魚用の経口ワクチン
本発明は、魚用の粘膜(経口)ワクチンの開発、組成物および製造に関するものである。より具体的には、本発明は、免疫応答誘導のために魚の粘膜表面に、およびこの粘膜表面すべてにわたって、抗原を送達するためのタンパク質複合体に関し、かつ宿主細胞において、好ましくは植物において前記複合体の生成に関するものである。魚の経口ワクチンの製造のための、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)のコレラ毒素(CT-B)または大腸菌(Esherichia coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のB-サブユニットに融合される対象となる抗原を含むタンパク質複合体の使用が提供される。また、本発明のタンパク質複合体を含む魚の餌も提供される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚用の粘膜(経口)ワクチンの開発、組成物および製造に関するものである。より具体的には、本発明は、免疫応答誘導のために魚の粘膜表面に、およびこの粘膜表面すべてにわたって、抗原を送達するためのタンパク質複合体に関し、かつ宿主細胞において、好ましくは植物において該複合体の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝染病は、ヨーロッパおよび世界の水産養殖に重大な脅威を与えるものである。水産養殖の深刻化は、伝染病の大発生の回数および頻度の増加につながり、その結果、高い経済損失と魚の被害が生じている。さらに、それぞれが内因性の伝染病の危険性を持つ、より多くの種類の魚が養殖されている。多くの場合、大発生により、小型の魚においてならびにより大型の魚において、死亡数が高くなる。特にウイルス病は、問題が増えている(LeongおよびFryer, 1993; Newman, 1993)。例には、サケ科と非サケ科の両種を冒すIPNウイルス(IPNV)によって生じる伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPN);ウイルス性出血性敗血症(VHS)ウイルス(VHSV)によって生じ、かつ養殖ニジマス(オンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss))に最も損傷を与えるVHS、ならびにコイの春ウイルス血症(SVC)ウイルス(SVCV)によって生じるSVC、ならびにコイ(シプリナス・カルピオ(Cyprinus carpio))を冒すが日本鯉(koi)も冒すコイヘルペスウイルス(KHV)が含まれる。発生の確率が高いおよび重大な経済的結果を有する魚の他の病気は、せっ腫症、ISA、サケにおけるビブリオ症(Hitra disease)およびSRS、ニジマスにおけるERMおよびラクトコッカス(Lactococcus)、ならびにハタ科の魚におけるビブリオ病(Vibriosis)およびパスツレラ病、ならびにニシマダラにおけるビブリオ病、パスツレラ症、せっ腫症およびビブリオ症である。
【0003】
魚においてほとんどの病気の蔓延を防ぐためのかぎは、病気予防の管理できる危険因子を同定することであり、病気の原因となる病原菌を排除するのに相当の努力を注ぐことではない。病気が発生する場合、魚以上に病原菌に好都合である状況が作り出されているということがしばしば起こる。病原菌が存在する場合に、魚が病気になるかどうかは、魚の健康状態、水質および水温、ストック密度(stocking density)、病原菌容量、ワクチン投与状態、取り扱い実施(handling practice)、同一階級に属するもの(grade)の均一性、ならびに異なる病気の脅威を体験する可能性のある隣の養殖場への近さを含む因子に依存する。これらのうち、ワクチン投与状態は、養殖生産者に、それらの魚における病気の危険性とそれらの生産費用の両方を低くするための有効な手段を提供する。
【0004】
ワクチン投与の3つの一般的な方法は以下である:液浸、注射、および経口。これらの方法は、投与の容易さ、費用、魚のストレス、生存率、投与量管理、関係する労働量、および防御期間によって異なる。最終的には、これらの使用方法のうちのどれかについての決定は、実際のおよび認識される危険性、魚の年齢、養殖者自身の危険忌避、ならびに投資利益の組み合わせに基づく。
【0005】
注射可能なワクチンは、結果として効果レベルがより高くなり、防御期間がより長くなるより大きい投与量管理を可能にするので、液浸および経口ワクチンより大きい防御となることが一般に認められている。しかしながら、注射可能なワクチンは、より労働集約的であり、より費用がかかる傾向があり、かつ注意して行わない場合には魚に損傷を与える可能性がある。さらに、それは、小型の魚に対してのそれの使用を含まず、かつ費用がかかる。また、多くの副反応が、免疫化する抗原またはそれが存在する乳化試薬のどちらかに起こる可能性がある。従って、使用できる場合には注射ワクチンは、養殖条件下で小型の魚の集団ワクチン投与のためにはほとんど有用でない。
【0006】
液浸ワクチン投与は、魚の養殖において頻繁に用いられるが、それが、魚にとってはストレスが多く、完全には防御しないというデメリットを持つ。このように、最も魅力的な方法は、比較的問題のない経口ワクチン投与である。
【0007】
経口ワクチンの送達は、稚魚が食べ始めるとすぐにその稚魚を防御できるという大きなメリットを有する。好都合なことに、これは、通常幼魚が病原菌によって最も攻撃およびコロニー形成されやすい時期と一致する。経口ワクチン投与はまた、病原菌への曝露の危険性の増加がある場合はいつでも、養殖者が魚へ追加抗原投与量を投与することを可能にする。最後ではあるが特に、経口ワクチン投与は、多くの病原菌の入り口において免疫応答を刺激する。それらは、養殖者が、最小限のストレスで魚を免疫化し、かつ大規模でおよびその瞬間から、食べ始めた免疫能力のある魚を取り扱いすることを可能にするという経口ワクチンの重大なメリットがある。
【0008】
水産養殖のための実際の経口ワクチンの開発には、世界中の水産養殖産業の達成困難である主要な目標が残っている。魚の餌で製剤化できる経口ワクチンにより、免疫能力のある魚がペレット状の餌を食べ始める始めるとすぐに、抗原を投与することができる。今までにこのような経口ワクチンの開発を妨げていた主要な障害は、1)適用される抗原(Ag)が胃の酸性度と腸管に存在するプロテアーゼの活性のため破壊されることが多いこと;2)経口免疫寛容が誘発されうること;および3)Agが消化管粘膜に必ずしも入らず、その結果免疫応答が開始されないこと、である。
【0009】
消化器官におけるAgの破壊は、Ag被包化により避けられることができる。例えば、(消化管の腹側部分においてワクチンを分解から保護するために)アルギネート微粒子で被包化されるビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)の細菌ワクチン抗原による経口ワクチン投与は、魚において、全身の記憶を誘発し、粘膜免疫応答を誘導する(Joosten et al. (1997) Fish and Shellfish Immunology 7: 471)。さらに、リポソームは、経口ワクチンの開発のための担体およびアジュバントとしてかなりの感心を引いている。多層リン脂質ビヒクルは、それらの標的部位に到達するまで、低pHおよび酵素による攻撃から被包化抗原を保護する(例えばGregoriadis, Immun. Today 19990; 11:89)。リポソーム被包化抗原による経口ワクチン投与は、魚において報告されている。Irie et al. (2003)は、モデル抗原としてリポソーム被包化ウシ血清アルブミン(BSA)を経口投与すると、コイ(シプリナス・カルピオ)の血清中の抗BSA抗体の有意な増加を報告した。
【0010】
しかしながら、一般には、これらの保護される経口ワクチン製剤の製造は、複雑でありかつ費用がかかる。それらは、それゆえに、水産養殖におけるなどの、大規模で費用効果の高い適用には適さない。
【発明の開示】
【0011】
本発明の目的は、費用効果の高く、かつ魚の餌として容易に製剤化できる、魚の粘膜への抗原の送達を可能にする経口ワクチンを、提供することである。
【0012】
本発明は、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合される対象となる該タンパク質を含む融合タンパク質をコードする組換え核酸構築物を、宿主細胞に与える段階を含み、かつ対象となる該タンパク質が、該宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を有する生物起源である、宿主細胞における対象となるタンパク質の発現方法を提供する。また、この方法によって入手可能である融合タンパク質、および1つまたは複数の該融合タンパク質を含むタンパク質複合体も提供される。対象となるタンパク質は、好ましくは対象となる抗原であるが、その他の種類のタンパク質も当然Bサブユニットに融合されてもよい。特に、それは、魚の経口ワクチンとして、ビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT)または大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)などの細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットの粘膜結合性Bサブユニットに融合される対象となる抗原を含むタンパク質複合体の使用を提供する。驚いたことに、魚の粘膜への抗原の送達を可能にし、粘膜細胞表面受容体により複合体の結合および取り込みならびに該抗原に対する免疫応答の誘導を促進する機能的タンパク質複合体の使用によって、魚における、抗原破壊、抗原の取り込みならびに経口免疫寛容という問題が克服できるということが見出された。融合タンパク質複合体は、タンパク質複合体を含む餌ペレットで給餌された魚において特定の免疫応答を誘導することが示された。驚いたことに、抗原保護または被包化は必要ではなかった。
【0013】
病原性細菌によって生成される細菌毒素のAB5クラスは、酵素活性を持つAサブユニットと標的真核生物の糖脂質受容体との相互作用を担うBサブユニット五量体を含む(Fan, E., E.A. Merritt, C.L.M.J. Verlinde,およびW.G.J. Hol. 2000. AB5 toxins: structures and inhibitor design. Curr. Opin. Struct. Biol. 10:680-6861)。AB5毒素クラスは、配列相同性および触媒活性に基づいたファミリーに細分されることができる。コレラ毒素ファミリーは、コレラ毒素自体に加え大腸菌(E. coli)熱不安定性エンテロトキシンLTおよびLT-IIを含む。密接に関係する志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)および大腸菌の「志賀様」毒素(ベロ毒素としても知られる)からの多くの毒素を含む。ヒト集団に対するこれら毒素の影響は、LT産生大腸菌株による感染が原因となる比較的程度の軽い旅行者の下痢から、V. コレラ(V. cholerae)感染が原因となる急性でかつ生命にかかわる下痢および志賀毒素ファミリーメンバーが原因となる同様に深刻な溶血尿毒症症候群(「ハンバーガー病」)にまでに及ぶ。
【0014】
哺乳動物において、ビブリオ・コレラ毒素BサブユニットCT-Bおよびその相同体大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、LT-Bを、それらが正しくプロセシングされる消化管における粘膜の免疫応答細胞に抗原を標的化するために用いることができることが示された(例えば、Walker, 1994参照のこと)。Bサブユニットの5 量体リングは、粘膜の消化器官上皮上の特異的受容体(主としてガングリオシドGM1)を結合し、その他の抗原と結合した場合にこれら抗原の免疫原性を高めることができる(Jagusztyn-Krynicka et al., 1993)。これらの知見は、哺乳動物における粘膜上皮の免疫応答性細胞に対する標的タンパク質抗原の提示のための担体分子として組換え型エンテロトキシンの開発につながった(AitkenおよびHirst, 1993; CardenasおよびClements, 1993; Jagusztyn-Krynicka et al., 1993; KhouryおよびMeinersmann, 1995; Zhang et al., 1995)。CT-BまたはLT-Bのカルボキシ末端に融合される抗原が、経口投与すると哺乳動物およびトリにおける該標的タンパク質抗原に対しての体液性および細胞性の免疫応答を誘発できることが示された(CardenasおよびClements, 1993; Jagusztyn-Krynicka et al., 1993; KhouryおよびMeinersmann, 1995)。
【0015】
魚のGALT(gut associated lympoid tissue)の免疫学的能力についての研究により、魚においても粘膜免疫系の存在が確認された(Hart et al., 1988により概説される)。ここで、腸はまた、経口投与されたタンパク質抗原の取り込み(Dalmo et al., 1997; Lamers, 1985; Romboutおよびvan den Berg, 1989; Rombout et al., 1985, 1989)および粘膜の免疫グロブリンの生成に関与する。
【0016】
LT-Bまたはパルボウイルス(parvo)ペプチドに融合されるLT-Bのどちらかを用いたコイの肛門挿管が、コイの消化器官粘膜におけるこれらのペプチドの取り込みと、体液性免疫応答に対しての抗LT-Bおよび抗パルボウイルスペプチドの誘導につながることが示された(Companjen et al. Midtlyng PJ (ed):Fish Vaccinology. De v Biol. Basel, Karger, 2005, vol 121, pp 143-150)。しかしながら、肛門挿管による魚の免疫化が大規模の適用に適さないこと、および抗原の経口投与が明らかに好ましい選択であると理解されると思われる。本明細書に開示されるように、魚用の経口ワクチンとしてエンテロトキシンBサブユニットへ抗原を融合する適用は、これまで報告されなかった。CT-Bサブユニットをリポソームに結合させ、魚の腸管へのリポソーム被包化抗原(BSA)の送達を向上させた(Irie et al., 2003)。魚をBSA含有不安定リポソームまたはBSAのみで経口により免疫化した場合に、CT-Bを有さないリポソームはまた、効果的であったが、免疫応答は観察されなかった。従って、Irie et al.の開示に従って、抗原が安定なリポソーム中でのそれらの被包化によって保護されるということは、魚における血清抗体応答の誘導にとってかなり重要である。明白な対比において、本発明は、ここで、被包化が必要でない、またはそれなければ抗原を保護して、経口ワクチン投与後の魚の体液免疫応答を誘導することを示す。
【0017】
本明細書において、対象となる抗原に融合されるAB5毒素のBサブユニットを含む抗原性タンパク質複合体であって、魚の粘膜細胞表面受容体に結合することができ、上皮を超えて輸送され、かつ魚の免疫系に曝露されて血清免疫応答と保護を生じる該タンパク質複合体、についての生成および使用が提供される。Bサブユニットが、熱不安定性エンテロトキシン(LT-B);志賀毒素および志賀様毒素(ST-B);百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素B;IIa型およびb型熱不安定性エンテロトキシン、Bサブユニットおよびコレラ毒素BサブユニットCT-Bからなる群より選択されてもよい。1つの態様において、Bサブユニットは、LT-BまたはCT-BサブユニットなどのAB5毒素のCTファミリーメンバー由来のBサブユニット、またはC. ジェジュニ(C. jejuni)由来の毒素のBサブユニットである。Bサブユニットは、対象となるタンパク質のN末端またはC末端のどちらかに融合されてもよい。 好ましくは、Bサブユニットは、対象となるタンパク質のN末端に融合される。
【0018】
複合体成分をコードする適切な核酸構築物を与えられ、かつ発現と機能的複合体への該成分の構築とが可能となる宿主細胞を用いて、AB5毒素のBサブユニットおよび対象となるタンパク質を含む融合タンパク質に基づくタンパク質複合体を調製することができる。 タンパク質複合体の生成に用いることができる宿主細胞には、植物細胞、魚細胞、酵母細胞(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、藻類、例えばエグレジア・エンジェシ(Egregia enziesii)などの褐藻またはコナミドリムシ (Chlamydomonas rheinhardtii )などの緑藻、哺乳動物細胞、菌類細胞および昆虫細胞が含まれる。適切な菌類細胞は、アガリガス・ビスポリス(Agaricus bisporis)、アンズタケ(Cantharellus cibarius) 、ヒラタケ属(Pleurotus)種、およびヒトヨタケ属(Coprinus)種が含まれる。細菌宿主細胞、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis) またはラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)などの共生乳酸菌を用いてもよい。好ましくは、宿主細胞は、消費されると害をもたらさない可食宿主細胞である。具体的な態様において、植物を用いて、本発明の免疫原性タンパク質複合体を生成することができる。例えば、トウモロコシもしくはコメまたはジャガイモもしくはタバコなどの単子葉植物または双子葉植物に属する植物細胞を用いることができる。
【0019】
驚いたことに、対象となるいくつかのタンパク質について、宿主細胞においてBサブユニットとの融合タンパク質として発現される場合に、Bサブユニットへの結合により対象となるタンパク質の発現が強まるということが観察された。例えば、LT-Bと魚ウイルスのVHSVまたはSVCVのウイルス性糖タンパク質(G)との融合体をコードする核酸配列は、植物宿主細胞において、最適な転写および翻訳の開始を可能にした。対照的に、ウイルス性抗原のみをコードする核酸配列は、宿主細胞において、発現されないか、またはかなり不十分にしか発現されない。組換え発現系として用いられる植物宿主細胞は、典型的には、18〜30℃の間の温度で温室において栽培される。冷水魚に病原性であるウイルス(例えば、VHSVおよびSVCV)の最適温度は、かなり低く;魚ウイルスVHSVおよびSVCVが8〜14℃の間で最も増殖する(flourish)ことが観察されている。さらに、これらのウイルスの病原性は、より高い温度では観察されない。これは、抗原が通常発現する温度(8〜14℃)を十分上回る温度(18〜30℃)で、植物が生育されるという事実によって、植物宿主細胞におけるウイルスのGタンパク質のみの組換え発現は妨げられることを示すことができる。両ウイルスの糖タンパク質は、多量体タンパク質であり、かつ、それらの折りたたみと多量体化とが、タンパク質分解をより受けやすいような最適温度を超える温度で適切に起こることができないと考えられる。理論に拘束されることを望まないが、植物において発現する場合に、五量体複合体形成が可能であるAB5 Bサブユニットへのウイルス抗原の結合が、抗原の安定性と発現とを増すということが提唱される。それによって、本発明は、(植物)宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を有し、細菌毒素、例えばビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)のAB5クラスメンバーのBサブユニットとの融合タンパク質として発現される該宿主細胞のおける対象となるタンパク質、の発現方法を提供する。該宿主細胞は、例えば植物細胞であり、かつ対象となる該タンパク質は、例えば、海洋動物(例えば魚)または海洋動物に病原性である生物由来である。
【0020】
さらなる態様は、本発明の方法において用いられる核酸構築物に関するものである。構築物は、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに、好ましくは、ビブリオ・コレラ コレラ毒素(CT-B)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のBサブユニットに融合される、魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源の対象となるタンパク質を含む融合タンパク質をコードする。例えば、対象となるコードされるタンパク質は、魚起源であり、病原性であり、好ましくは、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(striped jack nervous necrosis virus)(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス (Pancreas Disease virus)(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス(infectious salmon anaemia virus) (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス(Flexibacter columnaris)、エドワージアラ・イクタルリ(Edwardsialla ictaluri)、E. タルダ(E. tarda)、ピスキリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、ビブリオ属種(Vibrio)およびアエロモナス属(Aeromonas)種、エルシニア・ルケリ(Yersinia ruckeri)、パスツレラ・ピシシダ(Pasturella piscicida)、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラム(Renibacterium salmoninarum)からなる群より選択される。1つの局面において、本発明の核酸構築物は、IPNVのVP2タンパク質、VHSV(VHSV-G)の糖タンパク質およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される対象となる抗原に融合されるAB5毒素のBサブユニットをコードする。また、発現ベクター、本発明による核酸構築物を含む、好ましくは植物発現ベクターも提供される。発現ベクターは、適切には(植物)宿主細胞における構築物の組換え発現に用いられる。標準的な組換えDNA技術は、所望の構築物を調製するために用いることができる。構築物は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、およびアグリバクテリウム(Agrobacterium)による遺伝子移入を含む様々な通常の技術によって、宿主細胞に導入することができる。当技術者は、特定の宿主細胞に最も適した方法を選択することができると思われる。
【0021】
本発明の方法は、その天然型において、多量体として、例えば二量体または三量体として存在する対象となるタンパク質の発現のために、好都合に用いられる。(植物)宿主細胞における発現の後に、融合タンパク質は、それ自体で(例えば、経口ワクチン組成物における本発明の抗原性タンパク質複合体として)用いることができる。または、融合タンパク質は、さらにプロセシングされて、Bサブユニットを除去し、対象となるタンパク質を放出することができる。プロセシングは、例えばトリプシンのようなプロテアーゼを用いて酵素により、または化学的に、行われることができる。
【0022】
また、本発明による方法によって入手可能である融合タンパク質、および1つまたは複数の融合タンパク質を含むタンパク質複合体も、提供される。
【0023】
さらに、本発明は、本発明の融合タンパク質または本発明のタンパク質複合体を含むワクチン、特に、魚の経口ワクチンを提供する。本発明の好ましい態様において、融合タンパク質は、魚病原菌のウイルス、細菌または微生物の表面抗原からなる群より選択される対象となる抗原に融合されるBサブユニットを含む。魚に病原性であるウイルスまたは微生物の例には、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス、エドワージアラ・イクタルリ、E. タルダ、ピスキリケッチア・サルモニス、ビブリオ属種およびアエロモナス属種、エルシニア・ルケリ、パスツレラ・ピシシダ、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラムが含まれる。当然、魚において非経口ワクチン製剤中の保護性抗原であることが示された抗原は、本発明に関して特に対象となる。本発明による経口ワクチン製剤で適切に用いられる公知の保護性抗原には、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV;Lorenzen et al., 1998)のGタンパク質が含まれる。
【0024】
さらに、本発明は、本発明の、融合タンパク質またはタンパク質複合体を含むワクチン組成物を経口投与する段階を含む、魚の免疫化方法を提供する。好ましくは、ワクチン組成物の経口投与は、該融合タンパク質を含む魚の餌で魚を給餌する段階を含む。
【0025】
本発明の機能的タンパク質複合体は、粘膜細胞表面受容体との相互作用に必要な五量体構造を有する。1つの態様において、それは5つの同一の抗原Bサブユニット融合タンパク質のホモ五量体である。1つのBサブユニットは、単一の抗原にまたは、複数コピーのその抗原に融合されることができる。それはまた、本発明のタンパク質複合体において複数種の抗原を組み込むことも可能である。例えば、異なる種類の抗原のタンデムリピートは、1つのBサブユニットに融合されることができる。代替的態様において、抗原性タンパク質複合体は、異なる抗原に融合される5つのBサブユニットから構成されるヘテロ五量体複合体である。例えば、複合体の2つのサブユニットは、抗原Aに融合され、複合体の3つのサブユニットは、抗原Bに融合される。その他の組み合わせもまた、当然可能である。さらに、全てのBサブユニットが、対象となる抗原に融合される必要があるとは限らない。魚の経口ワクチンとしての、少なくとも1つの「遊離」または「非改変」のBサブユニットおよび少なくとも1つの融合Bサブユニットからなるタンパク質複合体の使用も包含される。実際に、特定の抗原、特に大きい抗原については、抗原は、もしそうでなければ、機能的五量体の形成を妨害する場合があるため、すべての五量体のサブユニットが抗原とともに添加されるとは限らないということが好ましいと考えられる(出願PCT/NL2004/000708を参照のこと)。
【0026】
さらなる局面において、本明細書で開示されるような対象となる抗原を含むタンパク質複合体は、注射剤による従来のワクチン投与と全く対照的に、魚の餌である粒子またはペレットの一部となるなどの非労働集約的方法で魚に投与できる経口ワクチン組成物に好都合に製剤化され、かつ、魚にストレスを引き起こさない。これにより、本発明は、AB5細菌毒素のBサブユニットに融合される対象となるタンパク質(例えば、抗原)を含むタンパク質複合体を含む魚の餌組成物を提供する。1つの態様において、魚の餌組成物は、ビブリオ・コレラ コレラ毒素(CT-B)のBサブユニットに、または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のBサブユニットに融合される対象となる抗原を含むタンパク質複合体を含む。本発明の魚の餌組成物は、例えば、本発明のタンパク質複合体が魚の餌の製造時または製造後のどちらかに添加された餌ペレットまたは粒子を含む。乾燥ペレットの魚の餌は、過去数年間で水産養殖産業で一般的になってきている。ペレット化された市販の魚の餌は、様々な大きさのペレットで入手可能である。ほとんどの種類の乾燥ペレットの魚の餌の主成分は、魚肉、標的となる養殖種の栄養要求量に従う、その他の動物または植物起源由来のタンパク質、魚油またはその他の種類の脂質、ビタミン混合物、ミネラル、およびつなぎである。混合成分は、通常、異なる種類の養殖魚の給餌挙動に適するように様々な大きさと密度のペレットに成形される。給餌のためのペレットの大きさの選択は、典型的には、魚の大きさに基づく。1つの態様において、従来の方法で調製された魚のペレットは、本発明の抗原性タンパク質複合体を含む組成物で被覆される。しかしながら、好ましくは、ペレットは、従来のペレット成分と本発明のタンパク質複合体との混合物から調製される。タンパク質複合体は、未精製のまたは(部分)精製の形態で魚の餌に添加されることができる。例えば、可食宿主細胞が、タンパク質複合体の生成に用いられる場合には、この複合体の構成成分を発現する宿主細胞は、それ自体魚の餌で用いることができる。具体的態様において、餌ペレットは、LT-B抗原融合タンパク質を発現する形質転換ジャガイモ宿主細胞から得られる凍結乾燥ジャガイモの塊茎材料の一定量(例えば20%重量)を含む餌ペレットが提供される。これは、食物1g当たり融合タンパク質約4〜5mgに相当する。これらのペレットを魚に給餌することにより、結果として抗原に対する全身体液性免疫応答が生じた。
【0027】
本発明は、1種類のAB5毒素(LT)を用いた以下の実施例によって、説明される。しかしながら、本発明を実施する場合、当業者は、Bサブユニットのその他の種類を相互互換的に用いることができることを理解すると思われる。
【0028】
実施例1 伝染性膵臓壊死症用経口ワクチン
序論
伝染性膵臓壊死症(IPN)は、IPNウイルス(IPNV)、つまりビルナウイルス科(Birnaviridae)の原型ウイルスにより引き起こされるウイルス病である。それは、サケ科または非サケ科のひれのある魚の両種を冒す重大なウイルス病であり、世界中に分布している。IPNによる推定損害が毎年約6000万ユーロであると見積もられる場合に(Christie, 1997)、ノルウェー大西洋サケ産業に特定的なデータのみを利用できる。IPNVおよびその他のビルナウイルスの世界中の地方病の分布により、それらの制御の成功が魚の新種および現存種の両方についての今後の養殖に極めて重要であることが示唆される。IPNVは、二本鎖の二等分されたRNAゲノムを持つ。そのウイルス粒子は、非被包化正二十面体の60nmキャプシドからなる。ウイルスゲノムは、大きさがゲノムのAセグメントおよびBセグメントに相当する2つの非ポリアデニル化配列に転写される。ウイルスAセグメントの配列は、約100kDaポリタンパク質をコードし、このポリタンパク質は、切断されて、アミノ末端から順番に、主要ビリオンタンパク質VP2、および非主要構造タンパク質VP4およびVP3を生成する。主要キャプシドタンパク質VP2は、前駆体タンパク質pVP2より生成され、その後、構築されて、キャプシドを形成する。VP2タンパク質は、保護性であることが示されたが、市販の注射ワクチン中に存在する唯一の抗原である。
【0029】
遺伝子構築物
ジャガイモまたはその他のナス科(Solanaceae)における発現に最適化されたLT-Bについての合成遺伝子の遺伝子融合体、およびIPNVのVP2主要キャプシドタンパク質についてのコード配列を、以下のように作製することができる。IPNVの主要キャプシドタンパク質VP2をコードする遺伝子は、
用のプライマーIPNVと、
用のプライマーIPNVrevとを用いたgenbankアクセッション番号U48225の遺伝子配列と類似している鋳型のPCR増幅によって、LT-Bについての合成遺伝子のC末端においてインフレームでのpLANTIGEN4の特有のBamHI部位(Lauterslager et al., 2001; 図1)へのクローニングに適合される。それぞれのBamHI/SmaI断片は、pLANTIGEN32(LT-B-IPNV VP2)を作製するために、pLANTIGEN4(Lauterslager et al., 2001)におけるパタチンプロモーター制御下でクローニングすることができる。形質転換植物体は、Lauterslager et al.(2001)に記載のように作製することができ、ジャガイモ塊茎抽出物のGM1 ELISAによって選択することができる。
【0030】
実施例2 VHSV用の経口ワクチン
遺伝子構築物と形質転換
形質転換植物体において組換えVHSV Gタンパク質合成を可能にするために、遺伝子構築物pLANTIGEN21を作製し、ジャガイモに形質転換した。PLANTIGEN21は、以下のように作製した。特有のSalIおよびBglII部位を、増幅のための校正Pwoポリメラーゼを用いた最適条件下でPCRによる、オリゴヌクレオチドVHSV G1、
およびVHSV G3、
を用いたpcDNA3vhsG(McLaunchlan et al., 2003)の増幅によるVHSV Gの成熟Gタンパク質コード配列のN末端およびC末端に導入した。分泌のためのシグナルペプチド(Van Engelen et al., 1994)を含むNcoI/SalI断片を、pLANTIGEN4のNcoI/BamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)における得られたNcoI/BglII断片をクローニングによって、それぞれのSalI/BglIIで消化したPCR断片に連結し、パタチンクラスIプロモーターとノパリン合成酵素ターミネーターとの制御下に置き、pLANTIGEN21を作製した。後者は、記載(Lauterslager et al., 2001)のように、ジャガイモに形質転換し、58個体の形質転換植物体を、再生し、温室で成熟するまで育てた。
【0031】
従って、LT-BおよびVHSVのGタンパク質の遺伝子融合体を、プライマーG-F、
およびプライマーGlong-R-SmaI、
を用いたPCR増幅により、pLANTIGEN21におけるVHSV Gタンパク質コード配列のN末端に特有のBamHI部位を、およびC末端に特有のSmaI部位を導入することによって、構築した。得られたBamHI/SmaI断片を、pLANTIGEN24(図2)を生成するpLANTIGEN4(Lauterslager et al., 2001)におけるLT-Bコード配列のC末端に特有のBamHI部位にインフレームでクローニングした。後者を、記載のようにジャガイモに形質転換し、47個体の独立した形質転換植物体を再生し、温室で成熟するまで育てた。
【0032】
発現解析
pLANTIGEN22塊茎の塊茎抽出物を、記載のように(Lorenzen et al., 2000)モノクローナル抗体 3F1A2、IP1H3および3F1H10(Cupit et al., 2001)を用いたサンドイッチELISAによって、VHSV Gタンパク質の存在について解析した。形質転換植物体の抽出物のうち、Gタンパク質の発現を示すものは1つとしてなかった。すべてのpLANTIGEN24塊茎のジャガイモ塊茎抽出物を、LT-B5五量体の存在についてGM1-ELISAによって解析した(Lauterslager et al., 2001)。VHSV Gタンパク質の検出を可能にするために、精製したウシの脳GM1ガングリオシドで被覆したマイクロプレートをジャガイモ塊茎抽出物とともにインキュベートし、その後ウイルスVHSV Gタンパク質を認識するVHSV Gに対するK1509ポリクローナル抗体とインキューベートすることによって、改変GM1-ELISAを行った。このアッセイ法を用いて、五量体LT-B5との複合体におけるVHSV Gタンパク質の存在を立証することができる。GM1 ElISAと後者の改変GM1 ELISAの両結果を、すべてのpLANTIGEN24植物体について図3にまとめている。図3より見ることができるように、LT-BおよびVHSV Gタンパク質を含む融合タンパク質を作製することによって、GM1を結合するLT-B-VHSV Gタンパク質複合体は、形質転換ジャガイモ塊茎において立証されることができる。予想されるように、GM1結合活性レベルとGM1結合複合体のポリクローナルK1509抗体による認識との間に強い相関関係がある。少なくとも19個体の形質転換植物体は、バックグラウンド(約1ng/生重量g)を超えるGM1を結合するLT-B発現を示した。これらの半分を超えるものもまた、VHSV Gタンパク質に陽性であったが、pLANTIGEN22は1つとして陽性ではなかった。レベルは、塊茎生重量1g当たり最大LT-B5 2.5μgであった。選択された植物体pL2420(すなわち、pL24について形質転換された植物体グループのうち植物体番号20)およびpL2421もまた、2つのモノクローナル抗体3F1A2とIP1H3を用いるサンドイッチELISAにおいて陽性であり、これら2つのmAbによって認識される少なくとも2つの配座エピトープの適切な折りたたみを示唆した(Lorenzen et al., 2000)。
【0033】
免疫原性および抗原投与実験
pL2421を含む選択される植物体の抽出物と凍結乾燥させた塊茎材料をワクチン投与試験と抗原投与実験とに用いる。約4gのニジマス幼魚(1グループ当たり120個体)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の10% ホモジネート25μlを筋肉内注射することによって、または魚油の5% ホモジネート100μlを経口適用することによって、フロイント不完全アジュバントと混合させた10% pL2421抽出物50μlを腹腔内注射することによって、2回免疫化させ、かつVHSVによるワクチン投与の6週間後に抗原投与させる。血清をワクチン投与の6週間後に採取して、抗体応答を調べる。抗体投与は、記載のようである(McLauchlan et al., 2003)。または、LT-B複合体を発現する、およびVHSV Gに陽性である、pL2420、PL2421、pL2439およびpL2440を含む選択された形質転換植物体の凍結乾燥塊茎材料は、標準的な魚肉に組み込まれ、得られたペレットは餌免疫化において経口用に用いられる。
【0034】
実施例3 マスのLT-B-GFPによる経口および肛門挿管
LT-B-GFP遺伝子構築物
LT-Bと緑色蛍光タンパク質(GFP)との遺伝子融合体を、以下のように作製した。特有のBamHI部位を、オリゴヌクレオチドGFPFw
およびGFPRev
を用いたPCRによるGFP配列のコード配列に導入した。得られたBamHI断片を、pLANTIGEN4におけるLT-Bについての合成遺伝子のC末端の特有のBamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)にクローニングして、転写融合体LT-B-GFPと名付けられたpLANTIGEN20を作製した(図4)。後者のバイナリーベクターを、前記のように(Lauterslager et al., 2001)、アグロバクテリウム・チュメファシェンス(Agrobacterium tumefaciens)Ag10株に導入し、ジャガイモ栽培種デジレーの形質転換に用いた。
【0035】
塊茎解析
31個体の形質転換植物体を、作製し、温室で成熟するまで育てた。480nmにおける緑色蛍光についての塊茎組織切片解析により、ほとんどすべてのものがGFP陽性であることが示された。形質転換塊茎の半分を、LT-B5 五量体複合体の存在についてGM1-ELISAによって解析し、図5に結果をまとめている。五量体複合体の検出のための、偽天然条件下のかつLT-B5立体構造モノクローナル抗体VD12を用いたウェスタンブロッティングにより、GM1 ELISAにおいて陽性である形質転換植物体の高分子量複合体の存在が示された(図6)。図6より、全ての形質転換pL20植物体が、VD12によって認識される高分子量複合体を蓄積していたが(左上矢印)、LT-Bについての合成遺伝子を発現する対照pL4植物体については、約60kDa複合体が視覚化されることができる(下方矢印)ことを見ることができる。生重量1g当たり複合体5.3μgと同等である約25nMスケールでLT-B-GFP 五量体複合体の発現を示す、植物体pL2003を選択した(図5)。pL2003を、さらに大量塊茎生産のための温室で育てた。塊茎を、収穫し、皮をむき、凍結乾燥した。凍結乾燥pL2003材料、または20%のpL2003凍結乾燥塊茎材料を含む魚餌のどちらかにより、魚を免疫化した。
【0036】
免疫化実験ニジマス
ニジマス(平均重量84.9g)を、経口または肛門挿管によって、乾燥重量1g当たりLT-B-GFP約25μgを含む選択された凍結乾燥pL2003均質化ジャガイモ塊茎材料を用いて免疫化した。免疫化の前に、魚に24時間餌を与えなかった。LT-B-GFPを発現するジャガイモ塊茎材料を、ペッソルを用いて100μmメッシュを通過させ、その後LT-B-GFP 5μg/mlに近似する200mg DW/mlの最終濃度にまでPBS(0.15M, pH 7.2)に懸濁した。ベンゾカイン(50mg/l)に曝露することによって、マスに麻酔をかけ、マスを経口により200μl(有効濃度1μg LT-B-GFP)で、または肛門に1ml シリンジに取り付けたプラスチック管の短い区画によって100μlの再懸濁した塊茎材料(有効濃度500ng LT-B-GFP)で免疫化した。1送達経路当たり15匹の魚からなるグループおよび魚を、アルシアンブルー染色により皮下に印をつけることによって識別した。その後、15l/minで直径1m、体積340lの貯蔵タンクに魚を戻した。実験期間の温度は、8.7〜14.2℃までの範囲であった。魚を挿管の6週間後および8週間後に出血させた。血液を採取し、一晩4℃で凝血させ、その後3500rpm、15分間遠心分離し、血清を採取し、一定分量に分け、アッセイされるまで-80℃で凍結した。大腸菌で発現され、精製された、精製組換えGFPを、被覆のために用いた。96ウェルELISAプレート(Immulon 4, Dynex)を、大腸菌発現性GFP(0.05M 炭酸水素塩緩衝液pH9.6中の10μg/ml 50μl)で被覆し、一晩4℃に置いた。プレートを、0.05% Tween 20含有PBS(PBST, 2minで3回)で洗浄し、PBST(100μl/ウェル)中の5% 乾燥脱脂スキムミルクで2時間37℃でブロッキングした。プレートを、前と同じように洗浄し、-20℃で凍結した。血清は、以下のように試験した。90μlの1% ウシ血清アルブミン含有PBSを各ウェルに添加した。10μlの被験魚血清を、カラム1および7に添加し、プレートの端から端までそれぞれカラム6および12に二重に希釈し、1:10〜1:320の希釈範囲を示した。血清は、前と同じように洗浄前に、2時間室温でインキュベートした。続いて、50μlのI-14(マスIgに対してモノクローナル, 1:2 PBST)を、添加し、1時間37℃でインキュベートした。プレートを、前と同じように洗浄し、50μlのヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(Sigma)を添加し(1:70,000 PBST)、1時間37℃でインキュベートした。その後、プレートを2min PBSTで2回、次に2min PBSで1回洗浄し、100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を添加し、プレートを30分間暗所でインキューベートした。その後、プレートを、655nmで読みとり、吸光度を記録した。各プレートは、被験血清、既知の陽性血清(フロイド完全アジュバント中GFPで腹腔内注射した魚由来)、および陰性血清からなっていた。すべてのプレートにおいて、陽性血清は、陰性血清より約10倍高い吸光率を示した。吸光度が陰性対照血清の2倍の吸光度より高い場合、被験血清は、それぞれの希釈において陽性であると考えられた。従って、引用力価は、陰性対照血清の力価の2倍であった最後の力価である。結果を図7にまとめる。図7は、経口免疫化の6週間後(パネルA)、1:10希釈においてすべての魚がバックグラウンドより大きい免疫応答を有し、1:320希釈においても魚の半分を超えるものが、バックグラウンドより大きい免疫応答を有することを示す。抗体応答は、経口免疫化の8週間後において持続したが(パネルB)、肛門挿管すると(パネルCおよびD)抗体応答は、結局はわずかに減少する(8週間,パネルD、免疫化6週間後,パネルCと比較)。
【0037】
実施例4 コイにおけるSVC用の経口ワクチン
遺伝子構築物および形質転換
形質転換植物体における組換えSVCV Gタンパク質合成を可能にするために、遺伝子構築物pLANTIGEN25を、作製し、ジャガイモに形質転換した。PLANTIGEN25を以下のように作製した。特有のXboIおよびBamHI部位を、SVCV Gの成熟Gタンパク質コード配列のN末端およびC末端に、増幅のための校正Pfuポリメラーゼを用いた最適条件下のPCRによる、オリゴヌクレオチドSVCVG1、
およびオリゴヌクレオチドSVCVG2
を用いたpcDNA3-svcG-539の増幅によって導入した。分泌のためのシグナルペプチド(Van Engelen et al., 1994)を含むNcoI/XhoI断片を、pLANTIGEN4のNcoI/BamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)に得られたNcoI/BamHI断片をクローニングすることによって、それぞれのXhoI/BamHI消化PCR断片に連結し、パタチンクラスIプロモーターとノパリン合成酵素ターミネーターとの制御下に置き、pLANTIGEN25を作製した(図8)。後者は、記載(Lauterslager et al., 2001)のように、ジャガイモに形質転換し、47個体の形質転換体を再生し、温室で成熟するまで育てた。さらに、LT-BおよびSVCVのGタンパク質の遺伝子融合体を、以下のように構築した。特有のNcoIおよびSalI部位を、最適条件下で校正Pfuポリメラーゼを用いた、オリゴヌクレオチドLTBsal、
およびオリゴヌクレオチドLTBnco、
によるpLANTIGEN4の増幅によって、LT-Bについての合成遺伝子に導入した。LT-Bについての合成遺伝子を含むBpiI/SalI消化PCR断片を、NcoI/SalI消化バイナリーベクターpLANTIGEN25にクローニングし、得られたプラスミドをSalIおよびBamHIで切断した。SVCV Gのための配列を含むpLANTIGEN25のXhoI/BamHI断片を、LT-B-SVCV G融合体を含むpLANTIGEN27を生じる前者の消化されたプラスミドに、連結した(図9)。ソラナム・ツバロサム(Solanum tuberosum)デジレー を、アグロバクテキウム・チュメファシェンスによる形質転換を用いて、pLANTIGEN4およびpLANTIGEN27(同時形質転換)の1:1混合物で形質転換した。21個体の独立した形質転換植物体を、pLANTIGEN(4+27)について作製し、温室で成熟するまで育てた。
【0038】
発現解析
pLANTIGEN25塊茎の塊茎抽出物を、すべてがSVCV CZ539株に対する、かつGタンパク質に特異的であるモノクローナル抗体 G3C7、4C12、2C1/3H1、2C1/3G2、2C1/3C9、2C1/A10/2G2、2C1/A10/1H11および2C1/A10/1D12の様々な組み合わせを用いた、標準的なELISAまたはサンドイッチELISAによって、SVCV Gタンパク質の存在について解析した。47植物体のうち、SVCV Gの発現を示すものは1つとしてなかった。pL(4+27)塊茎抽出物の解析を、最初にGM1-ELISAによって行った。結果を、図10にまとめ、この結果により、多くの形質転換植物体が、最大4μg/g FW塊茎のGM1結合LT-B5 五量体の発現を示すことが示される。SVCV Gタンパク質の存在を解析するために、VD12(LT-B5特異的)との結合複合体の検出がここでSVCV Gに特異的なモノクローナル抗体2C1/3C9によりなされる改変GM1 ELISAをおこなった。pL(4+27)植物体由来の抽出物は、この改変GM1 ELISAにおいて陽性に反応したが、この抽出物は、図10の矢印により示される。見ることができるように、GM1結合LT-B5に陽性であったほとんどの植物体もまた、複合体におけるSVCV Gタンパク質の存在を示す2C1/3C9と反応した。
【0039】
免疫原性および抗体投与実験
pL(4+27)-11、15、17および23を含む選択される植物体の抽出物と凍結乾燥させた塊茎材料を、コイを用いる結合および取り込み実験、ならびにワクチン投与試験および抗原投与実験に用いる。pL(4+27)-11、15、17および23を含む凍結乾燥塊茎材料の混合物を、実施例5に記載のように、塊茎材料を最終濃度20%まで標準的な魚の餌に組み込んだ。得られた餌は、記載のようにコイの経口免疫化に用いる。0.2mlのSVCVウイルス株539の腹腔内注射によって、ワクチン投与の1、12、および21週間後に、10℃で育てたコイを抗原投与する。
【0040】
実施例5 コイの経口免疫化
遺伝子構築物および形質転換
ジャガイモ塊茎および対照PAT4におけるLTB発現のためのpLANTIGEN4合成植物体最適化遺伝子の設計ならびに構築は、以前に説明された(Lauterslager et al., 2001)。PR8 HA-1(Hackett et al., 1985)の111〜120アミノ酸に相当する2つの合成インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)重鎖デカペプチド配列を、イヌパルボウイルス(CPV;Langeveld et al., 1994)のウイルスVP2タンパク質のアミノ末端領域をコードする2つの合成配列とともに、pLANTIGEN4の特有のBamHI部位に、クローニングすることによって、pLANTIGEN15を構築した。4つの配列のそれぞれは、間隔をあけるための2つのアラニン残基(LT-B-iipp)によってそれらが引き離されるように、クローニングされた。インフレームで緑色蛍光タンパク質(GFP)のための配列を、実施例3に記載のように、pLANTIGEN4の特有のBamHI部位にクローニングすることによって、pLANTIGEN20を構築した。ソラナム・ツバロサム栽培種デジレーの形質転換、形質転換植物体の成長、および塊茎形成(tuberisation)は、記載されるものと同様である(Lauterslager et al., 2001)。
【0041】
塊茎タンパク質および魚餌の調製
pLANTIGEN15(pL1516)についての1つの形質転換株は、GM1-ELISAによって推定されるように、良好な塊茎の環境とrecLT-B生成との組み合わせによって、選択された。LT-B-GFP融合タンパク質を内部に持つpL2003の同定および解析を、実施例3に記載した。空ベクターカセットを含むPAT4対照株を、先に記載した(Lauterslager et al., 2001)。すべてのpL1516、PAT4およびpL2003を種塊茎により増加させ、大量の塊茎生産のために温室で育てた。大量の塊茎は、収穫され、皮を剥かれ、切片に薄切りされ、凍結乾燥され、かつモーターとペッソルを用いて粉砕することによって、均質化された。粉砕および均質化された材料は、コイによる免疫化実験において、および経口免疫化のための魚の餌を製造するために用いられた。魚の餌ペレットへの組み込みは、20%(最終濃度)のpL2003均質化凍結乾燥ジャガイモ塊茎材料(乾燥重量塊茎1g当たりLT-B-GFP 約21μg)を通常の魚の餌組成物と混合させることによって、ペレットを作製する前になされた。ジャガイモ材料を含む得られた混合物は、ペレットに変え、標準的な方法に従って魚油で被覆された。餌を、使用するまで室温で乾燥させた。餌中のLT-B-GFPの最終濃度は、4.3μg/餌gと見積もられた。
【0042】
コイの結合および取り込み実験
重量が約20gである6ヶ月齢のコイ(シプリナス・カルピオ L.)は、再循環性の、濾過されたおよびUV滅菌された水において3℃で育てられた。魚を、それらの体重の2.5%の1日一定量で標準的な餌ペレット(Skretting/Nutreco, Putten, The Netherlands)で給餌した。挿管の24時間前に、または餌による免疫化実験において、魚を絶食させた。pL2003均質化凍結乾燥塊茎材料または対照PAT4を、約0.4μg LT-B-GFP/100μl懸濁液(pL2003懸濁液)にまでPBSで再懸濁した。大腸菌抽出物から精製されたrecGFPを、最終濃度13.5μg/100μlにまでPBSで希釈した。3匹の魚のグループは、100μlのrecGFP懸濁液(13.5μg)、pL2003懸濁液(約0.4μg LT-B-GFP)またはPAT4で肛門挿管された。挿管の6時間後に、魚を過量のトリカインメタンスルホネート(TMS, Crescent Research Chemicals, AZ)によって殺し、末端消化器官を除去し、液体窒素中でポキンとおれるように(snap)凍結させ、解析まで-80℃で保存した。消化器官組織を、クライオスタット(Reichert-jung 2800 Frigocut N, Nussloch, Germany)を用いて切断し、組織切片を、ヨウ化プロピジウムを含むvectashield(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)に包埋した。レーザー走査顕微鏡法(Zeiss LSM-510, Jena, Germany)による消化器官切片解析により、LT-B-GFP(pL2003材料)がrecGFPと比較してより効率的に取り込まれることが明らかに示された(図11)。GFPは、腸の内側の細胞の中枢神経系核上にある液胞において、また腸の内側の細胞から大きいマクロファージ様細胞への輸送を示唆する上皮の下にあるマクロファージ様細胞においても、検出できた(図11B)。GFPのみで挿管された魚の腸の内側の細胞において、GFPは少ししか検出できなかったが、シグナルは、LT-B-GFP処理された魚と比較して小さい強度であり、実質的にはマクロファージ様細胞においてGFPは、検出できなかった(図11A)。対照ジャガイモPAT4材料で挿管されたコイの消化器官において、シグナルは検出されず、これは、適用されたGFPの濃度がジャガイモ由来のLT-B-GFPより高かったが、その取り込みがはるかに効率的でないことを示し、LT-Bの相加効果を示唆する。
【0043】
コイの免疫化
LT-B-iipp(pL1516;LT-B-iipp 約5.3μg/g FW)およびPAT4を発現するジャガイモ塊茎を、凍結乾燥、粉砕、均質化、ならびにPBSで再懸濁した。凍結乾燥したpL1516材料中のLT-B-iippの推定量は、21.2μg/g DWである。魚(1グループ当たり3匹)を、300μlのジャガイモpL1516懸濁液(約3μg LT-B-iipp)を用いて挿管した。魚の1グループを、挿管の3週間後に殺し、血液を一次応答測定のために採取した。魚の第2グループを、8週間後に肛門により追加免疫し(二次応答)、追加免疫の2週間後に殺し、その際血液試料を採取した。血液試料を、18時間4℃で凝固させ、遠心分離し(10000xg, 5min. RT)、血清を採取した。
【0044】
免疫応答を以下のように測定した。Maxisorb ELISAプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を、18時間4℃で100mlの4mg/ml抗パルボウイルスペプチドモノクローナル抗体(3C9, Ingenaza, Madrid, Spain)により被覆し、次に2時間室温で0.5% BSA(Roche, Mannheim, Germany)によりブロッキングした。続いて、イヌパルボウイルス(CPV;Langeveld et al., 1994)のウイルスVP2タンパク質のアミノ末端領域に相当する合成配列を添加した。血清を添加し、連続的に希釈した。検出は、コイ血清Igを認識する(WCI-12)ビオチン結合モノクローナル抗体によるものであった。試料は、0.5% BSAおよび0.1% Tween 20(Merck)含有PBSで希釈し、結合したWCI-12を、ストレプトアビジン結合HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands, 希釈:1:5,000)およびTMBペルオキシダーゼ基質(KirkegaardおよびPerry, Gaithersburg, MD)を用いて視覚化した。基質を最長20分間インキュベートし、続いてODを450nmで測定した。parvo抗体価(pL1516免疫化魚)をOD 0.1において試料の希釈によって決定した。parvo抗体応答を、一次血清または二次血清の両方においてELISAにより検出することができ、結果を図12にまとめている。図12をpL1516(LT-B-iipp)処理グループにおける魚の血清中の測定された力価が、対照グループと比較して平均してより高いことが示され、これは肛門挿管すると、抗原特異的な全身体液性免疫応答が誘導されることを示す。
【0045】
その他の実験において、コイを、連続5日間、pL2003含有餌およびPAT4によりそれらの体重の6%の1日一定量で給餌した。最後の免疫化の4週間後に、血清を分離し、上記のように処理した(一次応答)。最後の免疫化の8週間後に、魚を、それらの体重の4%の一定量で1日給餌することによって追加免疫した。追加免疫の4週間後に、上記のように、血清を分離し、処理した。陽性対照として、コイを、腹腔内注射によって不完全フロイントアジュバント中の50μgの精製recGFPにより初回刺激、および追加免疫の両方を行った。抗GFP免疫応答の検出のために、Maxisorb ELISAプレート(Nunc)を、18時間4℃で100mlの0.5mg/ml抗GFP抗体(ab1218, Abcam, Cambridge, UK)により被覆し、その後0.5% BSA(Roche)により2時間室温でブロッキングした。続いて、100μl recGFP(1mg/ml)を添加し、血清を連続的希釈において添加した。抗GFP特異的血清抗体を、コイ血清IG(WCI-12)を認識するビオチン結合mAbを用いて検出した。試料を、0.5% BSAおよび0.1% Tween 20(Merck)含有PBSで希釈した。最後に、WCI-12を、ストレプトアビジン結合HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands, 希釈:1:5,000)およびTMBペルオキダーゼ基質(KirkegaardおよびPerry, Gaithersburg, MD)を用いて検出した。基質を最長20分間インキュベートし、続いてODを450nmにおいて測定した。GFP抗体価を、OD 0.05(一次応答)またはOD 0.2(二次応答)において試料の希釈によって決定した。結果は、図13にまとめられ、餌ペレットを含むpL2003により給餌されたコイの二次免疫血清において、GFP抗体価の上昇が検出されたが(図13)、対照ペレットではGFP特異的体液性免疫応答を引き起こされなかったことを明らかに示す。これらのデータにより、LT-B-GFP経口投与が全身性体液性免疫応答を引き起こすことが示される。
【0046】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】pLANTIGEN4に存在するようなLT-Bについての合成遺伝子の遺伝子配列。イタリック体は、クローニングに使用されたEcoRI、HpaI、BamHIおよびSmaI部位である。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図2】pLANTIGEN24に存在するようなLT-BおよびVHSV Gについての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図3】すべてのpLANTIGEN24形質転換塊茎植物体抽出物についての、GM1 ELISA(薄い色の棒)およびK1509ポリクローナル抗体VHSV Gに対する(濃い色の棒)を用いた改変GM1 ELISAの結果。パネルAは、植物体1〜23についての結果を示す。パネルBは、植物体24〜50についての結果を示す。5μgのジャガイモ塊茎全抽出物をGM1プレートに添加した。LT-B5の五量体(Ltb5)の存在についてVD12(Lauterslager et al., 2001)を用いた、およびVHSV Gの存在についてK1509を用いた検出であった。
【図4】pLANTIGEN20に存在するようなLT-BおよびGFP配列についての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図5】選択されたpLANTIGEN20(LT-B-GFP)形質転換塊茎植物体抽出物についてのGM1 ELISAの結果。LT-B5の五量体の存在についてVD12(Lauterslager et al., 2001)を用いた検出であった。PAT4、陰性対照。濃度をnMで示す。
【図6】偽天然条件下のpLANTIGEN20(LT-B-GFP)形質転換塊茎抽出物についてのウェスタンブロット解析。レーンの上の数字は、個々の植物体番号(レーン3〜16)を示す。レーン2、pLANTIGEN4(LT-B)陽性対照。cont.は、PAT4(空ベクター)陰性対照の抽出物を指す。ブロットは、LT-Bの五量体複合体を検出するために、モノクローナル抗体VD12を用いて調べた。上部の矢印は、LT-B-GFP複合体についての高分子量複合体の位置を示すが、下方の矢印は、約60kDaのLT-B複合体を示す。
【図7】ジャガイモ塊茎で生成されるLT-B-GFPタンパク質複合体を用いるマスの経口(パネルAとB)および肛門(パネルCとD)免疫化実験の結果。免疫化の6週間後(パネルAとC)および8週間後(パネルBとD)で血清を採取した。血清のさまざまな希釈物(1:10〜1:320)を、GFP被覆プレート、マウス抗マス抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体を用いたELISA法によって、抗GFP抗体の存在についてアッセイした。655nmにおける吸光度は、血清中のGFPと抗GFP抗体との間で形成される複合体の量を反映する(詳細は実施例3を参照のこと)。吸光度が2倍の陰性対照血清の吸光度(点線により示される)より大きい場合、被験血清は陽性であると考えられる。
【図8】pLANTIGEN25に存在するようなSVCV-Gの遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図9】融合構築物pLANTIGEN27に存在するようなLT-Bおよび配列SVCV-Gについての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図10】pL4(LT-Bをコード)およびpL27(LT-B-SVCV-G融合タンパク質をコード)の混合物で形質転換された形質転換植物体の塊茎抽出物における機能的LT-B五量体の解析。五量体形成をGM1 ELISAによって決定した。五量体複合体におけるSVCV Gタンパク質の存在を解析するために、VD12(LT-B5に特異的である)との結合複合体の検出がここでSVCV G特異的モノクローナル抗体2C1/3C9を用いて行われる、改変GM1 ELISAを行った。この改変GM1 ELISAにおいて陽性反応した塊茎試料を矢印を用いて示す。
【図11】LTBは、コイ消化器官粘膜におけるGFPの良好な取り込みを促進する。ジャガイモ懸濁液を含む(パネルA)GFP、(パネルB)LTB-GFP、および(パネルC)対照ジャガイモ懸濁液とともにインキュベートし、6時間インキュベートしたコイ消化管の選択。LTB-GFPインキュベートした消化管中の大きいマクロファージ様細胞に留意のこと(矢じり)。
【図12】肛門挿管されると、合成パルボウイルスペプチド依存性体液性免疫応答が誘導される。パルボウイルスペプチド特異的抗体応答を、LTB-p(LTB-パルボウイルスペプチド)で肛門により免疫化された魚の1次および2次の免疫血清において測定した。パルボウイルスペプチド特異的抗体応答を、ELISAにより測定した。3匹の魚についての平均抗体価±SEMを示す。
【図13】pL20(LTB-GFP)処理餌ペレットによる経口免疫化により、抗GFP応答が生じる。コイは、pL20もしくはPAT4(空ベクター対照)混合餌ペレットまたはpL20もしくはPAT4被覆餌ペレットによる給餌によって経口免疫化された。(A)1次の免疫血清におけるおよび(B)2次の免疫血清における抗GFP応答を示す。抗GFP応答を、ELISAにより測定した。IFAにおけるGFPにより腹腔内免疫化された魚の血清中の、GFP i.p.:抗GFP応答。
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚用の粘膜(経口)ワクチンの開発、組成物および製造に関するものである。より具体的には、本発明は、免疫応答誘導のために魚の粘膜表面に、およびこの粘膜表面すべてにわたって、抗原を送達するためのタンパク質複合体に関し、かつ宿主細胞において、好ましくは植物において該複合体の製造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
伝染病は、ヨーロッパおよび世界の水産養殖に重大な脅威を与えるものである。水産養殖の深刻化は、伝染病の大発生の回数および頻度の増加につながり、その結果、高い経済損失と魚の被害が生じている。さらに、それぞれが内因性の伝染病の危険性を持つ、より多くの種類の魚が養殖されている。多くの場合、大発生により、小型の魚においてならびにより大型の魚において、死亡数が高くなる。特にウイルス病は、問題が増えている(LeongおよびFryer, 1993; Newman, 1993)。例には、サケ科と非サケ科の両種を冒すIPNウイルス(IPNV)によって生じる伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPN);ウイルス性出血性敗血症(VHS)ウイルス(VHSV)によって生じ、かつ養殖ニジマス(オンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss))に最も損傷を与えるVHS、ならびにコイの春ウイルス血症(SVC)ウイルス(SVCV)によって生じるSVC、ならびにコイ(シプリナス・カルピオ(Cyprinus carpio))を冒すが日本鯉(koi)も冒すコイヘルペスウイルス(KHV)が含まれる。発生の確率が高いおよび重大な経済的結果を有する魚の他の病気は、せっ腫症、ISA、サケにおけるビブリオ症(Hitra disease)およびSRS、ニジマスにおけるERMおよびラクトコッカス(Lactococcus)、ならびにハタ科の魚におけるビブリオ病(Vibriosis)およびパスツレラ病、ならびにニシマダラにおけるビブリオ病、パスツレラ症、せっ腫症およびビブリオ症である。
【0003】
魚においてほとんどの病気の蔓延を防ぐためのかぎは、病気予防の管理できる危険因子を同定することであり、病気の原因となる病原菌を排除するのに相当の努力を注ぐことではない。病気が発生する場合、魚以上に病原菌に好都合である状況が作り出されているということがしばしば起こる。病原菌が存在する場合に、魚が病気になるかどうかは、魚の健康状態、水質および水温、ストック密度(stocking density)、病原菌容量、ワクチン投与状態、取り扱い実施(handling practice)、同一階級に属するもの(grade)の均一性、ならびに異なる病気の脅威を体験する可能性のある隣の養殖場への近さを含む因子に依存する。これらのうち、ワクチン投与状態は、養殖生産者に、それらの魚における病気の危険性とそれらの生産費用の両方を低くするための有効な手段を提供する。
【0004】
ワクチン投与の3つの一般的な方法は以下である:液浸、注射、および経口。これらの方法は、投与の容易さ、費用、魚のストレス、生存率、投与量管理、関係する労働量、および防御期間によって異なる。最終的には、これらの使用方法のうちのどれかについての決定は、実際のおよび認識される危険性、魚の年齢、養殖者自身の危険忌避、ならびに投資利益の組み合わせに基づく。
【0005】
注射可能なワクチンは、結果として効果レベルがより高くなり、防御期間がより長くなるより大きい投与量管理を可能にするので、液浸および経口ワクチンより大きい防御となることが一般に認められている。しかしながら、注射可能なワクチンは、より労働集約的であり、より費用がかかる傾向があり、かつ注意して行わない場合には魚に損傷を与える可能性がある。さらに、それは、小型の魚に対してのそれの使用を含まず、かつ費用がかかる。また、多くの副反応が、免疫化する抗原またはそれが存在する乳化試薬のどちらかに起こる可能性がある。従って、使用できる場合には注射ワクチンは、養殖条件下で小型の魚の集団ワクチン投与のためにはほとんど有用でない。
【0006】
液浸ワクチン投与は、魚の養殖において頻繁に用いられるが、それが、魚にとってはストレスが多く、完全には防御しないというデメリットを持つ。このように、最も魅力的な方法は、比較的問題のない経口ワクチン投与である。
【0007】
経口ワクチンの送達は、稚魚が食べ始めるとすぐにその稚魚を防御できるという大きなメリットを有する。好都合なことに、これは、通常幼魚が病原菌によって最も攻撃およびコロニー形成されやすい時期と一致する。経口ワクチン投与はまた、病原菌への曝露の危険性の増加がある場合はいつでも、養殖者が魚へ追加抗原投与量を投与することを可能にする。最後ではあるが特に、経口ワクチン投与は、多くの病原菌の入り口において免疫応答を刺激する。それらは、養殖者が、最小限のストレスで魚を免疫化し、かつ大規模でおよびその瞬間から、食べ始めた免疫能力のある魚を取り扱いすることを可能にするという経口ワクチンの重大なメリットがある。
【0008】
水産養殖のための実際の経口ワクチンの開発には、世界中の水産養殖産業の達成困難である主要な目標が残っている。魚の餌で製剤化できる経口ワクチンにより、免疫能力のある魚がペレット状の餌を食べ始める始めるとすぐに、抗原を投与することができる。今までにこのような経口ワクチンの開発を妨げていた主要な障害は、1)適用される抗原(Ag)が胃の酸性度と腸管に存在するプロテアーゼの活性のため破壊されることが多いこと;2)経口免疫寛容が誘発されうること;および3)Agが消化管粘膜に必ずしも入らず、その結果免疫応答が開始されないこと、である。
【0009】
消化器官におけるAgの破壊は、Ag被包化により避けられることができる。例えば、(消化管の腹側部分においてワクチンを分解から保護するために)アルギネート微粒子で被包化されるビブリオ・アングイラルム(Vibrio anguillarum)の細菌ワクチン抗原による経口ワクチン投与は、魚において、全身の記憶を誘発し、粘膜免疫応答を誘導する(Joosten et al. (1997) Fish and Shellfish Immunology 7: 471)。さらに、リポソームは、経口ワクチンの開発のための担体およびアジュバントとしてかなりの感心を引いている。多層リン脂質ビヒクルは、それらの標的部位に到達するまで、低pHおよび酵素による攻撃から被包化抗原を保護する(例えばGregoriadis, Immun. Today 19990; 11:89)。リポソーム被包化抗原による経口ワクチン投与は、魚において報告されている。Irie et al. (2003)は、モデル抗原としてリポソーム被包化ウシ血清アルブミン(BSA)を経口投与すると、コイ(シプリナス・カルピオ)の血清中の抗BSA抗体の有意な増加を報告した。
【0010】
しかしながら、一般には、これらの保護される経口ワクチン製剤の製造は、複雑でありかつ費用がかかる。それらは、それゆえに、水産養殖におけるなどの、大規模で費用効果の高い適用には適さない。
【発明の開示】
【0011】
本発明の目的は、費用効果の高く、かつ魚の餌として容易に製剤化できる、魚の粘膜への抗原の送達を可能にする経口ワクチンを、提供することである。
【0012】
本発明は、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合される対象となる該タンパク質を含む融合タンパク質をコードする組換え核酸構築物を、宿主細胞に与える段階を含み、かつ対象となる該タンパク質が、該宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を有する生物起源である、宿主細胞における対象となるタンパク質の発現方法を提供する。また、この方法によって入手可能である融合タンパク質、および1つまたは複数の該融合タンパク質を含むタンパク質複合体も提供される。対象となるタンパク質は、好ましくは対象となる抗原であるが、その他の種類のタンパク質も当然Bサブユニットに融合されてもよい。特に、それは、魚の経口ワクチンとして、ビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT)または大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性エンテロトキシン(LT)などの細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットの粘膜結合性Bサブユニットに融合される対象となる抗原を含むタンパク質複合体の使用を提供する。驚いたことに、魚の粘膜への抗原の送達を可能にし、粘膜細胞表面受容体により複合体の結合および取り込みならびに該抗原に対する免疫応答の誘導を促進する機能的タンパク質複合体の使用によって、魚における、抗原破壊、抗原の取り込みならびに経口免疫寛容という問題が克服できるということが見出された。融合タンパク質複合体は、タンパク質複合体を含む餌ペレットで給餌された魚において特定の免疫応答を誘導することが示された。驚いたことに、抗原保護または被包化は必要ではなかった。
【0013】
病原性細菌によって生成される細菌毒素のAB5クラスは、酵素活性を持つAサブユニットと標的真核生物の糖脂質受容体との相互作用を担うBサブユニット五量体を含む(Fan, E., E.A. Merritt, C.L.M.J. Verlinde,およびW.G.J. Hol. 2000. AB5 toxins: structures and inhibitor design. Curr. Opin. Struct. Biol. 10:680-6861)。AB5毒素クラスは、配列相同性および触媒活性に基づいたファミリーに細分されることができる。コレラ毒素ファミリーは、コレラ毒素自体に加え大腸菌(E. coli)熱不安定性エンテロトキシンLTおよびLT-IIを含む。密接に関係する志賀毒素ファミリーは、志賀赤痢菌(Shigella dysenteriae)および大腸菌の「志賀様」毒素(ベロ毒素としても知られる)からの多くの毒素を含む。ヒト集団に対するこれら毒素の影響は、LT産生大腸菌株による感染が原因となる比較的程度の軽い旅行者の下痢から、V. コレラ(V. cholerae)感染が原因となる急性でかつ生命にかかわる下痢および志賀毒素ファミリーメンバーが原因となる同様に深刻な溶血尿毒症症候群(「ハンバーガー病」)にまでに及ぶ。
【0014】
哺乳動物において、ビブリオ・コレラ毒素BサブユニットCT-Bおよびその相同体大腸菌熱不安定性エンテロトキシン、LT-Bを、それらが正しくプロセシングされる消化管における粘膜の免疫応答細胞に抗原を標的化するために用いることができることが示された(例えば、Walker, 1994参照のこと)。Bサブユニットの5 量体リングは、粘膜の消化器官上皮上の特異的受容体(主としてガングリオシドGM1)を結合し、その他の抗原と結合した場合にこれら抗原の免疫原性を高めることができる(Jagusztyn-Krynicka et al., 1993)。これらの知見は、哺乳動物における粘膜上皮の免疫応答性細胞に対する標的タンパク質抗原の提示のための担体分子として組換え型エンテロトキシンの開発につながった(AitkenおよびHirst, 1993; CardenasおよびClements, 1993; Jagusztyn-Krynicka et al., 1993; KhouryおよびMeinersmann, 1995; Zhang et al., 1995)。CT-BまたはLT-Bのカルボキシ末端に融合される抗原が、経口投与すると哺乳動物およびトリにおける該標的タンパク質抗原に対しての体液性および細胞性の免疫応答を誘発できることが示された(CardenasおよびClements, 1993; Jagusztyn-Krynicka et al., 1993; KhouryおよびMeinersmann, 1995)。
【0015】
魚のGALT(gut associated lympoid tissue)の免疫学的能力についての研究により、魚においても粘膜免疫系の存在が確認された(Hart et al., 1988により概説される)。ここで、腸はまた、経口投与されたタンパク質抗原の取り込み(Dalmo et al., 1997; Lamers, 1985; Romboutおよびvan den Berg, 1989; Rombout et al., 1985, 1989)および粘膜の免疫グロブリンの生成に関与する。
【0016】
LT-Bまたはパルボウイルス(parvo)ペプチドに融合されるLT-Bのどちらかを用いたコイの肛門挿管が、コイの消化器官粘膜におけるこれらのペプチドの取り込みと、体液性免疫応答に対しての抗LT-Bおよび抗パルボウイルスペプチドの誘導につながることが示された(Companjen et al. Midtlyng PJ (ed):Fish Vaccinology. De v Biol. Basel, Karger, 2005, vol 121, pp 143-150)。しかしながら、肛門挿管による魚の免疫化が大規模の適用に適さないこと、および抗原の経口投与が明らかに好ましい選択であると理解されると思われる。本明細書に開示されるように、魚用の経口ワクチンとしてエンテロトキシンBサブユニットへ抗原を融合する適用は、これまで報告されなかった。CT-Bサブユニットをリポソームに結合させ、魚の腸管へのリポソーム被包化抗原(BSA)の送達を向上させた(Irie et al., 2003)。魚をBSA含有不安定リポソームまたはBSAのみで経口により免疫化した場合に、CT-Bを有さないリポソームはまた、効果的であったが、免疫応答は観察されなかった。従って、Irie et al.の開示に従って、抗原が安定なリポソーム中でのそれらの被包化によって保護されるということは、魚における血清抗体応答の誘導にとってかなり重要である。明白な対比において、本発明は、ここで、被包化が必要でない、またはそれなければ抗原を保護して、経口ワクチン投与後の魚の体液免疫応答を誘導することを示す。
【0017】
本明細書において、対象となる抗原に融合されるAB5毒素のBサブユニットを含む抗原性タンパク質複合体であって、魚の粘膜細胞表面受容体に結合することができ、上皮を超えて輸送され、かつ魚の免疫系に曝露されて血清免疫応答と保護を生じる該タンパク質複合体、についての生成および使用が提供される。Bサブユニットが、熱不安定性エンテロトキシン(LT-B);志賀毒素および志賀様毒素(ST-B);百日咳菌(Bordetella pertussis)毒素B;IIa型およびb型熱不安定性エンテロトキシン、Bサブユニットおよびコレラ毒素BサブユニットCT-Bからなる群より選択されてもよい。1つの態様において、Bサブユニットは、LT-BまたはCT-BサブユニットなどのAB5毒素のCTファミリーメンバー由来のBサブユニット、またはC. ジェジュニ(C. jejuni)由来の毒素のBサブユニットである。Bサブユニットは、対象となるタンパク質のN末端またはC末端のどちらかに融合されてもよい。 好ましくは、Bサブユニットは、対象となるタンパク質のN末端に融合される。
【0018】
複合体成分をコードする適切な核酸構築物を与えられ、かつ発現と機能的複合体への該成分の構築とが可能となる宿主細胞を用いて、AB5毒素のBサブユニットおよび対象となるタンパク質を含む融合タンパク質に基づくタンパク質複合体を調製することができる。 タンパク質複合体の生成に用いることができる宿主細胞には、植物細胞、魚細胞、酵母細胞(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、藻類、例えばエグレジア・エンジェシ(Egregia enziesii)などの褐藻またはコナミドリムシ (Chlamydomonas rheinhardtii )などの緑藻、哺乳動物細胞、菌類細胞および昆虫細胞が含まれる。適切な菌類細胞は、アガリガス・ビスポリス(Agaricus bisporis)、アンズタケ(Cantharellus cibarius) 、ヒラタケ属(Pleurotus)種、およびヒトヨタケ属(Coprinus)種が含まれる。細菌宿主細胞、例えば、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis) またはラクトコッカス・プランタラム(Lactococcus plantarum)などの共生乳酸菌を用いてもよい。好ましくは、宿主細胞は、消費されると害をもたらさない可食宿主細胞である。具体的な態様において、植物を用いて、本発明の免疫原性タンパク質複合体を生成することができる。例えば、トウモロコシもしくはコメまたはジャガイモもしくはタバコなどの単子葉植物または双子葉植物に属する植物細胞を用いることができる。
【0019】
驚いたことに、対象となるいくつかのタンパク質について、宿主細胞においてBサブユニットとの融合タンパク質として発現される場合に、Bサブユニットへの結合により対象となるタンパク質の発現が強まるということが観察された。例えば、LT-Bと魚ウイルスのVHSVまたはSVCVのウイルス性糖タンパク質(G)との融合体をコードする核酸配列は、植物宿主細胞において、最適な転写および翻訳の開始を可能にした。対照的に、ウイルス性抗原のみをコードする核酸配列は、宿主細胞において、発現されないか、またはかなり不十分にしか発現されない。組換え発現系として用いられる植物宿主細胞は、典型的には、18〜30℃の間の温度で温室において栽培される。冷水魚に病原性であるウイルス(例えば、VHSVおよびSVCV)の最適温度は、かなり低く;魚ウイルスVHSVおよびSVCVが8〜14℃の間で最も増殖する(flourish)ことが観察されている。さらに、これらのウイルスの病原性は、より高い温度では観察されない。これは、抗原が通常発現する温度(8〜14℃)を十分上回る温度(18〜30℃)で、植物が生育されるという事実によって、植物宿主細胞におけるウイルスのGタンパク質のみの組換え発現は妨げられることを示すことができる。両ウイルスの糖タンパク質は、多量体タンパク質であり、かつ、それらの折りたたみと多量体化とが、タンパク質分解をより受けやすいような最適温度を超える温度で適切に起こることができないと考えられる。理論に拘束されることを望まないが、植物において発現する場合に、五量体複合体形成が可能であるAB5 Bサブユニットへのウイルス抗原の結合が、抗原の安定性と発現とを増すということが提唱される。それによって、本発明は、(植物)宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を有し、細菌毒素、例えばビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT)のAB5クラスメンバーのBサブユニットとの融合タンパク質として発現される該宿主細胞のおける対象となるタンパク質、の発現方法を提供する。該宿主細胞は、例えば植物細胞であり、かつ対象となる該タンパク質は、例えば、海洋動物(例えば魚)または海洋動物に病原性である生物由来である。
【0020】
さらなる態様は、本発明の方法において用いられる核酸構築物に関するものである。構築物は、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに、好ましくは、ビブリオ・コレラ コレラ毒素(CT-B)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のBサブユニットに融合される、魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源の対象となるタンパク質を含む融合タンパク質をコードする。例えば、対象となるコードされるタンパク質は、魚起源であり、病原性であり、好ましくは、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(striped jack nervous necrosis virus)(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス (Pancreas Disease virus)(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス(infectious salmon anaemia virus) (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス(Flexibacter columnaris)、エドワージアラ・イクタルリ(Edwardsialla ictaluri)、E. タルダ(E. tarda)、ピスキリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、ビブリオ属種(Vibrio)およびアエロモナス属(Aeromonas)種、エルシニア・ルケリ(Yersinia ruckeri)、パスツレラ・ピシシダ(Pasturella piscicida)、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラム(Renibacterium salmoninarum)からなる群より選択される。1つの局面において、本発明の核酸構築物は、IPNVのVP2タンパク質、VHSV(VHSV-G)の糖タンパク質およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される対象となる抗原に融合されるAB5毒素のBサブユニットをコードする。また、発現ベクター、本発明による核酸構築物を含む、好ましくは植物発現ベクターも提供される。発現ベクターは、適切には(植物)宿主細胞における構築物の組換え発現に用いられる。標準的な組換えDNA技術は、所望の構築物を調製するために用いることができる。構築物は、トランスフェクション、エレクトロポレーション、およびアグリバクテリウム(Agrobacterium)による遺伝子移入を含む様々な通常の技術によって、宿主細胞に導入することができる。当技術者は、特定の宿主細胞に最も適した方法を選択することができると思われる。
【0021】
本発明の方法は、その天然型において、多量体として、例えば二量体または三量体として存在する対象となるタンパク質の発現のために、好都合に用いられる。(植物)宿主細胞における発現の後に、融合タンパク質は、それ自体で(例えば、経口ワクチン組成物における本発明の抗原性タンパク質複合体として)用いることができる。または、融合タンパク質は、さらにプロセシングされて、Bサブユニットを除去し、対象となるタンパク質を放出することができる。プロセシングは、例えばトリプシンのようなプロテアーゼを用いて酵素により、または化学的に、行われることができる。
【0022】
また、本発明による方法によって入手可能である融合タンパク質、および1つまたは複数の融合タンパク質を含むタンパク質複合体も、提供される。
【0023】
さらに、本発明は、本発明の融合タンパク質または本発明のタンパク質複合体を含むワクチン、特に、魚の経口ワクチンを提供する。本発明の好ましい態様において、融合タンパク質は、魚病原菌のウイルス、細菌または微生物の表面抗原からなる群より選択される対象となる抗原に融合されるBサブユニットを含む。魚に病原性であるウイルスまたは微生物の例には、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス、エドワージアラ・イクタルリ、E. タルダ、ピスキリケッチア・サルモニス、ビブリオ属種およびアエロモナス属種、エルシニア・ルケリ、パスツレラ・ピシシダ、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラムが含まれる。当然、魚において非経口ワクチン製剤中の保護性抗原であることが示された抗原は、本発明に関して特に対象となる。本発明による経口ワクチン製剤で適切に用いられる公知の保護性抗原には、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV;Lorenzen et al., 1998)のGタンパク質が含まれる。
【0024】
さらに、本発明は、本発明の、融合タンパク質またはタンパク質複合体を含むワクチン組成物を経口投与する段階を含む、魚の免疫化方法を提供する。好ましくは、ワクチン組成物の経口投与は、該融合タンパク質を含む魚の餌で魚を給餌する段階を含む。
【0025】
本発明の機能的タンパク質複合体は、粘膜細胞表面受容体との相互作用に必要な五量体構造を有する。1つの態様において、それは5つの同一の抗原Bサブユニット融合タンパク質のホモ五量体である。1つのBサブユニットは、単一の抗原にまたは、複数コピーのその抗原に融合されることができる。それはまた、本発明のタンパク質複合体において複数種の抗原を組み込むことも可能である。例えば、異なる種類の抗原のタンデムリピートは、1つのBサブユニットに融合されることができる。代替的態様において、抗原性タンパク質複合体は、異なる抗原に融合される5つのBサブユニットから構成されるヘテロ五量体複合体である。例えば、複合体の2つのサブユニットは、抗原Aに融合され、複合体の3つのサブユニットは、抗原Bに融合される。その他の組み合わせもまた、当然可能である。さらに、全てのBサブユニットが、対象となる抗原に融合される必要があるとは限らない。魚の経口ワクチンとしての、少なくとも1つの「遊離」または「非改変」のBサブユニットおよび少なくとも1つの融合Bサブユニットからなるタンパク質複合体の使用も包含される。実際に、特定の抗原、特に大きい抗原については、抗原は、もしそうでなければ、機能的五量体の形成を妨害する場合があるため、すべての五量体のサブユニットが抗原とともに添加されるとは限らないということが好ましいと考えられる(出願PCT/NL2004/000708を参照のこと)。
【0026】
さらなる局面において、本明細書で開示されるような対象となる抗原を含むタンパク質複合体は、注射剤による従来のワクチン投与と全く対照的に、魚の餌である粒子またはペレットの一部となるなどの非労働集約的方法で魚に投与できる経口ワクチン組成物に好都合に製剤化され、かつ、魚にストレスを引き起こさない。これにより、本発明は、AB5細菌毒素のBサブユニットに融合される対象となるタンパク質(例えば、抗原)を含むタンパク質複合体を含む魚の餌組成物を提供する。1つの態様において、魚の餌組成物は、ビブリオ・コレラ コレラ毒素(CT-B)のBサブユニットに、または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のBサブユニットに融合される対象となる抗原を含むタンパク質複合体を含む。本発明の魚の餌組成物は、例えば、本発明のタンパク質複合体が魚の餌の製造時または製造後のどちらかに添加された餌ペレットまたは粒子を含む。乾燥ペレットの魚の餌は、過去数年間で水産養殖産業で一般的になってきている。ペレット化された市販の魚の餌は、様々な大きさのペレットで入手可能である。ほとんどの種類の乾燥ペレットの魚の餌の主成分は、魚肉、標的となる養殖種の栄養要求量に従う、その他の動物または植物起源由来のタンパク質、魚油またはその他の種類の脂質、ビタミン混合物、ミネラル、およびつなぎである。混合成分は、通常、異なる種類の養殖魚の給餌挙動に適するように様々な大きさと密度のペレットに成形される。給餌のためのペレットの大きさの選択は、典型的には、魚の大きさに基づく。1つの態様において、従来の方法で調製された魚のペレットは、本発明の抗原性タンパク質複合体を含む組成物で被覆される。しかしながら、好ましくは、ペレットは、従来のペレット成分と本発明のタンパク質複合体との混合物から調製される。タンパク質複合体は、未精製のまたは(部分)精製の形態で魚の餌に添加されることができる。例えば、可食宿主細胞が、タンパク質複合体の生成に用いられる場合には、この複合体の構成成分を発現する宿主細胞は、それ自体魚の餌で用いることができる。具体的態様において、餌ペレットは、LT-B抗原融合タンパク質を発現する形質転換ジャガイモ宿主細胞から得られる凍結乾燥ジャガイモの塊茎材料の一定量(例えば20%重量)を含む餌ペレットが提供される。これは、食物1g当たり融合タンパク質約4〜5mgに相当する。これらのペレットを魚に給餌することにより、結果として抗原に対する全身体液性免疫応答が生じた。
【0027】
本発明は、1種類のAB5毒素(LT)を用いた以下の実施例によって、説明される。しかしながら、本発明を実施する場合、当業者は、Bサブユニットのその他の種類を相互互換的に用いることができることを理解すると思われる。
【0028】
実施例1 伝染性膵臓壊死症用経口ワクチン
序論
伝染性膵臓壊死症(IPN)は、IPNウイルス(IPNV)、つまりビルナウイルス科(Birnaviridae)の原型ウイルスにより引き起こされるウイルス病である。それは、サケ科または非サケ科のひれのある魚の両種を冒す重大なウイルス病であり、世界中に分布している。IPNによる推定損害が毎年約6000万ユーロであると見積もられる場合に(Christie, 1997)、ノルウェー大西洋サケ産業に特定的なデータのみを利用できる。IPNVおよびその他のビルナウイルスの世界中の地方病の分布により、それらの制御の成功が魚の新種および現存種の両方についての今後の養殖に極めて重要であることが示唆される。IPNVは、二本鎖の二等分されたRNAゲノムを持つ。そのウイルス粒子は、非被包化正二十面体の60nmキャプシドからなる。ウイルスゲノムは、大きさがゲノムのAセグメントおよびBセグメントに相当する2つの非ポリアデニル化配列に転写される。ウイルスAセグメントの配列は、約100kDaポリタンパク質をコードし、このポリタンパク質は、切断されて、アミノ末端から順番に、主要ビリオンタンパク質VP2、および非主要構造タンパク質VP4およびVP3を生成する。主要キャプシドタンパク質VP2は、前駆体タンパク質pVP2より生成され、その後、構築されて、キャプシドを形成する。VP2タンパク質は、保護性であることが示されたが、市販の注射ワクチン中に存在する唯一の抗原である。
【0029】
遺伝子構築物
ジャガイモまたはその他のナス科(Solanaceae)における発現に最適化されたLT-Bについての合成遺伝子の遺伝子融合体、およびIPNVのVP2主要キャプシドタンパク質についてのコード配列を、以下のように作製することができる。IPNVの主要キャプシドタンパク質VP2をコードする遺伝子は、
用のプライマーIPNVと、
用のプライマーIPNVrevとを用いたgenbankアクセッション番号U48225の遺伝子配列と類似している鋳型のPCR増幅によって、LT-Bについての合成遺伝子のC末端においてインフレームでのpLANTIGEN4の特有のBamHI部位(Lauterslager et al., 2001; 図1)へのクローニングに適合される。それぞれのBamHI/SmaI断片は、pLANTIGEN32(LT-B-IPNV VP2)を作製するために、pLANTIGEN4(Lauterslager et al., 2001)におけるパタチンプロモーター制御下でクローニングすることができる。形質転換植物体は、Lauterslager et al.(2001)に記載のように作製することができ、ジャガイモ塊茎抽出物のGM1 ELISAによって選択することができる。
【0030】
実施例2 VHSV用の経口ワクチン
遺伝子構築物と形質転換
形質転換植物体において組換えVHSV Gタンパク質合成を可能にするために、遺伝子構築物pLANTIGEN21を作製し、ジャガイモに形質転換した。PLANTIGEN21は、以下のように作製した。特有のSalIおよびBglII部位を、増幅のための校正Pwoポリメラーゼを用いた最適条件下でPCRによる、オリゴヌクレオチドVHSV G1、
およびVHSV G3、
を用いたpcDNA3vhsG(McLaunchlan et al., 2003)の増幅によるVHSV Gの成熟Gタンパク質コード配列のN末端およびC末端に導入した。分泌のためのシグナルペプチド(Van Engelen et al., 1994)を含むNcoI/SalI断片を、pLANTIGEN4のNcoI/BamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)における得られたNcoI/BglII断片をクローニングによって、それぞれのSalI/BglIIで消化したPCR断片に連結し、パタチンクラスIプロモーターとノパリン合成酵素ターミネーターとの制御下に置き、pLANTIGEN21を作製した。後者は、記載(Lauterslager et al., 2001)のように、ジャガイモに形質転換し、58個体の形質転換植物体を、再生し、温室で成熟するまで育てた。
【0031】
従って、LT-BおよびVHSVのGタンパク質の遺伝子融合体を、プライマーG-F、
およびプライマーGlong-R-SmaI、
を用いたPCR増幅により、pLANTIGEN21におけるVHSV Gタンパク質コード配列のN末端に特有のBamHI部位を、およびC末端に特有のSmaI部位を導入することによって、構築した。得られたBamHI/SmaI断片を、pLANTIGEN24(図2)を生成するpLANTIGEN4(Lauterslager et al., 2001)におけるLT-Bコード配列のC末端に特有のBamHI部位にインフレームでクローニングした。後者を、記載のようにジャガイモに形質転換し、47個体の独立した形質転換植物体を再生し、温室で成熟するまで育てた。
【0032】
発現解析
pLANTIGEN22塊茎の塊茎抽出物を、記載のように(Lorenzen et al., 2000)モノクローナル抗体 3F1A2、IP1H3および3F1H10(Cupit et al., 2001)を用いたサンドイッチELISAによって、VHSV Gタンパク質の存在について解析した。形質転換植物体の抽出物のうち、Gタンパク質の発現を示すものは1つとしてなかった。すべてのpLANTIGEN24塊茎のジャガイモ塊茎抽出物を、LT-B5五量体の存在についてGM1-ELISAによって解析した(Lauterslager et al., 2001)。VHSV Gタンパク質の検出を可能にするために、精製したウシの脳GM1ガングリオシドで被覆したマイクロプレートをジャガイモ塊茎抽出物とともにインキュベートし、その後ウイルスVHSV Gタンパク質を認識するVHSV Gに対するK1509ポリクローナル抗体とインキューベートすることによって、改変GM1-ELISAを行った。このアッセイ法を用いて、五量体LT-B5との複合体におけるVHSV Gタンパク質の存在を立証することができる。GM1 ElISAと後者の改変GM1 ELISAの両結果を、すべてのpLANTIGEN24植物体について図3にまとめている。図3より見ることができるように、LT-BおよびVHSV Gタンパク質を含む融合タンパク質を作製することによって、GM1を結合するLT-B-VHSV Gタンパク質複合体は、形質転換ジャガイモ塊茎において立証されることができる。予想されるように、GM1結合活性レベルとGM1結合複合体のポリクローナルK1509抗体による認識との間に強い相関関係がある。少なくとも19個体の形質転換植物体は、バックグラウンド(約1ng/生重量g)を超えるGM1を結合するLT-B発現を示した。これらの半分を超えるものもまた、VHSV Gタンパク質に陽性であったが、pLANTIGEN22は1つとして陽性ではなかった。レベルは、塊茎生重量1g当たり最大LT-B5 2.5μgであった。選択された植物体pL2420(すなわち、pL24について形質転換された植物体グループのうち植物体番号20)およびpL2421もまた、2つのモノクローナル抗体3F1A2とIP1H3を用いるサンドイッチELISAにおいて陽性であり、これら2つのmAbによって認識される少なくとも2つの配座エピトープの適切な折りたたみを示唆した(Lorenzen et al., 2000)。
【0033】
免疫原性および抗原投与実験
pL2421を含む選択される植物体の抽出物と凍結乾燥させた塊茎材料をワクチン投与試験と抗原投与実験とに用いる。約4gのニジマス幼魚(1グループ当たり120個体)を、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)の10% ホモジネート25μlを筋肉内注射することによって、または魚油の5% ホモジネート100μlを経口適用することによって、フロイント不完全アジュバントと混合させた10% pL2421抽出物50μlを腹腔内注射することによって、2回免疫化させ、かつVHSVによるワクチン投与の6週間後に抗原投与させる。血清をワクチン投与の6週間後に採取して、抗体応答を調べる。抗体投与は、記載のようである(McLauchlan et al., 2003)。または、LT-B複合体を発現する、およびVHSV Gに陽性である、pL2420、PL2421、pL2439およびpL2440を含む選択された形質転換植物体の凍結乾燥塊茎材料は、標準的な魚肉に組み込まれ、得られたペレットは餌免疫化において経口用に用いられる。
【0034】
実施例3 マスのLT-B-GFPによる経口および肛門挿管
LT-B-GFP遺伝子構築物
LT-Bと緑色蛍光タンパク質(GFP)との遺伝子融合体を、以下のように作製した。特有のBamHI部位を、オリゴヌクレオチドGFPFw
およびGFPRev
を用いたPCRによるGFP配列のコード配列に導入した。得られたBamHI断片を、pLANTIGEN4におけるLT-Bについての合成遺伝子のC末端の特有のBamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)にクローニングして、転写融合体LT-B-GFPと名付けられたpLANTIGEN20を作製した(図4)。後者のバイナリーベクターを、前記のように(Lauterslager et al., 2001)、アグロバクテリウム・チュメファシェンス(Agrobacterium tumefaciens)Ag10株に導入し、ジャガイモ栽培種デジレーの形質転換に用いた。
【0035】
塊茎解析
31個体の形質転換植物体を、作製し、温室で成熟するまで育てた。480nmにおける緑色蛍光についての塊茎組織切片解析により、ほとんどすべてのものがGFP陽性であることが示された。形質転換塊茎の半分を、LT-B5 五量体複合体の存在についてGM1-ELISAによって解析し、図5に結果をまとめている。五量体複合体の検出のための、偽天然条件下のかつLT-B5立体構造モノクローナル抗体VD12を用いたウェスタンブロッティングにより、GM1 ELISAにおいて陽性である形質転換植物体の高分子量複合体の存在が示された(図6)。図6より、全ての形質転換pL20植物体が、VD12によって認識される高分子量複合体を蓄積していたが(左上矢印)、LT-Bについての合成遺伝子を発現する対照pL4植物体については、約60kDa複合体が視覚化されることができる(下方矢印)ことを見ることができる。生重量1g当たり複合体5.3μgと同等である約25nMスケールでLT-B-GFP 五量体複合体の発現を示す、植物体pL2003を選択した(図5)。pL2003を、さらに大量塊茎生産のための温室で育てた。塊茎を、収穫し、皮をむき、凍結乾燥した。凍結乾燥pL2003材料、または20%のpL2003凍結乾燥塊茎材料を含む魚餌のどちらかにより、魚を免疫化した。
【0036】
免疫化実験ニジマス
ニジマス(平均重量84.9g)を、経口または肛門挿管によって、乾燥重量1g当たりLT-B-GFP約25μgを含む選択された凍結乾燥pL2003均質化ジャガイモ塊茎材料を用いて免疫化した。免疫化の前に、魚に24時間餌を与えなかった。LT-B-GFPを発現するジャガイモ塊茎材料を、ペッソルを用いて100μmメッシュを通過させ、その後LT-B-GFP 5μg/mlに近似する200mg DW/mlの最終濃度にまでPBS(0.15M, pH 7.2)に懸濁した。ベンゾカイン(50mg/l)に曝露することによって、マスに麻酔をかけ、マスを経口により200μl(有効濃度1μg LT-B-GFP)で、または肛門に1ml シリンジに取り付けたプラスチック管の短い区画によって100μlの再懸濁した塊茎材料(有効濃度500ng LT-B-GFP)で免疫化した。1送達経路当たり15匹の魚からなるグループおよび魚を、アルシアンブルー染色により皮下に印をつけることによって識別した。その後、15l/minで直径1m、体積340lの貯蔵タンクに魚を戻した。実験期間の温度は、8.7〜14.2℃までの範囲であった。魚を挿管の6週間後および8週間後に出血させた。血液を採取し、一晩4℃で凝血させ、その後3500rpm、15分間遠心分離し、血清を採取し、一定分量に分け、アッセイされるまで-80℃で凍結した。大腸菌で発現され、精製された、精製組換えGFPを、被覆のために用いた。96ウェルELISAプレート(Immulon 4, Dynex)を、大腸菌発現性GFP(0.05M 炭酸水素塩緩衝液pH9.6中の10μg/ml 50μl)で被覆し、一晩4℃に置いた。プレートを、0.05% Tween 20含有PBS(PBST, 2minで3回)で洗浄し、PBST(100μl/ウェル)中の5% 乾燥脱脂スキムミルクで2時間37℃でブロッキングした。プレートを、前と同じように洗浄し、-20℃で凍結した。血清は、以下のように試験した。90μlの1% ウシ血清アルブミン含有PBSを各ウェルに添加した。10μlの被験魚血清を、カラム1および7に添加し、プレートの端から端までそれぞれカラム6および12に二重に希釈し、1:10〜1:320の希釈範囲を示した。血清は、前と同じように洗浄前に、2時間室温でインキュベートした。続いて、50μlのI-14(マスIgに対してモノクローナル, 1:2 PBST)を、添加し、1時間37℃でインキュベートした。プレートを、前と同じように洗浄し、50μlのヤギ抗マウス西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)結合体(Sigma)を添加し(1:70,000 PBST)、1時間37℃でインキュベートした。その後、プレートを2min PBSTで2回、次に2min PBSで1回洗浄し、100μlのテトラメチルベンジジン(TMB)基質(Sigma)を添加し、プレートを30分間暗所でインキューベートした。その後、プレートを、655nmで読みとり、吸光度を記録した。各プレートは、被験血清、既知の陽性血清(フロイド完全アジュバント中GFPで腹腔内注射した魚由来)、および陰性血清からなっていた。すべてのプレートにおいて、陽性血清は、陰性血清より約10倍高い吸光率を示した。吸光度が陰性対照血清の2倍の吸光度より高い場合、被験血清は、それぞれの希釈において陽性であると考えられた。従って、引用力価は、陰性対照血清の力価の2倍であった最後の力価である。結果を図7にまとめる。図7は、経口免疫化の6週間後(パネルA)、1:10希釈においてすべての魚がバックグラウンドより大きい免疫応答を有し、1:320希釈においても魚の半分を超えるものが、バックグラウンドより大きい免疫応答を有することを示す。抗体応答は、経口免疫化の8週間後において持続したが(パネルB)、肛門挿管すると(パネルCおよびD)抗体応答は、結局はわずかに減少する(8週間,パネルD、免疫化6週間後,パネルCと比較)。
【0037】
実施例4 コイにおけるSVC用の経口ワクチン
遺伝子構築物および形質転換
形質転換植物体における組換えSVCV Gタンパク質合成を可能にするために、遺伝子構築物pLANTIGEN25を、作製し、ジャガイモに形質転換した。PLANTIGEN25を以下のように作製した。特有のXboIおよびBamHI部位を、SVCV Gの成熟Gタンパク質コード配列のN末端およびC末端に、増幅のための校正Pfuポリメラーゼを用いた最適条件下のPCRによる、オリゴヌクレオチドSVCVG1、
およびオリゴヌクレオチドSVCVG2
を用いたpcDNA3-svcG-539の増幅によって導入した。分泌のためのシグナルペプチド(Van Engelen et al., 1994)を含むNcoI/XhoI断片を、pLANTIGEN4のNcoI/BamHI部位(Lauterslager et al., 2001;図1)に得られたNcoI/BamHI断片をクローニングすることによって、それぞれのXhoI/BamHI消化PCR断片に連結し、パタチンクラスIプロモーターとノパリン合成酵素ターミネーターとの制御下に置き、pLANTIGEN25を作製した(図8)。後者は、記載(Lauterslager et al., 2001)のように、ジャガイモに形質転換し、47個体の形質転換体を再生し、温室で成熟するまで育てた。さらに、LT-BおよびSVCVのGタンパク質の遺伝子融合体を、以下のように構築した。特有のNcoIおよびSalI部位を、最適条件下で校正Pfuポリメラーゼを用いた、オリゴヌクレオチドLTBsal、
およびオリゴヌクレオチドLTBnco、
によるpLANTIGEN4の増幅によって、LT-Bについての合成遺伝子に導入した。LT-Bについての合成遺伝子を含むBpiI/SalI消化PCR断片を、NcoI/SalI消化バイナリーベクターpLANTIGEN25にクローニングし、得られたプラスミドをSalIおよびBamHIで切断した。SVCV Gのための配列を含むpLANTIGEN25のXhoI/BamHI断片を、LT-B-SVCV G融合体を含むpLANTIGEN27を生じる前者の消化されたプラスミドに、連結した(図9)。ソラナム・ツバロサム(Solanum tuberosum)デジレー を、アグロバクテキウム・チュメファシェンスによる形質転換を用いて、pLANTIGEN4およびpLANTIGEN27(同時形質転換)の1:1混合物で形質転換した。21個体の独立した形質転換植物体を、pLANTIGEN(4+27)について作製し、温室で成熟するまで育てた。
【0038】
発現解析
pLANTIGEN25塊茎の塊茎抽出物を、すべてがSVCV CZ539株に対する、かつGタンパク質に特異的であるモノクローナル抗体 G3C7、4C12、2C1/3H1、2C1/3G2、2C1/3C9、2C1/A10/2G2、2C1/A10/1H11および2C1/A10/1D12の様々な組み合わせを用いた、標準的なELISAまたはサンドイッチELISAによって、SVCV Gタンパク質の存在について解析した。47植物体のうち、SVCV Gの発現を示すものは1つとしてなかった。pL(4+27)塊茎抽出物の解析を、最初にGM1-ELISAによって行った。結果を、図10にまとめ、この結果により、多くの形質転換植物体が、最大4μg/g FW塊茎のGM1結合LT-B5 五量体の発現を示すことが示される。SVCV Gタンパク質の存在を解析するために、VD12(LT-B5特異的)との結合複合体の検出がここでSVCV Gに特異的なモノクローナル抗体2C1/3C9によりなされる改変GM1 ELISAをおこなった。pL(4+27)植物体由来の抽出物は、この改変GM1 ELISAにおいて陽性に反応したが、この抽出物は、図10の矢印により示される。見ることができるように、GM1結合LT-B5に陽性であったほとんどの植物体もまた、複合体におけるSVCV Gタンパク質の存在を示す2C1/3C9と反応した。
【0039】
免疫原性および抗体投与実験
pL(4+27)-11、15、17および23を含む選択される植物体の抽出物と凍結乾燥させた塊茎材料を、コイを用いる結合および取り込み実験、ならびにワクチン投与試験および抗原投与実験に用いる。pL(4+27)-11、15、17および23を含む凍結乾燥塊茎材料の混合物を、実施例5に記載のように、塊茎材料を最終濃度20%まで標準的な魚の餌に組み込んだ。得られた餌は、記載のようにコイの経口免疫化に用いる。0.2mlのSVCVウイルス株539の腹腔内注射によって、ワクチン投与の1、12、および21週間後に、10℃で育てたコイを抗原投与する。
【0040】
実施例5 コイの経口免疫化
遺伝子構築物および形質転換
ジャガイモ塊茎および対照PAT4におけるLTB発現のためのpLANTIGEN4合成植物体最適化遺伝子の設計ならびに構築は、以前に説明された(Lauterslager et al., 2001)。PR8 HA-1(Hackett et al., 1985)の111〜120アミノ酸に相当する2つの合成インフルエンザウイルス赤血球凝集素(HA)重鎖デカペプチド配列を、イヌパルボウイルス(CPV;Langeveld et al., 1994)のウイルスVP2タンパク質のアミノ末端領域をコードする2つの合成配列とともに、pLANTIGEN4の特有のBamHI部位に、クローニングすることによって、pLANTIGEN15を構築した。4つの配列のそれぞれは、間隔をあけるための2つのアラニン残基(LT-B-iipp)によってそれらが引き離されるように、クローニングされた。インフレームで緑色蛍光タンパク質(GFP)のための配列を、実施例3に記載のように、pLANTIGEN4の特有のBamHI部位にクローニングすることによって、pLANTIGEN20を構築した。ソラナム・ツバロサム栽培種デジレーの形質転換、形質転換植物体の成長、および塊茎形成(tuberisation)は、記載されるものと同様である(Lauterslager et al., 2001)。
【0041】
塊茎タンパク質および魚餌の調製
pLANTIGEN15(pL1516)についての1つの形質転換株は、GM1-ELISAによって推定されるように、良好な塊茎の環境とrecLT-B生成との組み合わせによって、選択された。LT-B-GFP融合タンパク質を内部に持つpL2003の同定および解析を、実施例3に記載した。空ベクターカセットを含むPAT4対照株を、先に記載した(Lauterslager et al., 2001)。すべてのpL1516、PAT4およびpL2003を種塊茎により増加させ、大量の塊茎生産のために温室で育てた。大量の塊茎は、収穫され、皮を剥かれ、切片に薄切りされ、凍結乾燥され、かつモーターとペッソルを用いて粉砕することによって、均質化された。粉砕および均質化された材料は、コイによる免疫化実験において、および経口免疫化のための魚の餌を製造するために用いられた。魚の餌ペレットへの組み込みは、20%(最終濃度)のpL2003均質化凍結乾燥ジャガイモ塊茎材料(乾燥重量塊茎1g当たりLT-B-GFP 約21μg)を通常の魚の餌組成物と混合させることによって、ペレットを作製する前になされた。ジャガイモ材料を含む得られた混合物は、ペレットに変え、標準的な方法に従って魚油で被覆された。餌を、使用するまで室温で乾燥させた。餌中のLT-B-GFPの最終濃度は、4.3μg/餌gと見積もられた。
【0042】
コイの結合および取り込み実験
重量が約20gである6ヶ月齢のコイ(シプリナス・カルピオ L.)は、再循環性の、濾過されたおよびUV滅菌された水において3℃で育てられた。魚を、それらの体重の2.5%の1日一定量で標準的な餌ペレット(Skretting/Nutreco, Putten, The Netherlands)で給餌した。挿管の24時間前に、または餌による免疫化実験において、魚を絶食させた。pL2003均質化凍結乾燥塊茎材料または対照PAT4を、約0.4μg LT-B-GFP/100μl懸濁液(pL2003懸濁液)にまでPBSで再懸濁した。大腸菌抽出物から精製されたrecGFPを、最終濃度13.5μg/100μlにまでPBSで希釈した。3匹の魚のグループは、100μlのrecGFP懸濁液(13.5μg)、pL2003懸濁液(約0.4μg LT-B-GFP)またはPAT4で肛門挿管された。挿管の6時間後に、魚を過量のトリカインメタンスルホネート(TMS, Crescent Research Chemicals, AZ)によって殺し、末端消化器官を除去し、液体窒素中でポキンとおれるように(snap)凍結させ、解析まで-80℃で保存した。消化器官組織を、クライオスタット(Reichert-jung 2800 Frigocut N, Nussloch, Germany)を用いて切断し、組織切片を、ヨウ化プロピジウムを含むvectashield(Vector Laboratories Inc., Burlingame, CA)に包埋した。レーザー走査顕微鏡法(Zeiss LSM-510, Jena, Germany)による消化器官切片解析により、LT-B-GFP(pL2003材料)がrecGFPと比較してより効率的に取り込まれることが明らかに示された(図11)。GFPは、腸の内側の細胞の中枢神経系核上にある液胞において、また腸の内側の細胞から大きいマクロファージ様細胞への輸送を示唆する上皮の下にあるマクロファージ様細胞においても、検出できた(図11B)。GFPのみで挿管された魚の腸の内側の細胞において、GFPは少ししか検出できなかったが、シグナルは、LT-B-GFP処理された魚と比較して小さい強度であり、実質的にはマクロファージ様細胞においてGFPは、検出できなかった(図11A)。対照ジャガイモPAT4材料で挿管されたコイの消化器官において、シグナルは検出されず、これは、適用されたGFPの濃度がジャガイモ由来のLT-B-GFPより高かったが、その取り込みがはるかに効率的でないことを示し、LT-Bの相加効果を示唆する。
【0043】
コイの免疫化
LT-B-iipp(pL1516;LT-B-iipp 約5.3μg/g FW)およびPAT4を発現するジャガイモ塊茎を、凍結乾燥、粉砕、均質化、ならびにPBSで再懸濁した。凍結乾燥したpL1516材料中のLT-B-iippの推定量は、21.2μg/g DWである。魚(1グループ当たり3匹)を、300μlのジャガイモpL1516懸濁液(約3μg LT-B-iipp)を用いて挿管した。魚の1グループを、挿管の3週間後に殺し、血液を一次応答測定のために採取した。魚の第2グループを、8週間後に肛門により追加免疫し(二次応答)、追加免疫の2週間後に殺し、その際血液試料を採取した。血液試料を、18時間4℃で凝固させ、遠心分離し(10000xg, 5min. RT)、血清を採取した。
【0044】
免疫応答を以下のように測定した。Maxisorb ELISAプレート(Nunc, Roskilde, Denmark)を、18時間4℃で100mlの4mg/ml抗パルボウイルスペプチドモノクローナル抗体(3C9, Ingenaza, Madrid, Spain)により被覆し、次に2時間室温で0.5% BSA(Roche, Mannheim, Germany)によりブロッキングした。続いて、イヌパルボウイルス(CPV;Langeveld et al., 1994)のウイルスVP2タンパク質のアミノ末端領域に相当する合成配列を添加した。血清を添加し、連続的に希釈した。検出は、コイ血清Igを認識する(WCI-12)ビオチン結合モノクローナル抗体によるものであった。試料は、0.5% BSAおよび0.1% Tween 20(Merck)含有PBSで希釈し、結合したWCI-12を、ストレプトアビジン結合HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands, 希釈:1:5,000)およびTMBペルオキシダーゼ基質(KirkegaardおよびPerry, Gaithersburg, MD)を用いて視覚化した。基質を最長20分間インキュベートし、続いてODを450nmで測定した。parvo抗体価(pL1516免疫化魚)をOD 0.1において試料の希釈によって決定した。parvo抗体応答を、一次血清または二次血清の両方においてELISAにより検出することができ、結果を図12にまとめている。図12をpL1516(LT-B-iipp)処理グループにおける魚の血清中の測定された力価が、対照グループと比較して平均してより高いことが示され、これは肛門挿管すると、抗原特異的な全身体液性免疫応答が誘導されることを示す。
【0045】
その他の実験において、コイを、連続5日間、pL2003含有餌およびPAT4によりそれらの体重の6%の1日一定量で給餌した。最後の免疫化の4週間後に、血清を分離し、上記のように処理した(一次応答)。最後の免疫化の8週間後に、魚を、それらの体重の4%の一定量で1日給餌することによって追加免疫した。追加免疫の4週間後に、上記のように、血清を分離し、処理した。陽性対照として、コイを、腹腔内注射によって不完全フロイントアジュバント中の50μgの精製recGFPにより初回刺激、および追加免疫の両方を行った。抗GFP免疫応答の検出のために、Maxisorb ELISAプレート(Nunc)を、18時間4℃で100mlの0.5mg/ml抗GFP抗体(ab1218, Abcam, Cambridge, UK)により被覆し、その後0.5% BSA(Roche)により2時間室温でブロッキングした。続いて、100μl recGFP(1mg/ml)を添加し、血清を連続的希釈において添加した。抗GFP特異的血清抗体を、コイ血清IG(WCI-12)を認識するビオチン結合mAbを用いて検出した。試料を、0.5% BSAおよび0.1% Tween 20(Merck)含有PBSで希釈した。最後に、WCI-12を、ストレプトアビジン結合HRP(Sanquin, Amsterdam, The Netherlands, 希釈:1:5,000)およびTMBペルオキダーゼ基質(KirkegaardおよびPerry, Gaithersburg, MD)を用いて検出した。基質を最長20分間インキュベートし、続いてODを450nmにおいて測定した。GFP抗体価を、OD 0.05(一次応答)またはOD 0.2(二次応答)において試料の希釈によって決定した。結果は、図13にまとめられ、餌ペレットを含むpL2003により給餌されたコイの二次免疫血清において、GFP抗体価の上昇が検出されたが(図13)、対照ペレットではGFP特異的体液性免疫応答を引き起こされなかったことを明らかに示す。これらのデータにより、LT-B-GFP経口投与が全身性体液性免疫応答を引き起こすことが示される。
【0046】
参照文献
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】pLANTIGEN4に存在するようなLT-Bについての合成遺伝子の遺伝子配列。イタリック体は、クローニングに使用されたEcoRI、HpaI、BamHIおよびSmaI部位である。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図2】pLANTIGEN24に存在するようなLT-BおよびVHSV Gについての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図3】すべてのpLANTIGEN24形質転換塊茎植物体抽出物についての、GM1 ELISA(薄い色の棒)およびK1509ポリクローナル抗体VHSV Gに対する(濃い色の棒)を用いた改変GM1 ELISAの結果。パネルAは、植物体1〜23についての結果を示す。パネルBは、植物体24〜50についての結果を示す。5μgのジャガイモ塊茎全抽出物をGM1プレートに添加した。LT-B5の五量体(Ltb5)の存在についてVD12(Lauterslager et al., 2001)を用いた、およびVHSV Gの存在についてK1509を用いた検出であった。
【図4】pLANTIGEN20に存在するようなLT-BおよびGFP配列についての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図5】選択されたpLANTIGEN20(LT-B-GFP)形質転換塊茎植物体抽出物についてのGM1 ELISAの結果。LT-B5の五量体の存在についてVD12(Lauterslager et al., 2001)を用いた検出であった。PAT4、陰性対照。濃度をnMで示す。
【図6】偽天然条件下のpLANTIGEN20(LT-B-GFP)形質転換塊茎抽出物についてのウェスタンブロット解析。レーンの上の数字は、個々の植物体番号(レーン3〜16)を示す。レーン2、pLANTIGEN4(LT-B)陽性対照。cont.は、PAT4(空ベクター)陰性対照の抽出物を指す。ブロットは、LT-Bの五量体複合体を検出するために、モノクローナル抗体VD12を用いて調べた。上部の矢印は、LT-B-GFP複合体についての高分子量複合体の位置を示すが、下方の矢印は、約60kDaのLT-B複合体を示す。
【図7】ジャガイモ塊茎で生成されるLT-B-GFPタンパク質複合体を用いるマスの経口(パネルAとB)および肛門(パネルCとD)免疫化実験の結果。免疫化の6週間後(パネルAとC)および8週間後(パネルBとD)で血清を採取した。血清のさまざまな希釈物(1:10〜1:320)を、GFP被覆プレート、マウス抗マス抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウス抗体を用いたELISA法によって、抗GFP抗体の存在についてアッセイした。655nmにおける吸光度は、血清中のGFPと抗GFP抗体との間で形成される複合体の量を反映する(詳細は実施例3を参照のこと)。吸光度が2倍の陰性対照血清の吸光度(点線により示される)より大きい場合、被験血清は陽性であると考えられる。
【図8】pLANTIGEN25に存在するようなSVCV-Gの遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図9】融合構築物pLANTIGEN27に存在するようなLT-Bおよび配列SVCV-Gについての融合合成遺伝子の遺伝子配列。推定翻訳は、1文字アミノ酸略号で示される。
【図10】pL4(LT-Bをコード)およびpL27(LT-B-SVCV-G融合タンパク質をコード)の混合物で形質転換された形質転換植物体の塊茎抽出物における機能的LT-B五量体の解析。五量体形成をGM1 ELISAによって決定した。五量体複合体におけるSVCV Gタンパク質の存在を解析するために、VD12(LT-B5に特異的である)との結合複合体の検出がここでSVCV G特異的モノクローナル抗体2C1/3C9を用いて行われる、改変GM1 ELISAを行った。この改変GM1 ELISAにおいて陽性反応した塊茎試料を矢印を用いて示す。
【図11】LTBは、コイ消化器官粘膜におけるGFPの良好な取り込みを促進する。ジャガイモ懸濁液を含む(パネルA)GFP、(パネルB)LTB-GFP、および(パネルC)対照ジャガイモ懸濁液とともにインキュベートし、6時間インキュベートしたコイ消化管の選択。LTB-GFPインキュベートした消化管中の大きいマクロファージ様細胞に留意のこと(矢じり)。
【図12】肛門挿管されると、合成パルボウイルスペプチド依存性体液性免疫応答が誘導される。パルボウイルスペプチド特異的抗体応答を、LTB-p(LTB-パルボウイルスペプチド)で肛門により免疫化された魚の1次および2次の免疫血清において測定した。パルボウイルスペプチド特異的抗体応答を、ELISAにより測定した。3匹の魚についての平均抗体価±SEMを示す。
【図13】pL20(LTB-GFP)処理餌ペレットによる経口免疫化により、抗GFP応答が生じる。コイは、pL20もしくはPAT4(空ベクター対照)混合餌ペレットまたはpL20もしくはPAT4被覆餌ペレットによる給餌によって経口免疫化された。(A)1次の免疫血清におけるおよび(B)2次の免疫血清における抗GFP応答を示す。抗GFP応答を、ELISAにより測定した。IFAにおけるGFPにより腹腔内免疫化された魚の血清中の、GFP i.p.:抗GFP応答。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
宿主細胞に、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合される対象となるタンパク質を含む融合タンパク質をコードする組換え核酸構築物を与える段階を含み、かつ対象となる該タンパク質が、該宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を持つ生物起源である、
宿主細胞における対象となるタンパク質の発現方法。
【請求項2】
Bサブユニットが、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)CT毒素(CT-B)のまたは大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性LTエンテロトキシン(LT-B)のB-サブユニットである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
宿主細胞が可食宿主である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
宿主細胞が、植物宿主細胞であり、好ましくは塊茎のある植物の宿主細胞である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
対象となるタンパク質が抗原である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
対象となるタンパク質が、魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物が、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(striped jack nervous necrosis virus)(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス (Pancreas Disease virus)(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス(infectious salmon anaemia virus) (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス(Flexibacter columnaris)、エドワージアラ・イクタルリ(Edwardsialla ictaluri)、E. タルダ(E. tarda)、ピスキリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、ビブリオ属(Vibrio)種およびアエロモナス属(Aeromonas)種、エルシニア・ルケリ(Yersinia ruckeri)、パスツレラ・ピシシダ(Pasturella piscicida)、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラム(Renibacterium salmoninarum)からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
対象となる抗原が、IPNVのVP2タンパク質、VHSVの糖タンパク質(VHSV-G)、およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Bサブユニットが対象となるタンパク質のN末端に融合される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の方法によって入手可能である、融合タンパク質。
【請求項11】
請求項10記載の融合タンパク質を含む、タンパク質複合体。
【請求項12】
請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体を含む、ワクチン組成物。
【請求項13】
魚の経口ワクチン組成物である、請求項12記載のワクチン組成物。
【請求項14】
魚に対する請求項13記載のワクチン組成物を経口投与する段階を含む、魚を免疫化する方法。
【請求項15】
請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体を含む、魚の餌。
【請求項16】
魚の経口ワクチンまたは魚の餌を製造するための、請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体の使用。
【請求項17】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源である対象となるタンパク質を含み、微生物毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合され、好ましくはビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT-B)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のB-サブユニットに融合される融合タンパク質をコードする、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法における使用のための核酸構築物。
【請求項18】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物が、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV)、フレキバクター・カラムナリス、エドワージアラ・イクタルリ、E. タルダ、ピスキリケッチア・サルモニス、ビブリオ属種およびアエロモナス属種、エルシニア・ルケリ、パスツレラ・ピシシダ、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラムからなる群より選択される、請求項17記載の核酸構築物。
【請求項19】
対象となるタンパク質が、IPNVのVP2タンパク質、VHSVの糖タンパク質(VHSV-G)、およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される、請求項18記載の核酸構築物。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項記載の核酸構築物を含む、好ましくは植物発現ベクターである発現ベクター。
【請求項1】
宿主細胞に、細菌毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合される対象となるタンパク質を含む融合タンパク質をコードする組換え核酸構築物を与える段階を含み、かつ対象となる該タンパク質が、該宿主細胞の最適増殖温度より低い最適増殖温度を持つ生物起源である、
宿主細胞における対象となるタンパク質の発現方法。
【請求項2】
Bサブユニットが、ビブリオ・コレラ(Vibrio cholerae)CT毒素(CT-B)のまたは大腸菌(Escherichia coli)熱不安定性LTエンテロトキシン(LT-B)のB-サブユニットである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
宿主細胞が可食宿主である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
宿主細胞が、植物宿主細胞であり、好ましくは塊茎のある植物の宿主細胞である、請求項1〜3のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
対象となるタンパク質が抗原である、請求項1〜4のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
対象となるタンパク質が、魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源である、請求項1〜5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物が、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(striped jack nervous necrosis virus)(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス (Pancreas Disease virus)(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス(infectious salmon anaemia virus) (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV) 、フレキバクター・カラムナリス(Flexibacter columnaris)、エドワージアラ・イクタルリ(Edwardsialla ictaluri)、E. タルダ(E. tarda)、ピスキリケッチア・サルモニス(Piscirickettsia salmonis)、ビブリオ属(Vibrio)種およびアエロモナス属(Aeromonas)種、エルシニア・ルケリ(Yersinia ruckeri)、パスツレラ・ピシシダ(Pasturella piscicida)、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラム(Renibacterium salmoninarum)からなる群より選択される、請求項6記載の方法。
【請求項8】
対象となる抗原が、IPNVのVP2タンパク質、VHSVの糖タンパク質(VHSV-G)、およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される、請求項7記載の方法。
【請求項9】
Bサブユニットが対象となるタンパク質のN末端に融合される、請求項1〜8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項記載の方法によって入手可能である、融合タンパク質。
【請求項11】
請求項10記載の融合タンパク質を含む、タンパク質複合体。
【請求項12】
請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体を含む、ワクチン組成物。
【請求項13】
魚の経口ワクチン組成物である、請求項12記載のワクチン組成物。
【請求項14】
魚に対する請求項13記載のワクチン組成物を経口投与する段階を含む、魚を免疫化する方法。
【請求項15】
請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体を含む、魚の餌。
【請求項16】
魚の経口ワクチンまたは魚の餌を製造するための、請求項10記載の融合タンパク質または請求項11記載のタンパク質複合体の使用。
【請求項17】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物起源である対象となるタンパク質を含み、微生物毒素のAB5クラスメンバーのBサブユニットに融合され、好ましくはビブリオ・コレラのコレラ毒素(CT-B)または大腸菌熱不安定性エンテロトキシン(LT-B)のB-サブユニットに融合される融合タンパク質をコードする、請求項1〜9のいずれか一項記載の方法における使用のための核酸構築物。
【請求項18】
魚に病原性であるウイルスまたは微生物が、伝染性膵臓壊死症ウイルス(IPNV)、シマアジ神経壊死症原因ウイルス(SJNNV)、伝染性造血器壊死症ウイルス(IHNV)、ウイルス性出血性敗血症ウイルス(VHSV)、膵臓病ウイルス(SPDV)、伝染性サケ貧血症ウイルス (ISAV)、コイの春ウイルス血症ウイルス(SVCV)、コイヘルペスウイルス(KHV)、フレキバクター・カラムナリス、エドワージアラ・イクタルリ、E. タルダ、ピスキリケッチア・サルモニス、ビブリオ属種およびアエロモナス属種、エルシニア・ルケリ、パスツレラ・ピシシダ、ならびにレニバクテイウム・サーモニナラムからなる群より選択される、請求項17記載の核酸構築物。
【請求項19】
対象となるタンパク質が、IPNVのVP2タンパク質、VHSVの糖タンパク質(VHSV-G)、およびSVCVの糖タンパク質(SVCV-G)からなる群より選択される、請求項18記載の核酸構築物。
【請求項20】
請求項17〜19のいずれか一項記載の核酸構築物を含む、好ましくは植物発現ベクターである発現ベクター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2008−531478(P2008−531478A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−553057(P2007−553057)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000044
【国際公開番号】WO2006/080842
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507251239)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際出願番号】PCT/NL2006/000044
【国際公開番号】WO2006/080842
【国際公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【出願人】(507251239)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]