説明

1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体

本発明は、式(I)


[式中、Rはハロゲン原子等を示し、Rは水素原子等を示し、R及びRは、それぞれ独立して低級アルキル基を示し、Rはフェニル基等を示し、Rはハロゲン原子等を示し、mは0乃至2の整数を示し、pは1乃至4の整数を示し、qは1乃至5の整数を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩、に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野において有用な1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体に関する。この化合物は、Diacylglycerol O−acyltransferase type 1(以下、「DGAT1」ともいう)阻害作用を有し、高脂血症、糖尿病、肥満症の治療剤及び/又は予防剤として有用である。
【背景技術】
【0002】
肥満は、運動不足や過剰なエネルギー摂取、加齢などの背景により、エネルギーバランスがくずれ、余剰となったエネルギーが主に中性脂肪(トリアシルグリセロール、TG)として脂肪組織に蓄積され、その結果、体重、体脂肪量が増加した状態である。近年、内臓性脂肪の蓄積を伴う肥満を上流として、糖尿病、脂質代謝異常、高血圧など複数の危険因子が集積する、メタボリックシンドロームの概念が確立し、その診断基準、治療のガイドラインが策定された(日本肥満学会誌、12、臨時増刊号、2006)。メタボリックシンドロームは動脈硬化、心血管障害、脳血管障害のリスクを上昇させることから、これらの疾患を予防する上で、肥満症治療の重要性が認識されている。
しかしながら、肥満症治療の必要性が重要視される一方で、現在の肥満症の薬剤治療は非常に限られており、作用がより明確で、副作用の少ない、新たな抗肥満薬の出現が望まれている。
【0003】
生体内には、ほとんど全ての臓器に存在し、de novoのTG合成を行う、グリセロールリン酸経路と、主として小腸からの脂肪酸吸収に関与しているモノアシルグリセロール経路の2種類のTG合成経路が存在する。ジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼ(DGAT,EC2.3.1.20)は小胞体に存在する膜結合型の酵素であり、TG合成の2つの経路に共通するTG合成の最終ステップ、すなわちアシルコエンザイムAのアシル基を1,2−ジアシルグリセロールの3位に転移しTGを生成する反応を触媒する(Prog.Lipid Res.,43,134−176.2004,Ann.Med.,36,252−261,2004)。DGATにはDGAT1,2の2種類のサブタイプが存在することが明らかになっている。DGAT1、2は異なる遺伝子によりコードされ、両者の間には有意な、遺伝子レベル、アミノ酸レベルでの相同性はない(Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,95,13018−13023,1998,JBC,276,38870−38876,2001)。DGAT1は小腸、脂肪組織、肝臓などに存在し、小腸においては、脂質の吸収に、脂肪細胞においては、脂肪細胞への脂質の蓄積に、また肝臓においてはVLDLの分泌や肝臓中への脂質の蓄積に関与していると考えられている(Ann.Med.,36,252−261,2004,JBC,280,21506−21514,2005)。DGAT1のこれらの機能から、DGAT1阻害剤は、小腸での脂肪吸収抑制、脂肪組織、肝臓への脂肪の蓄積抑制、肝臓からの脂質の分泌の抑制により、メタボリックシンドロームを改善することが期待される。
【0004】
DGAT1の生理作用及びDGAT1阻害の効果をin vivoで検討するために、DGAT1を遺伝子レベルで欠損させたDGAT1ノックアウトマウスが作製され、その解析が行われている。その結果、DGAT1ノックアウトマウスは、体脂肪量が野生型マウスより低く、高脂肪食負荷による、肥満、耐糖能異常、インスリン抵抗性、脂肪肝に対し耐性を示すことが明らかとなっている(Nature Genetics,25,87−90,2000,JCI,109,1049−1055,2002)。またDGAT1ノックアウトマウスはエネルギー消費が亢進すること、DGAT1ノックアウトマウスの脂肪組織を野生型マウスに移植することにより、高脂肪食負荷誘導の肥満、耐糖能異常に耐性になることなども報告されている(JCI,111,1715−1722,2003,Diabetes,53,1445−1451,2004)。これらに対し、逆に、DGAT1を脂肪組織に過剰発現させたマウスでは、高脂肪食負荷による肥満、糖尿病が増悪することが報告されている(Diabetes,51,3189−3195,2002,Diabetes,54,3379−3386)。
【0005】
これらの結果から、DGAT1阻害剤は肥満や肥満に伴う2型糖尿病、脂質代謝異常、高血圧症、脂肪肝、動脈硬化症、脳血管障害、冠動脈疾患などの治療薬として、有効であると考えられる。
【0006】
これまでに、DGAT1阻害作用を有する化合物としては、いくつかの化合物が知られているが、いずれも本発明の化合物とは構造が異なる(例えば、WO2004/100881号公報、WO2006/044775号公報及びWO2006/113919号公報参照)。
【0007】
また、1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体を有する化合物が米国特許第6,759,404号に開示されているが、これらの構造は、本発明の化合物の構造とは異なる。さらに、該特許文献4に開示された化合物は、Aβペプチドの生成を阻害し、それによってアミロイドタンパク質の神経沈着の形成を防止する作用を有すると記載されているが、1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体が、高脂血症、糖尿病、肥満症の治療及び/または予防に有用であることについては、記載も示唆もされていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、DGAT1阻害作用を有する1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、DGAT1阻害作用を有する化合物を開発すべく鋭意検討を行い、本発明に係る化合物がDGAT1阻害作用を有する化合物として有効であることを見いだし、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
式(I)
【0011】
【化1】

[式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はトリフルオロメトキシ基を示し;
は、低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なるハロゲン原子で1乃至3置換されていてもよい)を示し;
及びRは、それぞれ独立して、低級アルキル基を示し;
は、
(1)フェニル基(該フェニル基は、ハロゲン原子、低級アルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される基で、同一又は異なって1乃至3置換されていてもよい)、
(2)ピリジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チエニル基及びオキサゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子又は低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい)、
(3)−O−C3−6分岐低級アルキル基(該−O−C3−6分岐低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)、及び
(4)C3−7シクロアルキル基(該シクロアルキル基は、トリフルオロメチル基で置換されていてもよい)
からなる群より選択される基を示し;
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子及びトリフルオロメトキシ基からなる群より選択される基を示し;
mは、0乃至2の整数を示し;
pは、1乃至4の整数を示し;そして
qは、1乃至5の整数を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩に関する。
【0012】
また、本発明は、前記式(I)で表される化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物に関する。
【0013】
また、本発明は、前記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とするDGAT1阻害剤に関する。
【0014】
また、本発明は、前記式(I)で表される化合物又はその薬学的に許容される塩を有効成分とする高脂血症、糖尿病、肥満症の治療剤及び/又は予防剤に関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る化合物(I)又はその薬学的に許容される塩は、強力なDGAT1阻害作用を有しており、高脂血症、糖尿病、肥満症の治療及び/又は予防に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に本明細書において用いられる用語の意味について説明し、本発明に係る化合物について更に詳細に説明する。
【0017】
「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0018】
「低級アルキル基」とは、炭素数1乃至6の直鎖又は分岐を有するアルキル基を意味し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、ネオペンチル基、イソペンチル基、1,1−ジメチルプロピル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、ヘキシル基、イソヘキシル基、1−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,2−ジメチルブチル基、2,2−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、3,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、2−エチルブチル基、1,2,2−トリメチルプロピル基、1−エチル−2−メチルプロピル基等が挙げられる。
【0019】
「低級アルコキシ基」とは、ヒドロキシ基の水素原子が前記低級アルキル基で置換された基を意味し、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、イソヘキシルオキシ基等が挙げられる。
【0020】
「C3−6分岐低級アルキル基」としては、具体的には、例えば、イソプロピル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、1−エチルプロピル基等が挙げられる。
【0021】
「C3−7のシクロアルキル基」とは、シクロアルキル基を構成する炭素原子数が3乃至7のシクロアルキル基を意味し、具体的には、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
【0022】
本発明に係る式(I)
【0023】
【化2】

[式中、各記号は前記に同じ]で表される化合物について、更に具体的に開示するために、式(I)において用いられる各種記号について、具体例を挙げて説明する。
【0024】
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はトリフルオロメトキシ基を示す。
【0025】
が示す「ハロゲン原子」とは前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
【0026】
は、低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示す。
【0027】
が示す「低級アルキル基」とは、前記定義の低級アルキル基と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられ、中でも、メチル基が好ましい。
【0028】
が示す「低級アルキル基」は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
該置換基としては、例えば、フッ素原子、塩素原子又は臭素原子が挙げられる。
同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換された低級アルキル基としては、例えば、フルオロメチル基、クロロメチル基、ブロモメチル基、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0029】
としては、メチル基又はフルオロメチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0030】
及びRは、それぞれ独立して、低級アルキル基を示す。
【0031】
及びRが示す低級アルキル基とは、前記定義の低級アルキル基と同様の基が挙げられる。
該低級アルキル基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等が挙げられる。該低級アルキル基は、同一又は異なっていてもよい。
【0032】
及びRとしては、R及びRが共にメチル基である場合が好ましい。
【0033】
は、
(1)フェニル基(該フェニル基は、ハロゲン原子、低級アルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される基で、同一又は異なって1乃至3置換されていてもよい)、
(2)ピリジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チエニル基及びオキサゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子又は低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい)、
(3)−O−C3−6分岐低級アルキル基(該−O−C3−6分岐低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)、及び
(4)C3−7シクロアルキル基(該シクロアルキル基は、トリフルオロメチル基で置換されていてもよい)
からなる群より選択される基を示す。
【0034】
が示すフェニル基は、ハロゲン原子、低級アルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される基で同一又は異なって1乃至3置換されていてもよい。
該置換基のハロゲン原子としては、前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられる。
該置換基の低級アルコキシ基としては、前記定義の低級アルコキシ基と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基等が挙げられる。
【0035】
が示す、ピリジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チエニル基及びオキサゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子又は低級アルキル基で置換されていてもよい。
該置換基のハロゲン原子としては、前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
該置換基の低級アルキル基としては、前記定義の低級アルキル基と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
また、該置換基の低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
該同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換された低級アルキル基としては、具体的には、例えば、トリフルオロメチル基等が挙げられる。
【0036】
が示す「ピリジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チエニル基及びオキサゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子又は低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい)」のうち、ピリジニル基及びイミダゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、フッ素原子、塩素原子及びメチル基からなる群より選択される基で同一又は異なって1若しくは2置換されていてもよい)が好ましく、5−フルオロ−2−ピリジニル基、1−メチル−2−イミダゾリル基がより好ましい。
【0037】
が示す「−O−C3−6分岐低級アルキル基」とは、前記定義のC3−6分岐低級アルキル基と酸素原子とが結合した基を意味し、具体的には、例えば、イソプロポキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、1−エチルプロポキシ基等が挙げられる。
該−O−C3−6分岐低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい。
該置換基のハロゲン原子としては、前記定義のハロゲン原子と同様の基が挙げられ、具体的には、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子が挙げられる。
が示す「−O−C3−6分岐低級アルキル基(該−O−C3−6分岐低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)」としては、tert−ブトキシ基又は1−エチルプロポキシ基が好ましい。
【0038】
が示すC3−7シクロアルキル基としては、前記定義のC3−7シクロアルキル基が挙げられ、具体的には、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基が挙げられる。
該C3−7シクロアルキル基は、トリフルオロメチル基で置換されていてもよい。
が示す「C3−7シクロアルキル基(該シクロアルキル基は、トリフルオロメチル基で置換されていてもよい)」としては、1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基又は4−トリフルオロメチルシクロヘキシルが好ましい。
【0039】
としては、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、4−ジフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、5−フルオロ−2−ピリジニル基、2−フルオロ−4−ピリジニル基、tert−ブトキシ基、1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基、及び4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基からなる群より選択される基が好ましく、フェニル基、4−フルオロフェニル基、4−ジフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、5−フルオロ−2−ピリジニル基、1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基及びtert−ブトキシ基からなる群より選択される基がより好ましい。
【0040】
mは0乃至2の整数を示すが、mが1である場合が好ましい。
【0041】
また、前記式(I)中の式(II):
【0042】
【化3】

[式中、
【0043】
【化4】

は、結合部位を示す]で表される基としては、
4−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−クロロ−3−フルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3−メチルフェニル基、3−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−(ビストリフルオロメチル)フェニル基及び3−クロロ−5−フルオロフェニル基からなる群より選択される基が好ましい。
【0044】
本発明に係る化合物としては、具体的には、例えば、
4−フルオロ−N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド、
N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド、
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フルオロベンズアミド、及び
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]ベンズアミド等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
以上で説明したR、R、R、R、R、R、p、q及びmの好ましい態様は、いずれを組み合わせてもよい。
【0046】
次に本発明に係る化合物の製造方法について説明する。
【0047】
本発明に係る式(I):
【0048】
【化5】

[式中、各記号は前記に同じ]で表される化合物は、例えば、以下の方法、実施例に記載の方法又はこれに準じた方法によって製造することができる。
【0049】
【化6】


[式中、Xは脱離基を示し、Proはアミノ基の保護基を示し、他の記号は前記に同じであり、実施例に記載したプロセス又は当業者に公知のプロセスである]
【0050】
(工程1)
本工程は、ルイス酸の存在下、化合物(1)と化合物(2)とを反応させることにより、化合物(3)を製造する方法である。
本工程において用いられるルイス酸としては、例えば、塩化アルミニウム、塩化亜鉛、三塩化ホウ素、又はこれらの混合物が挙げられる。
用いられるルイス酸の量は、化合物(1)1当量に対して、通常1乃至5当量、好ましくは1乃至2当量である。
用いられる化合物(2)の量は、化合物(1)1当量に対して、通常1乃至3当量、好ましくは1乃至1.5当量である。
本工程において用いられる溶媒は、本反応を阻害しないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、ジクロロメタン、ジクロロエタン等が挙げられる。
反応温度は、通常0乃至150度、好ましくは40乃至80度である。
反応時間は、通常1乃至48時間、好ましくは1乃至12時間である。
このようにして得られる化合物(3)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0051】
(工程2)
本工程は、化合物(3)とアミノ保護されたα−(1−ベンゾトリアゾリル)グリシン誘導体(4)とを反応させることにより、化合物(5)を製造する方法である。
本反応は、文献記載の方法(例えば、ペプチド合成の基礎と実験、泉屋信夫他、丸善、1983年、コンプリヘンシブ オーガニック シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis)、第6巻、Pergamon Press社、1991年、等)、それに準じた方法又はこれらと常法とを組み合わせることにより、通常のアミド形成反応を行えばよく、即ち、当業者に周知の縮合剤を用いて行うか、或いは、当業者に利用可能なエステル活性化方法、混合酸無水物法、酸クロリド法、カルボジイミド法等により行うことができる。このようなアミド形成試薬としては、例えば塩化チオニル、塩化オキザリル、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−メチル−2−ブロモピリジニウムアイオダイド、N,N’−カルボニルジイミダゾ−ル、ジフェニルフォスフォリルクロリド、ジフェニルフォスフォリルアジド、N,N’−ジスクシニミジルカルボネ−ト、N,N’−ジスクシニミジルオキザレ−ト、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル又はベンゾトリアゾ−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が挙げられ、中でも例えば塩化オキザリル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド又はベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が好適である。
またアミド形成反応においては、上記アミド形成試薬と共に塩基、縮合補助剤を用いてもよい。
用いられる塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−アザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)等の第3級脂肪族アミン;例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン又はイソキノリン等の芳香族アミン等が挙げられ、これらのうち、N−メチルモルホリンが好ましい。
用いられる縮合補助剤としては、例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル水和物、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド又は3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられ、中でも例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル等が好適である。
化合物(4)が有するアミノ基の保護基Proとしては、文献記載(例えば、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.Green著、第2版、John Wiley&Sons社、1991年、等)に記載の基が挙げられ、具体的には、例えば、ベンジルオキシカルボニル基等が挙げられる。
用いられる化合物(3)の量は、化合物(4)又はその反応性誘導体1当量に対して、通常1乃至10当量、好ましくは、1乃至3当量である。
用いられる塩基の量は、用いられる化合物及び溶媒の種類その他の反応条件により異なるが、化合物(4)1当量に対して、通常1乃至10当量、好ましくは1乃至5当量である。
本工程において用いられる反応溶媒としては、例えば不活性溶媒が挙げられ、反応に支障のない限り、特に限定されないが、具体的には、例えばクロロホルム、1,2−ジクロロエタン、キシレン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、これらのうち、テトラヒドロフランが好ましい。
反応時間は、通常0.5乃至96時間、好ましくは3乃至24時間である。
反応温度は、通常0度乃至溶媒の沸点温度、好ましくは室温乃至80度である。
本工程において用いられる塩基、アミド形成試薬、縮合補助剤は、1種又はそれ以上組み合わせて、使用することができる。
このようにして得られる化合物(5)は、公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0052】
(工程3)
本工程は、化合物(5)とアンモニアとを反応させることによりアミノケトン誘導体を得、その後該アミノケトン誘導体を酸触媒により環化することにより、化合物(6)を製造する方法である。
用いられるアンモニアの量は、通常化合物(5)1当量に対して、通常1乃至100当量、好ましくは、10乃至50当量である。
反応溶媒は、本反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、メタノール、エタノール等が挙げられる。
反応温度は、通常0乃至100度、好ましくは20乃至50度である。
反応時間は、通常1乃至24時間、好ましくは1乃至12時間である。
このようにして得られる化合物(A)
【0053】
【化7】

は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
次いで、酸触媒の存在下、化合物(A)を環化することにより、化合物(6)を製造する方法である。
本工程において用いられる酸触媒としては、具体的には、例えば、酢酸、酢酸アンモニウム等が挙げられる。
用いられる酸触媒の量は、化合物(A)1当量に対して、通常0.1乃至10当量、好ましくは0.1乃至1当量である。
反応溶媒は、反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、水、メタノール、エタノール、塩化メチレン、ジメチルホルムアミド、酢酸等が挙げられる。
反応時間は、通常0.5乃至24時間、好ましくは0.5乃至12時間である。
反応温度は、通常0乃至100度、好ましくは0乃至50度である。
このようにして得られる化合物(6)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0054】
(工程4)
本工程は、塩基の存在下、化合物(6)と化合物(7)とを反応させることにより、化合物(8)を製造する方法である。
用いられる塩基としては、例えば、ナトリウム−tert−ペントキシド、ナトリウム−tert−ブトキシド、カリウム−tert−ブトキシド、水素化ナトリウム等が挙げられる。
用いられる塩基の量は、化合物(6)1当量に対して、通常1乃至3当量、好ましくは1乃至1.5 当量である。
化合物(7)中のXは脱離基であり、該脱離基としては、例えば、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
用いられる化合物(7)の量は、化合物(6)1当量に対して、通常1乃至3当量、好ましくは1乃至1.5当量である。
反応溶媒は、反応に支障のないものであれば、いかなるものを用いてもよいが、例えば、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
反応時間は、通常1乃至24時間、好ましくは1乃至12時間である。
反応温度は、通常0乃至100度、好ましくは0乃至50度である。
このようにして得られる化合物(8)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0055】
(工程5)
本工程は、化合物(8)の有するアミノ基の保護基Proを除去することにより、化合物(9)を製造する方法である。
本工程における反応は、文献記載(例えば、プロテクティブ グループス イン オーガニック シンセシス(Protective Groups in Organic Synthesis)、T.W.Green著、第2版、John Wiley&Sons社、1991年、等)の方法、これに準じた方法又はこれらと常法とを組み合わせることにより行うことができる。Proとして、ベンジルオキシカルボニル基を用いた場合には、該保護基を例えば、臭化水素−酢酸溶液にて除去することができる。
このようにして得られる化合物(9)は、公知の分離精製手段、例えば、濃縮、減圧濃縮、再沈殿、溶媒抽出、結晶化、クロマトグラフィー等により、単離精製するか又は単離精製することなく次工程に付すことができる。
【0056】
(工程6)
本工程は、化合物(9)と化合物(10)とを反応させることにより、本発明に係る化合物(I)を製造する方法である。
【0057】
本工程における反応は、文献記載の方法(例えば、ペプチド合成の基礎と実験、泉屋信夫他、丸善、1983年、コンプリヘンシブ オーガニック シンセシス(Comprehensive Organic Synthesis)、第6巻、Pergamon Press社、1991年、等)、それに準じた方法又はこれらと常法とを組み合わせることにより、通常のアミド形成反応を行えばよく、即ち、当業者に周知の縮合剤を用いて行うか、或いは、当業者に利用可能なエステル活性化方法、混合酸無水物法、酸クロリド法、カルボジイミド法等により行うことができる。このようなアミド形成試薬としては、例えば塩化チオニル、塩化オキザリル、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−メチル−2−ブロモピリジニウムアイオダイド、N,N’−カルボニルジイミダゾ−ル、ジフェニルフォスフォリルクロリド、ジフェニルフォスフォリルアジド、N,N’−ジスクシニミジルカルボネ−ト、N,N’−ジスクシニミジルオキザレ−ト、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、クロロギ酸エチル、クロロギ酸イソブチル又はベンゾトリアゾ−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が挙げられ、中でも例えば塩化チオニル、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、N,N−ジシクロヘキシルカルボジイミド又はベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス(ジメチルアミノ)フォスフォニウムヘキサフルオロフォスフェイト等が好適である。またアミド形成反応においては、上記アミド形成試薬と共に塩基、縮合補助剤を用いてもよい。
用いられる塩基としては、例えばトリメチルアミン、トリエチルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン、N,N−ジメチルアニリン、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)、1,5−アザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)等の第3級脂肪族アミン;例えばピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、ピコリン、ルチジン、キノリン又はイソキノリン等の芳香族アミン等が挙げられ、中でも例えば第3級脂肪族アミン等が好ましく、特に例えばトリエチルアミン又はN,N−ジイソプロピルエチルアミン等が好適である。
【0058】
用いられる縮合補助剤としては、例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル水和物、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド又は3−ヒドロキシ−3,4−ジヒドロ−4−オキソ−1,2,3−ベンゾトリアゾ−ル等が挙げられ、中でも例えばN−ヒドロキシベンゾトリアゾ−ル等が好適である。
【0059】
用いられる化合物(9)の量は、化合物(10)又はその反応性誘導体1当量に対して、通常、1乃至10当量、好ましくは、1乃至3当量である。
用いられる塩基の量は、化合物(10)又はその反応性誘導体1当量に対して、通常1乃至10当量、好ましくは1乃至5当量である。
本工程において用いられる反応溶媒としては、例えば不活性溶媒が挙げられ、反応に支障のない限り、特に限定されないが、具体的には、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、ジメチルホルムアミド、酢酸エチルエステル、酢酸メチルエステル、アセトニトリル、ベンゼン、キシレン、トルエン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン又はそれらの混合溶媒が挙げられるが、好適な反応温度確保の点から、例えば塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、アセトニトリル又はN,N−ジメチルホルムアミド等が好ましい。
反応時間は、通常0.5乃至96時間、好ましくは3乃至24時間である。
反応温度は、通常0度乃至溶媒の沸点温度、好ましくは室温乃至80度である。
本工程において用いられる塩基、アミド形成試薬、縮合補助剤は、1種又はそれ以上組み合わせて、使用することができる。
【0060】
このようにして得られる本発明に係る化合物(I)は、公知の分離精製手段、例えば濃縮、減圧濃縮、結晶化、溶媒抽出、再沈殿、クロマトグラフィー等により単離精製することができる。
【0061】
本発明に係る1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン誘導体は、薬学的に許容される塩として存在することができ、当該塩は、前記(I)で表される化合物を用いて、常法に従って製造することができる。
当該酸付加塩としては、例えば塩酸塩、フッ化水素酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩等のハロゲン化水素酸塩;硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、燐酸塩、炭酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩等の低級アルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩等のアリ−ルスルホン酸塩;フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;及びグルタミン酸塩、アスパラギン酸塩等のアミノ酸等の有機酸である酸付加塩を挙げることができる。
【0062】
また、本発明の化合物が酸性基を当該基内に有している場合、例えばカルボキシル基等を有している場合には、当該化合物を塩基で処理することによっても、相当する薬学的に許容される塩に変換することができる。当該塩基付加塩としては、例えば例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、グアニジン、トリエチルアミン、ジシクロヘキシルアミン等の有機塩基による塩が挙げられる。
【0063】
さらに本発明の化合物は、遊離化合物又はその塩の任意の水和物又は溶媒和物として存在してもよい。
【0064】
また逆に塩又はエステルから遊離化合物への変換も常法に従って行うことができる。
【0065】
また、本発明に係る化合物は、その置換基の態様によって、光学異性体、ジアステレオ異性体、幾何異性体等の立体異性体又は互変異性体が存在する場合がある。これらの異性体は、すべて本発明に係る化合物に包含されることは言うまでもない。更にこれらの異性体の任意の混合物も本発明に係る化合物に包含されることは言うまでもない。
【0066】
一般式(I)で表される化合物は、経口又は非経口的に投与することができ、そしてそのような投与に適する形態に製剤化することにより、これを用いた高脂血症、糖尿病、肥満症の治療および/又は予防剤を提供する。
【0067】
本発明の化合物を臨床的に用いるにあたり、その投与形態に合わせ、薬剤学的に許容される添加剤を加えて各種製剤化の後投与することも可能である。その際の添加剤としては、製剤分野において通常用いられる各種の添加剤が使用可能であり、例えばゼラチン、乳糖、白糖、酸化チタン、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水りん酸カルシウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、植物油、ベンジルアルコール、アラビアゴム、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、シクロデキストリン又はヒドロキシプロピルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0068】
これらの添加剤との混合物として製剤化される剤形としては、例えば錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤若しくは坐剤等の固形製剤;又は例えばシロップ剤、エリキシル剤若しくは注射剤等の液体製剤等が挙げられ、これらは、製剤分野における通常の方法に従って調製することができる。なお、液体製剤にあっては、用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させる形であってもよい。また、特に注射剤の場合、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖液に溶解又は懸濁させてもよく、更に緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0069】
これらの製剤は、本発明の化合物を全薬剤1.0〜100重量%、好ましくは1.0〜60重量%の割合で含有することができる。これらの製剤は、また、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。
【0070】
本発明の化合物は、高脂血症、糖尿病、肥満症等に有効な薬剤(以下、「併用用薬剤」という。)と組み合わせて使用することができる。かかる薬剤は、前記疾病の予防又は治療において、同時に、別々に、又は順次に投与することが可能である。本発明の化合物を1又は2以上の併用用薬剤と同時に使用する場合、単一の投与形態である医薬組成物とすることができる。しかしながら、コンビネーション療法においては、本発明の化合物を含む組成物と併用用薬剤とを、投与対象に対し、異なった包装として、同時に、別々に、または順次に投与してもよい。それらは、時間差をおいて投与してもよい。
【0071】
併用用薬剤の投与量は、臨床上用いられている投与量に準ずればよく、投与対象、投与ルート、疾患、組み合わせ等により適宜選択することができる。併用用薬剤の投与形態は、特に限定されず、投与時に、本発明の化合物と併用用薬剤とが組み合わされていればよい。このような投与形態としては、例えば、1)本発明の化合物と併用用薬剤とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、2)本発明の化合物と併用用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、3)本発明の化合物と併用用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、4)本発明の化合物と併用用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、5)本発明の化合物と併用用薬剤とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与(例えば、本発明の化合物;併用用薬剤の順序での投与、あるいは逆の順序での投与)等が挙げられる。本発明の化合物と併用用薬剤との配合比は、投与対象、投与ルート、疾患等により適宜選択することができる。
【0072】
本発明の化合物を例えば臨床の場で使用する場合、その投与量及び投与回数は患者の性別、年齢、体重、症状の程度及び目的とする処置効果の種類と範囲等により異なるが、一般に経口投与の場合、成人1日あたり、0.01〜100mg/kg、好ましくは0.03〜1mg/kgを1〜数回に分けて、また非経口投与の場合は、0.001〜10mg/kg、好ましくは0.001〜0.1mg/kgを1〜数回に分けて投与するのが好ましい。
【0073】
本発明に係る化合物の効果的な量を哺乳類、とりわけヒトに投与するためには、いかなる適切な投与経路でも用いることができる。例えば、経口、直腸、局所、静脈、眼、肺、鼻などを用いることができる。投与形態の例としては、錠剤、トローチ、散剤、懸濁液、溶液、カプセル剤、クリーム、エアロゾールなどがあり、経口用の錠剤が好ましい。
【0074】
経口用の組成物を調製するに際しては、通常の医薬用媒体であれば、いかなるものも用いることができ、そのような例としては、例えば、水、グリコール、オイル、アルコール、香料添加剤、保存料、着色料などであり、経口用の液体組成物を調製する場合には、例えば、懸濁液、エリキシル剤及び溶液が挙げられ、担体としては、例えば、澱粉、砂糖、微結晶性セルロース、希釈剤、造粒剤、潤滑剤、結合剤、崩壊剤などが挙げられ、経口用の固体組成物を調製する場合には、例えば、パウダー、カプセル剤、錠剤などが挙げられ、中でも経口用の固体組成物が好ましい。
【0075】
投与のしやすさから、錠剤やカプセル剤が最も有利な経口投与形態である。必要ならば、錠剤は、標準の水性又は非水性の技術でコーティングすることができる。
【0076】
上記の通常の投与形態に加えて、式(I)に係る化合物は、例えば、U.S.特許番号3,845,770、3,916,899、3,536,809、3,598,123、3,630,200及び4,008,719に記載の放出制御手段及び/又はデリバリー装置によっても、投与することができる。
【0077】
経口投与に適した本発明に係る医薬組成物は、パウダー又は顆粒として、或いは水溶性の液体、非水溶性の液体、水中油型のエマルジョン又は油中水型のエマルジョンとして、それぞれがあらかじめ決められた量の活性成分を含むカプセル剤、カシュー剤又は錠剤を挙げることができる。そのような組成物は、薬剤学上いかなる方法を用いて調製することができるが、すべての方法は、活性成分と1又は2以上の必要な成分からなる担体とを一緒にする方法も含まれる。
【0078】
一般に、活性成分と液体の担体又はよく分離された固体の担体或いは両方とを均一かつ充分に混合し、次いで、必要ならば、生産物を適当な形にすることにより、組成物は調製される。例えば、錠剤は、圧縮と成形により、必要に応じて、1又は2以上の副成分と共に調製される。圧縮錠剤は、適当な機械で、必要に応じて、結合剤、潤滑剤、不活性な賦形剤、界面活性剤又は分散剤と混合して、活性成分をパウダーや顆粒などの形に自由自在に圧縮することにより調製される。
成形された錠剤は、パウダー状の湿った化合物と不活性な液体の希釈剤との混合物を適当な機械で成形することにより調製される。
【0079】
好ましくは、各錠剤は、活性成分を約1mg乃至1g含み、各カシュー剤又はカプセル剤は、活性成分を約1mg乃至500mg含む。
【0080】
式(I)の化合物についての医薬上の投与形態の例は、次の通りである。
【0081】
【表1】

【0082】
【表2】

【0083】
【表3】

【0084】
【表4】

【0085】
式(I)の化合物は、高脂血症、糖尿病又は肥満症に関連する疾患又は症状だけでなく、高脂血症、糖尿病又は肥満症の発症の治療/予防/遅延に用いられる他の薬剤と組み合わせて用いることができる。該他の薬剤は、通常用いられる投与経路又は投与量で、式(I)の化合物と同時に又は別々に投与することができる。
【0086】
式(I)の化合物は、1又は2以上の薬剤と同時に使用する場合には、式(I)の化合物とこれらの他の薬剤とを含んだ医薬組成物が好ましい。
【0087】
従って、本発明に係る医薬組成物は、式(I)の化合物に加えて、1又は2以上の他の活性成分も含む。式(I)の化合物と組み合わせて用いられる活性成分の例としては、以下の(a)乃至(j)が例示でき、これらを別々に投与するか、又は同じ医薬組成物で投与してもよいが、以下のものに限定されることはない。
(a)他のDGAT1阻害剤
(b)グルコキナーゼ活性化剤
(c)ビグアニド(例、ブホルミン、メトホルミン、フェンホルミン)
(d)PPARアゴニスト(例、トログリタゾン、ピオグリタゾン及びノシグリタゾン)
(e)インスリン
(f)ソマトスタチン
(g)α−グルコシダーゼ阻害剤(例、ボグリボース、ミグリトール、アカルボース)、
(h)インスリン分泌促進剤(例、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリボムリド、グリクラジド、グリメルピリド、グリピジド、グリキジン、グリソキセピド、グリブリド、グリへキサミド、グリピナミド、フェンブタミド、トラザミド、トルブタミド、トルシクラミド、ナテグリニド、レパグリニド)、及び
(i)DPP−IV(ジペプチジルペプチダーゼIV)阻害剤
(j)グルコース取り込み促進薬
【0088】
2番目の活性成分に対する式(I)の化合物の重量比は、幅広い制限の範囲内で変動し、さらに、各活性成分の有効量に依存する。従って、例えば、式(I)の化合物をPPARアゴニストと組み合わせて用いる場合には、式(I)の化合物のPPARアゴニストに対する重量比は、一般的に、約1000:1乃至1:1000であり、好ましくは、約200:1乃至1:200である。式(I)の化合物と他の活性成分との組み合わせは、前述の範囲内であるが、いずれの場合にも、各活性成分の有効量が用いられるべきである。
【0089】
以下に実施例及び参考例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
【0090】
本発明に係る化合物又はその薬学的に許容される塩は、強力なDGAT1阻害作用を有しており、高脂血症、糖尿病、肥満症の治療及び/又は予防に有用である。
【0091】
当業者は、種々の修正、組み合わせ、サブ組み合わせ又は変更が、本発明に添付されたクレーム又はその等価物の範囲内であるかぎり、所望の設計及び他の要因に依存することを理解するであろう。
【実施例】
【0092】
実施例のシリカゲルカラムクロマトグラフィーには、和光純薬社Wakogel(登録商標)C−300またはバイオタージ社製KP−Sil(登録商標)Silicaプレパックドカラムを用いた。分取用薄層クロマトグラフィーはメルク社製KieselgelTM60F254,Art.5744を用いた。塩基性シリカゲルカラムクロマトグラフィーは富士シリシア化学社製Chromatorex(登録商標)NH(100−250meshまたは200−350mesh)を用いた。
H−NMRはVarian社製Gemini(200MHz、300MHz)、Mercury(400MHz)、Inova(400MHz)を使用し、テトラメチルシランを標準物質として用いて測定した。またマススペクトルはWaters社製micromassZQを使用しエレクトロスプレイイオン化法(ESI)又は大気圧化学イオン化法(APCI)で測定した。
【0093】
下記の実施例における略号の意味を以下に示す。
i−Bu:イソブチル基
n−Bu:n−ブチル基
t−Bu:tert−ブチル基
Boc:tert−ブトキシカルボニル基
Me:メチル基
Et:エチル基
Ph:フェニル基
i−Pr:イソプロピル基
n−Pr:n−プロピル基
CDCl:重クロロホルム
CDOD:重メタノール
DMSO−d:重ジメチルスルホキシド
【0094】
下記に核磁気共鳴スペクトルにおける略号の意味を示す。
s :シングレット
d :ダブレット
dd:ダブルダブレット
dt:ダブルトリプレット
ddd:ダブルダブルダブレット
Sept:セプテット
t :トリプレット
m :マルチプレット
br:ブロード
brs:ブロードシングレット
q :カルテット
J :カップリング定数
Hz:ヘルツ
【0095】
実施例1
4−フルオロ−N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド (エナンチオマーA、エナンチオマーB)
(工程1)1−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−2−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エタノンの合成
1M塩化ホウ素のジクロロメタン溶液(66ml,66mmol)を1,2−ジクロロエタン250mlに希釈し、4−フルオロアニリン(6.67g,60mmol)を氷冷下で加えた。30分間攪拌した後、4−トリフルオロメトキシベンジルニトリル(30g,150mmol)および塩化アルミニウム(8.8g,66mmol)を順次加えた後、加熱還流下14時間攪拌した。2N塩酸水溶液(60ml、120mmol)を室温下にて加えた後、80度で30分間攪拌した。この反応溶液をクロロホルムにより抽出し、硫酸ナトリウムを用いて乾燥、ろ過後、濃縮した。得られた粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製した後、結晶化により、表題化合物(2.44g,7.8mmol)を黄色結晶として得た。
(工程2)ベンジル{7−フルオロ−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}カルバメートの合成
2−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N−(ベンジルカルボニル)グリシン(5.73g,17mmol)をTHF60mlに溶解し、オキザリルクロリド(2.3g,18mmol)を氷冷下にて滴下し、引き続きDMF(0.11g,1.6mmol)を加え、そのままの温度で1時間攪拌した後、再度、オキザリルクロリド(0.23g,1.8mmol)を加え、さらに2時間攪拌した。その後、1−(2−アミノ−5−フルオロフェニル)−2−[4−(トリフルオロメトキシ)フェニル]エタノン(5.0g)及びN−メチルモルホリン(4.2ml,38mmol)をTHF5mlに溶解して氷冷下にて滴下した。反応混合溶液を室温下で2時間攪拌した後、生じた沈殿をろ過により除いた。得られたろ液に対して、アンモニアガスを10分間吹き込んだ後、メタノール35ml加え、再度、アンモニアガスを30分間吹き込み、室温下にて終夜攪拌した。反応混合溶液を濃縮し、酢酸40mlに溶解して3時間攪拌した後、酢酸アンモニウム(5.8g,75mmol)を加え、さらに1時間攪拌を行った。反応液を酢酸エチルで希釈し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて塩基性にした。抽出後、有機層を飽和食塩水で洗浄、硫酸ナトリウムにて乾燥、ろ過、濃縮を行い、シリカゲルクロマトグラフィーを用いて精製した後、酢酸エチル及びヘキサンにより結晶化を行い、表題化合物(4.8g,9.57mmol)を無色固体として得た。
(工程3)ベンジル{7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}カルバメートの合成
ベンジル{7−フルオロ−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}カルバメート(5.0g,10mmol)をDMF50mlに溶解し、氷冷下にてナトリウム−tert−ペントキシド(1.15g,10.5mmol)及びヨウ化メチル(1.49g,10.5mmol)を順次加え、氷冷下にて1時間攪拌した後、再度、ナトリウム−tert−ペントキシド(0.11g,1.0mmol)及びヨウ化メチル(0.14g,1.0mmol)を順次加え、さらに氷冷下にて30分間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を用いてクエンチし、酢酸エチルにて希釈後、水及び飽和食塩水を用いて洗浄した。硫酸ナトリウムにより乾燥後、ろ過、濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製を行い、表題化合物(5.06g,9.8mmol)を無色アモルファスとして得た。
(工程4)3−アミノ−7−フルオロ−1−メチル−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−1,3−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−オンの合成
ベンジル{7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}カルバメート(4.46g)を30%臭化水素酢酸溶液に溶解し、室温にて30分間攪拌した。水にて希釈し、ジエチルエーテルにて洗浄後、水層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を用いて塩基性にし、酢酸エチルにより抽出した。有機層を飽和短塩化ナトリウム水溶液にて洗浄後、硫酸ナトリウムにより乾燥、ろ過、濃縮を行うことにより表題化合物(3.05g,8.0mmol)を黄色油状物として得た。
(工程5)4−フルオロ−N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミドの合成
3−アミノ−7−フルオロ−1−メチル−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−1,3−ジヒドロ−2H−1,4−ベンゾジアゼピン−2−オン(150mg,0.39mmol)、WSC(134mg,0.59mmol)、HOBT(80mg,0.59mmol)及び2−{[(4−フルオロフェニル)カルボニル]アミノ}−2−メチルプロピオン酸(133mg,0.59mmol)をDMF5mlに溶解し、窒素雰囲気下で3時間攪拌した。酢酸エチルにて希釈後、水、塩酸水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和塩化ナトリウム水溶液を用いて順次洗浄を行い、硫酸ナトリウムにより乾燥した。ろ過、濃縮後、シリカゲルクロマトグラフィーにて精製することにより、表題化合物(170mg,0.29mmol)をラセミ体として得た。得られたラセミ体(150mg)をキラルカラムクロマトグラフィー(DaicelCHIRALPAKIA(20*250mm、5μm)、ヘキサン:イソプロピルアルコール=70:30)で光学分割を行い、表題化合物のエナンチオマーA(faster:56mg)を無色アモルファス、エナンチオマーB(slower:58mg)を無色アモルファスとしてそれぞれ得た。
以下に表題化合物の分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.77(3H,s),1.78(3H,s),3.20(3H,s),4.01(1H,d,J=14Hz),4.06(1H,d,J=14Hz),5.34(1H,d,J=7Hz),7.01−7.09(7H,m),7.15−7.24(3H,m),7.71−7.79(3H,m).
ESI−MS(m/e):589[M+H]+
【0096】
実施例2
N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド (エナンチオマーA、エナンチオマーB)
2−メチル−2−[(フェニルカルボニル)アミノ]プロピオン酸を用いて、実施例1(工程5)と同等の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物をラセミ体として得た。得られたラセミ体をキラルカラムクロマトグラフィー(DaicelCHIRALPAKAD−H(20*250mm、5μm)、ヘキサン:イソプロピルアルコール=60:40)で光学分割を行い、表題化合物のエナンチオマーA(faster:58mg)を無色アモルファス、エナンチオマーB(slower:60mg)を無色アモルファスとしてそれぞれ得た。
以下に表題化合物の分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.77(3H,s),1.79(3H,s),3.18(3H,s),4.01(1H,d,J=14.0Hz),4.06(1H,d,J=14.0Hz),5.35(1H,d,J=7.2Hz),7.00−7.04(3H,m),7.08(2H,d,J=9Hz),7.16−7.23(3H,m),7.36−7.49(3H,m),7.73−7.79(3H,m).
ESI−MS(m/e):571[M+H]
【0097】
実施例3
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フルオロベンズアミド (エナンチオマーA、エナンチオマーB)
アニリンを用いて、実施例1(工程1)と同等の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物をラセミ体として得た。
上記反応で得られたラセミ体をキラルカラムクロマトグラフィー(DaicelCHIRALPAKAD−H(20*250mm、5μm)、ヘキサン:イソプロピルアルコール=50:50)で光学分割を行い、表題化合物のエナンチオマーA(faster:58mg)を白色固体、エナンチオマーB(slower:55mg)を白色固体としてそれぞれ得た。
以下に表題化合物の分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.79(3H,s)1.81(3H,s),3.26(3H,s),4.05(1H,d,J=14.5Hz),4.16(1H,d,J=14.5Hz),5.39(1H,d,J=7.0Hz),7.02−7.16(7H,m),7.23(1H,d,J=8.2Hz),7.26(1H,d,J=7.0Hz),7.49(1H,dd,J=7.8,7.8Hz),7.57(1H,d,J=7.4Hz),7.78(1H,d,J=6.3Hz),7.80(1H,d,J=8.6Hz),7.81(1H,d,J=8.6Hz).
ESI−MS(m/e):572[M+H]+
【0098】
実施例4
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]ベンズアミド (エナンチオマーA、エナンチオマーB)
2−メチル−2−[(フェニルカルボニル)アミノ]プロピオン酸を用いて、実施例3と同等の方法、これに準じた方法またはこれらと常法とを組み合わせることにより、表題化合物をラセミ体として得た。得られたラセミ体をキラルカラムクロマトグラフィー(DaicelCHIRALPAKAD−H(20*250mm、5μm)、ヘキサン:イソプロピルアルコール=50:50)で光学分割を行い、表題化合物のエナンチオマーA(faster:51mg)を白色固体、エナンチオマーB(slower:51mg)を白色固体としてそれぞれ得た。
以下に表題化合物の分析データを示す。
1H−NMR(CDCl3)δ:1.80(3H,s), 1.82(3H,s),3.25(3H,s),4.04(1H,d,J=14.8Hz),4.15(1H,d,J=14.8Hz),5.39(1H,d,J=7.6Hz),7.02(2H,d,J=8.4Hz),7.11(2H,d,J=8.8Hz),7.17−7.27(3H,m),7.40(2H,dd,J=8.0,8.0Hz),7.48(2H,dd,J=8.0,8.0Hz),7.56(1H,d,J=8.0Hz),7.79−7.84(3H,m).
ESI−MS(m/e):554[M+H]+
【0099】
式(I)で表される化合物が示す医薬としての有用性は、例えば下記の試験例において証明される。
<ヒトDGAT1遺伝子のクローニングと酵母での発現>
ヒトDGAT1遺伝子はヒトcDNA library (Clontech)より、以下のプライマーを用いて、PCR法にて増幅した。
DGAT1F : 5’−ATGGGCGACCGCGGCAGCTC−3’
DGAT1R : 5’−CAGGCCTCTGCCGCTGGGGCCTC−3’
増幅したヒトDGAT1遺伝子を、酵母発現ベクター、pPICZA (Invitrogen)に導入した。得られた発現プラスミドを、酵母(Pichia pastris)に電気穿孔法にて導入し、組み換え酵母を作製した。組み換え酵母を0.5% methanol存在下で72時間培養し、細胞を10mM Tris pH 7.5、250mM sucrose、1mM EDTA中でガラスビーズを用いて破砕した後、遠心分離にて、膜画分を調整し、酵素源として用いた。
【0100】
<DGAT1阻害活性試験>
以下の組成の反応液(100mM Tris pH7.5、100mM MgCl、100mM Sucrose、40μM Dioelin、15μM [14C]−oleoyl−CoA)に試験物質、DGAT1を発現した酵母膜画分0.25μgを加え、100μlの容量で、室温30分間インキュベートした。反応液に2−propanol/heptan/HO (80/20/2) 100μlを加えよく攪拌した後、200μlのheptaneを加えさらに攪拌した。遠心分離後、heptan層をとり、ethanol/0.1N NaOH/HO (50:5:45)を加えて攪拌した後、再度遠心し、heptane層を回収した。得られたheptane層を乾固した後、Microscint 0 (PerkinElmer) 100μlを加え、液体シンチレーションカウンターで、放射活性を測定した。阻害活性は以下の式により算出した。なお、膜画分非添加の放射活性をバックグラウンドとした。
阻害率=100−(試験化合物添加時の放射活性―バックグラウンド)/(試験化合物非添加時の放射活性―バックグラウンド)X100
上記記載の方法により、本発明に係る化合物のDGAT1阻害活性を以下に示す。
【0101】
【表5】

【0102】
本発明に係る化合物は上記表に示したように、IC50を指標として、優れたDGAT1阻害活性を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

[式中、
は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子又はトリフルオロメトキシ基を示し;
は、低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)を示し;
及びRは、それぞれ独立して、低級アルキル基を示し;
は、
(1)フェニル基(該フェニル基は、ハロゲン原子、低級アルコキシ基及びトリフルオロメチル基からなる群より選択される基で、同一又は異なって1乃至3置換されていてもよい)、
(2)ピリジニル基、ピラジニル基、イミダゾリル基、チアゾリル基、チエニル基及びオキサゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子又は低級アルキル基(該低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)で置換されていてもよい)、
(3)−O−C3−6分岐低級アルキル基(該−O−C3−6分岐低級アルキル基は、同一又は異なる1乃至3のハロゲン原子で置換されていてもよい)、及び
(4)C3−7シクロアルキル基(該シクロアルキル基は、トリフルオロメチル基で置換されていてもよい)
からなる群より選択される基を示し;
はそれぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子及びトリフルオロメトキシ基からなる群より選択される基を示し;
mは、0乃至2の整数を示し;
pは、1乃至4の整数を示し;そして
qは、1乃至5の整数を示す]で表される化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
及びRが、共にメチル基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
がメチル基又はフルオロメチル基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
がメチル基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
mが1であり、Rがメチル基であり、そしてR及びRが、共にメチル基である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
が、
(1−1)フェニル基(該フェニル基は、フッ素原子、塩素原子、ジフルオロメトキシ基及びトリフルオロメトキシ基からなる群より選択される基で同一又は異なって、1もしくは2置換されていてもよい)、
(2−1)ピリジニル基及びイミダゾリル基からなる群より選択されるヘテロアリール基(該へテロアリール基は、フッ素原子、塩素原子及びメチル基からなる群より選択される基で同一又は異なって、1若しくは2置換されていてもよい)、
(3−1)tert−ブトキシ基又は1−エチルプロポキシ基、及び
(4−1)1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基又は4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基
からなる群より選択される基である請求項5記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
が、フェニル基、4−クロロフェニル基、4−フルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、4−ジフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、5−フルオロ−2−ピリジニル基、2−フルオロ−4−ピリジニル基、tert−ブトキシ基、1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基、及び4−トリフルオロメチルシクロヘキシル基からなる群より選択される基である請求項5記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
がフェニル基、4−フルオロフェニル基、4−ジフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、5−フルオロ−2−ピリジニル基、1−(トリフルオロメチル)シクロプロピル基及びtert−ブトキシ基からなる群より選択される基である請求項5記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記式(I)中の式(II):
【化2】

[式中、
【化3】

は、結合部位を表す]で表される基が、
4−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−フルオロ−3−トリフルオロメチルフェニル基、2−トリフルオロメチルフェニル基、2−フルオロフェニル基、2−トリフルオロメトキシフェニル基、4−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−ジフルオロフェニル基、3,4−ジクロロフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、4−クロロフェニル基、4−クロロ−3−フルオロフェニル基、3,4−ジフルオロフェニル基、3−メチルフェニル基、3−トリフルオロメトキシフェニル基、3,5−(ビストリフルオロメチル)フェニル基及び3−クロロ−5−フルオロフェニル基からなる群より選択される基である請求項1乃至8のいずれか一項に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
式(I)で表される化合物が、
4−フルオロ−N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド、
N−[2−({7−フルオロ−1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−1,1−ジメチル−2−オキソエチル]ベンズアミド、
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]−4−フルオロベンズアミド、又は
N−[1,1−ジメチル−2−({1−メチル−2−オキソ−5−[4−(トリフルオロメトキシ)ベンジル]−2,3−ジヒドロ−1H−1,4−ベンゾジアゼピン−3−イル}アミノ)−2−オキソエチル]ベンズアミド
である請求項1記載の化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物と薬学的に許容される担体とを含む医薬組成物。
【請求項12】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含むDGAT1阻害剤。
【請求項13】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載の化合物を有効成分として含む、高脂血症、糖尿病及び/又は肥満症の予防及び/又は治療剤。

【公表番号】特表2012−517997(P2012−517997A)
【公表日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549841(P2011−549841)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際出願番号】PCT/JP2010/053178
【国際公開番号】WO2010/095766
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(595152759)MSD株式会社 (22)
【Fターム(参考)】