説明

1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの回収方法

【課題】 アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液から、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを効率よく、かつ簡便に回収する。
【解決手段】 アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液を電気透析により脱塩する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液から、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンは、耐アルカリ性、耐熱性を有する非プロトン性極性溶媒として、各種有機化合物の合成(特許文献1,2)、ポリ塩化ビフェニルなどの難分解性有機ハロゲン化物の化学的な分解処理(特許文献3)など各種の用途に使用できることが知られている。
【0003】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンは溶媒として比較的高価であること、化学物質の環境への排出の削減を求められていることから、使用後に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを分離、回収することが望ましい。
【0004】
1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンは水溶性であることから、塩類が混在又は生成する用途に使用した場合、水及び塩類を含有する1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンが生成する。1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを回収するために、塩を含有したまま蒸留分離しようとすると、塩類が析出するため、特殊な装置を使用しない限り、蒸留が困難となる。蒸留前に塩類を除去するため、各種の方法が考案されてきた。塩類を除去する方法として、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含む塩化カルシウム水溶液とハロゲン化炭化水素を混合して、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを抽出する方法(特許文献4)や、n−ブタノールで抽出する方法(特許文献5)などが開示されている。
【0005】
しかしながら、前記方法はいずれも満足できる抽出効率とは言えず、抽出効率を上げるためには煩雑な操作を繰返したり、特殊な装置を必要とするという問題があった。
【特許文献1】特開平6−192156号公報
【特許文献2】特開2002−121189号公報
【特許文献3】特開平7−8572号公報
【特許文献4】特開平3−38571号公報
【特許文献5】特開2005−330186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液から、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを効率よく、かつ簡便に回収する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、電気透析処理で脱塩することにより効率的に1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液を電気透析により脱塩することを特徴とする1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの回収方法に関するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液から、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを効率よく、かつ簡便に回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の方法は、10〜80重量%の1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン及び10重量%以下のアルカリ金属塩を含有する均一な水溶液からの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの回収に適用できる。本発明の回収方法の適用に先立って、被回収液に固体が混在する場合は通常使用される方法でろ別し、不均一な液層が混在する場合は1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水層を分液しておく。
【0011】
本発明に用いられるアルカリ金属塩としては、例えば塩化リチウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0012】
本発明の電気透析による脱塩では、一般的なイオン交換膜を使用できる。陽イオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に、スルホン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、カルボキシル基などの酸性イオン交換基を導入した各種の陽イオン交換膜を使用できる。陰イオン交換膜としては、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体に、ドデシルアミノ基、ジオクチルアミノ基、ピリジル基などの塩基性イオン交換基を導入した各種の陰イオン交換膜を使用できる。
【0013】
前記の一般的なイオン交換膜を装着した電気透析槽にて、アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液を電気透析して、脱塩する。電気透析槽に印加する電圧、電流密度及び処理時間は脱塩するアルカリ金属塩の濃度により適宜選定される。
【0014】
電気透析する水溶液の組成によっては、膜の表面や内部に塩が析出し易くなるため、適宜、透析液に無機酸や有機酸を添加して洗浄することが好ましい。
【0015】
アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液を電気透析することにより、アルカリ金属塩の陽イオンと陰イオンが濃縮された水溶液の流路とアルカリ金属塩が除去された水溶液の流路ができる。
【0016】
アルカリ金属塩が除去された水溶液の流路から1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを回収することができる。
【0017】
電気透析により得られたアルカリ金属塩を実質的に含まない1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン水溶液を蒸留分離することにより、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを効率よく回収することができる。
【0018】
次に、実施例を示し、更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0019】
(実施例1)
8.8gの水と、1.0gの1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと、0.2gの塩化ナトリウムとから成る溶液を調製し、旭化成社製の卓上脱塩装置マイクロ・アシライザーS1型電気透析装置(標準脱塩性能:20mL/hr)を用いて脱塩した。使用膜は、同社製のカートリッジ式イオン交換膜ネオセプタ・カートリッジAC−110−20(使用面積各20cm2、両イオン交換型、倍速脱塩用、分画分子量:100)、処理温度は室温であり、電極液として0.5N NaNOを20g、塩回収液として蒸留水6gを用いた。5.1Vの電圧を印加し、終了設定電流値0.02Aで電気透析を行ったところ、開始時の電流値0.48Aから15分で電流値0.02Aとなり、脱塩は終了した。電気透析開始時の電気伝導度は29mS/cm、終了時の電気伝導度は1.5mS/cmであった。脱塩処理後の溶液の重量は9.2g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの濃度をHPLC絶対検量線法によって算出した結果は10.8%で、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの回収率は99.4%であった。電気伝導度から算出した脱塩処理後の塩化ナトリウム濃度は0.10%であった。
【0020】
(実施例2、3)
水と1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと塩化ナトリウムの組成を変えた以外は実施例1と同様に脱塩した。その結果を表1に示した。
【0021】
【表1】

【0022】
(実施例4、5)
使用膜を、旭化成社製のカートリッジ式イオン交換膜ネオセプタ・カートリッジAC−220−20(使用面積各20cm2、両イオン交換型、倍速脱塩用、分画分子量:300)に変え、脱塩する溶液に加える塩として塩化ナトリウムまたは硫酸ナトリウムを使用し、水と1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンと塩の組成を変えた以外は実施例1と同様に脱塩した。その結果を表2に示した。
【0023】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0024】
アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液から1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを効率的に回収できるので、この水溶液が生成する医薬、農薬、工業薬品の製造、難分解性有機ハロゲン化物の化学的な分解処理に本発明を利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属塩及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを含有する水溶液を電気透析により脱塩することを特徴とする1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンの回収方法。

【公開番号】特開2007−284375(P2007−284375A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−112909(P2006−112909)
【出願日】平成18年4月17日(2006.4.17)
【出願人】(390003001)川研ファインケミカル株式会社 (48)
【Fターム(参考)】