高電圧発生装置
【課題】 高電圧発生装置で、オーバーシュートやアンダーシュートを発生せずに、且つ、短時間で出力電圧を目標値に到達させる。
【解決手段】 所定極性の前記直流電圧を出力している状態から所定極性とは逆極性の直流電圧を出力するように極性を切り替える際に、逆極性の目標電圧に達するまでの過渡状態の期間で、直流電圧を所定極性の直流電圧と目標電圧とに応じた変化量で立ち上げるように設定することを特徴とする高電圧発生装置。
【解決手段】 所定極性の前記直流電圧を出力している状態から所定極性とは逆極性の直流電圧を出力するように極性を切り替える際に、逆極性の目標電圧に達するまでの過渡状態の期間で、直流電圧を所定極性の直流電圧と目標電圧とに応じた変化量で立ち上げるように設定することを特徴とする高電圧発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は高電圧を出力する高電圧発生装置に関し、特に高速に目標電圧に立ち上げることが可能な高電圧発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置は、プリントスピードの高速化のために画像を形成するための像担持体としての感光ドラムを各色毎に備える構成(タンデム型とも呼ばれる)が主流となっている。タンデム型のカラー画像形成装置では、例えば中間転写ベルト上に色ズレ検知パターン画像や濃度検知パターン画像を形成し、パッチ画像からの反射光を光学センサで検出して、検出結果に基づき色ズレ補正や濃度補正(これらの補正をキャリブレーションともいう)を実行する。このキャリブレーションは、主に感光ドラムを含むカートリッジの交換時、電源投入時、所定時間の経過後等のタイミングで実行される。尚、上記の色ズレ検知パターン画像や濃度検知パターン画像をあわせた場合は、以下、単にパッチ画像と称する。
【0003】
カラー画像形成装置においては、複数枚の記録材に連続して画像形成を行う(以下、連続印字ともいう)と装置内温度が上昇する。この温度上昇により、感光ドラムに潜像を形成するための走査光学ユニット及び該ユニット内の部品の温度上昇による影響で変形や歪が生じて、画像の色ズレ量が大きくなる場合がある。また、連続の画像形成による感光ドラムの温度が上昇して画像形成条件が変化し、画像濃度が変動してしまうことがある。このような温度上昇による色ズレや濃度変動を低減するためには、連続した画像形成中においても、温度上昇を監視して所定条件になったらキャリブレーションを実行すれば良い。しかし、連続印字の途中でキャリブレーションのために画像形成動作を一時的に中断することになるため、生産性が著しく低下してしまう。
【0004】
そこで、連続印字中の生産性を低下させずに、連続印字を行いながら、キャリブレーションを逐次実行して色ズレや濃度を補正する技術が提案されている。例えば、画像の後端と次の画像の先端の間(画像間や紙間ともいう)の非画像形成領域において、各色ごとに複数回に分割してパッチ画像の形成と検知を行う方法がある。これにより、画像形成を一時中断せずに濃度制御を行うことができる。尚、紙間の非画像形成領域に形成されたパッチ画像は、転写ベルト上に残留したトナー回収時と同様のクリーニング機構、例えば、転写ベルトに当接されたクリーニングブレードによって回収される。なお、転写ベルトとして静電転写ベルトを用いた装置であれば、上記のパッチ画像を問題なくクリーニングできる。しかし、中間転写ベルト方式の装置ではクリーニングブレードに対してトナー像を搬送する方向の上流側に二次転写ローラと中間転写ベルトのニップ部が配置される。つまり、二次転写ローラにパッチ画像が付着してしまい、その後に通過する記録材の裏にパッチ画像が付着されて記録材の裏汚れが発生する。そこで、中間転写ベルト方式の装置では、裏汚れを防止するために非画像形成領域がニップ部を通過するタイミングで、2次転写バイアスを瞬時に負バイアスへ切り替える方法が必要とされる。この2次転写バイアスの出力回路は、定常出力時の安定性を優先した回路であり、高電圧の立上げ及び立下げに要する時間は50ms〜100ms程度である。
【0005】
カラー画像形成装置を高速化して、生産性を低下させずに紙間にパッチ画像を形成するために、画像形成領域におけるバイアスとは逆極性のバイアスを短時間の間で印加する電気的な技術が必要となる。つまり、上記のような立ち上げ及び立ち下げに要する時間を更に短縮する必要がある。例えば、特許文献1に、正極性と負極性の高電圧電源とを備えて、パッチ画像が転写ニップ部を通過するタイミングで正極性の高電圧電源をオフして、かつ、負極性の高電圧電源をオンする構成において、立ち下げに要する時間を短縮する技術が提案されている。特許文献1は、正バイアス用のトランスから出力された交流電圧の整流平滑用コンデンサと負荷部の容量に充電されていた電荷が負バイアスの電源に引き込まれることにより急速に電圧レベルが低下する。その結果、高電圧バイアスの出力を正極性から負極性に切り替える立ち下げに要する時間を10ms〜20ms程度に短縮している(特許文献1の図4参照)。これにより、紙間の時間が短時間になっても、転写ニップ部での、記録材の後端部が通過してからパッチ画像の先端到達までの時間内に転写バイアスの出力を負極性に切り替えることが可能となる。
【0006】
また、高電圧を高速に立ち上げる一例として、特許文献2には、電圧検出回路の検出電圧と基準電圧より若干低い第2の基準電圧とを比較して、電圧検出回路の検出電圧が第2の基準電圧を超えた時は、負荷であるコンデンサへの充電速度を緩やかに制御する技術が提案されている。この特許文献2は、起動時から順次、急速充電領域,緩速充電領域,維持充電領域を備えており、起動を開始するとPWM信号のオン時間を最大の時間幅となるようにPWM信号(Palse Width Modulation信号)の値(PWM信号のパルスのHとLのHの時間幅のことであり、以降、オンデューティ幅又はオンDUTY幅という)を大きくして立ち上げを急速に行う。そして、第2の基準電圧値(約90%として例示している)となる出力電圧を検知すると緩速充電領域に切り換わる。PWM信号のパルスを生成する回路の入力側には積分回路が設けられ、立ち上げ時の初期には急速に充電し、その後、緩速充電領域と維持充電領域では僅かに充放電させてオーバーシュートやアンダーシュートを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−58510号公報
【特許文献2】特開平9−93920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように、高電圧の出力を正極性から負極性に切り替える際における立ち下げ時間が10ms〜20ms程度に高速化されても、画像形成速度が更に高速化されて紙間の時間が一層短縮されると、パッチ画像の形成のための時間の確保が困難になる。紙間の時間と高電圧の切り替えの時間とパッチ画像の形成動作との関係を図1に示す。紙間である非画像形成領域においてパッチ画像を形成可能な時間は、非画像形成時間から〔二次転写バイアスの立ち上げ時間+立ち下げ時間〕を差し引いた時間である。紙間の時間がさらに短縮されると、非画像形成領域において、二次転写バイアスの立ち上げ及び立ち下げに要する時間の占める割合が多くなる。従って、図1(a)に示すように、パッチ画像を形成する時間は殆どなくなってしまう。そこで、パッチ画像の形成に必要な時間を確保するためには、紙間の時間を図1(b)に示すように長くすればよい。しかし、紙間で色ズレ量と濃度の両方を検知するために必要な時間、つまり、〔パッチ画像に必要な時間+高圧の立ち下げに要する時間+立ち上げに要する時間〕を確保することになるため紙間の時間が大幅に長くなり、生産性が低下する。従って、紙間の時間がさらに短縮された場合に、パッチ画像の形成(及び検知)の時間を確保するには、図1(c)に示すように、更に、高電圧発生装置の立ち上げ能力(負荷出力部の電位を単位時間あたりに上昇させる電圧の大きさを表す能力のこととして以降記載する)を飛躍的に向上して、高速に高電圧出力部の極性の切り替えを行う必要がある。
【0009】
次に、その他の例として説明した特許文献2のような高電圧発生装置で発生する課題について図2を用いて説明する。図2(a)に示した波形αpは、特許文献2の高電圧発生装置を用いて例えば、+2KVを目標電圧として立ち上げた正極性バイアスの波形例である。これに対し、波形βp1及びβp2は高電圧発生装置を起動する前に、負荷部の電位が逆極性側の負電位にチャージされていた場合の波形例である。負電位にチャージされていた電荷の放電時間分、立ち上げ時間が長くなる。つまり、図1で説明した非画像形成領域から画像形成領域に移行する際のバイアスの極性切替のための時間が長くなる。また、図2(b)に負極性の高電圧発生回路を用いた場合の例を示す。波形αnは、例えば、−2KVを目標電圧として立ち上げた負極性バイアスの波形例である。これに対し、波形βn1及びβn2は高電圧発生装置を起動する前に、負荷部の電位が逆極性側の正電位にチャージされていた場合の波形例である。正電位にチャージされていた電荷の放電時間分、立ち上げに要する時間(電位が降下して負極側に変わるまでの時間分)が長くなる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、高電圧を発生する装置において、オーバーシュートやアンダーシュートを発生することなく、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の高電圧発生装置は、トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を出力する高電圧発生装置において、前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、記録材に画像を形成するための画像形成手段と、トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を前記画像形成手段に出力する高圧電源とを有し、前記高圧電源は、前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って本発明によれば、高電圧を発生する装置において、負荷部が逆極性に帯電され、逆極性電位が大小の様々な値であった場合において、オーバーシュートやアンダーシュートを発生せずに、且つ、短時間で出力電圧を目標値に到達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置における紙間(非画像)領域とパッチ画像の形成領域との時間関係を説明した図である。
【図2】負荷部が逆極性側の電位にチャージされていた場合における高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図3】高電圧発生装置の出力値が過渡のスルーレート状態で到達目標値に達する高電圧波形を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例1〜3に従う正及び負バイアスの高圧制御信号と高電圧出力値との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に従う高電圧出力波形と各信号のタイミングを示した図である。
【図7】容量性の負荷部を有した状態で正負バイアスを交互に出力した波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に従う高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図9】本発明の実施例1に従う高電圧の立上げ波形を条件ごとに示す図である。
【図10】本発明の実施例2に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例2に従う高電圧出力波形と各信号のタイミングを示した図である。
【図12】本発明の実施例2に従う高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図13】本発明の実施例2に従う高電圧の立上げ波形を条件ごとに示す図である。
【図14】DUTY幅と高電圧出力値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の関係を示す図である。
【図15】PWM信号のDUTY幅と所定時間経過後の高電圧出力値(過渡状態)の関係を示す図である。
【図16】本発明の実施例3に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図17】予め設定される高速立上げ期間T1の条件(タイマ時間、スルーレート)と補正値との関係を示す図である。
【図18】高電圧発生装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図19】高電圧発生装置の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上述した課題を解決するための本発明の具体的な構成について、以下に実施例に基づき説明する。尚、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
本発明の実施例の高電圧発生装置は、高電圧発生装置の起動前における電圧の立ち上げの過渡状態の期間又は少なくとも電圧の立ち上げの一部の期間で、スルーレート又は立ち上げ期間の幅を目標電圧の大きさと負荷部の逆極性側の電位の大きさを考慮して可変設定する点が特徴である。さらに、高電圧発生装置の昇圧トランスは、出力電圧が過渡状態の期間において急峻な高いスルーレートで目標電圧に到達する駆動条件で駆動が開始されるようにする。そして、目標電圧の大小に関わらず、オーバーシュートやアンダーシュートなく、且つ、短時間で目標電圧へ収束可能としている。なお、本発明におけるスルーレートとは、単位時間あたりに電圧を変化させる際の電圧の変化量のことである。
【0017】
本発明における、急峻な高いスルーレートで目標電圧に到達する高電圧発生装置の動作時の出力波形の模式図を図3に示す。図3の出力波形Bは、高電圧発生装置の出力電圧が予め定められた時定数の曲線に従って目標電圧に向けて上昇する場合の例である。波形A’は出力電圧が目標電圧以上に到達する駆動条件で昇圧トランスを駆動した場合の出力波形であり、時定数は出力波形Bと同じである。一方、同じ目標電圧に到達するまでの時間taは、波形A’で示す方が大幅に短くなっている。このように過渡状態において急峻な高いスルーレートの部分THを用いて出力電圧を目標電圧または目標電圧の近傍まで立ち上げ、その後、波形Aのとおり、高速に定電圧制御回路(ハードウエア)により目標電圧を維持するための高速な帰還制御を実行するようにした高電圧発生装置である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適ないくつかの実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1の高電圧発生装置は、起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡状態の期間を起動開始直後の高速立ち上げ期間と目標電圧到達前の定電圧制御待機期間の2つに分割する。そして、高速立ち上げ期間と定電圧制御待機期間とで昇圧トランスを駆動する駆動信号(本実施例ではPWM信号)のオンデューティ幅(以降、オンDUTY幅と記載する)を夫々設定する。目標電圧到達前の定電圧制御待機期間ではオンDUTY幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに抑制される。そして、この過渡状態の高速立上げ期間を目標電圧の大きさに負荷部の逆極性側の電位(電圧)の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定することを特徴とする。
【0019】
本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能を模式的に表したブロック図を図18(b)に示す。なお、図18(a)は従来の高電圧発生装置を例示した図である。従来の高電圧発生装置は、目標電圧設定部21で設定した出力電圧となるように、定電圧制御ブロック22で昇圧回路部23の出力部をモニタするとともに入力部に帰還制御したものである。図18(b)に示す本実施例の高電圧発生装置は、高速立上げ期間を可変設定できるブロック(66、76)と、ブロック(66、76)で可変する量を逆極性となる負荷電位の大きさに応じて補正処理するブロック(65、75)とを更に備えたものである。
【0020】
まず、図4に基づき本実施例の高電圧発生装置の構成について説明する。図4に示す高電圧発生装置は、アナログ回路で構成された正極性と負極性の高電圧発生回路と、ハードウエア制御信号を生成して夫々の高電圧発生回路に出力するASIC7とを備える。そして、ASIC7のハードウエア制御信号の出力状態を制御及び設定するマイクロコントローラ1を備えている。更に、高電圧発生回路のアナログ回路で構成された部分は、昇圧トランス(T1、T51)と昇圧回路と、コンパレータとが正負バイアス用に夫々構成され、更に出力電圧検出回路4とオフセット電位設定回路3を備えている。
【0021】
マイクロコントローラ1は、高電圧発生装置の目標電圧の設定やオンオフのタイミング、PWM信号のオンDUTY幅の設定、また、後述するタイマ時間の設定等を行うために、ASIC7内のレジスタ36に対して所定タイミングでデータを設定する。ASIC7は、高電圧発生回路の目標電圧を設定する高圧制御信号HVCNTをD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。また、高電圧発生回路をスイッチングするPWM信号HVPWMを外部に出力し、高電圧発生回路の出力値が目標電圧に到達したことを示す目標電圧到達信号/HVATNが外部から入力される。尚、高圧制御信号HVCNTは、PWM信号の形態で出力し、そのPWM信号の周波数における応答特性を良くした高次のローパスフィルタ等でDC電圧値に変換したものでも良い。また、正負バイアスの夫々に同様に構成されている部分も多く、正極性の高電圧を発生する正バイアス用は(P)、負極性の高電圧を発生する負バイアス用は(N)として、以降、図に示す。また、以降、記載の(P)(N)も同様に正バイアス用、負バイアス用を示すものとし、正負両極性で共通に示される部分は(P)(N)を省いて示す。
【0022】
次に、図4に示す高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作について説明する。正バイアス用の昇圧トランスT1は、ASIC7から出力されたPWM信号HVPWM(P)に基づいてスイッチングされる。昇圧トランスT1から出力された高電圧は出力電圧検出回路4で分圧されて検出される。検出された分圧電圧Vdtは高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧Vtgt(P)とコンパレータCMP10で比較演算され、この比較演算の結果に応じてASIC7が出力するPWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅が帰還制御される。負バイアスも同様に帰還制御される。尚、この帰還制御はフィードバック制御とも呼ばれる。
【0023】
次に、ASIC7に搭載されるハードウエアロジック回路の構成について説明する。ASIC7は、正バイアス用の信号の生成と制御を行う回路ブロック37と、負バイアス用で同様のブロック87とを備えている。また、レジスタ36内に構成されるトリガ設定部130は、高圧制御信号のHVCNT(P)とHVCNT(N)の出力値を更新するタイミングを決定するものであり、マイクロコントローラ1によって制御される。
【0024】
次に、レジスタ36の他の設定部を説明する。レジスタ36の内部の詳細は、以下のとおりである。
・PWM信号の出力を許可または停止するEnable設定部(131、181)。
・PWM信号のオンDUTY幅を徐々に広げていく時間を設定するスローオン設定部(132、182)。
・PWM信号の最大オンDUTY幅を設定するDUTY_max設定部(133、183)。
・高速立上げ期間に使用されるオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr1設定部(134、184)。
・定電圧制御待機期間に使用されるオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr2設定部(135、185)。
・高速立上げ期間の時間幅を設定するタイマ設定部(136、186)。
・トリガ設定部130から次のトリガ信号が出力された際に取り込まれる正バイアス回路の目標電圧を予め設定するHVnext設定部(139、189)。
・トリガ信号によってレジスタHVnext設定部139から値が取り込んで保持されるHVtgt設定部(138、188)。
尚、この各設定部は正負夫々の極性用に構成されており、(P)(N)を付して図4に示す。
【0025】
次に、ASIC7内の回路モジュールについて説明する。ASIC7内の差分演算回路は2つのレジスタ設定値の差分値を算出し、算出した差分値に応じて一意的に決定されるタイマ時間が導出される。カウンタブロック(31、81)は、スローオン設定部(132、182)に設定された時間幅でオンDUTY幅0からDUTY_max設定部(133、183)に設定された最大オンDUTY幅まで徐々にオンDUTY幅の広がった値をPWM生成部(32、82)から出力する。尚、高電圧発生装置の立ち上げ能力はこの最大オンDUTY幅に応じて変化するため、DUTY_max設定部(133、183)をマイクロコントローラ1で設定可能にして、部品の構成(昇圧トランス巻線数等)を変更せずに、その立ち上げ能力を容易に調整することができる。PWM生成部(32、82)は、DUTY_Tr1設定部(134、184)に設定されたオンDUTY幅のPWM信号をタイマ設定部(136、186)に設定された時間幅でEnable設定部(131、181)の設定に応じた切り替えタイミングで出力する。また、このPWM信号に引き続いてDUTY_Tr2設定部(135、185)に設定されたオンDUTY幅のPWM信号を出力し、出力値が目標値に到達したことを示す信号/HVATNがLになるとPWM信号のオンDUTY幅は0とされる。その後、スローオンで徐々にオンDUTY幅を広げていくPWM信号を出力するように制御される。出力許可部(33、83)は、レジスタEnable(131、181)または目標電圧到達信号/HVATNのいずれかがLowになることによってPWM信号の出力を停止するように制御する。レジスタへのデータ取り込みとデータ更新を行うCapture部(34、84)は、トリガ信号に基づいてHVnext設定部(139、189)のデータを取り込んでHVtgt設定部(138、188)に書き込みを行う。目標信号生成部(35、85)は、HVtgt設定部(138、188)のレジスタ値に基づいたアナログ信号を生成する。
【0026】
次に、上記で説明したASIC7のハードウエアロジック回路に備えられる機能を以下に示す。
(a)マイクロコントローラ1により、複数のDUTY値設定レジスタ、PWM信号の出力ENABLEレジスタ、出力目標電圧の設定レジスタ、PWM信号のオンDUTY幅を徐々に広げていくスローオンの時間幅を設定するレジスタ、高圧制御信号の出力値を更新するタイミングを決定するトリガ信号の設定レジスタの値を設定する。複数のDUTY値設定レジスタは、高速立上げ期間T1のDUTY設定レジスタと定電圧制御待機期間T2のDUTY設定レジスタと定電圧制御領域で生成可能なPWM信号の最大オンDUTY幅を設定するレジスタとから構成される。
(b)上記トリガ信号によって、出力目標値を予め設定されたレジスタ値から内部レジスタに取り込む。
(c)上記内部レジスタに取り込まれた値に従ったアナログ信号をD/Aコンバータを介してASIC外部に出力する。
(d)現在出力されている極性の目標電圧を次に出力される逆極性側の目標電圧に対応した補正値を算出し、この補正値に応じたタイマ時間が設定されてレジスタに書き込まれる。
(e)上記のタイマ時間に応じて、高速立上げ期間T1のオンDUTY幅のPWM信号と定電圧制御待機期間T2のオンDUTY幅のPWM信号が順に生成され出力される。
(f)外部から入力される目標値到達信号/HVATNによってPWM信号のオンDUTY幅は瞬時に0とされる。
(g)上記オンDUTY幅0から所定のオンDUTY幅に広げる際に、レジスタに設定された上記スローオンの時間幅で段階的にオンDUTY幅が増加される。
(h)以上の機能が正バイアス用と負バイアス用としてそれぞれ独立して制御される。
次に、上記(b)と(c)で説明した正バイアスと負バイアスの出力目標電圧の設定とトリガ信号による内部レジスタへの取り込み機能の詳細について図6を用いて説明する。図6は本実施例の高電圧発生装置から出力される正負両極性の電圧波形に対して、各信号とのタイミングを示したものである。一例として、正バイアス出力の+4KVから負バイアス出力の−1.5KVに出力電圧が切り替えられ、その後、再び正バイアス出力の+4KVに出力電圧が切り替えられる状態を示す。
【0027】
マイクロコントローラ1はレジスタHVnext(P)とレジスタHVnext(N)に次のトリガタイミングで設定更新する値を予め設定する。トリガ信号が出力されると、この予め設定されたレジスタHVnext(P)とレジスタHVnext(N)の値は夫々レジスタHVtgt(P)とレジスタHVtgt(N)の内部レジスタにトリガ信号の立ち上がりエッジに同期して取り込まれて目標電圧が更新される。図6の例では、トリガ信号に同期して、正バイアス出力設定が+4KVから0V(オフ)に変更され、負バイアス出力設定が0V(オフ)から−1.5KVに変更され、出力極性が切り替えられる状態を示している。正バイアス目標信号生成部35は、この更新されたレジスタHVtgt(P)に取り込まれた値に従ったアナログ信号をASIC7の外部に出力する。目標信号生成部85は、このレジスタHVtgt(N)に取り込まれた値に従ったアナログ信号をASIC7の外部に出力する。差分演算回路30は、HVtgt(P)設定部138の値をHVnext(P)設定部139に付した補正値を演算してタイマ時間を算出し、このタイマ時間に応じて図中に示す高速立上げ期間のタイマNの時間が決定される。タイマPも同様の方法で決定される。
【0028】
次に、上記(d)で説明したタイマ時間の決定(補正)方法の詳細について説明する。差分演算回路(30、80)は、現在出力中の極性側の目標電圧の値を示すレジスタHVtgtの値を、次のトリガタイミングで更新される逆極性側の目標電圧の値を示すレジスタHVnextの値に対応した補正値を算出し、算出された補正値に応じて一意的に決定されるタイマ時間をタイマ設定部(136、186)に設定する。本実施例の差分演算回路(30、80)における補正値は、オフセット電位設定回路3が設けられることによって、レジスタHVtgtとレジスタHVnextの値の差分量で求められる。
【0029】
オフセット電位設定回路3は出力電圧検出回路4の一端の電圧をGND電位ではなく、所定の電位Vofsetで保持させて正負の極性を問わず出力電圧の検出を可能とし、高精度に負荷電流の検出を行うものである。このオフセット電位設定回路3を設けて同じ出力電圧検出回路4で正負の出力電圧を検出可能とした場合における、高圧制御信号HVCNT(P)と高電圧出力値との関係を図5(a)に、高圧制御信号HVCNT(N)と高電圧出力値との関係を図5(b)に示す。オフセット電位設定回路3を設けることによって、高圧制御信号の出力値がVofsetの時に正負バイアスともに高電圧出力値は0Vとなる。正バイアスは、出力制御信号がVofset〜Vccの電圧範囲で設定され、出力制御信号HVCNT(P)がVpの時にHVpの高電圧が出力されることを示す。従って、出力制御信号HVCNT(P)の電圧値からVofsetを引いた電圧値(Vp−Vref0)に比例した高電圧が出力されるように構成される。負バイアスは、出力制御信号HVCNT(N)が0〜Vofsetの電圧範囲で設定され、出力制御信号がVnの時にHVnの高電圧が出力されることを示す。従って、Vofsetから出力制御信号HVCNT(N)の電圧値を引いた電圧値(Vp−Vofset)に比例した高電圧が出力されるように構成されている。その結果、上述の補正値は│(Vp−Vref0)-(Vref0−Vn)│=│Vp−Vn│として、決定することが可能となる。尚、差分演算回路(30、80)によって算出された補正値とタイマ設定部(136、186)の値は後述する図17で示すとおり直線性の相対関係となる。
【0030】
次に、上記(e)で説明したタイマ時間とPWM信号の生成について図4を用いて説明する。マイクロコントローラ1がトリガ設定部130のレジスタの値を設定することによりトリガ信号が出力されると、PWM生成部(32、82)は、高速立上げ期間T1のオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr1設定部(134、184)に従ったオンDUTY幅のPWM信号をタイマ設定部(136、186)に設定されているタイマ時間に基づいた時間幅で出力する。このPWM信号の出力はASIC7によって実行されるため、オンDUTY幅0からこのオンDUTY幅へ拡げるための立ち上げ時間は不要であり、最初のパルスからオンDUTY幅を有したPWM信号を瞬時に出力することが可能となる。タイマ設定部(136、186)に設定された時間を経過すると、続けて定電圧制御待機期間T2のオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr2設定部(135、185)に従ったオンDUTY幅のPWM信号を出力する。
【0031】
つまり、PWM生成部(32、82)は、高電圧発生装置の起動開始直後にオンDUTY幅が広いPWM信号を最初のパルスから出力して瞬時に高スルーレートでの出力電圧立上げを行う。そして、予め設定されたタイマ時間が経過した後に、続いて、オーバーシュートの発生しない低いスルーレートとなるオンDUTY幅のPWM信号を出力する。このタイマ時間は、現在出力中の極性側の目標電圧を次に更新される逆極性側の目標電圧に付した補正値に対して直線性の関係を保した値に可変設定されるため、この極性間の設定補正値に応じて可変された立上げ時間幅で高電圧発生装置を起動させることとなる。そして、このタイマ時間経過後に、高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2へ切り替わる。
【0032】
従って、立ち上げ能力が飛躍的に高くされた高電圧発生装置においても、最初に出力されるオンDUTY幅の広いPWM信号を出力するタイマ時間幅がこの極性間の補正値の大きさに応じて補正される。つまり、負荷電位が高電圧発生装置の出力範囲外となる逆極性側の負電位であった場合でも、その負極性電位の大きさに応じて、高速立上げ期間T1となるタイマ時間が補正される。そのため、この補正値が大きいときはオンDUTY幅の広いPWM信号でスイッチング時間を長くして立上げ期間が短縮され、一方、この補正値が小さいときは同スイッチング時間を短くしてオーバーシュートが低減される。つまり、正極性と負極性の双方を出力する高電圧電源装置において、起動前における逆極性の負荷電位の大小に関わらず、オーバーシュート無く、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることが可能となる。
【0033】
次に、上記(f)と(g)で説明した目標電圧到達信号/HVATNによるPWM信号のオンDUTY幅制御の詳細について説明する。まず、正バイアスの高電圧発生回路に構成される昇圧トランスT1を含む周辺の回路について説明し、続けて目標電圧到達信号/HVATN(P)を出力するコンパレータCMP10の動作について説明する。負バイアスの高電圧発生回路については、正バイアスと同様に動作するため説明を省略する。
【0034】
ASIC7から出力されたPWM信号HVPWM(P)はFET Q4のゲート端子に入力される。FET Q4と電源電圧Vcc及び抵抗器R8は、FET Q4のゲート端子に入力されたPWM信号に従ってパワーMOSFET Q5のゲート端子を駆動する。パワーMOSFET Q5は昇圧トランスT1をスイッチング駆動する。スイッチング駆動された昇圧トランスT1は脈流の高電圧を出力する。昇圧トランスT1によって出力された脈流の高電圧は高圧ダイオードD2と高圧コンデンサC5と抵抗器R9と出力電圧検出回路4からなる整流器で整流されて直流電圧化され、負荷部HVoutputに出力される。負荷部HVoutputに出力された高電圧は、出力電圧検出回路4により分圧されて検出される。検出された分圧電圧VdtはコンパレータCMP10によってモニタされて、高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧値Vtgt(P)と比較される。検出電圧値Vdtと目標電圧値Vtgt(P)を比較したコンパレータCMP10は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以下の場合にはHighを出力し、目標電圧値Vtgt(P)以上の場合にはLowを出力する。
【0035】
ASIC7は、目標電圧到達信号/HVATN(P)がLowになると、出力許可部33で出力するPWM信号HVPWM(P)を瞬時にマスクすることにより、PWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅を瞬時に0とする。ここで、オンDUTY幅は、ASIC出力部のHVPWM(P)ではLow論理となる。パワーMOSFET Q5のゲート端子部ではHigh論理となる。つまり、High固定の信号を出力する。PWM信号HVPWM(P)が瞬時にHigh固定の信号を出力すると、FET Q4をオンし、接続されるMOSFET Q5を瞬時にオフさせて高電圧発生回路を瞬時にオフする。
【0036】
一方、目標電圧到達信号/HVATN(P)がLowからHighになると、カウンタブロック31は、DUTY_max(P)設定部133に設定されたデータに基づいたオンDUTY幅に向けて、段階的にオンDUTY幅を広げていくようにデータをPWM生成部32に出力する。PWM信号のオンDUTY幅を段階的に広げていく際の時間幅はスローオン設定部132のレジスタ値によって決定される。そして、PWM生成部32はASIC7の外部にこのスローオン設定部132のレジスタ値によって決定されたPWM信号を出力する。
【0037】
つまり、ASIC7は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)を超えたときには瞬時にPWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅を瞬時に0として高電圧発生回路を急速にオフする。また、ASIC7は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを下回った時にはオンDUTY幅の立ち上げに時定数を持たせることで高電圧生成回路を緩やかにオンする。その結果、一定電圧を保持するための帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチングともいう)を大幅に低減することが可能となる。
【0038】
次に、以上で説明した正負両極性を出力する高電圧発生装置のアナログ回路とASIC7によって生成される高電圧波形の具体例を図7、図8、図9に示し、従来の高電圧発生装置を単純に高速化した場合の高電圧波形と対比しながら説明を行う。まず、高電圧出力部に容量性負荷を有した状態において、正極性バイアスと負極性バイアスを交互に出力した場合の高電圧波形例を図7に示す。図7の波形αは、負荷電位が0Vの状態から目標電圧−1KVとして負極性バイアスを生成し、その後に、目標電圧を0Vになるように正極性の方向にバイアスを切り替えた場合の波形例である。波形αの負バイアス立上げ時間をTαn、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw、正バイアス立上げ時間をTαpで示す。
【0039】
図7(a)は、上記波形αに対して、負荷電位が0Vではなく逆極性側にチャージされていた場合において、同じタイミングで高電圧発生装置をオンオフした波形βaを示したものである。波形βaは負荷電位が+3KVにチャージされた状態から目標電圧を-1KVとして負極性バイアスを生成し、その後に、目標電圧を+3KVとして正極性の方向にバイアスを切り替えた例である。波形βaの負バイアス立上げ時間をTβn(a)、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw(a)、正バイアス立上げ時間をTβp(a)で示す。この波形βaは、波形αの場合と異なり負荷電位が正負の極性に繰り返しチャージする必要があるため、その分の立上げ時間が長くなっている。その結果、−1KVの電位を保持する帰還制御期間がTwからTw(a)に減少するとともに、+3KVの負荷電位に戻る時間が(Tβp(a)−Tαp)分遅延してしまう。尚、図7の電圧値の具体例は、オンする極性バイアスの目標電圧に対して、予め負荷部にチャージされている残留電荷による負荷電位の大きさ割合が大きくなる例であれば他の電圧例でも遅延が生じる状況は同様となる。
【0040】
図7(b)は、+3KVの負荷電位に戻る時間を波形αと同じになるように高電圧発生装置のオンオフタイミングを変更したものである。負荷電位が+3KVである期間は波形αと同等であるものの、−1KVの電位を保持する帰還制御期間がTw(b)に減少してしまう。この状態は、図1(a)で説明したように、画像形成装置においてはパッチ画像を形成する期間が著しく短くなってしまうことに相当する。
【0041】
図7(c)は、負荷電位が逆極性側にチャージされていた場合においても、立上げ時間が短くなるように、立上げ能力(スルーレート)を飛躍的に向上させた本実施例に対応する波形例βcを示したものである。波形βcの負バイアス立上げ時間をTβn(c)、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw(c)、正バイアス立上げ時間をTβp(c)で示す。波形α、βa、βbと比較して、急峻な高いスルーレートで立ち上げが行われて、立上げ時間は波形αと同等にまで短縮されている。
【0042】
この負荷部が逆極性側にチャージされた状態において、この逆極性電位の大きさに応じた補正値で、高速立上げ期間T1の時間幅を可変設定して高電圧発生装置を起動させた波形例を図8に示す。図8では、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた夫々の波形例を示している。立ち上げ時の急峻な高スルーレートと目標電圧到達前の緩やかな低スルーレートは各波形で共通である。次に、図8から同じパラメータでいくつかの波形を抜き出したものを図9に示して説明する。
【0043】
図9(a)は、負荷電位が各電位(+500V、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを目標値−1KVまで立ち上げた各波形を図8から抜き出したものである。図9(a)において、高速立上げ期間を夫々T1a、T1b、T1c、目標電圧到達前の定電圧制御待機期間をそれぞれT2a、T2b、T2cで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさが補正量となり、負バイアス目標電圧にこの補正量を加えた補正値に応じて、高速立上げ期間が可変設定され、全て1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0044】
図9(b)は、負荷電位が+500Vにチャージされた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形を図8から抜き出したものである。図9(b)において、高速立上げ期間をそれぞれT1d、T1e、T1f、目標電圧到達前の定電圧制御待機期間をそれぞれT2d、T2e、T2fで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさを加えた補正値に応じて、高速立上げ期間T1a,T1b,T1cが可変設定され、全ての場合で1msで目標値−1KVに到達している。
【0045】
これら図8及び図9で説明した高速立上げ期間を可変設定するタイマ時間と逆極性側にチャージされていた負荷電位を加えた補正値との関係を図17(a)に示す。この図は、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを加えた補正値に応じて高速立上げ期間T1となるタイマ時間が比例した状態で設定されることを示している。つまり、図17に示すような関係で高速立上げ期間T1のタイマ時間を可変設定することにより、高電圧発生装置の出力の立ち上げを図8のような波形とすることが可能となる。例えば図17(a)で補正量が4KVの場合は、補正するタイマ時間は0.5msであり、スルーレートは9.5KV/msとなる。
【0046】
以上説明したように、本実施例によれば、所定極性の電圧から所定極性とは逆極性の電圧に切り替える際に、目標電圧の大きさと負荷部の逆極性電位(所定極性の電位)の大きさを考慮した補正値に応じて、予め可変設定されるタイマ時間を設け、このタイマ時間に至って、高速立上げ期間のPWM信号のオンDUTY幅を可変設定する。これにより、負荷部の逆極性電位が大小様々な値であったとしても、立ち上げのオンDUTY幅がこの補正値に応じて高分解能で可変された状態で高電圧発生回路を起動することが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることが可能となる。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2の高電圧発生装置は、高電圧発生装置の起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡状態の期間を起動開始直後の高速立上げ期間と目標電圧到達前の定電圧制御待機期間の2つに分割する。そして、高速立上げ期間と定電圧制御待機期間とで昇圧トランスを駆動する駆動信号(本実施例ではPWM信号)のオンDUTY幅を夫々設定するものである。この目標電圧到達前の定電圧制御待機期間ではPWM信号のオンDUTY幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに設定される。そして、この高速立上げ期間のスルーレートを、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定することを特徴とする。そのため、本実施例では、この補正値と直線性の関係を保って可変設定されるオンDUTY幅のPWM信号を生成する。そして、起動開始とともに、可変設定されたオンDUTY幅のPWM信号を用いてスイッチングを開始させて、出力電圧が過渡状態の急峻な高いスルーレート状態にして目標電圧に到達するようにしたものである。
【0048】
次に、本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能を模式的に示したブロック図を図18(c)に示す。本実施例の高電圧発生装置は、図18(a)に示す従来の高電圧発生装置に対して、高速立上げ期間T1のスルーレートを可変設定できるブロック(67、77)と、そのブロック(67、77)での可変量を逆極性となる負荷の電位の大きさに応じて補正処理するブロック(65、75)とをさらに備えている。
【0049】
まず、図10に本実施例の高電圧発生装置の構成を示す。尚、先に実施例1で説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や記号を付し、その説明は省略する。図10に示す高電圧発生装置は、アナログ回路で構成された正極性および負極性の高電圧発生回路と、高電圧発生回路に出力するハードウエア制御信号を生成するASIC2と、ASIC2のハードウエア制御信号の出力状態を制御及び設定するマイクロコントローラ1とを備えている。さらに、高電圧発生回路のアナログ回路で構成された部分は、昇圧トランス(T1、T51)と昇圧回路と、昇圧トランス(T1、T51)を駆動するPWM信号を生成するPWM生成回路(45、95)、最大DUTY設定回路(41、91)、コンパレータ(CMP10、CMP50)が正負バイアス各々に備えられ、さらに出力電圧検出回路4とオフセット電位設定回路3とから構成される。
【0050】
マイクロコントローラ1は、ASIC2内に設けられる目標値設定用レジスタのHVtgt部(160、162)とオンオフ設定用レジスタのONOFF設定部(161、163)に対して、所定のタイミングでデータ設定して、高電圧発生装置の目標出力値の変更やオンオフのタイミングを制御する。また、ASIC2は、HVtgt部(160、162)に応じた高圧制御信号HVCNTをD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。また、ONOFF設定部(161、163)に応じたオンオフ制御信号/HVONと、高電圧発生回路で使用される所定周期のクロック信号CLKとを外部に出力する。タイマ5は、オンオフ制御信号/HVONから所定時間遅れたタイミング信号THSW(P)を生成し外部に出力する。また、このタイミング信号THSW(P)に従って高速立上げ期間から定電圧制御待機期間への切り替えが行われる。尚、正負バイアス夫々で同様に構成されている部分は、正極性の高電圧を発生する正バイアス用は(P)、負極性の高電圧を発生する負バイアス用は(N)を付している。また、以降に記載の(P)(N)も同様に正バイアス用、負バイアス用を示し、正負両極性で共通に示される部分は(P)(N)を省いて示す。
【0051】
次に、図10の高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作概要について説明する。なお、ここでは、正バイアスの発生動作について説明して、負バイアスについては極性が逆であるのみで同様の動作であるため説明は省略する。
【0052】
図10において、最大DUTY設定回路41は、ASIC2から出力された各種信号に応じて、後述する可変電圧Vdutyを予め生成し、生成した可変電圧Vdutyを起動時および定常時にPWM生成回路45に供給する。PWM生成回路45は供給された可変電圧Vdutyに応じたオンDUTY幅のPWM信号を生成し、このPWM信号に基づいて昇圧トランスT1がスイッチング駆動される。昇圧トランスT1から出力された高電圧は出力電圧検出回路4で分圧されて検出され、検出された分圧電圧Vdtは高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧Vtgt(P)とコンパレータCMP10で比較演算される。そして、比較演算結果に応じてPWM生成回路45が出力するPWM信号のオンDUTY幅が帰還制御される。この帰還制御されたオンDUTY幅で昇圧トランスT1がスイッチング駆動される。つまり、最大DUTY設定回路41でオンDUTY幅の最大幅が可変設定され、そのオンDUTY幅の範囲内で出力電圧が目標電圧となるように帰還制御される。尚、このオンDUTY幅の最大幅は、マイクロコントローラ1で可変可能であるため、ハードウエア(昇圧トランスの巻線仕様等)を変更することなく高電圧発生装置の立ち上げ能力を容易に調整できるという利点がある。
【0053】
まず、PWM信号を可変出力するPWM生成回路45とコンパレータCMP10の動作について説明する。PWM生成回路45には、コンパレータCMP10の出力と、クロック信号CLKを抵抗器R6とコンデンサC3により擬似三角波とした三角波信号が入力される。PWM生成回路45内には、コンパレータCMP15とFET Q3と抵抗器R2、R3、R4とコンデンサC2を有している。コンパレータCMP15は、非反転入力部に入力された三角波信号と反転入力部の電圧を比較演算してPWM信号のオンDUTY幅を可変出力する。反転入力部の電圧値が低いほど、Low側のDUTY幅が狭いPWM信号を出力する。
【0054】
コンパレータCMP10は検出電圧値Vdtと目標電圧値Vtgt(P)とを比較演算し、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以下の場合には、Lowを出力してFET Q3をオフさせる。検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以上の場合には、Highを出力してFET Q3をオンさせる。FET Q3がオンすると、コンパレータCMP15の反転入力部が瞬時に0V電位に降下するため、コンパレータCMP15の出力はHighとなって高電圧発生回路は瞬時にオフ状態とされる。
【0055】
一方、FET Q3がオフすると、コンデンサC2には、後述する最大DUTY設定回路41で生成された直流電圧Vdutyから抵抗器R2〜R4を介して電荷がチャージされる。この充電の時定数は電圧Vdutyと抵抗器R2〜R4とコンデンサC2の値によって決定される。この時定数によって、オンDUTY幅が0から緩やかに広げられる。
【0056】
また、コンデンサC2の電圧値は電圧Vdutyを抵抗器R2とR3で分圧した電圧値が最大値とされ、このコンデンサC2の最大電圧値によってコンパレータCMP15が出力するPWM信号の最大のオンDUTY幅が設定される。つまり、PWM生成回路15は、入力される電圧Vdutyの大きさに応じて可変される最大のオンDUTY幅のPWM信号を生成し、検出電圧値Vdtが目標電圧Vtgt(P)を超えたときには瞬時にオンDUTY幅を0として高電圧発生回路を瞬時にオフする。そして、検出電圧値Vdtが目標電圧Vtgt(P)を下回った時には立ち上げに時定数を持たせて高電圧発生回路を緩やかに起動させる。その結果、一定電圧を維持するための帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチングともいう)が大幅に低減される。
【0057】
次に、高電圧発生回路に構成される昇圧トランスT1の周辺回路について説明する。上述のPWM生成回路45から出力されたPWM信号はFET Q4のゲート端子に入力される。FET Q4と電源電圧Vcc及び抵抗器R8は、FET Q4のゲート端子に入力されたPWM信号に従ってパワーMOSFET Q5のゲート端子を駆動する。パワーMOSFET Q5は昇圧トランスT1をスイッチング駆動する。スイッチング駆動された昇圧トランスT1は脈流の高電圧を出力する。昇圧トランスT1によって出力された脈流の高電圧は高圧ダイオードD2と高圧コンデンサC5と抵抗器R9と出力電圧検出回路4からなる整流器で整流されて直流電圧化され、負荷部HVoutputに出力される。負荷部HVoutputに出力された高電圧は、出力電圧検出回路4により分圧されて検出される。検出された分圧電圧VdtはコンパレータCMP10によってモニタされており、高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧値Vtgt(P)と比較されて目標電圧を維持する帰還制御が行われる。
【0058】
尚、PWM生成回路45は、起動待機時において最大のオンDUTY幅のPWM信号を出力しているが、下流に配置されるFET Q2によって強制的にオフ状態にされているだけである。従って、FET Q2がオフされると、瞬時に最大オンDUTY幅のPWM信号でスイッチングを開始することが可能となる。また、オンオフ制御信号/HVON(P)はパワーMOSFET Q5のゲート端子をFET Q2で直接制御するため、オンオフ時の応答遅延時間を小さくすることができる。なお、応答遅延時間が若干長くなっても良い場合は、オンオフ制御信号/HVON(P)及びFET Q2の代わりに、ASIC2から出力されるクロック信号CLKをHigh状態に固定することにより高電圧発生回路をオンオフする構成にしても良い。
【0059】
次に、最大DUTY設定回路41について説明する。最大Duty設定回路41は、差動増幅回路43とオペアンプOP41とから構成される。差動増幅回路43には、正バイアスの高圧制御信号HVCNT(P)と負バイアスの高圧制御信号HVCNT(N)が接続されており、正バイアスの高圧制御信号HVCNT(P)に対して、負バイアスの高圧制御信号HVCNT(N)を補正量として付した補正電圧が生成される。また、差動増幅回路43にはスルーレートの可変切替を行うタイミング信号THSW(P)が接続されており、このタイミング信号THSW(P)によって差動増幅回路43の出力値は所定の固定値へ切り替えて出力される。タイミング信号THSW(P)は、タイマ5によって設定されたタイマ時間幅でオンオフ制御信号/HVONから遅延された信号である。このタイマ5によって設定された時間幅で高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2への切り替えが行われる。
【0060】
オペアンプOP41は差動増幅回路43から出力された補正電圧をバッファして電圧Vdutyを出力する。そして、この電圧Vdutyの値に応じて、PWM生成回路45によって生成されるPWM信号の最大オンDUTY幅が可変される。
【0061】
次に、正バイアスと負バイアスの出力目標電圧の設定と各信号と出力電圧とのタイミングとについて図11を用いて説明する。図11は本実施例の高電圧発生装置から出力される正負両極性の電圧波形に対して、各信号とのタイミングを示したものである。一例として、正バイアス出力の+4KVから負バイアス出力の−1.5KVに切り替えられ、その後、再び正バイアス出力の+4KVに切り替えられる状態を示している。マイクロコントローラ1は目標値設定用レジスタのHVtgt部(160、162)に各極性の目標電圧を予め設定する。ASIC2は、設定されたHVtgt部(160、162)に応じたアナログ信号を常時出力しているが、FET(Q2、Q52)がオンすることによって高電圧発生回路は強制オフ状態で起動待機されている。そして、オンオフ設定用レジスタのONOFF設定部(161、163)がアクティブオンにされることによって/HVON信号が出力され、FET(Q2、Q52)がオフし、各極性の高電圧発生装置が起動開始される。その後、タイマ5の時間幅に応じて遅延されたタイミング信号/THSWでスルーレートが切り替えられることにより、高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2へ切り替えられる。
【0062】
次に、本実施例で可変設定する立ち上げ過渡状態のスルーレートとオンDUTY幅の関係について図12、図13を用いて説明する。図12(a)は、高電圧発生回路をスイッチング駆動するPWM信号のDUTY幅と出力電圧値〔帰還制御せずに定常状態で到達する値〕との関係について、出力部の電圧を急峻に立ち上げる昇圧回路を用いてその特性を測定し例示したものである。トランスの供給電圧と出力の電圧値には比例関係があるので、6V入力と12V入力の場合とで出力値が半分になる関係の特性曲線となっている。しかし、スイッチング駆動するPWM信号のオンDUTY幅と出力電圧とには比例関係がなく大きく歪んでいる。
【0063】
入力電圧12Vの場合の特性曲線において、オンDUTY幅27%付近のポイントDaとオンDUTY幅43%付近のポイントDbは、スイッチング駆動されるオンDUTY幅が異なっていても、その出力電圧〔帰還制御せずにで定常域で到達する値〕は略同じで約2500Vである。しかしながら、その立ち上がりのスルーレート特性は図12(b)に示すように大きく異なることがわかった。帰還制御せずに出力電圧が飽和する到達値は同じ2500Vであっても、オンDUTY幅が大きいDbの方がより速く立ち上がっている。そこで、出力過渡状態におけるこのオンDUTY幅と所定時間経過後の高電圧出力値(過渡状態の出力上昇カーブ、スルーレートに相当)の特性曲線を測定したものを図13に示す。同じ時間経過後に到達する過渡状態の出力電圧値は、オンDUTY幅に略比例する特性となることがわかった。
【0064】
そこで、本実施例の高電圧発生装置は、このオンDUTY幅と過渡状態の出力電圧が比例する特性を用いて、出力過渡状態のスルーレートを可変設定するようにしたものである。起動開始時の最大オンDUTY幅を目標電圧に応じた値に予め可変設定しておき、高電圧発生回路を起動する。つまり、スルーレートが目標電圧に応じて可変設定されて負荷電圧を上昇させていく。例えば、目標電圧が小さいときにはスルーレートが小さくなるように可変設定することでオーバーシュートが低減される。一方、目標電圧が大きいときはスルーレートが大きくなるように可変設定されることで立上げ期間が短縮される。その際に、ハードウエアの立ち上がりが急峻なカーブ状態(時定数が緩い傾斜カーブに至る前の状態)の時に目標電圧に到達するようなオンDUTY幅で直線的に立ち上げる。続いて目標電圧への到達がハードウエアにより検知されると、オンDUTY幅を瞬時に0とし急速に高電圧発生回路をオフする。
【0065】
その結果、出力電圧上昇時のスルーレートが高くオンDUTY幅に対する出力電圧値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の特性が比例関係にない高電圧発生回路の場合であっても、本実施の高電圧発生装置におけるオンDUTY幅の制御ではこのオンDUTY幅−出力電圧値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の特性に依存した目標制御を行わないため、精度や安定性に問題ない制御を行うことが可能となる。
【0066】
次に、以上説明した正負両極性を出力する高電圧発生装置のアナログ回路とASIC7によって生成される高電圧波形の具体例を図14及び図15に示して説明する。尚、本実施例で説明する高電圧発生装置の立ち上げ波形は、実施例1の図7(c)で説明した波形例βcと基本的には同様な波形である。図14に示す高電圧波形の具体例は、負荷部が逆極性側にチャージされた状態において、この逆極性電位の大きさに応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートを可変設定して高電圧発生装置を起動させたものである。図14では、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形例を示している。目標電圧到達前で緩やかに切り替えられたスルーレートは各波形で共通である。この図12から同じパラメータでいくつかの波形を抜き出したものを図15に示して説明する。
【0067】
図15(a)は、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを目標値−1KVまで立ち上げた各波形を図12から抜き出したものであり、高速立上げ期間をT1、目標値到達前の定電圧制御待機期間をT2、定電圧保持の帰還制御期間をTwで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさが補正量となり、負バイアス目標値にこの補正量を付した補正値に応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートが可変設定された状態で起動され、高速立上げ期間T1の経過後には全て同じ電圧に到達し、トータル1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0068】
図15(b)は、負荷電位が+500Vにチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形を図12から抜き出したものである。ここで期間T1、T2、Twは図13(a)と同様である。また、逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさを考慮した補正値に応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートが可変設定されて起動される。図15(a)とは異なり、高速立上げ期間T1の経過後に到達する電圧は、この補正値に応じて可変された状態となる。そして、全て1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0069】
これら図14及び図15で説明した高速立上げ期間T1で予め可変設定されるスルーレートと逆極性側にチャージされていた負荷電位を考慮した補正値との関係を図17(b)に示す。目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じてスルーレートが比例した状態で設定される。そして、図17(b)に示す関係で高速立上げ期間T1のスルーレートを予め可変設定して、高電圧発生装置の出力電圧の立ち上げを図14のような波形として高速化することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施例によれば、出力電圧の大きさに、負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて、PWM信号のオンDUTY幅を可変設定して高スルーレートで起動するようにした。これにより、負荷部が逆極性であり、逆極性電位が大小様々な値であったとしても、立ち上げ時のスルーレートがこの補正値に応じて高解能で可変された状態で高電圧発生回路を起動させることが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、出力電圧を飛躍的な短時間で目標電圧に到達させることが可能となる。
【実施例3】
【0071】
実施例2での高電圧発生装置では、負荷部にチャージされた逆極性電位(正極性)は、負バイアスを起動させる直前に出力されていた正極性バイアスの目標値から予測するものであった。本実施例では、正負両極性の出力電圧を検出できるように構成された電圧検出回路4によって、起動前に逆極性の負荷電位を検出するものである。そして、目標電圧の大きさに、更に、検出した負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて、立ち上げ過渡状態のスルーレートを可変設定するものである。
【0072】
また、正負両極性の出力電圧を検出できる高電圧発生装置は、逆極性となる高電圧発生回路が構成されていないにも関わらず、その他の要因で逆極性の負荷電位にチャージされてしまう状況が発生する電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。本実施例の高電圧発生装置はこのような状況下で適用される単極性の高電圧発生装置である。機能を模式的に示したブロック図を図18(d)に示す。図18(a)に示す従来の高電圧発生装置に対して、逆極性側にチャージされた負荷電位を予め検出するブロック24をさらに備えたものである。
【0073】
次に、高電圧発生装置の構成について図16に示して説明する。尚、既に実施例1および実施例2で説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や記号を付し、その説明は省略する。オフセット電位設定回路3は出力電圧検出回路4の一端の電圧をGND電位ではなく、所定の電位Vofsetを保持させることにより正負の極性を問わず出力電圧の検出を可能とさせる。出力電圧検出回路4によって検出された負荷電圧の検出値Vsnsは、マイクロコントローラ1によってモニタされる。マイクロコントローラ1は、起動前にモニタした負荷電圧の検出値Vsnsに応じて、高速立上げ期間T1のスルーレート設定用レジスタのTHset1部151に可変した値の書き込みを行う。THset2部のレジスタには予め定電圧制御待機期間T2に用いられるスルーレートの固定値が設定されている。ASIC2はONOFF設定部141によって高電圧発生回路を起動すると、まずTHset1部151のレジスタ値に応じたスルーレート可変信号THCNTを出力し、続いてタイマ8に設定された時間経過後に、THset2部のレジスタ値に応じたスルーレート可変信号THCNTを出力する。152はスルーレートを切り替えるためのスイッチである。
【0074】
その結果、負荷部が逆極性に帯電され、逆極性電位が大小様々な値であったとしても、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定されたスルーレートで高電圧発生回路を起動することが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、出力電圧を飛躍的な短時間で目標値に到達させることが可能となる。
【0075】
(高電圧発生装置の適用例)
なお、上記で説明した実施例1乃至実施例3の高電圧発生装置は、前述した電子写真方式の画像形成装置に適用することができる。電子写真方式の画像形成装置としてレーザビームプリンタを例にあげて高電圧発生装置の適用例を説明する。
【0076】
上記の実施例で説明した高電圧発生装置は、電子写真方式のプリンタの画像形成部に対して高電圧を印加するための高圧電源として適用可能である。図19(a)に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラム211を一様に帯電する帯電部217、感光ドラム211に形成された潜像をトナーで現像する現像部212を備えている。そして、感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部218によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。この感光ドラム211、帯電部217、現像部212、転写部218が画像形成部である。
【0077】
図19(b)はレーザビームプリンタ200に設けられる複数の高圧電源(上記実施例1乃至3に記載の高電圧発生装置)から出力された高電圧を帯電部、現像部、転写部の夫々に出力する構成を示している。高圧電源1(図の501)は帯電部217に高電圧を出力し、高圧電源2(図の502)は現像部212に高電圧を出力し、高圧電源3(図の503)は転写部218に高電圧を出力する。夫々の高圧電源1乃至3から出力される高電圧の値は、制御部としてのコントローラへ500から出力される制御信号に応じて必要な電圧値に制御される。そして、例えば、帯電部217に高電圧を出力した際に、帯電部217に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、転写部218に高電圧を出力した際に、転写部218に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、現像部212に高電圧を出力した際に、上記の電圧検出回路で電圧を検出して、検出した電圧が所定値になるように出力を調整する。このように、画像形成のための高電圧の印加のために適用可能である。より具体的には、記録材と記録材の間(紙間ともいう)で前述した色ずれ検知用や濃度検知用のパッチ画像を形成する際に、高速に高電圧を正極性と負極性に切り替え可能になり、記録材の無い領域で画像を形成しても、その画像が転写ローラに転写しないように制御できる。
【0078】
以上説明したように、上記実施例1乃至4で説明した高圧電源を電子写真方式のプリンタの高圧電源として適用すれば、画像形成装置の高速化やFPOTの短縮化が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 マイクロコントローラ
2 ASIC
3 オフセット電位設定回路
4 出力電圧検出回路32 PWM生成回路(正バイアス用)
36 レジスタ37 正バイアスの信号の生成及び制御を行う回路ブロック
82 PWM生成回路(負バイアス用)
87 負バイアスの信号の生成及び制御を行う回路ブロック
T1、T51 昇圧トランス
【技術分野】
【0001】
本発明は高電圧を出力する高電圧発生装置に関し、特に高速に目標電圧に立ち上げることが可能な高電圧発生装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真方式のカラー画像形成装置は、プリントスピードの高速化のために画像を形成するための像担持体としての感光ドラムを各色毎に備える構成(タンデム型とも呼ばれる)が主流となっている。タンデム型のカラー画像形成装置では、例えば中間転写ベルト上に色ズレ検知パターン画像や濃度検知パターン画像を形成し、パッチ画像からの反射光を光学センサで検出して、検出結果に基づき色ズレ補正や濃度補正(これらの補正をキャリブレーションともいう)を実行する。このキャリブレーションは、主に感光ドラムを含むカートリッジの交換時、電源投入時、所定時間の経過後等のタイミングで実行される。尚、上記の色ズレ検知パターン画像や濃度検知パターン画像をあわせた場合は、以下、単にパッチ画像と称する。
【0003】
カラー画像形成装置においては、複数枚の記録材に連続して画像形成を行う(以下、連続印字ともいう)と装置内温度が上昇する。この温度上昇により、感光ドラムに潜像を形成するための走査光学ユニット及び該ユニット内の部品の温度上昇による影響で変形や歪が生じて、画像の色ズレ量が大きくなる場合がある。また、連続の画像形成による感光ドラムの温度が上昇して画像形成条件が変化し、画像濃度が変動してしまうことがある。このような温度上昇による色ズレや濃度変動を低減するためには、連続した画像形成中においても、温度上昇を監視して所定条件になったらキャリブレーションを実行すれば良い。しかし、連続印字の途中でキャリブレーションのために画像形成動作を一時的に中断することになるため、生産性が著しく低下してしまう。
【0004】
そこで、連続印字中の生産性を低下させずに、連続印字を行いながら、キャリブレーションを逐次実行して色ズレや濃度を補正する技術が提案されている。例えば、画像の後端と次の画像の先端の間(画像間や紙間ともいう)の非画像形成領域において、各色ごとに複数回に分割してパッチ画像の形成と検知を行う方法がある。これにより、画像形成を一時中断せずに濃度制御を行うことができる。尚、紙間の非画像形成領域に形成されたパッチ画像は、転写ベルト上に残留したトナー回収時と同様のクリーニング機構、例えば、転写ベルトに当接されたクリーニングブレードによって回収される。なお、転写ベルトとして静電転写ベルトを用いた装置であれば、上記のパッチ画像を問題なくクリーニングできる。しかし、中間転写ベルト方式の装置ではクリーニングブレードに対してトナー像を搬送する方向の上流側に二次転写ローラと中間転写ベルトのニップ部が配置される。つまり、二次転写ローラにパッチ画像が付着してしまい、その後に通過する記録材の裏にパッチ画像が付着されて記録材の裏汚れが発生する。そこで、中間転写ベルト方式の装置では、裏汚れを防止するために非画像形成領域がニップ部を通過するタイミングで、2次転写バイアスを瞬時に負バイアスへ切り替える方法が必要とされる。この2次転写バイアスの出力回路は、定常出力時の安定性を優先した回路であり、高電圧の立上げ及び立下げに要する時間は50ms〜100ms程度である。
【0005】
カラー画像形成装置を高速化して、生産性を低下させずに紙間にパッチ画像を形成するために、画像形成領域におけるバイアスとは逆極性のバイアスを短時間の間で印加する電気的な技術が必要となる。つまり、上記のような立ち上げ及び立ち下げに要する時間を更に短縮する必要がある。例えば、特許文献1に、正極性と負極性の高電圧電源とを備えて、パッチ画像が転写ニップ部を通過するタイミングで正極性の高電圧電源をオフして、かつ、負極性の高電圧電源をオンする構成において、立ち下げに要する時間を短縮する技術が提案されている。特許文献1は、正バイアス用のトランスから出力された交流電圧の整流平滑用コンデンサと負荷部の容量に充電されていた電荷が負バイアスの電源に引き込まれることにより急速に電圧レベルが低下する。その結果、高電圧バイアスの出力を正極性から負極性に切り替える立ち下げに要する時間を10ms〜20ms程度に短縮している(特許文献1の図4参照)。これにより、紙間の時間が短時間になっても、転写ニップ部での、記録材の後端部が通過してからパッチ画像の先端到達までの時間内に転写バイアスの出力を負極性に切り替えることが可能となる。
【0006】
また、高電圧を高速に立ち上げる一例として、特許文献2には、電圧検出回路の検出電圧と基準電圧より若干低い第2の基準電圧とを比較して、電圧検出回路の検出電圧が第2の基準電圧を超えた時は、負荷であるコンデンサへの充電速度を緩やかに制御する技術が提案されている。この特許文献2は、起動時から順次、急速充電領域,緩速充電領域,維持充電領域を備えており、起動を開始するとPWM信号のオン時間を最大の時間幅となるようにPWM信号(Palse Width Modulation信号)の値(PWM信号のパルスのHとLのHの時間幅のことであり、以降、オンデューティ幅又はオンDUTY幅という)を大きくして立ち上げを急速に行う。そして、第2の基準電圧値(約90%として例示している)となる出力電圧を検知すると緩速充電領域に切り換わる。PWM信号のパルスを生成する回路の入力側には積分回路が設けられ、立ち上げ時の初期には急速に充電し、その後、緩速充電領域と維持充電領域では僅かに充放電させてオーバーシュートやアンダーシュートを低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−58510号公報
【特許文献2】特開平9−93920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1のように、高電圧の出力を正極性から負極性に切り替える際における立ち下げ時間が10ms〜20ms程度に高速化されても、画像形成速度が更に高速化されて紙間の時間が一層短縮されると、パッチ画像の形成のための時間の確保が困難になる。紙間の時間と高電圧の切り替えの時間とパッチ画像の形成動作との関係を図1に示す。紙間である非画像形成領域においてパッチ画像を形成可能な時間は、非画像形成時間から〔二次転写バイアスの立ち上げ時間+立ち下げ時間〕を差し引いた時間である。紙間の時間がさらに短縮されると、非画像形成領域において、二次転写バイアスの立ち上げ及び立ち下げに要する時間の占める割合が多くなる。従って、図1(a)に示すように、パッチ画像を形成する時間は殆どなくなってしまう。そこで、パッチ画像の形成に必要な時間を確保するためには、紙間の時間を図1(b)に示すように長くすればよい。しかし、紙間で色ズレ量と濃度の両方を検知するために必要な時間、つまり、〔パッチ画像に必要な時間+高圧の立ち下げに要する時間+立ち上げに要する時間〕を確保することになるため紙間の時間が大幅に長くなり、生産性が低下する。従って、紙間の時間がさらに短縮された場合に、パッチ画像の形成(及び検知)の時間を確保するには、図1(c)に示すように、更に、高電圧発生装置の立ち上げ能力(負荷出力部の電位を単位時間あたりに上昇させる電圧の大きさを表す能力のこととして以降記載する)を飛躍的に向上して、高速に高電圧出力部の極性の切り替えを行う必要がある。
【0009】
次に、その他の例として説明した特許文献2のような高電圧発生装置で発生する課題について図2を用いて説明する。図2(a)に示した波形αpは、特許文献2の高電圧発生装置を用いて例えば、+2KVを目標電圧として立ち上げた正極性バイアスの波形例である。これに対し、波形βp1及びβp2は高電圧発生装置を起動する前に、負荷部の電位が逆極性側の負電位にチャージされていた場合の波形例である。負電位にチャージされていた電荷の放電時間分、立ち上げ時間が長くなる。つまり、図1で説明した非画像形成領域から画像形成領域に移行する際のバイアスの極性切替のための時間が長くなる。また、図2(b)に負極性の高電圧発生回路を用いた場合の例を示す。波形αnは、例えば、−2KVを目標電圧として立ち上げた負極性バイアスの波形例である。これに対し、波形βn1及びβn2は高電圧発生装置を起動する前に、負荷部の電位が逆極性側の正電位にチャージされていた場合の波形例である。正電位にチャージされていた電荷の放電時間分、立ち上げに要する時間(電位が降下して負極側に変わるまでの時間分)が長くなる。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたもので、高電圧を発生する装置において、オーバーシュートやアンダーシュートを発生することなく、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明の高電圧発生装置は、トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を出力する高電圧発生装置において、前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の画像形成装置は、記録材に画像を形成するための画像形成手段と、トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を前記画像形成手段に出力する高圧電源とを有し、前記高圧電源は、前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
従って本発明によれば、高電圧を発生する装置において、負荷部が逆極性に帯電され、逆極性電位が大小の様々な値であった場合において、オーバーシュートやアンダーシュートを発生せずに、且つ、短時間で出力電圧を目標値に到達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】画像形成装置における紙間(非画像)領域とパッチ画像の形成領域との時間関係を説明した図である。
【図2】負荷部が逆極性側の電位にチャージされていた場合における高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図3】高電圧発生装置の出力値が過渡のスルーレート状態で到達目標値に達する高電圧波形を示す図である。
【図4】本発明の実施例1に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図5】本発明の実施例1〜3に従う正及び負バイアスの高圧制御信号と高電圧出力値との関係を示す図である。
【図6】本発明の実施例1に従う高電圧出力波形と各信号のタイミングを示した図である。
【図7】容量性の負荷部を有した状態で正負バイアスを交互に出力した波形を示す図である。
【図8】本発明の実施例1に従う高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図9】本発明の実施例1に従う高電圧の立上げ波形を条件ごとに示す図である。
【図10】本発明の実施例2に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図11】本発明の実施例2に従う高電圧出力波形と各信号のタイミングを示した図である。
【図12】本発明の実施例2に従う高電圧の立上げ波形を示す図である。
【図13】本発明の実施例2に従う高電圧の立上げ波形を条件ごとに示す図である。
【図14】DUTY幅と高電圧出力値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の関係を示す図である。
【図15】PWM信号のDUTY幅と所定時間経過後の高電圧出力値(過渡状態)の関係を示す図である。
【図16】本発明の実施例3に従う高電圧発生装置の回路構成を示す図である。
【図17】予め設定される高速立上げ期間T1の条件(タイマ時間、スルーレート)と補正値との関係を示す図である。
【図18】高電圧発生装置の構成を模式的に示すブロック図である。
【図19】高電圧発生装置の適用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、上述した課題を解決するための本発明の具体的な構成について、以下に実施例に基づき説明する。尚、以下に示す実施例は一例であって、この発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0016】
本発明の実施例の高電圧発生装置は、高電圧発生装置の起動前における電圧の立ち上げの過渡状態の期間又は少なくとも電圧の立ち上げの一部の期間で、スルーレート又は立ち上げ期間の幅を目標電圧の大きさと負荷部の逆極性側の電位の大きさを考慮して可変設定する点が特徴である。さらに、高電圧発生装置の昇圧トランスは、出力電圧が過渡状態の期間において急峻な高いスルーレートで目標電圧に到達する駆動条件で駆動が開始されるようにする。そして、目標電圧の大小に関わらず、オーバーシュートやアンダーシュートなく、且つ、短時間で目標電圧へ収束可能としている。なお、本発明におけるスルーレートとは、単位時間あたりに電圧を変化させる際の電圧の変化量のことである。
【0017】
本発明における、急峻な高いスルーレートで目標電圧に到達する高電圧発生装置の動作時の出力波形の模式図を図3に示す。図3の出力波形Bは、高電圧発生装置の出力電圧が予め定められた時定数の曲線に従って目標電圧に向けて上昇する場合の例である。波形A’は出力電圧が目標電圧以上に到達する駆動条件で昇圧トランスを駆動した場合の出力波形であり、時定数は出力波形Bと同じである。一方、同じ目標電圧に到達するまでの時間taは、波形A’で示す方が大幅に短くなっている。このように過渡状態において急峻な高いスルーレートの部分THを用いて出力電圧を目標電圧または目標電圧の近傍まで立ち上げ、その後、波形Aのとおり、高速に定電圧制御回路(ハードウエア)により目標電圧を維持するための高速な帰還制御を実行するようにした高電圧発生装置である。
以下、図面を参照しながら本発明の好適ないくつかの実施例について詳細に説明する。
【実施例1】
【0018】
本発明の実施例1の高電圧発生装置は、起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡状態の期間を起動開始直後の高速立ち上げ期間と目標電圧到達前の定電圧制御待機期間の2つに分割する。そして、高速立ち上げ期間と定電圧制御待機期間とで昇圧トランスを駆動する駆動信号(本実施例ではPWM信号)のオンデューティ幅(以降、オンDUTY幅と記載する)を夫々設定する。目標電圧到達前の定電圧制御待機期間ではオンDUTY幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに抑制される。そして、この過渡状態の高速立上げ期間を目標電圧の大きさに負荷部の逆極性側の電位(電圧)の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定することを特徴とする。
【0019】
本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能を模式的に表したブロック図を図18(b)に示す。なお、図18(a)は従来の高電圧発生装置を例示した図である。従来の高電圧発生装置は、目標電圧設定部21で設定した出力電圧となるように、定電圧制御ブロック22で昇圧回路部23の出力部をモニタするとともに入力部に帰還制御したものである。図18(b)に示す本実施例の高電圧発生装置は、高速立上げ期間を可変設定できるブロック(66、76)と、ブロック(66、76)で可変する量を逆極性となる負荷電位の大きさに応じて補正処理するブロック(65、75)とを更に備えたものである。
【0020】
まず、図4に基づき本実施例の高電圧発生装置の構成について説明する。図4に示す高電圧発生装置は、アナログ回路で構成された正極性と負極性の高電圧発生回路と、ハードウエア制御信号を生成して夫々の高電圧発生回路に出力するASIC7とを備える。そして、ASIC7のハードウエア制御信号の出力状態を制御及び設定するマイクロコントローラ1を備えている。更に、高電圧発生回路のアナログ回路で構成された部分は、昇圧トランス(T1、T51)と昇圧回路と、コンパレータとが正負バイアス用に夫々構成され、更に出力電圧検出回路4とオフセット電位設定回路3を備えている。
【0021】
マイクロコントローラ1は、高電圧発生装置の目標電圧の設定やオンオフのタイミング、PWM信号のオンDUTY幅の設定、また、後述するタイマ時間の設定等を行うために、ASIC7内のレジスタ36に対して所定タイミングでデータを設定する。ASIC7は、高電圧発生回路の目標電圧を設定する高圧制御信号HVCNTをD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。また、高電圧発生回路をスイッチングするPWM信号HVPWMを外部に出力し、高電圧発生回路の出力値が目標電圧に到達したことを示す目標電圧到達信号/HVATNが外部から入力される。尚、高圧制御信号HVCNTは、PWM信号の形態で出力し、そのPWM信号の周波数における応答特性を良くした高次のローパスフィルタ等でDC電圧値に変換したものでも良い。また、正負バイアスの夫々に同様に構成されている部分も多く、正極性の高電圧を発生する正バイアス用は(P)、負極性の高電圧を発生する負バイアス用は(N)として、以降、図に示す。また、以降、記載の(P)(N)も同様に正バイアス用、負バイアス用を示すものとし、正負両極性で共通に示される部分は(P)(N)を省いて示す。
【0022】
次に、図4に示す高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作について説明する。正バイアス用の昇圧トランスT1は、ASIC7から出力されたPWM信号HVPWM(P)に基づいてスイッチングされる。昇圧トランスT1から出力された高電圧は出力電圧検出回路4で分圧されて検出される。検出された分圧電圧Vdtは高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧Vtgt(P)とコンパレータCMP10で比較演算され、この比較演算の結果に応じてASIC7が出力するPWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅が帰還制御される。負バイアスも同様に帰還制御される。尚、この帰還制御はフィードバック制御とも呼ばれる。
【0023】
次に、ASIC7に搭載されるハードウエアロジック回路の構成について説明する。ASIC7は、正バイアス用の信号の生成と制御を行う回路ブロック37と、負バイアス用で同様のブロック87とを備えている。また、レジスタ36内に構成されるトリガ設定部130は、高圧制御信号のHVCNT(P)とHVCNT(N)の出力値を更新するタイミングを決定するものであり、マイクロコントローラ1によって制御される。
【0024】
次に、レジスタ36の他の設定部を説明する。レジスタ36の内部の詳細は、以下のとおりである。
・PWM信号の出力を許可または停止するEnable設定部(131、181)。
・PWM信号のオンDUTY幅を徐々に広げていく時間を設定するスローオン設定部(132、182)。
・PWM信号の最大オンDUTY幅を設定するDUTY_max設定部(133、183)。
・高速立上げ期間に使用されるオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr1設定部(134、184)。
・定電圧制御待機期間に使用されるオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr2設定部(135、185)。
・高速立上げ期間の時間幅を設定するタイマ設定部(136、186)。
・トリガ設定部130から次のトリガ信号が出力された際に取り込まれる正バイアス回路の目標電圧を予め設定するHVnext設定部(139、189)。
・トリガ信号によってレジスタHVnext設定部139から値が取り込んで保持されるHVtgt設定部(138、188)。
尚、この各設定部は正負夫々の極性用に構成されており、(P)(N)を付して図4に示す。
【0025】
次に、ASIC7内の回路モジュールについて説明する。ASIC7内の差分演算回路は2つのレジスタ設定値の差分値を算出し、算出した差分値に応じて一意的に決定されるタイマ時間が導出される。カウンタブロック(31、81)は、スローオン設定部(132、182)に設定された時間幅でオンDUTY幅0からDUTY_max設定部(133、183)に設定された最大オンDUTY幅まで徐々にオンDUTY幅の広がった値をPWM生成部(32、82)から出力する。尚、高電圧発生装置の立ち上げ能力はこの最大オンDUTY幅に応じて変化するため、DUTY_max設定部(133、183)をマイクロコントローラ1で設定可能にして、部品の構成(昇圧トランス巻線数等)を変更せずに、その立ち上げ能力を容易に調整することができる。PWM生成部(32、82)は、DUTY_Tr1設定部(134、184)に設定されたオンDUTY幅のPWM信号をタイマ設定部(136、186)に設定された時間幅でEnable設定部(131、181)の設定に応じた切り替えタイミングで出力する。また、このPWM信号に引き続いてDUTY_Tr2設定部(135、185)に設定されたオンDUTY幅のPWM信号を出力し、出力値が目標値に到達したことを示す信号/HVATNがLになるとPWM信号のオンDUTY幅は0とされる。その後、スローオンで徐々にオンDUTY幅を広げていくPWM信号を出力するように制御される。出力許可部(33、83)は、レジスタEnable(131、181)または目標電圧到達信号/HVATNのいずれかがLowになることによってPWM信号の出力を停止するように制御する。レジスタへのデータ取り込みとデータ更新を行うCapture部(34、84)は、トリガ信号に基づいてHVnext設定部(139、189)のデータを取り込んでHVtgt設定部(138、188)に書き込みを行う。目標信号生成部(35、85)は、HVtgt設定部(138、188)のレジスタ値に基づいたアナログ信号を生成する。
【0026】
次に、上記で説明したASIC7のハードウエアロジック回路に備えられる機能を以下に示す。
(a)マイクロコントローラ1により、複数のDUTY値設定レジスタ、PWM信号の出力ENABLEレジスタ、出力目標電圧の設定レジスタ、PWM信号のオンDUTY幅を徐々に広げていくスローオンの時間幅を設定するレジスタ、高圧制御信号の出力値を更新するタイミングを決定するトリガ信号の設定レジスタの値を設定する。複数のDUTY値設定レジスタは、高速立上げ期間T1のDUTY設定レジスタと定電圧制御待機期間T2のDUTY設定レジスタと定電圧制御領域で生成可能なPWM信号の最大オンDUTY幅を設定するレジスタとから構成される。
(b)上記トリガ信号によって、出力目標値を予め設定されたレジスタ値から内部レジスタに取り込む。
(c)上記内部レジスタに取り込まれた値に従ったアナログ信号をD/Aコンバータを介してASIC外部に出力する。
(d)現在出力されている極性の目標電圧を次に出力される逆極性側の目標電圧に対応した補正値を算出し、この補正値に応じたタイマ時間が設定されてレジスタに書き込まれる。
(e)上記のタイマ時間に応じて、高速立上げ期間T1のオンDUTY幅のPWM信号と定電圧制御待機期間T2のオンDUTY幅のPWM信号が順に生成され出力される。
(f)外部から入力される目標値到達信号/HVATNによってPWM信号のオンDUTY幅は瞬時に0とされる。
(g)上記オンDUTY幅0から所定のオンDUTY幅に広げる際に、レジスタに設定された上記スローオンの時間幅で段階的にオンDUTY幅が増加される。
(h)以上の機能が正バイアス用と負バイアス用としてそれぞれ独立して制御される。
次に、上記(b)と(c)で説明した正バイアスと負バイアスの出力目標電圧の設定とトリガ信号による内部レジスタへの取り込み機能の詳細について図6を用いて説明する。図6は本実施例の高電圧発生装置から出力される正負両極性の電圧波形に対して、各信号とのタイミングを示したものである。一例として、正バイアス出力の+4KVから負バイアス出力の−1.5KVに出力電圧が切り替えられ、その後、再び正バイアス出力の+4KVに出力電圧が切り替えられる状態を示す。
【0027】
マイクロコントローラ1はレジスタHVnext(P)とレジスタHVnext(N)に次のトリガタイミングで設定更新する値を予め設定する。トリガ信号が出力されると、この予め設定されたレジスタHVnext(P)とレジスタHVnext(N)の値は夫々レジスタHVtgt(P)とレジスタHVtgt(N)の内部レジスタにトリガ信号の立ち上がりエッジに同期して取り込まれて目標電圧が更新される。図6の例では、トリガ信号に同期して、正バイアス出力設定が+4KVから0V(オフ)に変更され、負バイアス出力設定が0V(オフ)から−1.5KVに変更され、出力極性が切り替えられる状態を示している。正バイアス目標信号生成部35は、この更新されたレジスタHVtgt(P)に取り込まれた値に従ったアナログ信号をASIC7の外部に出力する。目標信号生成部85は、このレジスタHVtgt(N)に取り込まれた値に従ったアナログ信号をASIC7の外部に出力する。差分演算回路30は、HVtgt(P)設定部138の値をHVnext(P)設定部139に付した補正値を演算してタイマ時間を算出し、このタイマ時間に応じて図中に示す高速立上げ期間のタイマNの時間が決定される。タイマPも同様の方法で決定される。
【0028】
次に、上記(d)で説明したタイマ時間の決定(補正)方法の詳細について説明する。差分演算回路(30、80)は、現在出力中の極性側の目標電圧の値を示すレジスタHVtgtの値を、次のトリガタイミングで更新される逆極性側の目標電圧の値を示すレジスタHVnextの値に対応した補正値を算出し、算出された補正値に応じて一意的に決定されるタイマ時間をタイマ設定部(136、186)に設定する。本実施例の差分演算回路(30、80)における補正値は、オフセット電位設定回路3が設けられることによって、レジスタHVtgtとレジスタHVnextの値の差分量で求められる。
【0029】
オフセット電位設定回路3は出力電圧検出回路4の一端の電圧をGND電位ではなく、所定の電位Vofsetで保持させて正負の極性を問わず出力電圧の検出を可能とし、高精度に負荷電流の検出を行うものである。このオフセット電位設定回路3を設けて同じ出力電圧検出回路4で正負の出力電圧を検出可能とした場合における、高圧制御信号HVCNT(P)と高電圧出力値との関係を図5(a)に、高圧制御信号HVCNT(N)と高電圧出力値との関係を図5(b)に示す。オフセット電位設定回路3を設けることによって、高圧制御信号の出力値がVofsetの時に正負バイアスともに高電圧出力値は0Vとなる。正バイアスは、出力制御信号がVofset〜Vccの電圧範囲で設定され、出力制御信号HVCNT(P)がVpの時にHVpの高電圧が出力されることを示す。従って、出力制御信号HVCNT(P)の電圧値からVofsetを引いた電圧値(Vp−Vref0)に比例した高電圧が出力されるように構成される。負バイアスは、出力制御信号HVCNT(N)が0〜Vofsetの電圧範囲で設定され、出力制御信号がVnの時にHVnの高電圧が出力されることを示す。従って、Vofsetから出力制御信号HVCNT(N)の電圧値を引いた電圧値(Vp−Vofset)に比例した高電圧が出力されるように構成されている。その結果、上述の補正値は│(Vp−Vref0)-(Vref0−Vn)│=│Vp−Vn│として、決定することが可能となる。尚、差分演算回路(30、80)によって算出された補正値とタイマ設定部(136、186)の値は後述する図17で示すとおり直線性の相対関係となる。
【0030】
次に、上記(e)で説明したタイマ時間とPWM信号の生成について図4を用いて説明する。マイクロコントローラ1がトリガ設定部130のレジスタの値を設定することによりトリガ信号が出力されると、PWM生成部(32、82)は、高速立上げ期間T1のオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr1設定部(134、184)に従ったオンDUTY幅のPWM信号をタイマ設定部(136、186)に設定されているタイマ時間に基づいた時間幅で出力する。このPWM信号の出力はASIC7によって実行されるため、オンDUTY幅0からこのオンDUTY幅へ拡げるための立ち上げ時間は不要であり、最初のパルスからオンDUTY幅を有したPWM信号を瞬時に出力することが可能となる。タイマ設定部(136、186)に設定された時間を経過すると、続けて定電圧制御待機期間T2のオンDUTY幅を設定するDUTY_Tr2設定部(135、185)に従ったオンDUTY幅のPWM信号を出力する。
【0031】
つまり、PWM生成部(32、82)は、高電圧発生装置の起動開始直後にオンDUTY幅が広いPWM信号を最初のパルスから出力して瞬時に高スルーレートでの出力電圧立上げを行う。そして、予め設定されたタイマ時間が経過した後に、続いて、オーバーシュートの発生しない低いスルーレートとなるオンDUTY幅のPWM信号を出力する。このタイマ時間は、現在出力中の極性側の目標電圧を次に更新される逆極性側の目標電圧に付した補正値に対して直線性の関係を保した値に可変設定されるため、この極性間の設定補正値に応じて可変された立上げ時間幅で高電圧発生装置を起動させることとなる。そして、このタイマ時間経過後に、高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2へ切り替わる。
【0032】
従って、立ち上げ能力が飛躍的に高くされた高電圧発生装置においても、最初に出力されるオンDUTY幅の広いPWM信号を出力するタイマ時間幅がこの極性間の補正値の大きさに応じて補正される。つまり、負荷電位が高電圧発生装置の出力範囲外となる逆極性側の負電位であった場合でも、その負極性電位の大きさに応じて、高速立上げ期間T1となるタイマ時間が補正される。そのため、この補正値が大きいときはオンDUTY幅の広いPWM信号でスイッチング時間を長くして立上げ期間が短縮され、一方、この補正値が小さいときは同スイッチング時間を短くしてオーバーシュートが低減される。つまり、正極性と負極性の双方を出力する高電圧電源装置において、起動前における逆極性の負荷電位の大小に関わらず、オーバーシュート無く、且つ、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることが可能となる。
【0033】
次に、上記(f)と(g)で説明した目標電圧到達信号/HVATNによるPWM信号のオンDUTY幅制御の詳細について説明する。まず、正バイアスの高電圧発生回路に構成される昇圧トランスT1を含む周辺の回路について説明し、続けて目標電圧到達信号/HVATN(P)を出力するコンパレータCMP10の動作について説明する。負バイアスの高電圧発生回路については、正バイアスと同様に動作するため説明を省略する。
【0034】
ASIC7から出力されたPWM信号HVPWM(P)はFET Q4のゲート端子に入力される。FET Q4と電源電圧Vcc及び抵抗器R8は、FET Q4のゲート端子に入力されたPWM信号に従ってパワーMOSFET Q5のゲート端子を駆動する。パワーMOSFET Q5は昇圧トランスT1をスイッチング駆動する。スイッチング駆動された昇圧トランスT1は脈流の高電圧を出力する。昇圧トランスT1によって出力された脈流の高電圧は高圧ダイオードD2と高圧コンデンサC5と抵抗器R9と出力電圧検出回路4からなる整流器で整流されて直流電圧化され、負荷部HVoutputに出力される。負荷部HVoutputに出力された高電圧は、出力電圧検出回路4により分圧されて検出される。検出された分圧電圧VdtはコンパレータCMP10によってモニタされて、高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧値Vtgt(P)と比較される。検出電圧値Vdtと目標電圧値Vtgt(P)を比較したコンパレータCMP10は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以下の場合にはHighを出力し、目標電圧値Vtgt(P)以上の場合にはLowを出力する。
【0035】
ASIC7は、目標電圧到達信号/HVATN(P)がLowになると、出力許可部33で出力するPWM信号HVPWM(P)を瞬時にマスクすることにより、PWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅を瞬時に0とする。ここで、オンDUTY幅は、ASIC出力部のHVPWM(P)ではLow論理となる。パワーMOSFET Q5のゲート端子部ではHigh論理となる。つまり、High固定の信号を出力する。PWM信号HVPWM(P)が瞬時にHigh固定の信号を出力すると、FET Q4をオンし、接続されるMOSFET Q5を瞬時にオフさせて高電圧発生回路を瞬時にオフする。
【0036】
一方、目標電圧到達信号/HVATN(P)がLowからHighになると、カウンタブロック31は、DUTY_max(P)設定部133に設定されたデータに基づいたオンDUTY幅に向けて、段階的にオンDUTY幅を広げていくようにデータをPWM生成部32に出力する。PWM信号のオンDUTY幅を段階的に広げていく際の時間幅はスローオン設定部132のレジスタ値によって決定される。そして、PWM生成部32はASIC7の外部にこのスローオン設定部132のレジスタ値によって決定されたPWM信号を出力する。
【0037】
つまり、ASIC7は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)を超えたときには瞬時にPWM信号HVPWM(P)のオンDUTY幅を瞬時に0として高電圧発生回路を急速にオフする。また、ASIC7は、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgtを下回った時にはオンDUTY幅の立ち上げに時定数を持たせることで高電圧生成回路を緩やかにオンする。その結果、一定電圧を保持するための帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチングともいう)を大幅に低減することが可能となる。
【0038】
次に、以上で説明した正負両極性を出力する高電圧発生装置のアナログ回路とASIC7によって生成される高電圧波形の具体例を図7、図8、図9に示し、従来の高電圧発生装置を単純に高速化した場合の高電圧波形と対比しながら説明を行う。まず、高電圧出力部に容量性負荷を有した状態において、正極性バイアスと負極性バイアスを交互に出力した場合の高電圧波形例を図7に示す。図7の波形αは、負荷電位が0Vの状態から目標電圧−1KVとして負極性バイアスを生成し、その後に、目標電圧を0Vになるように正極性の方向にバイアスを切り替えた場合の波形例である。波形αの負バイアス立上げ時間をTαn、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw、正バイアス立上げ時間をTαpで示す。
【0039】
図7(a)は、上記波形αに対して、負荷電位が0Vではなく逆極性側にチャージされていた場合において、同じタイミングで高電圧発生装置をオンオフした波形βaを示したものである。波形βaは負荷電位が+3KVにチャージされた状態から目標電圧を-1KVとして負極性バイアスを生成し、その後に、目標電圧を+3KVとして正極性の方向にバイアスを切り替えた例である。波形βaの負バイアス立上げ時間をTβn(a)、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw(a)、正バイアス立上げ時間をTβp(a)で示す。この波形βaは、波形αの場合と異なり負荷電位が正負の極性に繰り返しチャージする必要があるため、その分の立上げ時間が長くなっている。その結果、−1KVの電位を保持する帰還制御期間がTwからTw(a)に減少するとともに、+3KVの負荷電位に戻る時間が(Tβp(a)−Tαp)分遅延してしまう。尚、図7の電圧値の具体例は、オンする極性バイアスの目標電圧に対して、予め負荷部にチャージされている残留電荷による負荷電位の大きさ割合が大きくなる例であれば他の電圧例でも遅延が生じる状況は同様となる。
【0040】
図7(b)は、+3KVの負荷電位に戻る時間を波形αと同じになるように高電圧発生装置のオンオフタイミングを変更したものである。負荷電位が+3KVである期間は波形αと同等であるものの、−1KVの電位を保持する帰還制御期間がTw(b)に減少してしまう。この状態は、図1(a)で説明したように、画像形成装置においてはパッチ画像を形成する期間が著しく短くなってしまうことに相当する。
【0041】
図7(c)は、負荷電位が逆極性側にチャージされていた場合においても、立上げ時間が短くなるように、立上げ能力(スルーレート)を飛躍的に向上させた本実施例に対応する波形例βcを示したものである。波形βcの負バイアス立上げ時間をTβn(c)、−1KVの電位を保持する帰還制御期間をTw(c)、正バイアス立上げ時間をTβp(c)で示す。波形α、βa、βbと比較して、急峻な高いスルーレートで立ち上げが行われて、立上げ時間は波形αと同等にまで短縮されている。
【0042】
この負荷部が逆極性側にチャージされた状態において、この逆極性電位の大きさに応じた補正値で、高速立上げ期間T1の時間幅を可変設定して高電圧発生装置を起動させた波形例を図8に示す。図8では、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた夫々の波形例を示している。立ち上げ時の急峻な高スルーレートと目標電圧到達前の緩やかな低スルーレートは各波形で共通である。次に、図8から同じパラメータでいくつかの波形を抜き出したものを図9に示して説明する。
【0043】
図9(a)は、負荷電位が各電位(+500V、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを目標値−1KVまで立ち上げた各波形を図8から抜き出したものである。図9(a)において、高速立上げ期間を夫々T1a、T1b、T1c、目標電圧到達前の定電圧制御待機期間をそれぞれT2a、T2b、T2cで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさが補正量となり、負バイアス目標電圧にこの補正量を加えた補正値に応じて、高速立上げ期間が可変設定され、全て1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0044】
図9(b)は、負荷電位が+500Vにチャージされた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形を図8から抜き出したものである。図9(b)において、高速立上げ期間をそれぞれT1d、T1e、T1f、目標電圧到達前の定電圧制御待機期間をそれぞれT2d、T2e、T2fで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさを加えた補正値に応じて、高速立上げ期間T1a,T1b,T1cが可変設定され、全ての場合で1msで目標値−1KVに到達している。
【0045】
これら図8及び図9で説明した高速立上げ期間を可変設定するタイマ時間と逆極性側にチャージされていた負荷電位を加えた補正値との関係を図17(a)に示す。この図は、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを加えた補正値に応じて高速立上げ期間T1となるタイマ時間が比例した状態で設定されることを示している。つまり、図17に示すような関係で高速立上げ期間T1のタイマ時間を可変設定することにより、高電圧発生装置の出力の立ち上げを図8のような波形とすることが可能となる。例えば図17(a)で補正量が4KVの場合は、補正するタイマ時間は0.5msであり、スルーレートは9.5KV/msとなる。
【0046】
以上説明したように、本実施例によれば、所定極性の電圧から所定極性とは逆極性の電圧に切り替える際に、目標電圧の大きさと負荷部の逆極性電位(所定極性の電位)の大きさを考慮した補正値に応じて、予め可変設定されるタイマ時間を設け、このタイマ時間に至って、高速立上げ期間のPWM信号のオンDUTY幅を可変設定する。これにより、負荷部の逆極性電位が大小様々な値であったとしても、立ち上げのオンDUTY幅がこの補正値に応じて高分解能で可変された状態で高電圧発生回路を起動することが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、短時間で出力電圧を目標電圧に到達させることが可能となる。
【実施例2】
【0047】
本発明の実施例2の高電圧発生装置は、高電圧発生装置の起動開始から目標電圧に到達するまでの過渡状態の期間を起動開始直後の高速立上げ期間と目標電圧到達前の定電圧制御待機期間の2つに分割する。そして、高速立上げ期間と定電圧制御待機期間とで昇圧トランスを駆動する駆動信号(本実施例ではPWM信号)のオンDUTY幅を夫々設定するものである。この目標電圧到達前の定電圧制御待機期間ではPWM信号のオンDUTY幅が狭くなり立ち上げ能力が低めに設定される。そして、この高速立上げ期間のスルーレートを、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定することを特徴とする。そのため、本実施例では、この補正値と直線性の関係を保って可変設定されるオンDUTY幅のPWM信号を生成する。そして、起動開始とともに、可変設定されたオンDUTY幅のPWM信号を用いてスイッチングを開始させて、出力電圧が過渡状態の急峻な高いスルーレート状態にして目標電圧に到達するようにしたものである。
【0048】
次に、本実施例の高電圧発生装置の主要となる機能を模式的に示したブロック図を図18(c)に示す。本実施例の高電圧発生装置は、図18(a)に示す従来の高電圧発生装置に対して、高速立上げ期間T1のスルーレートを可変設定できるブロック(67、77)と、そのブロック(67、77)での可変量を逆極性となる負荷の電位の大きさに応じて補正処理するブロック(65、75)とをさらに備えている。
【0049】
まず、図10に本実施例の高電圧発生装置の構成を示す。尚、先に実施例1で説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や記号を付し、その説明は省略する。図10に示す高電圧発生装置は、アナログ回路で構成された正極性および負極性の高電圧発生回路と、高電圧発生回路に出力するハードウエア制御信号を生成するASIC2と、ASIC2のハードウエア制御信号の出力状態を制御及び設定するマイクロコントローラ1とを備えている。さらに、高電圧発生回路のアナログ回路で構成された部分は、昇圧トランス(T1、T51)と昇圧回路と、昇圧トランス(T1、T51)を駆動するPWM信号を生成するPWM生成回路(45、95)、最大DUTY設定回路(41、91)、コンパレータ(CMP10、CMP50)が正負バイアス各々に備えられ、さらに出力電圧検出回路4とオフセット電位設定回路3とから構成される。
【0050】
マイクロコントローラ1は、ASIC2内に設けられる目標値設定用レジスタのHVtgt部(160、162)とオンオフ設定用レジスタのONOFF設定部(161、163)に対して、所定のタイミングでデータ設定して、高電圧発生装置の目標出力値の変更やオンオフのタイミングを制御する。また、ASIC2は、HVtgt部(160、162)に応じた高圧制御信号HVCNTをD/Aコンバータを介してアナログ信号として外部に出力する。また、ONOFF設定部(161、163)に応じたオンオフ制御信号/HVONと、高電圧発生回路で使用される所定周期のクロック信号CLKとを外部に出力する。タイマ5は、オンオフ制御信号/HVONから所定時間遅れたタイミング信号THSW(P)を生成し外部に出力する。また、このタイミング信号THSW(P)に従って高速立上げ期間から定電圧制御待機期間への切り替えが行われる。尚、正負バイアス夫々で同様に構成されている部分は、正極性の高電圧を発生する正バイアス用は(P)、負極性の高電圧を発生する負バイアス用は(N)を付している。また、以降に記載の(P)(N)も同様に正バイアス用、負バイアス用を示し、正負両極性で共通に示される部分は(P)(N)を省いて示す。
【0051】
次に、図10の高電圧発生装置における高電圧発生回路の動作概要について説明する。なお、ここでは、正バイアスの発生動作について説明して、負バイアスについては極性が逆であるのみで同様の動作であるため説明は省略する。
【0052】
図10において、最大DUTY設定回路41は、ASIC2から出力された各種信号に応じて、後述する可変電圧Vdutyを予め生成し、生成した可変電圧Vdutyを起動時および定常時にPWM生成回路45に供給する。PWM生成回路45は供給された可変電圧Vdutyに応じたオンDUTY幅のPWM信号を生成し、このPWM信号に基づいて昇圧トランスT1がスイッチング駆動される。昇圧トランスT1から出力された高電圧は出力電圧検出回路4で分圧されて検出され、検出された分圧電圧Vdtは高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧Vtgt(P)とコンパレータCMP10で比較演算される。そして、比較演算結果に応じてPWM生成回路45が出力するPWM信号のオンDUTY幅が帰還制御される。この帰還制御されたオンDUTY幅で昇圧トランスT1がスイッチング駆動される。つまり、最大DUTY設定回路41でオンDUTY幅の最大幅が可変設定され、そのオンDUTY幅の範囲内で出力電圧が目標電圧となるように帰還制御される。尚、このオンDUTY幅の最大幅は、マイクロコントローラ1で可変可能であるため、ハードウエア(昇圧トランスの巻線仕様等)を変更することなく高電圧発生装置の立ち上げ能力を容易に調整できるという利点がある。
【0053】
まず、PWM信号を可変出力するPWM生成回路45とコンパレータCMP10の動作について説明する。PWM生成回路45には、コンパレータCMP10の出力と、クロック信号CLKを抵抗器R6とコンデンサC3により擬似三角波とした三角波信号が入力される。PWM生成回路45内には、コンパレータCMP15とFET Q3と抵抗器R2、R3、R4とコンデンサC2を有している。コンパレータCMP15は、非反転入力部に入力された三角波信号と反転入力部の電圧を比較演算してPWM信号のオンDUTY幅を可変出力する。反転入力部の電圧値が低いほど、Low側のDUTY幅が狭いPWM信号を出力する。
【0054】
コンパレータCMP10は検出電圧値Vdtと目標電圧値Vtgt(P)とを比較演算し、検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以下の場合には、Lowを出力してFET Q3をオフさせる。検出電圧値Vdtが目標電圧値Vtgt(P)以上の場合には、Highを出力してFET Q3をオンさせる。FET Q3がオンすると、コンパレータCMP15の反転入力部が瞬時に0V電位に降下するため、コンパレータCMP15の出力はHighとなって高電圧発生回路は瞬時にオフ状態とされる。
【0055】
一方、FET Q3がオフすると、コンデンサC2には、後述する最大DUTY設定回路41で生成された直流電圧Vdutyから抵抗器R2〜R4を介して電荷がチャージされる。この充電の時定数は電圧Vdutyと抵抗器R2〜R4とコンデンサC2の値によって決定される。この時定数によって、オンDUTY幅が0から緩やかに広げられる。
【0056】
また、コンデンサC2の電圧値は電圧Vdutyを抵抗器R2とR3で分圧した電圧値が最大値とされ、このコンデンサC2の最大電圧値によってコンパレータCMP15が出力するPWM信号の最大のオンDUTY幅が設定される。つまり、PWM生成回路15は、入力される電圧Vdutyの大きさに応じて可変される最大のオンDUTY幅のPWM信号を生成し、検出電圧値Vdtが目標電圧Vtgt(P)を超えたときには瞬時にオンDUTY幅を0として高電圧発生回路を瞬時にオフする。そして、検出電圧値Vdtが目標電圧Vtgt(P)を下回った時には立ち上げに時定数を持たせて高電圧発生回路を緩やかに起動させる。その結果、一定電圧を維持するための帰還制御によって発生する電圧振動(リップル、ハンチングともいう)が大幅に低減される。
【0057】
次に、高電圧発生回路に構成される昇圧トランスT1の周辺回路について説明する。上述のPWM生成回路45から出力されたPWM信号はFET Q4のゲート端子に入力される。FET Q4と電源電圧Vcc及び抵抗器R8は、FET Q4のゲート端子に入力されたPWM信号に従ってパワーMOSFET Q5のゲート端子を駆動する。パワーMOSFET Q5は昇圧トランスT1をスイッチング駆動する。スイッチング駆動された昇圧トランスT1は脈流の高電圧を出力する。昇圧トランスT1によって出力された脈流の高電圧は高圧ダイオードD2と高圧コンデンサC5と抵抗器R9と出力電圧検出回路4からなる整流器で整流されて直流電圧化され、負荷部HVoutputに出力される。負荷部HVoutputに出力された高電圧は、出力電圧検出回路4により分圧されて検出される。検出された分圧電圧VdtはコンパレータCMP10によってモニタされており、高圧制御信号HVCNT(P)により設定された目標電圧値Vtgt(P)と比較されて目標電圧を維持する帰還制御が行われる。
【0058】
尚、PWM生成回路45は、起動待機時において最大のオンDUTY幅のPWM信号を出力しているが、下流に配置されるFET Q2によって強制的にオフ状態にされているだけである。従って、FET Q2がオフされると、瞬時に最大オンDUTY幅のPWM信号でスイッチングを開始することが可能となる。また、オンオフ制御信号/HVON(P)はパワーMOSFET Q5のゲート端子をFET Q2で直接制御するため、オンオフ時の応答遅延時間を小さくすることができる。なお、応答遅延時間が若干長くなっても良い場合は、オンオフ制御信号/HVON(P)及びFET Q2の代わりに、ASIC2から出力されるクロック信号CLKをHigh状態に固定することにより高電圧発生回路をオンオフする構成にしても良い。
【0059】
次に、最大DUTY設定回路41について説明する。最大Duty設定回路41は、差動増幅回路43とオペアンプOP41とから構成される。差動増幅回路43には、正バイアスの高圧制御信号HVCNT(P)と負バイアスの高圧制御信号HVCNT(N)が接続されており、正バイアスの高圧制御信号HVCNT(P)に対して、負バイアスの高圧制御信号HVCNT(N)を補正量として付した補正電圧が生成される。また、差動増幅回路43にはスルーレートの可変切替を行うタイミング信号THSW(P)が接続されており、このタイミング信号THSW(P)によって差動増幅回路43の出力値は所定の固定値へ切り替えて出力される。タイミング信号THSW(P)は、タイマ5によって設定されたタイマ時間幅でオンオフ制御信号/HVONから遅延された信号である。このタイマ5によって設定された時間幅で高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2への切り替えが行われる。
【0060】
オペアンプOP41は差動増幅回路43から出力された補正電圧をバッファして電圧Vdutyを出力する。そして、この電圧Vdutyの値に応じて、PWM生成回路45によって生成されるPWM信号の最大オンDUTY幅が可変される。
【0061】
次に、正バイアスと負バイアスの出力目標電圧の設定と各信号と出力電圧とのタイミングとについて図11を用いて説明する。図11は本実施例の高電圧発生装置から出力される正負両極性の電圧波形に対して、各信号とのタイミングを示したものである。一例として、正バイアス出力の+4KVから負バイアス出力の−1.5KVに切り替えられ、その後、再び正バイアス出力の+4KVに切り替えられる状態を示している。マイクロコントローラ1は目標値設定用レジスタのHVtgt部(160、162)に各極性の目標電圧を予め設定する。ASIC2は、設定されたHVtgt部(160、162)に応じたアナログ信号を常時出力しているが、FET(Q2、Q52)がオンすることによって高電圧発生回路は強制オフ状態で起動待機されている。そして、オンオフ設定用レジスタのONOFF設定部(161、163)がアクティブオンにされることによって/HVON信号が出力され、FET(Q2、Q52)がオフし、各極性の高電圧発生装置が起動開始される。その後、タイマ5の時間幅に応じて遅延されたタイミング信号/THSWでスルーレートが切り替えられることにより、高速立上げ期間T1から定電圧制御待機期間T2へ切り替えられる。
【0062】
次に、本実施例で可変設定する立ち上げ過渡状態のスルーレートとオンDUTY幅の関係について図12、図13を用いて説明する。図12(a)は、高電圧発生回路をスイッチング駆動するPWM信号のDUTY幅と出力電圧値〔帰還制御せずに定常状態で到達する値〕との関係について、出力部の電圧を急峻に立ち上げる昇圧回路を用いてその特性を測定し例示したものである。トランスの供給電圧と出力の電圧値には比例関係があるので、6V入力と12V入力の場合とで出力値が半分になる関係の特性曲線となっている。しかし、スイッチング駆動するPWM信号のオンDUTY幅と出力電圧とには比例関係がなく大きく歪んでいる。
【0063】
入力電圧12Vの場合の特性曲線において、オンDUTY幅27%付近のポイントDaとオンDUTY幅43%付近のポイントDbは、スイッチング駆動されるオンDUTY幅が異なっていても、その出力電圧〔帰還制御せずにで定常域で到達する値〕は略同じで約2500Vである。しかしながら、その立ち上がりのスルーレート特性は図12(b)に示すように大きく異なることがわかった。帰還制御せずに出力電圧が飽和する到達値は同じ2500Vであっても、オンDUTY幅が大きいDbの方がより速く立ち上がっている。そこで、出力過渡状態におけるこのオンDUTY幅と所定時間経過後の高電圧出力値(過渡状態の出力上昇カーブ、スルーレートに相当)の特性曲線を測定したものを図13に示す。同じ時間経過後に到達する過渡状態の出力電圧値は、オンDUTY幅に略比例する特性となることがわかった。
【0064】
そこで、本実施例の高電圧発生装置は、このオンDUTY幅と過渡状態の出力電圧が比例する特性を用いて、出力過渡状態のスルーレートを可変設定するようにしたものである。起動開始時の最大オンDUTY幅を目標電圧に応じた値に予め可変設定しておき、高電圧発生回路を起動する。つまり、スルーレートが目標電圧に応じて可変設定されて負荷電圧を上昇させていく。例えば、目標電圧が小さいときにはスルーレートが小さくなるように可変設定することでオーバーシュートが低減される。一方、目標電圧が大きいときはスルーレートが大きくなるように可変設定されることで立上げ期間が短縮される。その際に、ハードウエアの立ち上がりが急峻なカーブ状態(時定数が緩い傾斜カーブに至る前の状態)の時に目標電圧に到達するようなオンDUTY幅で直線的に立ち上げる。続いて目標電圧への到達がハードウエアにより検知されると、オンDUTY幅を瞬時に0とし急速に高電圧発生回路をオフする。
【0065】
その結果、出力電圧上昇時のスルーレートが高くオンDUTY幅に対する出力電圧値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の特性が比例関係にない高電圧発生回路の場合であっても、本実施の高電圧発生装置におけるオンDUTY幅の制御ではこのオンDUTY幅−出力電圧値(帰還制御せずに定常域で到達する値)の特性に依存した目標制御を行わないため、精度や安定性に問題ない制御を行うことが可能となる。
【0066】
次に、以上説明した正負両極性を出力する高電圧発生装置のアナログ回路とASIC7によって生成される高電圧波形の具体例を図14及び図15に示して説明する。尚、本実施例で説明する高電圧発生装置の立ち上げ波形は、実施例1の図7(c)で説明した波形例βcと基本的には同様な波形である。図14に示す高電圧波形の具体例は、負荷部が逆極性側にチャージされた状態において、この逆極性電位の大きさに応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートを可変設定して高電圧発生装置を起動させたものである。図14では、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形例を示している。目標電圧到達前で緩やかに切り替えられたスルーレートは各波形で共通である。この図12から同じパラメータでいくつかの波形を抜き出したものを図15に示して説明する。
【0067】
図15(a)は、負荷電位が各電位(+500V、+1KV、+2KV、+4KV)にチャージされていた状態から、負極性バイアスを目標値−1KVまで立ち上げた各波形を図12から抜き出したものであり、高速立上げ期間をT1、目標値到達前の定電圧制御待機期間をT2、定電圧保持の帰還制御期間をTwで示す。逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさが補正量となり、負バイアス目標値にこの補正量を付した補正値に応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートが可変設定された状態で起動され、高速立上げ期間T1の経過後には全て同じ電圧に到達し、トータル1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0068】
図15(b)は、負荷電位が+500Vにチャージされていた状態から、負極性バイアスを各目標値(−250V、−500V、−1KV)まで立ち上げた各波形を図12から抜き出したものである。ここで期間T1、T2、Twは図13(a)と同様である。また、逆極性側にチャージされていた負荷電位の大きさを考慮した補正値に応じて、高速立上げ期間T1のスルーレートが可変設定されて起動される。図15(a)とは異なり、高速立上げ期間T1の経過後に到達する電圧は、この補正値に応じて可変された状態となる。そして、全て1msで目標電圧−1KVに到達している。
【0069】
これら図14及び図15で説明した高速立上げ期間T1で予め可変設定されるスルーレートと逆極性側にチャージされていた負荷電位を考慮した補正値との関係を図17(b)に示す。目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じてスルーレートが比例した状態で設定される。そして、図17(b)に示す関係で高速立上げ期間T1のスルーレートを予め可変設定して、高電圧発生装置の出力電圧の立ち上げを図14のような波形として高速化することが可能となる。
【0070】
以上説明したように、本実施例によれば、出力電圧の大きさに、負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて、PWM信号のオンDUTY幅を可変設定して高スルーレートで起動するようにした。これにより、負荷部が逆極性であり、逆極性電位が大小様々な値であったとしても、立ち上げ時のスルーレートがこの補正値に応じて高解能で可変された状態で高電圧発生回路を起動させることが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、出力電圧を飛躍的な短時間で目標電圧に到達させることが可能となる。
【実施例3】
【0071】
実施例2での高電圧発生装置では、負荷部にチャージされた逆極性電位(正極性)は、負バイアスを起動させる直前に出力されていた正極性バイアスの目標値から予測するものであった。本実施例では、正負両極性の出力電圧を検出できるように構成された電圧検出回路4によって、起動前に逆極性の負荷電位を検出するものである。そして、目標電圧の大きさに、更に、検出した負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて、立ち上げ過渡状態のスルーレートを可変設定するものである。
【0072】
また、正負両極性の出力電圧を検出できる高電圧発生装置は、逆極性となる高電圧発生回路が構成されていないにも関わらず、その他の要因で逆極性の負荷電位にチャージされてしまう状況が発生する電子写真方式の画像形成装置に適用可能である。本実施例の高電圧発生装置はこのような状況下で適用される単極性の高電圧発生装置である。機能を模式的に示したブロック図を図18(d)に示す。図18(a)に示す従来の高電圧発生装置に対して、逆極性側にチャージされた負荷電位を予め検出するブロック24をさらに備えたものである。
【0073】
次に、高電圧発生装置の構成について図16に示して説明する。尚、既に実施例1および実施例2で説明した内容と同じ構成要素や信号には同じ参照番号や記号を付し、その説明は省略する。オフセット電位設定回路3は出力電圧検出回路4の一端の電圧をGND電位ではなく、所定の電位Vofsetを保持させることにより正負の極性を問わず出力電圧の検出を可能とさせる。出力電圧検出回路4によって検出された負荷電圧の検出値Vsnsは、マイクロコントローラ1によってモニタされる。マイクロコントローラ1は、起動前にモニタした負荷電圧の検出値Vsnsに応じて、高速立上げ期間T1のスルーレート設定用レジスタのTHset1部151に可変した値の書き込みを行う。THset2部のレジスタには予め定電圧制御待機期間T2に用いられるスルーレートの固定値が設定されている。ASIC2はONOFF設定部141によって高電圧発生回路を起動すると、まずTHset1部151のレジスタ値に応じたスルーレート可変信号THCNTを出力し、続いてタイマ8に設定された時間経過後に、THset2部のレジスタ値に応じたスルーレート可変信号THCNTを出力する。152はスルーレートを切り替えるためのスイッチである。
【0074】
その結果、負荷部が逆極性に帯電され、逆極性電位が大小様々な値であったとしても、目標電圧の大きさに負荷部の逆極性電位の大きさを考慮した補正値に応じて可変設定されたスルーレートで高電圧発生回路を起動することが可能になる。その結果、負荷部の逆極性電位の大きさによらず、出力電圧を飛躍的な短時間で目標値に到達させることが可能となる。
【0075】
(高電圧発生装置の適用例)
なお、上記で説明した実施例1乃至実施例3の高電圧発生装置は、前述した電子写真方式の画像形成装置に適用することができる。電子写真方式の画像形成装置としてレーザビームプリンタを例にあげて高電圧発生装置の適用例を説明する。
【0076】
上記の実施例で説明した高電圧発生装置は、電子写真方式のプリンタの画像形成部に対して高電圧を印加するための高圧電源として適用可能である。図19(a)に電子写真方式のプリンタの一例であるレーザビームプリンタの概略構成を示す。レーザビームプリンタ200は、潜像が形成される像担持体としての感光ドラム211、感光ドラム211を一様に帯電する帯電部217、感光ドラム211に形成された潜像をトナーで現像する現像部212を備えている。そして、感光ドラム211に現像されたトナー像をカセット216から供給された記録材としてのシート(不図示)に転写部218によって転写して、シートに転写したトナー像を定着器214で定着してトレイ215に排出する。この感光ドラム211、帯電部217、現像部212、転写部218が画像形成部である。
【0077】
図19(b)はレーザビームプリンタ200に設けられる複数の高圧電源(上記実施例1乃至3に記載の高電圧発生装置)から出力された高電圧を帯電部、現像部、転写部の夫々に出力する構成を示している。高圧電源1(図の501)は帯電部217に高電圧を出力し、高圧電源2(図の502)は現像部212に高電圧を出力し、高圧電源3(図の503)は転写部218に高電圧を出力する。夫々の高圧電源1乃至3から出力される高電圧の値は、制御部としてのコントローラへ500から出力される制御信号に応じて必要な電圧値に制御される。そして、例えば、帯電部217に高電圧を出力した際に、帯電部217に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、転写部218に高電圧を出力した際に、転写部218に流れる電流を上記の電流検出回路で検出して、検出した電流値が所定値になるように出力を調整する。また、現像部212に高電圧を出力した際に、上記の電圧検出回路で電圧を検出して、検出した電圧が所定値になるように出力を調整する。このように、画像形成のための高電圧の印加のために適用可能である。より具体的には、記録材と記録材の間(紙間ともいう)で前述した色ずれ検知用や濃度検知用のパッチ画像を形成する際に、高速に高電圧を正極性と負極性に切り替え可能になり、記録材の無い領域で画像を形成しても、その画像が転写ローラに転写しないように制御できる。
【0078】
以上説明したように、上記実施例1乃至4で説明した高圧電源を電子写真方式のプリンタの高圧電源として適用すれば、画像形成装置の高速化やFPOTの短縮化が可能となる。
【符号の説明】
【0079】
1 マイクロコントローラ
2 ASIC
3 オフセット電位設定回路
4 出力電圧検出回路32 PWM生成回路(正バイアス用)
36 レジスタ37 正バイアスの信号の生成及び制御を行う回路ブロック
82 PWM生成回路(負バイアス用)
87 負バイアスの信号の生成及び制御を行う回路ブロック
T1、T51 昇圧トランス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を出力する高電圧発生装置において、
前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、
前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、
前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記所定極性の前記直流電圧から求められた電位の大きさに基づき、前記逆極性の前記目標電圧に応じた変化量を補正することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生装置。
【請求項3】
前記電圧検出手段は前記所定極性と前記逆極性の直流電圧を検出するものであり、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づき、前記所定極性の電位の大きさを求めることを特徴とする請求項2に記載の高電圧発生装置。
【請求項4】
前記変化量を切り替えるために、前記トランスに供給される電源電圧を可変することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の高電圧発生装置。
【請求項5】
前記過渡状態の期間において、前記変化量が第1変化量の第1期間と、前記第1期間に続く期間であって、前記第1変化量よりも変化量が小さい第2変化量である第2期間とを設けて、前記第1期間と前記第2期間の夫々を可変に設定することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の高電圧発生装置。
【請求項6】
前記駆動信号はPWM信号であって、前記変化量を切り替えるために、前記PWM信号のオンデューティ幅を可変に設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の高電圧発生装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成するための画像形成手段と、
トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を前記画像形成手段に出力する高圧電源とを有し、
前記高圧電源は、
前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、
前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、
前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段は、像担持体を帯電する帯電手段、又は、前記像担持体に形成されたトナー像を転写する転写手段を含むことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【請求項1】
トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を出力する高電圧発生装置において、
前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、
前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、
前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする高電圧発生装置。
【請求項2】
前記出力制御手段は、前記所定極性の前記直流電圧から求められた電位の大きさに基づき、前記逆極性の前記目標電圧に応じた変化量を補正することを特徴とすることを特徴とする請求項1に記載の高電圧発生装置。
【請求項3】
前記電圧検出手段は前記所定極性と前記逆極性の直流電圧を検出するものであり、前記電圧検出手段により検出された前記直流電圧に基づき、前記所定極性の電位の大きさを求めることを特徴とする請求項2に記載の高電圧発生装置。
【請求項4】
前記変化量を切り替えるために、前記トランスに供給される電源電圧を可変することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の高電圧発生装置。
【請求項5】
前記過渡状態の期間において、前記変化量が第1変化量の第1期間と、前記第1期間に続く期間であって、前記第1変化量よりも変化量が小さい第2変化量である第2期間とを設けて、前記第1期間と前記第2期間の夫々を可変に設定することが可能であることを特徴とする請求項1乃至3に記載の高電圧発生装置。
【請求項6】
前記駆動信号はPWM信号であって、前記変化量を切り替えるために、前記PWM信号のオンデューティ幅を可変に設定することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかの項に記載の高電圧発生装置。
【請求項7】
記録材に画像を形成するための画像形成手段と、
トランスと、前記トランスを駆動するスイッチング手段と、前記スイッチング手段を駆動するための駆動信号を生成する信号生成手段と、前記トランスからの出力電圧を整流して直流電圧を出力する整流手段と、前記直流電圧を検出する電圧検出手段とを備え、所定極性または前記所定極性とは逆極性の直流電圧を前記画像形成手段に出力する高圧電源とを有し、
前記高圧電源は、
前記直流電圧の目標電圧を設定する設定手段と、
前記電圧検出手段で検出した電圧と前記設定手段で設定した電圧に応じて前記駆動信号を帰還制御する帰還制御手段と、
前記所定極性の前記直流電圧を出力している状態から逆極性の直流電圧を出力するように切り替える際、前記目標電圧に達するまでの過渡状態の期間において、前記帰還制御手段による前記帰還制御を行うことなく、前記所定極性の前記直流電圧と前記逆極性の前記目標電圧とに応じた変化量で前記直流電圧を立ち上げるように制御する出力制御手段とを有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
前記画像形成手段は、像担持体を帯電する帯電手段、又は、前記像担持体に形成されたトナー像を転写する転写手段を含むことを特徴とする請求項7に記載の画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
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【図6】
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【図11】
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【図13】
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【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2012−34517(P2012−34517A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−172929(P2010−172929)
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年7月30日(2010.7.30)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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