説明

1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその塩を含んでなる剤形

本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン


またはその薬学上許容される塩、例えば、そのモノ−マレエート塩などを含んでなる膜で少なくとも部分的に(好ましくは部分的に)被覆された担体錠剤を含んでなる経口投与用の剤形に関する。特定の実施形態では、担体錠剤を少なくとも部分的に覆う膜は、安定剤(例えば、クエン酸)、および/または膜形成剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)を含んでなる。膜は、好ましくは、担体錠剤の凹部内に存在する。本発明はまた、該剤形を作出する方法にも関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
技術分野
本発明は、新規剤形、その剤形を製造するための方法および医学におけるその剤形の使用に関する。
【0002】
背景技術
WO2005/040144A1号公報(Glaxo Group Limited)には、ヒスタミンH3受容体に対して親和性を有し、ヒスタミンH3受容体のアンタゴニストおよび/または逆アゴニストである一連の1−ベンゾイル−置換ジアゼパニル誘導体またはその薬学上許容される塩が開示されている。また、それらの化合物は、その特許文献において、アルツハイマー病、認知症(レビー小体型認知症および血管性認知症を含む)、加齢による記憶機能障害、軽度認知機能障害、認知的欠陥、癲癇、神経因性疼痛、炎症性疼痛、片頭痛、パーキンソン病、多発性硬化症、卒中および睡眠障害(パーキンソン病と関連のある睡眠発作および睡眠不足を含む)を含む神経疾患、統合失調症(特に統合失調症の認知的欠陥)、注意欠陥多動性障害、鬱病、不安および耽溺を含む精神障害、ならびに肥満および胃腸障害を含む他の疾患の治療に有用である可能性があると考えられると述べられている。WO2005/040144A1号公報には、アルツハイマー病または関連神経変性疾患などの疾患における上記障害、特に認知機能障害の治療または予防における治療物質としての使用のためのこの一連の化合物またはその塩が開示されている。
【0003】
WO2005/040144A1号公報の実施例10には、以下の方法を用いた、1−(イソプロピル)−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩:
【化1】

の製造が開示されている。
【0004】
室温のジクロロメタン(5ml)中の4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(D6)(222mg)の攪拌懸濁液を塩化オキサリル(0.28ml)およびジクロロメタン中10%ジメチルホルムアミド(1滴)で処理した。1時間後にその溶液を蒸発させ、その後、ジクロロメタン(2×5ml)から再蒸発させた。その酸塩化物をジクロロメタン(10ml)に再溶解させ、1−(イソプロピル)−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩(D2)(178mg)およびジエチルアミノメチルポリスチレン(3.2mmol/g、938mg)で処理した。一晩攪拌した後、その混合物をシリカゲルフラッシュカラム[段階勾配 ジクロロメタン中6〜10%MeOH(10%0.880アンモニア溶液含有)]上に直接投入した。必要な生成物を含有する画分を蒸発させ、その後、ジクロロメタンに再溶解させ、過剰のジオキサン中4M HClで処理した。アセトンからの結晶化により標題の化合物(E10)(225mg)を得た。MSエレクトロスプレー(+イオン)347 (MH+). 1H NMR δ(DMSO-d6): 10.45 (1H, m), 7.41 (2H, d, J=8.5Hz), 7.02 (2H, d, J=8.5Hz), 4.63 (2H, m), 4.02 (1H, m), 3.02-3.93 (13H, m), 2.32 (1H, m), 1.96 (2H, m), 1.61 (2H, m), 1.27 (6H, d, J=6.5Hz)。
【0005】
WO2005/040144A1号公報には、中間体である4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(D6,記載6)の製造が開示されており、以下のとおりである。
【0006】
エタノール(10ml)中の4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸エチル(D5)(0.73g)の溶液を1M NaOH(5.84ml)で処理し、その混合物を60℃で5時間攪拌した。その溶液を室温まで冷却し、エタノールを蒸発させた。その水性部をジクロロメタン(2×10ml)で洗浄し、酸性化した。その固体を濾去し、水で洗浄し、乾燥させ、標題の化合物(D6)(0.55g)を得た。
【0007】
WO2005/040144A1号公報には、中間体4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸エチル(D5,記載5)の製造が開示されており、以下のとおりである。
【0008】
テトラヒドロフラン(50ml)中の4−ヒドロキシ安息香酸エチル(0.82g)、4−ヒドロキシ−テトラヒドロ−2H−ピラン(0.5g)およびトリフェニルホスフィンの氷冷溶液をアゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.69ml)で滴下処理した。15分後に、冷却浴を外し、その反応物を室温で一晩置いた。その混合物を蒸発させ、トルエンに再溶解させ、2N水酸化ナトリウム(2×20ml)、水(2×20ml)およびブライン(20ml)で連続的に洗浄した。乾燥させた(硫酸マグネシウム)後、その溶液をシリカフラッシュカラム(段階勾配 軽質油40−60中10〜30%酢酸エチル)上に直接投入し、標題の化合物(D5)(0.75g)を得た。
【0009】
WO2005/040144A1号公報には、その特許文献において開示されている1−ベンゾイル置換ジアゼパニル誘導体は医薬組成物、例えば、経口、非経口または直腸投与に適している組成物中に含められてよく、その組成物は錠剤、カプセル剤、経口液体製剤、散剤、顆粒剤、トローチ剤、再構成可能な粉末、注射可能または注入可能な溶液または懸濁液または坐剤の形であってよいことが開示されている。しかしながら、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含んでなる特定の剤形はその特許文献に明示されていない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含んでなる剤形を含み、該剤形は、経口投与のために、該化合物または塩の合理的に少量を含むのに好適である。本発明の剤形は、該化合物または塩の少量(例えば、約2mg以下、または約1mg以下)を用いる場合に、例えば、同じバッチ内の異なる錠剤の間での、該化合物または塩の起こり得る投薬不均質性(用量の変動)を低減することができるはずである。
【0011】
第1の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化2】

またはその薬学上許容される塩を含んでなる膜(フィルム)で少なくとも部分的に(好ましくは部分的に)被覆された担体錠剤を含んでなる経口投与用の剤形を提供する。
【0012】
一つの特定の実施形態では、本発明の剤形は、
a)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化3】

またはその薬学上許容される塩、
b)場合により、該安定剤を欠いている剤形と比べて、該剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減する安定剤、および
c)薬学上許容される賦形剤
を含んでなる。
【0013】
該剤形は、一般に、経口投与経路による患者への投与に適している。例えば、一つの特定の実施形態では、経口投与に適している剤形は、錠剤(例えば、カプレット)、カプセル剤、丸剤、またはトローチ剤、より詳細には錠剤を含んでなる。
【0014】
本明細書の文脈で、「薬学上許容される賦形剤」との用語は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および安定剤以外の、該剤形中に存在するあらゆる薬学上許容される材料を指す。好適な薬学上許容される賦形剤は、選択された特定の剤形に応じて異なり、それらには、希釈剤、結合剤、崩壊剤および超崩壊剤(superdisintegrants)、滑沢剤、流動促進剤、造粒剤、コーティング剤、湿潤剤、溶媒、共溶媒、沈殿防止剤、乳化剤、甘味料、香味剤、風味マスキング剤、着色剤、凝固防止剤、保湿剤、キレート剤、可塑剤、増粘剤、速度調整剤、保存剤、界面活性剤が含まれる。当業者ならば、ある薬学上許容される賦形剤は二つ以上の機能を果たすことがあり、処方物中に存在する賦形剤の程度や処方物中に存在する他の成分によって別の機能を果たすことがあることは分かるであろう。好適な薬学上許容される賦形剤の選択についてのガイダンスは、Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)から入手可能である。
【0015】
本発明の剤形は、当業者に公知の技術および方法を用いて製造され得る。Remington’s Pharmaceutical Sciences (Mack Publishing Company)には、当該技術分野で慣用の方法のいくつかが記載されている。
【0016】
一つの特定の実施形態では、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩、場合により安定剤および希釈剤を含んでなる錠剤またはカプセル剤などの固体経口剤形を対象とする。好適には、希釈剤としては、糖類(例えば、ラクトース、スクロースまたはデキストロース)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルファー化デンプン)、セルロースまたはその誘導体(例えば、微晶質セルロース)、硫酸カルシウムまたはリン酸水素カルシウム(CaHPO)が挙げられる。該剤形は特に、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および/または流動促進剤などの他の賦形剤をさらに含んでもよい。好適には、結合剤としては、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルファー化デンプン)、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカントガム、グアーガム、ポリビニルピロリドンまたはセルロースもしくはその誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)が挙げられる。好適には、崩壊剤としては、デンプン、架橋ポリビニルピロリドン、グリコール酸ナトリウムデンプン、クロスカルメロース、アルギン酸またはカルボキシメチルセルロースナトリウムが挙げられる。好適には、滑沢剤としては、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウムが挙げられる。好適には、流動促進剤としては、タルクまたはコロイド二酸化ケイ素が挙げられる。該経口固体剤形は、表面特性または機能特性を有し得る外面コーティングをさらに含んでもよい。
【0017】
その第一の態様において、本発明は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化4】

またはその薬学上許容される塩を含んでなる膜(フィルム)で少なくとも部分的に(例えば、部分的に)被覆された担体錠剤を含んでなる経口投与用の剤形を提供する。
【0018】
場合により、担体錠剤を少なくとも部分的に(例えば、部分的に)覆っている膜は、該安定剤を欠いている剤形と比べて、該剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減する安定剤を含んでなる。
【0019】
本明細書の文脈において、「担体錠剤」との用語は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を実質的に含まない錠剤を指す。一般に、該錠剤は、治療薬を含まないが、担体錠剤が1種以上の治療薬を含む実施形態も本発明に包含される。
【0020】
該担体錠剤の組成は、それが薬学上許容されるならば、通常、最も重要なことではない。しかしながら、該担体錠剤は、理想的には、経口投与用の錠剤として機能するのに適当な大きさおよび形状のものでなければならない。いかなる種類の錠剤も用いてよく、例えば、Remington, The Science and Practice of Pharmacy, 第21版, 2005 (Ed. D. B. Troy)に記載されているものであってもよい。
【0021】
好ましくは、該担体錠剤は、直接圧縮技術により成形されおよび/または該担体錠剤は、希釈剤または希釈剤の混合物を含んでなる(例えば、担体錠剤の60〜100重量%または70〜100重量%、例えば、70〜99重量%または80〜99重量%で存在する)。該希釈剤は糖類(例えば、ラクトース一水和物もしくは無水ラクトースなどのラクトース、スクロースまたはデキストロース)、糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプンまたはアルファー化デンプン)、セルロース(例えば、Avicel(商標)PH−102、PH−101、PH−103、PH−112、またはPH−113、特にAvicel(商標)PH−102などの微晶質セルロース)、硫酸カルシウムおよび/またはリン酸水素カルシウム(CaHPO)を含んでもよい。
【0022】
特定の実施形態では、該希釈剤は微晶質セルロース(Avicel(商標)PH−102、PH−101、PH−103、PH−112またはPH−113、特にAvicel(商標)PH−102など)またはラクトース(ラクトース一水和物または無水ラクトースなど)を含んでなる。より特定の実施形態では、該希釈剤は微晶質セルロース(例えば、Avicel(商標)PH−102)を含んでなる。別の特定の実施形態では、該希釈剤はラクトース(ラクトース一水和物または無水ラクトースなど)を含んでなる。
【0023】
Avicel(商標)PH−102およびPH−112等級の微晶質セルロースは、一般に、公称(nominal)平均粒径が100μmである。Avicel(商標)PH−101、PH−103、およびPH−113等級の微晶質セルロースは、一般に、公称平均粒径が50μmである。Handbook of Pharmaceutical Excipients, 例えば、第4版, 2003, Pharmaceutical Pressの“Cellulose, Microcrystalline”の章を参照。
【0024】
好ましくは、該担体錠剤は、例えば、担体錠剤の1〜15重量%、例えば、2〜12重量%または4〜12重量%で存在する結合剤または結合剤の混合物を含んでなる。該結合剤は、デンプン(例えば、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、またはアルファー化デンプン)、ゼラチン、アラビアガム、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸、トラガカントガム、グアーガム、ポリビニルピロリドンまたはセルロースもしくはその誘導体(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、特に、アルファー化デンプン(例えば、デンプン1500)を含み得る。
【0025】
一つの特定の実施形態では、該担体錠剤は滑沢剤(例えば、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウムまたはステアリン酸カルシウム)および/または流動促進剤(例えば、タルクまたはコロイド二酸化ケイ素)などの他の賦形剤を含有する。一つの特定の実施形態では、滑沢剤(特に、ステアリン酸マグネシウム)は担体錠剤の0.2〜10重量%、より詳細には、0.2〜5重量%または0.5〜3重量%の量で存在する。その代わりにまたはそれに加えて、一つの実施形態では、流動促進剤は担体錠剤の0.2〜10重量%、より詳細には、0.2〜5重量%または0.5〜3重量%の量で存在する。
【0026】
もう一つの実施形態では、成形錠剤またはカプセルシェルなどの射出成形により形成された基体を担体錠剤として用いてよい。射出成形に好適な熱可塑性材料としては、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メタクリレート、およびポリ酢酸ビニルが挙げられる。
【0027】
一つの特定の実施形態では、該担体錠剤は微晶質セルロース(例えば、Avicel(商標)PH−102)、アルファー化デンプン(pregelatinized starch)(例えば、デンプン1500)およびステアリン酸マグネシウムを含んでなる錠剤である。より特定の実施形態では、該担体錠剤は次の組成を有する。
【0028】
【表1】

【0029】
別の実施形態では、該担体基体は、経口投与した場合にそれが口の中で崩壊するように処方され得る(いわゆる「経口崩壊錠」または「ODT」基体)。あるいは、該担体基体は、水中で(一般には迅速に)崩壊するように処方されてよい(いわゆる「速溶錠」または「FDT」基体)。
【0030】
該担体錠剤は、膜に基体または支持体を提供する。
【0031】
一つの特定の実施形態では、該担体錠剤は、該担体錠剤による1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の吸収を実質的に防ぐためにコーティング(被覆)される。しかしながら、担体錠剤による1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の吸収が存在する実施形態も本発明に包含される。
【0032】
該担体錠剤に好適なコーティングとしては、Colorcon社製の市販のもの、例えば、Opadry(商標)コーティング(例えば、「OPADRY WHITE 00F18484」(商標)または「OPADRY WHITE YS−1−7003」(商標))などの水性膜コートが挙げられる。他の好適なコーティングとしては、Surelease(商標)(エチルセルロース)が挙げられる。該剤形は、また、胃耐性および腸溶性ポリマー材料の膜でコーティング(被覆)されてもよい。好適なポリマー材料としては、セルロースアセトフタレート、セルロースアセトプロピオネート、セルローストリメリテートおよびアクリルおよびメタクリルコポリマーが挙げられる。該コーティングには着色剤を添加することができる。
【0033】
一つの実施形態では、該担体錠剤は、膜コートで2〜6%重量増加までコーティングされる。
【0034】
該担体錠剤が、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の吸収を実質的に防ぐためにコーティングされる実施形態では、選択される膜コートが該剤形製造工程中に使用される溶媒に溶解するものであってはならないことが理解できるであろう。例えば、水性溶媒系を使用する場合、水性膜コート(Opadry(商標)など)は即時に崩壊し、水に溶解しないコーティング(例えば、Surelease(商標)またはEudragit(商標))が適している。
【0035】
一つの特定の実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する膜は部分的にのみ担体錠剤を覆ってもよい。より特定の実施形態では、該担体錠剤は1以上の凹部または陥凹を含む形状である。このような実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する膜は実質的に担体錠剤の凹部内に存在してもよい。
【0036】
該剤形、および/または担体錠剤を少なくとも部分的に覆っている膜(フィルム)は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(「遊離塩基」)またはその薬学上許容される塩を含んでなる。本明細書の文脈において、遊離塩基または薬学上許容される塩という場合には、遊離塩基または薬学上許容される塩の溶媒和物および水和物を包含する。
【0037】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩、例えば、その塩酸塩またはより好ましくはそのモノ−マレエート塩などは、WO2005/040144A1号公報に開示されているものなどの手順により製造され得る。WO2005/040144A1号公報に開示されている関連製造手順は、引用することにより本明細書の開示の一部とされる、これらの一部(WO2005/040144A1号公報の実施例10および記載6および5)は上記にも記述される。中間体の1−(イソプロピル)−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン二塩酸塩(D2)およびその前駆体の1−tert−ブチル−4−(イソプロピル)−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラートは、WO2005/040144A1号公報の、それぞれ記載2および1に記載されているように製造することができる。
【0038】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの薬学上許容される塩は、薬学上許容される酸付加塩、例えば、塩酸塩またはより好ましくはそのモノ−マレエート塩(そのモノ−マレエート塩の結晶形1など)などであり得る。かかる塩は、一般には有機溶媒(例えば、モノ−マレエート塩を製造する場合には溶媒として酢酸エチル)などの好適な溶媒中での、適当な酸(例えば、マレイン酸またはHCl)との反応(混合)により形成され、例えば、結晶化および濾過により、単離することができる塩を得ることができる(例えば、以下の薬物製造例1、2、および3を参照)。
【0039】
以下の薬物製造例1、2、および3により、「遊離塩基」化合物1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンの具体的な製造、ならびにその塩酸塩およびモノ−マレエート塩の具体的な製造についても記載する。
【0040】
本発明の剤形では、該剤形および/または該膜は、該遊離塩基、薬学上許容される塩(化学量論塩または非化学量論塩)、またはこれらの任意の混合物を含有してよい。
【0041】
好ましくは、該剤形は1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(例えば、その結晶形1)を含有する。一つの特定の実施形態では、該膜は1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(例えば、その結晶形1)を含有する。
【0042】
特定の実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1は、X線粉末回折計により銅K−アルファX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を用いて測定される、実質的に下記の2シータ(2θ)角度値にある各ピークの4つ以上(または好ましくは5つ以上、より好ましくは6つ以上、または最も好ましくは総て)を含んでなるX線粉末回折(XRPD)回折図:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°、
を有する。該XRPD回折図は、好ましくは、1工程当たりの時間31.75秒以上を用いて、および/または開始角度2°2シータ(2θ)および終了角度40°2シータ(2θ)を用いて測定され、および/または好ましくは、シリコンウエハープレート(一般にシリコンウエハーゼロバックグラウンドプレート)上に載せられたサンプルを用いておよび/または粉末の層(例えば、薄層)としたサンプルを用いて測定される。
【0043】
特定の実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノ−マレエートの結晶形1は、各ピークに対して±2cm−1の変動が許容される、以下のピークの5つ以上(または好ましくは6つ以上、より好ましくは7つ以上、一層より好ましくは8つ以上、さらに好ましくは10以上、または最も好ましくは総て)を含んでなる固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトル:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840、および765cm−1
を有する。該固体IRスペクトルは、好ましくは、FT−IR(フーリエ変換赤外)分光計、例えば、減衰全反射(ATR)サンプリングアクセサリー(例えば、ダイヤモンド/ZnSe ATRサンプリングアクセサリー)を装着したFT−IR分光計などを用いて測定され、および/または4cm−1分解能で測定される。いずれのIRスペクトルにおいても、縦軸に透過率%をプロットしスペクトルの上方で透過率が高く、IR線を吸収する振動モードまたはバンドは上向きのピークではなく下向きのトラフまたは谷(透過率がより低い)として示される。従って、「ピーク」または「バンド」との用語は、IRスペクトルに関して本明細書において用いられる場合には、IR線の吸収または透過率の低下を表す下向きのトラフ(trough)を含む。
【0044】
異なる相対湿度で水分収着/脱着を測定する重量蒸気収着(GVS)分析では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノ−マレエートの結晶形1は、窒素下25℃で0〜90%相対湿度範囲にわたっておよそ0.4%w/wの水を可逆的に吸着しおよび/または吸収し、および/または脱着することが示されている。これは、窒素下25℃で0〜90%相対湿度範囲にわたってより多量の水を吸着しおよび/または吸収し、および/または脱着する、薬物製造例2パートCで製造された「動的固体」1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩(再結晶化による精製前のサンプル)よりも薬物開発可能性の点で優れていることを示している。
【0045】
本発明の一つの特定の実施形態では、該剤形および/または該膜は、存在する塩基の量として(すなわち、塩を形成するために添加される酸の量を除いて)測定される場合には、10μg〜2mgまたは20μg〜2mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する。より特定の実施形態では、該剤形および/または該膜は、存在する遊離塩基の量として測定される場合には、20μg〜1mg、特に50μg〜1mg、より詳細には50μg〜500μgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する。
【0046】
例えば、該化合物または塩の上述の量を含有する、該剤形は、1日1回または1日2回以上、例えば1日2回または3回、特に経口投与により例えば、ヒトに投与され得る。
【0047】
該剤形は、例えば、ヒトなどの哺乳類における、認知機能障害、アルツハイマー病、認知症(例えば、レビー小体型認知症または血管性認知症)、加齢による記憶機能障害、軽度認知機能障害、癲癇、神経因性疼痛、パーキンソン病、多発性硬化症、卒中、または睡眠障害(パーキンソン病と関連のある睡眠発作または睡眠不足など)を含む神経疾患、または統合失調症(特に統合失調症における認知機能障害)、注意欠陥多動性障害(attention deficit hyperactivity disorder)、鬱病、不安または耽溺(addiction)などの精神障害の治療に有用である可能性があり得る。
【0048】
該剤形は、例えば、ヒトなどの哺乳類における、上記障害、特に、(a)認知機能障害、例えば、アルツハイマー病などの疾患における認知機能障害、認知症(例えば、レビー小体型認知症または血管性認知症)、加齢による記憶機能障害、軽度認知機能障害、もしくは関連神経変性疾患、もしくは統合失調症における認知機能障害、または(b)睡眠障害(パーキンソン病と関連のある睡眠発作または睡眠不足など)のいずれかの治療または予防(例えば、治療)における使用のためのものであり得る。
【0049】
本発明はさらに、ヒトなどの哺乳類における神経疾患の治療における使用のための、本明細書に記載の剤形を提供する。
【0050】
本発明はさらに、本発明の剤形を患者に投与することを含むヒトを含む哺乳類における上記障害のいずれかの治療または予防の方法を提供する。
【0051】
本発明はさらに、神経疾患の治療の方法であって、それを必要とする哺乳類(例えば、ヒト)宿主に本明細書に記載の本発明の剤形を投与することを含む方法を提供する。
【0052】
もう一つの態様において、本発明は、例えば、ヒトなどの哺乳類における、上記障害のいずれかの治療における使用のための本発明の剤形の製造における1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0053】
本発明はさらに、ヒトなどの哺乳類における神経疾患の治療のための、本明細書に記載の本発明の剤形の製造における1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の使用を提供する。
【0054】
該剤形および/または該膜は、加えて、場合により、該安定剤を欠いている剤形と比べて、該安定剤を含む該剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減する薬学上許容される安定剤を含む。該剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解は、下記方法を用い勾配HPLCを用いて該剤形の総不純物/分解生成物含量を測定することにより分析することができる。当業者(skilled reader)ならば、該剤形は、安定剤の有無を除いて、他の点では同等であるはずであり、類似条件下で類似期間保存されたはずであることは分かるであろう。
【0055】
一つの実施形態では、40℃、75%相対湿度で1ヶ月間保存された、安定剤を含有する該剤形の少なくとも三つのサンプルから算出された平均総不純物/分解生成物含量は、同等の条件下で保存された、該安定剤を欠いている同等の剤形の少なくとも三つのサンプルから算出された平均総不純物/分解生成物含量より少なくとも50%少ない。
【0056】
もう一つの実施形態では、30℃、65%相対湿度で3ヶ月間保存された場合、安定剤を含有する該剤形の少なくとも3つのサンプルの平均総不純物/分解生成物含量は、10%、より詳細には、5%を超えないはずである。
【0057】
ある薬学上許容される抗酸化剤は、本明細書の文脈においては、安定剤として作用し得る。薬学上許容される抗酸化剤としては、The Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第3版, 2000 (Ed. A.H. Kibbe)に記載されているものが挙げられる。
【0058】
一つの特定の実施形態では、安定剤は薬学上許容される抗酸化剤を含んでなり、および/または安定剤は薬学上許容される有機酸を含んでなる。一つの特定の実施形態では、安定剤は、有機酸である薬学上許容される抗酸化剤を含んでなる。
【0059】
一つの特定の実施形態では、安定剤は、クエン酸、クエン酸の塩(例えば、クエン酸ナトリウム、例えば、モノ−、ジ−またはトリ−クエン酸ナトリウム)、リンゴ酸、リンゴ酸の塩、マレイン酸、マレイン酸の塩、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩(例えば、アスコルビン酸ナトリウム)、酒石酸、酒石酸の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0060】
一つの特定の実施形態では、安定剤は、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、重炭酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンからなる群から選択される。本発明では、安定剤の組合せも使用可能である。
【0061】
より詳細には、安定剤は、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、およびそれらの組合せからなる群から選択される。
【0062】
一層より詳細には、安定剤は、クエン酸、リンゴ酸、およびアスコルビン酸からなる群から選択される。
【0063】
一つのさらにより特定の実施形態では、安定剤(および/または膜)はクエン酸を含んでなる。
【0064】
別の実施形態では、安定剤(および/または膜)はマレイン酸(例えば、活性化合物または塩がそのモノマレエートである場合)を含んでなる。
【0065】
任意選択の安定剤または安定剤群は、存在する場合には、理想的には、剤形および/または膜中に、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減するのに十分な量で存在する。クエン酸を含んでなるある特定の実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩(遊離塩基として測定)と、クエン酸とのモル比は、1.5:1〜1:500の範囲内である。
【0066】
一つの特定の実施形態では、安定剤(例えば、クエン酸)は、膜の10重量%〜65重量%、または20重量%〜50重量%、または25重量%〜45重量%(例えば、約33重量%または約37.5重量%)で存在し、および/または剤形(例えば、錠剤)の0.005重量%〜2重量%(例えば、0.01重量%〜1重量%、または0.01重量%〜0.5重量%、または0.03重量%〜0.2重量%、例えば、約0.08重量%)で存在する。
【0067】
好ましくは、少なくとも部分的に(例えば、部分的に)担体錠剤を覆う該膜は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン(例えば、κ、ιまたはλ)、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、プルラン、またはメタクリル酸ポリマー(例えば、EUDRAGITグレードRL、RS、E、L、S、FS30D)またはそれらの任意の組合せなどの膜形成剤をさらに含有する。
【0068】
より好ましくは、該担体錠剤を少なくとも部分的に覆っている該膜は、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)である膜形成剤を含有する。該膜形成剤は、例えば、銘柄(grade)Klucel(商標)グレードEFのHPC(Aqualon, 1313 North Market St, Wilmington, Delaware 19894-0001, USから入手可能)であり得る。Klucel(商標)グレードEFのHPCの重量平均分子量は80000であり、典型的なブルックフィールド粘度は、水溶液中10%濃度で存在する場合、300〜600mPa.sである(Aqualon Pharmaceutical Excipients catalogueに基づく)。しかしながら好ましくは、膜形成剤は、Nisso America Inc., 45 Broadway, Suite 2120, New York, NY 10006, USA(または日本曹達株式会社、日本)から入手可能なNisso(商標)HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)グレードSSL、Nisso(商標)HPCグレードSL、またはNisso(商標)HPCグレードL(各グレードは分子量が異なる)である。一般に、Nisso(商標)HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)グレードSSL、SLおよびLの平均分子量はそれぞれ34000、77000および125000である(供給者:日本曹達株式会社)。Nisso(商標)HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)グレードSSL、SLおよびLの粘度は、20℃で2重量%の乾燥HPCを含有する水溶液として測定した場合、それぞれ2.0〜2.9(一般に2.5)mPa.s、3.0〜5.9(一般に4.7)mPa.sおよび6.0〜10.0(一般に7.9)mPa.sである(供給者:Nisso America Inc.および日本曹達株式会社)。
【0069】
よって好ましくは、少なくとも部分的に(例えば、部分的に)担体錠剤を覆う膜は膜形成剤を含有し、該膜形成剤はヒドロキシプロピルセルロース(HPC)であり、(a)該HPCの平均分子量は34000〜125000(例えば、34000、77000、80000、または125000)であり、および/または(b)該HPCの水溶液粘度は、20℃で2重量%の乾燥HPCを含有する水溶液として測定(例えば、ブルックフィールド粘度計を使用)した場合、2.0〜10.0mPa.s[例えば、2.0〜2.9(例えば、2.5)mPa.s、または3.0〜5.9(例えば、4.7)mPa.s、または6.0〜10.0(例えば、7.9)mPa.s]である。
【0070】
一般に、剤形に含まれる膜形成剤は、その製造中に用いる溶媒に可溶である。
【0071】
一つの特定の実施形態では、膜形成剤(例えば、ヒドロキシプロピルセルロース)は、膜の30重量%〜99.5重量%、または30重量%〜95重量%、または40重量%〜95重量%、または50重量%〜90重量%、または50重量%〜80重量%(例えば、約66〜67重量%または約62.5重量%)で存在し、および/または剤形(例えば、錠剤)の0.01重量%〜4重量%(例えば、0.02重量%〜2重量%、または0.02重量%〜1重量%、または0.05重量%〜0.4重量%、例えば、約0.13重量%)で存在する。
【0072】
該膜は、加えて、他の賦形剤も含有し得る。例えば、ある溶媒系、例えば、水溶液系などは、界面活性剤(例えば、ポリソルベート(20、40、80)、Triton 100、ラウリル硫酸ナトリウムまたはチロキソポール(tyloxopol))および/または消泡剤(ポリジメチルシロキサンまたはジメチコン)の添加を必要とするということが見いだされている。よって、さらなる実施形態では、該膜は、加えて、1以上の界面活性剤および/または1以上の消泡剤を含有する。
【0073】
該剤形はさらにコーティングされてもよい(すなわち、追加コーティングを含んでなってよい)。好ましくは、追加コーティングは、二酸化チタンおよび/またはNisso(商標)HPCグレードSSLなどのヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を含んでなり、より好ましくは、追加コーティングは、乾燥した追加コーティングの重量で、25〜55%HPC(例えば、Nisso(商標)HPCグレードSSL)および45〜75%二酸化チタンを含んでなる。より好ましくは、追加コーティング工程は、エタノール中のHPCおよび/または二酸化チタンの混合物を使用する(例えば、パッド印刷オーバーコート工程を使用−例えば、以下の説明を参照)。いっそうより好ましくは、追加コーティング工程(例えば、パッド印刷工程)は、以下の一般化された組成を有するコーティング混合物を使用する:20〜25%Nisso(商標)HPC SSL、31〜38%二酸化チタン、および41〜49%エタノール。
【0074】
他の可能性ある好適な追加コーティングとしては、該担体錠剤のコーティングに好適であるとして上に記載したものが挙げられる。よって、好適には、追加コーティングは、Colorcon社製の市販のもの、例えば、Opadry(商標)コーティング(例えば、「OPADRY WHITE 00F18484」(商標)または「OPADRY WHITE YS−1−7003」(商標))などの水性膜コートを含んでなる。他の好適な追加コーティングとしては、Surelease(商標)(エチルセルロース)が挙げられる。該剤形は、また、胃耐性および腸溶性ポリマー材料の膜でさらにコーティングされてもよい。好適なポリマー材料としては、セルロースアセトフタレート、セルロースアセトプロピオネート、セルローストリメリテートおよびアクリルおよびメタクリルコポリマーが挙げられる。
【0075】
場合により、追加コーティングに着色剤を添加することができる。
【0076】
一つの特定の実施形態では、該剤形は、2〜6%重量増加までさらにコーティングされる。
【0077】
特定の実施形態では、追加コーティングは、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する該膜上にコーティング(より詳細には、該膜の大部分または全体にわたるコーティング、好ましくは、該膜の全体にわたるコーティング)を形成する。
【0078】
特定の実施形態では、追加コーティングは、パッド印刷されたオーバーコートであり、すなわち、パッド印刷工程により形成されるオーバーコート(1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する該膜の大部分または全体(好ましくは全体)にわたるコーティング)である。
【0079】
該剤形は、場合により、低酸素環境中にパッケージングされてよい。これは、該剤形のパッケージング中への脱酸素剤の封入により行われ得る。好適な脱酸素剤としては、PharmaKeep(商標)KHおよびKD(Sud Chemie社製の市販のもの)およびStabilOx(商標)特殊脱酸素剤(Multisorb Technologies社製の市販のもの)が挙げられる。あるいは、該剤形は、酸素不浸透性のボトル中にパッケージングすることができる。アルミニウム−アルミニウムブリスターも、該剤形を低酸素環境中へパッケージングするために使用してよい。
【0080】
もう一つの態様において、本発明は、本発明の剤形を製造するための方法を提供する。該方法は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤の溶液または懸濁液を、担体錠剤上に調剤することを含む。該膜中に存在する任意選択の安定剤および任意の他の賦形剤が溶媒に可溶であるならば、いかなる溶媒も使用してよい。溶媒は一般に揮発性であり、完成した剤形において見られる(残留)量で薬学上許容されなければならない。
【0081】
好適には、溶媒としては、水、有機溶媒、噴射剤、液化ガスまたは揮発性シリコンを含む。一つの特定の実施形態では、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩と任意選択の安定剤の溶液または懸濁液は、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸または塩化メチレン(ジクロロメタン)などの有機溶媒を用いて作製される。溶媒(例えば、水−エタノール)の混合物も使用可能である。
【0082】
特定の実施形態では、溶媒は有機溶媒または溶媒の混合物(例えば、有機溶媒または有機溶媒の混合物)である。特定の実施形態では、有機溶媒はメタノール、エタノール、1−プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、イソブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸メチル、酢酸、塩化メチレン(ジクロロメタン)またはシクロヘキサンである。より詳細には、有機溶媒はメタノール、エタノール、アセトン、酢酸または塩化メチレン(ジクロロメタン)である。一つの好ましい実施形態では、溶媒はメタノールである。
【0083】
特定の実施形態では、剤形の作製方法において、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の溶液または懸濁液が、出発材料として固体(例えば、結晶性)の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノ−マレエートを用いて、またはより詳細には、出発材料として、例えば、
(a)X線粉末回折計により銅K−アルファX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を用いて測定される、実質的に以下の2シータ角度値にある各ピークの4つ以上を含んでなるX線粉末回折回折図:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°、
および/または
(b)各ピークに対して±2cm−1の変動が許容される、下記のピークの5つ以上を含んでなる固体減衰全反射赤外スペクトル(solid-form attenuated total reflectance infrared spectrum):
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840、および765cm−1
を特徴とする1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1を用いて作製される。
【0084】
さらなる態様において、本発明は、溶媒系における1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩と任意選択の安定剤の溶液または懸濁液を提供する。一つの実施形態においては、溶液または懸濁液はさらに1以上の膜形成剤および/または界面活性剤および/または消泡剤を含んでなる。別の実施形態では、溶媒はメタノール、エタノール、アセトン、酢酸または塩化メチレンなどの有機溶媒、より詳細には、メタノールである。
【0085】
安定剤がクエン酸であるある特定の実施形態では、安定剤は溶液または懸濁液中に2〜3%w/v、特に3%w/vの量で存在する。
【0086】
安定剤がブチル化ヒドロキシアニソールであるある実施形態では、安定剤は溶液または懸濁液中に0.01〜0.1%w/v、特に0.02%w/vの量で存在する。
【0087】
膜形成剤がヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(例えば、上でさらに記載されているHPC)であるある特定の実施形態では、膜形成剤は溶液または懸濁液中に4〜6%w/v、特に4%w/vまたは5%w/vの量で存在する。
【0088】
担体錠剤および調剤された溶液/懸濁液は、過剰の液体を蒸発させ、結果として該担体錠剤の表面の少なくとも一部に膜を形成するために、(例えば、強制空気炉内で、例えば、40〜60℃(約50℃など)で、および/または例えば、約10〜20分間)加熱され得る。該剤形は、その後、場合により、例えば、当該技術分野で公知でありおよび/または本明細書に記載される方法により、膜コーティングされてよい。
【0089】
該剤形を作製するための方法において使用される担体錠剤は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩と任意選択の安定剤の溶液または懸濁液の溜めますを提供する凹部または陥凹を有し得、調剤された後にランド(land)となる。一般に、錠剤の2面に凹部を有する両凹錠剤が使用される。二つの凹部は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤の溶液または懸濁液を収容するために使用することができる。あるいは、2種の異なる治療薬を含有する剤形を作出するために、凹部の一つは、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤の溶液または懸濁液を収容するために使用することができ、残りの凹部は、他の治療薬の溶液または懸濁液を収容するために使用することができる。さらなる実施形態では、異なる治療薬の溶液は、一方のものの上に層状に重ねられるものであってよい。
【0090】
本発明の剤形は、WO2005/123569号公報に記載されている装置を使用して作出され得る(この刊行物は引用することにより本明細書の一部とされる)。より詳細には、本発明の剤形は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤の溶液または懸濁液の所定量を該担体錠剤上に正確に調剤するための調剤モジュールを含む装置により作出され得る。該装置は、該担体錠剤を保持するための保持部材も備え得る。調剤モジュールが該担体錠剤のそれぞれの上に該溶液/懸濁液を調剤するため、保持部材は該装置に沿って連続的に移動し得る。
【0091】
該装置は、該担体錠剤のそれぞれの上に被着された該溶液/懸濁液を乾燥させまたはそれから溶媒を蒸発させる乾燥システムも備え得る。乾燥システムが該担体錠剤のそれぞれの上にある調剤量を乾燥させるため、該保持部材は該装置に沿って連続的に移動し得る。乾燥システムは、熱風、赤外線またはマイクロ波加熱を用いて調剤量を乾燥させ得る。
【0092】
該装置は、該剤形にあるコーティングを施すコーティングシステムも備え得る。コーティングシステムは、該担体基体のそれぞれに、または1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含んでなる該剤形にあるコーティングまたは該コーティングを施すパッド印刷装置または噴霧器(例えば、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含んでなる膜にあるコーティングまたは該コーティングを施すパッド印刷装置または噴霧器)を備え得る。コーティングシステムは該担体錠剤のそれぞれに該コーティングを施すため、該保持部材は該装置に沿って連続的に移動し得る。該装置は、該担体錠剤のそれぞれの上にある該コーティングを乾燥させるコーティング乾燥機も備え得る。
【0093】
上記の装置は、異なる治療薬の溶液または懸濁液を添加するために、担体錠剤を何度も再加工することができることは明らかであろう。あるいは、該装置は、溶液/懸濁液のそれぞれを該担体錠剤に添加するために、追加の調剤システムを連続装備することもできる。
【0094】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩は他の治療薬と併用可能である。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩がアルツハイマー病の治療における使用のためのものである場合、それは、アルツハイマー病の疾患修飾性または対症性治療のいずれかとして有用であるといわれている薬剤と併用可能である。かかる他の治療薬の好適な例は、対症性薬剤、例えば、コリン作動性伝達を修飾することが知られているもの、例えば、M1ムスカリン性受容体アゴニストもしくはアロステリック調節因子、M2ムスカリンアンタゴニスト、アセチルコリンエステラーゼ阻害薬(テトラヒドロアミノアクリジン、塩酸ドネペジルおよびリバスチグミンなど)、ニコチン性受容体アゴニストもしくはアロステリック調節因子(α7アゴニストもしくはアロステリック調節因子またはα4β2アゴニストもしくはアロステリック調節因子など)、PPARアゴニスト(PPARγアゴニストなど)、5−HT受容体部分的アゴニスト、5−HT受容体アンタゴニストまたは5HT1A受容体アンタゴニストおよびNMDA受容体アンタゴニストまたは調節因子、または疾患修飾性薬剤、例えば、βまたはγ−セクレターゼ阻害薬であり得る。
【0095】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩が睡眠発作の治療における使用のためのものである場合、それは、睡眠発作の治療として有用であるといわれている薬剤と併用可能である。かかる他の治療薬の好適な例としては、モダフィニル、アルモダフィニル、およびモノアミン取り込み遮断薬が挙げられる。
【0096】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩が統合失調症の治療における使用のためのものである場合、それは、統合失調症の治療として有用であるといわれている薬剤と併用可能であり、それらには、i)定型抗精神病薬(例えば、クロルプロマジン、チオリダジン、メソリダジン、フルフェナジン、ペルフェナジン、プロクロルペラジン、トリフルオペラジン、チオチキシン、ハロペリドール、モリンドンおよびロキサピン)、非定型抗精神病薬(例えば、クロザピン、オランザピン、リスペリドン、クエチアピン、アリピラゾール、ジプラシドン、アミスルプリドおよびアリピプラゾール)、グリシントランスポーター1阻害薬および代謝調節型受容体リガンドを含む抗精神病薬、ii)錐体外路副作用のための薬剤、例えば、抗コリン作用薬(ベンズトロピン、ビペリデン、プロシクリジン、およびトリヘキシフェニジルなど)およびドーパミン作動薬(アマンタジンなど)、iii)セロトニン再取り込み阻害薬(シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、ダポキセチンおよびセルトラリンなど)、デュアルセロトニン/ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(ベンラファキシン、デュロキセチンおよびミルナシプランなど)、ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(レボキセチンなど)、三環系抗鬱薬(アミトリプチリン、クロミプラミン、イミプラミン、マプロチリン、ノルトリプチリンおよびトリミプラミンなど)、モノアミンオキシダーゼ阻害薬(イソカルボキサジドe、モクロベミド、フェネルジンおよびトラニルシプラミンなど)、およびその他(ブプロプリオン、ミアンセリン、ミルタゼピン、ネファゾドンおよびトラゾドンなど)を含む抗鬱薬、iv)ベンゾジアゼピン系薬、例えば、アルプラゾラムおよびロラゼパムを含む抗不安薬、ならびにv)向知性薬、例えば、コリンエステラーゼ阻害薬(タクリン、ドネペジル、リバスチグミン、およびガランタミンなど)が含まれる。
【0097】
よって、本発明は、さらなる態様において、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤を含んでなる膜により少なくとも部分的にコーティングされた担体錠剤を含んでなる剤形であり、追加の治療薬または薬剤をさらに含んでなる剤形を提供する。
【0098】
追加の治療薬が該担体錠剤中に存在してよいことは明らかであろう。あるいは、上述のとおり、追加の治療薬を含有する膜は該担体錠剤上に被着されていてよい。該担体錠剤が二つの凹部を有する場合、一つの凹部が1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤を含有する膜を含んでよく、もう一つの凹部が追加の治療薬または薬剤を含有する膜を含んでよい。あるいは、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤を含有する膜と追加の治療薬は、一方の上に層状に重ねられるものであってよい。
【0099】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩が、同じ病状に有効な第2の治療薬と併用される場合、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の用量は、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩が単独で処方される場合の用量と異なってもよい。適当な用量は、当業者ならば容易に理解できるであろう。
【0100】
以下の実施例により本発明を説明するが、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0101】
薬物製造例
以下の薬物製造例により、「遊離塩基」化合物1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン、ならびにその塩酸塩およびモノマレエート塩の特定の製造を記載する。
略語を以下に示す。これらの一部は本明細書において使用される:
DMSO ジメチルスルホキシド
eq 当量
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
h 時間
min 分
GC ガスクロマトグラフィー
LCMSまたはLC/MS 液体クロマトグラフィー/質量分析
NMR 核磁気共鳴
H NMR H 核磁気共鳴、この場合、br=幅広、m=多重線、s=一重線、d=二重線、t=三重線、td=二重線の三重線など、および1Hまたは2H=積分値が1個の水素または2個の水素を示す、など。
TLC 薄層クロマトグラフィー
室温(周囲温度):本明細書に開示されている場合を除き、これは通常約17〜約25℃の範囲内であるか、またはこの範囲内の部分的な範囲である。
【0102】
薬物製造中間体1
1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビス−トリフルオロ酢酸塩
【化5】

【0103】
工程の概要
総ての重量、容量および当量は、1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラートに対するものである。
ジクロロメタン(14容量)中の1−tert−ブチル−4−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン−1−カルボキシラート(1重量、例えば、場合により、WO2005/040144A1号公報の10頁にある記載1の方法AまたはBに記載されているように製造することができる)の溶液を0±3℃まで冷却する。トリフルオロ酢酸(5重量、3.4容量、10モル当量)を少なくとも30分かけて加える。その反応混合物をその後30±3℃まで温め、この温度で少なくとも12時間攪拌する。一度TLCおよびGCにより反応が完了したら、混合物をロータリーエバポレーターで蒸発乾固させる。その残渣に酢酸エチル(7容量)を加え、混合物を蒸発乾固させる。これを一度繰り返す。得られた油に酢酸エチル(0.5容量)、続いてtert−ブチルメチルエーテル(10容量)を加え、混合物を2時間攪拌する。得られた固体を真空濾去し、tert−ブチルメチルエーテル(2×3容量)で洗浄する。一定のプローブ温度に達するまでその固体をさらに40℃で真空乾燥させ、固体1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビス−トリフルオロ酢酸塩を得る。
【0104】
薬物製造中間体2
4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸
【化6】

【0105】
概略工程の説明
総ての重量、容量(「vol」)、および当量は、4−ヒドロキシ安息香酸メチルに対するものである。
窒素下、トルエン(3.5vol)中の4−ヒドロキシ安息香酸メチル(1wt、1モル当量)、トリフェニルホスフィン(2.6wt、1.5モル当量)、4−ヒドロキシテトラヒドロピラン(0.75vol、1.2モル当量)の溶液を55℃まで加熱し、内容物を60±2℃に維持しながらアゾジカルボン酸ジイソプロピル(1.95vol、1.5モル当量)を60分かけて滴下する。添加後、その反応物を30分間攪拌し、その後0〜5℃まで冷却する。次いで、そのバッチに、予め作製したトリフェニルホスフィンオキシド−ヒドラジンジカルボン酸ジイソプロピル付加物を種晶添加し、その後濾過前にさらに1時間攪拌する。その湿潤ケークをトルエン(2×1vol)で洗浄し、合わせた母液を清浄な容器に移す。そのトルエン溶液を0〜5℃の2M水酸化ナトリウム溶液(5vol)で洗浄し、その後3M水酸化ナトリウム溶液(5vol)を加え、反応物を80℃まで加熱する。HPLCにより出発材料が存在しないことが分かるまで、その反応物を少なくとも2.5時間攪拌する。次いで、その混合物を50℃まで冷却し、トルエン(5vol)および水(5vol)を加える。層を分離し、水層をトルエン(10vol)で洗浄し、その後2.5M HCl溶液(7.5vol)でpH1まで酸性化する。得られたスラリーを濾過し、湿潤ケークを水(2×2vol)で洗浄する。一定のプローブ温度なるまで標題の生成物を真空炉内で窒素流出下約50℃で乾燥させる。
【0106】
詳細な工程の説明
1.容器1に4−ヒドロキシ安息香酸メチル(1wt、482.3g、Flukaから入手可能)を加えた。
2.容器1に4−ヒドロキシテトラヒドロピラン(0.75vol、362mL、1.2モル当量、Sigma-Aldrichから入手可能)を加えた。
3.容器1にトリフェニルホスフィン(2.6wt、1253g、1.5モル当量)を加えた。
4.容器1を窒素で取り除いた(purge)。
5.容器1にトルエン(3.5vol、1690mL)を加えた。
6.攪拌しながら内容物を55℃まで加熱した。
7.内容物の温度を60±2℃に維持しながら容器1に蠕動ポンプにより2時間かけてアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD、1.95vol、940mL、1.5モル当量、Aldrichから入手可能)を加えた。
8.容器1の内容物を60±2℃で50分間攪拌した。
9.HPLC分析のために反応混合物をサンプリングした。
10.容器1の内容物を0〜5℃まで冷却した。
11.バッチにトリフェニルホスフィンオキシド−ヒドラジンジカルボン酸ジイソプロピル付加物(0.001wt、0.482g)で種晶添加した。
12.容器1の内容物を81分間攪拌した。
13.Whatman No.113湿潤強度定性濾紙(粗面サイドアップ)を取り付けたPTFEミニフィルターで副生成物(biproduct)を5分かけて濾去した。20Lブフナーフラスコを受け器として使用した。
14.湿潤ケークをトルエン(2×約1vol、2×490mL)で洗浄し、溶媒を含まないケークを吸引した。
15.合わせた濾液およびケーク洗浄液をPTFE吸引ラインにより容器2に移した。
16.容器2内容物を0〜5℃まで冷却した。
17.容器2に2M水酸化ナトリウム溶液(5vol、2400mL)を加えた。
18.容器2の内容物を0〜5℃で5分間攪拌した後、層を安定させた。
19.ラベルを付けたショットボトルに下方の水層を流し込んだ。
20.容器2に3M水酸化ナトリウム溶液(5vol、2410mL)を加えた。
21.内容物を80℃まで加熱し、2時間45分間攪拌した。
22.加水分解が完了するまでHPLCにより反応をモニタリングした。
23.容器2の内容物を50℃まで冷却した後、容器2にトルエン(5vol、2410mL)を加えた。
24.容器2に水(5vol、2410mL)を加えた。
25.内容物を50±5℃で5分間攪拌した後、層を安定させた。
26.保存のためにラベルを付けたショットボトルに下方の水層を流し込んだ。
27.廃棄のためにラベルを付けたショットボトルに上方の有機層を流し込んだ。
28.ラベルを付けたショットボトルから容器2に水層を再度入れた。
29.容器2にトルエン(約10vol、4900mL)を加えた。
30.内容物を50±5℃で5分間攪拌した後、層を安定させた。
31.保存のためにラベルを付けたショットボトルに下方の水層を流し込んだ。
32.廃棄のためにラベルを付けたショットボトルに上方の有機層を流し込んだ。
33.容器2に水層を再度入れた。
34.pH1に達するまで蠕動ポンプにより2.5M塩酸水溶液(7.5vol、3620mL)を加えた。
35.得られたスラリーを15分間攪拌した。
36.Whatman 113湿潤強度定性濾紙(粗面サイドアップ)を取り付けたPTFEミニフィルターで生成物を濾去した。濾過時間10分。
37.濾過ケーキを水(2×2vol、970mL)で洗浄した。
38.モスリン布で覆った、ポリエチレンを内張りしたスチール製トレイ内で、真空および窒素流出下、50℃で一晩および75℃でさらに3日間固体生成物を乾燥させた。
39.標題の生成物を灰白色固体として得た(568.9g)。
【0107】
分析データ
1H NMR (400 MHz, DMSO-d6) delta ppm 1.55 - 1.64 (m, 2 H) 1.95 - 2.03 (m, 2 H) 3.49 (ddd, J=11.74, 9.41, 2.57 Hz, 2 H) 3.85 (ddd, J=11.80, 4.34, 4.16 Hz, 2 H) 4.69 (ddd, J=8.56, 4.65, 4.40 Hz, 1 H) 7.03 - 7.09 (m, 2 H) 7.84 - 7.90 (m, 2 H), and 12.31 (br-s, 1H)
上の工程の別の方法では、工程37において、濾過ケーキを、工程38の50〜75℃での真空乾燥の前に、水の代わりにトルエンで洗浄することができる。
【0108】
薬物製造例1
(パートA):1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化7】

および
(パートBおよびC):1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩
【化8】

【0109】
方法
温度計、凝縮器/窒素バブラー、および栓を備えた三口フラスコ中で、窒素下で攪拌しながら内容物温度約65℃(ジャケット温度70℃)でカルボニルジイミダゾール(CDI)(24g、0.8重量、1.1当量)をアセトニトリル(約300ml、約10容量)に溶解させた。溶解は約35〜40℃で完了した。4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸(30g、1重量、1当量、これは、場合により、薬物製造中間体2に記載のように製造することができる)を固体添加用漏斗を通じて側面の口より少量ずつ加え、それにより激しくガスが発生した(CO)。添加は5〜10分かけて終えた。添加用漏斗をアセトニトリル(約45ml、約1.5容量)で洗い流し、それを反応混合物に加えた。酸を活性化している反応混合物を65℃(ジャケット温度70℃)で約2時間維持した。
[ここで、1容量=30ml、この場合の容量は30gの投入した酸に対するものである。]
その間に、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンビス−トリフルオロ酢酸塩(100g、例えば、薬物製造中間体1に記載のように製造)を2M水酸化ナトリウム水溶液(200ml)に溶解させ、ジクロロメタン(2×200ml)で抽出した。その有機抽出物を乾燥させ(NaSO)、蒸発乾固させ、1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを油として単離した(27.5g、0.916重量、純粋な1−イソプロピル−ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンである場合には1.43当量となる)。
【0110】
この総ての油をアセトニトリル(45ml、1.5容量)に溶解させ、溶液を活性化酸反応混合物に入れた。この段階における反応混合物中のアセトニトリルの最大総容量は400mlである。
【0111】
その反応混合物を便宜に一晩放置し、内容物温度65℃で反応させた。次いで、その反応混合物を冷却し、その後、それを清澄化し、3つの等しい部分、パートA、BおよびCに分けた。各パートは、10gの投入した4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)安息香酸に相当する。
【0112】
これらの三つのパートA、B、およびCの各々(1容量=10ml)において、これらの三つのパートにおける容量は、10gの投入した酸に対するものである(反応物の3分の1)。
【0113】
薬物製造例1
パートA:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(遊離塩基)の製造および単離
反応混合物の第1の部分であるパートAから溶媒を除去した。酢酸イソプロピル(10容量、100ml)を加え、混合物を水(2×3容量、2×30ml)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、3容量(30ml)まで濃縮した。ヘプタン(約6容量、約60ml)を加え、それにより固体の結晶化が起こり、その混合物を一晩攪拌した。(すなわち、遊離塩基を約1:2酢酸イソプロピル:ヘプタンから結晶させた。)
【0114】
パートAからの遊離塩基のスラリーを濾過し、分離された固体をヘプタン(3容量、30ml)で洗浄し、真空炉内で一晩乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(遊離塩基)(5.24g)を得た。
【0115】
この遊離塩基サンプルをtert−ブチルメチルエーテル(再結晶させる遊離塩基の重量に対して15容量、約75ml)中に懸濁し、混合物を50℃まで加熱し、その結果遊離塩基の総てを溶解させ、透明な溶液を得た。それを清澄化することなく、その溶液を室温まで徐々に冷却し、スラリーを得た。そのスラリーを濾過し、分離された固体を真空炉内で50℃で一晩乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンを固体として得た(4.15g)。
【0116】
薬物製造例1
パートB:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の製造および単離
並行して、反応混合物の第2の部分であるパートBを2.5容量(25ml)まで濃縮した。イソプロパノール(3容量、30ml)を加え、混合物を3容量(30ml)まで濃縮した。イソプロパノール(3容量、30ml)および水(2.0ml、0.2容量)を加え、得られた混合物(約3.2容量%水を含有)を65℃まで加熱した。イソプロパノール(5〜6N、9ml、0.9容量)中のHClの溶液を1回で加えた。添加完了の約10分後に、いくつかの結晶が現われた。その混合物を4時間かけて20℃まで徐々に冷却した。20℃においてそのスラリーは粘度が非常に高くなりそれはかき混ぜられなくなった。そのスラリーをイソプロパノール中3.2%水でさらに希釈した、合計60ml(6容量)の(イソプロパノール中3.2%水)を加えた後、20℃で適度に攪拌できるスラリーを得た。
【0117】
そのスラリーを60℃まで再度加熱し、透明な溶液を得た。この溶液をゆっくりと冷却し、約38℃で結晶化が始まり、その混合物を30℃まで冷却し、スラリーを30℃で一晩攪拌した。次いで、そのスラリーを室温までゆっくりと冷却し、濾過した。得られた固体をイソプロパノール(4容量、40ml)で洗浄し、真空炉内で一晩乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体として得た(13.45g)。これは「熱力学的固体」塩酸塩と呼ぶことができる(ゆっくりした冷却と結晶化の結果)。HPLCは、この生成物が約3%の量(HPLCピーク面積により測定される)で存在する1種の不純物を含有することを示唆している。XRPD分析は、この「熱力学的固体」塩酸塩が結晶性であること(XRPDはシャープなピークを有する、データは示されていない)を示している。
【0118】
薬物製造例1
パートC:1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩の製造および単離
並行して、反応混合物の第3の部分であるパートCを2.5容量(25ml)まで濃縮した。イソプロパノール(3容量、30ml)を加え、混合物を3容量(30ml)まで再度濃縮した。イソプロパノール(7容量、70ml)および水(4ml、0.4容量)を加え、混合物(約3.8容量%水を含有)を得た。室温で、イソプロパノール(5〜6N、9ml、0.9容量)中のHClの溶液を1回で加え、その後間もなく結晶化が始まり、その結果粘度の高いスラリーを得た。スラリーはほとんど攪拌することができなかった。このスラリーを濾過した。分離された固体をイソプロパノール(4容量、40ml)で洗浄し、炉内で50℃で一晩真空乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体として得た(12.4g)。これは「動的固体」塩酸塩と呼ぶことができる(急速な結晶化により作出された生成物)。HPLCは、この生成物がそれぞれ約2%および約13〜14%の量(HPLCピーク面積により測定される)で存在する2種の不純物を含有することを示唆している。XRPDデータ(示さず)は、パートCからのこの「動的固体」塩酸塩がパートBからの「熱力学的固体」塩酸塩と同じ結晶形を含んでなることを示しているようである。
【0119】
その純度を向上させるために、この「動的固体」塩酸塩をアセトニトリルおよび水から再結晶させた。「動的固体」塩酸塩(11g)は、アセトニトリル(90ml)と混合するが80℃でもそれに完全には溶解しなかった。その攪拌スラリーに水(1ml)を加え、ゆっくりと透明な溶液を得た。この攪拌溶液を室温までゆっくりと冷却し、一晩攪拌した。濾過し、乾燥させ、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン塩酸塩を固体として得た(9g)。HPLCでは不純物は認められなかった。
【0120】
薬物製造例2
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(結晶形1)
【化9】

1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(100mg、薬物製造例1パートAに記載のように製造、すなわち、tert−ブチルメチルエーテルから再結晶させた「遊離塩基」を使用)を酢酸エチル(1ml)に溶解させた。マレイン酸(34mg)も酢酸エチル(1ml)に溶解させ、その二つの溶液を合わせた。合わせることによって乳白色の沈殿物が観察されたが、攪拌することによって溶液が再形成された。その溶液を放置し、約1時間後にバイアルの底に少量の白色固体が沈殿した。これを溶液中に掻きとり、かなりの量の白色固体を沈殿させた。非常に粘度の高いスラリーを追加の酢酸エチル(2ml)で希釈し、0〜40℃の温度サイクルプログラムに一晩付した。
【0121】
温度サイクル後、その混合物中に白色固体が残った。その混合物から濾過によりこの固体を単離し、週末にかけて40℃で真空乾燥させた。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートを固体として得た(およそ93mgまたはおよそ95mg)。
【0122】
この薬物製造例2の生成物のH NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、d6−DMSO中の溶液として、「遊離塩基」のモル量に対して存在するおよそ化学量論量(1:1)のマレイン酸を示すようであり、そして酢酸エチルが存在しないことを示すようであった。薬物製造例2で製造されたモノ−マレエートのこの溶液のH NMRスペクトルのシフトパターンは、薬物製造例3で製造された結晶形1モノマレエートのd6−DMSO溶液のH NMRスペクトルのシフトパターンと概して一致した。
【0123】
薬物製造例2−固体赤外(IR)データおよびスペクトル
薬物製造例2で製造された結晶形1モノマレエート塩の固体減衰全反射(ATR)赤外(IR)スペクトルは、ユニバーサルATRサンプリングアクセサリー(ダイヤモンド/ZnSe)を装着したPerkinElmer社Spectrum One FT−IR(フーリエ変換赤外)分光計において得た。サンプルは、固体をATRセルに押し付けることにより作製した。スペクトルは4cm−1分解能で4回の走査により記録した。
【0124】
得られた結晶形1モノマレエートの固体減衰全反射赤外スペクトルは、とりわけ、3021、2958、2949、2932、2864、2847、1700、1622、1604、1575、1509、1464、1422、1393、1375、1353、1341、1308、1297、1280、1247、1234、1205、1178、1169、1153、1132、1115、1089、1069、1048、1017、1005、985、962、944、908、883、869、840、828、802、784、765、725、および685cm−1にある各バンド(ピーク)を含んでなる。上述のIRバンド(ピーク)それぞれに許容される誤差は±2cm−1であると考えられる。
【0125】
ATR IRスペクトルでは、1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840、および765cm−1において比較的強度が高いIRバンド(ピーク)が観察され、各ピークに対して±2cm−1の変動があった。
【0126】
薬物製造例3
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレイン酸塩(結晶形1)
【化10】

1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン(500mg、1.44mmol、好ましくは、tert−ブチルメチルエーテルから再結晶させた遊離塩基材料を用いる薬物製造例1パートAに記載のように製造)を酢酸エチル(5ml)に攪拌および音波処理しながら溶解させた。マレイン酸(169mg、1.44mmol、1モル当量)も酢酸エチル(5ml)に音波処理しながら溶解させた。その二つの溶液を滴下して合わせた。合わせている間に白色沈殿が形成し始めたが、攪拌することによって即時に溶解した。次いで、その溶液に形態1結晶性1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(薬物製造例2に従って製造)の予め合成したバッチ数mgを種晶添加した。種晶が根付き、沈殿が認められ、その後の数分間にスラリーの粘性が高まった。追加の酢酸エチル(3ml)を加え、スラリーを約60分間攪拌した後、0〜40℃の温度サイクルプログラムに移行し、3晩(週末にかけて)放置した。
【0127】
温度サイクル後、粘度が高いスラリーが残り、得られた固体を濾過により単離し、40℃で一晩真空乾燥させた。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートを白色固体として得た(592mg、理論収率88%)。
【0128】
この材料、薬物製造例3のサンプルを、X線粉末回折(XRPD)(下の表1を参照)および固体赤外(IR)分光法(データは示されていないが、薬物製造例2において作出された形態1結晶性モノマレエートのものと一致する固体IRスペクトルを示す)を含む様々な分析のために取り出した。また、d6−DMSO溶液中でのH NMR(核磁気共鳴)スペクトルも実施した−分析の詳細については以下を参照。
【0129】
とりわけ、シャープなピークを有するXRPD回折図(示さず)から、その固体モノマレエート塩は結晶性であるように思われる。1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートのこの結晶形を結晶形1と呼ぶ。
【0130】
異なる相対湿度で水分収着/脱着を測定する重量蒸気収着(GVS)分析では、薬物製造例3で製造された形態1結晶性モノマレエート塩のサンプルは、窒素下25℃で0〜90%相対湿度範囲にわたっておよそ0.4%w/wの水を可逆的に吸着しおよび/または吸収し、および/または脱着することが示された。これは、同じ相対湿度範囲にわたってより多量の水を吸着しおよび/または吸収し、および/または脱着する、薬物製造例1パートC(「動的」固体再結晶化による精製前)の固体塩酸塩よりも薬物開発可能性の点で優れていることを表していると思われる(データは示されていない)。
【0131】
薬物製造例3の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1についてのX線粉末回折(XRPD)データおよび回折図
薬物製造例3で製造された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1についてのX線粉末回折(XRPD)データは、X’Celerator検出器を備えたPhillips社PANalytical X’Pert Pro粉末回折計モデルPW3040/60、製造番号DY1850(PANalytical UK, 7310 IQ Cambridge, Waterbeach, Cambridge CB25 9AY, United Kingdomから入手可能)において取得した。取得条件は、放射線:Cu Kα(銅K−アルファ)、発電機電圧:40kV、発電機電流:45mA、開始角度:2.0°2θ、終了角度:40.0°2θ、ステップサイズ:0.0167°2θ:であった。工程当たりの時間は31.750秒であった。サンプルは、Si(シリコン)ウエハー(ゼロバックグラウンド)プレート上に数mgのサンプルを載せ粉末の薄層とすることにより作製した。XRPDデータは、室温および空気中大気圧で収集した。
潜在的に特徴的なピーク位置(2シータ(2θ)角度)、および算出された格子面間隔(オングストローム(Å))を下の表1に要約する。これらは、生データからHighscoreソフトウエア(PANalytical UK, 7310 IQ Cambridge, Waterbeach, Cambridge CB25 9AY, United Kingdomから入手可能)を使用して算出した。ピーク位置の実験誤差はおよそ±0.1°2シータ(2θ)である。相対ピーク強度は選択配向によって変動する。
【0132】
表1−薬物製造例3の結晶形1モノマレエートについてのXRPDデータ
【表2】

【0133】
表1に記載したピークのうち、中位または強い強度のもの、および/または結晶形1モノ−マレエートを含有する試験材料のサンプルにおいて見られる可能性が最も高いと思われ、かつその一部または総てが結晶形1の特性を示している可能性が高い7つのXRPDピークは、次の2シータ(2θ)角度値で観察される:9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°。
【0134】
薬物製造例3の結晶形1モノ−マレエートのH NMR(核磁気共鳴)溶液スペクトル
薬物製造例3で製造された1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノ−マレエートの結晶形1のH NMR(核磁気共鳴)スペクトルは、400MHz H NMR分光計を使用しd6−DMSO(d6−ジメチルスルホキシド)中の溶液として得た。H NMRスペクトルは、0〜10ppmでのみ報告され、以下のようなデルタ(ppm)においてピークを有する(積分/水素の数(H)を括弧内に示している、s=一重線、d=二重線、m=多重線):9.03 (0.78H, ブロード s), 7.41 (2.00H, d), 7.05 (2.00H, d), 6.04 (1.96H, s), 4.65 (1.01H, m), 4.01 (約0.7H, ブロード m), 3.87 (約2.6H, m), 3.1 to 3.8 (約18.2H, m, 3.51ppmにおいてのトリプレットおよび3.32ppmにおいての強いピークを含む), 2.52 (20.0H, s), 2.00 (4.03H, ブロード d), 1.61 (2.07H, m), 1.26 (6.13H, sまたはm)。これらの報告されたピークは、重水素化が不完全なDMSOによるピークも含む。
【0135】
上に報告された薬物製造例3モノ−マレエートの溶液H NMRスペクトルは:
(i)塩形成が起こった可能性があることを示す活性薬物化合物のピークのシフト(参照、「遊離塩基」のもの)を示し、
(ii)マレイン酸もシフトされた(参照、遊離マレイン酸自体)ことを示し、
(iii)およそ化学量論量(1:1)のマレイン酸が「遊離塩基」のモル量に対して存在することを示し、および
(iv)酢酸エチルが存在しないことを示す。
【0136】
薬物製造例3で製造された結晶形1モノ−マレエートのこのd6−DMSO溶液のH NMRスペクトルのシフトパターンは、薬物製造例2で製造された結晶形1モノマレエートのd6−DMSO溶液のH NMRスペクトルのシフトパターン(データは示されていない)と概して一致した。
【0137】
剤形例
実施例1:0.01mg 1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する丸型錠剤の製造
コア成分を公称30メッシュスクリーンに通し、その後好適な混合機で一緒に混合し、ロータリータブレットプレスで圧縮し、直径7.9mmおよび錠剤の両側におよそ0.8mm深さのトラフを有する丸型両凹錠剤を作出する。圧縮後に粉取りおよび金属検知を行う。次いで、錠剤をコーティングパンに入れ、4%(w/w)増加まで目的物をコーティングする。
担体錠剤の組成物を下に示す:
【0138】
コア
【表3】

【0139】
膜コート
【表4】

【0140】
担体溶液は、5gヒドロキシプロピルセルロース(HPC)(Klucel(商標)グレードEF、Aqualonから入手可能)、および3g無水クエン酸をメタノールに溶解させ、10μmフィルターで濾過し、その後メタノールで最終容量を100mlにすることにより作出する。
【0141】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を、終濃度2.5mg/g(w/w)(遊離塩基として測定)で均一溶液が得られるまで、担体溶液にソニケーターを用いて(および磁気攪拌装置も使用することにより)溶解させる。
【0142】
4mgの担体溶液を、担体錠剤の配列の各錠剤上に調剤する。その錠剤を強制空気炉内で約50℃で10〜20分間乾燥させる。
完成した錠剤の組成物は以下のとおりである:
【0143】
【表5】

【0144】
実施例1A
実施例1のもう一つの実施形態では、固体(例えば、結晶性)の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートを担体溶液(メタノール中、HPCおよびクエン酸)に溶解させる。より詳細には、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1を出発材料として用いる。このようにして、膜(この膜は担体錠剤の一方の側の凹部(くぼみ)に存在する)中に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(遊離塩基として測定)、HPCおよびクエン酸を含んでなる錠剤が製造される。
【0145】
実施例2、3、および4:0.02mg、0.05mg、または0.5mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する丸型錠剤の製造
0.02mg、0.05mg、または0.5mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩(遊離塩基として測定)を含有する錠剤は、担体溶液中の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の濃度が異なること以外は、実施例1に記載されている方法で製造することができる。
【0146】
実施例2A、3A、および4A
実施例2、3、および4の別の実施形態において、固体(例えば、結晶性)の1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートを担体溶液(メタノール中、HPCおよびクエン酸)に溶解させる。より詳細には、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1を出発材料として用いる。このようにして、膜(この膜は担体錠剤の一方の側の凹部(くぼみ)に存在する)中に1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(遊離塩基として測定)、HPCおよびクエン酸を含んでなる錠剤が製造される。
【0147】
実施例5−実施例1、2、3、4、1A、2A、3A、および4Aのいずれかで製造された錠剤の、パッド印刷されたオーバーコートによる追加コーティング
実施例1、2、3、4、1A、2A、3A、および4Aのいずれかで製造された錠剤は、場合により、活性化合物または塩を含有する膜の全体にわたる(を覆う)追加コーティングを含んでなり得るようにさらにコーティングすることができる。この任意選択の追加コーティングは、パッド印刷されたオーバーコートであり、すなわち、パッド印刷工程により作製されたオーバーコートである。
【0148】
パッド印刷されたオーバーコートは、二酸化チタンおよびNisso(商標)HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)グレードSSLを含んでなる。パッド印刷オーバーコート工程は、エタノール中にHPCおよび二酸化チタンを含んでなる以下のコーティング混合物の一つを使用する。そのコーティング混合物の総ては以下の一般化された組成を有する:20〜25%のNisso(商標)HPC SSL、31〜38%の二酸化チタン、および41〜49%エタノール:
実施例5A 22%Nisso(商標)HPC SSL、34%二酸化チタン、44%エタノール。
実施例5B 21%Nisso(商標)HPC SSL、38%二酸化チタン、41%エタノール。
実施例5C 25%Nisso(商標)HPC SSL、34%二酸化チタン、41%エタノール。
実施例5D 20%Nisso(商標)HPC SSL、31%二酸化チタン、49%エタノール。
製造後、錠剤上のパッド印刷されたオーバーコートは、次いで、場合により、任意の所望の設計によりさらに印刷することができる。
以下の実施例(実施例6および実施例7)は、本発明に従って製造され得る錠剤例の代表的なものである:
【0149】
実施例6:経口崩壊錠(ODT)担体基体の製造
a)ODT担体基体の製造
StarLacおよびネオテームを公称20メッシュスクリーンに通す。混合物および篩にかけていないミント香味料を好適な混合機に入れ、およそ10分間混合する。ステアリン酸マグネシウムを公称30メッシュスクリーンに通し、混合機に入れ、全混合物をおよそ2分間混合する。用いる材料の重量は、表Aに示す重量%から算出する。所望の規格(例えば丸型、両凹錠剤、直径範囲約8mm〜約9.5mm)を満たすように適当な打錠機を利用する好適なロータリープレスで混合を圧縮する。その錠剤をディダスターおよび金属検知機に通す。
【0150】
表A
【表6】

【0151】
b)パッド印刷により錠剤に適用するためのエチルセルロースコートの製造
エチルセルロースをメタノールに攪拌しながら溶解させ、クエン酸トリエチルを加える。用いる材料の重量は、表Bに示す重量%から算出する。十分なメタノールを加え、w/wベースで目的物とする。その溶液を、丸型イメージの、実際の錠剤直径よりわずかに小さい直径を有する好適なイメージクラッチ版を備え付けたパッド印刷機のインクカップに移す。好適なポリマーパッドをクラッチ版イメージプレートに合わせるように取り付ける。錠剤を規定の配列でパッドプリンターに提示し、クラッチ版に合わせる。液体調剤工程中にコーティングされていない担体基体への溶媒浸潤を軽減する保護層を提供するコートを施すために、パッドプリンターにより担体錠剤に2〜4回タンポを施してよい。
【0152】
表B
【表7】

【0153】
実施例7:経口崩壊錠(ODT)担体基体の別の製造
マンニトール、クロスポビドンXL、キシリトール、およびネオテームを公称20メッシュスクリーンに通し、混合物および篩にかけていないミント香味料を好適な混合機に入れ、およそ10分間混合する。ステアリン酸マグネシウムおよびコロイド状二酸化ケイ素を公称30メッシュスクリーンに通し、混合機に入れ、全混合物をおよそ2分間混合する。用いる材料の重量は、表Cに示す重量%から算出する。所望の規格(例えば丸型、両凹錠剤、直径範囲約8mm〜約9.5mm)を満たすように適当な打錠機を利用する好適なロータリープレスで混合を圧縮する。その錠剤をディダスターおよび金属検知機に通す。
エチルセルロースコートは、実施例6について記載のように製造し、適用してよい。
【0154】
表C
【表8】

【0155】
特性:錠剤における製剤原料の安定性は、下に示されるように試験し得る:
5個の錠剤を希釈剤(1:9アセトニトリル:50mMオルトリン酸二水素カリウム(オルトリン酸でpH3に調整))に溶解させ、終濃度1〜10μg/mlの間の活性薬剤を作出し、10分間音波処理する。完全崩壊を確認し、必要に応じてさらに音波処理する。周囲温度まで冷却した後、サンプルのアリコートを14,000rpmで遠心分離する。プラセボ錠剤を用いてサンプルを作製し、対照サンプルとする。
【0156】
以下の機器条件を用い、95%A、5%Bでクロマトグラフシステムを平衡化する。サンプルおよびプラセボ製剤のクロマトグラムを記録する。
カラム:XBridge C18 3μM 15cm×内径4.6mm。
カラム温度:40℃
移動相A:10mM重炭酸アンモニウム、pH10(アンモニア使用)
移動相B:アセトニトリル
流速:1ml/分
検出器波長:250nm
注入量:100μl
勾配プロフィール:
【表9】

【0157】
不純物/分解生成物を確認するためにクロマトグラムを比較した後、対照およびサンプル注入中の各不純物/分解生成物の含有率を、不純物/分解生成物ピークの面積を1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および全不純物/分解生成物の全ピークの合計で除し100を乗じることにより算出することができる。
【0158】
全不純物/分解生成物含量は、存在する各不純物/分解生成物の含有率を合計することにより算出することができる。一般に、0.05または0.03%以上の量で存在する不純物/分解生成物だけを全不純物/分解生成物含量の計算に含める。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化1】

またはその薬学上許容される塩を含んでなる膜で少なくとも部分的に被覆された担体錠剤を含んでなる、経口投与用の剤形。
【請求項2】
担体錠剤が、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含んでなる膜で部分的に被覆されるものである、請求項1に記載の剤形。
【請求項3】
a)1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピン
【化2】

またはその薬学上許容される塩、
b)場合により、前記安定剤を欠いている剤形と比べて、剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減する安定剤、および
c)薬学上許容される賦形剤
を含んでなる、請求項1または2に記載の剤形。
【請求項4】
担体錠剤を少なくとも部分的に覆っている膜が、前記安定剤を欠いている剤形と比べて、該剤形中での1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の分解を低減する安定剤を含んでなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項5】
前記安定剤が、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、アスコルビン酸の塩、重炭酸ナトリウム、ブチル化ヒドロキシアニソール、およびブチル化ヒドロキシトルエンからなる群から選択されるものである、請求項4に記載の剤形。
【請求項6】
前記安定剤がクエン酸を含んでなる、請求項4に記載の剤形。
【請求項7】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩(遊離塩基として測定)と、クエン酸とのモル比が、1.5:1〜1:500の範囲内である、請求項6に記載の剤形。
【請求項8】
少なくとも部分的に担体錠剤を覆う膜が、膜形成剤をさらに含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項9】
膜形成剤が、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カラギーナン、ゼラチン、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、プルラン、またはメタクリル酸ポリマー、またはそれらの任意の組合せである、請求項8に記載の剤形。
【請求項10】
膜形成剤がヒドロキシプロピルセルロースである、請求項9に記載の剤形。
【請求項11】
膜形成剤が銘柄KlucelグレードEFのヒドロキシプロピルセルロースであるか、または膜形成剤がNissoヒドロキシプロピルセルロースグレードSSL、NissoヒドロキシプロピルセルロースグレードSL、またはNissoヒドロキシプロピルセルロースグレードLである、請求項10に記載の剤形
【請求項12】
担体錠剤が、担体錠剤の70〜100重量%で存在する希釈剤または希釈剤の混合物を含んでなり、ここで、該希釈剤が、ラクトース、スクロース、デキストロース、マンニトール、ソルビトール、デンプン、微晶質セルロース、硫酸カルシウム、および/または第二リン酸カルシウム(CaHPO)を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項13】
存在する遊離塩基の量として測定される場合には、10μg〜2mgの1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩を含有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項14】
膜が1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエート(例えば、その結晶形1)を含有する、請求項1〜13のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項15】
膜が、
(a)X線粉末回折計により銅K−アルファX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を用いて測定される、実質的に以下の2シータ角度値にある各ピークの4つ以上を含んでなるX線粉末回折回折図:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°、
および/または
(b)各ピークに対して±2cm−1の変動が許容される、以下のピークの5つ以上を含んでなる固体減衰全反射赤外スペクトル:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840、および765cm−1
を有することを特徴とする1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1を含有する、請求項14に記載の剤形。
【請求項16】
前記担体錠剤が少なくとも一つの凹部を有する、請求項1〜15のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項17】
前記膜が前記担体錠剤の凹部内に存在する、請求項16に記載の剤形。
【請求項18】
担体錠剤による1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の吸収が実質的にない、請求項1〜17のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項19】
前記担体錠剤がコーティングされる、請求項18に記載の剤形。
【請求項20】
剤形がさらにコーティングされる、請求項1〜19のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項21】
実質的に実施例1、1A、2、3、4、2A、3A、または4Aの一つ以上に記載の剤形。
【請求項22】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩および場合により安定剤の溶液または懸濁液を、担体錠剤上に調剤することを含んでなる、請求項1〜21のいずれか一項に記載の剤形の製造方法。
【請求項23】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩と任意選択の安定剤の溶液または懸濁液が、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸、または塩化メチレンであるか、または水−エタノール混合物である有機溶媒を用いて製造される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の溶液または懸濁液が、出発材料として、
(a)X線粉末回折計により銅K−アルファX線およびステップサイズ0.0167°2シータ以下を用いて測定される、実質的に以下の2シータ角度値にある各ピークの4つ以上を含んでなるX線粉末回折回折図:
9.2±0.1°、13.4±0.1°、17.0±0.1°、18.5±0.1°、19.8±0.1°、21.3±0.1°、および27.8±0.1°、
および/または
(b)各ピークに対して±2cm−1の変動が許容される、以下のピークの5つ以上を含んでなる固体減衰全反射赤外スペクトル:
1700、1622、1464、1422、1353、1247、1234、1089、1048、869、840、および765cm−1
を有する1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンモノマレエートの結晶形1を用いて作製される、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
ヒドロキシプロピルセルロースである膜形成剤が、溶液または懸濁液中に4〜6%w/vの間の量で存在する、請求項22、23、または24に記載の方法。
【請求項26】
担体錠剤および調剤された溶液または懸濁液が、過剰の液体を蒸発させ結果として担体錠剤の表面の少なくとも一部に膜を形成するために加熱される、請求項22、23、24、または25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の剤形を患者に投与することを含む、ヒトにおける認知機能障害の治療方法。
【請求項28】
ヒトにおける認知機能障害の治療における使用のための、請求項1〜21のいずれか一項に記載の剤形の製造における、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩の使用。
【請求項29】
ヒトにおける神経疾患の治療における使用のための剤形であり、神経疾患が、アルツハイマー病、認知症、加齢による記憶機能障害、軽度認知機能障害、または関連神経変性疾患である疾患における認知機能障害である、請求項1〜21のいずれか一項に記載の剤形。
【請求項30】
溶媒系における、1−イソプロピル−4−{[4−(テトラヒドロ−2H−ピラン−4−イルオキシ)フェニル]カルボニル}ヘキサヒドロ−1H−1,4−ジアゼピンまたはその薬学上許容される塩と、安定剤との溶液または懸濁液。

【公表番号】特表2012−500823(P2012−500823A)
【公表日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−524339(P2011−524339)
【出願日】平成21年8月21日(2009.8.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/060847
【国際公開番号】WO2010/023170
【国際公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【出願人】(397009934)グラクソ グループ リミテッド (832)
【氏名又は名称原語表記】GLAXO GROUP LIMITED
【住所又は居所原語表記】Glaxo Wellcome House,Berkeley Avenue Greenford,Middlesex UB6 0NN,Great Britain
【Fターム(参考)】