説明

(5S)−3−[(S)−フルオロ(4−トリフルオロメチルフェニル)メチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−オール誘導体およびCETP阻害剤としてのそれらの使用

本発明は、式(I)の新規テトラヒドロキノリン誘導体(式中、Rは、シクロヘキシルまたはシクロペンチルを表し、RおよびRは、各々メチルを表すか、または、一体となってシクロブタンを形成しており、Rは、シクロペンチルまたはイソプロピルを表す)、並びにそれらの塩および溶媒和物、および塩の溶媒和物に関する。それらの製造方法、疾患の処置および/または予防のための、単独でまたは組合せ中でのその使用、並びに医薬製造のためのそれらの使用、特に、心血管障害、特に低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症および動脈硬化症を処置および/または予防するためのコレステロールエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤としてのものに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規テトラヒドロキノリン誘導体、その製造方法、疾患の処置および/または予防のための、単独でまたは組合せ中でのその使用、並びに医薬製造のためのその使用、特に、心血管障害、特に低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症および動脈硬化症の処置および/または予防用のコレステロールエステル転送タンパク質(CETP)阻害剤としてのものに関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症に起因する冠動脈心疾患は、現代社会における主な死亡原因の1つである。多数の研究において、HDLコレステロールの血漿濃度が低いことは、動脈硬化症発症の重要なリスク因子であることが示された [Barter and Rye, Atherosclerosis 121, 1-12 (1996)]。LDL(低密度リポタンパク質)およびVLDL(超低密度リポタンパク質)に加えて、HDL(高密度リポタンパク質)は、その最も重要な機能が、血液中での、例えばコレステロール、コレステロールエステル、トリグリセリド、脂肪酸またはリン脂質などの脂質の輸送である、リポタンパク質のクラスである。高いLDLコレステロール濃度(>160mg/dl)および低いHDLコレステロール濃度(<40mg/dl)は、動脈硬化症の発症に実質的に寄与する[ATP III Guidelines, Report of the NCEP Expert Panel]。冠動脈心疾患に加えて、不都合なHDL/LDL比も、末梢血管障害および卒中の発症を促進する。従って、血漿中のHDLコレステロールを高める新しい方法は、動脈硬化症およびそれに関連する障害の予防および処置において、治療的に有用な進歩である。
【0003】
コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)は、血液中で異なるリポタンパク質間でのコレステロールエステルとトリグリセリドの交換を媒介する[Tall, J. Lipid Res. 34, 1255-74 (1993)]。ここで特に重要なのは、血漿HDLコレステロール濃度の低下をもたらすHDLからLDLへのコレステロールエステルの転送ある。従って、CETPの阻害は、血漿HDLコレステロール濃度の上昇および血漿LDLコレステロール濃度の低下をもたらし、かくして血漿中の脂質プロフィールに対して治療的に有効な効果をもたらすであろう[McCarthy, Medicinal Res. Rev. 13, 139-59 (1993); Sitori, Pharmac. Ther. 67, 443-47 (1995); Swenson, J. Biol. Chem. 264, 14318 (1989)]。
【0004】
薬理活性を有するテトラヒドロキノリンは、EP−A−818448、WO99/14215、WO99/15504およびWO03/028727から公知である。薬理活性を有する置換テトラヒドロナフタレンは、WO99/14174から公知である。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、障害、特に心血管障害を制御するための、改善された治療プロフィールを有する新規物質を提供することである。
【0006】
本発明は、構造式(I)
【化1】

(式中、Rは、シクロヘキシルまたはシクロペンチルを表し、RおよびRは、各々メチルを表すか、または、一体となってシクロブタンを形成しており、Rは、シクロペンチルまたはイソプロピルを表す)
の化合物並びにそれらの塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0007】
本発明は、特に、体系的名称(5'S)−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'−オールおよび構造式(Ia)
【化2】

を有する化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0008】
本発明は、また、特に、体系的名称(5'S)−2',4'−ジシクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'−オールおよび構造式(Ib)
【化3】

を有する化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0009】
本発明は、また、特に、体系的名称(5'S)−4'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−5'−オールおよび構造式(Ic)
【化4】

を有する化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0010】
本発明は、また、体系的名称(5S)−2,4−ジシクロペンチル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−オールおよび構造式(Id)
【化5】

を有する化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0011】
本発明は、また、特に、体系的名称(5S)−4−シクロヘキシル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−オールおよび構造式(Ie)
【化6】

を有する化合物並びにその塩、溶媒和物および塩の溶媒和物を提供する。
【0012】
これ以降、本発明による式(Ia)−(Ie)の化合物群を、本発明による式(I)の化合物と1個にまとめて表す。
【0013】
本発明による化合物は、他の立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)で存在することもできる。本発明は、全てのエナンチオマー、ジアステレオマーおよびそれらの各々の混合物を含む。そのようなエナンチオマーおよび/またはジアステレオマーの混合物から、立体異性体的に均一な成分を既知のやり方で単離できる。好ましいのは、式(I)中に示すC−5'およびC−3'でのS−配置である。
【0014】
本発明に関して、好ましいは、本発明による化合物の生理的に許容し得る塩である。しかしながら、それら自体は医薬適用に適さないが、例えば本発明による化合物の単離または精製に使用できる塩も含まれる。
【0015】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、鉱酸、カルボン酸およびスルホン酸の酸付加塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸および安息香酸の塩が含まれる。
【0016】
本発明による化合物の生理的に許容し得る塩には、また、常套の塩基の塩が含まれる。例えば、そして好ましくは、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩およびマグネシウム塩)およびアンモニアまたは1個ないし16個の炭素原子を有する有機アミン(例えば、そして好ましくは、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、エチルジイソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジメチルアミノエタノール、プロカイン、ジベンジルアミン、N−メチルモルホリン、アルギニン、リジン、エチレンジアミンおよびN−メチルピペリジン)から誘導されるアンモニウム塩が含まれる。
【0017】
本発明に関して、溶媒和物は、固体または液体状態で、溶媒分子との配位により錯体を形成している本発明による化合物の形態を表す。水和物は、配位が水とのものである、溶媒和物の特別な形態である。本発明に関して、好ましい溶媒和物は水和物である。
【0018】
さらに、本発明は、また、本発明による化合物のプロドラッグも含む。用語「プロドラッグ」には、それら自体は生物学的に活性であっても不活性であってもよいが、それらの体内残留時間中に(例えば代謝的または加水分解的に)本発明による化合物に変換される化合物が含まれる。
【0019】
本発明に関して、(C−C)−アルキルは、1個ないし4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルラジカルを表す。以下のラジカルは、例として、そして好ましいものとして言及し得る:メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびtert−ブチル。
【0020】
本発明は、さらに、本発明による式(I)の化合物(式中、R、R、RおよびRは、各々上記定義の通りである)の製造方法を提供し、それを、例示的に式(Ia)の化合物について示すと、式(II)
【化7】

の化合物を、最初に、不斉還元により、式(III)
【化8】

の化合物に変換し、次いで、それを、
【0021】
[A]ヒドロキシル保護基の導入により、式(IV)
【化9】

{式中、PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくは式−SiRのラジカル(式中、R、RおよびRは、同一かまたは異なり、(C−C)−アルキルを表す)を表す}
の化合物に変換し、次いで、ジアステレオ選択的還元により、式(V)
【化10】

(式中、PGは上記定義の通りである)
の化合物に変換するか、
【0022】
または、反応順序を逆にして、
[B]最初に、ジアステレオ選択的に還元し、式(VI)
【化11】

の化合物を得、次いで、それを、ヒドロキシル保護基PGの位置選択的導入により、式(V)の化合物に変換し、
【0023】
次いで、式(V)の化合物を、フッ素化剤を使用して反応させ、式(VII)
【化12】

(式中、PGは上記定義の通りである)
の化合物を得、次いで、ヒドロキシル保護基PGを、常套の方法により切断し、式(I)の化合物を得る、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、その溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換する、
ことを特徴とする。
【0024】
式(II)の化合物は、式(VIII)、(IX)および(X)
【化13】

の化合物を、3成分反応で、プロトン酸またはルイス酸の存在下、相互に反応させ、式(XI)
【化14】

の化合物を得、次いで、この化合物を式(II)の化合物に酸化することにより製造できる。
【0025】
式(VIII)および(X)の化合物は、購入できるか、文献から知られているか、または文献からわかる方法と同様に製造できる(WO99/14215およびWO03/028727参照)。
【0026】
式(IX)の化合物は、酸に触媒されるシクロプロパノンアセタールの1−(トリフェニルホスホルアニリデン)アセトンのウィティッヒ反応により、1−シクロプロピリデンアセトンを得、続いてマロン酸エステルと反応させることにより、得ることができる(スキーム1参照;WO03/028727並びに I. Kortmann, B. Westermann, Synthesis 1995, 931-933 参照)。
【0027】
個々の工程に適する不活性溶媒は、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、グリコールジメチルエーテルもしくはジエチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンもしくは鉱油留分などの炭化水素類、または、ジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、トリクロロエチレンもしくはクロロベンゼンなどのハロゲン化炭化水素類である。言及した溶媒の混合物を使用することも可能である。
【0028】
工程(II)→(III)、(IV)→(V)および(III)→(VI)の還元は、一般的に、ケトンをヒドロキシル化合物に還元するのに適する還元剤を使用して実施する。これらには、特に、錯体のアルミニウムヒドリドまたはボロヒドリド、例えば、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化カリウム、水素化ホウ素亜鉛、水素化リチウムアルミニウム、水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)、ナトリウムビス(2−メトキシエトキシ)アルミニウムジヒドリド、リチウムトリアルキルボロヒドリドまたはリチウムトリアルコキシアルミニウムヒドリド、または、ボラン錯体、例えば、ボランテトラヒドロフラン、ボランジメチルスルフィド、またはボランN,N−ジエチルアニリン錯体が含まれる。
【0029】
工程(II)→(III)の不斉還元は、キラル誘導剤としての触媒量(0.01ないし0.3mol当量)のエナンチオマー的に純粋な(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オールの存在下で実施する。この目的で好ましく使用される還元剤は、ボランN,N−ジエチルアニリン錯体である。この反応は、一般的には、上記に挙げたエーテル類の1種またはトルエン中で、好ましくはテトラヒドロフラン中で、−80℃ないし+50℃、好ましくは0℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0030】
還元(IV)→(V)および(III)→(VI)に使用する還元剤は、好ましくは水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAH)である。この反応は、一般的には、上記に挙げたエーテル類の1種またはトルエン中で、好ましくはテトラヒドロフランまたはトルエン中で、−80℃ないし+50℃、好ましくは−60℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0031】
工程(III)→(IV)または(VI)→(V)に好ましいヒドロキシル保護基は、シリル基、例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリルまたはtert−ブチルジメチルシリルである。特に好ましいのは、tert−ブチルジメチルシリルである。シリル基は、一般的に、溶媒としての上述の炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、エーテル類の1種中、またはジメチルホルムアミド中で、塩基の存在下、例えば、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、2,6−ルチジンまたは4−N,N−ジメチルアミノピリジン(DMAP)の存在下に導入する。
【0032】
工程(III)→(IV)では、使用するシリル化剤は、好ましくは、塩基としての2,6−ルチジンと組み合わせたtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネートである。この反応は、好ましくは、ジクロロメタンまたはトルエン中、−40℃ないし+40℃、好ましくは−20℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0033】
工程(VI)→(V)では、使用するシリル化剤は、好ましくは、塩基としてのトリエチルアミンおよびDMAPと組み合わせたtert−ブチルジメチルシリルクロリドである。この反応は、好ましくは、ジメチルホルムアミド中、0℃ないし+100℃、好ましくは+20℃ないし+80℃の温度範囲で実施する。
【0034】
工程(VI)→(VII)のフッ素付加は、一般的に、上述の炭化水素類またはハロゲン化炭化水素類またはアセトニトリル中、好ましくはトルエンまたはジクロロメタン中、三フッ化ジエチルアミノ硫黄(DAST)または三フッ化モルホリノ硫黄をフッ素化剤として使用して実施する。この反応は、一般的に、−80℃ないし+40℃、好ましくは−60℃ないし+20℃で実施する。
【0035】
工程(VII)→(I)におけるシリル保護基の除去は、一般的に、例えば塩酸またはトリフルオロ酢酸などの酸を利用して、または、例えばフッ化水素またはフッ化テトラブチルアンモニウム(TBAF)などのフッ化物を利用して、実施する。適する不活性溶媒は、上述のエーテル類、メタノールもしくはエタノールなどのアルコール類、または、上述の溶媒の混合物である。この除去は、好ましくは、溶媒としてのテトラヒドロフラン中、TBAFを使用して実施する。この反応は、一般的に、−20℃ないし+60℃、好ましくは0℃ないし+30℃の温度範囲で実施する。
【0036】
縮合反応(VIII)+(IX)+(X)→(XI)は、一般的に、上述のエーテル類の1種中、メタノール、エタノール、n−プロパノールもしくはイソプロパノールなどのアルコール類中、アセトニトリル中、または上述の溶媒の混合物中で実施する。好ましいのは、ジイソプロピルエーテルの使用である。
【0037】
この工程に適するプロトン酸は、一般に、例えば、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸もしくはパラ−トルエンスルホン酸などの有機酸、または、例えば、塩酸、硫酸もしくはリン酸などの無機酸である。例えば塩化アルミニウムまたは塩化亜鉛などのルイス酸も適する。好ましいのはトリフルオロ酢酸である。
【0038】
一般に、この反応は、0℃ないし+120℃、好ましくは+20℃ないし+80℃の温度範囲で実施する。
【0039】
工程(XI)→(II)の酸化(脱水素)は、一般的に、上述のハロゲン化炭化水素の1種中、または、必要に応じて、メタノールもしくはエタノールなどのアルコール中、アセトニトリル中、または水中で実施する。適する酸化剤は、例えば、硝酸、硝酸セリウム(IV)アンモニウム、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)、ピリジニウムクロロクロメート(PCC)、四酸化オスミウム、二酸化マンガン、または二酸化白金もしくはパラジウム/炭素を使用する触媒的脱水素である。好ましいのは、溶媒としてのジクロロメタン中でDDQを使用する酸化である。この酸化は、一般的に、−50℃ないし+100℃、好ましくは0℃ないし+40℃の温度範囲で実施する。
【0040】
個々の工程は、大気圧、高圧または低圧(例えば0.5ないし5bar)で実施できる。一般に、各工程は大気圧で実施する。
【0041】
本発明による式(Ib)−(Ie)の化合物の製造は、同様に実施され、下記の合成スキームにより例示説明される:
スキームa1
【化15】

【0042】
スキームa2
【化16】

【0043】
スキームb1
【化17】

【0044】
スキームb2
【化18】

【0045】
スキームc
【化19】

【0046】
スキームd
【化20】

【0047】
スキームe
【化21】

【0048】
[略号:tBu=tert−ブチル;DAST=三フッ化ジメチルアミノ硫黄;DDQ=2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン;DIBAH=水素化ジイソブチルアルミニウム;Et=エチル;Me=メチル;Ph=フェニル;p−TsOH=パラ−トルエンスルホン酸;TBAF=フッ化テトラブチルアンモニウム;TBDMSOTf=tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート;TFA=トリフルオロ酢酸]
【0049】
本発明による化合物は、予見できない有用な薬理活性スペクトルを有する。従って、それは、ヒトおよび動物における疾患の処置および/または予防のための医薬的に活性な化合物としての使用に適する。
【0050】
本発明による化合物は、さらなる処置選択肢を開拓し、これは薬学の進歩を意味する。既知の過去に採用された製剤と比較して、本発明による化合物は、改善された作用スペクトルを示す。
【0051】
それは、好ましくは、高い特異性、良好な耐容性および少ない副作用、並びに特に心血管領域および肝臓領域における低い毒性により、卓越している。
【0052】
本発明による化合物の利点は、ヒト血漿における高い活性である。本発明による化合物のさらなる利点は、代謝性の酵素、特にチトクロムP450酵素およびことさらにチトクロムP4503A4酵素との相互作用の可能性が低いことである。加えて、本発明による化合物は、それ自体が脂肪組織に沈着する傾向が低い。
【0053】
本発明による式(I)の化合物は、有用な薬理特性を有し、障害の予防および処置に使用できる。本発明による化合物は、特に、コレステロールエステル転送タンパク質(CETP)の効果の高い阻害剤であり、コレステロール逆転送を刺激する。それは、血液中のHDLコレステロール濃度を高める。本発明による化合物は、冠動脈心疾患、例えば心筋梗塞の処置および一次的または二次的予防に特に適する。加えて、本発明による化合物は、動脈硬化症、再狭窄、卒中およびアルツハイマー病の処置および予防に使用できる。さらに、本発明による化合物は、低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、肥満症、膵炎、インシュリン依存性および非インシュリン依存性糖尿病、糖尿病の後遺症、例えば、網膜症、腎症および神経障害、複合型高脂血症および代謝症候群の処置および予防にも使用できる。
【0054】
本発明による化合物の薬理作用は、下記のCETP阻害試験を使用して決定できる。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、障害、特に上述の障害の処置および/または予防用の医薬を製造するための、本発明による化合物の使用を提供する。
本発明は、さらに、有効量の本発明による化合物を使用する、障害、特に上述の障害の処置および/または予防方法を提供する。
【0055】
本発明は、さらに、障害の処置および/または予防のための、本発明による化合物および1種またはそれ以上のさらなる活性化合物を含む医薬を提供する。組合せに適する活性化合物は、例えば、そして好ましくは、以下のものである:
・抗糖尿病剤、
・抗血栓作用を有する物質、
・降圧性物質、
・脂質代謝を改変する物質、
・抗炎症性物質、
・動脈硬化斑を安定化する物質。
【0056】
本発明による式(I)の化合物は、好ましくは、以下の1種またはそれ以上と組み合わせることができる;
・Roten Liste 2002/II、12章に記載の抗糖尿病剤、
・例えば、そして好ましくは、血小板凝集阻害剤または抗凝血剤の群からの、抗血栓作用を有する物質、
・例えば、そして好ましくは、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、ベータ遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤、cGMP増強剤および利尿剤の群からの降圧剤、および/または、
・例えば、そして好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロールシンターゼ阻害剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、スクアレンシンターゼ阻害剤、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤またはオキシドスクアレンシクラーゼ阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPARアゴニスト、フィブラート、リパーゼ阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸再吸収阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの、脂質代謝を改変する活性化合物。
【0057】
抗糖尿病剤は、例えば、そして好ましくは、インシュリンおよびインシュリン誘導体並びに血糖降下作用を有する経口で有効な化合物を意味すると理解される。
ここで、インシュリンおよびインシュリン誘導体には、動物、ヒトまたは生物工学的起源のインシュリンおよびそれらの混合物が含まれる。
【0058】
血糖降下作用を有する経口で有効な化合物には、例えば、そして好ましくは、スルホニルウレア類、ビグアニジン(biguanidine)類、メグリチニド(meglitinide)誘導体、オキサジアゾリジノン類、チアゾリジンジオン類、グルコシダーゼ阻害剤、グルカゴンアンタゴニスト、GLP−1アゴニスト、インシュリン増感剤、糖新生および/またはグリコーゲン分解の刺激に関与する肝臓の酵素の阻害剤、グルコース取込の調節因子およびカリウムチャネルオープナー、例えば、WO97/26265およびWO99/03861に記載のものが含まれる。
【0059】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、インシュリンと組み合わせて投与する。
【0060】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、スルホニルウレア、例えば、そして好ましくは、トルブタミド、グリベンクラミド、グリメピリド、グリピジドまたはグリクラジドと組み合わせて投与する。
【0061】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ビグアナイド、例えば、そして好ましくは、メトホルミンと組み合わせて投与する。
【0062】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、メグリチニド誘導体、例えば、そして好ましくは、レパグリニドまたはナテグリニドと組み合わせて投与する。
【0063】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、例えば、チアゾリジンジオン類のクラスからのPPARガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、ピオグリタゾンまたはロシグリタゾンと組み合わせて投与する。
【0064】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、混合型PPARアルファ/ガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GI−262570(ファルグリタザル(farglitazar))、GW2331、GW409544、AVE8042、AVE8134、AVE0847、MK−0767(KRP−297)またはAZ−242と組み合わせて投与する。
【0065】
抗血栓作用を有する物質は、好ましくは、血小板凝集阻害剤の群、例えば、そして好ましくは、アスピリン、クロピドグレル、チクロピジンもしくはジピリダモール、または、抗凝血剤の群からの化合物を意味すると理解される。
【0066】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、トロンビン阻害剤、例えば、そして好ましくは、キシメラガトラン、メラガトラン、ビバリルジンまたはクレキサン(clexane)と組み合わせて投与する。
【0067】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、GPIIb/IIIaアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、チロフィバンまたはアブシキシマブと組み合わせて投与する。
【0068】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、Xa因子阻害剤、例えば、そして好ましくは、DX9065a、DPC906、JTV803またはBAY59−7939と組み合わせて投与する。
【0069】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ヘパリンまたは低分子量(LMW)ヘパリン誘導体と組み合わせて投与する。
【0070】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ビタミンKアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、クマリンと組み合わせて投与する。
【0071】
降圧剤は、例えば、そして好ましくは、カルシウムアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、化合物ニフェジピン、アムロジピン、ニトレンジピン、ニソルジピン、ベラパミルまたはジルチアゼムの群、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、ベータ遮断薬および利尿剤の群からの化合物を意味すると理解される。
【0072】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、アルファ1受容体のアンタゴニストと組み合わせて投与する。
【0073】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、レセルピン、ミノキシジル、ジアゾキシド、ジヒドララジン、ヒドララジンおよび亜硝酸オキシド放出物質、例えば、そして好ましくは、硝酸グリセロールまたはニトロプルシドナトリウムと組み合わせて投与する。
【0074】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタン、テルミサルタン、エンブサルタン(embusartan)、イルベサルタン、オルメサルタン、タソサルタンまたはサプリサルタン(saprisartan)と組み合わせて投与する。
【0075】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ACE阻害剤、例えば、そして好ましくは、エナラプリル、カプトプリル、ラミプリル、デラプリル、ホシノプリル、キノプリル(quinopril)、ペリンドプリルまたはトランドラプリルと組み合わせて投与する。
【0076】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ベータ遮断薬、例えば、そして好ましくは、プロプラノロールまたはアテノロールと組み合わせて投与する。
【0077】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、利尿剤、例えば、そして好ましくは、フロセミドと組み合わせて投与する。
【0078】
脂質代謝を改変する物質は、例えば、そして好ましくは、甲状腺受容体アゴニスト、コレステロール合成阻害剤、例えばHMG−CoAレダクターゼ阻害剤またはスクアレン合成阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPARアゴニスト、フィブラート類、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸再吸収阻害剤、リパーゼ阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストの群からの化合物を意味すると理解される。
【0079】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、甲状腺受容体アゴニスト、例えば、そして好ましくは、D−チロキシン、3,5,3'−トリヨードサイロニン(T3)、CGS23425またはアキシチロム(axitirome)(CGS26214)と組み合わせて投与する。
【0080】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、スクアレン合成阻害剤、例えば、そして好ましくは、BMS−188494またはTAK475と組み合わせて投与する。
【0081】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ACAT阻害剤、例えば、そして好ましくは、アバシミブ(avasimibe)、エフシミブ(eflucimibe)またはCS−505と組み合わせて投与する。
【0082】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、コレステロール吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、エゼチミブ、チクエシド(tiqueside)またはパマクエシドと組み合わせて投与する。
【0083】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、胆汁酸再吸収阻害剤、例えば、そして好ましくは、バリキシバト(barixibat)、AZD7508、SC435、SC635、S−8921、264W94またはHM1453と組み合わせて投与する。
【0084】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、MTP阻害剤、例えば、そして好ましくは、インプリタピド(implitapide)、BMS−201038またはR−103757と組み合わせて投与する。
【0085】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、PPARアルファアゴニスト、例えば、フィブラート類のフェノフィブラート、クロフィブラート、ベザフィブラート、シプロフィブラートまたはゲムフィブロジル、または、例えば、そして好ましくは、GW9578、GW7647、LY−518674もしくはNS−220と組み合わせて投与する。
【0086】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、PPARデルタアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GW501516と組み合わせて投与する。
【0087】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、混合型PPARアルファ/ガンマアゴニスト、例えば、そして好ましくは、GI−262570(ファルグリタザル)、GW2331、GW409544、AVE8042、AVE8134、AVE0847、MK−0767(KRP−297)またはAZ−242と組み合わせて投与する。
【0088】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、混合型PPARアルファ/ガンマ/デルタアゴニスト、例えば、そして好ましくは、MCC−555と組み合わせて投与する。
【0089】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、内皮のリパーゼ阻害剤、膵臓のリパーゼ阻害剤、胃のリパーゼ阻害剤、ホルモン感受性リパーゼ阻害剤または肝臓のリパーゼ阻害剤の群からのリパーゼ阻害剤と組み合わせて投与する。
【0090】
本発明の特に好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、膵臓のリパーゼ阻害剤、好ましくはリパスタチン(lipstatin)類のクラスのもの、例えば、オーリスタットと組み合わせて投与する。
【0091】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ポリマー性胆汁酸吸着剤、例えば、そして好ましくは、コレスチラミン、コレスチポール、コレソルバム(colesolvam)、コレスタゲル(CholestaGel)またはコレスチミドと組み合わせて投与する。
【0092】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、リポタンパク質(a)アンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ゲンカベン(gemcabene)カルシウム(CI−1027)またはニコチン酸と組み合わせて投与する。
【0093】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、ナイアシン受容体のアンタゴニスト、例えば、そして好ましくは、ナイアスパン(niaspan)、アシピモックスまたはニセリトロールと組み合わせて投与する。
【0094】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、抗酸化剤、例えば、そして好ましくは、プロブコール、AGI1067またはBo653と組み合わせて投与する。
【0095】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、LDL受容体誘導剤、例えば、リフィブロール(lifibrol)と組み合わせて投与する。
【0096】
本発明の好ましい実施態様では、式(I)の化合物を、スタチン類のクラスからのHMG−CoAレダクターゼ阻害剤、例えば、そして好ましくは、ロバスタチン、シンバスタチン、プラバスタチン、フルバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチンまたはピタバスタチンと組み合わせて投与する。
【0097】
本発明はまた、式(I)の化合物の、HMG−CoAレダクターゼの遺伝子発現を低減する物質との組合せ剤を提供する。そのような物質は、例えば、HMG−CoAレダクターゼの転写またはHMG−CoAレダクターゼの翻訳の阻害剤であり得る。HMG−CoAレダクターゼの遺伝子発現の阻害は、例えば、S1P(Site-1)プロテアーゼの阻害により、または、SREBP(ステロール受容体結合タンパク質)濃度の低下により、実行し得る。
【0098】
本発明はまた、式(I)の化合物の、抗炎症作用を有し得る、および/または、動脈硬化斑を安定化し得る物質との組合せ剤を提供する。そのような物質は、例えば、NSAID、PAF−AHアンタゴニストまたはケモカイン受容体アンタゴニストのクラスからの活性化合物、例えば、IL−8受容体アンタゴニストまたはMCP−1アンタゴニストであり得る。
【0099】
本発明による活性化合物の組合せ剤は、有用な薬理特性を有し、障害の予防および処置に使用できる。
【0100】
本発明による活性化合物の組合せ剤は、冠動脈心疾患、例えば心筋梗塞の処置および一次的または二次的予防に特に適する。加えて、それらは、動脈硬化症、再狭窄、卒中およびアルツハイマー病の処置および予防に使用できる。加えて、言及した活性化合物の組合せ剤は、低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、肥満、肥満症、膵炎、インシュリン依存性および非インシュリン依存性糖尿病、糖尿病の後遺症、例えば、網膜症、腎症および神経障害、複合型高脂血症および代謝症候群の処置および予防にも用いることができる。さらに、本発明による活性化合物の組合せ剤は、高血圧、心不全、狭心症、虚血および炎症性障害の処置に適する。
【0101】
本発明は、さらに、本発明による化合物を、通常は1種またはそれ以上の、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と共に含む医薬、および上述の目的でのそれらの使用を提供する。
【0102】
本発明による化合物は、全身的および/または局所的に作用できる。この目的で、例えば、経口で、非経腸で、肺に、鼻腔に、舌下に、舌に、頬側に、直腸に、皮膚に、経皮で、結膜に、耳に、またはインプラントもしくはステントとしてなど、適するやり方で投与できる。
【0103】
これらの投与経路のために、本発明による化合物を、適する投与形で投与できる。
経口投与に適するのは、先行技術に準じて働き、本発明による化合物を迅速におよび/または改変された形態で送達し、本発明による化合物を結晶形および/または不定形および/または溶解形で含む投与形、例えば、錠剤(非被覆または被覆錠剤、例えば、腸溶性被覆、または、遅れて溶解するか、または不溶であり、本発明による化合物の放出を制御する被覆を施された錠剤)、口腔中で迅速に崩壊する錠剤、またはフィルム/オブラート、フィルム/凍結乾燥剤、カプセル剤(例えば、ハードまたはソフトゼラチンカプセル剤)、糖衣錠、顆粒剤、ペレット剤、粉末剤、乳剤、懸濁剤、エアゾル剤または液剤である。
【0104】
非経腸投与は、吸収段階を回避して(例えば、静脈内、動脈内、心臓内、脊髄内または腰椎内に)、または吸収を含めて(例えば、筋肉内、皮下、皮内、経皮または腹腔内)、実施できる。非経腸投与に適する投与形は、なかんずく、液剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤または滅菌粉末剤形態の注射および点滴用製剤である。
【0105】
他の投与経路に適するのは、例えば、吸入用医薬形態(なかんずく、粉末吸入器、噴霧器)、点鼻薬、液またはスプレー、舌に、舌下にまたは頬側に投与するための錠剤、フィルム/オブラートまたはカプセル剤、坐剤、耳用または眼用製剤、膣用カプセル剤、水性懸濁剤(ローション、振盪混合物)、親油性懸濁剤、軟膏、クリーム、経皮治療システム(例えば、パッチ)、ミルク、ペースト、フォーム、散布用粉末剤(dusting powder)、インプラントまたはステントである。
好ましいのは、経口または非経腸投与、特に経口投与である。
【0106】
本発明による化合物は、上述の投与形に変換できる。これは、不活性、非毒性、医薬的に適する補助剤と混合することにより、それ自体既知のやり方で行い得る。これらの補助剤には、なかんずく、担体(例えば微結晶セルロース、ラクトース、マンニトール)、溶媒(例えば液体ポリエチレングリコール類)、乳化剤および分散剤または湿潤剤(例えばドデシル硫酸ナトリウム、ポリオキシソルビタンオレエート)、結合剤(例えばポリビニルピロリドン)、合成および天然ポリマー(例えばアルブミン)、安定化剤(例えば抗酸化剤、例えばアスコルビン酸など)、着色料(例えば無機色素、例えば酸化鉄など)および味および/または臭気の矯正剤が含まれる。
【0107】
一般に、非経腸投与の場合、約0.001ないし1mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし0.5mg/体重kgの量を投与するのが、有効な結果を得るために有利であると見出された。経口投与の場合、投与量は、約0.01ないし100mg/体重kg、好ましくは約0.01ないし20mg/体重kg、ことさら特に好ましくは約0.1ないし10mg/体重kgである。
【0108】
それにも拘わらず、必要に応じて、即ち、体重、投与経路、活性化合物に対する個体の応答、製剤のタイプおよび投与を行う時間または間隔に応じて、上述の量から逸脱することが必要であり得る。従って、上述の最小量より少なくても十分な場合があり得、一方上述の上限を超えなければならない場合もある。比較的大量に投与する場合、これらを1日に亘る数回の個別投与に分割するのが望ましいことがある。
【0109】
以下の例示的実施態様は、本発明を例示説明する。本発明は、これらの実施例に限定されない。
下記の試験および実施例における百分率は、断りの無い限り、重量パーセントである;部は、重量部である。液体/液体溶液の溶媒比、希釈比および記述する濃度は、各場合で体積に基づく。
【0110】
式(Ia)の化合物についての実験の部
A. 実施例
略語および頭字語:
【表1】

【0111】
出発物質および中間体:
実施例1A
1−シクロプロピリデンアセトン
【化22】

[(1−エトキシシクロプロピル)オキシ](トリメチル)シラン274g(1.57mol)、1−(トリフェニルホスホルアニリデン)アセトン650g(2.04mol)およびパラ−トルエンスルホン酸一水和物29.9g(157mmol)を、1,2−ジクロロベンゼン1.58lに懸濁し、100℃で2.5時間撹拌する。加熱すると、1−(トリフェニルホスホルアニリデン)アセトンは溶解する。次いで、反応混合物を室温に冷却し、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィーする(移動相:最初に石油エーテル、次いでジクロロメタン)。生成物画分を濃縮し、短時間高真空下で乾燥させる。
収量:78.5g(理論値の46%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 6.42 (t, 1H), 2.31 (s, 3H), 1.53-1.46 (m, 2H), 1.36-1.29 (m, 2H)
MS(DCI,NH):m/z=114[M+NH.
【0112】
実施例2A
スピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオン
【化23】

ナトリウムメトキシド37.09g(687mmol)を、最初にメタノール388mlに入れ、撹拌しながら、還流で加熱する。マロン酸ジメチル96.2g(728mmol)を添加し、混合物を還流でさらに10分間撹拌し、次いで室温に冷却する。次いで、実施例1A由来の1−シクロプロピリデンアセトン66g(687mmol)を滴下して室温で添加し、続いて混合物を還流で4時間撹拌する。加熱槽の除去後、水264ml中の水酸化カリウム84.75g(1.51mol)の溶液を、迅速に滴下して添加し、還流での撹拌を1時間継続する。次いで、準濃塩酸を使用してpHを1−2に調節し(発泡する)、混合物をさらに15分間撹拌する。減圧下、ロータリーエバポレーターで、浴温度55℃で、60mbarの圧力に達するまで、メタノールを除去する。フラスコの内容物を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、減圧下で濃縮する。得られる油状物を濃縮し、ジクロロメタンに溶解し、シリカゲルでクロマトグラフィーする(移動相:ジクロロメタン/メタノール95:5)。生成物画分を濃縮し、次いで、残っている油状物をジエチルエーテルでトリチュレートする。得られる固体を吸引濾過し、室温、高真空下で乾燥させる。
収量:37.2g(理論値の39%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.49 (s, 2H), 2.47 (s, 4H), 0.58 (s, 4H)
MS(DCI,NH):m/z=156[M+NH.
【0113】
実施例3A
4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−4',8'−ジヒドロ−1'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'(6'H)オン
【化24】

3−アミノ−3−シクロペンチル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロペノン(WO03/028727、実施例4に従い製造)8.0g(28.24mmol)を、最初にジイソプロピルエーテル350mlに入れ、トリフルオロ酢酸3.63ml(47.1mmol)およびスピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオン(実施例2A)3.25g(23.53mmol)を添加する。10分間室温で撹拌した後、シクロヘキサンカルボアルデヒド5.70ml(47.1mmol)を添加し、次いで、混合物を還流下に18時間加熱する。冷却後、混合物を氷浴中で15分間撹拌し、得られる沈殿を吸引濾過し、冷たいジイソプロピルエーテルで洗浄する。
収量:2.92g(理論値の25%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.80 (d, 2H), 7.67 (d, 2H), 5.88 (s, 1H), 3.80 (d, 1H), 3.51 (quin, 1H), 2.85 (d, 1H), 2.69 (d, 1H), 2.26-2.14 (m, 1H), 2.00 (t, 2H), 1.80-1.46 (m, 9H), 1.44-1.31 (m, 2H), 1.25-1.13 (m, 1H), 1.12-0.96 (m, 4H), 0.93-0.75 (m, 2H), 0.62-0.43 (m, 4H)
MS(DCI):m/z=498[M+H].
【0114】
実施例4A
4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'(8'H)オン
【化25】

実施例3A由来の化合物1.90g(3.82mmol)を、ジクロロメタン60mlに溶解し、室温で、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)950mg(4.20mmol)と1時間撹拌する。混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル20:1→10:1)により精製する。
収量:1.3g(理論値の69%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.10-7.82 (br. s, 2H), 7.74 (d, 2H), 3.41-3.14 (br. s, 1H), 3.05 (dd, 2H), 2.71-2.50 (m, 3H), 1.98-1.36 (m, 16H), 1.24-1.05 (m, 2H), 0.62-0.50 (m, 4H)
MS(ESIpos):m/z=496[M+H].
【0115】
実施例5A
[(5'S)−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−5'−ヒドロキシ−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル][4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化26】

(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オール190mg(1.24mmol)を、最初にTHF150mlに入れ、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体5.40g(33.1mmol)を室温で添加する。気体の放出が止まった後、混合物を0℃に冷却し、THF150mlに溶解した実施例4A由来の化合物4.10g(8.27mmol)を添加する。撹拌しながら、混合物を数時間かけて室温に温まらせる。反応が終了した後、メタノールを添加し、反応混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに取る。混合物を、1N塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で、各場合で2回ずつ洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル10:1)により精製する。
収量:3.4g(理論値の83%)
エナンチオマー過剰は、71%eeと測定される。
【0116】
続くキラル相でのエナンチオマーのクロマトグラフィー的分離[カラム:Chiralpak AD, 500mmx40mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:50ml/分;温度:25℃;検出:254nm]により、エナンチオマー的に純粋な表題化合物2.83gを得る:
=4.96分[Chiralpak AD、250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:1.0ml/分;検出:254nm].
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.50-7.35 (m, 4H), 5.48-5.02 (m, 1H), 3.43-3.14 (m, 2H), 2.71-2.27 (m, 3H), 2.18-0.93 (m, 19H), 0.83-0.73 (m, 1H), 0.72-0.56 (m, 1H), 0.52-0.43 (m, 2H)
MS (ESIpos): m/z = 498 [M+H]+.
【0117】
実施例6A
((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化27】

アルゴン下、実施例5A由来の化合物100mg(0.20mmol)および2,6−ジメチルピリジン86mg(0.80mmol)を、無水トルエン0.75mlに溶解し、−20℃に冷却する。この温度で、無水トルエン0.25ml中のtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート106mg(0.40mmol)の溶液を滴下して添加し、続いて、混合物を−20℃で15分間撹拌し、次いで0℃に温め、この温度でさらに1時間撹拌する。0.1N塩酸3mlを混合物に添加し、次いでそれを酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液と飽和塩化ナトリウム溶液の1:1混合物で1回洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的にシリカゲルで精製する(移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル15:1)。
収量:115mg(理論値の94%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 8.02-7.48 (m, 4H), 5.51-5.18 (br. s, 1H), 3.25-2.68 (m, 2H), 2.65-2.45 (m, 1H), 2.13-1.03 (m, 21H), 0.93-0.83 (m, 9H), 0.81-0.70 (m, 1H), 0.68-0.58 (m, 1H), 0.44-0.39 (m, 1H), 0.38-0.28 (m, 1H), 0.25-0.14 (m, 6H)
MS(ESIpos):m/z=612[M+H].
【0118】
実施例7A
(S)−((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化28】

アルゴン下、実施例6A由来の化合物3.10g(5.07mmol)を、最初に無水トルエン50mlに入れ、−50℃に冷却する。この温度で、水素化ジイソブチルアルミニウムの1Mトルエン溶液25.4ml(25.4mmol)を、ゆっくりと滴下して添加する。混合物を−50℃で10分間撹拌し、次いで1時間かけて室温に温める。氷冷しながら、20%強度酒石酸カリウムナトリウム溶液を混合物に添加し、次いでそれを酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。これにより、粗生成物3.2gを得る。
【0119】
続くキラル相でのクロマトグラフィー的ジアステレオマー分離[カラム:Chiralpak AD, 500 mm x 40 mm, 20 μm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:50ml/分;室温;検出:254nm]により、ジアステレオマー的に純粋な表題化合物(アンチ−異性体)1.4g(理論値の45%)およびジアステレオマーのシン異性体1.3g(理論値の42%)を得る。
【0120】
アンチ−ジアステレオマー:
=8.09分[カラム:Chiralpak IA, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン3:97;流速:1.0ml/分;検出:254nm]
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.58 (d, 2H), 7.42 (d, 2H), 6.68 および 6.49 (2 br. s, 一体になって 1H), 5.58 および 5.21 (2 br. s, 一体になって 1H), 3.45-3.22 (m, 1H), 2.99-2.78 (m, 2H), 2.33-2.18 (m, 1H), 2.14-1.05 (m, 20H), 0.95-0.82 (m, 9H), 0.80-0.70 (m, 1H), 0.68-0.43 (m, 2H), 0.42-0.26 (m, 1H), 0.25-0.02 (m, 6H)
MS(ESIpos):m/z=614[M+H].
【0121】
シン−ジアステレオマー:
=5.70分[カラム:Chiralpak IA, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン3:97;流速:1.0ml/分;検出:254nm]
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.59-7.51 (m, 2H), 7.48-7.28 (m, 2H), 6.64 および 6.49 (2 br. s, 一体になって1H), 5.58 および 5.22 (2 br. s, 一体になって1H), 3.45-3.22 (m, 1H), 3.10-2.76 (m, 2H), 2.33-2.18 (m, 1H), 2.12-1.05 (m, 20H), 0.94-0.82 (m, 9H), 0.80-0.70 (m, 1H), 0.68-0.43 (m, 2H), 0.42-0.27 (m, 1H), 0.26-0.01 (m, 6H)
MS(ESIpos):m/z=614[M+H].
【0122】
実施例8A
(5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]
【化29】

アルゴン下、実施例7A由来の化合物813mg(1.32mmol)を、トルエン17mlに溶解し、−20℃に冷却する。この温度で、三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.29ml(2.19mmol)を滴下して添加する。冷却を取りやめ、次いで、混合物をさらに2時間撹拌する。水を混合物に添加し、次いで、それをジクロロメタンで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液で1回、飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物を高真空下で乾燥させ、これ以上精製せずに反応させる。
収量:770mg(理論値の94%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.60 (d, 2H), 7.46-6.98 (m, 3H), 5.59 および 5.22 (2 br. s, 一体になって 1H), 3.42-3.20 (m, 1H), 3.02-2.67 (m, 3H), 2.20-0.99 (m, 20H), 0.90 (s, 9H), 0.82-0.68 (m, 1H), 0.67-0.48 (m, 2H), 0.44-0.27 (m, 1H), 0.25-0.01 (m, 6H)
MS(ESIpos):m/z=616[M+H].
【0123】
実施例:
実施例1
(5'S)−4'−シクロヘキシル−2'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'−オール
【化30】

アルゴン下、実施例8A由来の化合物770mg(1.25mmol)を、THF1mlに溶解し、TBAFの1M THF溶液6.25ml(6.25mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌する。0.2N塩酸50mlを混合物に添加し、次いで、酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的にシリカゲルでで精製する(移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル10:1)。
収量:594mg(理論値の95%)
【0124】
キラル相のクロマトグラフィー[カラム:KBD 5945, 400 mm x 30 mm、キラルセレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−tert.−ブチルアミドをベースとする;移動相:MTBE/イソヘキサン20:80;流速:50ml/分;室温;検出:254nm]を使用して、生成物中にまだ存在するジアステレオマーをさらに分離し、ジアステレオマー的に純粋な表題化合物540mgを得る:
=3.76分[カラム:KBD 5945, 250 mm x 4.6 mm;移動相:MTBE/イソヘキサン3:7;流速:1.0ml/分;検出:265nm]
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.61 (d, 2H), 7.48-7.29 (m, 3H), 5.47-5.39 および 5.18-5.07 (2 m, 一体になって 1H), 3.60-3.46 (m, 1H), 3.31-3.11 (m, 1H), 2.96-2.68 (m, 1H), 2.47-2.20 (m, 2H), 2.10-1.10 (m, 19H), 0.84-0.70 (m, 2H), 0.66-0.58 (m, 1H), 0.50-0.38 (m, 2H)
MS(ESIpos):m/z=502[M+H].
【0125】
B. 薬理活性の評価
B−I. CETP−阻害試験
B−I.1. CETPの入手
CETPを、ヒト血漿から、分画遠心法およびカラムクロマトグラフィーにより部分的に精製された形態で入手し、試験に使用する。この目的で、NaBrを使用してヒト血漿を1.21g/mlの密度に調節し、4℃、50000rpmで18時間遠心分離する。底部の画分(d>1.21g/ml)を Sephadex(登録商標)Phenyl-Sepharose 4B (Pharmacia) カラムに載せ、0.15M NaCl/0.001Mトリス−HCl pH7.4で洗浄し、次いで蒸留水で溶出する。CETP−活性画分を集め、50mM酢酸ナトリウムpH4.5で透析し、CM-Sepharose(登録商標)カラム (Pharmacia) に載せる。次いで、線状グラジエント(0−1M NaCl)を使用して混合物を溶出する。集めたCETP画分を10mMトリス/HCl pH7.4で透析し、次いで Mono Q(登録商標) カラム (Pharmacia)でのクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0126】
B−I.2. CETP蛍光試験
CETPに触媒されるリポソーム間の蛍光コレステロールエステルの転送の測定[Bisgaier et al., J. Lipid Res. 34, 1625 (1993) の方法に準じて改変]:
ドナーリポソームの生成のために、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート(コレステリル BODIPY(登録商標) FL C12, Molecular Probes)を、トリオレイン5.35mgおよびホスファチジルコリン6.67mgを含むジオキサン600μlに、超音波槽中で穏やかに温めながら溶解し、この溶液を、超音波処理しながら、63mlの50mMトリス/HCl、150mM NaCl、2mM EDTAバッファーpH7.3に室温で非常にゆっくりと添加する。次いで、懸濁液を、N雰囲気下、30分間、Branson 超音波槽中、約50ワットで、温度を約20℃に維持して超音波処理する。
【0127】
同様にして、ジオキサン1.2mlおよび上記のバッファー114mlに溶解したコレステリルオレエート86mg、トリオレイン20mgおよびホスファチジルコリン100mgから、50ワット(20℃)、30分間の超音波処理により、アクセプターリポソームを得る。
【0128】
B−I.2.1. 富化(enriched)CETPを用いるCETP蛍光試験
試験するために、上記のバッファー1部、ドナーリポソーム1部およびアクセプターリポソーム2部からなる試験混合物を使用する。
試験混合物50μlを、ヒト血漿から疎水性クロマトグラフィーを利用して得た富化CETP画分(1−3μg)48μlおよび試験しようとする物質のDMSO溶液2μlで処理し、37℃で4時間インキュベートする。
【0129】
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の尺度である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表2】

【0130】
B−I.2.2. ヒト血漿を用いるCETP蛍光試験
ドナーリポソーム6μl(12%v/v)および試験しようとする物質のDMSO溶液1μl(2%v/v)を、ヒト血漿(Sigma P9523)42μl(86%v/v)に添加し、混合物を37℃で24時間インキュベートする。
510/520nm(ギャップ幅2.5nm)の蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表3】

【0131】
B−I.2.3. エクスビボ−CETP蛍光試験
バッファー10μlおよび血清2μlを、試験混合物80μlに添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートする。
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【0132】
B−I.3. 放射性標識化HDLの入手
新鮮なヒトEDTA血漿50mlを、NaBrを使用して1.12の密度に調節し、4℃、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を非標識LDLの入手に使用する。下相をPDBバッファー(10mMトリス/HCl pH7.4、0.15mM NaCl、1mM EDTA、0.02%NaN)3x4lで透析する。次いで、透析保持液(retentate)の体積10mlにつき、H−コレステロール(Dupont NET-725;1μC/μl、エタノールに溶解)20μlを添加し、混合物を、37℃、N下で、72時間インキュベートする。
【0133】
次いで、NaBrを使用してバッチを1.21の密度に調節し、20℃で、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を回収し、リポタンパク質画分を勾配遠心分離により精製する。この目的で、単離した標識化リポタンパク質画分を、NaBrを使用して1.26の密度に調節する。この溶液各4mlを、遠心管(SW40ローター)中、密度1.21の溶液4mlおよび密度1.063の溶液4.5mlで覆い(PDBバッファーおよびNaBrの密度溶液)、次いで、24時間38000rpmで、20℃で、SW40ローター中で遠心分離する。標識化HDLを含有する、密度1.063と1.21との間にある中間層を、3x100量のPDBバッファーで、4℃で透析する。
保持液は放射性標識化H−CE−HDLを含有し、それを、約5x10cmp/mlに調節し、試験に使用する。
【0134】
B−I.4. CETP−SPA試験
CETP活性を試験するために、H−コレステロールエステルのヒトHDリポタンパク質からビオチン化LDリポタンパク質への転送を測定する。ストレプトアビジン−SPA(登録商標)ビーズ(Amersham)の添加により反応を終了させ、転送された放射能を液体シンチレーションカウンターで直接測定する。
【0135】
試験バッチでは、HDL−H−コレステロールエステル(〜50000cpm)10μlを、37℃で18時間、ビオチン−LDL(Amersham)10μlと共に、CETP(1mg/ml)10μlおよび試験しようとする物質の溶液(10%DMSO/1%RSAに溶解)3μlを含有する50mM Hepes/0.15M NaCl/0.1%ウシ血清アルブミン/0.05%NaN pH7.4中でインキュベートする。次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ溶液(TRKQ7005)200μlを添加し、さらに1時間振盪しながらインキュベートし、次いで、シンチレーションカウンターで測定する。バッファー10μl、4℃のCETP10μlおよび37℃のCETP10μlを用いる対応するインキュベーションを対照に供する。
【0136】
37℃のCETPを用いる対照バッチで転送される放射活性を、100%の転送とみなす。この転送を半分に低減させる物質濃度を、IC50値と特定する。
【表4】

【0137】
B−II.1. 遺伝子組換えhCETPマウスに対するエクスビボ活性の測定
CETP−阻害活性を試験するために、自家飼育した遺伝子組換えhCETPマウスに、胃管を使用して物質を経口投与する[Dinchuk et al. BBA 1295-301 (1995)]。この目的で、実験開始の前日に、オスの動物を、等数の動物(原則としてn=4)を有するグループに無作為に割り当てる。物質投与前に、血清中の基底CETP活性(T1)の測定のために、後眼窩静脈叢(retro orbital venous plexus)の穿刺により各マウスから血液を採取する。次いで、胃管を使用して試験物質を動物に投与する。試験物質の投与後、特定の時間に、一般に物質の投与後16または24時間後に、二回目の穿刺により血液を動物から採取する(T2)が、必要に応じて、これを他の時間で実施することもできる。
【0138】
物質の阻害活性を評価できるように、各時間、即ち、16または24時間に、動物が物質を含まない製剤化物質のみを受容する、対応する対照群を用いる。対照動物では、対応する実験期間(16または24時間)に亘る、阻害剤のない場合のCETP活性の変化を測定できるように、動物毎の2回目の血液サンプル採取を物質で処置した動物と同様に実施する。
【0139】
凝血の終了後、血液サンプルを遠心分離し、血清をピペットで取り出す。CETP活性の決定のために、4時間に亘るコレステリルエステル転送を測定する。この目的で、一般に試験バッチで血清2μlを用い、B−I.2.3で記載の通りに試験を実施する。
【0140】
コレステリルエステル転送の差異[pM CE/h(T2)−pM CE/h(T1)]を各動物について算出し、グループ内で平均する。何れかの時間でコレステリルエステル転送を>20%まで低減する物質を、活性であるとみなす。
【表5】

【0141】
B−II.2. シリアンゴールデンハムスターにおけるインビボ活性の測定
自家飼育した体重150−200gの雌のシリアンゴールデンハムスター(系統BAY:DSN)を、CETP阻害剤の血清リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用の測定に使用する。動物をケージ当たり6匹の動物にグループ分けし、飼料と水を自由にとらせ、2週間順応させる。
【0142】
実験開始直前および物質投与の後に、血液を後眼窩静脈叢の穿刺により採取し、30分間室温でのインキュベーションおよび20分間30000gでの遠心分離の後、血清を得るために使用する。物質を20% Solutol/80%水に溶解し、胃管を利用して経口投与する。対照の動物は、試験物質を含まない同体積の溶媒を受容する。
【0143】
トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステロールを、分析装置 COBAS INTEGRA 400 plus (Roche Diagnostics より)を製造業者に指示に従い使用して測定する。測定値から、各パラメーターについて、物質による処置に起因する割合の変化を、各動物について算出し、グループ毎の平均として標準偏差と共に示す(n=6またはn=12)。溶媒処置群と比較して、物質の効果が有意であれば、t試験の適用により、p−値を加える(*p0.05;**p0.01;***p0.005)。
【0144】
B−II.3. 遺伝子組換えhCETPマウスにおけるインビボ活性の測定
リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用を測定するために、胃管を使用して試験物質を遺伝子組換えマウスに投与する[Dinchuk et al., BBA, 1295-1301 (1995)]。実験開始前に、血清中のコレステロールおよびトリグリセリドを測定するために、マウスから後眼窩的(retro-orbitally)に血液を採取する。ハムスターについて上記した通りに、4℃で終夜インキュベートし、続いて6000gで遠心分離することにより血清を入手する。3日後に、リポタンパク質およびトリグリセリドを測定するために、血液を再度マウスから採取する。測定されるパラメーターの変化を、出発値と比較した変化割合として表す。
【表6】

【0145】
C. 医薬組成物の実施例
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0146】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMCのキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0147】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明の化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0148】
i.v.溶液:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。
【0149】
式(Ib)の化合物についての実験の部
A. 実施例
略語および頭字語:
【表7】

【0150】
出発物質および中間体:
実施例1A
1−シクロプロピリデンアセトン
【化31】

[(1−エトキシシクロプロピル)オキシ](トリメチル)シラン274g(1.57mol)、1−(トリフェニルホスホルアニリデン)アセトン650g(2.04mol)およびパラ−トルエンスルホン酸一水和物29.9g(157mmol)を、1,2−ジクロロベンゼン1.58lに懸濁し、100℃で2.5時間撹拌する。加熱すると、1−(トリフェニルホスホルアニリデン)アセトンは溶解する。次いで、反応混合物を室温に冷却し、粗生成物をシリカゲルでクロマトグラフィーする(移動相:最初に石油エーテル、次いでジクロロメタン)。生成物画分を濃縮し、短時間高真空下で乾燥させる。
収量:78.5g(理論値の46%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 6.42 (t, 1H), 2.31 (s, 3H), 1.53-1.46 (m, 2H), 1.36-1.29 (m, 2H)
MS(DCI,NH):m/z=114[M+NH.
【0151】
実施例2A
スピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオン
【化32】

ナトリウムメトキシド37.09g(687mmol)を、最初にメタノール388mlに入れ、撹拌しながら、還流で加熱する。マロン酸ジメチル96.2g(728mmol)を添加し、混合物を還流でさらに10分間撹拌し、次いで室温に冷却する。次いで、実施例1A由来の1−シクロプロピリデンアセトン66g(687mmol)を滴下して室温で添加し、続いて混合物を還流で4時間撹拌する。加熱槽の除去後、水264ml中の水酸化カリウム84.75g(1.51mol)の溶液を、迅速に滴下して添加し、還流での撹拌を1時間継続する。次いで、準濃塩酸を使用してpHを1−2に調節し(発泡する)、混合物をさらに15分間撹拌する。減圧下、ロータリーエバポレーターで、浴温度55℃で、60mbarの圧力に達するまで、メタノールを除去する。フラスコの内容物を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせ、乾燥させ、減圧下で濃縮する。得られる油状物を濃縮し、ジクロロメタンに溶解し、シリカゲルでクロマトグラフィーする(移動相:ジクロロメタン/メタノール95:5)。生成物画分を濃縮し、次いで、残っている油状物をジエチルエーテルでトリチュレートする。得られる固体を吸引濾過し、室温、高真空下で乾燥させる。
収量:37.2g(理論値の39%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 3.49 (s, 2H), 2.47 (s, 4H), 0.58 (s, 4H)
MS(DCI,NH):m/z=156[M+NH.
【0152】
実施例3A
2',4'−ジシクロペンチル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−4',8'−ジヒドロ−1'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'(6'H)−オン
【化33】

3−アミノ−3−シクロペンチル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロペノン(WO03/028727、実施例4に従い製造)9.0g(31.77mmol)を、最初にジイソプロピルエーテル350mlに入れ、トリフルオロ酢酸4.08ml(52.95mmol)およびスピロ[2.5]オクタン−5,7−ジオン(実施例2A)3.66g(26.47mmol)を添加する。室温で10分間撹拌した後、シクロペンタンカルボアルデヒド5.20g(52.95mmol)を添加し、次いで、混合物を還流下で18時間加熱する。冷却後、混合物を氷浴中で15分間撹拌し、得られる沈殿を吸引濾過し、冷たいジイソプロピルエーテルで洗浄する。
収量:1.9g(理論値の15%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.81 (d, 2H), 7.67 (d, 2H), 5.91 (s, 1H), 3.88 (d, 1H), 3.52 (quin, 1H), 2.88 (d, 1H), 2.70 (d, 1H), 2.26-2.14 (m, 1H), 1.94 (dd, 2H), 1.80-1.24 (m, 14H), 1.16-0.88 (m, 2H), 0.62-0.40 (m, 4H)
MS(ESIpos):m/z=484[M+H].
【0153】
実施例4A
2',4'−ジシクロペンチル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'(8'H)−オン
【化34】

実施例3A由来の化合物4.80g(9.93mmol)を、ジクロロメタン150mlに溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)2.48g(10.92mmol)と共に室温で1時間撹拌する。混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル20:1→10:1)により精製する。
収量:2.7g(理論値の56%)
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 7.98 (d, 2H), 7.76 (d, 2H), 3.18-2.97 (m, 3H), 2.72-2.55 (m, 3H), 1.98-1.64 (m, 10H), 1.60-1.36 (m, 6H), 0.64-0.49 (m, 4H)
MS(DCI):m/z=482[M+H].
【0154】
実施例5A
[(5'S)−2',4'−ジシクロペンチル−5'−ヒドロキシ−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル][4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化35】

(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オール130mg(0.84mmol)を、最初にTHF100mlに入れ、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体3.66g(22.43mmol)を室温で添加する。気体の放出が止まった後、混合物を0℃に冷却し、THF150mlに溶解した実施例4A由来の化合物2.70g(5.61mmol)を添加する。撹拌しながら、混合物を数時間かけて室温に温まらせる。反応が終わった後、メタノールを反応混合物に添加し、混合物を濃縮し、残渣を酢酸エチルに取る。混合物を、1N塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液および飽和塩化ナトリウム溶液で、各場合で2回洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル20:1)により精製する。
収量:2.8g(化学的純度:約83%、エナンチオマー過剰:91%ee).
【0155】
続いてエナンチオマーをキラル相でクロマトグラフィー的に分離し[カラム: Chiralpak AD, 500mmx40mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:50ml/分;温度:24℃;検出:254nm]、上記で得た生成物2.65gから、エナンチオマー的に純粋な表題化合物2.4gを得る:
=6.78分[Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:1.0ml/分;検出:254nm]
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 8.00-7.89 (m, 2H), 7.72 (d, 2H), 5.68-5.59 (m, 1H), 3.36-3.14 (m, 2H), 2.65-2.50 (m, 2H), 2.34 (d, 1H), 2.20-2.04 (m, 2H), 1.94-1.30 (m, 16H), 0.83-0.73 (m, 1H), 0.72-0.59 (m, 1H), 0.53-0.41 (m, 2H)
MS(DCI):m/z=484[M+H].
【0156】
実施例6A
((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2',4'−ジシクロペンチル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化36】

アルゴン下、実施例5A由来の化合物2.25g(4.65mmol)および2,6−ジメチルピリジン1.99g(18.61mmol)を、無水トルエン20mlに溶解し、−20℃に冷却する。この温度で、無水トルエン5ml中のtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート2.46g(9.31mmol)の溶液を滴下して添加し、続いて、混合物を−20℃で15分間撹拌し、次いで0℃に温め、この温度でさらに1時間撹拌する。0.1N塩酸75mlを混合物に添加し、次いで、それを酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を、飽和重炭酸ナトリウム溶液と飽和塩化ナトリウム溶液の1:1混合物で1回、飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的にシリカゲルで精製する(移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル15:1)。
収量:2.18g(理論値の78%)
1H-NMR (300 MHz, CDCl3): δ = 8.00-7.87 (m, 2H), 7.71 (d, 2H), 5.28-5.18 (m, 1H), 3.38-3.11 (m, 1H), 2.96 (d, 1H), 2.80 (d, 1H), 2.65-2.43 (m, 1H), 2.08-1.23 (m, 18H), 0.87 (s, 9H), 0.76-0.58 (m, 2H), 0.46-0.38 (m, 1H), 0.37-0.25 (m, 1H), 0.18 (s, 3H), 0.10 (s, 3H).
MS(ESIpos):m/z=598[M+H].
【0157】
実施例7A
(S)−((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2',4'−ジシクロペンチル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化37】

アルゴン下、実施例6A由来の化合物2.10g(3.51mmol)を、最初に無水トルエン35mlに入れ、−50℃に冷却する。この温度で、水素化ジイソブチルアルミニウムの1Mトルエン溶液17.56ml(17.56mmol)を、ゆっくりと滴下して添加する。混合物を−50℃で10分間撹拌し、次いで1時間かけて室温に温める。氷冷しながら、20%強度酒石酸カリウムナトリウム溶液を混合物に添加し、次いでそれを酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。これにより、2.4gを粗生成物として得る。
【0158】
続いて、キラル相でクロマトグラフィー的にジアステレオマーを分離し[カラム:Chiralpak AD, 500 mm x 40 mm, 20 μm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:50ml/分;温度:24℃;検出:254nm]、ジアステレオマー的に純粋な表題化合物(アンチ異性体)1.2g(理論値の56%)およびジアステレオマーのシン異性体0.9g(理論値の42%)を得る。
【0159】
アンチ−ジアステレオマー:
=5.25分[カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:1.5ml/分;検出:250nm]
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.58 (d, 2H), 7.41 (d, 2H), 6.23 (br. s, 1H), 5.20 (t, 1H), 3.68-3.55 (m, 1H), 3.08-2.70 (m, 3H), 2.29-2.18 (m, 1H), 2.12-1.94 (m, 2H), 1.90-1.22 (m, 15H), 0.89 (s, 9H), 0.76-0.68 (m, 1H), 0.62-0.55 (m, 1H), 0.43-0.36 (m, 1H), 0.33-0.25 (m, 1H), 0.13 (s, 3H), 0.11 (s, 3H)
MS(ESIpos):m/z=600[M+H].
【0160】
シンジアステレオマー:
=4.36分[カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソプロパノール/イソヘキサン2.5:97.5;流速:1.5ml/分;検出:250nm]
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.56 (d, 2H), 7.34 (d, 2H), 6.23 (br. s, 1H), 5.20 (t, 1H), 3.68-3.55 (m, 1H), 3.13-2.60 (m, 3H), 2.29-2.11 (m, 2H), 2.10-1.98 (m, 1H), 1.90-1.22 (m, 15H), 0.89 (s, 9H), 0.76-0.68 (m, 1H), 0.62-0.55 (m, 1H), 0.43-0.36 (m, 1H), 0.33-0.25 (m, 1H), 0.13 (s, 3H), 0.11 (s, 3H)
MS(ESIpos):m/z=600[M+H].
【0161】
実施例8A
(5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2',4'−ジシクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]
【化38】

アルゴン下、実施例7A由来の化合物500mg(0.83mmol)を、トルエン10mlに溶解し、−20℃に冷却する。この温度で、三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.18ml(1.38mmol)を滴下して添加する。冷却を取り止めた後、混合物をさらに2時間撹拌する。水を混合物に添加し、次いでそれをジクロロメタンで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和重炭酸ナトリウム溶液で1回、飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。粗生成物を高真空下で乾燥させ、これ以上精製せずに反応させる。
収量:485mg(理論値の96%)
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.61 (d, 2H), 7.38 (d, 2H), 6.91 (d, 1H), 5.21 (t, 1H), 3.66-3.55 (m, 1H), 2.97-2.80 (m, 3H), 2.16-2.00 (m, 2H), 1.98-1.60 (m, 12H), 1.50-1.22 (m, 3H), 1.20-1.05 (m, 1H), 0.90 (s, 9H), 0.78-0.70 (m, 1H), 0.63-0.57 (m, 1H), 0.44-0.37 (m, 1H), 0.35-0.28 (m, 1H), 0.13 (s, 1H), 0.11 (s, 3H)
MS(ESIpos):m/z=602[M+H].
【0162】
実施例:
実施例1
(5'S)−2',4'−ジシクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロプロパン−1,7'−キノリン]−5'−オール
【化39】

アルゴン下、実施例8A由来の化合物475mg(0.79mmol)を、THF1mlに溶解し、TBAFの1M THF溶液3.95ml(3.95mmol)を添加し、混合物を室温で2時間撹拌する。0.2N塩酸50mlを混合物に添加し、次いでそれを酢酸エチルで繰り返し抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的にシリカゲルで精製する(移動相:最初にシクロヘキサン、次いでシクロヘキサン/酢酸エチル10:1)。
収量:293mg(理論値の76%)、ジアステレオマー過剰率90%。
【0163】
生成物中にまだ存在するジアステレオマーを、キラル相のクロマトグラフィー[カラム:KBD 5945, 400 mm x 30 mm、キラルセレクターのポリ(N−メタクリロイル−L−ロイシン−tert−ブチルアミドをベースとする;移動相:MTBE/イソヘキサン20:80;流速:50ml/分;温度:24℃;検出:254nm]を使用してさらに分離し、ジアステレオマー的に純粋な表題化合物251mgを得る:
=4.67分[カラム:KBD 5945, 250 x 4.6 mm;移動相:MTBE/イソヘキサン3:7;流速:1.0ml/分;検出:280nm]
1H-NMR (400 MHz, CDCl3): δ = 7.62 (d, 2H), 7.36 (d, 2H), 6.97 (d, 1H), 5.12 (br. s, 1H), 3.84 (quin, 1H), 3.24 (dd, 1H), 2.98-2.86 (m, 1H), 2.48 (d, 1H), 2.36 (d, 1H), 2.22-1.52 (m, 14H), 1.49-1.20 (m, 3H), 1.06-0.90 (m, 1H), 0.80-0.72 (m, 1H), 0.67-0.58 (m, 1H), 0.51-0.40 (m, 2H)
MS(ESIpos):m/z=488[M+H].
【0164】
B. 薬理活性の評価
B−I. CETP−阻害試験
B−I.1. CETPの入手
CETPを、ヒト血漿から、分画遠心法およびカラムクロマトグラフィーにより部分的に精製された形態で入手し、試験に使用する。この目的で、NaBrを使用してヒト血漿を1.21g/mlの密度に調節し、4℃、50000rpmで18時間遠心分離する。底部の画分(d>1.21g/ml)を Sephadex(登録商標)Phenyl-Sepharose 4B (Pharmacia) カラムに載せ、0.15M NaCl/0.001Mトリス−HCl pH7.4で洗浄し、次いで蒸留水で溶出する。CETP−活性画分を集め、50mM酢酸ナトリウムpH4.5で透析し、CM-Sepharose(登録商標)カラム (Pharmacia) に載せる。次いで、線状グラジエント(0−1M NaCl)を使用して混合物を溶出する。集めたCETP画分を10mMトリス/HCl pH7.4で透析し、次いで Mono Q(登録商標) カラム (Pharmacia)でのクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0165】
B−I.2. CETP蛍光試験
CETPに触媒されるリポソーム間の蛍光コレステロールエステルの転送の測定[Bisgaier et al., J. Lipid Res. 34, 1625 (1993) の方法に準じて改変]:
ドナーリポソームの生成のために、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート(コレステリル BODIPY(登録商標) FL C12, Molecular Probes)を、トリオレイン5.35mgおよびホスファチジルコリン6.67mgを含むジオキサン600μlに、超音波槽中で穏やかに温めながら溶解し、この溶液を、超音波処理しながら、63mlの50mMトリス/HCl、150mM NaCl、2mM EDTAバッファーpH7.3に室温で非常にゆっくりと添加する。次いで、懸濁液を、N雰囲気下、30分間、Branson 超音波槽中、約50ワットで、温度を約20℃に維持して超音波処理する。
【0166】
同様にして、ジオキサン1.2mlおよび上記のバッファー114mlに溶解したコレステリルオレエート86mg、トリオレイン20mgおよびホスファチジルコリン100mgから、50ワット(20℃)、30分間の超音波処理により、アクセプターリポソームを得る。
【0167】
B−I.2.1. 富化CETPを用いるCETP蛍光試験
試験するために、上記のバッファー1部、ドナーリポソーム1部およびアクセプターリポソーム2部からなる試験混合物を使用する。
試験混合物50μlを、ヒト血漿から疎水性クロマトグラフィーを利用して得た富化CETP画分(1−3μg)48μlおよび試験しようとする物質のDMSO溶液2μlで処理し、37℃で4時間インキュベートする。
【0168】
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の尺度である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表8】

【0169】
B−I.2.2. ヒト血漿を用いるCETP蛍光試験
ドナーリポソーム6μl(12%v/v)および試験しようとする物質のDMSO溶液1μl(2%v/v)を、ヒト血漿(Sigma P9523)42μl(86%v/v)に添加し、混合物を37℃で24時間インキュベートする。
510/520nm(ギャップ幅2.5nm)の蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表9】

【0170】
B−I.2.3. エクスビボ−CETP蛍光試験
バッファー10μlおよび血清2μlを、試験混合物80μlに添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートする。
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【0171】
B−I.3. 放射性標識化HDLの入手
新鮮なヒトEDTA血漿50mlを、NaBrを使用して1.12の密度に調節し、4℃、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を非標識LDLの入手に使用する。下相をPDBバッファー(10mMトリス/HCl pH7.4、0.15mM NaCl、1mM EDTA、0.02%NaN)3x4lで透析する。次いで、保持液の体積10mlにつき、H−コレステロール(Dupont NET-725;1μC/μl、エタノールに溶解)20μlを添加し、混合物を、37℃、N下で、72時間インキュベートする。
【0172】
次いで、NaBrを使用してバッチを1.21の密度に調節し、20℃で、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を回収し、リポタンパク質画分を勾配遠心分離により精製する。この目的で、単離した標識化リポタンパク質画分を、NaBrを使用して1.26の密度に調節する。この溶液各4mlを、遠心管(SW40ローター)中、密度1.21の溶液4mlおよび密度1.063の溶液4.5mlで覆い(PDBバッファーおよびNaBrの密度溶液)、次いで、24時間38000rpmで、20℃で、SW40ローター中で遠心分離する。標識化HDLを含有する、密度1.063と1.21との間にある中間層を、3x100量のPDBバッファーで、4℃で透析する。
保持液は放射性標識化H−CE−HDLを含有し、それを、約5x10cmp/mlに調節し、試験に使用する。
【0173】
B−I.4. CETP−SPA試験
CETP活性を試験するために、H−コレステロールエステルのヒトHDリポタンパク質からビオチン化LDリポタンパク質への転送を測定する。ストレプトアビジン−SPA(登録商標)ビーズ(Amersham)の添加により反応を終了させ、転送された放射能を液体シンチレーションカウンターで直接測定する。
【0174】
試験バッチでは、HDL−H−コレステロールエステル(〜50000cpm)10μlを、37℃で18時間、ビオチン−LDL(Amersham)10μlと共に、CETP(1mg/ml)10μlおよび試験しようとする物質の溶液(10%DMSO/1%RSAに溶解)3μlを含有する50mM Hepes/0.15M NaCl/0.1%ウシ血清アルブミン/0.05%NaN pH7.4中でインキュベートする。次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ溶液(TRKQ7005)200μlを添加し、さらに1時間振盪しながらインキュベートし、次いで、シンチレーションカウンターで測定する。バッファー10μl、4℃のCETP10μlおよび37℃のCETP10μlを用いる対応するインキュベーションを対照に供する。
【0175】
37℃のCETPを用いる対照バッチで転送される放射活性を、100%の転送とみなす。この転送を半分に低減させる物質濃度を、IC50値と特定する。
【表10】

【0176】
B−II.1. 遺伝子組換えhCETPマウスに対するエクスビボ活性の測定
CETP−阻害活性を試験するために、自家飼育した遺伝子組換えhCETPマウスに、胃管を使用して物質を経口投与する[Dinchuk et al. BBA 1295-301 (1995)]。この目的で、実験開始の前日に、オスの動物を、等数の動物(原則としてn=4)を有するグループに無作為に割り当てる。物質投与前に、血清中の基底CETP活性(T1)の測定のために、後眼窩静脈叢の穿刺により各マウスから血液を採取する。次いで、胃管を使用して試験物質を動物に投与する。試験物質の投与後、特定の時間に、一般に物質の投与後16または24時間後に、二回目の穿刺により血液を動物から採取する(T2)が、必要に応じて、これを他の時間で実施することもできる。
【0177】
物質の阻害活性を評価できるように、各時間、即ち、16または24時間に、動物が物質を含まない製剤化物質のみを受容する、対応する対照群を用いる。対照動物では、対応する実験期間(16または24時間)に亘る、阻害剤のない場合のCETP活性の変化を測定できるように、動物毎の2回目の血液サンプル採取を物質で処置した動物と同様に実施する。
【0178】
凝血の終了後、血液サンプルを遠心分離し、血清をピペットで取り出す。CETP活性の決定のために、4時間に亘るコレステリルエステル転送を測定する。この目的で、一般に試験バッチで血清2μlを用い、B−I.2.3で記載の通りに試験を実施する。
【0179】
コレステリルエステル転送の差異[pM CE/h(T2)−pM CE/h(T1)]を各動物について算出し、グループ内で平均する。何れかの時間でコレステリルエステル転送を>20%まで低減する物質を、活性であるとみなす。
【表11】

【0180】
B−II.2. シリアンゴールデンハムスターにおけるインビボ活性の測定
自家飼育した体重150−200gの雌のシリアンゴールデンハムスター(系統BAY:DSN)を、CETP阻害剤の血清リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用の測定に使用する。動物をケージ当たり6匹の動物にグループ分けし、飼料と水を自由にとらせ、2週間順応させる。
【0181】
実験開始直前および物質投与の後に、血液を後眼窩静脈叢の穿刺により採取し、30分間室温でのインキュベーションおよび20分間30000gでの遠心分離の後、血清を得るために使用する。物質を20% Solutol/80%水に溶解し、胃管を利用して経口投与する。対照の動物は、試験物質を含まない同体積の溶媒を受容する。
【0182】
トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステロールを、分析装置 COBAS INTEGRA 400 plus (Roche Diagnostics より)を製造業者に指示に従い使用して測定する。測定値から、各パラメーターについて、物質による処置に起因する割合の変化を、各動物について算出し、グループ毎の平均として標準偏差と共に示す(n=6またはn=12)。溶媒処置群と比較して、物質の効果が有意であれば、t試験の適用により、p−値を加える(*p0.05;**p0.01;***p0.005)。
【0183】
B−II.3. 遺伝子組換えhCETPマウスにおけるインビボ活性の測定
リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用を測定するために、胃管を使用して試験物質を遺伝子組換えマウスに投与する[Dinchuk et al., BBA, 1295-1301 (1995)]。実験開始前に、血清中のコレステロールおよびトリグリセリドを測定するために、マウスから後眼窩的に血液を採取する。ハムスターについて上記した通りに、4℃で終夜インキュベートし、続いて6000gで遠心分離することにより血清を入手する。3日後に、リポタンパク質およびトリグリセリドを測定するために、血液を再度マウスから採取する。測定されるパラメーターの変化を、出発値と比較した変化割合として表す。
【表12】

【0184】
C. 医薬組成物の実施例(a)
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0185】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMCのキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0186】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明の化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0187】
i.v.溶液:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。
【0188】
式(Ic)の化合物についての実験の部
A. 実施例
略語および頭字語:
【表13】

【0189】
HPLCおよびLC/MSの方法:
方法1:カラム:Chiralpak IA, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソヘキサン/1−プロパノール97:3;流速:1.0ml/分;UV−検出:254nm。
【0190】
方法2:装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil RP-18, 60 mm x 2 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B;流速:0.75ml/分;温度:30℃;UV検出:210nm。
【0191】
方法3(LC/MS):MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD; カラム: Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0192】
出発物質および中間体:
実施例1A
4'−シクロペンチル−2'−イソプロピル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−4',8'−ジヒドロ−1'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−5'(6'H)−オン
【化40】

3−アミノ−3−イソプロピル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロペノン(WO03/028727、実施例2に従い製造)6.3g(24.5mmol、1.2当量)を、最初にジイソプロピルエーテル188mlに入れ、トリフルオロ酢酸3.14ml(40.8mmol、2.0当量)およびスピロ[3.5]ノナン−6,8−ジオン(WO03/028727、実施例5に従い製造)3.1g(20.4mmol、1当量)を添加する。室温で10分間撹拌した後、シクロペンタンカルボアルデヒド3.0g(30.6mmol、1.5当量)を添加する。次いで、混合物を、還流下、水分離装置(water separator)を装着して、18時間加熱する。冷却後、混合物を氷浴中で30分間撹拌し、得られる沈殿を吸引濾過し、冷たいジイソプロピルエーテルで洗浄し、残っている溶媒を高真空下で除去する。
収量:4.37g(理論値の45.5%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.91 (m, 2H), 1.05 (d, 3H), 1.28 (d, 3H), 1.21-2.07 (m, 13H), 2.43 および 2.70 (2d, 2H), 2.63 (s, 2H), 3.47 (sept, 1H), 3.80 (d, 1H), 6.03 (s, 1H), 7.66 (d, 2H), 7.77 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=472[M+H].
【0193】
実施例2A
4'−シクロペンチル−2'−イソプロピル−3'−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−5'(8'H)−オン
【化41】

実施例1A由来の化合物5.19g(11.0mmol)を、ジクロロメタン180mlに溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)2.75g(12.1mmol、1.1当量)を少しずつ室温で添加する。混合物を室温で1時間撹拌する。混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル100:0→50:50)により精製する。
収量:4.74g(理論値の91.6%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 1.10 (d, 3H), 1.19 (d, 3H), 1.33-2.10 (m, 14H), 2.59 (sept, 1H), 2.82 (s, 2H), 2.99 (sept, 1H), 3.30 (s, 2H), 7.75 (d, 2H), 7.94 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=470[M+H].
【0194】
実施例3A
[(5'S)−4'−シクロペンチル−5'−ヒドロキシ−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−3'−イル][4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化42】

(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オール120mg(0.81mmol、0.08当量)を、最初にTHF250mlに入れ、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体6.6g(40.4mmol、4.0当量)を室温で添加する。気体の放出が止まった後、混合物を0℃に冷却し、THF250mlに溶解した実施例2A由来の化合物4.74g(10.1mmol、1当量)を添加する。撹拌しながら、混合物を18時間かけて室温に温まらせる。反応が終わった後、メタノール20mlを反応混合物に添加し、次いで、それを蒸発乾固する。粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル混合物)により精製する。
収量:4.33g(理論値の91.1%)
方法1に従い、エナンチオマー過剰率を94.0%eeと決定する。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.99-1.19 (m, 6H), 1.29-2.41 (m, 14H), 2.53 (sept, 1H), 2.93 (d, 1H), 3.15-3.54 (m, 2H), 5.13 (m, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.94 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=472[M+H].
【0195】
実施例4A
((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロペンチル−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化43】

アルゴン下、実施例3Aの化合物4.00g(8.48mmol)を、最初に乾燥トルエン30mlに入れる。次いで、室温で、2,6−ルチジン3.64g(33.9mmol、4当量)を添加し、混合物を−16℃に冷却する。トルエン10mlに溶解したtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート3.90ml(17.0mmol、2当量)を、この溶液に滴下して添加する。15分後、反応混合物を0℃に温め、この温度でさらに80分間撹拌する。後処理に、0.1N塩酸124mlを添加し、混合物を、室温に温めた後、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液と飽和重炭酸ナトリウム溶液の1:1混合物で洗浄する。合わせた水相を酢酸エチルで2回再抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1)により精製する。
収量:4.61g(理論値の92.7%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.12 (s, 3H), 0.23 (s, 3H), 0.86 (s, 9H), 1.06 (d, 3H), 1.12 (d, 3H), 1.24-2.12 (m, 14H), 2.19-2.35 (m, 2H), 2.51 (m, 1H), 2.89-3.44 (m, 3H), 5.17 (m, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.84-8.02 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=586[M+H].
【0196】
実施例5A
(S)−((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロペンチル−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化44】

水素化リチウムアンモニウムの1M THF溶液5.1ml(5.1mmol、1.1当量)を、乾燥THF46ml中の実施例4A由来の化合物2.71g(4.6mmol)の溶液に、滴下して添加する。撹拌しながら、混合物を3.5時間かけて室温に温める。後処理に、飽和酒石酸ナトリウムカリウム溶液120mlを注意深く添加する。気体の放出が止まった後、混合物を酢酸エチルで4回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的に精製し、生成物のジアステレオマーの分離をもたらす(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル95:5)。
収量:1.39g(理論値の51.2%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.16 (s, 3H), 0.25 (s, 3H), 0.67-0.98 (m, 18H), 1.02-2.34 (m, 14H), 2.80-3.76 (m, 4H), 5.19 (m, 1H), 6.21 (br. s, 1H), 7.43 (d, 2H), 7.59 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=588[M+H]
LC/MS(方法3):R=3.03分.
【0197】
シンジアステレオマー:
(R)−((5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロペンチル−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−3'−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
収量:1.04g(理論値の38.1%)
【0198】
実施例6A
(5'S)−5'−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]
【化45】

−15℃、アルゴン下で、三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.42ml(3.2mmol、2.0当量)を、乾燥トルエン15ml中の実施例5A由来の化合物0.94g(1.6mmol)の溶液に滴下して添加する。混合物を5時間撹拌し、0℃に温める。後処理に、飽和重炭酸ナトリウム溶液40mlを、氷冷しながら注意深く添加する。混合物を酢酸エチルで全部で3回抽出する。次いで、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を濾過によりシリカゲルを通して精製する(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル9:1)。
収量:0.65g(理論値の69.0%)
=0.72(イソヘキサン/酢酸エチル9:1)
【0199】
実施例:
実施例1
(5'S)−4'−シクロペンチル−3'−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2'−イソプロピル−5',8'−ジヒドロ−6'H−スピロ[シクロブタン−1,7'−キノリン]−5'−オール
【化46】

0℃で、フッ化テトラブチルアンモニウムの1M THF溶液4.4ml(4.4mmol、4.0当量)を、乾燥THF6ml中の実施例6A由来の化合物0.65g(1.1mmol)の溶液に滴下して添加する。反応混合物を氷浴中で4時間撹拌する。後処理に、混合物を酢酸エチル20mlで希釈し、水20mlで洗浄する。水相を、各場合で20mlの酢酸エチルで、2回再抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をクロマトグラフィー的に精製する(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1→4:1)。
収量:0.47g(理論値の88.6%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.75 (d, 3H), 1.11 (d, 3H), 1.30-2.33 (m, 17H), 2.89 (m, 1H), 2.89 and 3.33 (2d, 2H), 3.82 (s, 1H), 5.12 (m, 1H), 6.94 (d, 1H), 7.35 (d, 2H), 7.62 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=476[M+H]
=0.14(イソヘキサン/酢酸エチル9:1).
【0200】
B. 薬理活性の評価
B−I. CETP−阻害試験
B−I.1. CETPの入手
CETPを、ヒト血漿から、分画遠心法およびカラムクロマトグラフィーにより部分的に精製された形態で入手し、試験に使用する。この目的で、NaBrを使用してヒト血漿を1.21g/mlの密度に調節し、4℃、50000rpmで18時間遠心分離する。底部の画分(d>1.21g/ml)を Sephadex(登録商標)Phenyl-Sepharose 4B (Pharmacia) カラムに載せ、0.15M NaCl/0.001Mトリス−HCl pH7.4で洗浄し、次いで蒸留水で溶出する。CETP−活性画分を集め、50mM酢酸ナトリウムpH4.5で透析し、CM-Sepharose(登録商標)カラム (Pharmacia) に載せる。次いで、線状グラジエント(0−1M NaCl)を使用して混合物を溶出する。集めたCETP画分を10mMトリス/HCl pH7.4で透析し、次いで Mono Q(登録商標) カラム (Pharmacia)でのクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0201】
B−I.2. CETP蛍光試験
CETPに触媒されるリポソーム間の蛍光コレステロールエステルの転送の測定[Bisgaier et al., J. Lipid Res. 34, 1625 (1993) の方法に準じて改変]:
ドナーリポソームの生成のために、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート(コレステリル BODIPY(登録商標) FL C12, Molecular Probes)を、トリオレイン5.35mgおよびホスファチジルコリン6.67mgを含むジオキサン600μlに、超音波槽中で穏やかに温めながら溶解し、この溶液を、超音波処理しながら、63mlの50mMトリス/HCl、150mM NaCl、2mM EDTAバッファーpH7.3に室温で非常にゆっくりと添加する。次いで、懸濁液を、N雰囲気下、30分間、Branson 超音波槽中、約50ワットで、温度を約20℃に維持して超音波処理する。
【0202】
同様にして、ジオキサン1.2mlおよび上記のバッファー114mlに溶解したコレステリルオレエート86mg、トリオレイン20mgおよびホスファチジルコリン100mgから、50ワット(20℃)、30分間の超音波処理により、アクセプターリポソームを得る。
【0203】
B−I.2.1. 富化CETPを用いるCETP蛍光試験
試験するために、上記のバッファー1部、ドナーリポソーム1部およびアクセプターリポソーム2部からなる試験混合物を使用する。
試験混合物50μlを、ヒト血漿から疎水性クロマトグラフィーを利用して得た富化CETP画分(1−3μg)48μlおよび試験しようとする物質のDMSO溶液2μlで処理し、37℃で4時間インキュベートする。
【0204】
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の尺度である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表14】

【0205】
B−I.2.2. ヒト血漿を用いるCETP蛍光試験
ドナーリポソーム6μl(12%v/v)および試験しようとする物質のDMSO溶液1μl(2%v/v)を、ヒト血漿(Sigma P9523)42μl(86%v/v)に添加し、混合物を37℃で24時間インキュベートする。
510/520nm(ギャップ幅2.5nm)の蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表15】

【0206】
B−I.2.3. エクスビボ−CETP蛍光試験
バッファー10μlおよび血清2μlを、試験混合物80μlに添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートする。
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【0207】
B−I.3. 放射性標識化HDLの入手
新鮮なヒトEDTA血漿50mlを、NaBrを使用して1.12の密度に調節し、4℃、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を非標識LDLの入手に使用する。下相をPDBバッファー(10mMトリス/HCl pH7.4、0.15mM NaCl、1mM EDTA、0.02%NaN)3x4lで透析する。次いで、保持液の体積10mlにつき、H−コレステロール(Dupont NET-725;1μC/μl、エタノールに溶解)20μlを添加し、混合物を、37℃、N下で、72時間インキュベートする。
【0208】
次いで、NaBrを使用してバッチを1.21の密度に調節し、20℃で、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を回収し、リポタンパク質画分を勾配遠心分離により精製する。この目的で、単離した標識化リポタンパク質画分を、NaBrを使用して1.26の密度に調節する。この溶液各4mlを、遠心管(SW40ローター)中、密度1.21の溶液4mlおよび密度1.063の溶液4.5mlで覆い(PDBバッファーおよびNaBrの密度溶液)、次いで、24時間38000rpmで、20℃で、SW40ローター中で遠心分離する。標識化HDLを含有する、密度1.063と1.21との間にある中間層を、3x100量のPDBバッファーで、4℃で透析する。
保持液は放射性標識化H−CE−HDLを含有し、それを、約5x10cmp/mlに調節し、試験に使用する。
【0209】
B−I.4. CETP−SPA試験
CETP活性を試験するために、H−コレステロールエステルのヒトHDリポタンパク質からビオチン化LDリポタンパク質への転送を測定する。ストレプトアビジン−SPA(登録商標)ビーズ(Amersham)の添加により反応を終了させ、転送された放射能を液体シンチレーションカウンターで直接測定する。
【0210】
試験バッチでは、HDL−H−コレステロールエステル(〜50000cpm)10μlを、37℃で18時間、ビオチン−LDL(Amersham)10μlと共に、CETP(1mg/ml)10μlおよび試験しようとする物質の溶液(10%DMSO/1%RSAに溶解)3μlを含有する50mM Hepes/0.15M NaCl/0.1%ウシ血清アルブミン/0.05%NaN pH7.4中でインキュベートする。次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ溶液(TRKQ7005)200μlを添加し、さらに1時間振盪しながらインキュベートし、次いで、シンチレーションカウンターで測定する。バッファー10μl、4℃のCETP10μlおよび37℃のCETP10μlを用いる対応するインキュベーションを対照に供する。
【0211】
37℃のCETPを用いる対照バッチで転送される放射活性を、100%の転送とみなす。この転送を半分に低減させる物質濃度を、IC50値と特定する。
【表16】

【0212】
B−II.1. 遺伝子組換えhCETPマウスに対するエクスビボ活性の測定
CETP−阻害活性を試験するために、自家飼育した遺伝子組換えhCETPマウスに、胃管を使用して物質を経口投与する[Dinchuk et al. BBA 1295-301 (1995)]。この目的で、実験開始の前日に、オスの動物を、等数の動物(原則としてn=4)を有するグループに無作為に割り当てる。物質投与前に、血清中の基底CETP活性(T1)の測定のために、後眼窩静脈叢の穿刺により各マウスから血液を採取する。次いで、胃管を使用して試験物質を動物に投与する。試験物質の投与後、特定の時間に、一般に物質の投与後16または24時間後に、二回目の穿刺により血液を動物から採取する(T2)が、必要に応じて、これを他の時間で実施することもできる。
【0213】
物質の阻害活性を評価できるように、各時間、即ち、16または24時間に、動物が物質を含まない製剤化物質のみを受容する、対応する対照群を用いる。対照動物では、対応する実験期間(16または24時間)に亘る、阻害剤のない場合のCETP活性の変化を測定できるように、動物毎の2回目の血液サンプル採取を物質で処置した動物と同様に実施する。
【0214】
凝血の終了後、血液サンプルを遠心分離し、血清をピペットで取り出す。CETP活性の決定のために、4時間に亘るコレステリルエステル転送を測定する。この目的で、一般に試験バッチで血清2μlを用い、B−I.2.3で記載の通りに試験を実施する。
【0215】
コレステリルエステル転送の差異[pM CE/h(T2)−pM CE/h(T1)]を各動物について算出し、グループ内で平均する。何れかの時間でコレステリルエステル転送を>20%まで低減する物質を、活性であるとみなす。
【表17】

【0216】
B−II.2. シリアンゴールデンハムスターにおけるインビボ活性の測定
自家飼育した体重150−200gの雌のシリアンゴールデンハムスター(系統BAY:DSN)を、CETP阻害剤の血清リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用の測定に使用する。動物をケージ当たり6匹の動物にグループ分けし、飼料と水を自由にとらせ、2週間順応させる。
【0217】
実験開始直前および物質投与の後に、血液を後眼窩静脈叢の穿刺により採取し、30分間室温でのインキュベーションおよび20分間30000gでの遠心分離の後、血清を得るために使用する。物質を20% Solutol/80%水に溶解し、胃管を利用して経口投与する。対照の動物は、試験物質を含まない同体積の溶媒を受容する。
【0218】
トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステロールを、分析装置 COBAS INTEGRA 400 plus (Roche Diagnostics より)を製造業者に指示に従い使用して測定する。測定値から、各パラメーターについて、物質による処置に起因する割合の変化を、各動物について算出し、グループ毎の平均として標準偏差と共に示す(n=6またはn=12)。溶媒処置群と比較して、物質の効果が有意であれば、t試験の適用により、p−値を加える(*p0.05;**p0.01;***p0.005)。
【0219】
B−II.3. 遺伝子組換えhCETPマウスにおけるインビボ活性の測定
リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用を測定するために、胃管を使用して試験物質を遺伝子組換えマウスに投与する[Dinchuk et al., BBA, 1295-1301 (1995)]。実験開始前に、血清中のコレステロールおよびトリグリセリドを測定するために、マウスから後眼窩的に血液を採取する。ハムスターについて上記した通りに、4℃で終夜インキュベートし、続いて6000gで遠心分離することにより血清を入手する。3日後に、リポタンパク質およびトリグリセリドを測定するために、血液を再度マウスから採取する。測定されるパラメーターの変化を、出発値と比較した変化割合として表す。
【0220】
C. 医薬組成物の実施例
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0221】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMCのキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0222】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明の化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0223】
i.v.溶液:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。
【0224】
式(Id)の化合物についての実験の部
A. 実施例
略語および頭字語:
【表18】

【0225】
HPLCおよびLC/MSの方法:
方法1A:カラム:Chiralpak IA, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソヘキサン/1−プロパノール97:3;流速:1.0ml/分;UV−検出:254nm。
方法1B:カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm, 10 μm;移動相:イソヘキサン/1−プロパノール97.5:2.5;流速:1.0ml/分;UV検出:254nm。
【0226】
方法2:装置:DAD 検出を有するHP 1100;カラム:Kromasil RP-18, 60 mm x 2 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B;流速:0.75ml/分;温度:30℃;UV検出:210nm。
【0227】
方法3(LC/MS):MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD; カラム: Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0228】
出発物質および中間体:
実施例1A
2,4−ジシクロペンチル−7,7−ジメチル−3−(4−トリフルオロメチルベンゾイル)−4,6,7,8−テトラヒドロ−1H−キノリン−5−オン
【化47】

3−アミノ−3−シクロペンチル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロペノン(WO03/028727、実施例4に従い製造)16.8g(59.4mmol、1.0当量)を、最初に、ジイソプロピルエーテル600mlに入れ、トリフルオロ酢酸9.16ml(118.9mmol、2.0当量)および5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン8.3g(59.4mmol、1当量)を添加する。30分間室温で撹拌した後、シクロペンタンカルボアルデヒド7.0g(71.3mmol、1.2当量)を添加し、次いで、混合物を、還流下、水分離装置を装着して、15時間加熱する。室温に冷却後、さらに1.0g(10.2mmol、0.17当量)のシクロペンタンカルボアルデヒドを添加する。混合物を再度還流に加熱し、溶媒の体積を約500mlに減らす。混合物を、還流下、水分離装置を装着して、さらに20時間加熱する。後処理に、混合物を、冷却後、減圧下で蒸発乾固し、残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(移動相:イソヘキサン/酢酸エチル4:1)により予精製する。かくして得られる生成物画分を少量のジイソプロピルエーテルに取り、室温で16時間撹拌する。得られる沈殿を吸引濾過し、冷たいジイソプロピルエーテルで洗浄し、残っている溶媒を高真空下で除去する。
収量:3.8g(理論値の13%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 1.14 (s, 3H), 1.16 (s, 3H), 1.21-2.00 (m, 16H), 2.20 (m, 1H), 2.28 and 2.51 (2d, 2H), 2.34 (s, 2H), 3.50 (sept, 1H), 3.83 (d, 1H), 5.91 (s, 1H), 7.66 (d, 2H), 7.78 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=486[M+H].
【0229】
実施例2A
2,4−ジシクロペンチル−7,7−ジメチル−3−(4−トリフルオロメチルベンゾイル)−7,8−ジヒドロ−6H−キノリン−5−オン
【化48】

実施例1A由来の化合物3.79g(7.8mmol)を、ジクロロメタン78mlに溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)1.95g(8.6mmol、1.1当量)を少しずつ0℃で添加する。撹拌しながら、混合物を3時間かけて室温に温める。混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1、4:1)により精製する。
収量:3.53g(理論値の93.6%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 1.10 (d, 3H), 1.17 (d, 3H), 1.35-1.97 (m, 16H), 2.51-2.71 (m, 3H), 2.94-3.15 (m, 3H), 7.75 (d, 2H), 7.93 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=484[M+H].
【0230】
実施例3A
[(5S)−2,4−ジシクロペンチル−5−ヒドロキシ−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル](4−トリフルオロメチルフェニル)メタノン
【化49】

(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オール87mg(0.58mmol、0.08当量)を、最初にTHF340mlに入れ、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体4.76g(29.2mmol、4.0当量)を室温で添加する。ガスの放出が止まった後、混合物を0℃に冷却し、THF25mlに溶解した実施例2A由来の化合物3.53g(7.3mmol、1当量)を添加する。撹拌しながら、混合物を16時間かけて室温に温まらせる。反応が終わった後、メタノール20mlを反応混合物に添加し、次いで、それを濃縮する。残渣を水150mlと酢酸エチル150mlとに分配する。水相を各場合で100mlの酢酸エチルで2回抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。次いで、粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル100:0、次いで4:1)により精製する。
収量:3.13g(理論値の88.2%)
【0231】
方法1Aに従い、エナンチオマー過剰率を93.5%eeと決定する。
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 1.00 (m, 3H), 1.23 (m, 3H), 1.29-2.03 (m, 19H), 2.56 (m, 1H), 2.64-3.08 (m, 2H), 3.29 (m, 1H), 5.17 (m, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.93 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=486[M+H].
【0232】
実施例4A
((5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2,4−ジシクロペンチル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化50】

アルゴン下、実施例3A由来の化合物3.12g(6.43mmol)を、最初に乾燥トルエン64mlに入れる。次いで、室温で、2,6−ルチジン2.76g(25.7mmol、4当量)を添加し、混合物を−18℃に冷却する。tert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート2.95ml(12.9mmol、2当量)を溶液に滴下して添加する。反応混合物を0℃で2時間撹拌する。後処理に、飽和塩化アンモニウム溶液(100ml)を添加し、混合物を、室温に温めた後、酢酸エチルで抽出する。水相を酢酸エチルでさらに2回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1)により精製する。
収量:3.90g(定量的)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.08 (s, 3H), 0.18 (s, 3H), 0.86 (s, 9H), 0.91 (s, 3H), 1.24 (s, 3H), 1.28-2.06 (m, 18H), 2.47-3.23 (m, 3H), 3.32 (m, 1H), 5.20 (m, 1H), 7.73 (d, 2H), 7.81-8.03 (m, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=600[M+H].
【0233】
実施例5A
(S)−((5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2,4−ジシクロペンチル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化51】

0℃で、水素化リチウムアンモニウムの1M THF溶液9.8ml(9.8mmol、1.5当量)を、乾燥THF65ml中の実施例4A由来の化合物3.9g(6.5mmol)の溶液に滴下して添加する。後処理に、飽和酒石酸ナトリウムカリウム溶液120mlを注意深く添加する。気体の放出が止まった後、混合物を酢酸エチルで3回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化アンモニウム溶液で、そして飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的に精製し、生成物のジアステレオマーの分離をもたらす(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル95:5)。
収量:1.87g(理論値の47.8%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.13 (s, 3H), 0.19 (s, 3H), 0.82-0.97 (m, 15H), 1.09-2.12 (m, 18H), 2.19 (m, 1H), 2.56 (d, 1H), 2.86-3.05 (m, 2H), 3.70 (m, 1H), 5.21 (t, 1H), 6.23 (br. s, 1H), 7.42 (d, 2H), 7.59 (d, 2H) ppm.
MS(DCI):m/z=602[M+H]
=0.26(イソヘキサン/酢酸エチル9:1).
【0234】
シンジアステレオマー:
(R)−((5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2,4−ジシクロペンチル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
収量:2.16g(理論値の53.9%)
=0.34(イソヘキサン/酢酸エチル9:1).
【0235】
実施例6A
(5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−2,4−ジシクロペンチル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化52】

−17℃、アルゴン下、三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.59ml(4.4mmol、1.5当量)を、乾燥ジクロロメタン29ml中の実施例5A由来の化合物1.78g(3.0mmol)の溶液に滴下して添加する。混合物を−66℃に冷却し、次いで、撹拌しながら、6時間かけて0℃に温める。反応溶液を再度−78℃に冷却し、さらに三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.25ml(1.9mmol、0.64当量)を添加する。次いで、撹拌しながら、混合物を16時間かけて10℃に温める。後処理に、飽和重炭酸ナトリウム溶液40mlを、氷冷しながら注意深く添加する。混合物を酢酸エチルで全部で3回抽出する。次いで、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を濾過によりシリカゲルを通して精製する(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル9:1)。
収量:1.67g(理論値の93.3%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.13 (s, 3H), 0.19 (s, 3H), 0.90 (3, 9H), 0.93 (s, 3H), 1.21 (s, 3H), 1.58-2.15 (m, 17H), 2.51-3.05 (m, 4H), 3.70 (m, 1H), 5.21 (t, 1H), 6.92 (d, 1H), 7.38 (d, 2H), 7.62 (d, 2H) ppm.
HPLC (方法 2): Rt = 6.30 分.
MS(ESIpos):m/z=604[M+H]
=0.68(イソヘキサン/酢酸エチル9:1).
【0236】
実施例:
実施例1
(5S)−2,4−ジシクロペンチル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−オール
【化53】

0℃で、フッ化テトラブチルアンモニウムの1M THF溶液11.0ml(11.0mmol、4.0当量)を、乾燥THF16ml中の実施例6Aの化合物1.67g(2.8mmol)の溶液に滴下して添加する。反応混合物を氷浴中で4時間撹拌する。後処理に、混合物を酢酸エチル100mlで希釈し、各回100mlの水および50mlの飽和塩化ナトリウム溶液で2回洗浄する。有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をクロマトグラフィー的に精製する(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1→4:1)。
収量:0.74g(理論値の55.1%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 1.02 (s, 3H), 1.18 (s, 3H), 1.34-2.19 (m, 18H), 2.61-2.97 (m, 3H), 3.72 (m, 1H), 3.84 (sept, 1H), 5.14 (q, 1H), 6.96 (d, 1H), 7.34 (d, 2H), 7.61 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=490[M+H]
=0.13(イソヘキサン/酢酸エチル9:1).
【0237】
生成物中にまだ存在するジアステレオマーのさらなる分離を、クロマトグラフィー的に実施する(カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 20 mm, 5 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97:3;流速:15ml/分).
収量:0.57g(理論値の42.4%).
HPLC(方法1B):R=5.60分.
【0238】
B. 薬理活性の評価
B−I. CETP−阻害試験
B−I.1. CETPの入手
CETPを、ヒト血漿から、分画遠心法およびカラムクロマトグラフィーにより部分的に精製された形態で入手し、試験に使用する。この目的で、NaBrを使用してヒト血漿を1.21g/mlの密度に調節し、4℃、50000rpmで18時間遠心分離する。底部の画分(d>1.21g/ml)を Sephadex(登録商標)Phenyl-Sepharose 4B (Pharmacia) カラムに載せ、0.15M NaCl/0.001Mトリス−HCl pH7.4で洗浄し、次いで蒸留水で溶出する。CETP−活性画分を集め、50mM酢酸ナトリウムpH4.5で透析し、CM-Sepharose(登録商標)カラム (Pharmacia) に載せる。次いで、線状グラジエント(0−1M NaCl)を使用して混合物を溶出する。集めたCETP画分を10mMトリス/HCl pH7.4で透析し、次いで Mono Q(登録商標) カラム (Pharmacia)でのクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0239】
B−I.2. CETP蛍光試験
CETPに触媒されるリポソーム間の蛍光コレステロールエステルの転送の測定[Bisgaier et al., J. Lipid Res. 34, 1625 (1993) の方法に準じて改変]:
ドナーリポソームの生成のために、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート(コレステリル BODIPY(登録商標) FL C12, Molecular Probes)を、トリオレイン5.35mgおよびホスファチジルコリン6.67mgを含むジオキサン600μlに、超音波槽中で穏やかに温めながら溶解し、この溶液を、超音波処理しながら、63mlの50mMトリス/HCl、150mM NaCl、2mM EDTAバッファーpH7.3に室温で非常にゆっくりと添加する。次いで、懸濁液を、N雰囲気下、30分間、Branson 超音波槽中、約50ワットで、温度を約20℃に維持して超音波処理する。
【0240】
同様にして、ジオキサン1.2mlおよび上記のバッファー114mlに溶解したコレステリルオレエート86mg、トリオレイン20mgおよびホスファチジルコリン100mgから、50ワット(20℃)、30分間の超音波処理により、アクセプターリポソームを得る。
【0241】
B−I.2.1. 富化CETPを用いるCETP蛍光試験
試験するために、上記のバッファー1部、ドナーリポソーム1部およびアクセプターリポソーム2部からなる試験混合物を使用する。
試験混合物50μlを、ヒト血漿から疎水性クロマトグラフィーを利用して得た富化CETP画分(1−3μg)48μlおよび試験しようとする物質のDMSO溶液2μlで処理し、37℃で4時間インキュベートする。
【0242】
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の尺度である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表19】

【0243】
B−I.2.2. ヒト血漿を用いるCETP蛍光試験
ドナーリポソーム6μl(12%v/v)および試験しようとする物質のDMSO溶液1μl(2%v/v)を、ヒト血漿(Sigma P9523)42μl(86%v/v)に添加し、混合物を37℃で24時間インキュベートする。
510/520nm(ギャップ幅2.5nm)の蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表20】

【0244】
B−I.2.3. エクスビボ−CETP蛍光試験
バッファー10μlおよび血清2μlを、試験混合物80μlに添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートする。
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【0245】
B−I.3. 放射性標識化HDLの入手
新鮮なヒトEDTA血漿50mlを、NaBrを使用して1.12の密度に調節し、4℃、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を非標識LDLの入手に使用する。下相をPDBバッファー(10mMトリス/HCl pH7.4、0.15mM NaCl、1mM EDTA、0.02%NaN)3x4lで透析する。次いで、保持液の体積10mlにつき、H−コレステロール(Dupont NET-725;1μC/μl、エタノールに溶解)20μlを添加し、混合物を、37℃、N下で、72時間インキュベートする。
【0246】
次いで、NaBrを使用してバッチを1.21の密度に調節し、20℃で、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を回収し、リポタンパク質画分を勾配遠心分離により精製する。この目的で、単離した標識化リポタンパク質画分を、NaBrを使用して1.26の密度に調節する。この溶液各4mlを、遠心管(SW40ローター)中、密度1.21の溶液4mlおよび密度1.063の溶液4.5mlで覆い(PDBバッファーおよびNaBrの密度溶液)、次いで、24時間38000rpmで、20℃で、SW40ローター中で遠心分離する。標識化HDLを含有する、密度1.063と1.21との間にある中間層を、3x100量のPDBバッファーで、4℃で透析する。
保持液は放射性標識化H−CE−HDLを含有し、それを、約5x10cmp/mlに調節し、試験に使用する。
【0247】
B−I.4. CETP−SPA試験
CETP活性を試験するために、H−コレステロールエステルのヒトHDリポタンパク質からビオチン化LDリポタンパク質への転送を測定する。ストレプトアビジン−SPA(登録商標)ビーズ(Amersham)の添加により反応を終了させ、転送された放射能を液体シンチレーションカウンターで直接測定する。
【0248】
試験バッチでは、HDL−H−コレステロールエステル(〜50000cpm)10μlを、37℃で18時間、ビオチン−LDL(Amersham)10μlと共に、CETP(1mg/ml)10μlおよび試験しようとする物質の溶液(10%DMSO/1%RSAに溶解)3μlを含有する50mM Hepes/0.15M NaCl/0.1%ウシ血清アルブミン/0.05%NaN pH7.4中でインキュベートする。次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ溶液(TRKQ7005)200μlを添加し、さらに1時間振盪しながらインキュベートし、次いで、シンチレーションカウンターで測定する。バッファー10μl、4℃のCETP10μlおよび37℃のCETP10μlを用いる対応するインキュベーションを対照に供する。
【0249】
37℃のCETPを用いる対照バッチで転送される放射活性を、100%の転送とみなす。この転送を半分に低減させる物質濃度を、IC50値と特定する。
【表21】

【0250】
B−II.1. 遺伝子組換えhCETPマウスに対するエクスビボ活性の測定
CETP−阻害活性を試験するために、自家飼育した遺伝子組換えhCETPマウスに、胃管を使用して物質を経口投与する[Dinchuk et al. BBA 1295-301 (1995)]。この目的で、実験開始の前日に、オスの動物を、等数の動物(原則としてn=4)を有するグループに無作為に割り当てる。物質投与前に、血清中の基底CETP活性(T1)の測定のために、後眼窩静脈叢の穿刺により各マウスから血液を採取する。次いで、胃管を使用して試験物質を動物に投与する。試験物質の投与後、特定の時間に、一般に物質の投与後16または24時間後に、二回目の穿刺により血液を動物から採取する(T2)が、必要に応じて、これを他の時間で実施することもできる。
【0251】
物質の阻害活性を評価できるように、各時間、即ち、16または24時間に、動物が物質を含まない製剤化物質のみを受容する、対応する対照群を用いる。対照動物では、対応する実験期間(16または24時間)に亘る、阻害剤のない場合のCETP活性の変化を測定できるように、動物毎の2回目の血液サンプル採取を物質で処置した動物と同様に実施する。
【0252】
凝血の終了後、血液サンプルを遠心分離し、血清をピペットで取り出す。CETP活性の決定のために、4時間に亘るコレステリルエステル転送を測定する。この目的で、一般に試験バッチで血清2μlを用い、B−I.2.3で記載の通りに試験を実施する。
【0253】
コレステリルエステル転送の差異[pM CE/h(T2)−pM CE/h(T1)]を各動物について算出し、グループ内で平均する。何れかの時間でコレステリルエステル転送を>20%まで低減する物質を、活性であるとみなす。
【表22】

【0254】
B−II.2. シリアンゴールデンハムスターにおけるインビボ活性の測定
自家飼育した体重150−200gの雌のシリアンゴールデンハムスター(系統BAY:DSN)を、CETP阻害剤の血清リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用の測定に使用する。動物をケージ当たり6匹の動物にグループ分けし、飼料と水を自由にとらせ、2週間順応させる。
【0255】
実験開始直前および物質投与の後に、血液を後眼窩静脈叢の穿刺により採取し、30分間室温でのインキュベーションおよび20分間30000gでの遠心分離の後、血清を得るために使用する。物質を20% Solutol/80%水に溶解し、胃管を利用して経口投与する。対照の動物は、試験物質を含まない同体積の溶媒を受容する。
【0256】
トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステロールを、分析装置 COBAS INTEGRA 400 plus (Roche Diagnostics より)を製造業者に指示に従い使用して測定する。測定値から、各パラメーターについて、物質による処置に起因する割合の変化を、各動物について算出し、グループ毎の平均として標準偏差と共に示す(n=6またはn=12)。溶媒処置群と比較して、物質の効果が有意であれば、t試験の適用により、p−値を加える(*p0.05;**p0.01;***p0.005)。
【0257】
B−II.3. 遺伝子組換えhCETPマウスにおけるインビボ活性の測定
リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用を測定するために、胃管を使用して試験物質を遺伝子組換えマウスに投与する[Dinchuk et al., BBA, 1295-1301 (1995)]。実験開始前に、血清中のコレステロールおよびトリグリセリドを測定するために、マウスから後眼窩的に血液を採取する。ハムスターについて上記した通りに、4℃で終夜インキュベートし、続いて6000gで遠心分離することにより血清を入手する。3日後に、リポタンパク質およびトリグリセリドを測定するために、血液を再度マウスから採取する。測定されるパラメーターの変化を、出発値と比較した変化割合として表す。
【表23】

【0258】
C. 医薬組成物の実施例
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0259】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMCのキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0260】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明の化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0261】
i.v.溶液:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。
【0262】
式(Ie)の化合物についての実験の部
A. 実施例
略語および頭字語:
【表24】

【0263】
HPLCおよびLC/MSの方法:
方法1A:カラム:Chiralpak IA, 250 mm x 4.6 mm;移動相:イソヘキサン/1−プロパノール97:3;流速:1.0ml/分;UV−検出:254nm。
方法1B:カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm, 10 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97.5:2.5;流速:1.0ml/分;UV検出:254nm。
方法1C:カラム:Chiralpak AD, 250 mm x 4.6 mm, 10 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97.5:2.5;流速:1.5ml/分;UV検出:254nm。
【0264】
方法2:装置:DAD 検出を有する HP 1100;カラム:Kromasil RP-18, 60 mm x 2 mm, 3.5 μm;移動相A:HClO5ml/水1l、移動相B:アセトニトリル;グラジエント:0分2%B→0.5分2%B→4.5分90%B→9分90%B;流速:0.75ml/分;温度:30℃;UV検出:210nm。
【0265】
方法3(LC/MS):MS装置タイプ:Micromass ZQ;HPLC装置タイプ:HP 1100 Series; UV DAD; カラム: Phenomenex Synergi 2μ Hydro-RP Mercury 20 mm x 4 mm;移動相A:水1l+50%強度ギ酸0.5ml、移動相B:アセトニトリル1l+50%強度ギ酸0.5ml;グラジエント:0.0分90%A→2.5分30%A→3.0分5%A→4.5分5%A;流速:0.0分1ml/分→2.5分/3.0分/4.5分2ml/分;オーブン:50℃;UV検出:210nm。
【0266】
出発物質および中間体:
実施例1A
4−シクロヘキシル−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−4,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5(1H)−オン
【化54】

3−アミノ−3−イソプロピル−1−(4−トリフルオロメチルフェニル)プロペノン(WO03/028727、実施例2に従い製造)5.0g(19.4mmol、1.2当量)を、最初にジイソプロピルエーテル150mlに入れ、トリフルオロ酢酸2.50ml(32.4mmol、2.0当量)および5,5−ジメチルシクロヘキサン−1,3−ジオン2.3g(16.2mmol、1当量)を添加する。室温で10分間撹拌した後、シクロヘキサンカルボアルデヒド2.7g(24.3mmol、1.5当量)を添加する。次いで、混合物を、還流下、水分離装置を装着して、18時間加熱する。冷却後、混合物を氷浴中で30分間撹拌し、得られる沈殿を吸引濾過し、冷たいジイソプロピルエーテルで洗浄し、残っている溶媒を高真空下で除去する。
収量:2.63g(理論値の34.3%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.78-1.36 (m, 6H), 1.04 (d, 3H), 1.16 (2s, 6H), 1.29 (d, 3H), 1.28 (d, 3H), 1.46-1.67 (m, 5H), 2.32 and 2.49 (2d, 2H), 2.34 (s, 2H), 3.46 (sept, 1H), 3.75 (d, 1H), 5.89 (s, 1H), 7.65 (d, 2H), 7.77 (d, 2H) ppm.
MS(DCI):m/z=474[M+H].
【0267】
実施例2A
4−シクロヘキシル−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−3−[4−(トリフルオロメチル)ベンゾイル]−7,8−ジヒドロキノリン−5(6H)−オン
【化55】

実施例1A由来の化合物2.30g(4.9mmol)を、ジクロロメタン50mlに溶解し、2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)1.10g(4.9mmol、1当量)を少しずつ0℃で添加する。混合物を0℃で1時間、次いで室温で18時間撹拌する。混合物をロータリーエバポレーターで濃縮し、残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル5:1)で精製する。
収量:2.16g(理論値の94.2%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 1.00-1.89 (m, 10H), 1.08 (d, 3H), 1.11 (s, 3H), 1.14 (d, 3H), 1.17 (s, 3H), 2.48-2.69 (m, 3H), 3.09 (s, 2H), 3.27 (m, 1H), 7.75 (d, 2H), 7.94 (m, 2H) ppm.
MS(DCI):m/z=472[M+H].
【0268】
実施例3A
[(5S)−4−シクロヘキシル−5−ヒドロキシ−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル][4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化56】

(1R,2S)−1−アミノインダン−2−オール55mg(0.37mmol、0.08当量)を、最初にTHF115mlに入れ、ボラン−N,N−ジエチルアニリン錯体2.98g(18.3mmol、4.0当量)を室温で添加する。気体の放出が止まった後、混合物を0℃に冷却し、THF115mlに溶解した実施例2A由来の化合物2.16g(4.6mmol、1当量)を添加する。撹拌しながら、混合物を18時間かけて室温に温まらせる。反応が終了した後、メタノール20mlを反応混合物に添加し、次いで、それを蒸発乾固する。次いで、粗生成物をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル混合物)により精製する。
収量:2.01g(理論値の93.0%)
【0269】
方法1Aに従い、エナンチオマー過剰率を88%eeと決定する。
エナンチオマーをキラル相のクロマトグラフィー(カラム:Chiralpak AD-H, 250 mm x 20 mm, 20 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97:3;流速:15ml/分)により分離する:
収量:1.70g(理論値の78.5%)
方法1Aに従い、エナンチオマー過剰率を>99%eeと決定する;R(方法1A)=5.22分
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.88-2.12 (m, 26H), 2.50 (sept, 1H), 2.71 (d, 1H), 2.98 (d, 1H), 5.18 (m, 1H), 7.45-8.50 (br. m, 4H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=474[M+H].
【0270】
実施例4A
((5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−シクロヘキシル−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノン
【化57】

アルゴン下、実施例3A由来の化合物2.82g(5.95mmol)を、最初に乾燥トルエン22mlに入れる。次いで、2,6−ルチジン2.55g(23.8mmol、4当量)を室温で添加し、混合物を−16℃に冷却する。トルエン7mlに溶解したtert−ブチルジメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート2.74ml(11.9mmol、2当量)を、この溶液に滴下して添加する。15分後、反応混合物を0℃に温め、この温度でさらに80分間撹拌する。後処理に、0.1N塩酸124mlを添加し、混合物を、室温に温めた後、酢酸エチルで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液と飽和重炭酸ナトリウム溶液の1:1混合物で洗浄する。合わせた水相を酢酸エチルで2回再抽出する。合わせた有機相を硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー(シリカゲル、移動相:イソヘキサン/酢酸エチル9:1)により精製する。
収量:3.17g(理論値の90.7%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.14 (s, 3H), 0.19 (s, 3H), 0.86 (s, 9H), 0.65-1.83 (m, 24H), 1.96-2.07 (m, 1H), 2.47 (m, 1H), 2.63 (m, 1H), 3.10 (m, 1H), 5.25 (m, 1H), 7.43-8.54 (br. m, 4H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=588[M+H].
【0271】
実施例5A
(S)−((5S)−5−{[tert.−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−シクロヘキシル−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
【化58】

0℃で、水素化リチウムアンモニウムの1M THF溶液5.9ml(5.9mmol、1.1当量)を、乾燥THF75ml中の実施例4A由来の化合物3.17g(5.4mmol)の溶液に滴下して添加する。撹拌しながら、混合物を5時間かけて室温に温める。後処理に、飽和酒石酸ナトリウムカリウム溶液120mlを注意深く添加する。気体の放出が止まった後、混合物を酢酸エチルで4回抽出し、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。残渣をクロマトグラフィー的に精製し、生成物のジアステレオマーの分離をもたらす(カラム:Chiralpak AD, 500 mm x 40 mm, 20 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97.5:2.5;流速:50ml/分;温度:24℃;UV検出:254nm)。
収量:0.95g(理論値の29.8%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.20 (br. s, 6H), 0.76-2.03 (m, 30H), 1.02-2.34 (m, 14H), 2.17 (m, 1H), 2.43-3.10 (m, 3H), 3.36 (m, 1H), 5.26 (m, 1H), 6.66 (br. s, 1H), 7.32-7.65 (m, 4H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=590[M+H]
LC/MS(方法3):R=3.03分.
HPLC(方法1B):R=2.84分.
【0272】
シンジアステレオマー:
(R)−((5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−シクロヘキシル−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−3−イル)[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メタノール
収量:1.25g(理論値の39.2%)
【0273】
実施例6A
(5S)−5−{[tert−ブチル(ジメチル)シリル]オキシ}−4−シクロヘキシル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン
【化59】

−60℃、アルゴン下で、三フッ化ジエチルアミノ硫黄0.45ml(3.4mmol、1.5当量)を、乾燥トルエン30ml中の実施例5A由来の化合物1.35g(2.3mmol)の溶液に滴下して添加する。−10℃に温めながら、混合物を3時間撹拌する。後処理に、飽和重炭酸ナトリウム溶液40mlを、氷冷しながら注意深く添加する。混合物を酢酸エチルで全部で3回抽出する。次いで、合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物を濾過によりシリカゲルを通して精製する(移動相:シクロヘキサン/酢酸エチル9:1)。
収量:1.28g(理論値の94.8%)
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): δ = 0.20 (br. s, 6H), 0.71 (d, 3H), 0.91 (s, 9H), 0.77-2.06 (m, 21H), 2.60 and 3.03 (2d, 2H), 2.78 (m, 1H), 3.36 (m, 1H), 5.25 (m, 1H), 7.10-7.50 (m, 3H), 7.63 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=592[M+H].
【0274】
実施例:
実施例1
(5S)−4−シクロヘキシル−3−{(S)−フルオロ[4−(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}−2−イソプロピル−7,7−ジメチル−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−5−オール
【化60】

0℃で、テトラブチル塩化アンモニウム(5.4mmol、2.5当量)の1M THF溶液5.4mlを、乾燥THF25ml中の実施例6A由来の化合物1.28g(2.2mmol)の溶液に滴下して添加する。混合物を氷浴中で4時間撹拌する。後処理に、混合物を酢酸エチル20mlで希釈し、水20mlで洗浄する。水相を各場合で20mlの酢酸エチルで2回再抽出する。合わせた有機相を飽和塩化ナトリウム溶液50mlで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮する。粗生成物をクロマトグラフィー的に精製し、まだ存在するジアステレオマーの分離をもたらす(カラム:Chiralpak AD-H, 250 mm x 20 mm, 5 μm;移動相:イソヘキサン/イソプロパノール97:3;流速:25ml/分)。
収量:0.67g(理論値の65.3%)
1H-NMR (CDCl3, 300 MHz): δ = 0.60 (d, 3H), 1.03 (s, 3H), 1.12 (d, 3H), 1.17 (s, 3H), 1.08-1.51 (m, 4H), 1.67-2.14 (m, 9H), 2.61-2.94 (m, 3H), 3.52 (m, 1H), 5.14 (m, 1H), 7.33 (d, 2H), 7.37 (d, 1H), 7.61 (d, 2H) ppm.
MS(ESIpos):m/z=478[M+H]
HPLC(方法1C):R=4.33分.
【0275】
B. 薬理活性の評価
B−I. CETP−阻害試験
B−I.1. CETPの入手
CETPを、ヒト血漿から、分画遠心法およびカラムクロマトグラフィーにより部分的に精製された形態で入手し、試験に使用する。この目的で、NaBrを使用してヒト血漿を1.21g/mlの密度に調節し、4℃、50000rpmで18時間遠心分離する。底部の画分(d>1.21g/ml)を Sephadex(登録商標)Phenyl-Sepharose 4B (Pharmacia) カラムに載せ、0.15M NaCl/0.001Mトリス−HCl pH7.4で洗浄し、次いで蒸留水で溶出する。CETP−活性画分を集め、50mM酢酸ナトリウムpH4.5で透析し、CM-Sepharose(登録商標)カラム (Pharmacia) に載せる。次いで、線状グラジエント(0−1M NaCl)を使用して混合物を溶出する。集めたCETP画分を10mMトリス/HCl pH7.4で透析し、次いで Mono Q(登録商標) カラム (Pharmacia)でのクロマトグラフィーによりさらに精製する。
【0276】
B−I.2. CETP蛍光試験
CETPに触媒されるリポソーム間の蛍光コレステロールエステルの転送の測定[Bisgaier et al., J. Lipid Res. 34, 1625 (1993) の方法に準じて改変]:
ドナーリポソームの生成のために、コレステリル4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4a−ジアザ−s−インダセン−3−ドデカノエート(コレステリル BODIPY(登録商標) FL C12, Molecular Probes)を、トリオレイン5.35mgおよびホスファチジルコリン6.67mgを含むジオキサン600μlに、超音波槽中で穏やかに温めながら溶解し、この溶液を、超音波処理しながら、63mlの50mMトリス/HCl、150mM NaCl、2mM EDTAバッファーpH7.3に室温で非常にゆっくりと添加する。次いで、懸濁液を、N雰囲気下、30分間、Branson 超音波槽中、約50ワットで、温度を約20℃に維持して超音波処理する。
【0277】
同様にして、ジオキサン1.2mlおよび上記のバッファー114mlに溶解したコレステリルオレエート86mg、トリオレイン20mgおよびホスファチジルコリン100mgから、50ワット(20℃)、30分間の超音波処理により、アクセプターリポソームを得る。
【0278】
B−I.2.1. 富化CETPを用いるCETP蛍光試験
試験するために、上記のバッファー1部、ドナーリポソーム1部およびアクセプターリポソーム2部からなる試験混合物を使用する。
試験混合物50μlを、ヒト血漿から疎水性クロマトグラフィーを利用して得た富化CETP画分(1−3μg)48μlおよび試験しようとする物質のDMSO溶液2μlで処理し、37℃で4時間インキュベートする。
【0279】
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の尺度である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表25】

【0280】
B−I.2.2. ヒト血漿を用いるCETP蛍光試験
ドナーリポソーム6μl(12%v/v)および試験しようとする物質のDMSO溶液1μl(2%v/v)を、ヒト血漿(Sigma P9523)42μl(86%v/v)に添加し、混合物を37℃で24時間インキュベートする。
510/520nm(ギャップ幅2.5nm)の蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【表26】

【0281】
B−I.2.3. エクスビボ−CETP蛍光試験
バッファー10μlおよび血清2μlを、試験混合物80μlに添加し、混合物を37℃で4時間インキュベートする。
485/535nmの蛍光の変化は、CE転送の測定値である;転送の阻害を、物質を含まない対照バッチと比較して測定する。
【0282】
B−I.3. 放射性標識化HDLの入手
新鮮なヒトEDTA血漿50mlを、NaBrを使用して1.12の密度に調節し、4℃、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を非標識LDLの入手に使用する。下相をPDBバッファー(10mMトリス/HCl pH7.4、0.15mM NaCl、1mM EDTA、0.02%NaN)3x4lで透析する。次いで、保持液の体積10mlにつき、H−コレステロール(Dupont NET-725;1μC/μl、エタノールに溶解)20μlを添加し、混合物を、37℃、N下で、72時間インキュベートする。
【0283】
次いで、NaBrを使用してバッチを1.21の密度に調節し、20℃で、Ty65ローター中、50000rpmで18時間遠心分離する。上相を回収し、リポタンパク質画分を勾配遠心分離により精製する。この目的で、単離した標識化リポタンパク質画分を、NaBrを使用して1.26の密度に調節する。この溶液各4mlを、遠心管(SW40ローター)中、密度1.21の溶液4mlおよび密度1.063の溶液4.5mlで覆い(PDBバッファーおよびNaBrの密度溶液)、次いで、24時間38000rpmで、20℃で、SW40ローター中で遠心分離する。標識化HDLを含有する、密度1.063と1.21との間にある中間層を、3x100量のPDBバッファーで、4℃で透析する。
保持液は放射性標識化H−CE−HDLを含有し、それを、約5x10cmp/mlに調節し、試験に使用する。
【0284】
B−I.4. CETP−SPA試験
CETP活性を試験するために、H−コレステロールエステルのヒトHDリポタンパク質からビオチン化LDリポタンパク質への転送を測定する。ストレプトアビジン−SPA(登録商標)ビーズ(Amersham)の添加により反応を終了させ、転送された放射能を液体シンチレーションカウンターで直接測定する。
【0285】
試験バッチでは、HDL−H−コレステロールエステル(〜50000cpm)10μlを、37℃で18時間、ビオチン−LDL(Amersham)10μlと共に、CETP(1mg/ml)10μlおよび試験しようとする物質の溶液(10%DMSO/1%RSAに溶解)3μlを含有する50mM Hepes/0.15M NaCl/0.1%ウシ血清アルブミン/0.05%NaN pH7.4中でインキュベートする。次いで、SPA−ストレプトアビジンビーズ溶液(TRKQ7005)200μlを添加し、さらに1時間振盪しながらインキュベートし、次いで、シンチレーションカウンターで測定する。バッファー10μl、4℃のCETP10μlおよび37℃のCETP10μlを用いる対応するインキュベーションを対照に供する。
【0286】
37℃のCETPを用いる対照バッチで転送される放射活性を、100%の転送とみなす。この転送を半分に低減させる物質濃度を、IC50値と特定する。
【表27】

【0287】
B−II.1. 遺伝子組換えhCETPマウスに対するエクスビボ活性の測定
CETP−阻害活性を試験するために、自家飼育した遺伝子組換えhCETPマウスに、胃管を使用して物質を経口投与する[Dinchuk et al. BBA 1295-301 (1995)]。この目的で、実験開始の前日に、オスの動物を、等数の動物(原則としてn=4)を有するグループに無作為に割り当てる。物質投与前に、血清中の基底CETP活性(T1)の測定のために、後眼窩静脈叢の穿刺により各マウスから血液を採取する。次いで、胃管を使用して試験物質を動物に投与する。試験物質の投与後、特定の時間に、一般に物質の投与後16または24時間後に、二回目の穿刺により血液を動物から採取する(T2)が、必要に応じて、これを他の時間で実施することもできる。
【0288】
物質の阻害活性を評価できるように、各時間、即ち、16または24時間に、動物が物質を含まない製剤化物質のみを受容する、対応する対照群を用いる。対照動物では、対応する実験期間(16または24時間)に亘る、阻害剤のない場合のCETP活性の変化を測定できるように、動物毎の2回目の血液サンプル採取を物質で処置した動物と同様に実施する。
【0289】
凝血の終了後、血液サンプルを遠心分離し、血清をピペットで取り出す。CETP活性の決定のために、4時間に亘るコレステリルエステル転送を測定する。この目的で、一般に試験バッチで血清2μlを用い、B−I.2.3で記載の通りに試験を実施する。
【0290】
コレステリルエステル転送の差異[pM CE/h(T2)−pM CE/h(T1)]を各動物について算出し、グループ内で平均する。何れかの時間でコレステリルエステル転送を>20%まで低減する物質を、活性であるとみなす。
【表28】

【0291】
B−II.2. シリアンゴールデンハムスターにおけるインビボ活性の測定
自家飼育した体重150−200gの雌のシリアンゴールデンハムスター(系統BAY:DSN)を、CETP阻害剤の血清リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用の測定に使用する。動物をケージ当たり6匹の動物にグループ分けし、飼料と水を自由にとらせ、2週間順応させる。
【0292】
実験開始直前および物質投与の後に、血液を後眼窩静脈叢の穿刺により採取し、30分間室温でのインキュベーションおよび20分間30000gでの遠心分離の後、血清を得るために使用する。物質を20% Solutol/80%水に溶解し、胃管を利用して経口投与する。対照の動物は、試験物質を含まない同体積の溶媒を受容する。
【0293】
トリグリセリド、総コレステロール、HDLコレステロールおよびLDLコレステロールを、分析装置 COBAS INTEGRA 400 plus (Roche Diagnostics より)を製造業者に指示に従い使用して測定する。測定値から、各パラメーターについて、物質による処置に起因する割合の変化を、各動物について算出し、グループ毎の平均として標準偏差と共に示す(n=6またはn=12)。溶媒処置群と比較して、物質の効果が有意であれば、t試験の適用により、p−値を加える(*p0.05;**p0.01;***p0.005)。
【0294】
B−II.3. 遺伝子組換えhCETPマウスにおけるインビボ活性の測定
リポタンパク質およびトリグリセリドに対する経口作用を測定するために、胃管を使用して試験物質を遺伝子組換えマウスに投与する[Dinchuk et al., BBA, 1295-1301 (1995)]。実験開始前に、血清中のコレステロールおよびトリグリセリドを測定するために、マウスから後眼窩的に血液を採取する。ハムスターについて上記した通りに、4℃で終夜インキュベートし、続いて6000gで遠心分離することにより血清を入手する。3日後に、リポタンパク質およびトリグリセリドを測定するために、血液を再度マウスから採取する。測定されるパラメーターの変化を、出発値と比較した変化割合として表す。
【表29】

【0295】
C. 医薬組成物の実施例
本発明の化合物は、以下のやり方で医薬製剤に変換できる:
錠剤:
組成:
本発明の化合物100mg、ラクトース(一水和物)50mg、トウモロコシデンプン(天然)50mg、ポリビニルピロリドン(PVP25)10mg(BASFより、Ludwigshafen, Germany)およびステアリン酸マグネシウム2mg。
錠剤重量212mg、直径8mm、曲率半径12mm。
製造:
本発明の化合物、ラクトースおよびスターチの混合物を、5%強度PVP水溶液(m/m)で造粒する。顆粒を乾燥させ、ステアリン酸マグネシウムと5分間混合する。この混合物を常套の打錠機で打錠する(錠剤の形状について、上記参照)。打錠のガイドラインの打錠力は、15kNである。
【0296】
経口投与できる懸濁剤:
組成:
本発明の化合物1000mg、エタノール(96%)1000mg、Rhodigel(登録商標) (FMCのキサンタンガム、Pennsylvania, USA) 400mgおよび水99g。
経口懸濁液10mlは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
Rhodigel をエタノールに懸濁し、本発明の化合物を懸濁液に添加する。撹拌しながら水を添加する。Rhodigel の膨潤が完了するまで、混合物を約6時間撹拌する。
【0297】
経口投与できる液剤:
組成:
本発明の化合物500mg、ポリソルベート2.5gおよびポリエチレングリコール400 97g。経口液剤20gは、本発明の化合物100mgの単回用量に相当する。
製造:
本発明の化合物を、ポリエチレングリコールおよびポリソルベートの混合物に撹拌しながら懸濁する。本発明の化合物が完全に溶解するまで、混合過程を継続する。
【0298】
i.v.溶液:
本発明の化合物を、生理的に耐容される溶媒(例えば、等張塩水、5%グルコース溶液および/または30%PEG400溶液)に飽和溶解度より低い濃度で溶解する。溶液を濾過滅菌し、無菌のパイロジェンを含まない注射容器に満たすのに使用する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

(式中、Rは、シクロヘキシルまたはシクロペンチルを表し、RおよびRは、各々メチルを表すか、または、一体となってシクロブタンを形成しており、Rは、シクロペンチルまたはイソプロピルを表す)
の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項2】
式(Ia)
【化2】

の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項3】
式(Ib)
【化3】

の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項4】
式(Ic)
【化4】

の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項5】
式(Id)
【化5】

の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項6】
式(Ie)
【化6】

の化合物またはその塩、溶媒和物もしくは塩の溶媒和物。
【請求項7】
疾患の処置および/または予防のための、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物。
【請求項8】
冠動脈心疾患の一次的および/または二次的予防のための医薬を製造するための、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項9】
低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、再狭窄、肥満、肥満症、糖尿病、卒中およびアルツハイマー病の処置および/または予防のための医薬を製造するための、請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物の使用。
【請求項10】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物を、不活性、非毒性の医薬的に適する補助剤と組み合わせて含む、医薬。
【請求項11】
請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物を、抗糖尿病剤、血小板凝集阻害剤、抗凝血剤、カルシウム拮抗薬、アンジオテンシンAIIアンタゴニスト、ACE阻害剤、ベータ遮断薬、ホスホジエステラーゼ阻害剤、可溶性グアニル酸シクラーゼの刺激剤、cGMP増強剤、利尿剤、甲状腺受容体アゴニスト、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、スクアレンシンターゼ阻害剤、スクアレンエポキシダーゼ阻害剤、オキシドスクアレンシクラーゼ阻害剤、ACAT阻害剤、MTP阻害剤、PPARアゴニスト、フィブラート、リパーゼ阻害剤、コレステロール吸収阻害剤、胆汁酸再吸収阻害剤、ポリマー性胆汁酸吸着剤およびリポタンパク質(a)アンタゴニストからなる群から選択される1種またはそれ以上のさらなる活性化合物と組み合わせて含む、医薬。
【請求項12】
冠動脈心疾患の一次的および/または二次的予防のための、請求項10または請求項11に記載の医薬。
【請求項13】
低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、再狭窄、肥満、肥満症、糖尿病、卒中およびアルツハイマー病の処置および/または予防のための、請求項10または請求項11に記載の医薬。
【請求項14】
有効量の請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物または請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬を投与することによる、ヒトおよび動物の冠動脈心疾患の一次的および/または二次的予防方法。
【請求項15】
有効量の請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の式(I)の化合物または請求項10ないし請求項13のいずれかに記載の医薬を投与することによる、ヒトおよび動物の低リポ蛋白血症、異脂肪血症、高トリグリセリド血症、高脂血症、高コレステロール血症、動脈硬化症、再狭窄、肥満、肥満症、糖尿病、卒中およびアルツハイマー病の処置および/または予防方法。
【請求項16】
請求項1に記載の式(I)の化合物の製造方法であって、
式(II)の化合物(式中、R、R、RおよびRは、各々上記定義の通りである)を、最初に、不斉還元により、式(III)の化合物に変換し、次いで、それを、
[A]ヒドロキシル保護基の導入により、式(IV)の化合物{式中、PGは、ヒドロキシル保護基、好ましくは式−SiRのラジカル(式中、R、RおよびRは、同一かまたは異なり、(C−C)−アルキルを表す)を表す}に変換し、次いで、ジアステレオ選択的還元により、式(V)の化合物(式中、PGは上記定義の通りである)に変換するか、
または、
[B]最初にジアステレオ選択的に還元し、式(VI)の化合物を得、次いで、それを、ヒドロキシル保護基PGの位置選択的導入により、式(V)の化合物に変換し、
次いで、式(V)の化合物を、フッ素化剤を使用して、式(VII)の化合物(式中、PGは上記定義の通りである)の化合物に変換し、
次いで、ヒドロキシル保護基PGを、常套の方法により切断し、式(I)の化合物を得、
そして、式(I)の化合物を、必要に応じて、適切な(i)溶媒および/または(ii)塩基もしくは酸で、その溶媒和物、塩および/または塩の溶媒和物に変換すること、
を特徴とする、方法。

【公表番号】特表2008−524137(P2008−524137A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−545911(P2007−545911)
【出願日】平成17年12月10日(2005.12.10)
【国際出願番号】PCT/EP2005/013281
【国際公開番号】WO2006/072362
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(503412148)バイエル・ヘルスケア・アクチェンゲゼルシャフト (206)
【氏名又は名称原語表記】Bayer HealthCare AG
【Fターム(参考)】