説明

高電圧電気システムを有する自動車用電気加熱装置

加熱装置では、お互いに向かい合って配置された電流レール間に配置されたPTC電熱素子が使用され、それらのPTC電熱素子には、電流レールを介して制御電子部品ユニットから供給電流が供給される。金属加熱リブ構造が、それぞれ、電気的には絶縁体であるが熱的には伝導体である結合層を介して、電流レールの一方に結合される。加熱されるべき空気は、波状の形状を有する加熱リブ構造に沿って流れる。金属加熱リブ構造は、自動車グラウンドに電気的に接続され、それによって、空気の流れを妨げることなく電磁干渉放射線の放射を除去するシールドを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧電気システムを有する自動車用電気加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気推進力を備えた自動車、あるいはまた、ハイブリッド推進力を備えた自動車は、外部温度が低いときに車内の温度を制御するための暖房システムを必要とする。暖房エネルギーは、電気加熱装置から発生し、この電気加熱装置には、自動車の電気システムから電力が供給される。これらの加熱装置は、同一の加熱ユニットの積層からなり、加熱されるべき空気は、それらの加熱ユニットを貫流する。加熱装置では、PTC電熱素子が使用され、これらのPTC電熱素子は、お互いに向かい合って延びる電流レール間に配置され、これは、電気抵抗素子が、正の温度係数を有することを意味し、制御電子部品ユニットから供給電流が供給されるということである。金属加熱リブ構造が、それぞれ、電気的には絶縁体であるが熱的には伝導体である結合層によって、それぞれの電流レールに結合される。加熱されるべき空気は、波状の形状を有する加熱リブ構造を貫流する。加熱リブ構造を電流レールから電気的に絶縁することが必要であるが、これは、自動車の高電圧電気システムから得られる電圧が、人に危険を及ぼす程の高いレベルを有するからである。その結果として、公知のこの種の電気加熱装置では、加熱リブ構造は、ポテンシャル・フリー(potential−free)である。
【0003】
しかしながら、加熱出力を調節するために、スイッチド供給電流が、制御電子部品ユニットによってPTC電熱素子に供給される。スイッチング動作は、供給電流の高周波交流成分を発生させる急峻なパルス・エッジを生成する。これらの高周波交流成分の結果として、すべての通電部分(live part)は、全体として相当な量の電磁干渉放射線を放射する放射器となる。さらにまた、その他の自動車ユニットの搭載回路網からの高周波干渉成分が、PTC電熱素子への供給電流に既に存在しており、かつ、加熱装置の通電部分を介して放射される場合もある。この干渉放射線は、自動車内のその他のシステムが安全に機能するのを危うくすることがあるだけでなく、例えばラジオなどの受信装置に大きな悪影響を及ぼすこともある。
【0004】
原理的には、金属グリッドの形態を有する電磁シールドによって加熱装置の放射線関連部分を取り囲むことは可能である。しかしながら、グリッドは、加熱されるべき空気の流路内に配置されなければならないので、送風機の電力を増加することによって補償されなければならない流動損失をもたらす。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、取り囲んでいる金属グリッドを使用せずに、加熱装置の電磁シールドを得られるようにすることである。
【0006】
これは、金属加熱リブ構造が、一定の基準電位に、とりわけ、自動車グラウンド(vehicle ground)に、電気的に接続されることによって、冒頭で説明したような種類の加熱装置において、驚くほど簡単な方法で達成される。自動車グラウンドという用語は、自動車の金属構造に電気的に導通する態様で接続された、すなわち、自動車の負の低電圧(12Vの電気システム)電極に接続された、自動車の電気システムの基準電位を意味することがわかる。したがって、加熱装置の電磁シールドに影響を及ぼすのは、金属加熱リブ構造であるが、これは、金属加熱リブ構造が、PTC電熱素子の両側の加熱装置の放射線関連部分を取り囲んでいるからである。
【0007】
制御電子部品ユニットもまた電磁干渉放射線の発生源である。したがって、好ましい実施形態では、制御電子部品ユニットは、電磁シールドを形成するハウジングによって取り囲まれ、かつ、一定の基準電位および/または自動車グラウンドに電気的に接続される。制御電子部品ユニットは、好都合なことに、加熱装置のすぐ隣に配置されるので、制御電子部品ユニットのハウジングは、好ましくは、金属加熱リブ構造に直接接続される。
【0008】
本発明のさらなる発展形態では、自動車グラウンドに電気的に接続された金属シールド・ストリップによって、PTC電熱素子、電流レール、および、結合層からなる、加熱装置の層構造の狭い側面をも電磁的にシールドすることが提案される。
【0009】
好適な実施形態によれば、さらに改善された“密な”電磁シールドが、1つの金属シールド層が結合層と加熱リブ構造との間にそれぞれ配置されることによって達成され、このシールド層は、加熱リブ構造に、電気的および熱的に結合される。金属シールド・ストリップが、それぞれ、それぞれの狭い側面上の2つの金属シールド層とともに連続的なシールド構造を形成することによって、電磁的な封じ込めが達成され、これは、シールド層が、制御電子部品ユニットのハウジングと組み合わせられて、連続的な密閉シールド構造を形成し、かつ、いかなる場合にも、ハウジングとの連続的な電気接続を形成することによって、さらに完全なものになる。
【0010】
本発明のさらなる特徴および利点が、添付の図面を参照して以下に述べられるいくつかの実施形態の詳細な説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1の実施形態による電気加熱装置の概略斜視図。
【図2a】第1の実施形態の縦断面図。
【図2b】図2aに示される線IIb−IIbに沿った断面図。
【図3】第2の実施形態による電気加熱装置の概略斜視図。
【図4a】第2の実施形態の縦断面図。
【図4b】第2の実施形態の図4aに示される線IVb−IVbに沿った断面図。
【図5】第3の実施形態による電気加熱装置の概略斜視図。
【図6a】第3の実施形態の縦断面図。
【図6b】図6aに示される線VIb−VIbに沿った断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
電気加熱装置の様々な実施形態では、長方形フレーム10および制御ブロック12を有する同一の基本設計が使用され、制御ブロック12は、フレーム10の側面に配置される。フレーム10内には、“PTCストーン(PTC stone)”と呼ばれる複数のPTC電熱素子が、お互いから所定の間隔を置いて配置された、いくつかの加熱表面において、電流レール上に配置される。図1は、5つのそのような加熱表面を示し、それらの加熱表面は、符号14a...14eによって指示される。加熱表面14a...14eの両側には、金属の波状加熱リブ構造16a...16fが、連続的に配置される。加熱されるべき空気が、これらの加熱リブ構造16a...16fを貫流する。制御ブロック12は、制御電子部品を取り囲み、この制御電子部品は、外側に、電気端子12aおよび信号端子12bを有する。PTCストーンが配置される電流レールは、図2からわかるように、制御ブロック12の中へ延び、制御ブロック12内において、制御電子部品に接続される。
【0013】
図2aに示されるように、平坦なPTCストーン20は、金属の一枚板として構成されてもよい2つの電流レール22、24の間において、それらのPTCストーン20間にわずかな距離を置いて、互いに隣接するように配置される。それぞれの電流レール22、24は、一方のハウジング壁26だけが図2aに示される制御ブロック12の中へ突き出た一方の端部で、制御電子部品ユニットによって印加される供給電圧の電極に接続される。PTCストーン20には、自動車の高電圧電気システムから電力が供給されるので、特別な電気的絶縁手段が必要とされる。このために、絶縁プレート28および30が、それぞれ、電流レール22、24の外面上に配置され、それによって、それらの絶縁プレート28および30上に配置された加熱リブ構造16a、16bを電気的に絶縁する。すべての狭い面も、同様に、電気的な絶縁材料によって被覆される。図2aでは、制御ブロック12の中に突き出た電流レール22、24の端部は、絶縁素子32によって電気的に絶縁され、そして、反対側の端部は、絶縁ストリップ34によって電気的に絶縁される。
【0014】
電磁干渉放射線をシールドするために、いくつかの手段が施されている。一方では、制御ブロック12のハウジング壁26は、金属の一枚板として構成されるか、または、少なくとも金属的にコーティングされ、かつ、自動車グラウンドに接続される。他方では、加熱リブ構造16もまた、自動車グラウンドに電気的に接続される。加熱リブ構造16を自動車グラウンドに接続する簡単な方法は、加熱リブ構造16の制御ブロック12に隣接する端部を制御ブロック12のシールドに電気的に接続することである。そのようにして形成された電磁シールドの結果として、PTCストーン20の平坦面から発生する干渉放射線だけでなく、制御ブロック12の内部から発生する干渉放射線も、除去されないにしても、少なくとも大幅に減少する。
【0015】
図3および図4に示される実施形態は、電磁シールドをさらに効果的なものにすることを意図した、さらなる実施形態である。この目的のために、絶縁ストリップ34によって被覆された電流レール22、24の端部は、また、シールドを備え、ここでは、このシールドは、絶縁ストリップ34の外側を被覆する金属ストリップの形態であり、この金属ストリップは、電気的に導通する態様で、その狭い側面を加熱リブ構造16a、16bに接続される。同様に、図4bに示されるように、側面絶縁ストリップ35および37は、加熱リブ構造16a、16bに電気的に接続された金属ストリップ42、44によって、それらの外側を被覆される。このようにして、PTCストーン20は、すべての側面を完全に封じ込められ、かつ、電磁的にシールドされる。
【0016】
さらなる構成レベルが、図5および図6に示される。この実施形態では、電磁シールドの効果がさらに向上する。これは、1つの金属プレート46または48を、加熱リブ構造16a、16bと隣接する結合層または絶縁プレート28、30との間にそれぞれ挿入することによって、達成される。金属プレート46、48は、側面を金属ストリップ42、44に接続され、または、金属ストリップ42、44と一体的に形成され、また、制御ブロック12のハウジング壁26と一体的に形成される。この実施形態では、電磁的に放射する部品のすべてが封じ込められ、それによって、干渉放射線の発生は、略完全に除去される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧電気システムを有する自動車用電気加熱装置であって、前記装置が、お互いに向かい合って配置された電流レール間に配置されたPTC電熱素子を含み、前記PTC電熱素子が、前記電流レールを介して制御電子部品ユニットから供給電流を供給され、かつ、前記装置が、電気的には絶縁体であるが熱的には伝導体である結合層を介してそれぞれが電流レールの1つに結合された金属加熱リブ構造を有し、
前記金属加熱リブ構造が、一定の基準電位に電気的に接続された、ことを特徴とする電気加熱装置。
【請求項2】
前記制御電子部品ユニットが、前記一定の基準電位に接続された電気シールドを有するハウジングによって取り囲まれたことを特徴とする、請求項1に記載の電気加熱装置。
【請求項3】
前記加熱リブ構造が、前記ハウジングの前記金属シールドに電気的に結合されたことを特徴とする、請求項2に記載の電気加熱装置。
【請求項4】
前記PTC電熱素子、前記電流レール、および、前記結合層からなる層構造の狭い側面が、前記一定の基準電位に電気的に接続された金属シールド・ストリップによって被覆されたことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気加熱装置。
【請求項5】
電気的絶縁体が、前記金属シールド・ストリップと前記電流レールの前記狭い側面との間に挿入されたことを特徴とする請求項4に記載の電気加熱装置。
【請求項6】
前記結合層と前記加熱リブ構造との間のそれぞれに、1つの金属シールド層が配置され、前記金属シールド層は、それらの前記結合層および前記加熱リブ構造に電気的および熱的に結合されることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の電気加熱装置。
【請求項7】
前記金属シールド・ストリップが、2つの金属シールド層をそれぞれが備えた連続的なシールド構造を形成することを特徴とする、請求項5を引用する請求項6に記載の電気加熱装置。
【請求項8】
前記シールド層が、前記制御電子部品ユニットの前記ハウジングを備えた連続的なシールド構造を形成することを特徴とする、請求項7に記載の電気加熱装置。
【請求項9】
前記一定の基準電位が、自動車グラウンドであることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の電気加熱装置。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2013−516351(P2013−516351A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547502(P2012−547502)
【出願日】平成23年1月4日(2011.1.4)
【国際出願番号】PCT/EP2011/050067
【国際公開番号】WO2011/083115
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(505385251)ヴァレオ クリマジステーメ ゲーエムベーハー (10)
【Fターム(参考)】