説明

高透磁率方向性電磁鋼材

【課題】優れた加工及び磁気特性を有する高透磁率の方向性電磁鋼板の製造方法を提供する。
【解決手段】重量%で、約2.5から約4.5%までの珪素と、約0.1から約1.2%までのクロムと、約0.02から約0.08%までの炭素と、約0.01から約0.05%までのアルミニウムと、約0.1%までのイオウと、約0.14%までのセレンと、約0.03から約0.15%までのマンガンと、約0.02%までの錫と、約1%までの銅と、必要な鉄及び残留要素とのバランスとを有するものであり、少なくとも毎秒30℃の割合で875〜950℃から400℃以下の温度まで冷間圧延される前に焼鈍された後、急冷される。少なくとも80%の最終圧下により1以上の工程で冷延圧下され、焼鈍され、脱炭され、そして少なくとも片面が焼鈍分離剤で被覆される。最終焼鈍は、安定した2次粒成長と、少なくとも1840の796A/mで測定される透磁率とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理されたストリップ材又は鋼帯から高透磁率方向性電磁鋼材を製造する方法に関し、この鋼材は珪素2.0〜4.5%と、クロム0.1〜1.2%と、炭素を少なくとも0.01%と、アルミニウム0.01〜0.05%とを有するものである。前記鋼材ストリップ材は、典型的に、少なくとも45μΩ−cmの体積抵抗率と、少なくとも20%のオーステナイト体積分率(γ1150℃)と、最終冷間圧延前、少なくとも1面にストリップ材の全厚の少なくとも2%のフェライト単層の単一構造層の厚さとを有するものである。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼材は大きく2種類に特徴付けられる。無方向性電磁鋼材は、均一の磁気特性が全方向に亘って与えられるように設計されるものである。これらの鋼材は、鉄、珪素及びアルミニウムを有することで鋼板に高い体積抵抗率が与えられ、これによりコア損失が低減されるものである。また、無方向性電磁鋼材は、マグネシウム、リン及び当該技術分野で公知の他の要素を含み、より高い体積抵抗率が与えられ、磁化の最中に生じるコア損失を低減させるようになっている。
【0003】
方向性電磁鋼材は、選択的な結晶粒方位の発達によって得られる高い方向性の磁気特性で、高い体積抵抗率が与えられるように設計されるものである。これらの鋼材は、使用した結晶粒成長インヒビターと、用いた処理手順と、達成された結晶粒方位の特性(796A/mで測定される透磁率)とによって区別される。標準(若しくは従来)の方向性電磁鋼材が少なくとも1780の透磁率を有しているのに対し、高透磁率方向性電磁鋼材は少なくとも約1840(一般的には1880以上)の透磁率を有する。通常、商業的に生産された方向性電磁鋼材の体積抵抗率は45〜55μΩ−cmの範囲内であって、これは製鋼方法に付随する鉄や他の不純物と共に珪素2.95%〜3.45%を添加することによって与えられる。特に重要な処理工程として、溶融、スラブ若しくはストリップ材キャスティング、スラブ再加熱、熱間圧延、焼鈍及び冷間圧延が含まれる。
【0004】
方向性電磁鋼材において所望の磁気特性を達成するために、キューブオンエッジ(cube−on−edge)の結晶粒方位が、鋼材の最終高温焼鈍中に先行技術では一般に2次粒成長として引用される処理により発達させられる。2次結晶粒成長とは、微小なキューブオンエッジの方向性が優先的に成長し、他の方向性を有する結晶粒を取り込むプロセスである。活発な2次粒成長は、主に2つのファクタに依存するものである。1つ目は、結晶粒構造及び鋼材の結晶組織(特に鋼材面の表層及び表面近くの層)が、2次粒成長に適切な条件を与えることである。2つ目は、初期の粒成長を抑制することができるアルミニウム窒化物、マンガン硫化物、セレン化マンガン等の粒成長インヒビターの分散により、2次粒成長が完了するまで初期粒成長を抑制することである。
【0005】
鋼材の組成や処理は、結晶粒成長インヒビター、微細構造及び結晶組織の形態に影響を与える。高透磁率方向性電磁鋼材を生産するための典型的な方法は、析出アルミニウム窒化物、若しくはマンガン硫化物及び/又はセレン化マンガンと結合した析出アルミニウム窒化物に依存して、初期結晶粒成長を抑制させるものである。銅等の他の析出物が、アルミニウム窒化物との結合に含まれてもよい。熱処理された鋼帯の鋼面表層及び表面近くの層の特性は、高透磁率電磁鋼材の開発に重要である。炭素が低減し、実質的にオーステナイト及びその分解生成物が存在しないこの表面域が、実質的な単相又は単一構造のフェライト微細構造を与えるものであり、先行技術では表面脱炭層として引用されている。或いは、せん断帯(shear band)等のように、単一構造の表層と多様な形態(フェライト相とオーステナイト相との混合相又はその分解生成物)の内層との間の境目として定義されている場合もある。活発な成長を維持し、高次のキューブオンエッジ結晶粒方位を提供する可能性が高いキューブオンエッジ2次粒子核は、単一構造層内、或いは単一構造の表層と多様な形態の内層との間の境目近傍に含まれる。
【0006】
コア損失がより少ない方向性電磁鋼材の開発においては、高い体積抵抗率の鋼材が求められていた。通常、より高い珪素レベルが使用されており、これはオーステナイト相とフェライト相の間に、適切な比率、若しくは相平衡を維持するため、高レベルのオーステナイト生成元素を必要とするものである。炭素は、オーステナイトのレベルを増加させるための最も一般的な添加物である。
【0007】
高透磁率方向性鋼板の製造に高レベルの珪素及び炭素を使用することは、多くの製造上の問題を引き起こし、困難性と製造コストを共に増加させた。より高レベルの珪素や炭素は、凝固、スラブ若しくはストリップ材キャスティング、スラブ若しくはストリップ材再加熱及び/又は熱間圧延などの高温処理中に起こりうる不具合の発生に重要な影響力を有する固相温度を低下させる。より高レベルの珪素と、より少ない炭素の使用は、物質の柔軟性を低下させ、かつ脆弱性を増加させて、鋼材の処理をより困難かつコスト高にするものである。高レベルの珪素と、より少ない炭素は、不安定な2次結晶粒成長の一因となる。珪素レベルが増加すると、窒素の熱力学的活量が増加し、アルミニウム窒化物の粒成長インヒビターの溶解度積が低減する。その後、高溶解温度が必要となり、ホットバンド焼鈍等の処理の生産性が低下してコスト高となる。より高レベルの炭素、及び珪素は、炭素除去に要する時間を増加させ、脱炭焼鈍をより困難かつコスト高にさせる。
【0008】
上記事情に鑑みて、高い体積抵抗率及び改良された処理特性を有する高透磁率方向性電磁鋼材の製造向けに、改良された方法が必要となる。本発明の方法においては、珪素、クロム及び炭素の適切な比率により、活発かつ安定的な2次結晶粒成長と高い磁気特性が提供される。また、本発明の方法は、脱炭処理を向上させるものである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
高透磁率方向性電磁鋼材は、クロムを有する珪素鋼から製造される。粒成長インヒビターは、主にアルミニウム窒化物、又は1以上の硫化/セレン化マンガン若しくは他のインヒビターと組合されたアルミニウム窒化物である。鋼材は高い磁気特性を有し、796A/mで測定した場合少なくとも1840の透磁率を有するものである。この鋼材は、特に炭素除去に要する時間が著しく減少した脱炭焼鈍において、向上した設計性や生産性を有するものである。
【0010】
熱処理された鋼帯は、珪素約2.0〜約4.5%と、クロム約0.1〜約1.2%と、炭素約0.01%以上と、アルミニウム約0.01〜約0.05%と、実質的に鉄と残余成分とから成る残部からなる組成を有するものが提供される。なお、全て重量パーセントである。添加物は、イオウ約0.1%と、セレン約0.14%と、マンガン約0.03〜約0.45%と、錫約0.2%と、銅約1%とを含んで作られてもよい。また、他の添加物は、モリブデン約0.2%と、アンチモン約0.2%と、ホウ素約0.02%と、ニッケル約1%と、ビスマス約0.2%と、リン約0.2%と、ヒ素約0.1%と、バナジウム約.3%とを含んで作られてもよい。任意の好ましい又はより好ましい範囲が、単独で又は広い若しくは好ましい範囲との組合せで使用することができる。
【0011】
鋼材は、少なくとも45μΩ−cmの体積抵抗率と、少なくとも約0.01%の炭素とを有しており、これにより熱処理がされるに従って少なくとも約20%のオーステナイト体積分率が与えられ、少なくとも前記鋼材の1面は熱処理鋼材の全厚の少なくとも約2%のフェライト単層の単一構造層を有する。この鋼材は脱炭後、最終厚になるまで少なくとも1回の冷間圧延によって処理される。脱炭された前記鋼材は、少なくとも片面が焼鈍分離剤で被覆され、その後、高温での焼鈍により2次結晶粒成長が達成され、フォルステライトコーティングを展開して前記鋼材が純化される。
【0012】
クロムの添加は、窒素の熱力学的活量を低下させ、粒成長インヒビターを形成するために使用されるアルミニウム窒化物の溶解度積を低減させる。従って、本発明の鋼材では、熱間圧延の間及び後、アルミニウム窒化物の早期析出が少ない傾向にある。更に、冷間圧延の前に同等量の窒化アルミニウムが提供される間、より低い焼鈍温度及び/又はより短い焼鈍時間が使用されてもよく、これは、製造コストの面では焼鈍におけるエネルギー使用の低減や焼鈍生産性が向上することから有効である。
【0013】
熱処理された鋼帯は少なくとも20%のオーステナイト体積分率を有しており、最終厚にするための冷間圧延前、急冷されて主要なオーステナイト分解生成物としてのパーライトが形成されることを防止する。本発明におけるクロムを含有する鋼材は、マルテンサイト及び/又は残留オーステナイトに変化する傾向が低い。急激な急冷は、オーステナイトが、所望のキューブオンエッジ結晶粒方位や磁気特性の最適な発達に必要とされる残留オーステナイト及び/又はマルテンサイト等の硬質な第2相(a hard second phase)に変化することを確実にするために必要とされる。クロム約0.60%は、好ましい開始急冷温度を上昇させる。
【0014】
本発明の鋼材は、最終製品の磁気特性に妥協をすることなく、これら上記範囲における
改良を実現するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、高い体積抵抗率と、特に本発明の方法による生産性の著しい向上を可能にする脱炭焼鈍での向上した処理特性とを備える高透磁率(1840以上)を有する方向性電磁鋼材の製造方法を提供するものである。本発明の方法により製造された高透磁率電磁鋼材は、クロムの添加が窒素の熱力学的活量を低下させ、粒成長インヒビターの形成に使用される窒化アルミニウムの溶解度積を減少させるという点において、先行技術の方法に対して更なる利点を提供するものである。本発明の鋼材では、熱間圧延の最中及び後において、早期に窒化アルミニウムが析出される傾向が低く、改良された調節機能が提供される。冷間圧延の前に同等量の窒化アルミニウムが提供される間、より低い焼鈍温度及び/又はより短い焼鈍時間が使用されてもよく、これは、製造コストの面では焼鈍におけるエネルギー使用の低減や生産性が向上することから有効である。
【0016】
本発明は、高透磁率方向性電磁鋼材が厚さ約1.5〜約4mmの熱処理された鋼帯から製造される処理を教示するものである。この鋼帯は、圧延前、珪素約2.0〜約4.5%と、クロム約0.1〜約1.2%と、炭素約0.01%以上と、アルミニウム約0.01〜約0.05%と、実質的に鉄と残余成分とから成る残部を有するものであり、これらは、全て重量パーセントである。添加物が、硫黄約0.1%以下と、セレン約0.14%以下と、マンガン約0.03〜約0.45%と、錫約0.2%以下と、銅約1%以下とを含んで作られてもよい。また、他の添加物が、モリブデン約0.2%以下と、アンチモン約0.2%以下と、ホウ素約0.02%以下と、ニッケル約1%以下と、ビスマス約0.2%以下と、リン約0.2%以下と、砒素約0.1%以下と、バナジウム約0.3%以下とを含んで作られてもよい。あらゆる好ましい範囲が単独で使用されるか、又は広い範囲若しくは好ましい範囲と組合せて使用することができる。上記及び本明細書の全体にわたる全パーセントは重量%であって、記載がない場合は冷間圧延前の定められている値である。
【0017】
好ましい組成は、珪素2.75〜3.75%と、クロム0.25以上〜約0.75%と、炭素約0.03〜約0.06%と、アルミニウム約0.02〜約0.03%と、窒素約0.005〜約0.01%と、マンガン約0.05〜約0.15%と、錫約0.05〜約0.1%と、イオウ及び/又はセレン約0.02〜約0.03%と、銅約0.05〜約0.25%と、実質的に鉄と残余成分とから成る残部を有するものである。あらゆる好ましい範囲が単独で使用されるか、又は広い範囲若しくは好ましい範囲と組合せて使用することができる。より好ましい組成は、Siを3.0〜3.5%含むものである。より多くの珪素は、より高い体積抵抗率を提供することによってコア損失を向上させるためには望ましいが、望ましい相バランス、微細構造特性及び設計特性を維持するため、フェライト相の形成及び/又は安定性、並びにオーステナイト体積分率(γ1150℃)の低下に与える珪素の影響を考慮しなければならない。
【0018】
冷間圧延前の熱処理された鋼帯の組成は、炭素約0.01%以上、好ましくは炭素約0.02〜約0.08%、より好ましくは炭素約0.03〜約0.06%を有するものである。冷間圧延前の熱処理された鋼帯において、約0.010%以下の炭素のレベルは望ましくない。2次再結晶が不安定になり、製品のキューブオンエッジ方位の質が損なわれるからである。フェライト単層の単一構造層の薄層化は鈍い2次粒成長を招き、低質なキューブオンエッジ方位を提供することになり、脱炭焼鈍において炭素0.003%以下を得る困難性の増大を招くため、上記炭素約0.08%の高い比率は望ましいものではない。本発明においては、脱炭焼鈍の最中、取り除かれる必要のある炭素の容量が低減され、脱炭焼鈍に要する時間が顕著に削減され、生産性が顕著に向上し、製造コストが減少する。
【0019】
本発明の初期鋼材は、熱処理された鋼帯から作られる。「熱処理された鋼帯」は、断続的長さの鋼板を意味し、例えば炭素、珪素、クロム、アルミニウム及び窒素を含む鉄融解組成物を用いたインゴット鋳造、厚スラブキャスティング(thick slab casting)、薄スラブキャスティング(thin slab casting)、ストリップ材鋳造、又はコンパクトストリップ製造法(Compact Strip Production)による他の方法等を使用して製造されたものである。
【0020】
珪素、クロム及び炭素は、本発明の方法に関係する主要な要素であり、また、他の要素も顕著な量がある場合、オーステナイトの容量に作用することを考慮しなければならない。また、単一構造の厚さ及びオーステナイト体積分率は、最終厚にするための冷間圧延前の炭素含有量の変化により影響を受けるものである。
【0021】
方程式(1)は、通常の合金添加物が鉄の体積抵抗率(p)に及ぼす影響を計算するために使用することができる。
【0022】
【数1】

【0023】
ここで、Mn、Si、Al、Cr及びPは、夫々鋼材を構成するマンガン、珪素、アルミニウム、クロム、及びリンの比率である。高い体積抵抗率の電磁鋼材は長い間所望されてきたが、一般に、先行技術の方法は合金中の珪素の比率を増加させることに依存するものである。先行技術で示されるように、珪素比率の増加は相バランス、すなわちオーステナイト及びフェライトの相対比率を処理中に変化させるものとなる。
【0024】
下記の等式(2)は、サダヨリその他による、"低コア損失方向性珪素鋼板の開発(Developments of Grain Oriented Si Steel Sheets with Low Iron Loss)"、川崎製鉄技報、Vol.21、No.3、pp.93〜98、1989、に開示されていた等式の拡張形であって、珪素3.0%〜3.6%と炭素0.030〜0.065%とを含む鉄において、1150℃(γ1150℃)で、オーステナイトの体積分率のピークを計算するためのものである。
【0025】
【数2】

【0026】
相バランスは、通常は少なくともオーステナイト約20%、より一般的には約20〜約50%、好ましくは約30〜約40%を有する高透磁率の方向性鋼板において重要である。処理中のオーステナイト相は、トランスクリティカル(遷移臨界)的プロセスの焼鈍の間、通常の粒成長を制御し、窒化アルミニウムの溶解を促進させて、更に<111>に近似したより鋭い再結晶組織(マルテンサイト及び/又は残留オーステナイト等の硬化相への変化)を発達させる。通常、より高い珪素レベルは、方程式(8)に示されるように所望の層バランスを維持するため、より高い炭素含有量を必要とする。珪素と炭素の高い比率は、電磁鋼材として不十分な物理学的特性の一因となり、主に、脆弱性を増加させ、脱炭中に炭素を取り除く困難性を増加させる。本発明は、高い磁気特性と、クロムの添加によって珪素及び炭素のレベルを減少させる処理利点とを提供するものである。
【0027】
本発明における高透磁率方向性鋼板は、クロム含有量を約0.1%〜約1.2%、好ましくは0.25%以上〜約0.6%、より好ましくは0.3%以上〜約0.5%の範囲で有してもよい。クロム約1.2%以下がオーステナイトの形成を促すのに対して、クロムレベル約1.2%以上は脱炭及びガラス膜の形成に悪影響を及ぼす。
【0028】
熱処理された鋼帯のフェライト単層の単一構造層の厚さは、安定的な2次結晶粒成長を達成するために重要である。より多量の珪素、炭素又はクロムの使用は、この層厚を薄くさせる。一般的に、熱処理された鋼帯は、最終的な厚さに仕上げるための冷間圧延前に、30秒以上の均熱時間の間、1000〜1200℃の温度の酸化的環境で熱間圧延され、焼鈍される。冷間圧延の前の不十分な炭素除去は、フェライト単層の単一構造層の薄層化を引き起こす。本発明においては、炭素、珪素及びクロムレベルを適切に調節することで、最終冷間圧延前の炭素除去に対する依存度を低くして、安定的な2次結晶粒成長の生成をもたらすフェライト単層の単一構造層の厚さを提供するものである。また、過剰な炭素除去はオーステナイトの体積分率を低下させるものである。
【0029】
本発明の重要な特徴は、合金の相バランスである。より高い珪素レベルは、オーステナイトとフェライトの所望比率を維持するために、より高い炭素含有量を典型的に必要とする。しかし、2次結晶粒成長は、表面フェライト単層の単一構造層の厚さの減少が原因で、悪影響を受ける。本発明の方法に従うクロム添加物の使用は、表面フェライト単層の単一構造層を薄層化させることなく、高い体積抵抗率と、オーステナイト及びフェライトの適正な比率とを与える方法を提供するものである。
【0030】
本発明の開発過程において、クロムの添加はオーステナイトの分解挙動に影響を与え、冷間圧延の間マルテンサイト又は残留オーステナイトの形成をより困難にさせると決定付けられた。"硬化相"、すなわちマルテンサイト、残留オーステナイト又はベイナイト(bainite)は、最終厚にするための冷間圧延前に熱処理された鋼帯において、高透磁率電磁鋼材のキューブオンエッジ方位を最適に発達させるためのには望ましい微細構造特性である。本発明の好ましい実施において、より高レベルのクロムは好ましい急冷開始温度を上昇させる。初期鋼帯の急冷は、最終厚にするための冷間圧延前に、鋼帯を870℃以上〜450℃以下まで毎秒30℃以上の速度、より好ましくは毎秒40℃以上の速度で冷却することにより行い、オーステナイトがパーライトに分解されることを防止するものである。450℃以下で、冷却速度は僅かに低下される。少なくとも毎秒20℃の冷却速度が使用され、マルテンサイトの焼き戻しが防止されてもよい。熱処理された鋼帯は、毎秒30℃以上の割合で冷却され、マルテンサイト及び/又は残留オーステナイトが主なオーステナイト分解生成物として提供される。
【0031】
鋼材の溶解物が、鋼帯へと変換されている間に、炭素の変化が生じる。
【0032】
本発明の間接的な教示は、最終厚にするための冷間圧延前の鋼帯における炭素、珪素及びクロムの容量が、安定的かつ一貫した2次粒成長の発達に必要とされるオーステナイトの所望比率を提供するのに十分でなければならないということである。
【0033】
表面単一構造の層厚は等式(3)を使用することで計算することができる。
【0034】
【数3】

【0035】
ここで、Iはmmで示される表面単一構造の層厚であり、γ1150℃は等式(2)によって導かれた冷間圧延前の鋼帯におけるオーステナイト体積分率であり、tはバンド材の厚さであり、%Siは合金に含まれる珪素の重量パーセントである。熱処理されたバンド材のうち少なくと1つの表面フェライト単層の単一構造層の厚さは、熱処理された鋼帯の全厚さの少なくとも2%、好ましくは少なくとも4%でなければならない。炭素の添加は制御され、所望のオーステナイト体積分率が、冷間圧延前の初期鋼帯の少なくとも2%である表面フェライト単層の単一構造層の厚さと共に提供される。好ましくは、約20〜40%のオーステナイト体積分率と、少なくとも4%のフェライト単層の単一構造層の厚さが提供されるものである。
【0036】
本発明のクロムを有する高透磁率方向性電磁鋼材は、窒化アルミニウム粒成長インヒビターを提供するために、アルミニウム約0.01%〜約0.05%、好ましくは約0.020〜約0.030%の量を含み、窒素約0.005%〜約0.010%、好ましくは約0.006〜約0.008%の量を含むものである。先に述べたように、本発明の鋼材における窒素の熱力学的活量の低下は、熱間圧延及び熱延鋼帯の焼鈍において柔軟性を提供する窒化アルミニウムの溶解性を向上させるので、望ましいものである。しかし、最終焼鈍における早期の窒化アルミニウムの溶解は、不安定な2次結晶粒成長を招く可能性があることが当業者に認識されている。窒化アルミニウムのインヒビターが十分に安定していない場合、溶解度積を再調整するためより高い溶解性のアルミニウムが使用される。
【0037】
本発明の更なる利点は、脱炭焼鈍に要する時間が非常に短縮されることである。本発明の鋼材との合金バランスは、炭素及び珪素の低い比率と、使用されるクロムの高い比率とを可能にさせる。工業的なトライアルにおいて、脱炭焼鈍の生産性の30%の向上が、厚さ0.27mmの高透磁性方向性鋼材で示された。
【0038】
また、より高いクロムレベルの使用は、内部断裂(internal rupture)を減少させることによって、キャストスラブの内部品質を向上させるという利点がある。これは、銅が鋼材に含まれている場合にとりわけ当てはまる。この向上した延性は、結晶粒境界に銅が分配されるのを抑制することに関係する可能性がある。固相温度が上昇し、高いスラブ再加熱温度が使用される場合、表面の酸化は低減される。
【0039】
本発明の高透磁率電磁鋼材の製造は、従来技術で公知の処理工程を含むものであってもよく、冷間圧延の連続的工程の間の焼鈍処理を使用する1以上の冷間圧延工程、冷間圧延の間の鋼材のパス間時効(interpass aging)、脱炭焼鈍の前又は間の前記鋼材の超高速焼鈍、脱炭焼鈍の間又は後の鋼材への窒素の導入、磁壁間隔を細分化して更にコア損失を改善するための最終高透磁率電磁鋼材に対するレーザスクライブ等の磁区細分化処理の適用、又は高透磁率電磁鋼材ストリップ材に残留引っ張り応力を与えて更にコア損失を改善するための最終ストリップ材に対する2次被覆の適用、を含むものであるが、これらに制限されない。
【0040】
窒化向けの鋼帯組成は、珪素約2.0〜約4.5%と、クロム0.1以上〜約1.2%と、炭素約0.02〜約0.045%と、アルミニウム約0.01〜約0.05%と、鉄と残りの要素との間の必要なバランスとを有するものである。鋼帯の組成は更に、Mnを0.05〜0.5%と、Nを0.001〜0.013%と、Pを0.005〜0.45%と、及びSnを0.005〜0.3%と、0.3%のSb、As、Bi若しくはPbの単独又は組合せ、の添加物を含んでもよい。この構成は、脱炭焼鈍の間又は後に窒化される高透磁率方向性電磁鋼材向けに、特定の利便性を有するものである。この鋼材構成の処理では、796A/mで測定した透磁率であって、1880以上、通常は1900よりも上の透磁率が与えられる。
【0041】
窒化向けの別の鋼帯の組成は、珪素約2.0〜約4.5%と、クロム約0.1〜約1.2%と、炭素約0.01〜0.03%と、アルミニウム約0.01〜約0.05%と、必須の鉄及び残余成分との均衡を有するものである。この鋼帯構成は更に、Mnを0.05〜0.5%と、Nを0.001〜0.013%と、Pを0.005〜0.045%と、Snを0.005〜0.3%と、及び0.3%のSb、As、Bi若しくはPbの単独又は組合せ、の添加物を含んでもよい。この組成は、脱炭焼鈍の間又は後に窒化される高透磁率方向性電磁鋼材向けに、特定の利便性を有するものである。この鋼材組成物の処理では、796A/mで測定した場合、1840以上の透磁率が与えられるものである。
【0042】
実施例1
【0043】
表1は、高透磁率電磁鋼材用のクロム、珪素及び炭素の含有範囲の微細構造特性をまとめたものである。
【0044】
【表1】

【0045】
これら典型的な結果は、2.3mm厚を有する初期ストリップ材から設計される、50μΩ−cmと同等若しくはそれ以上の体積抵抗率を有する鋼材に対してのものである。鋼材AからGは、本発明の教示に従う構成であって、クロム含有量1.2%が使用される一方、20%以上のオーステナイト体積分率(γ1150℃)と、初期鋼帯厚の2%以上の単一構造層の厚さ(I/t)とを実現するものである。これら微細構造特性は、冷間圧延前、少ない炭素含有量を初期鋼帯に使用しながら実現される。
【0046】
実施例2
【0047】
工業規模のトライアルでは、先行技術及び本発明の方法に示される構成が加熱され、下記表IIの鋼材H及びIが夫々溶解され、約200mm厚を有するスラブに断続的にキャストされ、約1200℃まで加熱されて約150mm厚まで熱延圧下され、更に約1400℃まで加熱されて約2.0mmと約2.3mmの初期鋼帯厚まで熱間圧延された。表IIIの微細構造特性は、鋼材HとIが活発な2次粒成長を促す特性を有することを示すものである。
【0048】
【表2】

【0049】
鋼材H及びIから熱間圧延された鋼帯は、公称値(nominal)1150℃の温度で焼鈍され、空気中で875〜975℃まで冷却し、最後に100℃又はそれ以下まで、毎秒15℃以下の割合若しくは毎秒50℃を超える割合で冷却した。鋼材H及びIから熱処理された鋼帯は、中間焼鈍なしで、約0.20mm〜約0.28mmの間の最終厚まで直接冷間圧延した。最終冷間圧延されたストリップ材は、鋼材の炭素レベルを0.003%若しくはそれ以下まで低下させるため、公称値(nominal)0.40〜0.45の割合のH2O/H2を有する湿った水素−窒素環境において、25℃〜740℃までは毎秒500℃を越える割整合の急加熱が使用され、公称値(nominal)815℃の温度で脱炭焼鈍した。更に、脱炭されたストリップ材にはMgOコーティングが施され、水素−窒素環境下において公称値(nominal)1200℃の均熱温度(soak temperature)まで加熱することにより最終焼鈍する。そして、前記鋼材は少なくとも15時間100%乾燥窒素に均熱し、その後余分なMgOを除去するために前記最終焼鈍した鋼材を研磨し、非酸化水素−窒素雰囲気下、830℃にて2時間、応力除去焼鈍が施された。サンプルは、発達したキューブオンエッジ方位の特性を判断するため、透磁率がH=796A/mで連続的にテストされ、2次結晶粒構造が検証された。
【0050】
【表3】

【0051】
図1は、796A/mでの透磁率に対する最終厚を示すものであり、鋼材H及びIの初期鋼帯は毎秒15℃若しくはそれ以下の割合で冷却された。非常に優れた、かつ一貫性のある特性が、0.25mm若しくはそれ以上の最終厚の鋼材Hで得られた。しかし、0.25mm以下の最終厚での結果は、一貫性がなく、本発明の構成を使用する高透磁率方向性電磁鋼材の生産が困難であることを示すものである。
【0052】
図2は、毎秒50℃と同等若しくはそれ以上の冷却速度が本発明のより好ましい方法に従って提供された場合の、鋼材H及びIの結果を示すものである。この急冷速度では、良質のキューブオンエッジ方位の発達をより促す微細構造を備える鋼材Iが提供された。鋼材Iでの改善された結果は、本発明のより好ましい方法が、0.27mm以下の最終厚を有する高透磁率方向性電磁鋼材を生産するために使用することができることを示すものである。
【0053】
図3は、鋼材Iの代表的な2次結晶粒構造であって、2.3mm厚を有する初期鋼帯から0.23mmの最終厚まで処理され、2次粒成長の安定性及び完成度における初期ストリップ材の急冷効果を示すものである。図3に示されるように、本発明の好ましい方法の急冷を使用しない場合、広範囲にわたる小規模で不完全な方向性が2次粒成長の最中消費されず不完全な透磁率を招くのに対し、本発明の好ましい方法の急冷の使用は完全かつ一貫した2次粒成長を与えるものである。
【0054】
実施例3
【0055】
【表4】

【0056】
表4に示される一連の加熱は、表2の鋼材H及びIと同様の構成で施された。この鋼材は、開始厚2.3mmから最終厚0.27mmまで処理された。処理は、鋼材JからOの初期鋼帯が870℃〜100℃又はそれ以下まで、毎秒15℃若しくはそれ以下の割合で冷却されたものであるのに対し、鋼材PからUは870〜980℃から100℃又はそれ以下まで、毎秒50℃若しくはそれ以上の割合で冷却されたことを除き、実施例2の手順に従って実施された。脱炭焼鈍の処理において、鋼材JからOは815℃又はそれ以上で195〜200秒間保持されたのに対し、鋼材PからUは130〜135秒間保持された。鋼材のサンプルは、炭素除去を検証するためにテストされ、その分布は表5にまとめられている。それから、脱炭焼鈍されたストリップ材は、MgO焼鈍分離コーティングが施され、1200℃で最終焼鈍がなされた。その後、鋼材は研磨されて余分なMgOが取り除かれ、2次コーティングで被覆され、825℃の温度で熱延され、レーザス研磨された。最後に、鋼材は、ASTM A804の単一シートテスト方法を使用してコア損失のテストがなされた。
【0057】
【表5】

【0058】
表4に示される鋼材JからUの磁気特性は同程度のものであるが、これらの結果は、本発明の好ましい方法に従って製造された鋼材PからUが、鋼材JからOよりも脱炭が相当容易であり、生産性の向上と製造コストの削減を可能にすることを示した。
【0059】
一連の加熱は、従来技術の方法と、表2の鋼材M及びNと同様の構成を有する本発明の方法とに従って施された。処理は、初期ストリップ材の焼鈍中、先行技術方法の鋼材が875〜950℃から100℃又はそれ以下まで、毎秒15℃若しくはそれ以下の割合で冷却されたのに対し、本発明の鋼材は毎秒50℃若しくはそれ以上の割合で冷却されたことを除き、例2の手順に従って実施された。両方の鋼材は、開始厚2.3mmから最終厚0.27mmまで90%冷間圧延され、続いて脱炭焼鈍が施されてストリップ材の炭素含有量は0.003%以下まで低減された。
【0060】
脱炭焼鈍処理において、両方の鋼材は例2の手順を使用して処理され、鋼帯は815℃まで加熱された。しかし、鋼材Mは815℃又はそれ以上で195〜200秒間保持されたのに対し、鋼材Nは130〜135秒間保持され炭素除去に効果が認められた。脱炭焼鈍の後、サンプルを確保して炭素除去の程度を検証し、分布が表5にまとめられた。それから、脱炭焼鈍されたストリップ材は、MgO焼鈍分離コーティングが施され、1200℃で最終焼鈍がなされた。その後、鋼材は研磨されて余分なMgOが取り除かれ、2次コーティングで被覆され、825℃の温度で熱延され、米国特許第4,456,812号に従いレーザ研磨された。最後に、鋼材は、ASTM A804の単一シートテスト方法を使用してコア損失のテストがなされた。
【0061】
表4に示された先行技術のタイプMと本発明のNとの両方の鋼材の磁気特性は同程度のものであるが、表5に示されるこれらの結果では、本発明の方法に従って製造された鋼材が、先行技術に従って製造された鋼材よりも脱炭が相当容易であり、生産性の向上と製造コストの削減を可能にすることが示された。
【0062】
様々な改良が本発明の精神及び範囲を離れずに本発明に加えられてもよいと理解される。従って、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲により定められるものである。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本発明における高透磁率方向性電磁鋼材の、透磁率H=796A/mにおける最終冷間圧延前の低冷却率(<15℃/秒)の影響を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明における高透磁率方向性電磁鋼材の、透磁率H=796A/mにおける最終冷間圧延前の急冷率(>50℃/秒)の影響を示すグラフである。
【図3】図3は、1Xでの写真であって、先行技術の低冷却率と、本発明の急冷却率とを使用して製造された高透磁率方向性電磁鋼材の0.23mm厚サンプルの2次結晶粒構造を比較したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
方向性電磁鋼材を製造する方法であって、
厚さ1.5〜4mmの鋼帯を提供する工程を有し、
前記鋼帯の組成は、珪素2.0〜4.5%、クロム0.25〜1.2%、炭素0.01〜0.08%、アルミニウム0.01〜0.05%、及び鉄と残余不可避不純物とを有するものであり、
また、前記鋼帯は、少なくとも45μΩ−cmの体積抵抗率、及び少なくとも20%のオーステナイト体積分率(γ1150℃)を有し、
前記鋼帯を焼鈍(アニール)し、熱処理された鋼帯の全厚の少なくとも2%の厚さのフェライト単層の単一構造層の厚さを提供する、前記鋼帯を焼鈍する工程と、
前記鋼帯を1若しくはそれ以上の段階で冷間圧延して、冷間圧延されたストリップ材を提供し、少なくとも80%の最終冷延率を提供するものである、前記冷間圧延する工程と、
前記鋼帯を2以上の段階で冷間圧延する場合に、連続する冷間圧延段階の間で前記冷間圧延されたストリップ材に中間焼鈍を施す工程と、
前記冷間圧延されたストリップ材に磁気時効が抑制されるように脱炭焼鈍する工程と、
前記焼鈍が施されたストリップ材の少なくとも1表面を焼鈍分離剤で被覆する工程と、
前記被覆されたストリップ材に最終焼鈍を施して、2次結晶粒成長を生じさせ、これにより796A/mで測定した場合少なくとも1840の透磁率が提供される、前記最終焼鈍する工程と
を有する、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記組成は、イオウ0.1%、セレン0.14%、マンガン0.03〜0.15%、錫0.2%、及び銅1%、を有するものである。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記フェライト単層の単一構造層は、前記ストリップ材の少なくとも1面に少なくとも4%の厚さを有するものである。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記オーステナイト体積は20〜40%である。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記オーステナイト体積は25〜35%である。
【請求項6】
請求項1記載の方法において、前記冷間圧延は1段階で施され、最終冷延率は少なくとも85%となるものである。
【請求項7】
請求項1記載の方法において、最終的な厚さにするための冷間圧延前の前記ストリップ材の微細構造は、1体積%以上のマルテンサイト及び/又は残留オーステナイトを有するフェライトマトリックスを有し、前記最終的な厚さにするための冷間圧延前の前記ストリップ材は少なくとも0.020%の炭素含有量を有するものである。
【請求項8】
請求項1記載の方法において、前記体積抵抗率は少なくとも50μΩ−cmである。
【請求項9】
請求項1記載の方法において、前記炭素は0.03%〜0.06%である。
【請求項10】
請求項1記載の方法において、前記クロムは0.25%〜0.75%である。
【請求項11】
請求項1記載の方法において、前記クロムは0.3%以上〜0.5%である。
【請求項12】
請求項1記載の方法において、前記珪素は2.75%〜3.75%である。
【請求項13】
請求項1記載の方法において、前記珪素は3.0%〜3.5%である。
【請求項14】
請求項1記載の方法において、前記アルミニウムは0.02%〜0.03%である。
【請求項15】
請求項1記載の方法において、前記鋼帯の組成は、更に、0.05%〜0.09%のマンガンを有するものである。
【請求項16】
請求項1記載の方法において、前記錫は0.05%〜0.1%である。
【請求項17】
請求項1記載の方法において、前記イオウは及び/又はセレンは0.02%〜0.03%である。
【請求項18】
請求項1記載の方法において、前記鋼帯の組成は、更に、0.05%〜0.15%の銅を有するものである。
【請求項19】
請求項1記載の方法において、前記炭素は0.003%以下の値まで脱炭されるものである。
【請求項20】
請求項1記載の前記方法において、前記脱炭焼鈍する工程は、毎秒100℃以上の速度の急速加熱を含むものである。
【請求項21】
方向性電磁鋼帯を一次焼鈍する方法であって、
珪素2.0〜4.5%と、クロム0.1〜1.2%、炭素0.01〜0.08%、アルミニウム0.01〜0.05%、窒素0.003〜0.013%、及び実質的に鉄と残余成分とから成る残部を有する方向性電磁鋼帯を提供する工程と、
前記鋼帯を1150℃以上の温度まで加熱する工程と、
1150℃以上のピーク温度において、少なくとも1秒間の均熱を提供する工程と、
前記鋼帯を前記均熱温度から、1000℃〜870℃の温度に徐冷する工程と、
マルテンサイトの焼き戻しを防止するために、前記最終徐冷温度を開始焼入れ温度として、前記鋼帯を毎秒30℃以上の速度で、400℃以下の温度まで焼入れする工程と
を有する、方法。
【請求項22】
請求項21記載の方法において、前記鋼帯は毎秒20℃以上の速度で400℃〜100℃まで冷却されるものである。
【請求項23】
請求項21記載の方法において、前記鋼帯は、前記最終徐冷温度を開始焼入れ温度として、毎秒40℃以上の速度で、400℃以下の温度まで冷却されるものである。
【請求項24】
方向性電磁鋼材を製造する方法であって、
厚さ1.5〜4mmの鋼帯を提供する工程を有し、
前記鋼帯の組成は、珪素2.0〜4.5%、クロム0.1〜1.2%、炭素0.01〜0.03%、アルミニウム0.01〜0.05%、及び実質的に鉄と残余成分とから成る残部を有するものであり、
また、前記鋼帯は、少なくとも45μΩ−cmの体積抵抗率、及び少なくとも20%のオーステナイト体積分率(γ1150℃)を有するものであり、
さらに、
前記鋼帯を焼鈍し、前記熱処理された鋼帯の全厚の少なくとも2%の厚さのフェライト単層の単一構造層を提供する工程と、
前記鋼帯を1以上の段階で冷間圧延して冷間圧延されたストリップ材を提供し、少なくとも80%の最終冷延率を提供するものである、前記冷間圧延する工程と、
前記冷間圧延されたストリップ材を焼鈍する工程と、
前記冷間圧延されたストリップ材を脱炭焼鈍し、磁気時効が抑制されるように脱炭焼鈍する工程と、
前記脱炭されたストリップ材を窒化させる工程と、
前記焼鈍されたストリップ材の少なくとも1面を焼鈍分離剤で被覆する工程と、
前記被覆されたストリップ材を最終焼鈍して、2次結晶粒成長を生じさせ、これにより796A/mで測定した場合少なくとも1840の透磁率が提供される工程と
を有する、方法。
【請求項25】
請求項24記載の方法において、前記クロム含有量は0.25%以上〜1.2%である。
【請求項26】
請求項24記載の方法において、前記クロム含有量は0.30%以上〜1.2%である。
【請求項27】
高透磁率方向性電磁鋼材を製造する方法であって、
厚さ1.5〜4mmの鋼帯を提供する工程を有し、
前記鋼帯の組成は、珪素2.0〜4.5%、クロム0.1〜1.2%、炭素0.02〜0.045%、アルミニウム0.01〜0.05%、及び実質的に鉄と残余成分とから成る残部を有するものであり、
また、前記鋼帯は、少なくとも45μΩ−cmの体積抵抗率、及び少なくとも20%のオーステナイト体積分率(γ1150℃)を有し、
前記鋼帯を焼鈍し、この熱処理された鋼帯の全厚の少なくとも2%の厚さの単一構造層を提供するものである、前記焼鈍する工程と、
前記鋼帯を1若しくはそれ以上の段階で冷間圧延し、冷間圧延されたストリップ材を提供し、少なくとも80%の最終冷延率を提供するものである、前記冷間圧延する工程と、
前記冷間圧延されたストリップ材を焼鈍する工程と、
前記冷間圧延されたストリップ材に磁気時効が抑制されるように脱炭焼鈍する工程と、
前記脱炭焼鈍されたストリップ材を窒化させる工程と、
前記脱炭焼鈍されたストリップ材の少なくとも1面を焼鈍分離剤で被覆する工程と、
前記被覆されたストリップ材を最終焼鈍し、2次結晶粒成長を生じさせ、これにより796A/mで測定した場合に少なくとも1880の透磁率を提供する工程と
を有する、方法。
【請求項28】
請求項27記載の方法において、前記クロムは0.25%以上〜1.2%である。
【請求項29】
請求項27記載の方法において、前記クロムは0.30%以上〜1.2%である。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2013−100602(P2013−100602A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−276323(P2012−276323)
【出願日】平成24年12月19日(2012.12.19)
【分割の表示】特願2002−587661(P2002−587661)の分割
【原出願日】平成14年4月23日(2002.4.23)
【出願人】(503404132)エーケー プロパティーズ、インク. (1)
【Fターム(参考)】