説明

1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの精製方法及びそれからポリカーボネートを製造する方法

【課題】
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの精製方法。
【解決手段】
この方法では、1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的にアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液を濾過し、濾過した第1の溶液に実質的に水からなる第2の溶媒を添加して第2の溶液を形成する。第2の溶液は、第1及び第2の溶媒の合計重量100部当たり約40〜約95部の第1の溶媒を含む。さらに、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を形成し、第1の結晶性生成物を第3の溶媒に溶解して第3の溶液を形成する。第3の溶媒は芳香族化合物からなる。そして、第3の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンモノマーの精製方法並びに当該精製モノマーを利用して製造されるポリカーボネートに関する。
【背景技術】
【0002】
化合物1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下、DMBPCという。)は、光学データ記憶製品の製造に使用されるポリカーボネートの合成用モノマーとして使用できる。DMBPCは一般に、縮合触媒の存在下でシクロヘキサノンをo−クレゾールと反応させることによって製造される。この反応で副生物が生じるが、これを除去しないと、得られるDMBPCの純度はポリカーボネート合成用モノマー又はコモノマーとして使用するのに許容できないものとなる。これらの望ましくない副生物又は不純物には無機質のものと有機質のものがある。例えば、こうした不純物は重合を妨害して、脆性の増大のような不都合な物理的性質を示す低分子量ポリカーボネートを形成しかねない。さらに、DMBPCモノマー中の不純物はポリカーボネートの変色を起こして製品の透明性に悪影響を与えかねない。
【特許文献1】米国特許第4113974号明細書
【特許文献2】米国特許第4217438号明細書
【特許文献3】米国特許第4242527号明細書
【特許文献4】米国特許第4304899号明細書
【特許文献5】米国特許第4320234号明細書
【特許文献6】米国特許第6001953号明細書
【特許文献7】米国特許第6395364号明細書
【特許文献8】特開平02−048543号公報
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本明細書では、1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの精製方法について開示する。この方法は、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的にアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液を濾過し、濾過した第1の溶液に実質的に水からなる第2の溶媒を添加して、第1及び第2の溶媒の合計重量100部当たり約40〜約95部の第1の溶媒を含む第2の溶液を形成し、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を形成し、
第1の結晶性生成物を、芳香族化合物を含んでなる第3の溶媒に溶解して第3の溶液を形成し、第3の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることを含む。
【0004】
別の実施形態では、ポリカーボネートの製造方法は、反応混合物を溶融反応させてポリカーボネート生成物を生成させることを含んでおり、この反応混合物は、触媒と、式(ZO)C=Oの炭酸ジエステル(式中、各Zは独立に非置換若しくは置換アルキル基又は非置換若しくは置換アリール基である。)と、1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的にアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液を濾過し、濾過した第1の溶液に実質的に水からなる第2の溶媒を、アルコールと水の合計重量100部当たり約40〜約95部のアルコールを含有する第2の溶液が形成されるまで添加し、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を生成させ、第1の結晶性生成物を、式R(C)Rの化合物からなる第3の溶媒に溶解して第3の溶液を形成し、第3の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることによって得た1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの第2の結晶性生成物と、次式の1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー
【0005】
【化1】

【0006】
(式中、Aは二価置換及び非置換芳香族基からなる群から選択される。)とを含む。
【0007】
別の実施形態では、ポリカーボネートの製造方法は、約5〜約50℃の温度及び約9.5〜約11.0の初期pHで反応混合物を界面反応させてポリカーボネート生成物を生成させることを含んでおり、この反応混合物は、ホスゲンと、式R(C)OHの置換又は非置換一価フェノール(式中、Rは水素並びにC〜C12線状及び枝分れアルキル及びシクロアルキル基からなる。)と、式RNの第三アミン(式中、R、R、及びRはC〜C12線状及び枝分れアルキル基から選択される。)と、1種類以上のハロゲン含有炭化水素溶媒と、水と、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウムからなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物と、1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的にアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液を濾過し、濾過した第1の溶液に実質的に水からなる第2の溶媒を、アルコールと水の合計重量100部当たり約40〜約95部のアルコールを含有する第2の溶液が形成されるまで添加し、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を生成させ、第1の結晶性生成物を、式R(C)Rの化合物を含む第3の溶媒に溶解して第3の溶液を形成し、第3の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることによって得た1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの第2の結晶性生成物と、次式の1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー
【0008】
【化2】

【0009】
(式中、Aは二価置換及び非置換芳香族基からなる群から選択される。)とを含んでおり、ホスゲンは、第2の結晶性生成物と1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの総モル数に対して略化学量論〜約50モル%過剰の量で使用する。
【0010】
上記その他の特徴を、以下の詳細な説明によって例示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサン(以下「DMBPC」という)の精製方法は、一般に、シクロヘキサノンとo−クレゾールの縮合反応で生成した粗DMBPC化合物を精製することを含む。本明細書で用いる「粗DMBPC」という用語は、縮合反応から直接得たDMBPCモノマーと定義される。
【0012】
粗DMBPCをまず実質的にアルコールからなる溶媒に溶解して第1の溶液を形成する。水と混和性のアルコールは粗DMBPCの溶解に適した第1の溶媒である。好ましいアルコールは式ROHで表されるが、Rは線状又は枝分れC〜Cアルキル基からなる。使用し得る適当なアルコールの例としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、イソブタノール、n−ブタノール及びtert−ブタノールがある。特定の実施形態では、アルコールはメタノールである。所与の第1の溶媒で、溶解させることができるDMBPCの量は溶解を実施する温度に依存する。一般に、この温度が高いほど、第1の溶媒に対する溶解度及びDMBPCの濃度は高くなる。第1の溶液を調製する際の温度は略室温〜第1の溶媒の還流温度付近とし得る。
【0013】
次に、得られた第1の溶液を濾過して不溶性物質を除去する。濾過は当業者に周知のいずれかの技術で実施し得る。次に、濾過した第1の溶液に、実質的に水からなる第2の溶媒を加えて第2の溶液を形成する。水の添加量は、第2の溶液中のアルコールと水の割合が約40:60〜約5:95の比になる範囲で変更し得る。一実施形態では、第2の溶液中のDMBPCの濃度は、その後の冷却工程で形成される結晶が、粗DMBPCから除去すべき不純物が有意なレベルで持ち込まれないようにすべきである。他の様々な実施形態では、第2の溶液は好ましくは第2の溶媒の100容積部当たり約5〜約50部のDMBPCを含む。
【0014】
次に、第2の溶液を、DMBPCの結晶化、すなわち第1の結晶性生成物の形成に有効な温度に冷却する。冷却速度は当業者には明らかなように広範囲に変更し得る。一実施形態では、第2の溶液を冷却して第1の結晶性生成物を形成するため、温度を略室温〜約5℃に下げる。
【0015】
第1の結晶性生成物の純度は高性能液体クロマトグラフィー(以下、「HPLC」という。)、ガスクロマトグラフィーなどを用いて決定することができる。HPLCはDMBPCの純度を測定するのに特に有効な技術である。
【0016】
次に、第1の結晶性生成物を式R(C)Rの化合物からなる第3の溶媒に溶解させる。式中、R、R、及びR基は各々独立に塩素、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル及びtert−ブチル基からなる群から選択される。適宜、第3の溶媒は、アニソール及びアルキル置換アニソールのようなアルコキシ芳香族化合物、C〜C12線状及び枝分れ脂肪族炭化水素を含む様々な混合物、さらに一般式R(C)Rで表される溶媒の組合せからなるものでもよい。式中、R、R、及びRは既に定義した通りである。適当な第3の溶媒としては、ベンゼン、トルエン、メシチレン、o−、m−及びp−キシレン並びにこれらの異性体混合物のような芳香族化合物、クロロベンゼン、o−、m−及びp−ジクロロベンゼン、異性体ジクロロトルエン、ブロモベンゼン、o−、m−及びp−クロロトルエン並びにこれらの異性体混合物、並びにクロロキシレンのようなハロゲン化芳香族化合物、ベンゾトリフルオライド、これらの芳香族化合物を1種類以上含む混合物などがある。特定の実施形態では、第3の溶媒はトルエンからなる。第3の溶媒中の第1の結晶性生成物の溶解度を支配する要因は、存在する第1の結晶性生成物の量及び第3の溶液の温度に依存すると考えられる。好ましくは、第3の溶液の温度は略室温〜第3の溶媒の還流温度付近である。
【0017】
第3の溶液を次に、DMBPCの結晶化、すなわち第2の結晶性生成物(以下、「精製DMBPC」という。)の形成に有効な温度に冷却する。その冷却速度は当業者には明らかなように広範囲に変更し得る。一実施形態では、第3の溶液を冷却して精製DMBPCを形成するため、温度を略室温〜約5℃に下げる。好ましくは、第3の溶液中のDMBPC濃度は冷却過程で形成される結晶に不純物が持ち込まれないようにする。さらに好ましくは、第3の溶液は、第3の溶媒100容積部当たり約5〜約50重量部のDMBPCのDMBPC濃度からなる。こうして精製したDMBPCの純度は上述の通り容易に決定し得る。
【0018】
好ましくは、得られた精製DMBPCに不純物として含まれる1−(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)−1−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジメチルフェニル)シクロヘキサン化合物と1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジメチルフェニル)シクロヘキサン化合物の組合せ(以下、まとめて「TMBPC」という。)は、第2の結晶性生成物百万部当たり約250部未満であり、約100部未満がさらに好ましい。また、精製DMBPCは好ましくは第2の結晶性生成物百万部当たり約3000部未満の1−(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)−1−(2′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサン化合物を不純物として含み、約100部未満がさらに好ましい。高分子量ポリカーボネートホモポリマー及びコポリマーの製造には、精製DMBPC中のこれらの不純物の存在を最小限に抑制すべきである。
【0019】
第2の結晶性DMBPCから誘導された構造単位を含むポリカーボネートは、溶融重合、界面重合、固相重合、薄膜溶融重合などを始めとする方法で製造できる。界面重合は精製DMBPCのビスクロロホルメート誘導体を用いて実施することもできる。
【0020】
精製DMBPCとの反応によるポリカーボネートの製造に適した芳香族ジヒドロキシ化合物は次の一般式(I)のものからなる。
【0021】
【化3】

【0022】
式中、Aは二価芳香族基である。
【0023】
一実施形態では、Aは好ましくは次式(II)に示す構造を有する。
【0024】
【化4】

【0025】
式中、Gは芳香族基を表し、例えばフェニレン、ビフェニレン、ナフチレンなどの芳香族基である。Eはメチレン、エチレン、エチリデン、プロピレン、プロピリデン、イソプロピリデン、ブチレン、ブチリデン、イソブチリデン、アミレン、アミリデン、イソアミリデンなどのアルキレン又はアルキリデン基でよい。Eは、2以上のアルキレン又はアルキリデン基が、芳香族結合、第三アミノ結合、エーテル結合、カルボニル結合、含ケイ素結合、又はスルフィドやスルホキシドやスルホンのような含イオウ結合、又はホスフィニルやホスホニルのような含リン結合などのアルキレン又はアルキリデンとは異なる部分で結合したものでもよい。さらに、Eは脂環式基であってもよい。Rは水素、又はアルキル、アリール、アラルキル、アルカリールもしくはシクロアルキルなどの一価炭化水素基を表す。Yはハロゲン(フッ素、臭素、塩素、ヨウ素)、ニトロ基、アルケニル基、アリル基、上記のRと同じ基、ORなどのオキシ基などである。好ましい実施形態では、Yはポリマーの製造に用いられる反応体及び反応条件に対して不活性であるとともにそれらによって影響されない。
【0026】
Eの好適な例としては、シクロペンチリデン、シクロヘキシリデン、3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン、メチルシクロヘキシリデン、2−[2.2.1]−ビシクロヘプチリデン、ネオペンチリデン、シクロペンタデシリデン、シクロドデシリデン、アダマンチリデンなど、スルフィド、スルホキシド又はスルホンのようなイオウ含有結合、ホスフィニル、ホスホニルのようなリン含有結合、エーテル結合、カルボニル基、第三窒素基、及びシラン又はシロキシ結合のようなケイ素含有結合が挙げられる。
【0027】
が上記式(II)で表される式(I)の芳香族ジヒドロキシコモノマー化合物において、2以上のY置換基が存在する場合には、それらのY置換基は同一でも異なるものでもよい。R置換基についても同様である。式(II)で「s」が0で「u」が0以外のときは、芳香環は、アルキリデンその他の橋かけ基を介さずに直接結合する。炭化水素残基の2以上の環炭素原子がY基及びヒドロキシル基で置換されている場合には、芳香核残基G上でのヒドロキシル基及びYの位置はオルト位、メタ位又はパラ位で種々異なっていてもよく、それらの基はビシナル、非対称又は対称な関係のいずれにあってもよい。幾つかの実施形態では、パラメーター「t」、「s」、及び「u」は各々1であり、両G基共に非置換フェニレン基であり、Eはイソプロピリデンのようなアルキリデン基である。特定の実施形態では、両G基共にp−フェニレンであるが、両方共o−又はm−フェニレンであってよいし、一方がo−若しくはm−フェニレンで、他方がp−フェニレンであってもよい。
【0028】
式(I)の芳香族ジヒドロキシ化合物の非限定的な具体例を幾つか挙げると、米国特許第4217438号に名称又は式(一般式又は特定式)で開示されているジヒドロキシ置換芳香族炭化水素がある。芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの具体例を幾つか挙げると、4,4′−(3,3,5−トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール、4,4′−ビス(3,5−ジメチル)ジフェノール、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−5−ニトロフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,6−ジメチル−3−メトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−2−クロロフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(一般にビスフェノールAという)、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−エチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−イソプロピルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5,3′,5′−テトラクロロ−4,4′−ジヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルプロパン、2,4′−ジヒドロキシフェニルスルホン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、ヒドロキノン、レゾルシノール、及びC1−3アルキル置換レゾルシノールがある。
【0029】
また、適当な芳香族ジヒドロキシコモノマー化合物には、3−(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,3−トリメチルインダン−5−オール、及び1−(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン−5−オールのようなインダン構造単位を含有するものもある。
【0030】
さらに、適当な芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーとしては、次の式(III)の2,2,2′,2′−テトラヒドロ−1,1′−スピロジオールも挙げられる。
【0031】
【化5】

【0032】
式中、各Rは独立に一価炭化水素基及びハロゲン基から選択され、各R、R、R及びR10は独立にC1−6アルキルであり、各R11及びR12は独立に水素又はC1−6アルキル基であり、各nは独立に0〜3の値を有する正の整数から選択される。好ましい実施形態では、2,2,2′,2′−テトラヒドロ−1,1′−スピロ−ジオールは2,2,2′,2′−テトラヒドロ−3,3,3′,3′−テトラメチル−1,1′−スピロビ[1H−インデン]−6,6′−ジオール(「SBI」ともいう。)である。
【0033】
本発明の様々な実施形態で用いる「アルキル」という用語は、直鎖アルキル、枝分れアルキル、アラルキル、シクロアルキル及びビシクロアルキル基をいう。直鎖及び枝分れアルキル基は、特記しない限り、炭素原子数約1〜約40のものであり、非限定的な具体例として、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、第三−ブチル、ペンチル、ネオペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル及びドデシルがある。様々な実施形態では、シクロアルキル基は環炭素原子数約3〜約12のものである。これらのシクロアルキル基の非限定的な具体例を幾つか挙げると、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、メチルシクロヘキシル及びシクロヘプチルがある。様々な実施形態では、アラルキル基は炭素原子数約7〜14のものであり、特に限定されないが、ベンジル、フェニルブチル、フェニルプロピル及びフェニルエチルが挙げられる。他の様々な実施形態では、本発明で使用する芳香族基は、環炭素原子数約6〜約12の単環式又は多環式部分をいう。これらのアリール基はまた、環炭素上に1以上の置換ハロゲン原子又はアルキル基を有していてもよい。大半の実施形態では、存在するいかなる置換基も、フェノール系芳香族基のような適当な芳香族基が、モノテルペンのような適当なオレフィン性基と反応するのを妨げるような環上の位置にない。これらの芳香族基の非限定的な具体例を幾つか挙げると、フェニル、ハロフェニル、ビフェニル及びナフチルがある。別の実施形態では、本発明で使用する芳香族基は炭素原子数約7〜14のアラルキル基をいう。
【0034】
本発明の様々な実施形態には、次式(IV)の1種類以上の炭酸ジエステルも含まれる。
【0035】
【化6】

【0036】
式中、各Zは独立に非置換若しくは置換アルキル基、又は非置換若しくは置換アリール基である。Z上に置換基が存在する場合、置換基としては、特に限定されないが、1以上のアルキル、ハロゲン、クロロ、ブロモ、フルオロ、ニトロ、アルコキシ、アルコキシカルボニル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル及びシアノが挙げられる。適当な炭酸ジエステルとしては、ジアリールカーボネート、ジアルキルカーボネート、アリール−アルキル混成カーボネート、例えばジフェニルカーボネート、ビス(2,4−ジクロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4,5−トリクロロフェニル)カーボネート、ビス(2−シアノフェニル)カーボネート、ビス(o−ニトロフェニル)カーボネート、(o−カルボメトキシフェニル)カーボネート、(o−カルボエトキシフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、ジブチルカーボネート及びジシクロヘキシルカーボネート、並びにこれらの2種以上の組合せがある。これらの化合物を2種以上利用する場合、好ましくはジフェニルカーボネート類の1種がジフェニルカーボネート化合物である。
【0037】
ポリカーボネートの製造に当たり、上記芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーは単独で使用してもよいし、又は2種以上の異なる芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの混合物として使用してもよい。ある特定の実施形態では、ポリカーボネートの製造に適した芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーは、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(慣用名:ビスフェノールA又は「BPA」。)、並びに2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、4,4′−(1−デシリデン)−ビスフェノール、及び2,2−ビス(3−sec−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、又はこれらの芳香族ジヒドロキシ化合物を1種類以上含む組合せである。
【0038】
溶融エステル交換法によるポリカーボネートの製造に当たっては、炭酸ジエステルの量は、精製DMBPCと芳香族ジヒドロキシコモノマーの組合せ1モルを基準にして約0.95〜約1.30モルであるのが好ましく、約1.05〜約1.15モルであるのがさらに好ましい。
【0039】
適当な溶融エステル交換触媒としては、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、テトラオルガノアンモニウム化合物、テトラオルガノホスホニウム化合物、これらの触媒を1種類以上含む組合せがある。
【0040】
アルカリ金属化合物又はアルカリ土類金属化合物の具体例としては、アルカリ金属及びアルカリ土類金属の有機酸塩、無機酸塩、酸化物、水酸化物、水素化物及びアルコラートがある。好ましくは、触媒は式Mのアルカリ金属化合物であり、式中、Mはリチウム、ナトリウム及びカリウムからなる群から選択され、Xはヒドロキシド及びOArからなる群から選択され、Arは一価芳香族基である。
【0041】
さらに具体的には、アルカリ金属化合物の例としては、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、ヒドロキシホウ酸リチウム、ヒドロキシホウ酸ナトリウム、フェノキシホウ酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、安息香酸カリウム、安息香酸リチウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二リチウム、ビスフェノールAの二ナトリウム塩、二カリウム塩、及び二リチウム塩、並びにフェノールのナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩などが挙げられる。
【0042】
アルカリ土類金属化合物の具体例としては、特に限定されないが、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム、水酸化ストロンチウム、重炭酸カルシウム、重炭酸バリウム、重炭酸マグネシウム、重炭酸ストロンチウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸ストロンチウム、酢酸カルシウム、酢酸バリウム、酢酸マグネシウム、酢酸ストロンチウム、ステアリン酸ストロンチウムなどが挙げられる。
【0043】
他の実施形態では、触媒は好ましくは式RNYのテトラオルガノアンモニウム化合物であり、式中、RはC〜Cアルキル基であり、Yはヒドロキシド、アセテート又はOArであり、Arは一価芳香族基である。さらに他の実施形態では、触媒は式RPYのテトラオルガノホスホニウム化合物であり、式中、RはC〜Cアルキル基であり、Yはヒドロキシド、アセテート又はOArであり、Arは一価芳香族基である。
【0044】
テトラオルガノアンモニウム化合物及びテトラオルガノホスホニウム化合物の具体例としては、特に限定されないが、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化テトラエチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウムなどが挙げられる。
【0045】
以上の触媒はいずれも2種以上の物質の組合せとして使用することができる。触媒は各種の形態で添加できる。触媒は固体として、例えば粉末として添加してもよいし、或いは溶媒、例えば水若しくはアルコールに溶解してもよい。全触媒組成物は好ましくは精製DMBPCと芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの組合せ各1モルに対して約1×10−7〜約2×10−3モルであり、さらに好ましくは約1×10−6〜約4×10−4モルである。
【0046】
溶融重合は1以上の段階を含むプロセスで達成することができる。一段階法では、上記触媒の存在下で、精製DMBPC、芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー及び炭酸ジエステルの溶融重縮合によってポリカーボネートを製造する。使用する反応器はガラス又は金属のいずれかでできたものでよい。適宜、反応器の壁面を、適当な酸性物質での処理によって不動態化する。重合をガラス製反応器で実施するのが望ましい場合、ガラス製反応器は水性酸媒質中に浸漬することによって反応器の壁面を不動態化することができる。様々な実施形態では、不動態化用の酸としては、塩酸、硫酸、硝酸などの鉱酸、及び酢酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸などの有機酸の水溶液がある。
【0047】
重合反応の反応体は、固体又は溶融形態のいずれかで反応器中に仕込むことができる。反応器中への反応体の最初の仕込み及びその後の重合反応性条件下におけるこれらの物質の混合は好ましくは不活性ガス雰囲気、例えば窒素雰囲気中で実施される。反応混合物の混合は攪拌のような当技術分野で公知の方法で実施される。本明細書で反応性条件とは、反応体の重合をもたらす時間、温度、圧力その他の要因を含む条件をいう。
【0048】
重合は上記反応混合物を一連の温度−圧力−時間プロトコルに付すことによって行う。例えば、反応温度を段階的に上昇させながら、同時に圧力を段階的に低下させてもよい。好ましくは、圧力は反応開始時の大気圧付近から、大気圧付近〜約0.01mbarの圧力、さらに好ましくは大気圧付近〜約0.05mbarの圧力、さらに一段と好ましくは約300〜約0.05mbarの圧力にする。温度は好ましくは反応混合物の略融解温度〜約350℃であり、約180〜約230℃がさらに好ましく、約230〜約270℃がさらに一段と好ましく、約270〜約350℃が最も好ましい。この手順で一般に反応体が適切に反応して、所望の分子量、所望のガラス転移温度、その他所望の物理的性質を有するポリカーボネートが確実に生成する。反応が進行してポリマー鎖が生成すると同時にフェノール副生物が生成する。真空にするとフェノール副生物が効率的に除去され、高分子量ポリカーボネートを製造することができる。フェノールを効率的に除去しないと、フェノールが重合触媒の存在下で成長ポリマー鎖を開裂させ、低分子量ポリマーが生成してしまう。反応は反応混合物の溶融粘度又は重量平均分子量の測定によってモニターできる。所望の溶融粘度及び/又は分子量に達した後、最終ポリカーボネート生成物を固体又は溶融形態で反応器から単離することができる。
【0049】
ポリカーボネートの製造プロセスは回分式、半回分式又は連続式のいずれかで実施し得る。反応の実施には当技術分野で公知のいかなる反応装置を使用してもよい。
【0050】
精製DMBPCモノマーから溶融重合で製造されたポリカーボネートは好ましくは、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、約30000ダルトン以上の重量平均分子量を有するが、約35000ダルトン以上が好ましく、約40000ダルトン以上がさらに好ましい。
【0051】
界面重合は、1種類以上のハロゲン含有溶媒中、連鎖停止剤として適当な一価フェノールの存在下で、ホスゲンと精製DMBPCと次式の1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーとを反応させることによって実施される。
【0052】
【化7】

【0053】
式中、Aは二価置換及び非置換芳香族基からなる群から選択される。
【0054】
一価フェノール連鎖停止剤は好ましくは式R(C)OHを有する。式中、Rは水素並びにC〜C12線状及び枝分れアルキル及びシクロアルキル基からなる。好ましい実施形態では、連鎖停止剤は4−クミルフェノールである。
【0055】
界面重合の実施に用いられる溶媒は1種類以上のハロゲン含有溶媒からなる。使用し得る適当な溶媒の例としては、特に限定されないが、ジクロロメタン、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、クロロベンゼンなどがある。
【0056】
初期反応段階及び重合反応の進行中pHの調節にアルカリ金属水酸化物が必要である。一般に、アルカリ金属水酸化物は水溶液として重合仕込み材料及び反応混合物中に導入する。或いは、水と固体形態のアルカリ金属水酸化物も使用することができる。好ましくは、アルカリ金属水酸化物は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及びこれらのアルカリ金属水酸化物を1種類以上含む組合せである。
【0057】
精製DMBPCと芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの完全な変換を達成するため、重合反応器中に導入されるホスゲンの必要量は、精製DMBPCと芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの総モル数に対して略化学量論量〜約50モル%過剰であり、約30モル%過剰がさらに好ましい。
【0058】
界面重合法及び精製DMBPCで製造されたポリカーボネートは、ポリスチレン標準を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定して、約30000ダルトン以上の重量平均分子量、約0.5〜約1.5ppmのクロロホルメート含量を有し、重量平均分子量が約35000ダルトン以上でクロロホルメート含量が約0.5〜約1.5ppmであるのが好ましく、重量平均分子量が約40000ダルトン以上でクロロホルメート含量が約0.5〜約1.5ppmであるのがさらに一段と好ましい。他の実施形態では、界面重合法及び精製DMBPCで製造されたポリカーボネートは、重量平均分子量が約35000以上でクロロホルメート含量が約0.5〜約1.5ppmであり、重量平均分子量が約35000以上でクロロホルメート含量が約0.5〜約1.0ppmであるのがさらに好ましい。
【0059】
精製DMBPCを用いてポリカーボネートを製造する界面法は、まずDMBPCをビスクロロホルメートに変換した後、ビスクロロホルメートを芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー組成物と反応させることによって実施することもできる。
【0060】
溶融重合法及び界面重合法で製造されるポリカーボネート組成物は、ジヒドロキシ芳香族化合物コモノマーから誘導されたカーボネート構造単位に加えて、精製DMBPCから誘導された次式(V)のカーボネート構造単位を含む。
【0061】
【化8】

【0062】
その他の実施形態では、ポリカーボネートは次式(VI)に示す群から選択される1以上のカーボネート構造単位を含む。
【0063】
【化9】

【0064】
式中、Aは二価芳香族基である。
【0065】
本発明のポリカーボネート組成物は例えば、光学物品及びディスプレイデバイス用フィルムのような様々な物品の製造に有用である。光学物品は高密度データ記憶媒体のような各種記録媒体を被覆する保護透明層として機能することができる。界面法で製造されたポリカーボネートは比較的低いクロロホルメート含量(約1.5ppm未満)を有する。これは工業上有利である。クロロホルメート含量が低いと、物品の製造に用いられるミキサー、ニーダー、ロールミル、押出機などの加工処理装置における腐蝕が低減すると期待されるからである。
【実施例】
【0066】
以下の非限定的な実施例で本発明をさらに例示する。
【0067】
重量平均分子量(M)及び数平均分子量(M)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した。記載した値はポリスチレン標準に対して測定したものである。触媒組成物は、水性水酸化ナトリウムの原液及び25重量%水性水酸化テトラメチルアンモニウムの適当な部分標本を採ることによって調製した。純度はHPLCを用いて測定したが、純度測定の際の実験誤差は±0.66%で、99%の信頼性であった。
【0068】
実施例1
この実施例では、o−クレゾールとシクロヘキサノンのHClガス触媒縮合による粗DMBPCの調製について説明する。
【0069】
オーバーヘッドメカニカルスターラー、ガス導入口、滴下漏斗、温度計及び水性水酸化ナトリウムスクラバー溶液を含有するスクラバーに通気した還流冷却器を備えた2リットルの三ツ首丸底フラスコを組み立てた。この装置を窒素でフラッシングし、熱線銃を用いて約45℃に予熱した。次に、反応器にo−クレゾール(1091.4g)を仕込んだ。メカニカルスターラーを始動させた後、(185gの塩化ナトリウムと110gの濃硫酸の反応により瞬時に発生させた)乾燥塩化水素ガスを反応混合物中に導入して泡立たせ、反応器内の雰囲気が曇って見えるまでガス分散により攪拌した。この混合物を約2時間にわたって攪拌を続けながらシクロヘキサノン(196.3g)で滴下処理した。反応は発熱を伴って進行した。溶液の温度は、シクロヘキサノンの添加中及びその後加熱油浴を用いて約60℃に維持した。反応の進行は、ガスクロマトグラフィーを用いてシクロヘキサノンの消失を追跡することによってモニターした。約24時間攪拌した後、反応混合物を約1.5時間窒素でスパージして塩化水素蒸気を除去した。反応混合物上方のヘッドスペースが透明になったとき、反応混合物を室温に冷却し、ブフナー漏斗を用いて濾過した。湿ったフィルターケーキを吸引乾燥し、1リットルの丸底フラスコに移し、メカニカルスターラーを用いて約40分かけて500mlのジクロロメタンによりスラリー化した。得られた懸濁液を濾過し、フィルターケーキをジクロロメタン(250ミリリットル(ml))で洗浄し、吸引乾燥し、次いで90℃、約30mbar水銀に維持した真空オーブン中で一晩乾燥した。粗DMBPCがピンクがかったパープル色の固体として約419gの収量(理論収率の約71%)で得られた。HPLCで測定した純度は98.2%であった。
【0070】
実施例2及び比較例3〜8
これらの例では、実施例1の粗DMBPCを、表1に示す各種溶媒系のいずれかを用いて結晶化するか、又は結晶化しようとした。
【0071】
まず粗DMBPCを第1の溶媒に溶解し、溶媒の還流温度付近まで加熱して第1の溶液を得た。第1の溶液を焼結ガラス漏斗に通して熱濾過した後、第1の溶媒の還流温度付近で第2の溶媒と混合した。単一の結晶化を用いる比較例では、第1の溶液を冷却し、結晶が生じた場合にはそれを収集した。第2の溶媒を用いる実施例では、冷却工程により、DMBPC生成物を結晶化させた。第3の溶媒を用いる例では、前の冷却工程で得られた結晶性DMBPCを還流温度付近で第3の溶媒に溶解し、その後放冷して結晶性DMBPC生成物を形成させた。
【0072】
こうして得られた結晶性DMBPCを次に溶融重合してポリカーボネートを形成した。ガラス製重合反応器は、1モル濃度の水性塩酸溶液を含有する浴に浸漬することによって不動態化した。24時間後、反応器を脱塩水で十分に濯ぎ、最終的に脱イオン水で十分に濯いで、あらゆる痕跡量の酸その他の汚染物を確実に除去した。次に、反応器を十分に乾燥し、適量の1種以上のビスフェノールモノマーとジフェニルカーボネートを仕込んだ。次いで、反応器を重合アセンブリに取付け、検査して漏れがないことを確認した。その後、上記のように調製した所要量の触媒溶液を注射器を用いて反応器中に導入した。次に反応器内部の雰囲気を真空源を用いて排気した後、窒素でパージした。このサイクルを三回繰り返した後、反応器の中味を加熱してモノマー混合物を溶融させた。
【0073】
一般的な重合手順では、50:50相対重量比のビスフェノールA(以下「BPA」ということがある)と適当な種類のDMBPCを溶融反応させた。全ての反応で、ジフェニルカーボネートと第2の結晶性DMBPC及びBPAの総モル数とのモル比を1.08とした。使用した触媒は、モル比1:100の水酸化ナトリウムと水酸化テトラメチルアンモニウムの混合物であった。各場合に、第2の結晶性DMBPCとBPAの組合せ1モル当たり2.5×10−4モルの水酸化テトラメチルアンモニウムを使用した。
【0074】
混合物の温度が約180℃に達したとき、反応器内の攪拌機を始動させ、約40〜約80rpmに調節して、固体塊全体を確実に十分溶融させた。この工程には通常約15〜約20分かかった。次に、反応混合物を約230℃に加熱する一方で、真空源を用いて反応器内部の圧力を約170mbarに調節した。この温度−圧力−時間条件をP1と称する。反応塊をこの条件で約1時間攪拌した後、反応温度を約270℃に上げながら圧力を約20mbarに再調節する。この条件(P2と称する。)に約30分維持した後、反応混合物の温度を約300℃に上げながら圧力を約1.5mbarに低下させる。これらの条件(P3と称する。)で約30〜約60分反応を進行させた後、反応器内部の圧力を大気圧にし、反応器を通気して過剰の圧力を除いた。
【0075】
生成物を単離するために、反応器底部のガラス製ニップルを破壊し、物質を回収した。生成物が非常に高分子量である場合には、反応器を窒素ガスで加圧することによって熱い溶融ポリマーを落下させた。
【0076】
結晶化したDMBPCを用いた重合工程の結果を表1に示す。反応体のモル比及び反応条件は各実施例及び比較例で同等であった。
【0077】
使用した溶媒系と得られた結果を表1に示す。用語「IPA」、「M」、「M」及び「PDI」はそれぞれイソプロパノール、重量平均分子量、数平均分子量、及び多分散度を表す。MとMについて示した値の単位はダルトンである。
【0078】
【表1】

【0079】
明らかにこの結果は、本発明の方法を用いて高分子量ポリカーボネートを作成することができることを示している。30000ダルトンを超える平均分子量を得ることができる。アルコール自体を使用するとDMBPCの結晶化は起こらなかった。これらの実施例は、様々な種類の結晶化DMBPCの純度が、溶融重合で得られるポリカーボネートの分子量と色に及ぼす効果を例証している。
【0080】
実施例9
この実施例では、実施例2の結晶化DMBPCを界面重合反応のモノマーとして使用してポリカーボネートを製造した。
【0081】
500mlのMortonフラスコに、第2の結晶性DMBPC(14.8g、50mmol)、BPA(11.4g、50mmol)、p−クミルフェノール(1.18g、5.5モル%)、200マイクロリットル(μl)のトリエチルアミン、ジクロロメタン(90ml)及び90mlの水を入れた。25重量%の水性水酸化ナトリウム溶液でpHを10.5に調節した。ホスゲンを0.6g/分の速度で13.3g(30モル%過剰)が加えられるまで加えた。次に、このポリマー溶液を30mlのジクロロメタンで希釈し、ジクロロメタン層を水層から分離し、水性塩酸で洗浄した後、水で洗浄した。熱水沈澱によってポリマーを単離し、110℃で乾燥した。平均重量分子量Mw=44400であった。
【0082】
その後、ポリカーボネート(0.2g)の試料をジクロロメタンに溶解し、4−ニトロベンジルピリジン(4−NBP)(1.0ml)の0.1規定ジクロロメタン溶液で処理し、約2時間攪拌した。紫外分光光度計を用いて440ナノメートルで紫外(UV)吸収を測定し、クロロホルメートの残留レベルは0.8ppmと決定された。
【0083】
有利なことに、メタノール−水溶媒系、次いでトルエンから精製したDMBPCを溶融法で重合すると、生成するポリカーボネートは他の溶媒系を用いて精製したDMBPC(比較例3〜8)と比べて高い分子量を有している。また、メタノール−水溶媒系、次いでトルエンから精製したDMBPCを界面法で重合させたところ、生成したポリカーボネートの分子量は、溶融重合法で得られたポリカーボネートの分子量の10%以内である。さらに、界面法で生成したポリカーボネート中の残留クロロホルメートが0.8ppmであるということは、TMBPC不純物の量が比較的低いことを示している。上記のように溶融法と界面法で作成されたポリカーボネートは、高まった物理的性質を有し、従って、より広範囲の用途が期待される。
【0084】
典型的な実施形態で本発明を例示し説明して来たが、本発明の思想からいかなる意味でも逸脱することなく様々な修正と置換をなすことができるので、本発明は本明細書に開示した個々の詳細に限定されるものではない。すなわち、本明細書に開示した本発明の別の修正や等価物は日常以上の実験を要することなく当業者には明らかであり、かかる修正や等価物は全て特許請求の範囲で定義される本発明の思想と範囲内に入るものと考えられる。本明細書で引用した特許は全て援用により本明細書の内容の一部をなす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの精製方法であって、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的にアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、
第1の溶液を濾過し、
濾過した第1の溶液に実質的に水からなる第2の溶媒を添加して、第1及び第2の溶媒の合計重量100部当たり約40〜約95部の第1の溶媒を含む第2の溶液を形成し、
第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を形成し、
第1の結晶性生成物を、芳香族化合物を含んでなる第3の溶媒に溶解して第3の溶液を形成し、
第3の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させる
ことを含んでなる方法。
【請求項2】
前記芳香族化合物が式R(C)Rからなる(式中、各R基、R基及びR基は独立に塩素、水素、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソ−ブチル及びtert−ブチル基からなる群から選択される。)、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記アルコールが式ROHを有する(式中、RはC〜Cアルキル基からなる。)、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを溶解させることが、略室温〜第1の溶媒の還流温度付近の温度に加熱することを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
結晶化して第1の結晶性生成物を生成させることが、第2の溶液を略室温〜約5℃の温度に冷却することを含む、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
略室温〜第2の溶媒の還流温度付近の温度で、第1の結晶性生成物を第3の溶媒に溶解させる、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることが、第3の溶液を略室温〜約5℃の温度に冷却することを含む、請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
第2の結晶性生成物が、1−(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)−1−(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジメチルフェニル)シクロヘキサン化合物と1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′,5′−ジメチルフェニル)シクロヘキサン化合物の組合せを、第2の結晶性生成物百万部当たり約250部未満含む、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
反応混合物の略融解温度〜約350℃の温度で該反応混合物を溶融反応させてポリカーボネート生成物を生成させることを含んでなるポリカーボネートの製造方法であって、上記反応混合物が、
アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、テトラオルガノアンモニウム化合物、テトラオルガノホスホニウム化合物及びこれらの触媒を1種以上含む混合物からなる群から選択される触媒組成物と、
式(ZO)C=Oの炭酸ジエステル(式中、各Zはフェニル、2,4−ジクロロフェニル、2,4,5−トリクロロフェニル、2−シアノフェニル、o−ニトロフェニル、(2−メトキシカルボニル)フェニル、(2−エトキシカルボニル)フェニル)、トリル、m−クレジル、ナフチル、エチル、メチル、ブチル、シクロヘキシル及びこれらの基を1種以上含む組合せからなる群から選択される。)と、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的に水及びアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を生成させ、第1の結晶性生成物を式R(C)Rの化合物を含む第2の溶媒に溶解して第2の溶液を形成し、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることによって得た1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの第2の結晶性生成物と、
次式の1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー
【化1】

(式中、Aは二価置換及び非置換芳香族基からなる群から選択される。)と
を含んでなり、
上記触媒組成物の量が第2の結晶性生成物及び1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの各1モルに対して約1×10−7〜約2×10−3モルであり、炭酸ジエステルが第2の結晶性生成物及び1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの総モル数に対して約0.95〜約1.30のモル比である、方法。
【請求項10】
約5〜約50℃の温度及び約9.5〜約11.0の初期pHで反応混合物を界面反応させてポリカーボネート生成物を生成させることを含んでなるポリカーボネートの製造方法であって、上記反応混合物が、
ホスゲンと、
式R(C)OHの置換又は非置換一価フェノール(式中、Rは水素並びにC〜C12線状及び枝分れアルキル及びシクロアルキル基からなる。)と、
式RNの第三アミン(式中、R、R、及びRはC〜C12線状及び枝分れアルキル基から選択される。)と、
1種類以上のハロゲン含有炭化水素溶媒と、
水と、
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、及び水酸化セシウムからなる群から選択されるアルカリ金属水酸化物と、
1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを実質的に水及びアルコールからなる第1の溶媒に溶解して第1の溶液を形成し、第1の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第1の結晶性生成物を生成させ、第1の結晶性生成物を式R(C)Rの化合物を含む第2の溶媒に溶解して第2の溶液を形成し、第2の溶液から1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンを結晶化して第2の結晶性生成物を生成させることよって得た1,1−ビス(4′−ヒドロキシ−3′−メチルフェニル)シクロヘキサンの第2の結晶性生成物と、
次式の1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマー
【化2】

(式中、Aは二価置換及び非置換芳香族基からなる群から選択される。)と
を含んでなり、
ホスゲンを、第2の結晶性生成物及び1種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物コモノマーの総モル数に対して略化学量論〜約50モル%過剰の量で使用する、方法。

【公表番号】特表2006−504782(P2006−504782A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−549942(P2004−549942)
【出願日】平成15年9月5日(2003.9.5)
【国際出願番号】PCT/US2003/028113
【国際公開番号】WO2004/041761
【国際公開日】平成16年5月21日(2004.5.21)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】