説明

(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物及びそれを含む薬学的組成物

【課題】光安定性及び溶解度において優れて少量でも心血管疾患治療に有用な(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物の提供。
【解決手段】化1の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン:
【化1】


前記式中、
カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光安定性及び溶解度において優れた(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物、及びそれを含む薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
アムロジピンは、3−エチル−5−メチル−2−(2−アミノエトキシ−メチル)−4−(2−クロロフェニル)−6−メチル−1,4−ジヒドロ−3,5−ピリジン−ジカルボン酸の一般名であって、人体内で長期作用型カルシウムチャンネル遮断剤(calcium channel blocker)として狭心症、高血圧及び鬱血性心臓麻痺のような心血管疾患の治療に有用な物質である。
【0003】
アムロジピンは下記一般式で表されるように、4位の不斉炭素(chiral carbon)によって構造的に2種の鏡像異性体が存在する。
【化A】

【0004】
薬理学的観点において(R)−(+)−アムロジピンと(S)−(−)−アムロジピンとは互いに異なる作用をする。例えば、(R)−(+)−アムロジピンは、カルシウムチャンネル遮断剤としての活性は低いが、平滑筋細胞遊走(smooth muscle cell migration)の阻害においては強力な活性を有するため、動脈硬化及び血管再狭窄の防止に有効である一方、(S)−(−)−アムロジピンは(R)−(+)−アムロジピンに比べて相対的に血圧降下効果において優れていると知られており(特許文献1:PCT国際公開WO 1995/05822号)、また、(S)−アムロジピンは(R/S)−アムロジピンより2倍優れた活性を示すと報告されている(非特許文献1:J.Med.Chem. 1986, 29, 1696 1702)。
【0005】
アムロジピンを薬学的な用途として用いる場合、その遊離塩基の形態(free base form)は安定性に劣るという短所があるため、医学的に許容可能な酸との塩の形態に転換させたものを投与することが好ましい。かかる点を考慮して(S)−(−)−アムロジピンの多様な酸付加塩が開発された。
【0006】
例えば、特許文献2(PCT国際公開WO 2006/043148号)は、(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン2.5水和物及び(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン2水和物を開示されているが、化合物の薬理学的または物理化学的な特長については言及していない。
【0007】
一方、特許文献3(大韓民国公開特許第2005−37498号)は(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン2水和物が向上した水溶解度を有するので高い生体活性を示すと開示している。しかし、この塩は日光に晒されば光安定性に劣るという問題点がある。また、特許文献4(大韓民国特許登録第515294号)は(S)−(−)−ニコチン酸アムロジピン2水和物が血圧降下に有効であると開示しているが、これも光安定性に劣るという問題がある。
【0008】
また、特許文献5(大韓民国公開特許第2005−61317号)は(S)−(−)−ゲンチジン酸アムロジピンを開示し、(S)−(−)−ベシル酸アムロジピンに比べて光安定性において優れていると記述しているが、この塩は蒸留水に対する溶解度が1mg/mLに過ぎない程度に水溶解度が低いため、薬剤として不適合である。
【0009】
従って、光安定性及び水溶解度がともに優れた新たな塩の開発が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】PCT国際公開WO 1995/05822号
【特許文献2】PCT国際公開WO 2006/043148号
【特許文献3】大韓民国公開特許第2005−37498号
【特許文献4】大韓民国登録特許第515294号
【特許文献5】大韓民国公開特許第2005−61317号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.Med.Chem. 1986, 29, 1696 1702
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は従来の(S)−(−)−アムロジピン酸付加塩に比べて顕著に向上した溶解度及び光安定性を有する新たな(S)−(−)−アムロジピン酸付加塩を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明の一実施態様によれば下記化1の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンを提供する。
【化1】

【0014】
前記式中、カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸を意味する。
【0015】
また、本発明は下記化2の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン水和物を提供する。
【化2】

【0016】
前記式中、カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸を意味し、nは1〜2の範囲の値である。
【0017】
さらに、本発明は前記(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物を有効成分とする心血管疾患治療用薬学的組成物を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明による化1の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物は従来の(S)−(−)−アムロジピン塩に比べて光安定性において優れているだけでなく、向上した溶解度を有するため従来の塩より少量を用いても同等以上の血圧降下などの効果をもたらすので、高血圧などの心血管疾患治療に非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の(S)−(−)−アムロジピン−(1S)−(+)−10−カンシル酸水和物のX線回折分光スペクトラムである。
【図2】本発明の(S)−(−)−アムロジピン−(1S)−(+)−10−カンシル酸無水物のX線回折分光スペクトラムである。
【図3】本発明の(S)−(−)−アムロジピン−(±)−10−カンシル酸水和物のX線回折分光スペクトラムである。
【図4】日光に晒した(S)−アムロジピン塩の分解度の経時変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明による(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物は下記反応式1に示したようにアムロジピンラセミ体から(S)−(−)−アムロジピン遊離塩基を光学分割し、これを溶媒中でカンファースルホン酸と反応させることで製造できる。
【化3】

【0021】
ここで、カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸を意味し、nは1〜2の値である。
【0022】
前記反応式1において、段階(a)の反応はPCT国際公開WO 95/25722号に開示された方法によって行えばよく、その結果、99%(ee)以上の光学純度を有する(S)−(−)−アムロジピン遊離塩基が得られる。
【0023】
段階(b)の反応は有機溶媒と水との混合溶媒または極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒中で行い、使用する反応溶媒によって(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンが水和物または無水物の形態で得られる。
【0024】
例えば、前記反応溶媒が水と混和され得るメタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトンなどの有機溶媒と水との混合溶媒、好ましくはイソプロパノール−水の混合溶媒の場合、(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンは水和物の形態、すなわち、(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンの1分子当り分子数1〜2のH2Oが配位された形態で得られる。特に、(S)−(−)−アムロジピン−(1S)−(+)−10−カンシル酸は4〜6%の結晶水含量を有し、(S)−(−)−アムロジピン−(±)−10−カンシル酸は5〜6%の結晶水含量を有する。
【0025】
この時、有機溶媒と水との混合比は1:1〜1:30(v/v)であり、好ましくは1:5〜1:15(v/v)である。
【0026】
一方、前記反応溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、アセトン、ジエチルエーテル、メチルt−ブチルエーテル及びその混合物などのような極性溶媒とヘキサン、ヘプタン及びその混合物などのような非極性溶媒との混合溶媒を用いる場合には、(S)−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−10−カンシル酸の無水物が得られる。このような無水物は大気中に放置する場合、大気中の水分を吸収して水和物に転換される。
【0027】
本発明で、前記反応溶媒は(S)−(−)−アムロジピン遊離塩基1.0gに対して5〜50mL、好ましくは10〜30mLの範囲で用いることができる。
【0028】
また、段階(b)の反応は0〜50℃、特に10〜30℃の温度で2〜24時間行うことが好ましい。
【0029】
従って、図1〜図3に示した本発明による(S)−(−)−アムロジピン−カムシル酸またはその水和物のX線回折分析結果は公知の(S)−(−)−アムロジピン塩とは異なる特徴的な回折パターンを有する。
【0030】
また、本発明による(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンは溶媒沈澱法、凍結乾燥法、噴霧乾燥(spray drying)法などのような従来の方法を用いて非晶形に転換させることができる。
【0031】
本発明によって製造された(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物は従来の血圧降下剤(例えば、利尿剤、ACE阻害剤、カルシウムチャンネル遮断剤、アンジオテンシン受容体遮断剤など)のみならず、従来の抗高脂血症(例えば、ロバスタチン、シンバスタチン、アトルバスタチン、ロスバスタチン、フルバスタチンなど)とともに併用して製剤化することができる。
【0032】
従って、本発明は(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物を活性成分とする心血管疾患治療用医薬組成物を提供する。
【0033】
前記医薬組成物は、経口投与及び非経口投与を含むさまざまな経路で投与でき、薬学的許容可能な通常の充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いて製剤化される。
【0034】
経口投与のための固形剤としては、錠剤、丸薬、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが挙げられ、このような固形剤は、少なくとも一種以上の賦形剤、例えば、澱粉、スクロースまたはラクトース、ゼラチンなどやステアリン酸マグネシウム、タルクのような潤滑剤を含むことができる。
【0035】
経口投与のための液剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが挙げられ、水や流動パラフィンのような希釈剤以外に、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などの賦形剤を少なくとも一種以上含むこともできる。
【0036】
非経口投与のための製剤としては、滅菌水溶液、非水溶液、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が挙げられる。前記非水溶液、又は懸濁溶剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油のような植物油、オレイン酸エチル(Ethyl oleate)のような注射可能なエステルなどが含まれる。前記坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、トゥイーン(Tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどを用いることができる。
【0037】
通常本発明による(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物の一日服用量は1.0〜5.0mg/kg体重、好ましくは2.5〜4.0mgkg体重であり、単回投与又は数回に分けて投与する。
【0038】
以下、本発明を実施例によってさらに詳しく説明する。
【0039】
但し、下記実施例は本発明を例示するだけのものであり、これらにより本発明が限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
製造例1:(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−D−酒石酸−モノ−ジメチルスルホキシド溶媒和物の製造
ジメチルスルホキシド7.5Lに(R/S)−アムロジピン1.5kgを加えて溶解させ、これにジメチルスルホキシド7.5Lに溶解させたD−(−)−酒石酸275.3g溶液を室温で徐々に滴加しながら攪拌した。その結果得られたスラリーを室温で12時間さらに攪拌し、析出した固体をろ過して分離し、ジメチルスルホキシド6.0L及びアセトン6.0Lで洗浄した後、40℃で一晩中熱風乾燥して白色固体状の標題化合物771g(収率37.4%)を得た。
光学純度:98.2%ee
【0041】
製造例2:(S)−アムロジピン遊離塩基の製造
前記製造例1で得た(S)−(−)−アムロジピン−ヘミ−D−酒石酸−モノ−ジメチルスルホキシド溶媒和物770.0gをジクロロメタン7.7Lに加え、これに2N−水酸化ナトリウム水溶液8.6Lを徐々に滴加した後、40分間室温で攪拌した。有機層を分離し、分離した有機層を水7.7Lで洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後でろ過した。このろ液からジクロロメタン溶媒を減圧下で除去して得られて油状残渣にヘキサン1.5Lを加え、ヘキサンを徐々に再蒸留して白色結晶を析出させ、得られた白色スラリーにヘキサン9Lを徐々に滴加し、室温で4時間攪拌し、ろ過して得られた個体を洗浄した後、40℃で熱風乾燥して白色固体状の標題化合物525.8g(収率93.9%)を得た。
光学純度:99.9%ee
【0042】
実施例1:(S)−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−10−カンシル酸水和物の製造
前記製造例2で得た(S)−アムロジピン遊離塩基300gをイソプロパノール900mL及び蒸留水900mLに加え、これに(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸170.4gを加えて溶解させた。これに活性炭素30.0gを加えて室温で1時間攪拌した後、セライトでろ過し、イソプロパノール300mL及び蒸留水300mLで洗浄した。ろ液に蒸留水6.3Lを徐々に滴加し、20℃で3時間攪拌した後、析出された固体をろ過した。該固体をイソプロパノール−水混合液(1:5,v/v)600mLで洗浄した後、40℃で熱風乾燥して白色固体状の標題化合物414g(収率88.0%)を得た。
光学純度:>99.9%ee
水分含量:4.4〜4.6%
融点(mp):146.3〜150.5℃
1H-NMR (300 MHz, CDCl3) δ (ppm) : 7.75(s, 4H), 7.45~6.09(m, 4H, ArH), 5.39(s, 1H), 4.77(q, 2H), 4.03(m, 2H), 3.85(m, 2H), 3.58(s, 3H), 3.35(m, 2H), 3.05(q, 2H), 2.50~2.20(m, 2H), 2.38(s, 3H), 2.10~1.80(m, 3H), 1.75(m, 1H), 1.38(m, 1H), 1.15(t, 3H), 1.00(s, 3H), 0.80(s, 3H)
【0043】
得られた(S)−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−10−カンシル酸水和物の結晶状態をX線回折分光法を用いて(図1参照)示した特徴的な回折角での主なピーク(peak)に対する測定結果を下記表1に示した。
【表1】

【0044】
実施例2:(S)−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−10−カンシル酸無水物の製造
前記製造例2で得た(S)−アムロジピン5gをイソプロパノール25mLに加え、これに(1S)−(+)−カンファースルホン酸2.85gを加えて溶解させた。その結果得られた溶液にメチルt−ブチルエーテル(MTBE)99mL及びヘキサン2mLを加え、室温で2時間攪拌した。生成された固体を窒素雰囲気下でろ過し、真空乾燥して白色固体状の標題化合物6.4g(収率81.5%)を得た。
光学純度:>99.9%ee
水分含量:0.3%
融点(mp):145.5〜149.4℃
H−NMRデータは前記実施例1と同一である。
【0045】
得られた(S)−(−)−アムロジピン(1S)−(+)−10−カンシル酸無水物の結晶状態をX線回折分光器法を用いて(図2参照)特徴的な回折角での主なピーク(peak)に対する測定結果を下記表2に示した。
【表2】

【0046】
実施例3.(S)−(−)−アムロジピン(±)−10−カンシル酸水和物の製造
前記製造例2で得た(S)−アムロジピン10gをイソプロパノール20mLに加えた後、これに(±)−カンファースルホン酸5.68gを加え、完全に溶解させた後、蒸留水200mLを徐々に滴加した。その後、室温で3時間攪拌し、15℃で2時間さらに攪拌した後、析出された固体をろ過した。該固体をイソプロパノール−水混合液(1:10,v/v)25mLで洗浄し、40℃で熱風乾燥して白色固体状の標題化合物13.7g(収率87.4%)を得た。
光学純度:>99.9%ee
水分含量:5.4%
融点(mp):140.2〜142.6℃
H−NMRデータは前記実施例1と同一である。
【0047】
得られた(S)−(−)−アムロジピン(±)−10−カムシル酸の結晶状態をX線回折分光器法を用いて(図3参照)、特徴的な回折角での主なピーク(peak)に対する測定結果を下記表3に示した。
【表3】

【0048】
参照例1:(S)−(−)−アムロジピン(R)−カムシル酸の製造
前記製造例2で得た(S)−アムロジピン10g及び(R)−カンファースルホン酸5.68gをイソプロパノール20mLに加え、完全に溶解させた後、蒸留水200mLを徐々に滴加した。その結果得られた反応液を室温で一晩中攪拌し、15℃に冷却した後、1時間さらに攪拌して固体を析出した。析出された固体をろ過し、イソプロパノール−水混合液(1:10,v/v)25mLで洗浄した後、40℃で熱風乾燥して白色固体状の標題化合物9.77g(収率62.3%)を得た。
光学純度:>99.9%ee
水分含量:3.2%
【0049】
実験例1:光安定性試験
活性成分を含む錠剤またはカプセル剤などを製剤化するためには湿度、温度及び光に対する安定性が充分に考慮されなければならない。特に高血圧患者の場合、大体単一処方ではない複合処方を受けており、それによって調剤した薬を小袋に密封した状態での長期処方が主に行われるので、大気中の光に長期間露出される可能性が高い。そのため(S)−(−)−アムロジピン塩の光安定性は非常に重要である。
【0050】
従って、前記実施例1〜3及び参照例1で製造された(S)−(−)−アムロジピン塩に対して光安定性試験を行って、公知の(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン(PCT国際公開WO2006/043148号)及び(S)−(−)−ニコチン酸アムロジピン2水和物(大韓民国登録特許第515294号)と比較した。
【0051】
具体的に、前述の6つの塩を一種の塩当り6つずつ用意して(総36個の試料)試験管に試験しようとする塩の試料を100mgずつそれぞれ仕込んだ後、6時間の間隔で36時間の間日光に晒した。用いた総36個の試験管を6時間間隔でそれぞれの塩に対する試料を一つずつ取り出して冷暗所に保管した。36時間後、各試験管内の試料は20mM酢酸アンモニウム緩衝溶液(pH=5.0)とアセトニトリルを1:1の体積比で混合した溶液で希釈し、以下の条件下でHPLCで分析した。
−カラム:シンメトリ(Symmetry)C8(4.6×100mm,3.5μm,Water社製,US)
−溶離液:精製水に過塩素酸一水和物7gとリン酸一水素カリウム1.74gを溶解して得た溶液1Lをリン酸を添加することでpH2.8に調節したもの。
【0052】
各サンプルに対するHPLC分析結果を図4及び表4に示した。
【表4】

【0053】
図4及び表4に示したように、本発明の(S)−(−)−アムロジピン−(±)−10−カンシル酸無水物、(S)−(−)−アムロジピン−(1S)−(+)−10−カンシル酸水和物又は無水物は36時間の間日光に晒されても含量の変化がほとんどない程度に高い安定性を示した。特に(1S)−(+)−10−カンシル酸塩が(±)−10−カンシル酸塩よりも光安定性に優れる結果を示した。しかし、(S)−(−)−アムロジピン−(R)−カンシル酸の場合は約5%程度分解され、公知の塩である(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン及び(S)−(−)−ニコチン酸アムロジピン2水和物もそれぞれ36時間後に7%及び2%分解される不安定な結果を示した。
【0054】
また、(S)−(−)−ベシル酸アムロジピン及び(S)−(−)−アムロジピン(R)−カンシル酸は、HPLC分析に先立って見掛け上の視覚色を観察した結果、初期の微白色の表面が茶色に変わり、試料の一部も解けた。
【0055】
従って、本発明による(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたはその水和物は公知の(S)−(−)−ベシル酸アムロジピンまたは(S)−(−)−ニコチン酸アムロジピン2水和物に比べて光安定性が向上した化合物であることが分かる。
【0056】
実験例2:溶解度試験
一般的に薬学的に許容可能な活性物質はpH1〜7.5で1mg/mL以上の水中溶解度、特に血液のpHに近接する約7.4のpHを有する溶液を提供することが望ましい。これによって、実施例1、3及び参照例1で製造された本発明のカムシル酸アムロジピン塩の溶解度及び飽和時のpHを測定し、従来のベシル酸アムロジピン(大韓民国特許公告第1995−7228号)、ゲンチジン酸アムロジピン(大韓民国公開特許第2005−61317号)及び結晶型カムシル酸アムロジピン(PCT国際公開 WO 02/079158 A1号)と比較した。具体的に、実験は大韓薬典に収載されている方法によってそれぞれの化合物を蒸留水に飽和状態になるまで溶解させた後、前記飽和溶液を液体クロマトグラフィーで分析してアムロジピン遊離塩基(free base)を基準として溶解された量を測定し、その結果を下記表5に示した。
【表5】

【0057】
表5に示したように、本発明による(S)−(−)−カンシル酸アムロジピンはベシル酸アムロジピンに比べて高い溶解度を示しており、特に従来のゲンチジン酸塩または結晶型カンシル酸アムロジピンに比べて2.6倍以上向上した溶解度を有する。
【0058】
本発明を前記具体的な実施例と関連して記述したが、添付された特許請求の範囲によって定義された本発明の範囲内で当分野の熟練者が本発明を多様に変形及び変化させ得ることを勿論のことである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化1の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン:
【化1】

前記式中、
カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸である。
【請求項2】
前記カンファースルホン酸が(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸であり、X線回折分光スペクトラムにおける回折角(2θ)が4.8±0.2、10.0±0.2、11.0±0.2、13.8±0.2、14.3±0.2、16.4±0.2、18.2±0.2、18.8±0.2、19.8±0.2、20.0±0.2、20.5±0.2、23.7±0.2であるピークを有することを特徴とする請求項1に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン。
【請求項3】
無定形であることを特徴とする請求項1に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン。
【請求項4】
化2の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン水和物:
【化2】

前記式中、
カンファースルホン酸は(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸または(±)−10−カンファースルホン酸であり、nは1〜2の範囲の値である。
【請求項5】
前記カンファースルホン酸が(1S)−(+)−10−カンファースルホン酸であり、X線回折分光スペクトラムにおける回折角(2θ)が4.2±0.2、7.8±0.2、8.3±0.2、11.3±0.2、11.9±0.2、12.5±0.2、12.9±0.2、16.7±0.2、17.3±0.2、17.6±0.2、19.5±0.2、20.2±0.2、20.4±0.2、20.7±0.2、21.3±0.2、24.4±0.2、25.6±0.2、26.2±0.2であるピークを有することを特徴とする請求項4に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン水和物。
【請求項6】
前記カンファースルホン酸が(±)−10−カンファースルホン酸であり、X線回折分光スペクトラムにおける回折角(2θ)が3.1±0.2、4.7±0.2、5.5±0.2、9.3±0.2、11.4±0.2、12.9±0.2、13.0±0.2、15.2±0.2、15.7±0.2、16.3±0.2、17.4±0.2、19.0±0.2、20.0±0.2、20.2±0.2、21.0±0.2、25.8±0.2であるピークを有することを特徴とする請求項4に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン水和物。
【請求項7】
請求項1に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピンまたは請求項4に記載の(S)−(−)−カムシル酸アムロジピン水和物を活性成分として含む、心血管疾患治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記心血管疾患が狭心症、高血圧または鬱血性心臓麻痺であることを特徴とする請求項7に記載の医薬組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−544695(P2009−544695A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521693(P2009−521693)
【出願日】平成19年7月16日(2007.7.16)
【国際出願番号】PCT/KR2007/003444
【国際公開番号】WO2008/010659
【国際公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【出願人】(599139534)ハンミ ファーム. シーオー., エルティーディー. (56)
【Fターム(参考)】