説明

黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材

【課題】 溶媒に分散させることが容易で、黒色度が高く、しかも高い絶縁性を有する黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材を提供する。
【解決手段】 本発明の黒色微粒子は、AgSn合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面が、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)等の金属酸化物、あるいはポリアミン化合物等の有機高分子化合物からなる絶縁膜により被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材に関し、特に、液晶ディスプレイ等の平面型表示装置のブラックマトリックスに好適に用いられ、黒色度が高く、遮光性に優れた黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、薄型かつ大型の平面型表示装置として、フルカラー表示が可能な液晶ディスプレイ(LCD)が知られている。
このカラー液晶ディスプレイにおいては、透明基板上にマトリックス状に配列されているR(赤)、G(緑)、B(青)の各画素には、その表示面におけるコントラストを向上させるために、遮光性の高いブラックマトリックスが形成されている。
このブラックマトリックスは、特に、薄膜トランジスタ(TFT)を用いたアクティブマトリックス型の液晶ディスプレイ(TFT−LCD)においては、TFTの光が誘起するリーク電流を防止するとともに、各画素の表示面以外の光の透過を阻止して各画素のコントラストを向上させることにより、表示装置としての画質を向上させることができる。
【0003】
このブラックマトリックスは、TFTアレイ基板側に形成する場合と、カラーフィルタ側に形成する場合とがある。
TFTアレイ基板側に形成する場合、ブラックマトリックスが画素電極およびTFTに直接接触することになるために、ブラックマトリックスに高い絶縁性が要求される。
一方、カラーフィルタ側に形成する場合、特に横電界駆動方式の液晶ディスプレイ(LCD)の場合には、カラーフィルタ側のブラックマトリックスにも高い絶縁性が要求される。
【0004】
このブラックマトリックスは、従来では、遮光性の高いCr等の金属膜が、真空蒸着法やスパッタリング法により透明な画素電極以外の部分を覆うように成膜されていたが、近年、これに取って代わる材料として、遮光性が高く、製造工程が簡単で、しかも低価格化を図ることが可能なブラックマトリックス形成用材料が開発され、実用に供されている。
この様なブラックマトリックス形成用材料としては、例えば、表面を樹脂や酸化ケイ素により被覆して絶縁化させたカーボンブラックやチタンブラックを有機溶媒中に分散させた分散液(例えば、特許文献1、2参照)、銀微粒子等の金属微粒子を有機溶媒中に分散させた分散液(例えば、特許文献3、4参照)が提案されている。
【特許文献1】特開2002−201381号公報
【特許文献2】特開2002−267832号公報
【特許文献3】特開2004−317897号公報
【特許文献4】特開2004−334180号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のカーボンブラックやチタンブラックを用いた分散液でブラックマトリックスを作製した場合、遮光性が不足しているために、分散液の高濃度化や重ね塗り等で、膜厚を厚くする必要がある。しかしながら、膜厚を厚くすると、ブラックマトリックスと各画素との重なりが大きくなり、カラーフィルタの平坦性が低下し、各画素のセルギャップにムラが生じるために、均一な画素が形成し難くなるという問題点があった。
セルギャップにムラが生じた場合、表示面に色むらが発生し易くなり、その結果、表示面の品質が低下することとなる。
また、ブラックマトリックスと各画素との重なりが大きくなると、各画素におけるブラックマトリックスの占有面積が大きくなり、各画素の開口率が低下するという問題点があった。開口率が低下した場合、各画素の輝度が低下し、その結果、表示装置の表示面全体の輝度が低下することとなる。
【0006】
また、カーボンブラックやチタンブラックは、気相法や液相法で表面処理を行っているが、気相法で表面処理を行った場合、粒子を気相中に分散させることが難しいために、粒子同士が接触している状態で表面処理する物質と混合することとなり、したがって、表面処理の均一性が悪く、粒子同士の凝集等も問題となる。そこで、粒子の表面にテトラエトキシシラン等のアルコキシドを気相吸着させた後、過剰のアルコキシドを減圧下にて除去する方法もあるが、この方法には、操作が煩雑で時間及びコストがかかるという問題点がある。
また、液相法で表面処理を行った場合、粒子が液相中に分散している状態で表面処理することができるので、気相法に比べて均一に表面処理することが可能であるが、例えば、カーボンブラックやチタンブラックは、粒子同士が凝集した粉末状態で得られるために、これらを水や有機溶剤中に分散させることが非常に困難である。
【0007】
一方、従来の金属微粒子を用いた分散液でブラックマトリックスを作製した場合、単に金属微粒子を分散させたブラックマトリックスでは、高い絶縁性が得られないという問題点があった。
特に、黒色銀微粒子を用いた分散液の場合、ゼラチンを用いて銀微粒子を合成しているために、合成した後にゼラチンを完全に除去することができず、したがって、銀微粒子を有機溶剤中に均一分散させることが難しい。この場合、ゼラチンを用いないと銀微粒子を合成することができない。
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、溶媒に分散させることが容易で、黒色度が高く、しかも高い絶縁性を有する黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、溶媒に分散させることが容易で、黒色度が高く、しかも高い絶縁性を有する材料について鋭意検討した結果、従来の銀微粒子を、銀錫合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子に替え、さらに、この微粒子の表面を絶縁膜により被覆することで、溶媒に分散させることが容易で、黒色度が高く、しかも高い絶縁性を有する黒色微粒子を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の黒色微粒子は、銀錫合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面が、絶縁膜により被覆されていることを特徴とする。
前記絶縁膜は、金属酸化物または有機高分子化合物であることが好ましい。
前記銀錫合金は、銀を47.6重量%以上かつ90重量%以下含有してなることが好ましい。
【0011】
本発明の黒色微粒子分散液は、本発明の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の黒色遮光膜は、本発明の黒色微粒子分散液を塗布してなることを特徴とする。
【0013】
本発明の黒色遮光膜付き基材は、基材の一主面に、本発明の黒色遮光膜を備えてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の黒色微粒子によれば、銀錫合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面を、絶縁膜により被覆したので、溶媒に分散させることを容易とすることができ、黒色微粒子自体の黒色度を向上させることができ、絶縁性を高めることができる。
【0015】
本発明の黒色微粒子分散液によれば、本発明の黒色微粒子を含有したので、黒色微粒子の分散性を向上させることができ、塗布性を向上させることができる。
【0016】
本発明の黒色遮光膜によれば、本発明の黒色微粒子分散液を塗布して得られたので、膜厚が薄い場合であっても、遮光性及び絶縁性を高めることができる。
この黒色遮光膜を液晶ディスプレイ等の平面型表示装置のブラックマトリックスに適用すれば、膜厚を薄くすることでブラックマトリックスと各画素との重なりを小さくすることができ、各画素のセルギャップのムラを小さくすることができ、画素の均一化を図ることができる。したがって、表示面に色むらが発生し難くなり、表示面の品質を向上させることができる。また、各画素の開口率を向上させることができ、表示装置の表示面全体の輝度を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の黒色微粒子と黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜並びに黒色遮光膜付き基材の最良の形態について説明する。
なお、この形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。
【0018】
本実施形態の黒色微粒子は、銀錫(AgSn)合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面が、絶縁膜により被覆されている。
この微粒子は、AgSn合金が主成分であればよく、他の金属成分として、例えば、Ni、Pd、Au等が含まれていてもよい。
また、この微粒子は、AgSn合金微粒子の他、Ag微粒子やSn微粒子が混在したものであってもよい。
このAgSn合金は、化学式AgSnにて表した場合、化学的に安定したAgSn合金が得られるxの範囲は1≦x≦10であり、化学的安定性と黒色度が同時に得られるxの範囲は3≦x≦4である。
【0019】
ここで、上記xの範囲でAgSn合金中のAgの重量比を求めると、
x=1の場合、 Ag/AgSn =0.4762
x=3の場合、 3・Ag/AgSn=0.7317
x=4の場合、 4・Ag/AgSn=0.7843
x=10の場合、10・Ag/Ag10Sn=0.9008
となる。したがって、このAgSn合金は、Agを47.6重量%以上かつ90重量%以下含有した場合に化学的に安定なものとなり、Agを73.17重量%以上かつ78.43重量%以下含有した場合にAg量に対し効果的に化学的安定性と黒色度を得ることができる。
【0020】
この黒色微粒子の構成要素である微粒子は、通常の微粒子合成法を用いて作製することができる。微粒子合成法としては、気相反応法、噴霧熱分解法、アトマイズ法、液相反応法、凍結乾燥法、水熱合成法等、いずれの方法を用いても良い。
【0021】
絶縁膜は、AgSn合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面を絶縁化させることにより高絶縁性微粒子とするもので、金属酸化物または有機高分子化合物が好適である。
金属酸化物としては、絶縁性を有する金属酸化物、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化イットリウム(イットリア)、酸化チタン(チタニア)等が好適に用いられる。
また、有機高分子化合物としては、絶縁性を有する樹脂、例えば、ポリイミド、ポリエーテル、ポリアクリレート、ポリアミン化合物等が好適に用いられる。
【0022】
絶縁膜の膜厚は、上記微粒子の表面の絶縁性を十分に保持することができるためには1〜100nmの厚みが好ましく、より好ましくは5〜50nmである。
この絶縁膜は、表面改質技術あるいは表面のコーティング技術により容易に形成することができる。特に、テトラエトキシシラン、アルミニウムトリエトキシド等のアルコキシドを用いれば、比較的低温で、膜厚の均一な絶縁膜を形成することができるので好ましい。
【0023】
本実施形態の黒色微粒子では、AgSn合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面を、絶縁膜により被覆したことにより、Ag粒子やSn粒子に比べて黒色度が高まり、遮光性が向上し、絶縁性も向上する。
また、AgSn合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面を、金属酸化物からなる絶縁膜により被覆することにより、Ag粒子やSn粒子等の金属微粒子に比べて耐熱性に優れたものとなり、しかも、機械的強度が高く、摩耗し難い。
【0024】
本実施形態の黒色微粒子分散液は、本実施形態の黒色微粒子を含有したものであり、この黒色微粒子分散液には、溶媒、必要に応じて有機バインダー等が含まれる
溶媒としては、特に限定されるものではないが、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、2−プロパノール、ブタノール等の一価アルコール類、エチレングリコール等の二価アルコール類、β−オキシエチルメチルエーテル(メチルセロソルブ)、β−オキシエチルエーテル(エチルセロソルブ)、β−オキシエチルプロピルエーテル(プロピルセロソルブ)、ブチル−β−オキシエチルエーテル(ブチルセロソルブ)等のエチレングリコールエーテル(セロソルブ)類、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸ベンジル等のエステル類、メトキシエタノール、エトキシエタノール等のエーテルアルコール類、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等を挙げることができる。
【0025】
本実施形態の黒色微粒子分散液では、AgSn合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面を絶縁膜により被覆した黒色微粒子を含有したことにより、黒色度が高く、遮光性および絶縁性に優れ、しかも安価な黒色遮光膜の原料となる黒色微粒子分散液を提供することが可能になる。
【0026】
本実施形態の黒色遮光膜は、本実施形態の黒色微粒子分散液を基材上に塗布し、その後乾燥することで得られる。
この黒色遮光膜を基材の一主面に形成すれば、黒色遮光膜付き基材となる。
基材としては、特に限定されるものではないが、ガラス基材、プラスチック基材(有機高分子基材)を挙げることができる。また、その形状としては、平板、フィルム状、シート状等が挙げられる。また、上記のプラスチック基材としては、プラスチックシート、プラスチックフィルム等が好適である。
【0027】
ガラス基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、ソーダガラス、カリガラス、無アルカリガラス等から適宜選択することができる。
プラスチック基材の材質としては、特に限定されるものではないが、例えば、セルロースアセテート、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテル、ポリイミド、エポキシ、フェノキシ、ポリカーボネート(PC)、ポリフッ化ビニリデン、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリレート等から適宜選択することができる。
【0028】
塗布方法としては、通常用いられている方法、例えば、スピンコート法、スプレーコート法、インクジェット法、ディップ法、ロールコート法、スクリーン印刷法、バーコート法等が好適に用いられる。
【0029】
基材上に塗布された分散液は溶媒を含んでいるので、その後の乾燥工程により溶媒を除去する。
例えば、分散液が塗布された基材を、大気中、室温(25℃)に放置するか、あるいは所定の温度、例えば、大気中、50℃〜80℃の温度にて加熱することにより、分散液に含まれる溶媒を散逸させ、黒色遮光膜とする。
【0030】
この黒色遮光膜は、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置のブラックマトリックスとして用いる場合、高絶縁性を有することが好ましく、例えば、体積抵抗(Ω・cm)としては10Ω・cm以上が好ましい範囲である。
また、CIE(国際照明委員会)により規格化されたCIE明度Lが10以下、色度aが−1以上かつ1以下、色度bが−1以上かつ1以下、光学濃度であるOD値が3以上であることが好ましい。
CIE明度Lは、低いほど黒色度が向上し、特に、液晶ディスプレイ(LCD)等の表示装置のブラックマトリックスとして用いた場合には、低いほど表示コントラストが向上する。そこで、表示コントラストが良好な範囲である10以下を好ましい範囲とした。
【0031】
色度a、bは、無彩色であることが表示品位の点から好ましく、絶対値が1を超えると色相を帯びるので、好ましい範囲を無彩色となる絶対値が1以下、すなわち−1以上かつ1以下とした。
OD値は、低いと十分な遮光性が得られず、また、低いOD値の膜で十分な遮光性を得るためには膜厚を厚くせざるを得ず、特に、液晶ディスプレイ(LCD)等のブラックマトリックスとして用いた場合、膜厚が厚くなることにより、表示ムラ等が生じ易くなる。そこで、膜厚が薄い場合であっても、十分な遮光性が得られる範囲を3以上とした。
【実施例】
【0032】
以下、実施例1〜2及び比較例1〜3により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0033】
「黒色微粒子の調製」
以下により黒色微粒子を調製した。
(1)シリカコーティングAgSn合金球状微粒子A
平均粒子径が10〜30nmの黒色AgSn合金球状粒子の水分散液(固形分の濃度:15重量%、住友大阪セメント社製)100gを純水を用いて10倍に希釈した溶液に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPS)0.1重量%含有水溶液1200gを加えて撹拌し、A液とした。
【0034】
一方、水ガラスを水で希釈した溶液(SiO換算で3%)150gを陽イオン交換樹脂を用いてpHを10.5に調整し、B液とした。
次いで、上記のA液をNaOH水溶液(0.1N)によりpHを9.5に調整し、このA液に上記のB液をゆっくりと滴下し、1時間撹拌した。次いで、限外濾過を用いて、この溶液から未反応の水ガラス、MPS、イオン等を除去し、その後濃縮し、分散液を得た。
次いで、この分散液から遠心分離、フリーズドライ等により溶液と微粒子を分離し、乾燥することにより、シリカコーティングAgSn合金球状微粒子Aを得た。
【0035】
(2)シリカコーティングAgSn合金球状微粒子B
上記のA液に酢酸(0.1N)を加え、pHを4.8に調整した。次いで、この溶液に、テトラエトキシシラン1重量%含有水溶液300gを滴下した後、加熱して60℃とし、この温度にて2時間撹拌した。次いで、限外濾過を用いて、この溶液から未反応のMPS、テトラエトキシシラン、酢酸を除去し、その後濃縮し、分散液を得た。
次いで、この分散液から遠心分離、フリーズドライ等により溶液と微粒子を分離し、乾燥することにより、シリカコーティングAgSn合金球状微粒子Bを得た。
【0036】
「黒色微粒子分散液及び黒色遮光膜の作製」
(実施例1)
シリカコーティングAgSn合金球状微粒子A100gに分散剤(ソルスパース20000:アビシア(株)製)2g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート100gを加え、ビーズミルを用いて分散し、シリカコーティングAgSn合金集合粒子分散液を得た。この分散液に、ベンジルメタクリレート/メタクリル酸共重合体:64重量部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:26重量部、イルガキュア907:9重量部からなるバインダーを50g加え、混合し、塗布液を得た。この塗布液をガラス基板上にスピンコーターにより塗布し、室温(25℃)にて乾燥後、紫外線(UV)を照射して厚み0.6μmの黒色膜を形成した。
【0037】
(実施例2)
実施例1にて、シリカコーティングAgSn合金球状微粒子Aの替わりにシリカコーティングAgSn合金球状微粒子Bを用いた以外は、実施例1と同様にして実施例2の黒色膜を形成した。
【0038】
(比較例1)
シリカコーティングされていないAgSn合金球状粒子を用いたこと以外は、実施例1と同様にして黒色膜を形成した。
【0039】
(比較例2)
シリカコーティングされたカーボンブラックを用いたこと以外は、実施例1と同様にして黒色膜を形成した。
【0040】
(比較例3)
シリカコーティングされたチタンブラックを用いたこと以外は、実施例1と同様にして黒色膜を形成した。
【0041】
「黒色膜の評価」
実施例1〜2及び比較例1〜3それぞれの黒色膜の体積抵抗を測定した。測定は、日本工業規格JIS C 2103−1991「体積抵抗率試験」に準拠して、4端子法により測定した。
また、この黒色膜の光学濃度であるOD値を透過濃度計を用いて測定した。
また、この黒色膜の黒色度を評価するために、この黒色膜のCIE明度L、色度a、bを、CIE(国際照明委員会)により規格化されたL表色系に基づいて測定した。これらの測定結果を表1に示す。
【0042】
【表1】

【0043】
この表によれば、実施例1、2の黒色膜は、体積抵抗が1010Ωcmより大きく、OD値が4以上であり、CIE明度Lも低く、色度a、bの絶対値も小さいことから、絶縁性、遮光性及び黒色度に優れていることが確認された。
一方、比較例1の黒色膜は、OD値が4以上であり、CIE明度Lも低く、色度a、bの絶対値も小さいものの、体積抵抗が4.1×10Ωcmと低く、絶縁性が低下していることが分かった。
また、比較例2、3の黒色膜は、体積抵抗が1010Ωcmより大きく、CIE明度Lも低いものの、OD値が2前後と小さく、色度a、bの絶対値も1を超えており、実施例1、2の黒色膜に対して黒色度、遮光性共に劣っていることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の黒色微粒子は、黒色度、遮光性、絶縁性に優れ、しかも安価な黒色遮光膜の材料として利用することができるので、黒色度、遮光性、絶縁性が求められるあらゆる物の材料に適用可能である。例えば、液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、エレクトロクロミックディスプレイ(ECD)等の表示装置向けのブラックマトリックス材料、ブラックシール材料、ブラックマスク材料等の他、黒色遮光性フイルム、黒色遮光性ガラス、黒色紙、黒色布、黒色インキ等としても利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
銀錫合金を主成分とし平均粒子径が1nm以上かつ300nm以下の微粒子の表面が、絶縁膜により被覆されていることを特徴とする黒色微粒子。
【請求項2】
前記絶縁膜は、金属酸化物または有機高分子化合物であることを特徴とする請求項1記載の黒色微粒子。
【請求項3】
前記銀錫合金は、銀を47.6重量%以上かつ90重量%以下含有してなることを特徴とする請求項1または2記載の黒色微粒子。
【請求項4】
請求項1、2または3記載の黒色微粒子を含有してなることを特徴とする黒色微粒子分散液。
【請求項5】
請求項4記載の黒色微粒子分散液を塗布してなることを特徴とする黒色遮光膜。
【請求項6】
基材の一主面に、請求項5記載の黒色遮光膜を備えてなることを特徴とする黒色遮光膜付き基材。

【公開番号】特開2006−225503(P2006−225503A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−40432(P2005−40432)
【出願日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(000183266)住友大阪セメント株式会社 (1,342)
【Fターム(参考)】