説明

(+)−(2S,3S)−2−(3−クロロフェニル)−3,5,5−トリメチル−2−モルホリノール、その塩および溶媒和物を調製するためのジアステレオマー動的速度論分割プロセス

動的速度論分割を介して(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩および製薬上許容し得る溶媒和物、例えば(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を調製するための方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラセミ体(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの動的速度論分割により(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩および製薬上許容し得る溶媒和物、例えば(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩、を作製するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールおよびその製薬上許容し得る塩、およびその製薬上許容し得る溶媒和物、ならびにこれらを含む医薬組成物は、うつ病、注意欠陥多動性障害(ADHD)、肥満、片頭痛、疼痛、性機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、季節性情動障害(SAD)、コカイン中毒、アルコール中毒、およびニコチン含有製品(特に、タバコ)中毒といった数多くの疾患または障害を治療する際に用いられている。
【0003】
幾つかの参考文献には、(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールからの(+)-(2S, 3S)-または(-)-(2R, 3R)-エナンチオマーの調製について記載されている。例えば、Jerussiらに対して2002年1月29日に発行された米国特許第6,342,496号明細書、Fangらに対して2002年1月8日に発行された米国特許第6,337,328号明細書、米国特許出願公開第2002/0052340号明細書および第2002/0052341号明細書、ならびに国際公開第01/62257号パンフレットを参照されたい。係属中の米国出願第10/147,588号も参照されたい。同様に興味深いのは、米国特許第6,274,579号明細書、第6,391,875号明細書および第6,734,213号明細書である。
【0004】
米国特許第6,337,328号明細書、米国特許出願公開第2002/0052341号明細書、国際公開第01/62257号パンフレット、および米国出願第10/147,588号では、ラセミ体(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールから(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを調製するためのキラル酸分割方法が言及されている。しかし、これらの参考文献各々に記載されている方法は、本発明とは手順と結果の両方の点で異なる。これらの参考文献はラセミ体の化学分割に関するものであるが、本発明はラセミ体の動的速度論分割に関係している。ラセミ体の単純な化学分割の場合、これらの参考文献では、ジアステレオマー塩の混合物から所望のジアステレオマーであるモルホリノールを単離しなければならない。そのため、所望のジアステレオマーの最大収率はせいぜい約50%にしかなり得ない。
【0005】
一般に、FangらやJerussiらなどによる大抵のラセミ物質化学分割法では、所望のエナンチオマーまたは鏡像ジアステレオ異性体が50%の最大理論収率で生成する。一般に、望ましくないエナンチオマーまたは鏡像ジアステレオ異性体は、廃棄物として母液中に捨てられる。
【0006】
プロキラル基質に対するキラル酵素反応によって特定のエナンチオマーの100%の最大理論収率を達成し得る例が幾つかある。このプロセスは「酵素的加水分解非対称化(enzymatic hydrolytic desymmetrization)」と称されこともある。5種の密接に関連する化合物についてのかかるプロキラル基質に対するキラル酵素反応は、5種の密接に関連する化合物について"Enantioselective Hydrolysis of cis-3,5-Diacetoxycyclopentene: 1R, 4S-(+)-4-Hydroxy-2-cyclopentenyl Acetate", Deardorff, D. R., Windham, C. Q. and Craney, C. L., Org. Synth. Coll. Vol. IX, 1998, 487-493に記載されている。
【0007】
同様に、動的速度論分割を利用することにより、分割中のエナンチオマーの平衡化(equilibration)を介して所望の特定のエナンチオマーの100%の最大理論収率を与え得る例が幾つかある。この稀なタイプの化学動的速度論分割の1例は、Reider, P. J., Davis, P., Hughes, D. L. and Grabowski, E. J. J., J. Org. Chem., 1987, 52, 955中に見出すことができる。主として単一のジアステレオ異性体を生じる稀なα-置換ケトン還元型動的速度論分割の1例は、Yamada, S., Mori, Y., Morimatsu, K., Ishizu, Y., Ozaki, Y., Yoshioka, R., Nakatani, T., and Seko, H., J. Org. Chem., 1996, 61, 8586に記載されている。
【0008】
一般に、単一の純粋なジアステレオ異性体(2個のキラル中心を持つ化合物)を調製する場合、真のジアステレオ異性体動的速度論分割は極めて稀である。何故なら、2個のキラル中心が共に平衡化させ得るものでなくてはならないからである。この特殊なケースのジアステレオ異性体動的速度分割では、4種の想定し得るキラルジアステレオ異性体のうちの1種のみが形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを、その2個のキラル中心を含有するラセミ体から、単純な化学的単離プロセスに典型的な約50%の収率よりも高い収率で生成する反応が必要とされている。特に、この化合物を100%に近い収率で、すなわち、約60%より高い収率、好ましくは約75%より高い収率で生成することが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明により、該化合物(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールおよび/または所望の塩もしくは溶媒和物形態を、対応するラセミ体(該ラセミ体を本明細書中では(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールと呼ぶ)から調製する動的速度論分割方法を提供する。
【0011】
本発明を従来の単離方法(例えば、単純な化学的単離または分割)と比較した場合、本発明に従えば、ずっと高い収率(約50%より高い収率、通常は約80%より高い収率)が得られることは明白であろうと考えられる。さらに、恐らく(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールのキラル塩をジアステレオマー塩の混合物から単離する必要がなくなる。その上、廃棄物として処理する使い残しの母液が殆どまたは全く存在しなくなると考えられる。
【0012】
本発明は、本明細書中の概略図で説明した通り、弱塩基性〜塩基性pH、すなわち約pH8〜約pH12でジアステレオ異性体動的速度論分割を実施することにより、これらの所望の効果のうちの1つ以上を達成するものである。概略図に示すように、これによって望ましくない2R, 3R-モルホリノールが「ほどけて(unravel)」望ましくない2R-ヒドロキシブプロピオンとなり、続いてラセミ化されるかまたは所望の2S-ヒドロキシブプロピオンと平衡化し、その後これが「もつれて(ravel)」所望の2S, 3S-モルホリノールとなって、非晶質または好ましくは結晶形態の固体酸塩として析出する。この方法により、所望のキラル酸塩が約60%より高い収率、好ましくは約80%〜約100%の収率、最も好ましくは約90%〜約100%の収率で生成し、好ましくは殆どまたは全く母液が残らない。このことは環境にとって有益であり得るし、かつ/またはこれにより母液を処理する前のさらなる加工がいらなくなる。
【0013】
つまり、本発明は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールをその遊離塩基、その塩形態、またはそれら両方として調製するためのプロセスであって、(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの2個のキラル中心を平衡化させることによる動的速度論分割を含む前記プロセスを提供する。
【0014】
要約すると、本発明は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを作製するためのプロセスであって、
(1) 溶媒中に溶かした(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを少なくとも1種の塩基で処理することにより、約pH8〜約pH12のpHを有する溶液を得ること、
(2) 溶液のpHを追加の塩基を加えることにより約pH8〜約pH12に維持しつつ、少なくとも0.5当量のキラル酸を攪拌しながら(好ましくはゆっくり)加えること、
(3) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望のキラル酸塩の種結晶を攪拌しながら加えること、および
(4) 少なくとも0.5当量の追加のキラル酸を(必要であれば追加の塩基を加えながら)pH8〜pH12で(好ましくはゆっくりと)加え、その後この溶液のpHを、該溶液のpHが約pH6〜約pH8に達するまで酸で調整すること
を含む上記プロセスを提供する。
【0015】
好適な実施形態では、本発明は、(+)-(2S,3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを作製するためのプロセスであって、
(1) 溶媒中に溶かした(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを少なくとも1種の塩基で処理することにより、約pH8〜約pH12のpHを有する溶液を得ること、
(2) 溶液のpHを追加の塩基を加えることにより約pH8〜約pH12に維持しつつ、少なくとも0.5当量のキラル酸を攪拌しながら(好ましくはゆっくりと)加えること、
(3) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望のキラル酸塩の種結晶を攪拌しながら加えること、
(4) 少なくとも0.5当量の追加のキラル酸を(必要であれば追加の塩基を加えながら)pH8〜pH12で(好ましくはゆっくりと)加え、その後この溶液のpHを、該pHが約pH6〜約pH8に達するまで酸で調整すること、
(5) 析出した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体(結晶または非晶質)酸塩を単離すること、
(6) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体(結晶または非晶質)酸塩を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基に転換すること、
(7) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩に転換すること、および
(8) 段階7の塩を再結晶化させることにより、より純粋な形態の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩を生成すること
を含む上記プロセスを提供する。
【0016】
下記概略図に、本発明のモルホリノールの動的速度論分割方法を詳述する。
【化1】

【0017】
本発明のさらなる実施形態では、本明細書中に記載したプロセスに従って調製した活性成分である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物を少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に含む医薬組成物を提供する。
【0018】
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書中に記載したプロセスに従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物を少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に含む活性成分を、哺乳動物(好ましくはヒト)に投与(好ましくは経口投与)することを含む治療方法を提供する。
【0019】
別の実施形態では、本明細書中に記載したプロセスに従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物の、医薬品の製造における使用を提供する。かかる医薬品は、うつ病(大うつ病および双極性うつ病)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、不安神経症、肥満、片頭痛、疼痛、男性および女性の両方における性機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、季節性情動障害(SAD)、アルコール中毒、コカイン中毒、およびニコチン含有製品(例えば、タバコ)中毒の治療に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
1. イントロダクション
本発明は、2個のキラル中心を持つラセミ体から単一のジアステレオ異性体である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを作製するための方法を提供する。このプロセスは結晶化により誘導される不斉変換の1例であり、「二次不斉変換(a second-order asymmetric transformation)」とも称されるが、平衡化させるキラル中心が2個存在するという重要な特徴を備えている(1個のキラル中心を平衡化する不斉変換については、"Crystallization-Induced Asymmetric Transformations" Jacques, J., Collet, A. and Wilen, S. H. Enantiomers, Racemates and Resolutions, Krieger Publishing Company, Malabar, FL, 1991, Chapter 6, pp. 369-377を参照されたい)。“Enantioselective Synthesis: The Optimum Solution”, Partridge, J. J. and Bray, B. L., Process Chemistry in the Pharmaceutical Industry, (Gadamasetti, K. G., Ed.) Marcel Dekker, New York, NY, 1999, pp. 314-315に開示されているように、これらのプロセスもまた動的速度論分割と称される。
【0021】
本発明のプロセスでは、次の段階:
(1) 溶媒中に溶かした(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを少なくとも1種の塩基で処理することにより、約pH8〜約pH12のpHを有する溶液または混合物を得ること、
(2) 溶液または混合物のpHを追加の塩基を加えることにより約pH8〜約pH12に維持しつつ、少なくとも0.5当量のキラル酸を攪拌しながら(好ましくはゆっくりと)加えること、
(3) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望の酸塩の種結晶を攪拌しながら加えること、および
(4) 少なくとも0.5当量の追加のキラル酸を(必要であれば追加の塩基を加えながら)pH8〜pH12で(好ましくはゆっくりと)加え、その後この混合物または溶液のpHを、該溶液または混合物のpHが約pH6〜約pH8に達するまで酸で調整すること、
を実施する。
【0022】
好適な実施形態では、次の追加の段階:
(5) 析出した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体(結晶または非晶質)酸塩を単離すること、
(6) 析出した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体(結晶または非晶質)酸塩を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基に転換すること、
(7) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩に転換すること、および
(8) 段階7の塩を再結晶化させることにより、より純粋な形態の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩を生成すること、
を実施する。
【0023】
上記プロセスの目的は、99%+エナンチオマー過剰率(99%ee)の純粋な(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩を生成することである。
【0024】
2. (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールおよび製薬上許容し得る塩を調製するためのジアステレオマー動的速度論分割プロセス
段階1:溶媒中に溶かした(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを少なくとも1種の塩基で処理することにより、約pH8〜約pH12のpHを有する溶液または混合物を得ること。
【0025】
この段階では、(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを溶媒中に溶かす。
【0026】
適切な溶媒としては、プロトン性溶媒(例えば、メタノールおよびエタノール)、ケトン(例えば、アセトン)、ならびに混合溶媒(例えば、水-アセトニトリル、メタノール-アセトニトリル、水-アセトン、水-ジメチルホルムアミド) などが挙げられる。所与の溶媒または溶媒の組み合わせにおけるラセミ体モルホリノールの典型的な濃度は、約0.01モル濃度〜約2.0モル濃度である。溶媒の種類および量は、(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを完全にまたは十分に溶かす(つまり、30%以上溶かす)ように選択すべきである。通常の実験または他の公知の方法を利用して採用する所望の溶媒を選択し、かつ該溶媒の量を調整することにより、動的速度論分割を効率的に生じさせて所望のキラル最終生成物:(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの収率を高めることができる。
【0027】
溶かした(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを塩基で処理する。加える塩基の種類および量は、約pH8〜約pH12のpHを有する溶液が得られるように選択すべきである。約pH8〜約pH12の塩基性pHでは、望ましくない2R, 3R-モルホリノールが「ほどけて」望ましくない2R-ヒドロキシブプロピオンとなり、続いてラセミ化されるかまたは所望の2S-ヒドロキシブプロピオンと平衡化し、その後これが「もつれて」所望の2S, 3S-モルホリノールとなって、固体酸塩として結晶化または析出する。これにより、母液を殆どまたは全く残すことなく所望のキラル酸塩を約80〜100%の収率で生成することが可能となるだろう。
【0028】
適切な塩基としては、第3級アミン塩基(例えば、トリメチルアミンおよびトリエチルアミン)、芳香族塩基(例えば、ピリジン)、無機塩基(例えば、水酸化アンモニウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、重炭酸カリウム、炭酸カリウムおよび水酸化カリウム)が挙げられるが、これらに限定されない。溶かすラセミ体と塩基との比率は約10:1〜約1:1にするとよい。
【0029】
約pH8〜約pH12のpHを有する溶液または混合物が生じる。約pH9〜pH11のpH範囲が好ましい。
【0030】
段階2:前記溶液のpHを追加の塩基を加えることにより約pH8〜約pH12に維持しつつ、少なくとも0.5当量のキラル酸を約30〜約300毎分回転数(rpms)で攪拌しながら(好ましくはゆっくりと)加えること。
【0031】
段階2と段階4を合わせると、合計で少なくとも1.0当量必要であることが分かる。段階2と4で合わせて最大約2.0当量のキラル酸を用いることができる。キラル酸の種類および量は、利用可能な所望のエナンチオマーの全てとキラル酸塩を形成するように選択すべきである。加えるキラル酸が少な過ぎる(約1当量未満)と、所望のキラル酸塩の収率が下がり、結果として所望のキラル最終生成物:(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの収率が下がる。1当量より多くのキラル酸を加えても、所望の高収率を損なうことはないはずである。
【0032】
適切なキラル酸としては、限定するものではないが、L-酒石酸、D-酒石酸、(-)-(R, R)-ジ-p-ベンゾイル-L-酒石酸、(+)-(S, S)-ジ-p-ベンゾイル-D-酒石酸、(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸、(+)-(S, S)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、(-)-(1R)-10-カンファースルホン酸、(+)-(1S)-10-カンファースルホン酸、D-またはL-リンゴ酸、D-またはL-マンデル酸などが挙げられる。
【0033】
キラル酸は、攪拌しながら好ましくはゆっくりと加える。好ましくは、キラル酸は、固体形態の、懸濁液中、もしくは溶液中の該キラル酸を少しずつ(一定分量で)または毎分約1グラム〜100グラムのキラル酸という速度で加えることにより、ゆっくりと加える。攪拌が速過ぎると、結晶化が均一とならない可能性があり、かつ/または攪拌シャフトが壊れる可能性があるかあるかもしくは攪拌シャフトモーターがオーバーヒートする可能性がある。攪拌が遅過ぎると、結晶化が均一とならない可能性があるか、または結晶化が速く進み過ぎて大量の固体がひと塊になってしまう可能性がある。これは望ましくないことであるばかりか、攪拌シャフトの破損または攪拌シャフトモーターのオーバーヒートを引き起こす可能性もある。攪拌は約30〜約300毎分回転数(約30〜約300rpms)の速度とする。
【0034】
攪拌は、任意の手段により、例えば、多種類の市販されているパドル式攪拌機(例えば、焼結ガラス濾過漏斗、グーチ濾過器、パンフィルター、およびローゼンムンド濾過器)のうちの1つを用いた機械的攪拌により、提供してもよい。
【0035】
この段階では、pHを約pH8〜約pH12に維持する。約pH9〜約pH11のpH範囲が好ましい。ここでもやはり、pHは本発明のジアステレオ異性体動的速度論分割を実施する上で重要である。塩基性pH、すなわち約pH8〜約pH12では、望ましくない2R, 3R-モルホリノールが「ほどけて」望ましくない2R-ヒドロキシブプロピオンとなり、続いてラセミ化されるかまたは所望の2S-ヒドロキシブプロピオンと平衡化し、その後これが「もつれて」所望の2S, 3S-モルホリノールとなって、固体酸塩として結晶化または析出する。
【0036】
pHが高過ぎる(約pH12〜約14)と、これによって分割剤が鹸化される場合がある。例えば、最も望ましい分割剤(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸の一部であるp-トルオイルエステルは、鹸化されて分解物−p-トルイル酸の塩基性塩(すなわち、例としてp-トルイル酸ナトリウム塩)およびL-酒石酸(すなわち、例としてL-酒石酸モノ-またはジナトリウム塩)を与える場合がある。高過ぎるpHでは、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基が分解物−メタ-クロロ安息香酸の塩基性塩(すなわち、例としてメタ-クロロ安息香酸ナトリウム塩)を含む多数の副生成物に分解される場合もある。
【0037】
pHが低過ぎる(約5〜7未満のpH)と、2R-および2S-ヒドロキシブプロピオン分子(上記概略図を参照されたい)を介した(-)-(2R, 3R)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールへの平衡化が生じない場合がある。
【0038】
このpHを維持するために追加の塩基を加えてもよい。先に挙げた塩基はいずれも適している。しかし、好ましくは、本発明の動的速度論分割プロセスを通じて同じ塩基を使用する。典型的には、追加の塩基は、固体もしくは液体形態で、懸濁液中または溶液中の該塩基を滴加するかまたは毎分約0.5グラム〜毎分約50グラムの速度で加えることによって、ゆっくりと加える。
【0039】
段階3:(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望の酸塩の種結晶を攪拌しながら加えること。
【0040】
この段階では、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールのキラル酸塩の種結晶を攪拌しながら加える。該種結晶を加えて所要の塩の表面積を少し与えることで、より多くの所望の塩が晶出するように促すかまたは刺激する。(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールが望まれていることから、該(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールのキラル塩を「蒔く」とよい。このように、本発明に従えば、分割を「推進する(drive)」ことによって(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望の酸塩を最大100%近く生成することができる。前記種結晶は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの純粋なサンプルを等モル量の所望の酸(例えば、(-)-(R,R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸)と反応させることによって取得する。
【0041】
加える種結晶の量としては、好適な例として約10mg(約10mLを総反応容量とする小実験室規模の反応の場合)〜約1.0グラム(約1リットル〜数リットルを総反応容量とする大規模反応の場合)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩が挙げられるが、これに限定されない。十分な種結晶を加えないと結晶化が進まない。加える種結晶が多過ぎると、より多くの結晶表面積が反応混合物に曝露されることになるため所望の結晶化がより速く進む可能性があり、これが上記と同じ攪拌上の問題をもたらす可能性がある。所与の反応に用いる種結晶の量の決定方法は、種結晶により誘導される結晶化の分野の当業者にとって周知の手順である。
【0042】
選択的結晶化は段階3(3)の最中に始まって段階4(4)の開始後に終わる。この選択的結晶化において、酸塩が析出または晶出する。
【0043】
この段階で実施する攪拌は、機械的攪拌、例えば、多種類の市販のパドル式攪拌機のいずれかを用いて、約30〜約300毎分回転数(rpms)、好ましくは約50rpms〜約250rpms、および最も好ましくは約75rpms〜約200rpmsの攪拌速度で行うことができる。攪拌が速過ぎるかまたは遅過ぎると、上記と同じ問題が起きる可能性がある。
【0044】
段階4:少なくとも0.5当量の追加のキラル酸を(必要であれば追加の塩基を加えながら)pH8〜pH12でゆっくりと加え、その後この混合物または溶液のpHを、該溶液または混合物のpHが約pH6〜約pH8に達するまで酸で調整すること。
【0045】
この段階では、少なくとも0.5当量の追加のキラル酸(これまでの段階で選択したものと同じキラル酸を加えることが好ましい)を、必要であれば追加の塩基を加えながら、pH8〜pH12で加える。その後、この混合物または溶液のpHをキラル酸で調整して約pH6〜約pH8とする。追加のキラル酸を好ましくはゆっくりと、好ましくは約1〜4時間以内に加えることにより、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの非晶質、結晶、または析出した酸塩を生成する。ゆっくりとした添加は、段階2で先に記載した通りに行う。
【0046】
追加のキラル酸を加えながら、反応混合物を約pH6〜約pH8のpHまで滴定する。好ましいpH範囲は約pH6.5〜約pH7.5である。この滴定の目的は、反応混合物を「中性の」(すなわち、pH7に近い)pHにすることである。この最終的なpH7への「中和」は、塩酸または硫酸などの比較的安価なアキラル酸を用いて行うこともできる。
【0047】
段階5:(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体酸塩の単離。
【0048】
この段階では、段階4(4)で得た固体を単離する。単離は、固体単離分野の当業者に公知の任意の適切な方法によって実施することができる。例えば、単離を、焼結ガラス濾過漏斗、グーチ濾過器、パンフィルターまたはローゼンムント濾過器上で実施することができる。また単離は、所望の生成物である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの酸塩の固体塊から液相をデカントすることによって実施してもよい。好ましくは、濾過を利用する。
【0049】
段階6:段階5(5)で得た(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの結晶性酸塩の、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基への転換。
【0050】
アミン含有化合物は、そのアミンが非プロトン化形態または非塩形態である場合、一般に「アミン遊離塩基」または「遊離塩基」と称される。この段階では、モルホリノールの固体酸塩をその遊離塩基形態に転換する。これは、pHが約pH10よりも高くなるまで該酸塩を水中で塩基、好ましくは過剰な強塩基(例えば、水酸化アンモニウム、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウム)で処理することにより達成することができる。pHはキラル酸分割剤をその塩基性塩(すなわちアンモニウム塩、ナトリウム塩)に転換し得るほど十分に塩基性でなければならないが、キラル酸分割剤が鹸化されるか、さもなければ所望の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基が段階2で上記したように分解されるほど塩基性(約pH12〜約pH14)であってはならない。塩基の種類および量は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの結晶性酸塩の全てがその遊離塩基形態に完全にまたは十分に(約90%以上)転換されるように選択すべきである。
【0051】
その後、この反応混合物からの遊離塩基の単離を、該遊離塩基を有機溶媒(例えば、塩化メチレン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、メチルt-ブチルエーテルなど)中に抽出することによって達成する。有機溶媒の種類および量は、遊離塩基が有機相中に完全にまたは十分に(約90%以上)抽出されるように選択すべきである。十分な有機溶媒を使用しない場合、全ての遊離塩基が水相から有機相に抽出されるとは限らない。有機溶媒を使用し過ぎると、有機相の最終的な蒸発に必要以上の時間がかかる。典型的には、用いる有機溶媒の量は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基の約0.001モル〜約10モル溶液を作製するのに必要な量、好ましくは約0.01モル〜約1.0モル溶液を作製するのに必要な量とする。その後、有機相を水相から分離する。その後、有機相を約0.5時間〜約4.0時間の期間にわたって蒸発させると、所望の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を生じる(水相にはキラル酸分割剤の水溶性塩が含まれている)。
【0052】
段階7:段階6(6)で得た(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基の、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩への転換。
【0053】
この段階は、1当量より多くの塩酸または塩化水素ガスを段階6で得た(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基の有機溶媒溶液に加えて(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩への固体形成を生じさせることにより実施することができる。この有機溶媒溶液は、メタノール、エタノール、およびアセトニトリルなどの有機溶媒から作る。さらに、貧溶媒(anti-solvent)と呼ばれる第2の溶媒を加えることで、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩への固体形成をより効率的に生じさせることもできる。第2の溶媒または貧溶媒は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩に対して初めの溶媒よりも低い溶媒和特性を有しているべきである。1当量より多くの塩酸または塩化水素ガスを反応混合物に加えると、溶液または混合物のpHは約pH1〜約pH2のpHに達し得る。塩酸または塩化水素ガスの量は、遊離塩基が塩酸塩形態に完全にまたは十分に(約90%以上)転換されるように選択すべきである。十分な塩酸または塩化水素ガスを使用しないと、転換が不完全となり、結果として収率が下がる。塩酸または塩化水素を使用し過ぎても、(過剰な廃棄物が発生すること以外は)何ら問題は無いはずである。
【0054】
また、第2の有機溶媒または貧溶媒の種類および量は、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基の溶解を助けるかまたは所望の最終生成物である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩の析出を助けるように選択すべきである。塩化水素または塩酸および溶媒の量および範囲は、有機溶媒中少なくとも約1当量の塩化水素または約1当量の塩酸(すなわち、水性溶媒中の塩化水素)とする。適切な有機溶媒としては、アルコール(例えば、メタノールおよびエタノール)、非プロトン性極性溶媒(例えば、アセトニトリル、ジメチルホルムアミドなど)が挙げられる。適切な第2の有機溶媒または貧溶媒としては、エステル(例えば、酢酸エチルおよび酢酸イソプロピル)、エーテル(例えば、ジエチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、およびジフェニルエーテル)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼンおよびトルエン)、ならびに脂肪族炭化水素(例えば、ヘキサンおよびヘプタン)を挙げることができる。実施例(下記実施例1dおよび2d)では、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩をメタノールに溶かし、濾過してから、貧溶媒である酢酸エチルを加える。真空下で十分なメタノールを選択的に除去し、その結果、主に(おそらく初めの溶媒容積の約50%〜約100%の)酢酸エチルを含む溶液から(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩が結晶化または析出する。
【0055】
存在する溶媒および貧溶媒の量は、約0.1モル〜約4.0モル溶液を調製するのに十分な量とすべきである。典型的には、貧溶媒は初めの溶媒容積の10%〜100%の量で存在する。
【0056】
塩酸塩以外に形成され得る製薬上許容し得る塩(または塩形態)としては、限定するものではないが、硫酸水素塩および他の硫酸塩、リン酸水素塩および他のリン酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、クエン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩などを挙げることができる。勿論、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩が好ましい。
【0057】
段階8:99%+エナンチオマー過剰率(99%ee)の純粋な(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を生成することを目的とした、段階7(7)で得た塩の最終的な再結晶化。
【0058】
最終的な再結晶化は、1種以上の有機溶媒または溶媒の組み合わせを用いて「研磨」濾過および結晶化を行うことにより実施する。大抵の場合、規制ガイドラインおよび規則を満たすように薬物の「最終的な結晶化」を行うためには、結晶化させる物質を十分に溶かし、その後この溶液を濾過する必要がある。「研磨濾過」と称されるこれは、最終的な結晶化または析出に先立って少量存在し得る無関係な物質(例えば、粉塵、紙、布繊維など)を除去する役割を果たす。従って、存在する溶媒の量は、全ての(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を溶かすのに十分でなければならない。使用する溶媒が少な過ぎると、全ての塩酸塩を溶かして「研磨濾過精製」を含む必要とされる手順を行うことができなくなる。溶媒が多過ぎると、最終生成物である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩の収率が下がる。
【0059】
適切な有機溶媒としては、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリルなど、またはそれらの溶媒混合物が挙げられる。有機溶媒または溶媒混合物中の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩の初期濃度は0.1モル濃度〜4.0モル濃度であり、この濃度では濾過して不溶性不純物(例えば、粉塵および関連粒子状物質)を除去することができる。
【0060】
本明細書中のさらなる発明は、本明細書中で先に記載したプロセスに従って調製した活性成分である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物を少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に含む医薬組成物を提供することである。
【0061】
前記医薬組成物は、1種以上の製薬上許容し得る担体、希釈剤、および/または賦形剤を含むことができる。担体、希釈剤、および/または賦形剤は、製剤の他の成分と適合するという意味で許容し得るものであるべきであり、かつその受容者にとって有害ではないものとすべきである。
【0062】
医薬組成物を、単位投与量当たりに所定量の活性成分を含有する単位投与形態として提供してもよい。かかる単位には、複数の単位投与形態を所定の時間に投与すると所望の治療上有効な投与量が達成されるように、治療上有効な投与量の化合物または該化合物の塩もしくは溶媒和物、あるいは治療上有効な投与量の一部(すなわち、サブ投与量(sub-dose))を含有することができる。好適な単位投与剤形は、1日量またはサブ投与量の活性成分、またはその適当な一部分を含有している剤形である。かかる医薬組成物を薬学分野で周知の方法のいずれかにより調製することができる。
【0063】
活性成分の正確な治療上有効な量は、限定するものではないが、治療する対象の齢および体重、治療を要するまさにその障害およびその重症度、製剤の性質、ならびに投与経路を含む多数の因子に左右されるが、最終的には担当の医師または獣医の裁量に委ねられる。典型的には、治療の際に施す投与量は、1日当たり約0.001mg/受容者(動物)の体重kg〜約30mg/受容者(動物)の体重kgであり、より一般的には1日当たり約0.01mg/体重kg〜約20mg/体重kgである。一般に、許容し得る1日投与量は約0.1mg/日〜約3000mg/日、好ましくは約0.1mg/kg〜約2000mg/日であり得る。単位投与量は、通常1日1回または2回以上、好ましくは1日約1〜約4回投与される。
【0064】
医薬組成物は、適切な経路、例えば経口(口腔もしくは舌下を含む)、直腸、経鼻、局所(口腔、舌下、もしくは経皮を含む)、膣内または非経口(皮下、筋内、静脈内もしくは皮内を含む)経路による投与に適合し得る。かかる組成物は、薬学分野で公知の方法により、例えば活性成分を担体、希釈剤、および/または賦形剤と会合させることにより、調製することができる。経口投与が最も好ましい。
【0065】
本プロセスによって調製した1種以上の化合物を、1種以上の非毒性の製薬上許容し得る成分、および任意で他の活性な抗増殖剤と共に存在させることにより、医薬組成物を形成してもよい。これらの組成物は、Remington's Pharmaceutical Sciences (Fourteenth Edition), Managing Editor, John E. Hoover, Mack Publishing Co., (1970)またはPharmaceutical Dosage Form and Drug Delivery Systems (Sixth Edition), edited by Ansel et al., publ. by Williams & Wilkins, (1995)に教示されているような当分野で公知の技術を応用することによって調製することができる。
【0066】
投与経路に応じて、前記組成物を、エアロゾル、クリーム、エリキシル、エマルジョン、フォーム、ホイップ、ゲル、顆粒、ウエハース、キャンディー、吸入剤、ローション、マグマ、軟膏、経口固形物、速溶性の舌テープ(またはシート)、粉末、スプレー、シロップ、坐剤、懸濁物、錠剤、カプセル、およびチンキ剤などの別個単位の形態とすることができる。錠剤、カプセル、顆粒および粉末が好ましい。錠剤およびカプセルがより好ましい。1日1回服用する錠剤またはカプセルが最も好ましい。これらの別個の単位を調製する方法は、製剤分野では周知である。
【0067】
本発明のさらに別の実施形態では、本明細書中に記載したプロセスに従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその溶媒和物を含む治療上有効な量の活性成分を少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に哺乳動物に投与(好ましくは経口投与)することを含む治療方法を提供する。本明細書中で使用する場合、「治療」という用語は、特定の症状を緩和すること、該症状の1つ以上の徴候を取り除くかまたは軽減すること、該症状の進行を遅くするかまたは止めること、および以前に罹患したかまたは診断された患者または被験体における該症状の再発を予防するかまたは遅らせることを指す。本明細書中で使用する場合、「治療上有効な量」という用語は、例えば医師、研究者、または臨床医によって求められる、活性成分を投与する対象において細胞培養物、組織、系、動物(ヒトを含む)の生物学的または医学的応答を引き出すのに十分な該活性成分の量を意味する。
【0068】
別の実施形態では、本明細書中に記載したプロセスに従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物の、医薬品の製造における使用を提供する。かかる医薬品は、うつ病(大うつ病および双極性うつ病)、注意欠陥多動性障害(ADHD)、不安神経症、肥満、片頭痛、疼痛、男性および女性の両方における性機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、季節性情動障害(SAD)、アルコール中毒、コカイン中毒、およびニコチン含有製品(例えば、タバコ)中毒の治療に使用することができる。
【実施例】
【0069】
実験01a
合計255.8gm(1.0モル)の(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを1.0リットルのエタノールに溶かし、十分なトリエチルアミンを加えながら室温で攪拌することにより、不活性雰囲気下でこの溶液のpHを約pH11とする。
【0070】
この溶液を機械的に攪拌しつつ、該溶液に、(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸の一部ならびに該溶液のpHを約pH11に維持するために必要であれば追加のトリエチルアミン塩基を、この混合物が均一になるまで攪拌しながら加える。143.2gm(0.5モル)の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を加えてその均一溶液を約pH11で10分間維持した後に、均一溶液は維持されなくなるが該溶液のpHは依然として約pH9〜約pH11を示すようになるまで追加の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を加えてもよい。この時点で、若干不均一となった溶液に、10mg〜1.0gmの(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を蒔く。この混合物を2時間攪拌することにより、該溶液からの所望の塩の析出(または結晶化)を促す。
【0071】
攪拌を続けながら、追加の143.2gm(0.5モル)の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を2時間の期間にわたって少しずつ加える。必要であれば、トリエチルアミン塩基を加えることにより溶液のpHを約pH6.5〜pH7.5に保つことができる。この不均一混合物を室温で一晩攪拌する。その後、該混合物を濾過し、固体の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を濾過により回収して乾燥させる。
【0072】
実験01b
合計485gm(0.90モル)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を、1.5リットルの酢酸エチルと1.5リットルの脱イオン水とからなる1:1混合物中に懸濁し、懸濁物を3.0〜3.5当量の水性水酸化アンモニウムで処理することにより懸濁した酸塩を溶かす。有機相を分離し、水相を1.0リットルの酢酸エチルで抽出する。その後有機相を分離したら、水相は廃棄することができる。有機相を合わせ、1リットルの脱イオン水に続いて1リットルの塩水で洗浄する。この有機相を分離し、真空下で濃縮することにより、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を得る。
【0073】
実験01c
合計200gmの(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を、必要に応じて加熱しながら1リットルの酢酸エチルに溶かす。メタノール中の塩酸の5〜6モル溶液を、白色析出物が形成されかつ該溶液のpHが約pH1〜約pH2に達してそのまま維持されるまで加える。この混合物を1時間攪拌し、攪拌しながら10℃に冷やす。その後、所望の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を濾過によって単離し、この固体を49:1酢酸エチル-メタノールで洗浄してから真空下で乾燥させる。このようにして、最大99+%エナンチオマー過剰率(99+%ee)の純粋な品質の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を調製する。
【0074】
実験01d
必要に応じて、前記(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を研磨濾過および結晶化に供することができる。この塩を十分なメタノールに溶かして均一溶液を得てから、該溶液を焼結ガラス濾過漏斗を使用して濾過することによりあらゆる不活性粒子状物質を取り除く。濾過した溶液を1〜3容量の酢酸エチルで希釈し、減圧下で濃縮することにより、メタノールの一部を選択的に除去し、結晶化を誘導する。この不均一溶液を2〜4時間攪拌して結晶化プロセスを終える。(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩の固体塊を濾過によって回収し、乾燥させる。このようにして、最大99+%エナンチオマー過剰率(99+%ee)の純粋な品質の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を調製する。
【0075】
実験02a
合計255.8gm(1.0モル)の(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを1.0リットルのエタノールに溶かし、十分なトリエチルアミンを加えながら室温で攪拌することにより、不活性雰囲気下でこの溶液のpHを約pH10とする。この溶液を機械的に攪拌しつつ、該溶液に、(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸の一部ならびに該溶液のpHを約pH10に維持するために必要であれば追加のトリエチルアミン塩基を、この混合物が均一になるまで攪拌しながら加える。143.2gm(0.5モル)の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を加えた後、この均一溶液をpH10で10分間維持する。均一溶液が維持されなくなりかつ該溶液のpHが約pH9〜約pH10となるまで、追加の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を加える。この時点で、若干不均一となった溶液に、10mg〜1.0gmの(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を蒔く。その後、この混合物を2時間攪拌することにより、該溶液からの所望の塩の析出を促す。攪拌を続けながら、追加の143.2gm(0.5モル)の(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸を2時間にわたって少しずつ加える。必要であれば、トリエチルアミン塩基を加えることにより該溶液のpHを約pH6.5〜pH7.5に保つことができる。その後、この不均一混合物を室温で一晩攪拌する。その後、該混合物を濾過し、固体の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を濾過により回収して乾燥させる。
【0076】
実験02b
合計485gm(0.90モル)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩を、1.5リットルの酢酸エチルと1.5リットルの脱イオン水とからなる1:1混合物中に懸濁する。懸濁物を約3.0〜3.5当量の水性水酸化アンモニウムで処理することにより懸濁した塩を溶かす。有機相を分離し、水相を1.0リットルの酢酸エチルで抽出する。有機相を分離し、水相は廃棄することができる。有機相を合わせ、1リットルの脱イオン水に続いて1リットルの塩水で洗浄する。この有機相を分離し、真空下で濃縮することにより、粗(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を得る。
【0077】
実験02c
合計200gmの粗(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を、必要に応じて加熱しながら1リットルの酢酸エチルに溶かす。メタノール中の塩酸の5〜6モル溶液を、白色析出物が形成されかつ該溶液のpHが約pH1〜約pH2に達してそのまま維持されるまで加える。この混合物を1時間攪拌した後、攪拌しながら10℃に冷やす。所望の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を濾過によって単離し、この固体を49:1酢酸エチル-メタノールで洗浄してから真空下で乾燥させる。このようにして、最大99+%エナンチオマー過剰率(99+%ee)の純粋な品質の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を調製する。
【0078】
実験02d
必要に応じて、前記(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を研磨濾過および結晶化に供することができる。この塩を十分なメタノールに溶かして均一溶液を得てから、該溶液を焼結ガラス濾過漏斗を使用して濾過することによりあらゆる不活性粒子状物質を取り除く。濾過した溶液を1〜3容量の酢酸エチルで希釈し、減圧下で濃縮することにより、メタノールの一部を選択的に除去し、結晶化を誘導する。この不均一溶液を2〜4時間攪拌して結晶化プロセスを終えてから、(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を濾過により回収して乾燥させる。このようにして、最大99+%エナンチオマー過剰率(99+%ee)の純粋な品質の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を調製する。
【0079】
本出願において参照した全ての引用特許、刊行物、同時係属出願、および仮出願は、参照により本明細書中に含まれるものとする。
【0080】
本発明をここまで記載してきたが、本発明を多くの点で変更し得ることは明らかであろう。かかる変更は本発明の精神および範囲からの逸脱とみなされるものではなく、また当業者であれば明らかなように、かかる改変は全て本発明の特許請求の範囲内に含まれるものと意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールをその遊離塩基、その塩形態、またはそれら両方として調製するためのプロセスであって、(+/-)-(2R*, 3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの2個のキラル中心を平衡化させることによる動的速度論分割を含む上記プロセス。
【請求項2】
以下の段階:
(1) 溶媒に溶かした(+/-)-(2R*,3R*)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールを少なくとも1種の塩基で処理することにより、約pH8のpHから約pH12のpHを有する溶液を得ること、
(2) 溶液のpHを追加の塩基を用いて約pH8〜約pH12に維持しつつ、少なくとも0.5当量のキラル酸を攪拌しながら加えること、
(3) (+)-(2S,3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの所望のキラル酸塩の種結晶を攪拌しながら加えること、および
(4) 少なくとも0.5当量の追加のキラル酸を、必要であれば追加の塩基を加えながらpH8〜pH12で加え、その後この混合物のpHを、該pHが約pH6〜pH8に達するまで酸で調整すること、
を含む、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
前記キラル酸が保護または非保護のキラル酒石酸である、請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
前記キラル酸が、L-酒石酸、D-酒石酸、(-)-(R, R)-ジ-p-ベンゾイル-L-酒石酸、(+)-(S, S)-ジ-p-ベンゾイル-D-酒石酸、(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸、(+)-(S, S)-ジ-p-トルオイル-D-酒石酸、および(-)-(1R)-10-カンファースルホン酸、(+)-(1S)-10-カンファースルホン酸、D-リンゴ酸、L-リンゴ酸、D-マンデル酸またはL-マンデル酸からなる群より選択される、請求項2記載のプロセス。
【請求項5】
前記キラル酸が(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸である、請求項4記載のプロセス。
【請求項6】
前記キラル酸が、置換または非置換のキラルカンファースルホン酸である、請求項2記載のプロセス。
【請求項7】
前記キラルカンファースルホン酸が、(-)-(1R)-10-カンファースルホン酸および(+)-(1S)-10-カンファースルホン酸からなる群より選択される、請求項6記載のプロセス。
【請求項8】
前記塩基が無機塩基または有機塩基である、請求項2記載のプロセス。
【請求項9】
前記無機塩基が、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属水酸化物、および水酸化アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種の無機塩基である、請求項8記載のプロセス。
【請求項10】
前記アルカリ金属炭酸水素塩が炭酸水素ナトリウムおよび炭酸水素カリウムからなる群より選択され、かつ前記アルカリ金属炭酸塩が炭酸ナトリウムおよび炭酸カリウムからなる群より選択される、請求項9記載のプロセス。
【請求項11】
前記有機塩基が、脂肪族アミン塩基および芳香族アミン塩基からなる群より選択される少なくとも1種の有機塩基である、請求項8記載のプロセス。
【請求項12】
前記有機塩基がトリエチルアミンである、請求項11記載のプロセス。
【請求項13】
前記溶媒がプロトン性溶媒である、請求項2記載のプロセス。
【請求項14】
前記プロトン性溶媒が、メタノールおよびエタノールからなる群より選択される少なくとも1種のプロトン性溶媒である、請求項13記載のプロセス。
【請求項15】
前記種結晶が(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール(-)-(R, R)-ジ-p-トルオイル-L-酒石酸塩である、請求項2記載のプロセス。
【請求項16】
前記の少なくとも1.0当量のキラル酸を約1〜約4時間の期間にわたってゆっくりと加える、請求項2記載のプロセス。
【請求項17】
前記の追加のキラル酸を約1〜約4時間の期間にわたってゆっくりと加える、請求項2記載のプロセス。
【請求項18】
前記の段階(1)の溶液または混合物が約pH9〜約pH11のpHを有する、請求項2記載のプロセス。
【請求項19】
前記の段階(2)の溶液または混合物が約pH9〜約pH11のpHを有する、請求項2記載のプロセス。
【請求項20】
前記の段階(4)の溶液または混合物が約pH6.5〜約pH7.5の最終pHを有する、請求項2記載のプロセス。
【請求項21】
以下の段階:
(5) 前記の段階(4)の溶液または混合物から(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体酸塩を単離すること
をさらに含む、請求項2記載のプロセス。
【請求項22】
前記単離を、焼結ガラス濾過漏斗、グーチ濾過器、パンフィルター、およびローゼンムンド濾過器を使用して実施する、請求項21記載のプロセス。
【請求項23】
以下の段階:
(6) 前記の段階(5)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールの固体酸塩を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基に転換すること
をさらに含む、請求項21記載のプロセス。
【請求項24】
前記固体酸塩を、塩基を用いて該酸塩の遊離塩基形態に転換する、請求項23記載のプロセス。
【請求項25】
前記塩基が過剰量の強塩基である、請求項24記載のプロセス。
【請求項26】
前記塩基が、水中の水酸化アンモニウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項25記載のプロセス。
【請求項27】
以下の段階:
(7) 前記の段階(6)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール遊離塩基を(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール酸塩に転換すること
をさらに含む、請求項23記載のプロセス。
【請求項28】
前記遊離塩基を、前記溶液または混合物のpHが約pH1のpHから約pH2のpHに達するように1当量より多くの塩酸および貧溶媒を加えるかまたは1当量より多くの塩化水素ガスおよび貧溶媒を加えることによって前記塩酸塩に転換する、請求項27記載のプロセス。
【請求項29】
前記溶媒がメタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、アセトニトリル、およびそれらの混合物からなる群より選択され、かつ前記貧溶媒が酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルエーテル、メチルt-ブチルエーテル、およびそれらの混合物からなる群より選択される、請求項28記載のプロセス。
【請求項30】
以下の段階:
(8) 前記の段階(7)の(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩を再結晶化させること
をさらに含む、請求項28記載のプロセス。
【請求項31】
前記の段階(8)の再結晶化を、1種以上の有機溶媒を用いた研磨濾過(polishing filtration)および結晶化により実施する、請求項30記載のプロセス。
【請求項32】
前記の1種以上の有機溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、およびアセトニトリルからなる群より選択される、請求項31記載のプロセス。
【請求項33】
前記酸塩の形態が、
(i) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール塩酸塩、
(ii) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール硫酸水素塩、
(iii) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールリン酸水素塩、
(iv) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールメタンスルホン酸塩、
(v) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールp-トルエンスルホン酸塩、
(vi) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールクエン酸塩、
(vii) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノールフマル酸塩、および
(viii) (+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール酒石酸塩
からなる群より選択される、請求項27記載のプロセス。
【請求項34】
請求項1に従って調製した活性成分である(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物を、少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に含む医薬組成物。
【請求項35】
うつ病、注意欠陥多動性障害、不安神経症、肥満、片頭痛、疼痛、性機能障害、パーキンソン病、アルツハイマー病、季節性情動障害、アルコール中毒、コカイン中毒、またはニコチン含有製品中毒の治療方法であって、請求項1に従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩、またはその製薬上許容し得る溶媒和物を含む活性成分を少なくとも1種の製薬上許容し得る賦形剤と共に哺乳動物に経口投与することを含む上記方法。
【請求項36】
請求項1に従って調製した(+)-(2S, 3S)-2-(3-クロロフェニル)-3,5,5-トリメチル-2-モルホリノール、その製薬上許容し得る塩または製薬上許容し得る溶媒和物の、医薬品の製造における使用。

【公表番号】特表2007−509855(P2007−509855A)
【公表日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−536738(P2006−536738)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際出願番号】PCT/US2004/034667
【国際公開番号】WO2005/044809
【国際公開日】平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願人】(597173680)スミスクライン ビーチャム コーポレーション (157)
【Fターム(参考)】