説明

1,3−プロパンジオールの製造方法

1,3−プロパンジオールを水性原料流から回収する方法を開示する。本発明においては、水、1,3−プロパンジオール、および少なくとも一種の汚染物を含んでなる水性原料流を少なくとも一種の溶剤抽出液と接触させ、混合物を形成する。混合物を第一相と第二相とに分離する。第二相は、水性原料流から来る大部分の水を含む。第一相は、溶剤抽出液および水性原料流中に存在していた1,3−プロパンジオールの少なくとも一部を含む。第一相中の1,3−プロパンジオールと存在するいずれか一種の汚染物との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。第一相を、分離された第二相から除去し、1,3−プロパンジオールを回収することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に1,3−プロパンジオールの製造方法に関する。より詳細には、本発明は、1,3−プロパンジオールを製造し回収するための、溶剤抽出に依拠した方法に関する。
【背景技術】
【0002】
精製された1,3−プロパンジオール(PDO)は、発酵、化学的および機械的分離処理を伴う当該分野で公知の方法により商業的に製造することができる。1,3−プロパンジオールは、発酵により製造することができるが、この方法による製造には、発酵の結果生じた不純物を確実に除去して、1,3−プロパンジオールを精製する方法が必要である。PDOを発酵により製造する場合、培養液が、化学組成や特性がPDOに非常に近似した多くの化合物、例えばグリセロールおよび1,2,4−ブタントリオールを含むことがある。発酵に供する原料に使用できる材料であるグルコースは、やはり1,3−プロパンジオールと類似性をもつ化合物であり、発酵の後に残留量としてグルコースが残存することがある。1,3−プロパンジオールの製造において、グルコースを使用する発酵経路の欠点は、下流の熱が関与する工程、例えば蒸留および蒸発で、例えばグルコースなどの糖が着色してしまうことである。残留グルコースをPDOから除去して、PDOを精製するのが好ましい。糖に加え、不純物からも1,3−プロパンジオールを分離してPDOの純度を高め、精製されたPDOの製造に必要な、大量のエネルギーを必要とする蒸留(例えばPDOの精製に一般的な方法)の量を低減できる方法が必要とされている。
【発明の開示】
【0003】
本発明の特定の実施態様は、水性原料流から1,3−プロパンジオールを回収する方法に関する。水性原料流は、水、1,3−プロパンジオールおよび少なくとも一種の汚染物を含んでなる。好ましくは、水性原料流は、濃縮および/または部分的に精製された発酵培養液を含んでなる。特定の好ましい実施態様では、水性原料流は、約5重量%〜85重量%の1,3−プロパンジオールを含んでなり、約10重量%を超える水、および約5重量%〜70重量%の一種以上の汚染物をさらに含んでなる。特定の実施態様においては、水性原料流は、90重量%まで乾燥固体を含んでなる。好ましくは、供給流は、約20重量%〜80重量%の乾燥固体を含んでなる。水性原料流中に存在する少なくとも一種の汚染物は、好ましくは、有機酸、有機塩、無機塩、炭水化物、アルコール、タンパク質、アミノ酸、および低分子量のヒドロキシル化された化合物からなる群から選択される化合物である。低分子量のヒドロキシル化された化合物は、グリセロール、グルコース、およびブタントリオールからなる群から選択することができる。好ましくは、水性原料流は、pHが約2〜11、より好ましくは約6〜8である。
【0004】
水性原料流を少なくとも一種の溶剤抽出液と接触させ、第一混合物を形成する。溶剤抽出液と水性原料流との接触は、下記のように、向流、交差流、または向交差流により行うことができる。接触は、2種類以上の液体の接触における当該分野で公知のように、2工程以上を使用して行うことができる。特定の実施態様においては、溶剤抽出液は実質的に無水であり(例えば約0.5重量%未満の水を含んでなる)、他の実施態様においては水で飽和されている。好ましくは、溶剤抽出液は、疎水性パラメータlogP(logP=[溶質]オクタノール/[溶質]水)が約0.8〜7.7である、アルコール、ケトン、エステル、酸、エーテルまたは植物油からなる群から選択される少なくとも一種のである。特定の好ましい実施態様においては、溶剤抽出液は、疎水性パラメータが約0.8〜2.9である(Biotechnology and Bioengineering Vol. 30、81〜87頁、1987年7月、Biotechnol. Prog., Vol. 7 No.2)。特定の実施態様においては、溶剤抽出液は、(1)例えばペンタノール、プロパン−1−オール、ヘキサノール、またはオレイルアルコールなどのアルカノール、(2)例えば4−メチルペンタン−2−オンなどのケトン、(3)、例えばイソプロピルアセテートまたはトリブチルホスフェートなどのエステル(4)例えばオレイン酸などの酸、(5)例えば大豆油またはひまし油などの油、およびエーテルからなる群から選択される。好ましくは、溶剤抽出液は、ヘキサノールまたはトリブチルホスフェートである。特定の実施態様においては、溶剤抽出液は、炭素と酸素の原子比が約2:1〜18:1、より好ましくは2:1〜10:1、最も好ましくは3:1〜6:1である。
【0005】
ある実施態様においては、脂肪族および芳香族炭化水素から選択された相促進剤(phase enhancer)を溶剤抽出液(上記のような)に加えて使用し、相分離を促進することができる。好ましい相促進剤は、ヘキサン〜デカンの範囲内のアルカン(例えば6〜9個の炭素原子を有する)である。
【0006】
第一混合物は、第一相と第二相とに分離される。第一相は、溶剤抽出液の大部分(例えば約50%を超える)および水性原料流中に存在していた1,3−プロパンジオールの少なくとも一部を含む。第一相中の1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。従って、第一相中の1,3−プロパンジオールは、水性原料流中の1,3−プロパンジオールよりも純度が高い。第二相は、水性原料流由来の水の大部分(例えば約50%を超える)、および水性原料流由来の汚染物の少なくとも一部を含む。分離は、当該分野で公知の方法を使用して行うことができる。特定の実施態様においては、接触工程および第一相と第二相との分離は、ミキサー−沈降装置で行う。特定の好ましい実施態様においては、第一相を第二相から遠心分離機を使用して分離する。特定の実施態様においては、精製された1,3−プロパンジオールは、第二相から第一相を除去することにより回収される。本発明の特定の実施態様においては、好ましくは温度約20℃〜90℃、より好ましくは約25℃〜35℃、最も好ましくは温度約30℃で行う。
【0007】
ある実施態様においては、除去された第一相を、第一量の水溶液または水と接触させ、第二混合物を形成する。第一量の水または水溶液と第一相との体積比は、約20:1〜1:20、より好ましくは約20:1〜1:1、最も好ましくは約7:1〜3:1である。第二混合物は、第三相と第四相とに分離される。第三相は、第一相の溶剤抽出液の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。第四相は、1,3−プロパンジオール、および第一量の水溶液または水の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。第四相中の1,3−プロパンジオールと第四相中に存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。従って、第四相中の1,3−プロパンジオールは、水性原料流中の1,3−プロパンジオールよりも純度が高い。分離は、当該分野で公知の2種類の非混和性または部分的に混和し得る液体を分離する方法を使用して行うことができる。特定の実施態様においては、精製された1,3−プロパンジオールは、第三相から第四相を除去する(例えばデカンテーションにより)ことにより回収される。特定の実施態様においては、回収された第三相を、第一混合物で使用する溶剤抽出液に再利用することができる。回収された第四相を処理し、第四相中の1,3−プロパンジオールをさらに精製することができる。第四相は、第一混合物用の水性原料流が、回収された第四相を含むように、再利用することができる。
【0008】
ある実施態様においては、除去された第一相が、1,3−プロパンジオールおよび溶剤抽出液に加えて、少なくとも一部の水をさらに含んでなり、除去された第一相が疎水性溶剤と接触して第二混合物を形成する。好ましくは、第二混合物中の、除去された第一相と疎水性溶剤との重量比は、約4:1〜1:4、好ましくは2:1〜1:2である。好ましくは、疎水性溶剤は、logPが約3.0〜10、好ましくは3.5〜5.5である溶剤から選択される。好ましくは、疎水性溶剤は、分子量がヘキサンとデカンの分子量の間にあるアルカンから選択される。第二混合物は、第三相と第四相とに分離される。第三相は、第二混合物の溶剤抽出液および疎水性溶剤の両方の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。第四相は、1,3−プロパンジオール、および第一相の水の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。好ましくは、第四相中の1,3−プロパンジオールと第四相中に存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。従って、第四相中の1,3−プロパンジオールは、水性原料流中の1,3−プロパンジオールよりも純度が高い。1,3−プロパンジオールは、第三相から第四相を除去することにより回収することができる。
【0009】
本発明の特定の方法においては、接触の際の第一混合物の温度を、1,3−プロパンジオールが水性原料流よりも溶剤抽出液中により可溶となるように調節する。溶剤抽出液はヘキサノールである。水性原料流および溶剤抽出液の第一混合物は、上記のように、第一相と第二相とに分離される。第一相は、第二相から除去される。第一相の温度は、第二混合物が形成されるように調節される。第二混合物は、第三相と第四相とに分離される。第三相は、第一相由来のヘキサノールの大部分を含み、第四相は、1,3−プロパンジオールを含む。好ましくは、第四相中の1,3−プロパンジオールと第四相中に存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。
【0010】
汚染物を含む水性原料(すなわち発酵培養液)からPDOを精製する当該分野で公知の特定の方法においては、PDOを水性原料流中に残存させたまま汚染物を抽出する。本発明の特定の方法においては、水性原料流からPDOを溶剤相中に抽出し、原料中に存在する汚染物から分離する。本発明の特定の実施態様においては、不純物を含む供給流から得られる1,3−プロパンジオールの純度を増加することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明の方法を図式的に示す図である。水、1,3−プロパンジオールおよび少なくとも一種の汚染物を含んでなる水性原料流(例えば発酵培養液)14が溶剤抽出液10と抽出装置12中で接触し、第一混合物を形成する。溶剤抽出液は、好ましくはある範囲の温度(例えば2℃〜100℃)で水と非混和性であるか、または部分的に混和性である。溶剤抽出液10と水性原料流14(例えば以下に記載するような濾過された発酵培養液)の体積/体積比は、好ましくは1:4〜50:1、より好ましくは約10:1である。特定の好ましい実施態様においては、溶剤抽出液は、下記の表に示すように、約0.8〜7.7、より好ましくは0.8〜2.9の疎水性パラメータlogP(logP=[溶質]オクタノール/[溶質]水)を有する。好ましい溶剤抽出液はトリ−ブチルホスフェート(TBP)である。
【0012】
【表1】

【0013】
水性1,3−プロパンジオール原料流14および溶剤抽出液(例えばTBP)10を、温度約2℃〜100℃、より好ましくは30℃で攪拌する。攪拌後、この組み合わされた混合物を、沈殿させて2相に分離することができる。第一相16は、溶剤抽出液の大部分(例えば約50%を超える)を含み、第二相18は、第一混合物12中に存在する水の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。第一相は、水性原料流14中に存在する1,3−プロパンジオールの少なくとも一部を含み、1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液10と接触する前の水性原料流14中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。第一相16は、当該分野で公知の方法(例えば、特に遠心分離およびデカンテーション)により第二相18から分離および除去し、1,3−プロパンジオールを回収することができる。回収された1,3−プロパンジオールは、出発水性原料流よりも純度が高い(例えば存在する1,3−プロパンジオールの量あたり、比較的少ない汚染物を含む)。
【0014】
第一相16は、1,3−プロパンジオールおよび溶剤抽出液を含み、1,3−プロパンジオールの大部分(例えば約50重量%を超える)は、幾つかの方法により、濃縮された水相に戻す(例えば逆抽出する)ことができる。逆抽出工程は、特定の実施態様において、公知のミキサー−沈降装置または遠心分離装置を包含することができる。逆抽出は、幾つかの方法により達成することができる。これらの方法としては、水または水溶液の使用(図2)、疎水性である第二溶剤の使用(図3)、または温度の変化(図4)がある。
【0015】
水または水溶液による逆抽出を図2に示す。第一量の水または水溶液26を第一相16と接触させ、上記のように第二混合物を形成する。第一量の水26は第一相16と、約2℃〜100℃、好ましくは30℃で接触させることができる。第一量の水26と第一相16とは、約20:1〜1:20v/vでよいが、好ましくは約3:1v/vである。1,3−プロパンジオールの少なくとも一部は、第一相16から第四水相28に移行し、これは、例えばデカンテーションにより沈降装置から除去し、第三溶剤抽出液相24を残すことができ、この相は、その後の抽出工程に再利用(例えば溶剤抽出液に再利用)することができる。第三相24は、第二混合物から溶剤抽出液の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。第四相28は、第二混合物から水の大部分(例えば約50重量%を超える)を含む。特定の実施態様においては、遠心分離装置を使用し、溶剤抽出液相24から水相28を分離することもできる。第四相28中の、1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比は、1,3−プロパンジオールと、水性原料流が溶剤抽出液と接触する前の水性原料流中の同じ汚染物との重量比よりも大きい。
【0016】
逆抽出を達成する別の方法は、疎水性溶剤によるものであり、これを図3に示す。好ましくは、疎水性溶剤は約3.0〜5.5のlogPを有する溶剤、例えば下記の表に示す溶剤から選択する。好ましい疎水性溶剤は、ヘキサンからデカンの範囲内にあるアルカンである。
【0017】
【表2】

【0018】
1,3−プロパンジオール、溶剤抽出液、および少なくとも一部の水を含んでなる第一相16を疎水性溶剤36(例えばヘキサン)と接触させ、第二混合物32を形成することができ、混合物32を沈殿させて、二つの相を形成することができる。接触および沈殿は、ミキサー−沈殿装置で行うことができる。特定の実施態様では、二つの相を遠心分離装置で分離することができる。二つの相の一方は、溶剤抽出液の大部分(例えば約50重量%を超える)および疎水性溶剤を含んでなる溶剤相34であり、他方の相は、第一相16から移行した、1,3−プロパンジオールが濃縮された水相38である。水相38は、大部分の水(例えば約50重量%を超える)および第一相16中に存在していた1,3−プロパンジオールから構成されている。第一相16と疎水性溶剤36の好ましい比は、疎水性溶剤による逆抽出で、約4:1〜1:4、より好ましくは約2:1〜1:2である。
【0019】
溶剤から1,3−プロパンジオールを分離する第三の方法は、抽出と、異なった温度における逆抽出とによって達成することができる(図4)。これは、溶剤抽出液44として例えばヘキサノールを使用して行うことができる。水性原料40をミキサー−沈殿装置42中でヘキサノールと約80℃で接触させて沈殿させた後、不純物を含む水相46(例えば水性原料流からの水を含んでなる)を廃棄する。80℃で除去したヘキサノール/1,3−プロパンジオール混合物45を約30℃に冷却し、次いで逆抽出装置48中でこの混合物を二つの相に分離する。一方の相50は、ヘキサノールを含み再利用することができる。他方の相52は、水を含み、1,3−プロパンジオールが濃縮されている。30%d.s.における水性原料とヘキサノール溶剤との好ましい重量比は約1:3である。
【0020】
図1〜4に示す方法により、発酵培養液または他の水性原料流のプロパン−1,3−ジオール含有量を、無水ベースで計算して、重量で約85%から99%以上に増加させることができ、1,3−プロパンジオールは出発原料流におけるよりもはるかに純粋になる。
【0021】
1,3−プロパンジオールと溶剤との接触は、一つの工程で行うか、または多数の工程で行うことができる。多工程(例えば1〜n)による処理により、ある相から他の相への1,3−プロパンジオールの移行効率が増加する。多工程を使用する多くの方法がある。例えば、当該分野で公知のように、交差流配置の設定(図5)を抽出に使用できる。1〜nの数はいずれでもよく、各工程が混合および分離を行うことができる(例えばミキサー−沈降装置204−1、204−2、204−3、204−n)。新しい溶剤抽出液202が各工程204−1、204−2、204−3、204−nに供給され、1,3−プロパンジオールを含む原料200が各工程204−1、204−2、204−3、204−nを通過する。各工程で、二つの相があり、1,3−プロパンジオールを含む溶剤の画分(例えば第一相206)を各工程で除去することができる。通常、これらの画分を組み合わせることができる。各工程は、相の比率を融合および分離特性に最適化できるように、溶剤抽出液202または第二相208を内部再利用する手段を備えることができる。
【0022】
あるいは、当該分野で公知のように、向流配置(図6)を抽出に使用することもできる。この配置は、工程の数が1〜nのいずれでもよく、各工程が混合および分離を行うことができる(例えばミキサー−沈降装置204−1、204−2、204−3、204−n)。1,3−プロパンジオールを含む水性原料200および溶剤抽出液202が工程204−1、204−2、204−3、204−nを反対方向に通過し、枯渇した原料(例えば第二相208)が最後の工程204−nを離れ、第一相206が工程204−1を離れる。この配置で、各工程204−1、204−2、204−3、204−nは、相の比率を融合および分離特性に最適化できるように、溶剤抽出液202または第二相208を内部再利用する手段を備えることができる。
【0023】
もう一つの可能な抽出方法としては、水性原料流200および溶剤抽出液202の向交差流(当該分野で公知のように、図7)を行うことができる。この方法では、新しい溶剤抽出液202を工程204−1、204−2、204−3、204−nのいずれかに加えることができるが、第一相206は工程204−nから向流で通され、工程204−1で排出され、枯渇した原料(例えば第二相208)が最後の工程nを離れる。
【0024】
図8は、本発明の方法をより詳細に、図式的に示す図である。発酵により製造された発酵培養液、または他の1,3−プロパンジオールを含む水性原料流110は、有機酸またはその塩、無機塩、タンパク質画分、ケトン、金属イオン、細胞、細胞質デブリ、発酵生成物(例えば特にグリセロール、および1,2,4−ブタントリオール)、着色不純物、水、栄養(例えば特にアンモニアおよびリン酸塩)、および未使用炭素供給源(例えばグルコース)から選択し得る少なくとも一種の汚染物を含んでなる。発酵種原料は、発酵種手順(train)を使用して発生させることができる。発酵種原料を、1,3−プロパンジオール製造用の発酵に、新鮮な栄養分、水、および炭素供給源と共に導入する。発酵方法は当該分野で公知である。次いで、細胞株を処理し、発酵培養液110を回収する。本発明は、発酵培養液から1,3−プロパンジオールを回収する手段を提供する。しかしながら、本発明が、発酵との関連における使用に限定されるものでないことは言うまでもなく、以下に指摘するように、精製された、および/または濃縮された培養液での使用にも限定されない。
【0025】
好ましくは、発酵培養液110中の少なくとも約75重量%の固体(例えば細胞および細胞質デブリ)を、当該分野で公知の濾過または遠心分離方法120(例えば回転真空フィルターまたは真空ベルトフィルター)により除去する。より好ましくは、発酵培養液110中の少なくとも約90重量%、最も好ましくは少なくとも約95重量%の固体を除去する。濾過された発酵培養液の乾燥固体含有量は、乾燥固体ベースで、好ましくは約8〜20%、より好ましくは約15%乾燥固体(d.s.)である。濾過された発酵培養液120は、所望により蒸発装置130中で水を除去することにより濃縮し、30〜50%d.s.、より好ましくは約40%d.s.を有する培養液を得ることができる。
【0026】
発酵培養液110、120は、1,3−プロパンジオールの回収前に、当該分野で公知の方法を使用して部分的精製および/または前処理を行うことができる。部分的精製は、例えば、特定不純物の沈殿および除去を含んでもよい。
【0027】
一種以上の溶剤を含む溶剤抽出液132は、抽出装置140中で、濾過および所望により濃縮された発酵培養液130と接触させることができる。好ましい溶剤抽出液の一種は、トリ−ブチルホスフェート(TBP)である。溶剤抽出装置140は、向流、向交差流、交差流、ミキサー−沈降装置または遠心接触装置、あるいは液体−液体抽出に一般的に使用されている他の装置を使用する多くの工程を含むことができる。抽出装置140は、単に一工程でもよいが、良好な収率を与える効率的な操作には、多工程を使用するのが好ましい。抽出に使用する40%d.s.における原料(例えば濾過および所望により濃縮された発酵培養液)と溶剤抽出液との典型的な比は約1:10である。
【0028】
水を含む第二相141は、糖の大部分、塩およびグリセロールの少なくとも一部、および濾過された培養液130中に存在する他の不純物を含む。糖、塩およびグリセロール(例えばラフィネート)は、廃棄するか(141)、または所望によりさらに精製することができる。
【0029】
溶剤抽出液を含む第一相142は、原料流130から溶剤(好ましくはTBP)により抽出された1,3−プロパンジオールを、水性原料流130中に存在する不純物の一部と共に含む。これは、精製抽出装置150中で、限られた量の水溶液または水151で洗浄することにより、さらに精製することができる。所望により、水溶液151は、第一相142から、ある種の色や有機酸を除去するために、苛性ソーダ等の希釈塩基を含むことができる。この工程で使用する水または希釈塩基(例えば水溶液)の量は、典型的には第一相に対して1:15の比にあるが、逆抽出160で使用する量よりは常に少ない。精製抽出装置150由来の精製工程からの洗浄液を含む流れである水相152は、溶剤抽出液132と混合することができる。精製工程150の目的は、第一相から来る残留不純物を洗浄し、高度の精製を行うことである。これらの不純物はある程度の1,3−プロパンジオールを含むが、これは、洗浄液152が抽出工程140に再利用される時に回収される。
【0030】
精製抽出装置150は、液体−液体抽出装置であり、例えばミキサー−沈降装置または遠心接触装置でよい。その数は、必要とする精製の効果に応じて、一から複数の装置でよい。
【0031】
溶剤抽出液(例えばTBP)中の精製された1,3−プロパンジオール153は、精製された第一相と呼ばれ、溶剤抽出液を含む。次の工程では、精製された第一相153を逆抽出装置160に送る。この装置は、十分な量の水161を使用し、1,3−プロパンジオールを精製された第一相153から水相163中に移行させる。逆抽出装置160は、好ましくは液体−液体接触装置であり、例えばミキサー−沈降装置、カラム抽出装置、または遠心接触装置でよい。必要とする逆抽出の効果に応じて、一工程または多工程で行うことができる。水161と精製された第一相153との比は、好ましくは1:4である。1,3−プロパンジオールは、重質の水相163に移行する。逆抽出装置160由来の溶剤抽出液(例えばTBP)を含む流れ162は、抽出装置140に再利用することができる。所望により、この溶剤抽出液流162から蒸留により水を除去し、その水173は廃棄することができる。使用する特定の温度で、約6%の水がTBP(例えば溶剤抽出液)中に溶解することができ、この水を除去し、脱水された溶剤抽出液を得ることにより、抽出装置140における抽出効率を改良することができる。
【0032】
本発明において使用できるTBPは、水に部分的に可溶である。残留溶剤は、液体−液体抽出ストリッパー装置165中で疎水性溶剤164、例えばヘキサンで処理することにより、精製された1,3−プロパンジオールを含む水性流163から除去することができる。疎水性溶剤流164(例えばヘキサン)は、溶剤抽出液を水から分離し、1,3−プロパンジオールを水中に残し、溶剤抽出液を事実上溶解または混入させない。このストリッパー165は、ミキサー−沈降装置または遠心接触装置でよく、必要とする効果に応じて、一工程または多工程でよい。水性生成物流と疎水性溶剤流(例えばヘキサン)との典型的な比は、50:1である。
【0033】
混合された溶剤流166は、疎水性溶剤(例えばヘキサン)および溶剤抽出液(例えばTBP)を含み、これらの液は、蒸発装置170で蒸留することにより分離することができる。この蒸留蒸発により分離された疎水性溶剤167は、液体−液体ストリッパー装置165に戻し、溶剤抽出液171は、抽出装置140に再利用することができる。
【0034】
ストリッパー165由来の水性流168は190で蒸発させて、製品1,3−プロパンジオール193を製造することができる。所望により、蒸発工程190の前または後に、さらなる精製として、例えば強酸陽イオンと強塩基陰イオン樹脂の混合物を含む混合床カラムを使用するイオン交換処理180を使用し、色またはある種の有機酸、例えばレブリン酸を除去することができる。当該方法を使用することが好ましく、1,3−プロパンジオール193の純度は99重量%を超えることができ、高収率の1,3−プロパンジオールが可能である。
【0035】
本発明で複合水性原料(例えば発酵培養液)から1,3−プロパンジオールを回収することにより、1,3−プロパンジオールを溶剤抽出液相に選択的に移行させることができる。特定の実施態様においては、本発明の溶剤抽出液は、PDOおよび不純物を含んでなる複合水性原料流から、小数の特定の不純物をPDOと共に分離するのに使用できる。PDOを含む水性原料(例えば発酵培養液)中に存在することがある特定の汚染物は、PDOと同じ化学区分の化学物質(例えば低分子量のヒドロキシル化された化合物)である。PDOと同じ区分の、logPが−2.1〜1である汚染物は、例えばグリセロール、ブタントリオール、またはグルコースである。(下記の表に示す例参照)
【0036】
【表3】

【0037】
低分子量のヒドロキシル化された化合物の区分に入る化合物、例えばPDOは、水と強く相互作用する傾向があり、多くの場合は水と完全に混和し得る。これらの化合物が水と強く相互作用し、水と完全に混和し得るために、当該分野で公知の方法では、これらの化合物から水を分離するのに、高いエネルギー加える必要がある場合がある。従って、本発明のように、1,3−プロパンジオールおよび関連する化合物が水と混和し得る溶剤中で回収できることは驚くべきことである。PDOを同じ区分の化合物よりも選択的に抽出できることは、さらに驚くべきことである。従って、PDOが、本発明のように、水性原料から、水に不溶な(例えばひまし油)または低混和性(例えば特にTBPおよびヘキサノール)溶剤中に選択的に抽出されることは、予期せぬことであった。
【実施例】
【0038】
下記の例は、本発明の好ましい実施態様を立証するために記載する。当業者には明らかなように、下記の例中に開示する技術は、本発明者が本発明の実施で十分に機能することを発見した技術であり、従って、その実施に好ましい方法を構成すると考えられる。しかしながら、当業者には明らかなように、開示する特定の実施態様の中で多くの変形を行うことができ、本発明の精神および範囲から離れることなく、同等または類似の結果が得られる。
【0039】
例1 1,3−プロパンジオールの一工程抽出および逆抽出
例1a トリブチルホスフェートによる抽出
1,3−プロパンジオール(PDO)31.33%w/v、グリセロール1.66%、1,2,4−ブタントリオール(BTO)0.74%およびグルコース0.13%を含む濃縮水性発酵培養液4.2mlをトリブチルホスフェート(水6%含有)35mlと20℃で十分に混合した。この混合物を遠心分離により二つの相(軽質1相(例えば第一相)37mlおよび重質1相(例えば第二相)2.5ml)に分離した。トリブチルホスフェートを含んでなる軽質1相(4ml)を水0.24mlと混合することにより精製し、分離させ、水を含んでなる重質2相(0.3ml)およびトリブチルホスフェートを含んでなる「精製された」軽質2相(3.7ml)を得た。
【0040】
例1b 水による逆抽出
トリブチルホスフェートを含んでなる精製された軽質2相(3ml)を水11.5mlと混合することにより逆抽出し、相分離し、トリブチルホスフェートを含んでなる軽質3相(3ml)および水を含んでなる重質3相(11.5ml)を得た。
【0041】
例1c ヘキサンによる逆抽出
精製された軽質3相2mlをn−ヘキサン(6ml)と混合することにより逆抽出し、相分離し、ヘキサンを含んでなる軽質4相(5.8ml)および水を含んでなる重質4相(0.2ml)を得た。表1は、この例で得た流れの組成を示す。
【0042】
【表4】

【0043】
抽出に供給された発酵培養液の色は褐色であった。第一抽出は、明黄色の軽質1相および褐色の重質1相を与えた。精製工程で、重質2相のより暗い黄色により示されるように、軽質1相から色がさらに除去された。
【0044】
例2 1,3−プロパンジオールを抽出する際の温度変化
1,3−プロパンジオール(PDO)を、ヘキサノールで抽出し、分離し、次いで軽質溶剤相を冷却し、次いで重質水相を分離することにより、精製することができる。この水相中には、より純粋な1,3−プロパンジオールが存在する。
【0045】
精製すべき1,3−プロパンジオールを含み、下記の表に組成を示す組成を有する乾燥固体30%の混合物3gを、90℃で2工程で抽出した。各工程で使用した新しいヘキサノールの量は12gであった。第二抽出から得た軽質相を、第三抽出で別の30%乾燥固体3gからPDOを抽出するのに使用した。抽出および分離はすべて、約50ml容積の円錐形ガラス管で行った。
【0046】
各抽出は、周期的に攪拌しながら20分間行った。第一抽出から得た軽質相は廃棄した。
【0047】
第三抽出用の軽質相の分析を下記の表に示す。次いで、この軽質相を25℃の室温に冷却する。冷却により、この相は2相に分離し、新たに形成された水性重質相を分離し、分析し、結果を表に示す。
【0048】
【表5】

【0049】
例3 PDOの交差流抽出
例3a 無水トリブチルホスフェートによる抽出
2工程交差流抽出図式で、乾燥固体44%、組成(乾燥固体に対する%w/w%)PDO91.9%、グリセロール6.9%およびグルコース1.2%の水性原料5.0gを、常温で無水トリブチルホスフェート(TBP)24.9gと十分に混合した。沈降および遠心分離の後、二つの透明な相が得られた(TBPを含んでなる第一軽質相27.9gおよび水を含んでなる中間重質相2.0g)。重質相を無水TBP14gと再混合し、分離し、TBPを含んでなる第二軽質相15.4gおよび水を含んでなる最終重質相0.6gを得た。一つに合わせた軽質相中に、本来のPDOの98%が純度93.6%で、本来のグリセロールの83%および本来のグルコースの37%と共に確認された。
【0050】
【表6】

【0051】
例3b 90℃におけるヘキサノール抽出
2工程交差流抽出図式で、乾燥固体29.1%、組成(乾燥固体に対する%w/w%)PDO90.7%、グリセロール7.3%およびグルコース2.0%の水性原料6.0gを、90℃でヘキサン−1−オール18.1gと十分に混合した。沈降および遠心分離の後、二つの透明な相が得られた(ヘキサン−1−オールを含んでなる第一軽質相22.1gおよび水を含んでなる中間重質相2.0g)。重質相をヘキサノール9.96gと再混合し、分離し、ヘキサノールを含んでなる第二軽質相11.3gおよび水を含んでなる最終重質相0.7gを得た。一つに合わせた軽質相中に、本来のPDOの97%が、本来のグリセロールの75%および本来のグルコースの21%と共に確認された。一つに合わせた軽質相の純度は93.7%であった(原料純度90.7%から上昇した)。
【0052】
【表7】

【0053】
例4 PDOの向流抽出
例4a 培養液のRobatel抽出、精製工程を含む
抽出工程において向流様式で作動する8ミキサー−沈降装置段階および精製工程で類似の8段階を有する実験室用Robatel(ミキサー−沈降装置の自動化された配列)を使用した。図9は、使用する一般的な製法の代表的な図式である。発酵培養液64を組み合わせ原料66に加える。組み合わせ原料66は、主要抽出装置(例えばRobatelミキサー−沈降装置)68中で溶剤抽出液72と混合される。水および不純物(例えば発酵培養液からの糖)を含んでなる第二相70(例えばラフィネート)を除去する。次いで、溶剤抽出液および1,3−プロパンジオールを含んでなる第一相62を精製抽出装置58中で洗浄する。除去された第一相62に加える洗浄54は、水性の、水、または洗浄化学物質、例えば塩基、例えば水酸化ナトリウム、を加えた水でよい。精製抽出装置58は、上に説明したように8段階を含んでなる。水性洗浄相60は、精製抽出装置58から回収され、溶剤抽出液および精製された1,3−プロパンジオールを含んでなる精製された抽出物56を残すことができる。水54で洗浄および精製することにより、ある種の不純物を除去して1,3−プロパンジオールの純度を増加することができ、水および不純物を含んでなる水性流は、組み合わせ原料66中の発酵培養液64と混合され、主要抽出装置68に戻され、水性洗浄液60中の1,3−プロパンジオールをすべて回収し、1,3−プロパンジオール収率の低下を防止する。
【0054】
抽出は、常温で行った。各段階は、沈降装置容積が140mlである。原料は、乾燥固体(d.s.)33%の発酵培養液であり、PDO30.17%w/v、グリセロール1.6%、1,2,4ブタントリオール(BTO)0.7%およびグルコース0.1%、ならびにナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムの塩を含む。陽イオンの合計は4126ppmであった。培養液64をこの装置に0.85ml/分で供給し、0.70ml/分の精製水性出口流60と混合し、組み合わせ原料66を1.55ml/分で抽出工程68に送った。抽出工程68では、組み合わせ原料66を14.0ml/分の湿ったTBP(トリブチルホスフェート)72(水5.4%を含む)と接触させた。抽出工程から、第二相ラフィネート70が1.1ml/分で、および第一相抽出物62(溶剤相)が14.45ml/分で吐出された。第一相62は、精製段階58で水0.6ml/分と接触し、精製水性出口流60(抽出工程68に戻される)および14.35ml/分の精製された抽出物56(溶剤相)が得られた。分析は、下記の表に示す。PDOの収率(精製された抽出物で)は95%であり、純度は92.8%から97.2%に引き上げられた。陽イオンの投入量は3200マイクログラム/分であり、精製された抽出物は255マイクログラム/分を示した。
【0055】
【表8】

【0056】
【表9】

【0057】
例4b Robatel精製した抽出物の水性逆抽出
例4aから得た精製抽出物16.4kgを逆浸透品質水44.5kgと混合した。この水は、PDOを溶剤から水相に抽出した。
【0058】
この水相を分離し、ヘキサンと混合し、残留するTBPをすべて除去した。
【0059】
次いで、水相を蒸発により濃縮し、PDO純度97.5%の製品を製造した。
【0060】
【表10】

【0061】
例5 溶剤スクリーン
例5a 単一溶剤とのPDO混合物
PDO46%w/v、グリセロール3.5%およびグルコース2.9%を含む水溶液10gを30℃に加熱し、丁度曇りが生じ始めるまで、必要な溶剤を非常に僅かな量で加えた。さらに溶剤(約1g)を加え、十分に混合した。この混合物を10分間沈降させ、次いで遠心分離により相を完全に分離した。二つの相(溶剤および水性)を分析した。下記の表は、3種類の化学種の分布係数(溶剤相中の濃度を水相中の濃度で割ったものとして定義)およびグリセロールと比較したPDOの抽出選択性(PDOの分布係数をグリセロールの分布係数で割ったものとして定義)を示す。
【0062】
【表11】

【0063】
例5b 培養液と混合溶剤
PDO31.3%w/v、グリセロール1.66%、1,2,4ブタントリオール0.74%およびグルコース0.13%を含む乾燥材料33.9%の発酵培養液5mlを、常温で、(通常)一連の溶剤混合物30mlで抽出した。二つの相が得られたので、これらを分離し、分析した。
【0064】
【表12】

【0065】
上記と同様に、この表は、化学種の分布係数(溶剤相中の濃度を水相中の濃度で割ったものとして定義)およびグリセロールと比較したPDOの抽出選択性(PDOの分布係数をグリセロールの分布係数で割ったものとして定義)を示す。すべての場合で、抽出されたPDOの純度は原料中の92.5%よりも高い。混合された溶剤の選択性(PDO/グリセロール)は、前に示した単一溶剤よりも高いことが多く、これらの溶剤混合物によるグルコースの排除は、通常、非常に良い。
【0066】
例6 アルカリによる色および有機酸の除去
発酵培養液のRobatel向流抽出および精製から採取した「精製抽出物」(TBP溶液)の一連の15ml部分を、増加量の水酸化ナトリウムを水1ml中に入れたものと混合した。重質相を分離した。重質(水性)相の色は、より多くのアルカリを加えると共に増加し、軽質相の色は減少した。(軽質相の色は300nm、重質相の色は420nmにおける吸収として測定した)これらを下記の表に示す。軽質相のそれぞれの系列における有機酸レベルも測定し、下記の表におけるように有機酸の除去を示した。
【0067】
【表13】

【0068】
【表14】

【0069】
例7 汚染物を除去するための混合床
精製された水性PDO流を、例4と同様にヘキサン洗浄した後、混合樹脂床60mlの上に通し、0.5床体積画分で集めた。混合床組成は、Purolite C160 Strong Acid Cation樹脂およびPurolite A510 Strong Base Anion樹脂を1:2床体積で混合したものである。この床は、下記の表に示すようにほとんどの有機酸を除去するのに有効であった。レブリン酸は、着色に寄与すると考えられたので、本来の精製された試料中で重要であった。結果から分かるように、混合床は、ほとんどの痕跡量の酸を除去するのに有効であり、溶液は、濃縮した後も無色のままであった。原料および濃縮物の色を420ナノメートルにおける吸収として測定した。原料の色は0.106であり、濃縮物の色はゼロであった。
【0070】
【表15】

【0071】
例8 連続的ヘキサン抽出
発酵培養液をTBPで抽出することにより調製した軽質相8ml(PDO1.91%w/v、グリセロール0.039%、1,2,4ブタントリオール0.085%を含み、検出可能なグルコースを含まない)を、混合により様々な量のn−ヘキサンと接触させ、続いて軽質と重質相とを分離した。各接触後、重質相(すべて約0.15ml)を除去してから、次の接触を行った。初期の軽質相およびそれに続く重質相の分析を下記の表に示す。早い時期の水相は、原料よりも(PDOに関して)純度が低く、本来のTBP溶液中のPDOの46%であった。4および5番目の抽出から得た水相は、PDOに関して原料よりも純度が高かった。
【0072】
【表16】

【0073】
例9 連続的水抽出
発酵培養液をTBPで抽出することにより調製した第一相20ml(PDO1.91%w/v、グリセロール0.039%、1,2,4ブタントリオール0.085%を含み、検出可能なグルコースを含まない)を、混合により各2ml部分の水と6回連続的に接触させ、続いて軽質および重質相を分離した。各接触後、重質相(すべて約2ml)を除去してから、次の接触を行った。初期の軽質相およびそれに続く重質相の分析を下記の表に示す。水相の純度は、連続的な抽出と共に増加した。
【0074】
【表17】

【0075】
例10
55%乾燥固体PDOの発酵培養液5gを、0〜50%の様々な百分率の灯油を含むトリブチルホスフェート(TBP)30gに加えた。これらの混合物を、微小気泡が生じないように慎重に混合し、相分離に要した時間を記録した。
【0076】
表15は、TBP抽出溶剤中の灯油百分率が増加すると共に、水相と溶剤相との間の相分離の速度が増加することを示す。TBP抽出溶剤100%で、この率は完全分離に対して5分間であり、TBP80%および灯油20%では、これが3分間に減少(40%低下)し、TBPおよび灯油50%では、この率は1.5分間に減少(70%低下)した。
【0077】
【表18】

【0078】
本明細書で開示および特許権請求する方法はすべて、本開示を考慮し、過度の実験を行わずに実施できる。本発明の方法を好ましい実施態様に関して説明したが、当業者には明らかなように、本発明の概念、精神および範囲から離れることなく、本方法およびここに記載する本方法の工程または工程の順序に変形を加えることができる。より詳しくは、化学的に関連する特定の試剤を、ここに記載する試剤と置き換えても、同じ、または同等の結果が達成されることは明らかである。当業者には明らかな、そのような類似の代替品および変形は、請求項に規定する本発明の精神、範囲および概念の中に入る。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。
【図2】水が関与する逆抽出で1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。
【図3】疎水性溶剤が関与する逆抽出で1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。
【図4】温度変化が関与する逆抽出で1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。
【図5】供給流と溶剤抽出液の交差流接触により1,3−プロパンジオールを抽出するための処理フローダイアグラムである。
【図6】供給流と溶剤抽出液の向流接触により1,3−プロパンジオールを抽出するための処理フローダイアグラムである。
【図7】供給流と溶剤抽出液の向交差流接触により1,3−プロパンジオールを抽出するための処理フローダイアグラムである。
【図8】1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。
【図9】洗浄工程が関与する1,3−プロパンジオールを回収するための本発明の処理フローダイアグラムである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3−プロパンジオールを含んでなる発酵培養液から1,3−プロパンジオールを回収する方法であって、
水、1,3−プロパンジオール、および少なくとも一種の汚染物を含んでなる発酵培養液を、少なくとも一種の溶剤抽出液と接触させ、第一混合物を形成する工程、および
前記第一混合物を第一相と第二相とに分離する工程
を含んでなり、
前記第一相が、前記溶剤抽出液の大部分および前記発酵培養液中に存在していた1,3−プロパンジオールの少なくとも一部を含んでなり、前記第一相中の1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比が、1,3−プロパンジオールと、前記発酵培養液が前記溶剤抽出液と接触する前の前記発酵培養液中の同じ汚染物との重量比よりも大きく、
前記第二相が、前記発酵培養液由来の水の大部分および前記汚染物の少なくとも一部を含んでなる、方法。
【請求項2】
前記第一相を前記第二相から除去することにより、1,3−プロパンジオールを回収する工程をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記除去された第一相を第一量の水溶液と接触させて第二混合物を形成し、
前記第二混合物が、第三相と第四相とに分離し、
前記第三相が、前記第一相の溶剤抽出液の大部分を含んでなり、
前記第四相が、1,3−プロパンジオール、および前記第一量の水溶液の大部分を含んでなり、前記第四相中の1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比が、1,3−プロパンジオールと、前記発酵培養液が前記溶剤抽出液と接触する前の前記発酵培養液中の同じ汚染物との重量比よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第四相を前記第三相から除去することにより、1,3−プロパンジオールを回収する工程をさらに含んでなる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶剤抽出液が回収された第三相を含むように、前記回収された第三相を再利用することをさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記回収された第四相を処理して、前記第四相中の1,3−プロパンジオールをさらに精製することをさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記発酵培養液が回収された第四相を含むように、前記第四相を再利用することをさらに含んでなる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記第一量の水溶液と前記第一相との体積比が約20:1〜1:20である、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記体積比が約20:1〜1:1である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記体積比が約7:1〜3:1である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記除去された第一相が、少なくとも一部の水をさらに含んでなり、前記除去された第一相を少なくとも一種の疎水性溶剤と接触させて第二混合物を形成し、
前記第二混合物を、第三相と第四相とに分離する工程をさらに含んでなり、
前記第三相が、前記第二混合物の溶剤抽出液および疎水性溶剤の両方の大部分を含んでなり、
前記第四相が、1,3−プロパンジオール、および第一相の水の大部分を含んでなり、
前記第四相中の1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比が、1,3−プロパンジオールと、前記発酵培養液が前記溶剤抽出液と接触する前の前記発酵培養液中の同じ汚染物との重量比よりも大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
前記除去された第一相と前記疎水性溶剤との重量比が、約4:1〜1:4である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記疎水性溶剤が、logPが約3.5〜10である溶剤から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記溶剤が、6〜12個の炭素原子を有するアルカンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記接触工程中に、1,3−プロパンジオールが前記発酵培養液よりも前記溶剤抽出液中により可溶となるように、前記第一混合物の温度を調節し、前記溶剤抽出液がヘキサノールであり、
前記第一混合物を第一相と第二相とに分離し、
前記第一相を前記第二相から除去し、
前記第一相の温度を、前記第二混合物が形成されるように調節し、
前記第二混合物を、第三相と第四相とに分離し、前記第三相が前記第一相由来のヘキサノールの大部分を含んでなり、前記第四相が1,3−プロパンジオールを含んでなり、
前記第四相中の1,3−プロパンジオールと存在する汚染物のいずれか一種との重量比が、1,3−プロパンジオールと、前記発酵培養液が前記溶剤抽出液と接触する前の前記発酵培養液中の同じ汚染物との重量比よりも大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記発酵培養液が、少なくとも約90重量%d.s.に濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記発酵培養液が部分的に精製される、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記発酵培養液のpHが約2〜11である、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記発酵培養液のpHが約6〜8である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記発酵培養液が約20重量%〜80重量%の乾燥固体を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記方法が温度約20℃〜90℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記方法が温度約25℃〜35℃で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
前記溶剤抽出液が実質的に無水である、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
前記溶剤抽出液が水で飽和されている、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記溶剤抽出液が、アルカノール、ケトン、エステル、酸、エーテルまたは植物油からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記溶剤抽出液が、ペンタノール、プロパン−1−オール、ヘキサノール、オレイルアルコール、4−メチルペンタン−2−オン、イソプロピルアセテート、トリブチルホスフェート、オレイン酸、大豆油、およびひまし油からなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記溶剤抽出液が、ヘキサノールおよびトリブチルホスフェートからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記第一混合物が、脂肪族および芳香族炭化水素からなる群から選択された相促進剤を含んでなる、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記相促進剤が、6〜10個の炭素原子を有するアルカンである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記溶剤抽出液が、炭素および酸素の原子を約2:1〜18:1の比で含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項31】
前記溶剤抽出液が、炭素および酸素の原子を約3:1〜6:1の比で含んでなる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記発酵培養液が、約5重量%〜85重量%の1,3−プロパンジオールを含んでなり、約10重量%を超える水と、約5重量%〜70重量%の一種以上の汚染物とをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項33】
前記汚染物が、有機酸、有機塩、無機塩、炭水化物、アルコール、タンパク質、アミノ酸、および低分子量のヒドロキシル化された化合物、およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項34】
前記低分子量のヒドロキシル化された化合物が、グリセロール、グルコース、およびブタントリオールからなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記溶剤抽出液のlogPが約0.8〜7.7である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
前記溶剤抽出液のlogPが約0.8〜2.9である、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2006−528688(P2006−528688A)
【公表日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−532567(P2006−532567)
【出願日】平成16年5月6日(2004.5.6)
【国際出願番号】PCT/US2004/013905
【国際公開番号】WO2004/101437
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(593063172)エー、イー、ステーリー、マニュファクチュアリング、カンパニー (4)
【氏名又は名称原語表記】A.E. STALEY MANUFACTURING, CO.
【Fターム(参考)】