説明

鼻血を治療する組成物および方法

【課題】鼻血(すなわち、鼻出血)を治療する組成物および方法を提供すること。
【解決手段】本発明の組成物は、鼻出血を治療する組成物であって、次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤を含有する。この組成物は、鼻出血に罹っている患者に局所的に塗布したときに鼻出血を治療するのに有効である。次没食子酸ビスマスは、組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで存在しており、血管収縮剤は、組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで存在しており、次没食子酸ビスマスの重量パーセントおよび血管収縮剤の該重量パーセントは、鼻出血に罹っている患者に組成物を投与したときに共同して鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、医療に関し、さらに特定すると、鼻血(すなわち、鼻出血)を治療する組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鼻血(科学的には、鼻出血(epistaxix)と呼ばれる)は、世界中で起こり、鼻血を抑えるには、しばしば、医療の手当てを必要とする。空気を吸い込むと、しばしば、鼻と並んでいる繊細で湿った鼻粘膜に対して過度の乾燥効果が生じ、血管が非常に多い鼻膜が、割れ、浸食および局所的な機械的外傷の影響を受けやすくなり、引き続いて、鼻血または鼻出血を引き起こす。鼻に対する鈍器外傷、くしゃみなどは、鼻血を引き起こし得る。一部の鼻血は、動脈で起こり、大量の出血があるのに対して、大多数の人の鼻血は、軽症であり、鼻孔を通ってアクセスできる鼻の前方領域で起こり、しばしば、再発する。
【0003】
鼻出血の発生率は、人口の7%〜60%の範囲であると報告されているが、治療が施されるのは、6%にすぎない。鼻血または鼻出血の頻度は、人々が乾燥環境に住み、鼻のアレルギー、局所的な鼻の刺激物(例えば、汚染物質)、およびアスピリンや血液凝固を低下させるか血液凝固に影響がある他の薬剤の使用増加が原因で、増えると予想されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
鼻出血が世界的に広がり頻繁に起こっているにもかかわらず、現在、直ちに利用できる治療は、ほとんどない。民間療法には、鼻を締め付けること、顔や首に氷まくらを付けること、および頭を下方に垂らした位置で保持することが挙げられる。医療関係者以外の人のためのいくつかの機械装置が記載されており、これらは、大部分は、様々な装置(例えば、鼻腔内バルーンガス注入、クランプ留め具または柔軟な鼻腔内スポンジ(これらは、鼻血の部位に沿って機械的な圧力を加えるように配置されている))を介して鼻の内部に圧力を加えることに頼っている。医師は、しばしば、電気および化学薬品を使用して、鼻血の部位を焼灼させる。焼灼を試みた後に、時には、予想外の出血が発生し、しばしば、さらに出血することを抑えるために、鼻に詰め物が配置される。鼻腔内スポンジに被覆されたアルギン酸カルシウムは、鼻出血の治療として、示唆されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
鼻出血を治療する方法であって、該方法は、鼻出血に罹っている患者に、次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤を含有する組成物の有効量を投与する工程を包含する。鼻出血を治療する組成物が提供されている。この組成物は、次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤を含有する。この組成物は、鼻出血に罹っている患者に局所的に塗布するとき、鼻出血を治療するのに有効である。次没食子酸ビスマスは、この組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで、存在している。この血管収縮剤は、この組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで、存在している。次没食子酸ビスマスの重量パーセントおよび血管収縮剤の重量パーセントは、この組成物を鼻出血に罹っている患者に投与したときに共同して鼻出血を止めるか遅くするのに有効である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明で使用する場合、5〜25または5から25までのような範囲が示されているとき、これは、好ましくは、少なくとも5、また、別々かつ別個に、好ましくは、25以下を意味する。
【0007】
血管収縮剤は、血管の管腔を狭くする薬剤であり、当該技術分野で公知の血管収縮剤が挙げられ、これらには、エピネフリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、ノルエピネフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、レポデソキシエフェドリン(levodesoxyephedrine)、エフェドリン、アドレノクロム、テトラヒドロゾリン、および前述のものの混合物が挙げられる。
【0008】
止血効果がある本発明の医薬組成物は、次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤を含有する。次没食子酸ビスマスは、サフラン黄色の粉末であり、これは、水に不溶性であり、式C(OH)COOBi(OH)を有する。それは、Mallinckrodt Prod.No.0304(これは、90〜100重量%の次没食子酸ビスマスである)として、Mallinckrodt Baker,Inc.から入手できる。そのCAS番号は、99−26−3である。次没食子酸ビスマスは、一般に、比較的に純粋な粉末、例えば、70重量%〜80重量%〜90重量%〜95重量%〜98重量%〜99重量%〜100重量%の純粋な次没食子酸ビスマスとして、入手できる。
【0009】
この血管収縮剤は、好ましくは、エピネフリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、ノルエピネフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、レポデソキシエフェドリン、エフェドリン、アドレノクロム、テトラヒドロゾリン、およびそれらの混合物、さらに好ましくは、鼻腔内に塗布した後に2時間より長く血管収縮効果を示す血管収縮剤、さらに好ましくは、鼻腔内に塗布した後にフェニレフリンが血管収縮効果を示すのと同程度かそれより長く血管収縮効果を示す血管収縮剤、さらに好ましくは、オキシメタゾリンである。血管収縮剤は、一般に、希薄水溶液(濃縮溶液は、作用が速すぎるか多すぎるおそれがあるため)で、好ましくは、水性液体または水溶液で、0.00001〜10重量パーセント、さらに好ましくは、0.001〜1重量パーセント、さらに好ましくは、0.01〜0.1重量パーセントの濃度で、利用できる。好ましい血管収縮剤は、0.05%オキシメタゾリン水溶液である。
【0010】
本発明の組成物は、好ましくは、水と共に形成されたペースト、好ましくは、バターナイフ、指または他の器具を使用して薄層(例えば、0.01〜4mmまたは0.05〜3mmまたは0.2〜2mmまたは0.5〜1.5mmまたは約1mm厚)に容易に展開できる可鍛性の軟質ペーストである;このペーストは、好ましくは、これらの好ましい厚さで、鼻腔内に塗布される。このような軟質ペーストは、綿球またはスポンジに容易に展開でき、そして出血している鼻粘膜にペーストが局所的に塗布されるように、出血している鼻孔に鼻腔内塗布される。この軟質ペーストは、好ましくは、上記水溶液中にて、次没食子酸ビスマス粉末(例えば、Mallincknodt Prod.No.0304)1グラムあたり、水溶液中で、例えば、0.01〜5ml、さらに好ましくは、0.1〜3ml、さらに好ましくは、0.3〜2ml、さらに好ましくは、0.4〜1.3ml、さらに好ましくは、0.5〜1ml、さらに好ましくは、約0.7mlの血管収縮剤の割合で、次没食子酸ビスマス粉末と血管収縮剤とを混合することにより、製造される。この組成物は、好ましくは、3〜99.999999重量パーセント、さらに好ましくは、25〜95重量パーセント、さらに好ましくは、40〜80重量パーセント、さらに好ましくは、50〜70重量パーセントの次没食子酸ビスマス(すなわち、ペースト形態)と、0.00001〜20重量パーセント、さらに好ましくは、0.0001〜2重量パーセント、さらに好ましくは、0.002〜0.2重量パーセントの血管収縮剤(水は、血管収縮剤とは見なされない)とを含有する。本発明の組成物は、好ましくは、市販の血管収縮剤(好ましくは、水溶液中)と混合された市販の次没食子酸ビスマス粉末からなるかまたは本質的になるか、あるいは、それほど好ましくないが、当該技術分野で公知の他の成分(例えば、担体、充填剤、希釈剤、増量剤、増粘剤など(例えば、コーンスターチ、タルクなど))を添加できる。あるいは、次没食子酸ビスマス10重量部あたり、好ましくは、0.1〜10重量部または0.5〜10重量部または1〜10重量部のアルギン酸カルシウムの割合で、アルギン酸カルシウムを添加できる。適切なペーストを形成するために、水を追加する必要があり得るが、好ましくは、このペーストは、水溶液中により多くの血管収縮剤を加えることにより、薄められる。このペーストは、より多くの次没食子酸ビスマスを加えることにより、あるいはペーストを部分的または完全に乾燥させることにより、あるいは増粘剤または乾燥剤を加えることにより、濃くされ得る。
【0011】
鼻の出血を止めるか遅くするために、鼻出血に罹っている患者にこの組成物を投与するには、好ましくは、このペーストは、次没食子酸ビスマス粉末と希血管収縮剤液体(好ましくは、0.05%オキシメタゾリンまたは上述の他の血管収縮剤)とを混合してペーストを形成することにより、調製される。このペーストは、アプリケータ器具上に配置または供給または塗布または被覆または展開でき、そのアプリケータ器具は、このペーストが出血部位に機械的に押し付けられるように、鼻腔内に適用できる。好ましいアプリケータ器具には、アプリケータ(例えば、綿を先に付けたアプリケータ、スポンジを先に付けたアプリケータまたは繊維を先に付けたアプリケータ)および他のアプリケータ器具(例えば、綿球、鼻パック、鼻スポンジ(これはまた、鼻タンポンとも呼ばれている)および他の鼻充填材料)が挙げられる。このアプリケータ器具(例えば、アプリケータ、綿球またはスポンジ)からの圧力により、このペーストの被覆は、出血している面に押し付けられる。また、このペーストは、鼻充填材料または鼻充填物に塗布されて鼻に挿入できるか、または容器に入れられて、患者は、アプリケータ器具(例えば、綿を先に付けたアプリケータのようなアプリケータ)を使用することにより、このペーストを鼻腔内に塗布できる。あるいは、鼻腔内治療の技術分野で公知の他の技術および装置を使用して、この組成物が調製され、局所的に塗布でき、そして出血している部位に機械的に鼻腔内に押し付けることができる。
【0012】
この組成物の有効量、すなわち、組成物が鼻出血を止めるか遅くするのに十分な量が塗布される。次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤は、それぞれ、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで、存在している。次没食子酸ビスマスの重量パーセントおよび血管収縮剤の重量パーセントは、共同して、鼻出血を止めるか遅くするのに有効である。もし、組成物中のある要素が、その要素を含まない組成物と比較して、有益または測定可能に有益であるなら、その要素は、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで、存在している。
【実施例】
【0013】
全ての実施例では、約1gの次没食子酸ビスマス粉末と約0.7mLの0.05%オキシメタゾリン水溶液とを混合することにより製造したペーストを塗布した。
【0014】
(実施例1)
毎日81mgのアスピリンを服用している78才の男性は、慢性的に鼻をほじる癖があり、その結果、鼻血が起こっていた。鼻腔内綿球に上記ペーストを被覆して、鼻腔内に置き、そして24時間後に取り除いたところ、出血は再発しなかった。
【0015】
(実施例2)
50才の白人女性は、発症と頻度が予測できない再発性鼻血に罹っていた。出血の範囲が確認され、そして硝酸銀を使用して焼灼された。鼻充填物を上記ペーストで被覆し、鼻腔内に置き、そして4時間後に取り除いた。粘膜反応は見られず、それ以上の出血は発生しなかった。
【0016】
(実施例3)
抗凝固治療を必要とする脳卒中歴がある58才の女性は、自宅で倒れ、鼻を折り、鼻血を出した。従来の鼻充填物を入れたが、18時間後には、鼻血を完全に抑えることができなかった。最初に入れた充填物を、上記ペーストを被覆したものに入れ替えた。この充填物を約12時間後に取り除いたところ、それ以上の出血はなかった。これらの実施例の結果は、驚くべきものであり、予想外であった。
【0017】
本発明の好ましい実施形態が記載されているものの、それらを変更してもよく、いくつかの特徴は、他の特徴なしで使用され得ることが予想される。このような全てのバリエーションは、添付の請求の範囲で規定される本発明の範囲内であると見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鼻出血を治療する組成物であって、該組成物は、次没食子酸ビスマスおよび血管収縮剤を含有し、該組成物は、鼻出血に罹っている患者に局所的に塗布したときに鼻出血を治療するのに有効であり、該次没食子酸ビスマスは、該組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで存在しており、該血管収縮剤は、該組成物中にて、鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効な重量パーセントで存在しており、次没食子酸ビスマスの該重量パーセントおよび該血管収縮剤の該重量パーセントは、鼻出血に罹っている患者に該組成物を投与したときに共同して鼻出血を止めるか遅くするのを助けるのに有効である、
組成物。
【請求項2】
前記組成物が、3〜99.999999重量パーセントの次没食子酸ビスマスである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、0.00001〜20重量パーセントの血管収縮剤である、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項4】
前記血管収縮剤が、エピネフリン、フェニレフリン、オキシメタゾリン、ノルエピネフリン、フェニルプロパノールアミン、プソイドエフェドリン、ナファゾリン、キシロメタゾリン、プロピルヘキセドリン、レポデソキシエフェドリン、エフェドリン、アドレノクロム、テトラヒドロゾリン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
前記血管収縮剤が、鼻腔内塗布後にフェニレフリンが血管収縮効果を示すのと少なくとも同程度の期間にわたって血管収縮効果を示す血管収縮剤、およびそれらの混合物からなる群から選択される、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
前記血管収縮剤が、オキシメタゾリンである、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項7】
前記組成物が、ペーストである、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物が、さらに、アルギン酸カルシウムを含有する、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
さらに、アプリケータ器具を含み、前記組成物が、該アプリケータ器具上に配置されている、前出の請求項のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
鼻出血を治療する方法であって、鼻出血に罹っている患者に、請求項1〜8のいずれかに記載の組成物の有効量を投与する工程を包含する、方法。
【請求項11】
前記投与工程が、前記組成物をアプリケータ器具上に配置して提供する工程、次いで、該アプリケータ器具を前記患者の鼻腔内に適用する工程を包含する、請求項10に記載の方法。

【公表番号】特表2008−540434(P2008−540434A)
【公表日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−510151(P2008−510151)
【出願日】平成18年5月3日(2006.5.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/016922
【国際公開番号】WO2007/027236
【国際公開日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(507363853)ビンヤーコ, エルエルシー (1)
【Fターム(参考)】