説明

1,2−プロパンジオールの製法

本発明は、グリセロール−含有流、殊に、バイオディーゼルの製造において工業的規模で得られる流れを水素添加させる、1,2−プロパンジオールの製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリセロール−含有流、特に、バイオディーゼルの製造において工業的規模で得られる流れを水素添加させる、1,2−プロパンジオールの製法に関する。
【0002】
鉱油備蓄の減少及び燃料価格の増加は、経済的及び環境的に友好的な択一による、鉱油をベースとして製造される燃料の代替における大きな関心になっている。生物発生の脂肪−又は油−含有出発混合物からの燃料の製法及び取得された、例えば、レストランで使用される油及び動物性脂肪は長い間公知であり、菜種油は、生物発生燃料の製造での出発物質として、現在のところ、主に中央ヨーロッパで使用されている。生物発生油及び脂肪それ自体は、一般的に複雑な方法によって、前以て精製されなければならないので、機関燃料としてはあまり好適ではない。これらは、レシチン、炭水化物及びタンパク質の除去、いわゆる、オイルスラッジの除去及び、例えば、菜種油中に比較的に大量に存在する遊離脂肪酸の除去を包含する。それにもかかわらず、この方法で処理される植物油は、幾つかの点で、慣例的ディーゼル燃料の技術的特性と異なる。従って、これらは、通例、ディーゼル燃料より高い比重を有し、菜種油のセタン価は、ディーゼル油のそれよりも低く、かつその粘度はディーゼル油のそれに比較して数倍も高い。このことは、燃料特性における受け入れ難い悪化、例えば、機関の不均一のランニング特性、実際に増加する騒音放出及び、高粘度を原因とする、燃焼室でのより貧弱な噴霧化及び燃焼に結び付く。従って、慣例的な機関では、純粋な植物油の使用は、増加した粒子放出と関連したコーキングに結び付く。これらの問題は、生物発生油中に存在するトリグリセリド(グリセロールの脂肪酸エステル)及び脂肪出発混合物を及び脂肪出発混合物を、脂肪酸のモノアルキルエステル、特に、メチル又はエチルエステルに変換させることによって解明され得る。"バイオディーゼル"とも称するこれらのエステルは、通例、大改装のないディーゼル機関で使用され得て、しばしば、普通のディーゼル燃料と比較して、不燃焼炭化水素及び煤粒子の放出を減少させることですら可能である。バイオディーゼル製造のためのトリグリセリドのエステル交換は、グリセロールも生じさせ(≒10%)、これは、経費−効率及び持続可能性の2つの理由で使用されるべきである。従って、バイオディーゼル製造で得られるグリセロールの利用も可能とする有効かつ経済的な方法が必要である。これらの方法は、特に、工業的規模で得られる更なるグリセロール流の利用にも好適であるべきである。
【0003】
US2360844は、粗製グリセリドをC〜C−アルカノールとエステル交換させ、遊離グリセロールをモノアルキルエステルから分離させる石鹸の製法を記載している。得られるグリセロールの利用は記載されていない。
【0004】
US5354878は、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換による低残留グリセロール含量を有する高級脂肪酸の低アルキルエステルの製法及びディーゼル燃料としてこのエステルの使用を記載している。
【0005】
DE10243700A1は、酸性エステル化及び塩基性エステル交換の組合せによる、遊離脂肪酸を含む脂肪酸トリグリセリド出発混合物から、高級脂肪酸のアルキルエステル、特に、バイオディーゼルの無圧製法を記載している。エステル交換で得られるグリセロールは、遊離脂肪酸のエステル化で、共留剤として部分的に使用される。
【0006】
比較的高いヒドリシティー(hydricity)を有するアルコールを、触媒的水素添加によって、低ヒドリシティーを有するアルコールに変換し得ることは公知である。従って、ドイツ国特許第524101号は、特に、著しく過剰の水素を用いて、水素添加触媒が存在して、グリセロールを気相水素添加させる方法を記載している。詳細には、Crで活性化される銅又はコバルト触媒を、グリセロールの水素添加に使用する。
【0007】
ドイツ国特許第541362号は、150℃以上の高温度及び過圧下で、触媒が存在して、ポリオキシ化合物、例えば、グリセロールの水素添加法を記載している。詳細には、200〜240℃の温度及び100atmの水素圧で、ニッケル触媒を用いる、グリセロールの水素添加が記載されている。
【0008】
R.Connor及びH.Adkinsは、J.Am.Chem.Soc.54,1932,4678−4690頁に、銅−クロム−バリウム−オキシド触媒が存在して、酸素−含有の有機化合物、特に、98%濃度のグリセロールの、1,2−プロパンジオールへの水素添加が記載されている。
【0009】
C.Montassier他は、Bulletin de la Societe Chimique de France 1989,No.2,148−155頁に、様々な金属触媒が存在して、ポリオール、例えば、ラネー銅が存在して、グリセロールを触媒的水素添加させる反応機構の研究を記載している。
【0010】
J.Chaminand他は、Green Chem.6,2004,359−361頁に、Cu、Pd及びRhをベースとする支持金属触媒が存在して、180℃及び80バール水素圧で、グリセロール水溶液の水素添加を記載している。
【0011】
DE4302464A1は、グリセロールを、不均一触媒が存在して、20〜300バールの圧力で、特に、100〜250バールで、かつ150〜320℃の温度で水素添加させることによることによる、1,2−プロパンジオールの製法を記載していて、グリセロールを蒸気又は液体形で触媒床上を通過させる。特に、クロム酸銅、酸化亜鉛銅、酸化アルミニウム銅及び二酸化珪素銅が触媒として挙げられる。バイオディーゼル製造からのグリセロール−含有流の使用及びそのような流れを水素添加に使用する前の、予備処理のための測定は、この文書には記載されていない。
【0012】
EP0523015は、少なくとも200℃の温度で、Cu/Zn触媒が存在して、1,2−プロパンジオール及び1,2−エタンジオールの製造のためのグリセロールの触媒的水素添加法を記載している。この方法で、グリセロールは、グリセロール含量20〜60質量%を有する水溶液として使用され、操作中の最高グリセロール含量は、例えば、40質量%である。
【0013】
WO2005/095536は、グリセロールをプロピレングリコールへ変換するための低圧法を記載していて、この際、50質量%以下の水含量を有するグリセロール−含有流を、150〜250℃範囲の温度及び1〜25バールの範囲の圧力で触媒的水素添加させる。
【0014】
M.A.Dasari他は、Appl.Chem.A:General 281,2005,225−231頁に、ニッケル、パラジウム、白金、銅又はクロム酸銅触媒が存在して、200℃の温度及び200psi(13.79バール)の水素圧で、グリセロールのプロピレングリコールへの低圧−水素添加法を記載している。異なった反応パラメーター、例えば、特に、使用されるグリセロールの水含量が試験された。水含量が減少すると共に変換は増加するが、最高の選択性は、この低圧法では、水含量20質量%で達成された。
【0015】
US5616817は、高温度及び過圧でグリセロールの触媒的水素添加による1,2−プロパンジオールの製法を記載していて、この際、20質量%以下の水含量を有するグリセロールを、コバルト、好適な場合には、マンガン及び/又はモリブデン40〜70質量%及び10〜20質量%の低い銅含量を含む触媒が存在して反応させる。温度は約180〜270℃の範囲であり、かつ圧力は100〜700バール、有利に200〜325バールの範囲である。
【0016】
本発明の目的は、高い選択性及び/又は低いエネルギー消費で、要求通りに、例えば、水を分離して、グリセロール−含有流の水素添加を可能にする1,2−プロパンジオールの製法を得ることである。特に、本方法は、工業的規模で得られる、例えば、高級脂肪酸のアルキルエステルの製造のための、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換で得られるグリセロール流の更なる方法に好適である。
【0017】
従って、本発明は、1,2−プロパンジオールの製法に関し、この際、
a)グリセロール−含有流を得て、かつ
b)そのグリセロール−含有流を、銅−含有の不均一系触媒が存在して、100〜320℃の温度及び100〜325バールの圧力で水素添加させる。
【0018】
段階b)で得られる水素添加生成物を、好適な場合には、少なくとも1つの後処理段階(段階c))に従わせることができる。
【0019】
原則的に、工業的に実施される方法からのそれらを含む及びそこで生じる純粋物を有する全てのグリセロール−含有流は、本発明による方法での使用に好適である。これらは、特に、例えば、石鹸製造、脂肪酸及び脂肪酸エステル製造などからの、油−及び/又は脂肪−含有出発物質の処理からのグリセロール−含有流を含む。段階a)で得られるグリセロール−含有流は、特に"バイオディーゼル"の製造で得られるような、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換による高級脂肪酸のアルキルエステルの製造で得られるグリセロール−含有流であることが有利である。本発明による方法のこの実施態様は、更に詳細に後記されている。
【0020】
段階a)で使用されるグリセロール−含有流は、有利に、水含量30質量%以下、有利に20質量%以下を有する。グリセリルモノヒドレートに相応する水含量(水含量16.3質量%)又は以下が特に有利である。特別な実施態様で、実質的に無水であるグリセロール−含有流が使用される。本発明に関して、"実質的に無水"とは、3質量%以下、特に有利に1質量%以下の水含量を意味すると解される。30質量%まで、特に20質量%までの範囲の水含量を有するグリセロール−含有流の使用は、水素添加に使用される温度及び圧力範囲で、高収率で及び高選択率で、1,2−プロパンジオールの製造を可能にする。実質的に無水ではないグリセロール−含有流及び特にグリセリルモノヒドレートよりも高い水含量を有する流れの水素添加は、同様に高収率及び高選択率で可能であるが、減少された空時収率に起因して、経済性が低い。それにもかかわらず、3〜30質量%の範囲の水含量は、水素添加の間の流動特性に有利であり得る。従って、本発明による方法の特別な1実施態様は、水素添加の間の粘度を減少させるために、3〜30質量%、有利に5〜20質量%の範囲の水含量を有するグリセロール−含有流の使用に関する。
【0021】
グリセロール−含有流は、少なくとももう1種の、有利にグリセロール−混合可能な(及び、従って、通例、同様に水−混合可能な)有機溶剤を、水の代わりに又は水に加えて有することができる。段階a)で得られるグリセロール−含有流は、有利に、全溶剤含量20質量%以下、特に有利に15質量%以下、殊に10質量%以下及び特に5質量%以下を有する。水及び少なくとも1種のグリセロール−又は水−混合可能な有機溶剤を含む溶剤混合物を使用する場合には、有機溶剤の比率は、溶剤の全質量に対して、有利に50質量%以下、特に有利に20質量%以下である。好適なグリセロール−混合可能な有機溶剤は、C〜C−アルカノール、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、ポリオール及びそれらのモノ−及びジアルキルエーテル、環状エーテル、例えば、ジオキサン及びテトラヒドロフランなどである。他の好適な溶剤は、芳香族炭化水素、例えば、ベンゼン、トルエン又はキシレンである。有利な有機溶剤は、C〜C−アルカノール、殊に、メタノール及び/又はエタノール、及び水とのそれらの混合物である。しかし、段階a)で使用されるグリセロール−含有流は、有機溶剤を含有しないことが有利である。
【0022】
段階a)で得られるグリセロール−含有流を、少なくとも1つの後処理段階に従わせることができる。これは、例えば、不所望の成分を除去するための少なくとも1つの精製段階を包含する。これは、更に、水及び/又は、存在する場合には、有機溶剤の含量の減少を包含する。
【0023】
グリセロール−含有流は、その起源によって、不所望の成分として、無機塩を含有することもある。これらは、粗グリセロールから、下記の後処理によって除去され得る。熱的後処理(例えば、サムベイ(Sambay)蒸発器の使用で)が、この目的に特に好適である。
【0024】
グリセロール−含有流は、その起源によって、触媒毒、即ち、水素添加触媒を不活性化させることによって水素添加に不利に作用する成分も含有し得る。これらは、例えば、窒素−含有化合物、例えば、アミン、及び硫黄−含有化合物、例えば、硫酸、硫化水素、チオアルコール、チオエーテル、例えば、硫化ジメチル及び二硫化ジメチル、硫化酸化炭素、アミノ酸、例えば、硫黄及び付加的な窒素基を含むアミノ酸、脂肪酸及びそれらの塩などを包含する。触媒毒は、更に、ハロゲン化合物、慣例の抽出剤、例えば、アセトニトリル又はN−メチルピロリドンの痕跡量など、及び、好適な場合には、有機燐及び砒素化合物を包含する。油及び脂肪精製からのグリセロール−含有流中にしばしば存在する触媒毒は、エステル化又はエステル交換で触媒として使用される硫酸である。
【0025】
例えば、熱的後処理、有利に、蒸留、吸着、イオン交換、膜分離法、結晶化又は抽出又はこれらの方法の、2つ以上の組合せを、段階a)でのグリセロール−含有流を後処理するために使用することができる。一定孔度の膜を使用する膜分離法は、水含量の減少及び/又は塩除去に特に好適である。また結晶化は、冷却面上でのグリセロール−含有流の部分凍結も意味すると解される。こうして、固相中に累積する不純物を除去することが可能である。
【0026】
第一実施態様で、段階a)でのグリセロール−含有流は、水含量を減少させる及び/又は触媒的水素添加に不利に作用する成分を除去するために蒸留される。これは、原則的に、当業者に公知の慣例の蒸留法によって行なわれ得る。蒸留的後処理の好適な装置は、蒸留カラム、例えば、蓋、篩プレート、篩トレー、積層充填体、堆積充填体、弁、側口などを供え得るトレーカラム、蒸発器、例えば、薄膜式蒸発器、流下液膜式蒸発器、強制循環式蒸発器、サムベイ蒸発器など、及びそれらの組合せを含む。硫酸の除去は、単純蒸留、殊に、短行程蒸留の結果としても起こる。
【0027】
好適な分離法は、次の文書に記載されている:Sattler,Klaus:Thermische Trennverfahren,3rd edition,Wiley VCH,2001;Schluender E.U.,Thurner F.;Destillation,Absorption,Sxtraktion,Springer Verlag,1995;Mersmann,Alfons:Thermische Verfahrenstechnik,Springer Verlag,1980;Grassmann P.,Widmer F.:Einfuehrung in die thermische Verfahrenstechnik,de Gruyter,1997; Weiss S.,Militzer K.−E.,Gramlich.:Thermische Verfahrenstechnik,Dt.Verlag fuer Grundstoffindustrie,Leipzig,Stuttgart,1993。これらの文書に参照される。
【0028】
もう1つの実施態様で、段階a)でのグリセロール−含有流は、硫黄−含有化合物、特に硫黄−含有芳香族化合物の含量を減少させるために、好適な場合には、水素の存在下で、触媒的に脱硫される。好適な脱硫剤は、金属成分を含み、この際、金属は、元素の周期律表の6、7、8、9、10、11及び12族の金属から有利に選択される。金属は、殊に、Mo、Ni、Cu、Ag、Zn及びそれらの組合せから選択される。更なる脱硫剤の好適な成分は、ドーピング剤である。金属成分は、酸化形で、還元形で及び酸化及び還元成分を含む混合物の形で使用され得る。脱硫剤(1種以上の金属成分及び任意に1種以上のドーピング剤)の活性成分は、支持物質上に適用され得る。好適な支持体は、原則的に、次に挙げる吸着剤及び触媒支持体である。支持物質は、有利に、活性炭素、グラファイト、カーボンブラック、Al、SiO、TiO、ZrO、SiC、シリケート、ゼオライト、粘土(例えば、ベントナイト)及びそれらの組合せから選択される。少なくとも1種の金属成分及び任意に他の成分の支持物質への適用は、当業者に公知の方法によって、例えば、(共)−沈又は含浸によって実施され得る。脱硫剤は、幾何学的体形で、例えば、球状、環状、筒状、立方体、サイコロ状又は他の幾何学的体形で存在してよい。非支持脱硫剤は、慣例の造形法によって、例えば、押出法、タブレット化などによって造形され得る。支持脱硫剤の形は、支持体の形状によって決定される。脱硫剤は、例えば、圧縮筒状物、タブレット、菱形、車輪状、環状、星形又は押出物、例えば、固体押出物、多裂状押出物(例えば、三裂状)、中空押出物及び蜂巣状体形で使用され得る。銅及び亜鉛を原子比1:0.3〜1:10、有利に1:0.5〜1:3、殊に1:0.7〜1:1.5で含む有利な脱硫剤は、触媒的脱硫に有利に使用される。酸化銅35〜45質量%、酸化亜鉛35〜45質量%及びアルミナ10〜30質量%を含む脱硫剤が有利に使用される。特別な実施態様で、脱硫剤は、段階b)で水素添加触媒として使用可能な成分である。これに関して、前記の組成の水素添加触媒及びそれらの製法についての次の解明が参照される。
【0029】
この変法の1構成において、グリセロール−含有流を、少なくとも1つの脱硫帯域で、脱硫剤と接触させ、次いで、少なくとも1つの反応帯域で水素添加させる。
【0030】
脱硫及び1つ以上の反応帯域の詳細な構成及び配置は、任意の公知方法で行われ得ることは当業者に自明である。脱硫及び1以上の反応帯域を、空間的に互いに別々に配置させること、即ち、それらを装置の構成によって相互から構造的に分離させる又はそれらを1以上の普通の脱硫/水素添加帯域で実現することが可能である。
【0031】
銅−亜鉛脱硫剤は、例えば、慣例的な沈殿又は共沈法によって得られ、かつ酸化形でも、還元形でも使用され得る。
【0032】
特別な1実施態様で、銅−亜鉛脱硫剤は、少なくとも銅、亜鉛及びアルミニウムを含み、銅:亜鉛:アルミニウム原子比は、1:0.3:0.05〜1:10:2、有利に1:0.6:0.3〜1:3:1及び殊に1:0.7:0.5〜1:1.5:0.9の範囲である。
【0033】
還元形への変換のために、脱硫剤を水素還元させることが可能である。これは、水素の存在下で、約150〜350℃、有利に約150〜250℃で実施され、水素は、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン、又はメタン、殊に、窒素によって希釈され、従って、水素含量は10容量%以下、有利に6容量%以下、殊に0.5〜4容量%である。そうして得られる銅−亜鉛脱硫剤("還元形")は、この形で脱硫において使用され得る。
【0034】
1実施態様で、グリセロール−含有流の脱硫は、水素を添加せずに、酸化形の銅−亜鉛脱硫剤上で実施される。
【0035】
もう1つの実施態様で、グリセロール−含有流の脱硫は、水素の存在下で、酸化形の銅−亜鉛脱硫剤上で実施される。
【0036】
もう1つの実施態様で、グリセロール−含有流の脱硫は、水素を添加せずに、還元形の銅−亜鉛脱硫剤上で実施される。
【0037】
もう1つの実施態様で、グリセロール−含有流の脱硫は、水素の存在下で、還元形の銅−亜鉛脱硫剤上で実施される。
【0038】
通例、脱硫は、40〜200℃、殊に50〜180℃、特に60〜160℃、有利に70〜120℃の温度範囲で、1〜40バール、殊に1〜32バール、有利に1.5〜5バール、特に2.0〜4.5バールの圧力で実施される。脱硫は、不活性ガス、例えば、窒素、アルゴン又はメタンが存在して実施され得る。しかし、通例、脱硫は不活性ガスを添加せずに実施される。
【0039】
この際、通例、所望の場合には、純度≧99.8容量%、殊に≧99.9容量%、有利に99.95容量%を有する水素を使用する。これらの純度は、好適な場合には実施される触媒活性化で使用される水素にも同様に適応する。
【0040】
通例、グリセロール−含有流対水素の質量比は、40000:1〜1000:1の範囲、殊に38000:1〜5000:1の範囲、殊に37000:1〜15000:1の範囲、有利に36000:1〜25000:1の範囲、特別に35000:1〜30000:1の範囲である。
【0041】
こうして脱硫されるグリセロール−含有流は、通例、硫黄−含有不純物、特に芳香族硫黄化合物の含量70ppb以下、有利に50ppb以下を有し、全硫黄含量は、全体で≦200ppb、有利に≦150ppb、殊に≦100ppbである。
【0042】
前記の脱硫剤は、塩素、砒素及び/又は燐又は芳香族炭化水素から又は芳香族炭化水素の混合物からの相応する塩素、砒素−及び/又は燐−含有化合物を減少又は除去することも可能にする。
【0043】
もう1つの実施態様で、段階a)でのグリセロール−含有流を、触媒的水素添加に不利に作用する成分を除去するための少なくとも1つの吸着剤と接触させる。
【0044】
吸着剤は、一般に、BETにより測定される、約10〜2000m/gの範囲、有利に10〜1500m/gの範囲、より有利に10〜400m/gの範囲、特に60〜250m/gの範囲の比表面積を有する。
【0045】
好適な吸着剤は、例えば、活性アルミナである。これらは、例えば、アルミニウム塩溶液から慣例の沈殿法によって得られる水酸化アルミニウムから出発して製造される。本発明による方法に好適な活性アルミナは、水酸化アルミニウムゲルから出発して得ることも可能である。そのようなゲルの製造のために、例えば、沈降水酸化アルミニウムを、慣例的な後処理段階、例えば、濾過、洗浄及び乾燥、及び次いで、好適な場合には、粉砕又は凝集によって活性化させることができる。所望の場合には、得られたアルミナを、次いで、成形法、例えば、押出し、造粒、タブレット化などに従わせることもできる。好適な吸着剤は、有利に、アルコア(Alcoa)製のセレックスソルブ(Selexsorb)TM型である。
【0046】
更に、好適な吸着剤は、アルミナ−含有の固体である。これらは、例えば、主成分として同様にアルミナを有する、いわゆる粘土を包含する。
【0047】
他の好適な吸着剤は、燐酸アルミニウムである。
【0048】
他の好適な吸着剤は、例えば、シリカゲルの脱水及び活性化によって得られるシリカである。シリカのもう1つの製法は、四塩化珪素の燃焼加水分解であり、これは、反応パラメーター、例えば、出発混合物の化学量論的組成及び温度の好適な変化によって、取得シリカの所望の表面特性を、広い範囲で変化させることが可能である。
【0049】
他の好適な吸着剤は、珪藻土であり、これは同様に主成分としてシリカを有する。これらは、例えば、珪素質沈殿物から得られる珪藻土を包含する。
【0050】
他の好適な吸着剤は、例えば、Roempp,Chemie−Lexikon、第9版(ペーパーバック)、第6巻、4629頁以降及び5156頁以降、及びそこに挙げられた文献に記載されたような、二酸化チタン及び二酸化ジルコニウムである。これらの文献にそれらの全てで参照される。
【0051】
他の好適な吸着剤は、大きな活性表面積を有するホスフェート、殊に、縮合ホスフェート、例えば、溶融又は焼成ホスフェートである。好適なホスフェートは、例えば、Roempp,Chemie−Lexikon、第9版(ペーパーバック)、第4巻、3376頁以降及びそこに挙げられた文献に記載されている。これにそれらの全てで参照される。
【0052】
他の好適な吸着剤は、炭素−含有吸着剤、有利に、活性炭素である。活性炭素は、この際、一般に、孔構造及び大きな内部表面積を有する炭素を意味すると解される。活性炭素の製造のために、植物、動物及び/又は鉱物性の炭素−含有原料を、例えば、脱水剤、例えば、塩化亜鉛又は燐酸と共に加熱し、又は乾留によって炭化させ、次いで酸化的に活性化させる。この目的のために、例えば、炭化物質を、約700〜1000℃の高温で、蒸気、二酸化炭素及び/又はそれらの混合物と共に処理することができる。
【0053】
イオン交換体及び/又は吸着樹脂の使用も可能である。
【0054】
吸着剤は、有利に、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、シリカ、珪藻土、アルミナ、アルミナ−含有固体、燐酸アルミニウム、天然及び合成の珪酸アルミニウム、ホスフェート、炭素−含有吸着剤及びそれらの混合物から選択される。
【0055】
吸着剤は、一般に、BETにより測定される、約10〜2000m/gの範囲、有利に10〜1500m/gの範囲及び特に20〜600m/gの範囲の比表面積を有する。
【0056】
不所望の成分、殊に、触媒的水素添加に不利に作用する成分の吸着的除去のために、段階a)でのグリセロール−含有流を、吸着帯域で少なくとも1つの吸着剤と接触させる。
【0057】
特別な1実施態様で、段階b)で水素添加触媒としても使用可能な少なくとも1つの成分を含む吸着剤を使用する。より詳細に後記される水素添加触媒は、そこでそれらの全てで参照される。2種以上の吸着剤の組合せは、吸着剤としての使用に同様に好適である。排他的に水素添加触媒であってもよい成分、排他的に水素添加触媒として不適当な吸着剤、又はそれらの組合せを使用することが可能である。
【0058】
有利な1実施態様で、同一成分を、吸着剤として及び水素添加触媒として使用する。好適な場合には、水素添加触媒と異なった、前記のような1種以上の慣例的な吸着剤をここで付加的に使用する。
【0059】
本方法の1構成で、グリセロール−含有流を、少なくとも1つの吸着帯域で、吸着剤と接触させ、次いで、少なくとも1つの反応帯域で水素添加させる。
【0060】
1つ以上の吸着及び反応帯域の特別な構成及び配置を、任意の公知方法で行い得ることは、当業者には自明である。空間的に相互に別々の1つ以上の吸着及び反応帯域を配置すること、即ち、装置の構成によって構造的にそれらを相互から分離させることが有利である。
【0061】
異なった吸着剤を使用する場合には、例えば、第一吸着剤を含む第一吸着帯域を、第一反応機中の第一吸着帯域中で、かつそれらから別々の、即ち、構造的に別々の、例えば、第二反応機中で、第二吸着剤を含む第二吸着帯域中で備えることができる。この際、第一及び/又は第二吸着剤は、水素添加触媒を使用することができる少なくとも1つの成分を含むことができる。
【0062】
もう1つの実施態様で、慣例的な吸着剤を、単一吸着帯域中で、例えば、積層形で、ランダム分布の形で混合させて、又は勾配床の形で、水素添加可能な吸着剤と一緒に使用する。混合形での使用は、好適な場合には、温度のより良好な制御を可能にする。勾配床の場合には、直線及び非−直線勾配を使用することができる。この際、水素添加されるべきグリセロール−含有流を、水素添加可能な吸着剤と接触させる前に、先ず慣例的な吸着剤と接触させる方法で、床内で分配を行うことが有利であり得る。
【0063】
有利に、水素添加されるべきグリセロール−含有流を、第一吸着帯域中で慣例的な吸着剤と接触させ、かつ第二吸着帯域中で、水素添加触媒として使用可能な少なくとも1つの成分を含む吸着剤と接触させる方法で、少なくとも2つの吸着帯域が配置される。
【0064】
本発明による方法の段階a)で得られるグリセロール−含有流は、有利に、バイオディーゼルの製造から由来する。本発明に関して、"バイオディーゼル"とは、生物発生油−及び/又は脂肪−含有出発混合物から得られ得て、かつディーゼル機関で燃料として使用され得る脂肪酸モノアルキルエステルの混合物を意味すると解される。
【0065】
原則的に、全ての得られる生物発生油−及び/又は脂肪−含有出発混合物は、グリセロール−含有流を得るために好適である。油及び脂肪は、一般に、殊に植物及び動物給源からの固体、半固体又は液体の脂肪酸トリグリセリドであり、これは化学的に実質的に、高級脂肪酸のグリセリルエステルを含む。好適な高級脂肪酸は、有利に8〜40、特に有利に12〜30個の炭素原子を有する飽和又は一−又は多不飽和脂肪酸である。これらは、例えば、n−ノナン酸、n−デカン酸、n−ウンデカン酸、n−トリデカン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ノナデカン酸、アラキドン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、メリシン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ステアリン酸、エレオステアリン酸(elaostearic acid)などを包含する。
【0066】
植物脂肪及び油は、実質的に、炭素原子の偶数を有する脂肪酸に基づいているが、動物脂肪及び油は、遊離形又はトリグリセリドエステルのように結合して、炭素原子の奇数を有する脂肪酸も含み得る。植物脂肪及び油中に生じる不飽和脂肪酸は、シス型で存在するが、動物脂肪酸は、しばしば、トランス配置を有する。
【0067】
原則的に、使用された又は未使用の、未精製の又は精製された植物、動物又は工業的油又は脂肪又はそれらの混合物は、段階a)でグリセロール−含有流を得るために使用され得る。これらは、更なる成分、例えば、遊離脂肪酸部分を包含する。遊離脂肪酸部分は、一般に、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換に使用される出発混合物の0%〜50%、例えば、0.1〜20%である。遊離脂肪酸は、所望の場合には、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換の前又はその後に除去され得る。これらの脂肪酸の塩(例えば、アルカリ金属塩)は、前以て、強酸、例えば、HClでの酸性化によって遊離酸に変換され得る。遊離脂肪酸の単離は、例えば、遠心分離によって行なわれる。出発混合物中に存在する遊離脂肪酸は、同様に、アルキルエステルに変換されることが有利である。これは、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換の前、その間又はその後に行われ得る。
【0068】
段階a)でグリセロール−含有流を得るために好適な使用された脂肪及び油は、好適な生物発生出発物質からのそれらの回収後に、他の目的、例えば、技術的目的又は食物生産のための目的に先ず使用され、かつこの使用の結果として化学的に変性又は非変性されてよく、又は、殊に、この使用と関連される付加的な成分を有することができる脂肪−及び/又は油−含有成分である。これらは、所望の場合には、グリセロール−含有流を得るために使用される前に、エステル交換によって少なくとも部分的に除去され得る。段階a)でグリセロール−含有流を得るために好適な未使用の脂肪及び油は、好適な植物又は動物出発物質からのそれらの回収後に、いかなる他の目的にも未だ使用されなかった、及び従って出発物質から由来する成分のみを含有し、又は出発物質からの回収と関連される脂肪−又は油−含有成分である。脂肪酸トリグリセリド(及び、好適な場合には、遊離脂肪酸)以外の成分は、所望の場合には、グリセロール−含有流を得るために使用される前に、エステル交換によってこれらの出発物質から少なくとも部分的に同様に除去され得る。
【0069】
精製及び/又は富化のために、未使用の又は使用された脂肪又は油は、不所望の成分、例えば、レシチン、炭水化物、タンパク質、オイルスラッジ、水などを除去され得る。
【0070】
植物油及び脂肪は、植物出発物質、例えば、種子、根、葉又は他の好適な植物部分から主に由来するそれらである。動物脂肪又は油は、動物出発物質、例えば、動物臓器、組織又は他の体部分又は体液、例えば、乳汁から主に由来する。工業的油及び脂肪は、殊に、動物又は植物出発物質から得られ、かつ技術目的のために処理されたそれらである。本発明により使用される、使用された又は未使用の、未精製の又は精製された油及び/又は脂肪は、殊に、石鹸原料、ブラウングリース、イエローグリース、工業用牛脂、工業用ラード、揚げ油、動物脂肪、食用牛脂、未加工植物油、未加工動物油又は脂肪又はそれらの混合物から選択される。
【0071】
"石鹸原料"とは、植物油の加工中に得られる副生成物、殊に、大豆、菜種又はヒマワリ油をベースとする食用油精製の副生成物を意味すると解される。石鹸原料は、遊離脂肪酸約50%〜80%の割合を有する。
【0072】
"ブラウングリース"とは、遊離脂肪酸15%以上40%までの割合を有する動物脂肪−含有の廃産物を意味すると解される。"イエローグリース"は、遊離脂肪酸約5%〜15%を含む。
【0073】
"工業用牛脂"及び"工業用ラード"とは、例えば、屠殺廃棄物から工業的目的のために製造され、かつ乾式又は湿式溶融法後に得られる動物脂肪を意味すると解される。工業用牛脂は、それらの酸価に従って、評価されかつ処理され、その遊離脂肪酸含量は、起源に依存して、例えば、1及び15〜20質量%の間であり、若干の場合には、もっと高い。
【0074】
"動物脂肪"は、殊に、家禽、牛、豚、魚及び海洋哺乳動物体、例えば、ソーラー(solar)ステアリン、ラード油が豚ラードから取り出された後に残る固体残渣の利用中に得られる脂肪−含有廃棄産物を包含する。
【0075】
段階a)でのグリセロール−含有流は、有利に、出発物質として、未加工の植物油から得られる。未精製の未加工植物油から、即ち、植物出発物質から、例えば、圧縮によって得られる液体又は固体の組成物から出発することが可能であり、これらは、一般的な通常期間での静置及び遠心分離又は濾過以外の処置を受けず、その際、機械的強制、例えば、重力、遠心力又は圧だけが固体成分から油を分離するために使用される。そのような未精製の未加工植物油は、圧縮によって得られる相応する植物油と、その特性が異なっていない、又は僅少でしか異なっていない場合には、抽出によって得られる植物油であってもよい。非精製植物脂肪及び油における遊離脂肪酸の比率は異なっていて、例えば、約0〜20%、例えば、0.1〜15%である。
【0076】
植物油は、それらをエステル交換に使用する前に、より詳細に後記されるような1以上の後処理段階に当然従わされ得る。従って、前記の植物油の精製植物油、例えば、ラフィネート又はセミラフィネートを、出発物質として使用することもできる。
【0077】
菜種油、ヤシ油、菜種油、大豆油、ヒマワリ油、トウモロコシ油、綿実油、ヤシ核及びココナツ脂肪及びこれらの混合物から有利に選択される植物油又は脂肪は、段階a)でグリセロール−含有流を得るために有利に使用される。菜種油又は菜種油を含有する混合物が特に有利に使用される。
【0078】
乳脂、羊毛脂肪、牛脂、豚ラード、魚油、鯨脂など及びそれらの混合物から有利に選択される動物油又は脂肪は、段階a)でグリセロール−含有流を得るために同様に好適である。当然、これらの動物脂肪又は油も、それらをエステル交換に使用する前に、より詳細に後記されるような1以上の後処理段階に従わせることができる。
【0079】
段階a)でのグリセロール−含有流の供給は、有利に、次の段階を包含する:
a1)生物発生脂肪−及び/又は油−含有出発混合物の供給、
a2)出発混合物中に存在する脂肪酸トリグリセリドと、少なくとも1種のC〜C−モノアルコールとのエステル交換及び、好適な場合には、出発混合物中に存在する遊離脂肪酸の、エステル化混合物の形成を伴うエステル化、
a3)バイオディーゼルで富化された少なくとも1つのフラクション及びエステル化で遊離されたグリセロールで富化された少なくとも1つのフラクションを得るためのエステル化混合物の分離、
a4)好適な場合には、グリセロールで富化されたフラクションの精製。
【0080】
段階a1)
有利な1実施態様で、段階a1)での生物発生脂肪−及び/又は油−含有出発混合物の供給は、少なくとも1つの精製段階を含む。精製のために、脂肪−及び/又は油−含有出発混合物を、脂肪及び油に通常使用される少なくとも1つの精製法、例えば、清浄化、濾過、漂白土類での処理又は厄介な不純物、例えば、タンパク質、燐脂質及び粘性物を分離するための酸又はアルカリでの処理、及びこれらの精製段階の少なくとも2段階の組合せに従わさせることができる。
【0081】
段階a2)
少なくとも1種のC〜C−モノアルコール、殊に、少なくとも1種のC〜C−モノアルコールを、有利に、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換に使用する。メタノール又はエタノールの使用が有利である。
【0082】
脂肪酸トリグリセリドのエステル交換は、酸性又は有利に塩基性触媒によって行われ得る。好適な酸は、例えば、鉱酸、例えば、HCl、HSO又はHPOである。
【0083】
少なくとも1つの塩基を、有利に触媒として使用する。前記の塩基は、有利に、アルカリ金属水酸化物、例えば、NaOH及びKOH、アルカリ土類金属水酸化物、例えば、Ca(OH)、アルカリ金属及びアルカリ土類金属C〜C−アルカノレート、例えば、NaOCH、KOCH、Na(OCHCH)及びCa(OCHCH及びそれらの混合物から選択される。NaOH、KOH又はNaOCHが特に有利に使用され、NaOCHが極めて特に有利に使用される。
【0084】
使用される塩基の量は、使用される脂肪酸トリグリセリドの量に対して、通例、0.1〜10質量%、殊に0.2〜5質量%の範囲である。
【0085】
塩基は、水性又はアルコール性、特に有利に、アルコール性溶液の形で有利に使用される。トリグリセリドのアルコーリシスのために既に使用された溶剤を、塩基の溶剤として有利に使用する。メタノール中のNaOCH溶液を有利にエステル交換に使用する。
【0086】
エステル交換は、約20〜150℃、特に30〜95℃の温度で有利に行なわれる。
【0087】
エステル交換は、この目的のために慣例的なかつ当業者に公知の装置で行なわれる。好適な1実施態様で、エステル交換は連続的に行なわれる。エステル交換は、少なくとも1つのカラム中で行なわれ、得られるエステル交換混合物を同時に分離させる。一般に、塩基性触媒で、未変換モノアルコールで及びエステル交換で生成されたグリセロールで富化された高沸騰相が得られ、かつエステル交換生成物で富化された低沸騰相が得られる。エステル交換生成物が、エステル交換を受けなかったトリグリセリドをなお含有する場合には、これらを分離し、最初の又はもう1回のエステル交換段階でもう1回エステル交換させることができる。
【0088】
最終エステル交換混合物を、次いで、乾燥装置に移し、水の残量を再び除去させる。乾燥装置中での乾燥後に、所望の最終生成物バイオディーゼルは、純粋形で存在し、燃料として直接使用され得る。
【0089】
段階a)でグリセロール−含有流を得るために使用される脂肪−及び/又は油−含有出発混合物が、遊離脂肪酸を含む場合には、これらは、有利に、バイオディーゼルに好適なエステルへの変換のために、エステル化させることができる。
【0090】
遊離脂肪酸は、有利に、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換用に使用された同一のC〜C−モノアルコールとエステル交換される。遊離脂肪酸のエステル化は、遊離酸トリグリセリドのエステル交換の前、その間又はその後に行なわれ得る。有利な1実施態様で、遊離脂肪酸のエステル化は、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換前に行なわれる。
【0091】
遊離脂肪酸のエステル化は、塩基性又は有利に酸性触媒によって行われ得る。好適な酸は、前記の鉱酸、HCl、HSO又はHPO、p−トルエンスルホン酸などである。エステル化は、有利に約20〜95℃、殊に40〜80℃の温度で行なわれる。
【0092】
エステル化は、この目的に慣例で、かつ当業者に公知の装置中で行なわれる。これらは、攪拌容器及び/又はカラムを含み、これは、所望の場合には、カスケードを形成するために接続される。遊離脂肪酸のエステル化は、有利に、カラムとして設計された少なくとも1つのエステル化装置中で行なわれ、得られるエステル化混合物は同時に分離される。好適な1実施態様で、エステル化は、分離を容易にするための共留剤が存在して行なわれる。
【0093】
段階a3)
エステル交換及び/又はエステル化の間又はその後に、エステル化混合物を、C〜C−モノアルコールエステルで富化された少なくとも1つのフラクション及びエステル交換で遊離されたグリセロールで富化された少なくとも1つのフラクションを得るために分離させる。分離は、有利に、当業者に公知の慣例蒸留法によって行われる。好適な蒸留装置は前記されたものである。
【0094】
段階a4)
段階a3)でエステル化混合物の分離後に得られ、かつグリセロールで富化されたフラクションを、好適な場合には、少なくとも1つの後処理段階に従わせることができる。これは、例えば、不所望の成分、例えば、塩及び触媒水素添加に不利に作用する成分の除去、又は水及び、存在する場合には、有機溶剤の除去を包含する。これらの後処理段階に関する前記に、それらの全てで参照される。
【0095】
本発明による方法で使用される触媒は、非支持触媒又は支持触媒であってよい。これらは、不均一−組成触媒、含浸触媒、被覆触媒及び沈降触媒の形で使用され得る。
【0096】
原則的に、主族I、II又はIII、IV、V、又は亜族I、II、IV、V、VI、VII、又はVIII及びランタニド(IUPAC:族1〜15及びランタニド)の少なくとももう1種の元素、殊に、Ca、Mg、Al、La、Ti、Zr、Cr、Mo、W、Mn、Ni、Co、Zn及びそれらの混合物を付加的に含み得る多数の銅−含有触媒が好適である。
【0097】
本発明による方法での使用に特に有利である触媒の特別な1実施態様は、骨格又は金属海綿触媒、例えば、"ラネー触媒"として参照される触媒を含む。これらは、殊に、ラネー銅及びラネー触媒の形の銅−含有金属合金を含む。それらの金属成分が銅少なくとも95%、殊に少なくとも99%を含むラネー触媒が有利である。ラネー触媒の製法は、当業者に公知であり、例えば、DE−A−4335360、DE−A−4345265、DE−A−4446907及びEP−A−842699に記載されている。ラネー銅は、自体公知の方法で、銅−アルミニウム合金をアルカリ金属水酸化物で処理することによって製造され得る。本発明による方法での使用に好適なラネー触媒は、例えば、少なくとも1種の銅−含有触媒合金(触媒合金は、銅及び、好適な場合には、少なくとももう1種の触媒活性金属及び浸出可能な合金成分を含む)及び少なくとも1種の結合剤との混合物の製造(好適な場合には、湿潤剤及び/又は添加剤、例えば、成形助剤、滑剤、可塑剤及び/又は孔形成剤の添加を伴う)、この混合物の均一化及び所望の成形を得るための成形、成形物のか焼及び、浸出可能な合金成分の部分的又は完全な浸出による、そうして得られる触媒前駆体の活性化及び好適な場合には、製造された触媒の最終洗浄によって得られる。
【0098】
本発明による方法で特に有利に使用される触媒のもう1つの特別な実施態様は、酸化物の形、好適な場合には、付加的に元素形の銅を含む。次いで、段階b)で使用される水素添加触媒は、触媒の全質量に対して、酸化物形及び/又は元素形の銅、有利に少なくとも23質量%、特に有利に少なくとも35質量%を含む。
【0099】
そのような触媒の製造のためにしばしば使用される方法は、支持物質を触媒成分の溶液での含浸を含み、次いで、これは熱処理、分解又は還元によって触媒活性状態に変換される。
【0100】
触媒のもう1つの好適な製法は、1触媒成分の沈殿又は2種以上の触媒成分の共沈を含む。従って、銅化合物、任意に少なくとももう1種の金属化合物及び/又は添加剤を沈殿させ、続いて乾燥、か焼及び成形させて、成形された触媒体が製造される。沈殿は支持物質が存在して行なわれ得る。沈殿のための好適な出発物質は、金属塩及び金属錯体である。沈殿のための銅化合物として、原則的に、支持体への適用のために使用される溶剤中に可溶性である全Cu(I)及び/又はCu(II)塩、例えば、硝酸塩、炭酸塩、酢酸塩、蓚酸塩又はアンモニウム錯体を使用することが公知である。硝酸銅を使用することが特に有利である。触媒の触媒活性成分は、更に、付加的成分として、銅化合物とは別の要素、例えば、金属、非金属及びそれらの化合物を含むことができる。これらは、有利に、族4〜15及びランタニドの金属を含む。これらは、有利に、金属として、La、Ti、Zr、Cu、Mo、W、Mn、Re、Co,Ni、Cu、Ag、Au、Zn、Sn、Pb、As、Sb及びBiを含む。水性媒体が沈殿のために有利に使用される。
【0101】
好適な水性媒体は、方法条件下に液体であり、かつ水少なくとも10質量%、有利に少なくとも30質量%及び殊に少なくとも50質量%を含有する物質又は混合物である。水以外の部分は、有利に、少なくとも部分的に水溶性であるか、又は少なくとも部分的に水と混合可能である無機又は有機物質から選択される。水以外の物質は、例えば、有機溶剤、C〜C22−アルカノール、殊に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、s−ブタノール、t−ブタノール、ペンタノール及びヘキサノール、C〜C−シクロアルキルエーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ピラン、ジオキサン及びトリオキサン、C〜C12−ジアルキルエーテル、例えば、ジメチルエーテル、ジブチルエーテル及びメチルブチルエーテルから選択される。水性媒体は、有利に、有機溶剤40%以下、殊に30%以下及び特に有利に20%以下を含有する。本発明の方法の有利な実施態様で、水性媒体は、基本的に有機溶剤を含まない。
【0102】
沈殿は、公知方法、例えば、飽和溶液を冷却すること、沈殿剤を加えることなどによって誘導され得る。好適な沈殿剤は、例えば、酸、塩基、還元剤などである。
【0103】
沈殿は、銅化合物及び任意に更なる化合物を含有する水性媒体に、酸又は塩基を加えることによって誘導され得る。好適な酸は、HCl、HSO及びHPOのような鉱酸である。塩基は、有利に、金属酸化物、金属水酸化物、殊に、アルカリ金属水酸化物、例えば、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム、金属炭酸塩、殊にアルカリ金属及びアルカリ土類金属炭酸塩、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウム、窒素塩基、殊に、アンモニア、一級、二級及び三級アミンから選択される。
【0104】
好適な還元剤の例は、カルボン酸、例えば、蟻酸、クエン酸、乳酸、酒石酸及び殊に、カルボン酸の塩、有利にアルカリ金属、アルカリ土類金属、アンモニウム及びC〜C10−アルキルアンモニウム塩、亜燐酸又は次亜燐酸、亜燐酸又は次亜燐酸の塩、殊に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、C〜C10−アルカノール、例えば、メタノール、エタノール及びイソプロパノール、糖、例えば、単糖類の形のアルドース及びケトース、二糖類及び少糖類、殊に、グルコース、フルクトース及びラクトース、アルデヒド、例えば、ホルムアルデヒド、硼素−水素化合物、例えば、水素化硼素、ボラン、金属ボラナート及びボラン錯体、例えば、ジボラン、水素化硼素ナトリウム及びアミノボラン、殊に、トリメチルアミノボラン、ヒドラジン及びアルキルヒドラジン、例えば、メチルヒドラジン、亜二チオン酸水素塩及び亜二チオン酸塩、殊に、亜二チオン酸水素ナトリウム及びカリウム、亜二チオン酸ナトリウム、カリウム及び亜鉛、亜硫酸水素塩及び亜硫酸塩、殊に、亜硫酸水素ナトリウム及びカリウム、亜硫酸ナトリウム、カリウム及びカルシウム、ヒドロキシルアミン及び尿素、及び同様にそれらの混合物である。
【0105】
例えば、ニッケル及びコバルトを、他の金属に付加的に、活性成分としてシリカ支持体上に含む触媒が水素添加に好適である。そのような触媒は、例えば、DE−A2628987に記載されている。これらの触媒の活性物質は、殊に、ニッケル40〜80質量%、銅10〜50質量%及びマンガン2〜10質量%を含む。
【0106】
EP−A−0434062は、銅、アルミニウム及び少なくとももう1種の、マンガン、亜鉛、チタン、ジルコニウム、錫、ニッケル及びコバルトから選択される金属の酸化物を含む前駆体の還元によって得られる水素添加触媒を記載している。
【0107】
DE10218849に記載されていて、かつ各々の場合に、焼成触媒の全質量に対して、シリカ支持物質上に沈殿されるCrとして計算されるクロム0.1〜10質量%、CaOとして計算されるカルシウム0.1〜10質量%及びCuOとして計算される銅5〜20質量%を含む水素添加触媒も好適である。
【0108】
DE−A−4021230は、酸化銅/ジルコニウム触媒を解明していて、質量比として表わされる、銅原子対ジルコニウム原子の比率は、1:9〜9:1である。
【0109】
DE−A−4028295は、銅/マンガン水素添加触媒を記載している。
【0110】
EP−A−552463は、最初の実施態様で、酸化物形が基本的に組成CuAlZrMnに相応する水素添加触媒を記載していて、次の関係:a>0;b>0;c>/=0;d>0;a>b/2;b>a/4;a>c;a>d;が適切であり、かつxは、式単位当たり、電気的中性を保持するために必要とされる酸素イオンの数である。もう1つの実施態様により、この発明による触媒は、少ない割合のアルミナを含む。この実施態様による触媒は、基本的に組成CuAlZrMnに相応し、次の関係:a>0;b=a/40〜a/4;c>/=0;d>0;a>c;a=0.5d〜0.95dが適切でsリ、かつxは、式単位当たり、電気的中性を保持するために必要とされる酸素イオンの数である。
【0111】
WO2006/005505は、この発明による方法で使用するために特に有利である成形触媒体を解明している。それらの触媒は、次の方法によって製造され得る:
(i)酸化銅、酸化アルミニウム及び少なくとも1種の、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物(ランタン及び/又はタングステンの酸化物が有利である)を含む酸化物物質を得て、
(ii)粉末金属銅、銅フレーク、粉末セメント又はこれらの混合物又はこれらとグラファイトとの混合物を、酸化物物質に加えることができ、かつ
(iii)(ii)から得られる混合物を、直径d及び/又は高さh<2.5mmを有する触媒ペレット又は触媒押出物、直径d<2.5mmを有する触媒球状物又はセル径r<2.5mmを有する触媒蜂巣状物を形成する。
【0112】
ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物の中で、酸化ランタンが有利である。酸化物物質の組成は、各々の場合に、前記の酸化物成分の全質量に対して、酸化銅の比率は40〜90質量%の範囲であり、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウムの酸化物の比率は、0〜50質量%の範囲であり、かつ酸化アルミニウムの比率は、50質量%までであることが一般的であり、これらの3種の酸化物は一緒に、か焼後の酸化物物質の少なくとも80質量%までであり、かつセメントは前記の意味では酸化物物質の部分として含まれていない。
【0113】
有利な1実施態様で、酸化物物質は、次のものを含む:
各々の場合に、か焼後の酸化物物質の全質量に対して、
(a)50≦x≦80質量%、有利に55≦x≦75質量%の比率の酸化銅、
(b)15≦y≦35質量%、有利に20≦y≦30質量%の比率の酸化アルミニウム、及び
(c)2≦z≦20質量%、有利に3≦z≦15質量%の比率の少なくとも1種の、ランタン、タングステン、モリブデン、チタン又はジルコニウム、有利にランタン及び/又はタングステンの酸化物(この際、80≦x+y+z≦100、殊に、95≦x+y+z≦100)。
【0114】
有利な触媒は、次の金属を、酸化物形、還元形(元素形)又はそれらの組合せで含む。1以上の酸化状態で安定している金属は、酸化状態の1つ又は異なった酸化状態の組合せで完全に使用され得る:
Cu
Cu、Ti
Cu、Zr
Cu、Mn
Cu、Al
Cu、Ni、Mn
Cu、Al、少なくとももう1種の、La、W、Mo、Mn、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Coから選択される金属
Cu、Zn、Zr
Cu、Cr、Ca
Cu、Cr、C
Cu、Al、Mn、任意にZr
特に有利な触媒は、次の金属を含む:
Cu
Cu、Ti
Cu、Al
Cu、Al、La
Cu、Al、Zn
Cu、Zn、Zr
Cu、Al、Mn
Cu、Cr、C
支持触媒の製造で有利に使用されるような、実際に全ての公知支持物質、例えば、SiO(石英)、磁器、酸化マグネシウム、二酸化錫、炭化珪素、TiO(ルチル、アナターゼ)、ZrO、Al(アルミナ)、珪酸アルミニウム、ステアタイト(珪酸マグネシウム)、珪酸ジルコニウム、珪酸セリウム又はこれらの支持物質の混合物を、本発明による触媒のための不活性支持物質として使用することができる。有利な支持物質は、アルミナ及びシリカである。異なった起源及び製造のシリカ物質、例えば、高熱製造シリカ又は湿潤化学法によって製造されるシリカ、例えば、シリカゲル、エーロゲル又は沈降シリカを、触媒製造のためのシリカ支持物質として使用することができる(様々なSiO出発物質の製造のための参照(cf.):W.Buechner;R.Schliebs;G.Winter;K.H.Buechel:Industrielle Anorganische Chemie;第2版,532−533頁,VCH Verlagsgellschaft,Weinheim 1986)。
【0115】
触媒は、幾何学体の形で、例えば、球状、環状、筒状、立方体、サイコロ状又は他の幾何学体の形で存在し得る。非支持触媒は、慣例法によって、例えば、押出し、タブレット化などによって成形され得る。支持触媒の形は、通例、支持体の形によって決定される。選択的に、支持体は、1種以上の触媒活性化合物又はそれらの前駆体の適用に先立って又はその後に、成形法に従わされ得る。触媒は、例えば、圧縮筒状物、タブレット、ロゼンジ、車輪状物、環状物、星状物又は押出物、例えば、固体押出物、多裂状押出物(例えば、三裂状)、中空押出物及び蜂巣状体の形で使用され得る。
【0116】
触媒粒子は、一般に、(最大)直径の平均値0.5〜20mm、有利に1〜10mmを有する。これらは、例えば、直径1〜7mm、有利に2〜6mm及び高さ3〜5mmを有するタブレット、例えば、外径4〜7mm、有利に5〜7mm、高さ4〜7mm、有利に2〜5mm及び孔径2〜3mmを有する環状物、又は、例えば、直径1.0〜5mmを有する、異なった長さの索状物形の触媒を包含する。そのような形状物は、自体公知の方法で、タブレット化、押出成形又は押出によって得られ得る。この目的のために、慣例的助剤、例えば、滑剤、例えば、グラファイト、ポリエチレンオキシド、セルロース又は脂肪酸(例えば、ステアリン酸)、及び/又は成形助剤及び補強剤、例えば、ガラス繊維、アスベスト又は炭化珪素を触媒物質に加えることができる。
【0117】
支持触媒の特別な1実施態様は、被覆触媒を含む。被覆触媒も、有利に、本発明による方法に好適である。被覆触媒は、支持体への被覆の形で適用される触媒物質を含む。これらは、球状物、環状物、筒状物、立方体、サイコロ状物又は他の幾何学体の形で存在し得る。触媒活性物質の型及び組成にかかわらず、被覆触媒粒子は、原則的に、支持体を液状結合剤及び触媒活性物質と接触させ、支持体に物質を積層させ、かつ次いで、好適な場合には、部分的に結合剤を除去させることによって得られ得る。触媒粒子を得るために、触媒活性物質を、既に、その製造された触媒活性形で、例えば、か焼混合酸化物として適用する。被覆触媒の好適な製法は、例えば、DE−A−2909671及びEP−A−714700に記載されている。最後に挙げた方法により、支持体を、先ず液状結合剤で湿潤させ、次いで、活性触媒物質の層を、乾燥微分配活性触媒物質と接触させることによって、湿潤支持体の表面に結合させ、かつ、好適な場合には、次いで、液状結合剤を部分的に除去する。特別な1実施態様で、支持体の湿潤、触媒物質との接触及び液状結合剤の除去の段階を、被覆触媒の所望の層厚が得られるまで、1回又は数回繰り返す。
【0118】
支持触媒のもう1つの特別な実施態様は、含浸法によって製造される触媒を含む。この目的のために、触媒活性触媒成分又はその前駆化合物を、支持物質に適用することができる。一般に、成分の塩水溶液、例えば、それらのハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩などの水溶液を、支持物質を含浸させるために適用させる。銅成分を、例えば、そのアミン錯塩の水溶液の形で、例えば、[Cu(NH]SO又は[Cu(NH](NO溶液として、好適な場合には、炭酸ナトリウムが存在して、支持物質に適用することもできる。当然、例証で挙げたそれらの以外の銅−アミン錯体を、触媒製造のために同様に有効に使用することもできる。
【0119】
触媒活性成分の前駆化合物での支持物質の含浸は、原則的に1段階又は多段階で行なわれ得る。含浸は、慣例的な含浸装置、例えば、含浸ドラム中で実施され得る。次いで、乾燥及びか焼後に、製造触媒が得られる。含浸触媒成形体の乾燥は、連続的に又はバッチ法で、例えば、ベルト又はトレー炉中で行われ得る。乾燥は、大気圧又は減圧で行われ得る。更に、乾燥は、ガス流中で、例えば、気流又は窒素流中で行われ得る。適用される圧力により、乾燥は、一般に50〜200℃、有利に80〜150℃の温度で実施される。好適な場合には、前以て乾燥させた触媒のか焼は、一般に200〜800℃、有利に500〜700℃の温度で行なわれる。か焼は、乾燥と同様に、連続的に又はバッチ法で、例えば、ベルト又はトレー炉中で行われ得る。か焼は、大気圧又は減圧で、及び/又はガス流中で、例えば、気流又は水素流中で行われ得る。水素又は水素含流ガスでの予備処理は、一般に水素添加条件に相応する条件下に、水素添加触媒の予備的還元/活性化のために用いられる。しかし触媒は、水素添加の場合に、特定の条件下に、有利に圧力下に(例えば、約100〜325バールの水素圧で)、その場で還元されることも可能である。
【0120】
水素添加において、グリセロール及び生成する1,2−プロパンジオールは、有利に液相で存在する。
【0121】
触媒は、例えば、固床中に配置されることができ、又は懸濁液として使用されることができる。従って、水素添加は、例えば、細流−床法又は液−相法によって実施され得る。液−相水素添加については、触媒を、有利に微細分配形で、例えば、粉末として懸濁して使用する。細流相での水素添加において、触媒を、前記のような成形体として、例えば、圧縮筒状物、タブレット、ロゼンジ、車輪状物、環状物、星状物又は押出物、例えば、固体押出物、多裂状押出物、中空押出物及び蜂巣状体の形で使用される。過剰な水素を有利に循環させ、少量部分を、不活性物質を除去するための排ガスとして排出させることが可能である。1反応器又は直列に又は相互に平行して接続させることができる多数の反応器を使用することが可能である。
【0122】
段階b)での水素添加における温度は、有利に150〜300℃、殊に175〜250℃である。
【0123】
段階b)での反応圧は、有利に140バール〜250バールである。
【0124】
水素対グリセロールのモル比は、有利に2:1〜500:1、有利に3:1〜100:1である。
【0125】
連続法での触媒空間速度は、有利に、1時間(h)毎の(触媒)1kg当たり水素添加されるべきグリセロール0.1〜1、より有利に0.2〜0.6、及び殊に0.3〜0.6kgである。
【0126】
グリセロールに対する変換率は、有利に少なくとも90%、殊に少なくとも95%である。本発明による方法で、1,2−プロパンジオールに対する選択率は、有利に少なくとも85%、殊に有利に少なくとも90%である。しばしば、95%まで又はそれ以上のより高い選択率ですら達成され得る。
【0127】
水素添加は、適宜に、連続的に実施される。水素添加排出物は、実質的に、1,2−プロパンジオールを含む。更なる成分は、特に、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、1,3−プロパンジオール、グリセロール、エチレングリコール及び水である。水素添加排出物は、次いで、当業者に公知の慣例法によって後処理され得る。例えば、熱的後処理、有利に、蒸留、吸着、イオン交換、膜分離法、結晶化又は抽出又はこれら2種以上の方法の組合せを使用することができる。蒸留による後処理が有利である。これは、原則的に、当業者に公知の慣例的蒸留法によって行われ得る。蒸留的後処理のための好適な装置は、蒸留カラム、例えば、トレーカラムを含み、これは、蓋、篩プレート、篩トレー、積層充填物、堆積充填物、弁、側口、など、蒸発器、例えば、薄膜蒸発器、流下膜蒸発器、強制循環蒸発器、サムベイ蒸発器など、及びそれらの組合せを備えていてよい。水素添加排出物中になお存在するグリセロールは、好適な場合には、蒸留によって分離された後に、水素添加段階に回収され得る。
【0128】
本発明を次の実施例に参照して詳説するが、これに限定されるものではない。
【0129】
実施例
バイオディーゼルシュバルツハイデ(Biodiesel Schwarzheide)GmbH製の製薬学的グリセロール及び純粋品質グリセロールのグリセロールを、触媒スクリーニングのための実験用の供給原料として使用した。表1は、使用グリセロールの分析データを示す。
【0130】
【表1】

【0131】
供給原料グリセロール及び反応排出物の分析は、ガスクロマトグラフィーによって行なわれる(データGC面積%による)。
装置: サンプラーを備えたHP5890−2
範囲: 2
カラム: 30m DBWax;膜厚:0.25μm
試料容量: 1μl
キャリヤーガス: ヘリウム
流速: 100ml/分
インジェクター温度: 240℃
検出器: FID(炎光イオン化検出器(Flame ionization detector))
検出器温度: 250℃
温度プログラム: 40℃で5分間、240℃まで10℃/分、240℃で15分間、全実施時間45分間
異なった組成の銅−含有触媒を試験した(表2参照)。
【0132】
【表2】

【0133】
触媒を、反応前に、温度200℃及び水素圧50バールで10時間(h)活性化させた。
【0134】
バッチ法で触媒試験を実施するための一般方法
水含量20%を有する製薬学的グリセロールを使用した。触媒を、最初に0.3l入りミニオートクレーブ中に採取し、オートクレーブを閉め、室温で、200バールのNで漏出について試験した。触媒押出物を成形体の形で使用し、押出物を懸濁触媒の製造のために前以て細砕させた。
【0135】
その後に、オートクレーブを減圧させ、触媒の活性化を実施した。このために、室温で50バールのHを強制させ、次いで、加熱して内部温度200℃にさせ、攪拌せずにこの温度を約10時間(h)持続させた。30℃への冷却及び続いてNでの不活性化後に、オートクレーブを排気させ、かつ反応溶液を吸出させた。
【0136】
グリセロールの反応のために、50バールのHを室温で強制させ、反応混合物を攪拌しながら(速度700〜1000rpm)215℃に加熱した。オートクレーブ中に生じる圧力にHを補足して、所望の最終圧力200バールにした。反応中に消費された水素は補充された。実験の実施時間は10時間であった。実験の実施時間の終了後に、オートクレーブを室温に冷却し、減圧させた。試料及び排出物の分析は、ガスクロマトグラフィーにより、ピークの面積の積分(面積%)によって行なわれた。その結果を表3に示す。
【0137】
表3:固床及び懸濁法での触媒の比較
【表3】

【0138】
固床触媒を用いる一般的な連続的水素添加法
水含量10%を有する製薬学的グリセロールを使用した。実験を、連続操作の実験室用装置中で、200〜240バールで実施した。実験系列9〜11を、主反応器を模擬するために、液相法で、液体を循環させて操作した。各例で、触媒70mlを使用した。
【0139】
装置の構造及び方法説明を下記する:
装置は、液相法によって操作される、液体−加熱の3加熱帯を有する75ml入り管状反応器R1(内φ=12mm、L=800mm)から成る。必要な場合には、HPLCポンプを介して流量調整(ダンフォス(Danfoss))で操作される液体循環を接続することができる。装置の全ての部分は金属製であり、250バールまでの操作圧用に設計される。
【0140】
グリセロール溶液(水性、濃度90%)を、バランスによって調整して、反応器R1中に連続的に計量装入させ、一定条件下に(圧力、温度、触媒空間速度)水素と反応させ、所望の生成物を得る。水素は、圧縮空気−操作コンプレッサーによって必要な圧力に圧縮される50l入り鋼製シリンダーから供給される。所望の反応圧は、排ガス流において圧力調整(P2)を介して確立させ、所望の水素量は、質量流量計(Hi−Tec)を介して流れを調整しながら反応器R1中に供給させる。反応器液体排出物は、HPLCポンプを介して水準を調整しながら(コンテナーB2)排出させ、排出コンテナー(B5)に集められる。反応器ガス排出物を、緩衝容器(B4)を経て通過させ、圧力−制御(P2)レッコ(Recco)弁により減圧させる。
【0141】
実験系列15で、反応を、変更された装置中で続けた(細流床法で液体循環を伴う主反応器、液相法で液体循環をしない流下反応器)。全実験で、触媒は安定していて、いわゆる"浸出"の結果としての触媒損失は起きなかった。
【0142】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,2−プロパンジオールの製造方法において、
a)グリセロール−含有流を得て、そして
b)そのグリセロール−含有流を、銅−含有の不均一系触媒の存在下で、100〜320℃の温度及び100〜325バールの圧力で水素添加させる、1,2−プロパンジオールの製造方法。
【請求項2】
段階a)で、脂肪酸トリグリセリドのエステル交換によって、高級脂肪酸のアルキルエステルの製造で得られるグリセロール−含有流を得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
グリセロール−含有流は、水含量30質量%以下、有利に20質量%以下を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
グリセロール−含有流は、実質的に無水である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
段階a)で、グリセロール−含有流を、熱的後処理、吸着、イオン交換、膜分離、結晶化、抽出又はこれらの方法の2種以上の組合せから選択される、少なくとも1つの後処理方法によって後処理する、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
段階a)で、グリセロール−含有流を、水含量の減少及び/又は触媒的水素添加に不利に作用する成分の除去のために蒸留させる、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
段階a)で、グリセロール−含有流を、硫黄−含有化合物、特に、硫黄−含有芳香族化合物の含量を減少させるために、好適な場合には、水素の存在下で、触媒的に脱硫させる、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
段階a)で、グリセロール−含有流を、触媒的水素添加に不利に作用する成分を除去するための少なくとも1つの吸着剤と接触させる、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
吸着剤は、段階b)で水素添加触媒として使用可能な少なくとも1つの成分を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
段階a)でグリセロール−含有流を得ることは、次の段階:
a1)生物発生脂肪−及び/又は油−含有出発混合物を得る段階、
a2)該出発混合物中に存在する脂肪酸トリグリセリドと、少なくとも1種のC〜C−モノアルコールとのエステル交換をし、そして好適な場合には、該出発混合物中に存在する遊離脂肪酸のエステル化をして、エステル化混合物を形成させる段階、
a3)該エステル化混合物を分離して、C〜C−モノアルキルで富化された少なくとも1つのフラクション及びエステル交換で遊離されるグリセロールで富化された少なくとも1つのフラクションを得る段階、
a4)好適な場合には、該グリセロールで富化されたフラクションを精製する段階
を含む、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
段階b)で使用される水素添加触媒は、ラネー触媒である、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
段階b)で使用される水素添加触媒は、触媒の全質量に対して、酸化物及び/又は元素形の銅少なくとも23質量%、有利に少なくとも35質量%を含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
段階b)で使用される水素添加触媒は、次の金属:
Cu
Cu、Ti
Cu、Zr
Cu、Mn
Cu、Al
Cu、Ni、Mn
Cu、Al、少なくとももう1種の、La、W、Mo、Mn、Zn、Ti、Zr、Sn、Ni、Coから選択される金属
Cu、Zn、Zr
Cu、Cr、Ca
Cu、Cr、C
Cu、Al、Mn、任意にZr
を、各々酸化物形で又は元素形で、又はそれらの組合せで含む、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2009−528392(P2009−528392A)
【公表日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−557728(P2008−557728)
【出願日】平成19年3月2日(2007.3.2)
【国際出願番号】PCT/EP2007/051983
【国際公開番号】WO2007/099161
【国際公開日】平成19年9月7日(2007.9.7)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】