魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法
【課題】新なた魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法を提供することに在る。
【解決手段】(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。
【解決手段】(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法に関する。更に詳細には、マタイレジノール、セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を用いた魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉などの食品の品質に大きく影響を与える褐変などの酸化的劣化は主に2つに分けられる。その1つは、光増感物や遷移金属、成分酸化物の存在がきっかけとなるラジカル種を経る、いわゆる自動酸化過程による化学的な酸化劣化である。もう1つは、魚肉などの食品がすでに有する酸化酵素が何らかの外部刺激により急に働くことによる酵素的酸化である。化学的酸化は、食品のみならず、空気中に存在するすべての物質に起き得るものであるが、酵素的酸化は、生体系や生体由来の物質においてのみ起きる。生体系物質である食品においては、特に生鮮食品の加工時に起きることが知られている。食品の酸化劣化を防ぐことは、腐敗の防止とともに、その品質を維持するために重要であり、その目的で天然の抗酸化性物質が利用される。天然の抗酸化性物質を魚肉の褐変防止に利用したものとしては、例えば、抗酸化剤としてポリフェノールを用いた魚肉の赤変抑制剤(特許文献1)やアスコルビン酸類を赤身魚肉に添加して退色を防止する方法(特許文献2、特許文献3)などが知られている。
また、ハマチなどの鮮魚の血合い肉の褐変は、肉に含まれるミオグロビンがメトミオグロビンに変化するものといわれている(非特許文献1)。従って、その変化を防ぐ物質を発見できればその目的の一部を達成できることになる。そのような試みとしては、例えば、酸化カルシウムや水酸化カルシウムによりミオグロビンの変化を抑制して赤身魚肉加工品の変色を防止する方法(特許文献4)、赤身食肉の表面層のpHを高くして赤身食肉の色調を安定化させる方法(特許文献5)などが提案されている。
以上に挙げた従来の方法はいずれも、鮮魚などの魚肉の褐変を防止する方法として十分に満足できるものではない。
【0003】
一方、リグナンは食用植物等に広く存在し、化学構造的に多様であり抗酸化性が期待できるフェノール部位を有することも多いことから、実用的な抗酸化性物質としても期待できる。例えば、ゴマのリグナンは、古くから良く研究され近年抗酸化的健康機能性物質としての応用もされている(非特許文献2)。また、リグナンの一種である(−)−セコイソラリシノールを抗酸化剤あるいはフリーラジカル消去剤として用いた医薬品も提案されている(特許文献6)。しかしながら、リグナンを魚肉の褐変防止に用いることは、これまでには全く試みられていない。
【特許文献1】特開2007−195503号公報
【特許文献2】特開2003−92982号公報
【特許文献3】特開平5−284902号公報
【特許文献4】特開2006−246865号公報
【特許文献5】特開平7−213253号公報
【特許文献6】特表2005−501886号公報
【非特許文献1】佐野吉彦,橋本周久,日水誌,24,519−523(1958)
【非特許文献2】Fukuda,Y.,Osawa,T.,Namiki,M. and Ozaki,T. Agric. Biol. Chem.,49,301 (1985).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、鮮魚などの魚肉の褐変を有効に防止することのできる褐変防止剤および褐変防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特に、ハマチなどの鮮魚の血合い肉の褐変を有効に防止する褐変防止剤および褐変防止方法を見出すことを目的として鋭意研究した結果、抗酸化性物質のなかでも特にリグナン類を選択し、リグナン類を抗酸化剤として、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、リグナン類を有効成分として含有する魚肉の褐変防止剤に関する。
更に、本発明は、リグナン類を魚肉に適用することを特徴とする魚肉の褐変防止方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
マタイレジノールやセコイソラリシレジノール、より好ましくは、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。また、同様のリグナン類を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えて養殖した魚の加工後の血合いの褐変を有効に防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の褐変防止剤および褐変防止方法は、リグナン類を用いるものである。ここで用いるリグナン類は、高等植物、特に木本植物の材に多く分布するものであり、ベンゼン環(C6)とベンゼン環に結合した3つの炭素鎖(C3)が一つの単位となっており、このC6−C3単位が2単位または3単位結合した化合物を意味する。本発明では、これらのリグナン類のうちで、酸化されていないベンジル基を含む高い抗酸化活性を有するリグナン類が好ましく、特に、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールが好ましく、より好ましくは、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールである。これらのリグナン類は単品で用いることもでき、また2種以上を混合して用いてもよい。これらのリグナン類は、公知の物質であり、高等植物の組織から公知の方法(Journal of Organic Chemistry,27巻,pp322−323,1962年、及び Tetrahedoron,7巻,pp262−269(1959)など)で抽出してもよく、また、公知の化学的合成(Journal of Natural Products,68巻,pp1459−1470,2005年、及び Biosciece Biotechnology,and Biochemistry,71巻,pp2283−2290,2007年など)によって合成してもよい。以後に記載する製造例における化学的合成方法によっても合成できる。
【0008】
本発明の褐変防止剤は、上記したリグナン類を有効成分として含むものであり、リグナン類のみから構成されていてもよく、あるいは、リグナン類と、通常使用される賦形剤とから構成されていてもよい。賦形剤としては、水、水と有機溶媒との混合溶液、グリセリン、脂肪油、ソルビトールなどの液状の賦形剤;乳糖、ショ糖、コーンスターチ、タピオカスターチ、ゼラチン、寒天、馬鈴薯デンプンなどの固形の賦形剤が挙げられる。なかでも、水、水とエタノールなどアルコール等の有機溶媒との混合溶媒が好ましく、特に、水とアルコール、特に、エタノールとの混合溶媒が好ましい。本発明の褐変防止剤における有効成分であるリグナン類の量は、用いるリグナン類の種類、対象とする魚肉、褐変防止剤の形態などによって変動しうるものであり、褐変防止効果を有効に発揮できる限りにおいて、特に制限は無い。
本発明の褐変防止剤においては、従来公知の他の褐変防止剤、例えば、クエン酸、アスコルビン酸などの味の悪化を起こさない範囲で少量添加してもよい。更には、通常使用される調味料、香辛料、保存剤などを適宜添加してもよい。
【0009】
本発明においては、リグナン類を魚肉に適用することによって、魚肉の褐変を有効に防止することができる。対象となる魚としては、例えば、ハマチ、マグロ、カツオ、イワシ、アジ、シマアジ、サンマ、カンパチ、サバ、ホッケ、エボダイ、キンメダイなどが挙げられる。
リグナン類を適用するには、例えば、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚肉に塗布、噴霧、添加する方法、あるいは、液状の形態にある褐変防止剤に魚肉を浸漬する方法などが挙げられる。また、魚肉を加工する際に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚肉に添加してもよく、練り込んでもよい。本発明では、特に、ハマチなどの鮮魚の切り身に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を塗布することにより、鮮魚切り身の血合いの褐変を有効に防止することができる。
このような方法によって魚肉の褐変防止する際のリグナン類の使用量は、対象とする魚、適用する際の形態などによって変動しうるが、通常は、魚肉100重量部に対して、0.5重量部から2重量部、好ましくは、1重量部から2重量である。
【0010】
本発明では、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚肉の褐変を防止することもできる。魚類用飼料としては、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を配合できる飼料であれば、通常使用されている飼料でよく、粉状、ペレット状、錬り餌などのいずれのものでもよい。飼料の組成としては、魚粉、糟糖類、ビタミン類、油脂などの通常使用されるものでよい。これらの魚類用飼料に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を配合して、魚に給餌し、魚を養殖して、養殖した魚からの魚肉やその加工品の褐変を有効に防止することができる。本発明では、特に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を、ハマチなどの魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を有効に防止することができる。
このように魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚肉の褐変を防止する際のリグナン類の使用量は、対象とする魚、適用する際の形態などによって変動しうるが、通常は、魚類用飼料100重量部に対して、1重量部から5重量部、好ましくは、4重量部から5重量である。
【0011】
以下、本発明を製造例、実施例などにより更に詳細に説明するが本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
製造例1
(−)−マタイレジノールおよび(−)−セコイソラリシレジノールの合成
以下に示す合成スキームにより、(−)−マタイレジノールおよび(−)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【化1】
【0012】
(1)L−グルタミン酸(100g)を水(270ml)と濃塩酸(140ml)に溶解した溶液を0〜5℃に冷却した後、これに亜硝酸ナトリウム(70g)を水(150ml)に溶解した溶液を加えた。加え終わった後、室温で16時間撹拌し、減圧下、40〜50℃で濃縮し、残渣を酢酸エチルを用いて濾過した。ろ液を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をエタノール(144ml)、ベンゼン(333ml)に溶解後、パラトルエンスルホン酸(2.22g)を加え、共沸脱水下に加熱還流を7時間行った。
次に、減圧濃縮後、残渣を水(200ml)とジクロロメタン(200ml)に溶解し、ジクロロメタン溶液を分離後、飽和の炭酸水素ナトリウム水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧濃縮後、残渣をエタノール(200ml)に溶解した。この溶液を20〜25℃に保ち、水素化ホウ素ナトリウム(12.5g)をエタノール(200ml)に溶解した溶液を加えた。室温で3時間撹拌後、10%塩酸水溶液を用いて酸性にした後減圧濃縮した。残渣をメタノールを用いて濾過した後、ろ液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/6)で精製し中間体1を22.7g得た。
(2)得られた中間体1をピリジン(50ml)に溶解した後、塩化トリチル(55.1g)をピリジン(100ml)に溶解した溶液を加え、60度で16時間撹拌した。次に、水を加え生じた結晶を濾過によって取り出し、酢酸エチルで再結晶し、中間体2を37.5g得た。一方、アセトニトリル(500ml)にヴァニリルアルコール(50g)、ベンジルクロリド(40.3ml)、炭酸カリウム(88g)、及びジベンゾ18クラウン6(1.26g)を加えた反応物を16時間加熱還流した後、濾過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた結晶をジイソプロピルエーテルで再結晶し中間体3を68.7g得た。
【0013】
(3)次に、ジクロロメタン(250ml)にN−ブロモスクシンイミド(45.5g)加え0℃に冷却した後、ジメチルスルフィド(22.1ml)を加えた。さらに中間体3(42g)のジクロロメタン(50ml)溶液を0℃で加えた後、0℃以下で1時間撹拌した。その後、氷水(500ml)に反応液を加え、ジクロロメタン溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧濃縮後、得られた結晶をジイソプロピルエーテルで再結晶し、中間体4を27.4g得た。
(4)次に、ジイソプロピルアミン(13.4ml)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を0℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(2.77M、ヘキサン溶液)を34.7ml加えた。さらに−70℃に冷却後、中間体2(30.0g)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を加え、さらに中間体4(25.8g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を加えた。−70℃で1時間撹拌後、飽和の塩化アンモニウム水溶液(300ml)を加えた。有機溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=4/1及び3/1)で精製し、中間体5(43.0g)を得た。
【0014】
(5)テトラヒドロフラン(50ml)に水素化リチウムアルミニウム(2.80g)を加えた後、0℃に冷却し、中間体5(43.0g)のテトラヒドロフラン(150ml)溶液を加えた。室温で30分撹拌後、飽和硫酸マグネシウム水溶液(50ml)と炭酸カリウム(0.1g)を加えさらに室温で30分撹拌した。その後、混合物を濾過し、ろ液を減圧濃縮後、残渣をエタノール(150ml)に溶解し濃塩酸を4.5ml加えた。1時間後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて中和した後、減圧濃縮し、残渣を水(200ml)とクロロホルム(200ml)に溶解した。クロロホルム溶液を分離後、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらに減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/3及び10%メタノール/クロロホルム)で精製し、中間体6(18.8g)を得た。
メタノール(300ml)に中間体6(18.8g)、過ヨウ素酸ナトリウム(14.0g)を入れ室温で1時間撹拌した。減圧濃縮後、残渣を水(200ml)とジクロロメタン(200ml)に溶解し、ジクロロメタン溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。
減圧濃縮後、残渣をジクロロメタン(200ml)に溶解し、これに、モレキュラーシーブ4A(0.5g)とピリジニウムクロロクロメート(14.0g)を加えて16時間撹拌した。
(6)次に、エーテルを300ml加えた後、濾過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、中間体7(14.8g)を得た。
次に、テトラヒドロフラン(20ml)にジイソプロピルアミン(8.71ml)を加えた後、0℃でn−ブチルリチウム(2.77M、ヘキサン溶液)を20.3ml加えた。さらに−70℃に冷却後、中間体7(14.7g)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液、さらに、中間体4(16g)のテトラヒドロフラン(15ml)を加えた。−70℃で30分撹拌後、飽和塩化アンモニウムを200ml加えた。有機溶液を分離後飽和食塩水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=4/1及び3/2)で精製し、中間体8(16.3g)を得た。
【0015】
(7)次に、酢酸エチル(20ml)に中間体8(6.60g)を溶かし、5%パラジウム/カーボン(3.3g)を加えた後、水素ガス下で室温で8時間撹拌した。濾過した後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1と1/3)で精製し、(−)−マタイレジノールを3.69g得た。
一方、テトラヒドロフラン(20ml)に水素化リチウムアルミニウム(0.72g)を加え0℃に冷却後、中間体8(9.57g)のテトラヒドロフラン(25ml)溶液を加えた。室温で30分撹拌後、アイスバスで冷却し飽和硫酸マグネシウム水溶液(30ml)と炭酸カリウム(0.1g)を加え室温で30分撹拌した。この混合物を濾過した後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)で精製し、中間体9(8.03g)を得た。次に、テトラヒドロフラン(20ml)に中間体9(7.53g)を溶かし、さらに5%パラジウム/カーボン(4.00g)を加えた。
さらに、室温、水素ガス下で6時間撹拌後濾過し、ろ液を減圧濃縮した。ろ液をシリカゲルカラム(酢酸エチル)で精製し、(−)−セコイソラリシレジノール(3.41g)を得た。
【0016】
製造例2
(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの合成
以下に示す合成スキームにより、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【化2】
【0017】
D−グルタミン酸から、製造例1と同様にして、上記合成スキームに従って、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【0018】
実施例1
(−)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
製造例1および2で合成した、高い抗酸化活性を有する(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果を調べた。
【0019】
(1)方法
50mlのエタノールと50mlの水を混ぜた溶液(50%エタノール溶液)98mlに2gの(−)−マタイレジノールを溶解して、2%(−)−マタイレジノールを調製した。この2%溶液を50ml取り、50%エタノール溶液50mlを加えて、1%(−)−マタイレジノール溶液を調製した。この1%溶液を50ml取り、50%エタノール溶液50mlを加えて、0.5%(−)−マタイレジノール溶液を調製した。
同様にして、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールの2%、1%および0.5%各溶液を調製した。
これらの各溶液を、鮮魚ハマチの血合い切り身に塗布し、塗布後一定期間経過毎に、色差計(製造元:東京光学機械株式会社、機器名:分光放射計、型番:SR−1)にて、X値(赤)、Y値(緑)およびZ値(青)の測定を行った。また、FUJIFILM製デジタルカメラFinePix F710で撮影し、画像データをAdobe Photoshop version 10.0.1(Apple MacPro)で測定して、R値(赤)を求めた。これらの値より、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果を調べた。
【0020】
(2)結果
(2)−1.(−)−マタイレジノールの褐変防止効果
(−)−マタイレジノールは、2%、1%および0.5%溶液においてX値に対する効果に大きな差がなく、特に12時間後での0%溶液との差が最も大きかった(図1)。これは、12時間後のX値の減少が少なかったためである。すなわち、褐変遅延効果がはっきりと現れていた。その後もX値は0%溶液よりも大きく、赤い色を保っていた。興味深い事に、Y値においても同様の事が24時間まで観察され、緑色を保つ効果も観察された(図2)。Z値については、0%溶液の場合と同じ推移を経たことから、青色を保つ効果はない事が分かった(図3)。R値の測定でも(−)−マタイレジノールの褐変遅延効果ははっきり現れていた(図4)。2%溶液、1%溶液間で大きな差は見られず、いずれも36時間後まで0%溶液よりも高い値を保った。0.5%溶液においても、0%溶液よりもR値の減少速度が弱く、褐変遅延効果が観察された。
【0021】
(2)−2.(+)−マタイレジノールの褐変防止効果
(+)−マタイレジノールでは、X、YおよびZ値のいずれにおいても、2%溶液区と1%溶液区において値の減少が抑制され、両者の間に効果の差が見られなかった。0.5%溶液区ではX、YおよびZ値の減少が0%溶液区とほぼ同様であった(図5、6および7)。しかし、(−)−マタイレジノールのよりもX値の減少が大きく、また、(−)−マタイレジノールでは褐変防止効果が2%溶液、1%溶液および0.5%溶液の間に差が見られなかった事から、(+)−マタイレジノールの褐変遅延効果は(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えられる。しかし、(−)−マタイレジノールはZ値の減少を抑制しなかったのに対して(+)−マタイレジノールの2%溶液および1%溶液区ではZ値の減少を抑制した。この事から、(−)−マタイレジノールと(+)−マタイレジノールの褐変防止メカニズムが異なる事も考えられる。(+)−マタイレジノールの2%溶液および1%溶液区ではR値の減少抑制も観察されたが、0.5%溶液区では0%溶液区との差が観察されなかった(図8)。2%溶液および1%溶液区の36時間後のR値と0%溶液区のR値との差は、(−)−マタイレジノールの36時間後のそれと比較して小さい事からも(−)−マタイレジノールの方が(+)−マタイレジノールよりも褐変遅延効果が高いと言える。鏡像異性体間で褐変遅延効果に差がある事が示された。
【0022】
(2)−3.(−)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
(−)−セコイソラリシレジノールの2%溶液区でやや褐変遅延効果が認められ、X値の減少が0%溶液区よりやや弱かった(図9)。明らかに(−)−マタイレジノールよりもX値の減少が大きい。同じ2%溶液区で弱いY値の減少の抑制効果が認められた(図10)が、Z値に対する効果ははっきりしなかった(図11)。R値の測定では、2%溶液および1%溶液区で比較的R値の減少が抑制されていた(図12)が、(−)−マタイレジノールでは2%溶液1%溶液区でR値の減少抑制効果に差がなかったのに比べ、(−)−セコイソラリシレジノールでは2%溶液および1%溶液区に差が認められた。この事から、(−)−セコイソラリシレジノールの褐変遅延効果は、(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えられる。
【0023】
(2)−4.(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
2%溶液及び1%溶液区において、X値の減少が0%溶液および0.5%溶液区に比べて小さかった。36時間後においては、2%溶液区が他の区よりも高いX値を示した(図13)。Y値においても同様の事が観察された(図14)。Z値については、すべての濃度で0%溶液区との差は認められなかった(図15)。(−)−セコイソラリシレジノール(図9)よりもX値の減少はゆるやかであった事から、(+)−セコイソラリシレジノールの方が褐変遅延効果が高いと考えられる。(−)−マタイレジノール(図1)と比較すると、(−)−マタイレジノールでは濃度間でX値の減少に差が見られなかったのに対して(+)−セコイソラリシレジノールでは濃度間にX値減少スピードに差が見られた事から(+)−セコイソラリシレジノールの褐変遅延効果は(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えら得る。(+)−セコイソラリシレジノールのR値の測定では、2%溶液および1%溶液では大きな差がなく減少が少なかったのに対して、0.5%溶液では0%溶液とR値の減少スピードが変わらなかった(図16)。これに対して、(−)−セコイソラリシレジノールでは2%溶液、1%溶液および0.5%溶液間でR値の減少に差が観察された事からも(+)−セコイソラリシレジノールの方が(−)−セコイソラリシレジノールよりも高い褐変遅延効果を有していると考えられる。マタイレジノールと同様に鏡像異性体間に褐変遅延効果の差が観察された。(+)−セコイソラリシレジノールのR値を(−)−マタイレジノールのR値(図4)と比較すると、(+)−セコイソラリシレジノールの0.5%溶液の減少スピードが0%溶液と変わらなかったのに対して(−)−マタイレジノールの0.5%溶液では0%溶液よりも減少スピードがゆるやかであった。この事から、(−)−マタイレジノールの方が高い褐変遅延効果を有していると言える。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上から明らかなとおり、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(−)−マタイレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図2】(−)−マタイレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図3】(−)−マタイレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図4】(−)−マタイレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図5】(+)−マタイレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図6】(+)−マタイレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図7】(+)−マタイレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図8】(+)−マタイレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図9】(−)−セコイソラリシノレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図10】(−)−セコイソラリシノレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図11】(−)−セコイソラリシノレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図12】(−)−セコイソラリシノレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図13】(+)−セコイソラリシノレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図14】(+)−セコイソラリシノレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図15】(+)−セコイソラリシノレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図16】(+)−セコイソラリシノレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法に関する。更に詳細には、マタイレジノール、セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を用いた魚肉の褐変防止剤および褐変防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉などの食品の品質に大きく影響を与える褐変などの酸化的劣化は主に2つに分けられる。その1つは、光増感物や遷移金属、成分酸化物の存在がきっかけとなるラジカル種を経る、いわゆる自動酸化過程による化学的な酸化劣化である。もう1つは、魚肉などの食品がすでに有する酸化酵素が何らかの外部刺激により急に働くことによる酵素的酸化である。化学的酸化は、食品のみならず、空気中に存在するすべての物質に起き得るものであるが、酵素的酸化は、生体系や生体由来の物質においてのみ起きる。生体系物質である食品においては、特に生鮮食品の加工時に起きることが知られている。食品の酸化劣化を防ぐことは、腐敗の防止とともに、その品質を維持するために重要であり、その目的で天然の抗酸化性物質が利用される。天然の抗酸化性物質を魚肉の褐変防止に利用したものとしては、例えば、抗酸化剤としてポリフェノールを用いた魚肉の赤変抑制剤(特許文献1)やアスコルビン酸類を赤身魚肉に添加して退色を防止する方法(特許文献2、特許文献3)などが知られている。
また、ハマチなどの鮮魚の血合い肉の褐変は、肉に含まれるミオグロビンがメトミオグロビンに変化するものといわれている(非特許文献1)。従って、その変化を防ぐ物質を発見できればその目的の一部を達成できることになる。そのような試みとしては、例えば、酸化カルシウムや水酸化カルシウムによりミオグロビンの変化を抑制して赤身魚肉加工品の変色を防止する方法(特許文献4)、赤身食肉の表面層のpHを高くして赤身食肉の色調を安定化させる方法(特許文献5)などが提案されている。
以上に挙げた従来の方法はいずれも、鮮魚などの魚肉の褐変を防止する方法として十分に満足できるものではない。
【0003】
一方、リグナンは食用植物等に広く存在し、化学構造的に多様であり抗酸化性が期待できるフェノール部位を有することも多いことから、実用的な抗酸化性物質としても期待できる。例えば、ゴマのリグナンは、古くから良く研究され近年抗酸化的健康機能性物質としての応用もされている(非特許文献2)。また、リグナンの一種である(−)−セコイソラリシノールを抗酸化剤あるいはフリーラジカル消去剤として用いた医薬品も提案されている(特許文献6)。しかしながら、リグナンを魚肉の褐変防止に用いることは、これまでには全く試みられていない。
【特許文献1】特開2007−195503号公報
【特許文献2】特開2003−92982号公報
【特許文献3】特開平5−284902号公報
【特許文献4】特開2006−246865号公報
【特許文献5】特開平7−213253号公報
【特許文献6】特表2005−501886号公報
【非特許文献1】佐野吉彦,橋本周久,日水誌,24,519−523(1958)
【非特許文献2】Fukuda,Y.,Osawa,T.,Namiki,M. and Ozaki,T. Agric. Biol. Chem.,49,301 (1985).
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の課題は、鮮魚などの魚肉の褐変を有効に防止することのできる褐変防止剤および褐変防止方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、特に、ハマチなどの鮮魚の血合い肉の褐変を有効に防止する褐変防止剤および褐変防止方法を見出すことを目的として鋭意研究した結果、抗酸化性物質のなかでも特にリグナン類を選択し、リグナン類を抗酸化剤として、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できることを見出し、本発明を完成させた。
従って、本発明は、リグナン類を有効成分として含有する魚肉の褐変防止剤に関する。
更に、本発明は、リグナン類を魚肉に適用することを特徴とする魚肉の褐変防止方法に関する。
【発明の効果】
【0006】
マタイレジノールやセコイソラリシレジノール、より好ましくは、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。また、同様のリグナン類を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えて養殖した魚の加工後の血合いの褐変を有効に防止することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の褐変防止剤および褐変防止方法は、リグナン類を用いるものである。ここで用いるリグナン類は、高等植物、特に木本植物の材に多く分布するものであり、ベンゼン環(C6)とベンゼン環に結合した3つの炭素鎖(C3)が一つの単位となっており、このC6−C3単位が2単位または3単位結合した化合物を意味する。本発明では、これらのリグナン類のうちで、酸化されていないベンジル基を含む高い抗酸化活性を有するリグナン類が好ましく、特に、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールが好ましく、より好ましくは、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールである。これらのリグナン類は単品で用いることもでき、また2種以上を混合して用いてもよい。これらのリグナン類は、公知の物質であり、高等植物の組織から公知の方法(Journal of Organic Chemistry,27巻,pp322−323,1962年、及び Tetrahedoron,7巻,pp262−269(1959)など)で抽出してもよく、また、公知の化学的合成(Journal of Natural Products,68巻,pp1459−1470,2005年、及び Biosciece Biotechnology,and Biochemistry,71巻,pp2283−2290,2007年など)によって合成してもよい。以後に記載する製造例における化学的合成方法によっても合成できる。
【0008】
本発明の褐変防止剤は、上記したリグナン類を有効成分として含むものであり、リグナン類のみから構成されていてもよく、あるいは、リグナン類と、通常使用される賦形剤とから構成されていてもよい。賦形剤としては、水、水と有機溶媒との混合溶液、グリセリン、脂肪油、ソルビトールなどの液状の賦形剤;乳糖、ショ糖、コーンスターチ、タピオカスターチ、ゼラチン、寒天、馬鈴薯デンプンなどの固形の賦形剤が挙げられる。なかでも、水、水とエタノールなどアルコール等の有機溶媒との混合溶媒が好ましく、特に、水とアルコール、特に、エタノールとの混合溶媒が好ましい。本発明の褐変防止剤における有効成分であるリグナン類の量は、用いるリグナン類の種類、対象とする魚肉、褐変防止剤の形態などによって変動しうるものであり、褐変防止効果を有効に発揮できる限りにおいて、特に制限は無い。
本発明の褐変防止剤においては、従来公知の他の褐変防止剤、例えば、クエン酸、アスコルビン酸などの味の悪化を起こさない範囲で少量添加してもよい。更には、通常使用される調味料、香辛料、保存剤などを適宜添加してもよい。
【0009】
本発明においては、リグナン類を魚肉に適用することによって、魚肉の褐変を有効に防止することができる。対象となる魚としては、例えば、ハマチ、マグロ、カツオ、イワシ、アジ、シマアジ、サンマ、カンパチ、サバ、ホッケ、エボダイ、キンメダイなどが挙げられる。
リグナン類を適用するには、例えば、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚肉に塗布、噴霧、添加する方法、あるいは、液状の形態にある褐変防止剤に魚肉を浸漬する方法などが挙げられる。また、魚肉を加工する際に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚肉に添加してもよく、練り込んでもよい。本発明では、特に、ハマチなどの鮮魚の切り身に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を塗布することにより、鮮魚切り身の血合いの褐変を有効に防止することができる。
このような方法によって魚肉の褐変防止する際のリグナン類の使用量は、対象とする魚、適用する際の形態などによって変動しうるが、通常は、魚肉100重量部に対して、0.5重量部から2重量部、好ましくは、1重量部から2重量である。
【0010】
本発明では、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚肉の褐変を防止することもできる。魚類用飼料としては、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を配合できる飼料であれば、通常使用されている飼料でよく、粉状、ペレット状、錬り餌などのいずれのものでもよい。飼料の組成としては、魚粉、糟糖類、ビタミン類、油脂などの通常使用されるものでよい。これらの魚類用飼料に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を配合して、魚に給餌し、魚を養殖して、養殖した魚からの魚肉やその加工品の褐変を有効に防止することができる。本発明では、特に、リグナン類そのもの、あるいは上記した褐変防止剤を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を、ハマチなどの魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を有効に防止することができる。
このように魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚肉の褐変を防止する際のリグナン類の使用量は、対象とする魚、適用する際の形態などによって変動しうるが、通常は、魚類用飼料100重量部に対して、1重量部から5重量部、好ましくは、4重量部から5重量である。
【0011】
以下、本発明を製造例、実施例などにより更に詳細に説明するが本発明はそれらに何ら限定されるものではない。
製造例1
(−)−マタイレジノールおよび(−)−セコイソラリシレジノールの合成
以下に示す合成スキームにより、(−)−マタイレジノールおよび(−)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【化1】
【0012】
(1)L−グルタミン酸(100g)を水(270ml)と濃塩酸(140ml)に溶解した溶液を0〜5℃に冷却した後、これに亜硝酸ナトリウム(70g)を水(150ml)に溶解した溶液を加えた。加え終わった後、室温で16時間撹拌し、減圧下、40〜50℃で濃縮し、残渣を酢酸エチルを用いて濾過した。ろ液を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、減圧濃縮した。残渣をエタノール(144ml)、ベンゼン(333ml)に溶解後、パラトルエンスルホン酸(2.22g)を加え、共沸脱水下に加熱還流を7時間行った。
次に、減圧濃縮後、残渣を水(200ml)とジクロロメタン(200ml)に溶解し、ジクロロメタン溶液を分離後、飽和の炭酸水素ナトリウム水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。さらに減圧濃縮後、残渣をエタノール(200ml)に溶解した。この溶液を20〜25℃に保ち、水素化ホウ素ナトリウム(12.5g)をエタノール(200ml)に溶解した溶液を加えた。室温で3時間撹拌後、10%塩酸水溶液を用いて酸性にした後減圧濃縮した。残渣をメタノールを用いて濾過した後、ろ液を再び減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/6)で精製し中間体1を22.7g得た。
(2)得られた中間体1をピリジン(50ml)に溶解した後、塩化トリチル(55.1g)をピリジン(100ml)に溶解した溶液を加え、60度で16時間撹拌した。次に、水を加え生じた結晶を濾過によって取り出し、酢酸エチルで再結晶し、中間体2を37.5g得た。一方、アセトニトリル(500ml)にヴァニリルアルコール(50g)、ベンジルクロリド(40.3ml)、炭酸カリウム(88g)、及びジベンゾ18クラウン6(1.26g)を加えた反応物を16時間加熱還流した後、濾過し、ろ液を減圧濃縮した。得られた結晶をジイソプロピルエーテルで再結晶し中間体3を68.7g得た。
【0013】
(3)次に、ジクロロメタン(250ml)にN−ブロモスクシンイミド(45.5g)加え0℃に冷却した後、ジメチルスルフィド(22.1ml)を加えた。さらに中間体3(42g)のジクロロメタン(50ml)溶液を0℃で加えた後、0℃以下で1時間撹拌した。その後、氷水(500ml)に反応液を加え、ジクロロメタン溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させた。減圧濃縮後、得られた結晶をジイソプロピルエーテルで再結晶し、中間体4を27.4g得た。
(4)次に、ジイソプロピルアミン(13.4ml)のテトラヒドロフラン(10ml)溶液を0℃に冷却した後、n−ブチルリチウム(2.77M、ヘキサン溶液)を34.7ml加えた。さらに−70℃に冷却後、中間体2(30.0g)のテトラヒドロフラン(100ml)溶液を加え、さらに中間体4(25.8g)のテトラヒドロフラン(50ml)溶液を加えた。−70℃で1時間撹拌後、飽和の塩化アンモニウム水溶液(300ml)を加えた。有機溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=4/1及び3/1)で精製し、中間体5(43.0g)を得た。
【0014】
(5)テトラヒドロフラン(50ml)に水素化リチウムアルミニウム(2.80g)を加えた後、0℃に冷却し、中間体5(43.0g)のテトラヒドロフラン(150ml)溶液を加えた。室温で30分撹拌後、飽和硫酸マグネシウム水溶液(50ml)と炭酸カリウム(0.1g)を加えさらに室温で30分撹拌した。その後、混合物を濾過し、ろ液を減圧濃縮後、残渣をエタノール(150ml)に溶解し濃塩酸を4.5ml加えた。1時間後、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を用いて中和した後、減圧濃縮し、残渣を水(200ml)とクロロホルム(200ml)に溶解した。クロロホルム溶液を分離後、硫酸ナトリウムで乾燥し、さらに減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/3及び10%メタノール/クロロホルム)で精製し、中間体6(18.8g)を得た。
メタノール(300ml)に中間体6(18.8g)、過ヨウ素酸ナトリウム(14.0g)を入れ室温で1時間撹拌した。減圧濃縮後、残渣を水(200ml)とジクロロメタン(200ml)に溶解し、ジクロロメタン溶液を分離し、飽和食塩水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。
減圧濃縮後、残渣をジクロロメタン(200ml)に溶解し、これに、モレキュラーシーブ4A(0.5g)とピリジニウムクロロクロメート(14.0g)を加えて16時間撹拌した。
(6)次に、エーテルを300ml加えた後、濾過し、ろ液を減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1)で精製し、中間体7(14.8g)を得た。
次に、テトラヒドロフラン(20ml)にジイソプロピルアミン(8.71ml)を加えた後、0℃でn−ブチルリチウム(2.77M、ヘキサン溶液)を20.3ml加えた。さらに−70℃に冷却後、中間体7(14.7g)のテトラヒドロフラン(15ml)溶液、さらに、中間体4(16g)のテトラヒドロフラン(15ml)を加えた。−70℃で30分撹拌後、飽和塩化アンモニウムを200ml加えた。有機溶液を分離後飽和食塩水(200ml)で洗った後、硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=4/1及び3/2)で精製し、中間体8(16.3g)を得た。
【0015】
(7)次に、酢酸エチル(20ml)に中間体8(6.60g)を溶かし、5%パラジウム/カーボン(3.3g)を加えた後、水素ガス下で室温で8時間撹拌した。濾過した後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/1と1/3)で精製し、(−)−マタイレジノールを3.69g得た。
一方、テトラヒドロフラン(20ml)に水素化リチウムアルミニウム(0.72g)を加え0℃に冷却後、中間体8(9.57g)のテトラヒドロフラン(25ml)溶液を加えた。室温で30分撹拌後、アイスバスで冷却し飽和硫酸マグネシウム水溶液(30ml)と炭酸カリウム(0.1g)を加え室温で30分撹拌した。この混合物を濾過した後、ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラム(ヘキサン/酢酸エチル=1/3)で精製し、中間体9(8.03g)を得た。次に、テトラヒドロフラン(20ml)に中間体9(7.53g)を溶かし、さらに5%パラジウム/カーボン(4.00g)を加えた。
さらに、室温、水素ガス下で6時間撹拌後濾過し、ろ液を減圧濃縮した。ろ液をシリカゲルカラム(酢酸エチル)で精製し、(−)−セコイソラリシレジノール(3.41g)を得た。
【0016】
製造例2
(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの合成
以下に示す合成スキームにより、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【化2】
【0017】
D−グルタミン酸から、製造例1と同様にして、上記合成スキームに従って、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールを合成した。
【0018】
実施例1
(−)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−マタイレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
製造例1および2で合成した、高い抗酸化活性を有する(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果を調べた。
【0019】
(1)方法
50mlのエタノールと50mlの水を混ぜた溶液(50%エタノール溶液)98mlに2gの(−)−マタイレジノールを溶解して、2%(−)−マタイレジノールを調製した。この2%溶液を50ml取り、50%エタノール溶液50mlを加えて、1%(−)−マタイレジノール溶液を調製した。この1%溶液を50ml取り、50%エタノール溶液50mlを加えて、0.5%(−)−マタイレジノール溶液を調製した。
同様にして、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールの2%、1%および0.5%各溶液を調製した。
これらの各溶液を、鮮魚ハマチの血合い切り身に塗布し、塗布後一定期間経過毎に、色差計(製造元:東京光学機械株式会社、機器名:分光放射計、型番:SR−1)にて、X値(赤)、Y値(緑)およびZ値(青)の測定を行った。また、FUJIFILM製デジタルカメラFinePix F710で撮影し、画像データをAdobe Photoshop version 10.0.1(Apple MacPro)で測定して、R値(赤)を求めた。これらの値より、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果を調べた。
【0020】
(2)結果
(2)−1.(−)−マタイレジノールの褐変防止効果
(−)−マタイレジノールは、2%、1%および0.5%溶液においてX値に対する効果に大きな差がなく、特に12時間後での0%溶液との差が最も大きかった(図1)。これは、12時間後のX値の減少が少なかったためである。すなわち、褐変遅延効果がはっきりと現れていた。その後もX値は0%溶液よりも大きく、赤い色を保っていた。興味深い事に、Y値においても同様の事が24時間まで観察され、緑色を保つ効果も観察された(図2)。Z値については、0%溶液の場合と同じ推移を経たことから、青色を保つ効果はない事が分かった(図3)。R値の測定でも(−)−マタイレジノールの褐変遅延効果ははっきり現れていた(図4)。2%溶液、1%溶液間で大きな差は見られず、いずれも36時間後まで0%溶液よりも高い値を保った。0.5%溶液においても、0%溶液よりもR値の減少速度が弱く、褐変遅延効果が観察された。
【0021】
(2)−2.(+)−マタイレジノールの褐変防止効果
(+)−マタイレジノールでは、X、YおよびZ値のいずれにおいても、2%溶液区と1%溶液区において値の減少が抑制され、両者の間に効果の差が見られなかった。0.5%溶液区ではX、YおよびZ値の減少が0%溶液区とほぼ同様であった(図5、6および7)。しかし、(−)−マタイレジノールのよりもX値の減少が大きく、また、(−)−マタイレジノールでは褐変防止効果が2%溶液、1%溶液および0.5%溶液の間に差が見られなかった事から、(+)−マタイレジノールの褐変遅延効果は(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えられる。しかし、(−)−マタイレジノールはZ値の減少を抑制しなかったのに対して(+)−マタイレジノールの2%溶液および1%溶液区ではZ値の減少を抑制した。この事から、(−)−マタイレジノールと(+)−マタイレジノールの褐変防止メカニズムが異なる事も考えられる。(+)−マタイレジノールの2%溶液および1%溶液区ではR値の減少抑制も観察されたが、0.5%溶液区では0%溶液区との差が観察されなかった(図8)。2%溶液および1%溶液区の36時間後のR値と0%溶液区のR値との差は、(−)−マタイレジノールの36時間後のそれと比較して小さい事からも(−)−マタイレジノールの方が(+)−マタイレジノールよりも褐変遅延効果が高いと言える。鏡像異性体間で褐変遅延効果に差がある事が示された。
【0022】
(2)−3.(−)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
(−)−セコイソラリシレジノールの2%溶液区でやや褐変遅延効果が認められ、X値の減少が0%溶液区よりやや弱かった(図9)。明らかに(−)−マタイレジノールよりもX値の減少が大きい。同じ2%溶液区で弱いY値の減少の抑制効果が認められた(図10)が、Z値に対する効果ははっきりしなかった(図11)。R値の測定では、2%溶液および1%溶液区で比較的R値の減少が抑制されていた(図12)が、(−)−マタイレジノールでは2%溶液1%溶液区でR値の減少抑制効果に差がなかったのに比べ、(−)−セコイソラリシレジノールでは2%溶液および1%溶液区に差が認められた。この事から、(−)−セコイソラリシレジノールの褐変遅延効果は、(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えられる。
【0023】
(2)−4.(+)−セコイソラリシレジノールの褐変防止効果
2%溶液及び1%溶液区において、X値の減少が0%溶液および0.5%溶液区に比べて小さかった。36時間後においては、2%溶液区が他の区よりも高いX値を示した(図13)。Y値においても同様の事が観察された(図14)。Z値については、すべての濃度で0%溶液区との差は認められなかった(図15)。(−)−セコイソラリシレジノール(図9)よりもX値の減少はゆるやかであった事から、(+)−セコイソラリシレジノールの方が褐変遅延効果が高いと考えられる。(−)−マタイレジノール(図1)と比較すると、(−)−マタイレジノールでは濃度間でX値の減少に差が見られなかったのに対して(+)−セコイソラリシレジノールでは濃度間にX値減少スピードに差が見られた事から(+)−セコイソラリシレジノールの褐変遅延効果は(−)−マタイレジノールよりも弱いと考えら得る。(+)−セコイソラリシレジノールのR値の測定では、2%溶液および1%溶液では大きな差がなく減少が少なかったのに対して、0.5%溶液では0%溶液とR値の減少スピードが変わらなかった(図16)。これに対して、(−)−セコイソラリシレジノールでは2%溶液、1%溶液および0.5%溶液間でR値の減少に差が観察された事からも(+)−セコイソラリシレジノールの方が(−)−セコイソラリシレジノールよりも高い褐変遅延効果を有していると考えられる。マタイレジノールと同様に鏡像異性体間に褐変遅延効果の差が観察された。(+)−セコイソラリシレジノールのR値を(−)−マタイレジノールのR値(図4)と比較すると、(+)−セコイソラリシレジノールの0.5%溶液の減少スピードが0%溶液と変わらなかったのに対して(−)−マタイレジノールの0.5%溶液では0%溶液よりも減少スピードがゆるやかであった。この事から、(−)−マタイレジノールの方が高い褐変遅延効果を有していると言える。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上から明らかなとおり、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノール、(+)−セコイソラリシレジノールなどのリグナン類を、ハマチなどの鮮魚の血合い肉に適用することにより、褐変を有効に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】(−)−マタイレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図2】(−)−マタイレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図3】(−)−マタイレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図4】(−)−マタイレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図5】(+)−マタイレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図6】(+)−マタイレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図7】(+)−マタイレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図8】(+)−マタイレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図9】(−)−セコイソラリシノレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図10】(−)−セコイソラリシノレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図11】(−)−セコイソラリシノレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図12】(−)−セコイソラリシノレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【図13】(+)−セコイソラリシノレジノールのX値に与える影響を示すグラフである。
【図14】(+)−セコイソラリシノレジノールのY値に与える影響を示すグラフである。
【図15】(+)−セコイソラリシノレジノールのZ値に与える影響を示すグラフである。
【図16】(+)−セコイソラリシノレジノールのR値に与える影響を示すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグナン類を有効成分として含有する魚肉の褐変防止剤。
【請求項2】
リグナン類が、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の褐変防止剤。
【請求項3】
リグナン類が、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の褐変防止剤。
【請求項4】
鮮魚の切り身に塗布して鮮魚切り身の血合いの褐変を防止するための請求項1から3のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項5】
魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を防止するための請求項1から3のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項6】
水とアルコールとの混合溶液の形態にある請求項1から5のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項7】
魚がハマチである請求項1から6のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項8】
リグナン類を魚肉に適用することを特徴とする魚肉の褐変防止方法。
【請求項9】
リグナン類が、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の褐変防止方法。
【請求項10】
リグナン類が、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項8または9に記載の褐変防止方法。
【請求項11】
リグナン類を、鮮魚の切り身に塗布して鮮魚切り身の血合いの褐変を防止する請求項8から10のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項12】
リグナン類を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を防止する請求項8から10のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項13】
リグナン類が、水とアルコールとの混合溶液の形態にある請求項8から12のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項14】
魚がハマチである請求項8から13のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項1】
リグナン類を有効成分として含有する魚肉の褐変防止剤。
【請求項2】
リグナン類が、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の褐変防止剤。
【請求項3】
リグナン類が、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項1または2に記載の褐変防止剤。
【請求項4】
鮮魚の切り身に塗布して鮮魚切り身の血合いの褐変を防止するための請求項1から3のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項5】
魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を防止するための請求項1から3のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項6】
水とアルコールとの混合溶液の形態にある請求項1から5のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項7】
魚がハマチである請求項1から6のいずれかに記載の褐変防止剤。
【請求項8】
リグナン類を魚肉に適用することを特徴とする魚肉の褐変防止方法。
【請求項9】
リグナン類が、マタイレジノールおよびセコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項8に記載の褐変防止方法。
【請求項10】
リグナン類が、(−)−マタイレジノール、(+)−マタイレジノール、(−)−セコイソラリシレジノールおよび(+)−セコイソラリシレジノールから選ばれる少なくとも1種である請求項8または9に記載の褐変防止方法。
【請求項11】
リグナン類を、鮮魚の切り身に塗布して鮮魚切り身の血合いの褐変を防止する請求項8から10のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項12】
リグナン類を、魚類用飼料に混合し、該魚類用飼料を魚に与えることにより、魚の加工後の血合いの褐変を防止する請求項8から10のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項13】
リグナン類が、水とアルコールとの混合溶液の形態にある請求項8から12のいずれかに記載の褐変防止方法。
【請求項14】
魚がハマチである請求項8から13のいずれかに記載の褐変防止方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−57367(P2010−57367A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−223010(P2008−223010)
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(509049159)えひめぎょれん販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年9月1日(2008.9.1)
【出願人】(000003975)日東紡績株式会社 (251)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(509049159)えひめぎょれん販売株式会社 (1)
【Fターム(参考)】
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