.6mm、底辺部が銀メッキ)にInGaN系青色発光素子を銀ペーストを用いて固定させた。次に外部電極と発光素子を金ワイヤーにて外部電極と接続した。その後、下記表に示した実施例及び比較例のシリコーン組成物をパッケージ開口部内に注入し、60℃で1時間、更に150℃で2時間硬化させることで発光半導体素子を形成した。
作製した発光半導体装置を用い、下記方法により温度サイクル試験と初期の輝度を測定した。
『温度サイクル試験』:−40℃/30分〜125℃/30分の冷熱サイクル試験において、1000サイクル後のパッケージに剥離のないものを「不良無し」とした。
『初期の輝度』:LEDに10mAの電流を印加し、LEDを発光させて大塚電子製(LP−3400)により輝度を測定し、輝度が15mlm(ミリルーメン)以上のものを(良好)、輝度が15mlm(ミリルーメン)未満をものを「低下」とした。
【0093】
【表4】

不可*:シリコーン組成物が粉体状となり、パッケージに注型できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
付加硬化型又は縮合硬化型シリコーン組成物中のシラン及びシロキサン成分の合計100質量部に対して、表面に下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサンを処理前のシリカ質量に対して4%以上グラフト化したシリカ粒子を5〜400質量部含有することを特徴とする高透明シリコーン組成物。
【化1】

(式中、R1は互いに同一又は異種の炭素数1〜10の非置換又は置換の一価炭化水素基、R2はメチル基又はエチル基、aは1〜50、bは0又は1、dは0又は1、c及びeは0〜10の整数であり、a+b+dは3〜52の整数を示す。)
【請求項2】
硬化物が400〜800nmで80%以上の光透過率を有する請求項1記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
付加硬化型シリコーン組成物が、
(A)アルケニル基含有オルガノポリシロキサン、
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)白金族金属系触媒
を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
縮合硬化型シリコーン組成物が、
(D)分子鎖末端が水酸基又は加水分解性基で封鎖されたオルガノポリシロキサン、
(E)珪素原子に結合した加水分解可能な基を1分子中に3個以上有するシランもしくはその部分加水分解縮合物、
(F)縮合触媒
を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
更に、蛍光体を含有する請求項1乃至4のいずれか1項記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
シリカ粒子の平均粒径が1nm以上1,000nm未満である請求項1乃至5のいずれか1項記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1項記載のシリコーン組成物の硬化物で封止した発光半導体装置。

【公開番号】特開2012−251166(P2012−251166A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−196006(P2012−196006)
【出願日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【分割の表示】特願2007−295295(P2007−295295)の分割
【原出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(304027279)国立大学法人 新潟大学 (310)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】