説明

2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体を調製するための方法

式2の化合物と、少なくとも1種の式3のアルカリ金属シアン化物および式4の化合物とを接触させる工程を含む式1の化合物を調製する方法が開示されている。
【化1】


式中、RはNHRまたはORであり;RはCHまたはClであり;Rは、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;RはHまたはC〜Cアルキルであり;Xは、Br、ClまたはIであり;ならびに、R、R、R、R、RおよびR10は本開示中に定義されているとおりである。
また、YがCl、BrまたはIである式5の化合物と、シクロアルカジエン二座リガンド、少なくとも1種の金属還元剤およびニトリル溶剤とを接触させる工程を含む、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座リガンドである式4の化合物を調製する方法もまた開示されている。
また、式5の化合物と、シクロアルカジエン二座リガンドおよび少なくとも1種の金属還元剤とを接触させることにより式4の化合物を調製する工程、次いで、式4の化合物を含むこの反応混合物と式2の化合物および式3の少なくとも1種のアルカリ金属シアン化物とを接触させる工程を含む式1の化合物を調製する方法も開示されており;ならびに、式1の化合物を上記に開示の方法により調製することを特徴とする、R15、R16、R17およびZが式1の化合物を用いて本開示中に定義されているとおりである式6の化合物を調製する方法がさらに開示されている。
【化2】


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3−置換2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一定の2−アミノ−5−シアノ安息香酸の調製およびこれらの関連する殺虫性シアノアントラニルジアミドを調製するための中間体としての実用性が開示されている(例えば、特許文献1におけるスキーム9;特許文献2におけるスキーム9および実施例2、ステップA;ならびに、特許文献3におけるスキーム15および実施例6、ステップBを参照のこと)。
【0003】
特許文献4は、ホスフィン−ニッケル触媒および遷移金属の塩の存在下にアルカリ金属シアン化物を用いるハロゲン化物置換を介して一定の芳香族化合物をシアノ化する方法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2004/067528号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2006/068669号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2006/062978号パンフレット
【特許文献4】欧州特許出願公開第613719号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2−アミノ−5−シアノ安息香酸誘導体を迅速にもたらすために好適な新規のまたは向上した方法に対する要求が継続して存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、式1の化合物
【化1】

(式中、
はNHRまたはORであり;
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;および
はHまたはC〜Cアルキルである)
を調製する方法であって、
(1)式2の化合物
【化2】

(式中、Xは、Br、ClまたはIである)
を、
(2)少なくとも1種の式3の化合物
CN 3
(式中、Mは、ナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムである)
および(3)式4の化合物
【化3】

(式中、
は、R11から独立して選択される5個以下の置換基で任意により置換されたフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、各環または環系は、R12から独立して選択される5個以下の置換基で任意により置換されており;
は、R13から独立して選択される5個以下の置換基で任意により置換されたフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、各環または環系は、R14から独立して選択される5個以下の置換基で任意により置換されており;
およびR10の各々は、独立して置換可能なリガンドであるか;または
およびR10は、一緒になって二座の置換可能なリガンドであり;ならびに、
11、R12、R13およびR14の各々は、独立して、フッ素、C〜Cアルキル、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cフルオロアルコキシ、C〜CアルキルアミノまたはC〜Cジアルキルアミノである)
と接触させる工程を含み、
ただし、XがClである場合、Rはメチルである方法に関する。
【0007】
本発明はまた;
(i)式5の化合物
【化4】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
を、(ii)シクロアルカジエン二座リガンド、(iii)少なくとも1種の金属還元剤および(iv)ニトリル溶剤と接触させる工程を含む、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座リガンドである式4の化合物を調製する方法を提供する。
【0008】
本発明はまた、(a)式5の化合物
【化5】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
を、(b)シクロアルカジエン二座リガンドおよび(c)少なくとも1種の金属還元剤と接触させて、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座リガンドである式4の化合物を含む混合物を形成する工程;次いで、式4の化合物を含む前記混合物を、(1)式2の化合物および(2)少なくとも1種の式3の化合物と接触させる工程を含む、式1の化合物(上記に定義されているとおり)を調製する方法を提供する。
【0009】
本発明はまた、式1の化合物を用いて式6の化合物
【化6】

(式中、
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、
シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;
Zは、CR18またはNであり;
15は、Cl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり;
16は、F、ClまたはBrであり;
17はH、FまたはClであり;および
18は、H、F、ClまたはBrである)
を調製する方法を提供する。この方法は、(A)上記に開示されている方法によって式2の化合物から式1の化合物を調製すること、または、(B)前記式1の化合物として上記に開示されている方法により調製された式1の化合物を用いることを特徴とする。
【0010】
本発明のさらに関連する態様は、上記の方法を用いて式5の化合物から式4の化合物を調製する工程、次いで、上記のとおり式2の化合物、式3の化合物および式4の化合物から式1の化合物を調製する工程、次いで、式1の化合物を用いて式6の化合物を調製する工程を含む、式6の化合物を調製する方法を含む上述の方法の組み合わせに関する。この組み合わせは、式4の化合物を式5の化合物から調製する工程、ならびに、この式4の化合物を含む反応混合物を、式2の化合物および式3の化合物と接触させて式1の化合物を形成する工程を含む方法により式1の化合物を調製する工程、次いで、式1の化合物を用いて式6の化合物を調製する工程を含む、式6の化合物を調製する方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に使用される場合、用語「含んでなる」、「含んでなっている」、「含む」、「含んでいる」、「有する」、「有している」、またはそれらの他のいずれかの変形は、非排他的包含を包括するように意図される。例えば、要素のリストを含んでなる組成物、プロセス、方法、物品または装置はそれらの要素のみに必ずしも限定されるのではなく、明白に記載されていないか、またはかかる組成物、プロセス、方法、物品もしくは装置に固有である他の要素も含んでよい。さらに、それとは反対の記載が明白にされない限り、「あるいは、または、もしくは」は包含的論理和を指し、排他的論理和を指さない。例えば、条件AまたはBは以下のいずれか1つによって満たされる:Aが真であり(または存在する)、Bが偽である(または存在しない)。Aが偽であり(または存在しない)、Bが真である(または存在する)。ならびにAおよびBの両方が真である(または存在する)。
【0012】
また本発明の要素または構成成分を先行する不定冠詞「a」および「an」は、要素または構成成分の実例の数(すなわち、発生数)に関して非限定的であるように意図される。したがって、「a」または「an」は、1または少なくとも1を含むように読解されるべきであり、その数が明らかに単数を意味しない限り、要素または構成成分の単数形は複数も含む。
【0013】
上記の言及において、「アルキル」という用語は、メチル、エチル、ブチル、n−プロピル、i−プロピル、または異なるブチル異性体などの直鎖または分岐アルキルを含む。
【0014】
「シクロプロピルシクロプロピル」という用語は、他のシクロプロピル環でのシクロプロピル置換を示す。「シクロプロピルシクロプロピル」の例としては、1,1’−ビシクロプロピル−1−イル、1,1’−ビシクロプロピル−2−イル、ならびに、(1R,2S)−1,1’−ビシクロプロピル−2−イルおよび(1R,2R)−1,1’−ビシクロプロピル−2−イルなどの異なるシス−およびトランス−シクロプロピルシクロプロピル異性体が挙げられる。
【0015】
「アルコキシ」としては、例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロピルオキシ、イソプロピルオキシおよび異なるブトキシ、ペントキシおよびヘキシルオキシ異性体が挙げられる。「アルキルアミノ」としては、直鎖または分岐アルキルで置換されたNHラジカルが挙げられる。「アルキルアミノ」の例としては、CHCHNH、CHCHCHNH、および(CHCHCHNHが挙げられる。「ジアルキルアミノ」の例としては、(CHN、(CHCHCHNおよびCHCH(CH)Nが挙げられる。
【0016】
「ハロゲン」という用語は、単独で、もしくは、「ハロアルキル」などの複合語の一方で、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を含む。しかも、「ハロアルキル」などの複合語で用いられる場合、前記アルキルは、同一であっても異なっていてもよいハロゲン原子で部分的にまたは完全に置換され得る。「ハロアルキル」の例としては、FC、ClCH、CFCHおよびCFCClが挙げられる。「フルオロアルキル」の例としては、FC、CFCHおよびCFCFが挙げられる。
【0017】
本発明において、比は、一般に、数1に対する単一の数として記載されており;例えば、4の比は4:1を意味する。
【0018】
本発明の文脈において、「還元剤」という用語は、他の化学種に電子を供与する(例えば、他の化学種の酸化状態を低くする)ことが可能である化学種、または、化合物種の混合物を意味する。本発明の一態様において、還元剤は、ニッケルを、式5の化合物における+2から、式4の化合物を形成させるために0に還元する(すなわち、酸化状態を低くする)ために用いられる。
【0019】
本発明の文脈において、「シラン還元剤」という用語はシランまたはシランの混合物を意味し、ここで、この文脈において、シランは、少なくとも1つのケイ素−水素結合(すなわち、Si−H)を含む分子を指す。本方法に関して、特に有用なシラン還元剤は、ポリメチルヒドロシロキサン、あるいは、ポリ(メチルヒドロシロキサン)と命名されるもの(式A)であるが、他のシラン還元剤も用いられることが可能である。
【化7】

(式中、nは、大きな整数、または、ポリマーの典型的な整数の範囲である)
【0020】
「当量比」および「当量割合」という用語は、本明細書においては、本方法における他の反応体の量に対する還元剤の量を記載するために用いられている。「当量割合」は、当量比(数1に対する)に100を乗じることにより算出される。
【0021】
ニッケルの+2酸化状態が0酸化状態に還元される方法(例えば、式5の化合物からの式4の化合物の調製)において、当量は、ニッケルをその+2酸化状態からその0酸化状態に還元するために2つの電子が必要とされるために、2モルの電子に相当するとみなされる。従って、+2から0酸化状態に還元される1モルのニッケル(例えば、式5の化合物)が、1当量であるとみなされる。還元剤亜鉛金属は、その0酸化状態からその+2酸化状態への移行において2つの電子を供与し、従って、ニッケルの還元の文脈において、1モルの亜鉛は、1当量の亜鉛であるとみなされる。従って、亜鉛のニッケル(例えば、式5の化合物)に対する当量比(すなわち、当量の比)は、モル比(すなわち、亜鉛のモル対ニッケルのモルの比)と同一である。2つの電子を供与するもの以外の還元剤に関するニッケルに対する当量比は、ニッケル(例えば、式5の化合物)に対する還元剤のモル比を2で除し、次いで、その商を、酸化されるときにその還元剤が供与する電子の数(例えば、リチウム金属については1、アルミニウム金属については3)で乗じることにより算出することが可能である。
【0022】
生成物を形成する反応体の正式な、永久的な還元が存在しない方法(例えば、式4の化合物の存在下での式2の化合物および式3の化合物からの式1の化合物の調製)において、反応化学量論は、還元のために電子を必要とはしない。それにもかかわらず、本開示において報告されているとおり、いくつかの方法については、反応混合物における1種以上の還元剤の関与が生成物の収率および/または純度を増加させることが発見された。この文脈において、還元剤の当量は1モルの電子に相当するとみなされている。従ってこの文脈において、1モルの亜鉛金属は、1モルの亜鉛は0から+2酸化状態への移行において2モルの電子を供与するために、還元剤としては2当量に相当するとみなされている。ポリメチルヒドロシロキサンなどのシラン還元剤は、水素化物イオン(すなわち、H)の形態で1つの電子を供与し、従って、nが50である式Aの1モルのポリメチルヒドロシロキサンは、この文脈において、還元剤としては50当量に相当する。式Aにおいてnが大きな数である場合、キャッピングトリメチルシリル基の総分子量への寄与は比較的わずかになり、従って、この文脈において、還元剤としてのこの化合物の当量は、約60.13g/1モルの水素化物イオン(電子に等しい)に相当する。しかも、この文脈において、当量比の算出において還元剤の量が比較される化合物(例えば、式2の化合物)の当量数は、反応混合物に添加される化合物のモル数と同一であるとみなされる。
【0023】
本発明の文脈において、「金属還元剤」という用語は、ニッケルより陽性であると共に、粉末形態であるいずれかの元素金属を指す。例としては、これらに限定されないが、亜鉛およびマンガンが挙げられ、これらを含む合金(例えば、マンガン−鉄合金)が含まれる。
【0024】
本明細書において用いられるところ、「リガンド」という用語は、金属原子(この場合ニッケル原子)との配位結合に利用可能である少なくとも1対の電子を含む有機分子を指す。「二座リガンド」という用語は、金属原子(ニッケル原子)との配位結合に利用可能である少なくとも2つの電子対を含む有機分子を指す。「置換可能なリガンド」という用語は、ニッケル錯体中のニッケル原子から、採用されている反応条件下で置き換えられることが可能であるリガンドを示す。ニッケル錯体は、ニッケル原子が配位共有結合を介して1種以上のリガンドに結合している配位化合物を指す。
【0025】
本明細書において用いられるところ、構造
【化8】

はフェロセンを意味する。
【0026】
炭素ベースのラジカルとは、単結合を介してラジカルを残りの化学的構造に結合する炭素原子を含む一価分子構成成分を指す。炭素ベースのラジカルは、任意により飽和、不飽和および芳香族基、鎖、環および環系、ならびにヘテロ原子を含むことが可能である。炭素ベースのラジカルはサイズに何ら特定の制限を課せられることがなく、本発明の文脈において、これらは、典型的には1〜16個の炭素原子および0〜3個のヘテロ原子を含む。注目すべきは、任意によりC〜Cアルキル、ハロゲンおよびニトロから選択される1〜3個の置換基で置換される、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキルおよびフェニルから選択される炭素ベースのラジカルである。
【0027】
本開示に記述される場合、「カルボン酸」という用語は、少なくとも1個のカルボン酸官能基(すなわち、−C(O)OH)を含んでなる有機化合物を意味する。「カルボン酸」という用語には化合物の炭酸(すなわち、HOC(O)OH)は含まれない。カルボン酸には、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、マレイン酸、およびクエン酸が含まれる。「有効pK」という用語は、カルボン酸官能基のpKを示すか、またはその化合物が1個より多いカルボン酸官能基を有する場合、「有効pK」は最も酸性のカルボン酸官能基のpKを示す。本明細書に記述される場合、反応混合物のような非水系物質または混合物の「有効pH」は、物質または混合物の一定量を約5〜20体積の水と混合し、次いで得られた水性混合物のpHを(例えばpHメータで)測定することによって決定される。本明細書に記述される場合、「実質的に無水の」物質とは、約1重量%以下の水を含有する物質を意味する。化学名「イサト酸無水物」は、現行のケミカルアブストラクト名「2H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン」に対応するもう1つの名前である。
【0028】
本発明の実施形態は以下を含む。
実施形態A1.試薬(1)(すなわち、式2の化合物)を、試薬(2)(すなわち、少なくとも1種の式3の化合物)および試薬(3)(すなわち、式4の化合物)と接触させる工程を含む、式1の化合物を調製するための発明の概要に記載の方法。
【0029】
実施形態A2.試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)が少なくとも1種の還元剤の存在下に接触される、実施形態A1の方法。
【0030】
実施形態A3.還元剤が、金属還元剤(例えば、亜鉛、マンガン)およびシラン還元剤(例えば、ポリメチルヒドロシロキサン)からなる群から選択される1種以上の化合物を含む、実施形態A2の方法。
【0031】
実施形態A3a.還元剤が、亜鉛およびポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される1種以上の化合物を含む、実施形態A3の方法。
【0032】
実施形態A4.還元剤が亜鉛を含む、実施形態A3aの方法。
【0033】
実施形態A5.還元剤がポリメチルヒドロシロキサンを含む、実施形態A3の方法。
【0034】
実施形態A6.還元剤が亜鉛およびポリメチルヒドロシロキサンを含む、実施形態A3の方法。
【0035】
実施形態A7.RがNHRである、実施形態A1〜A6のいずれか1つの方法。
【0036】
実施形態A8.Rが、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである、実施形態A1〜A7のいずれか1つの方法。
【0037】
実施形態A9.RがC〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである、実施形態A8の方法。
【0038】
実施形態A10.Rがメチルである、実施形態A9の方法。
【0039】
実施形態10a.XがBrまたはClである、実施形態A1〜A10のいずれか1つの方法。
【0040】
実施形態10b.XがBrである、実施形態A10aの方法。
【0041】
実施形態A11.Mがナトリウムまたはカリウムである、実施形態A1〜A10bのいずれか1つの方法。
【0042】
実施形態A12.Mがナトリウムである、実施形態A11の方法。
【0043】
実施形態A13.RおよびR10が一緒になって、二座の、置換可能なリガンドである、実施形態A1〜A12のいずれか1つの方法。
【0044】
実施形態A14.RおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである(両方のアルケン結合を介してニッケル原子に結合されている)、実施形態A1〜A13のいずれか1つの方法。
【0045】
実施形態A15.試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1である、実施形態A1〜A14のいずれか1つの方法。
【0046】
実施形態A16.試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1.5である、実施形態A15の方法。
【0047】
実施形態A17.試薬(2)対試薬(1)のモル比が約5以下である、実施形態A1〜A16のいずれか1つの方法。
【0048】
実施形態A18.試薬(2)対試薬(1)のモル比が約2以下である、実施形態A17の方法。
【0049】
実施形態A19.還元剤対試薬(1)の当量割合が少なくとも約1%である、実施形態A2〜A18のいずれか1つの方法。
【0050】
実施形態A19a.還元剤対試薬(1)の当量割合が少なくとも約5%である、実施形態A19の方法。
【0051】
実施形態A20.還元剤対試薬(1)の当量割合が少なくとも約10%である、実施形態A19aの方法。
【0052】
実施形態A21.還元剤対試薬(1)の当量割合が少なくとも約40%である、実施形態A20の方法。
【0053】
実施形態A22.還元剤対試薬(1)の当量割合が少なくとも約20%である、実施形態A21の方法。
【0054】
実施形態A23.還元剤対試薬(1)の当量割合が約100%以下である、実施形態A2〜A22のいずれか1つの方法。
【0055】
実施形態A23a.試薬(1)に対する還元剤の当量割合が約80%以下である、実施形態A23の方法。
【0056】
実施形態A24.試薬(1)に対する還元剤の当量割合が約60%以下である、実施形態A23aの方法。
【0057】
実施形態A25.試薬(1)に対する還元剤の当量割合が約50%以下である、実施形態A24の方法。
【0058】
実施形態A26.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが少なくとも約0.1%である、実施形態A1〜A25のいずれか1つの方法。
【0059】
実施形態A27.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが少なくとも約0.5%である、実施形態A26の方法。
【0060】
実施形態A28.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが少なくとも約0.75%である、実施形態A27の方法。
【0061】
実施形態A29.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが少なくとも約1%である、実施形態A28の方法。
【0062】
実施形態A30.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが約5%以下である、実施形態A1〜A25のいずれか1つの方法。
【0063】
実施形態A31.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが約3%以下である、実施形態A30の方法。
【0064】
実施形態A32.試薬(1)に対する試薬(3)のモルパーセントが約1.5%以下である、実施形態A31の方法。
【0065】
実施形態A33.試薬(1)、試薬(2)および試薬(3)が、好適な溶剤の存在下に接触させられる、実施形態A1〜A32のいずれか1つの方法。
【0066】
実施形態A34.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、好適な溶剤の存在下に接触させられる、実施形態A1〜A32のいずれか1つの方法。
【0067】
実施形態A35.好適な溶剤が、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)、ならびに、ハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン)からなる群から選択される1種以上の溶剤を含む、実施形態A33およびA34のいずれか1つの方法。
【0068】
実施形態A36.好適な溶剤が1種以上のニトリル溶剤を含む、実施形態A35の方法。
【0069】
実施形態A36a.好適な溶剤が、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルからなる群から選択される1種以上の溶剤を含む、実施形態A36の方法。
【0070】
実施形態A37.好適な溶剤がアセトニトリルを含む、実施形態A36aの方法。
【0071】
実施形態A38.好適な溶剤の体積対試薬(1)の重量の比が少なくとも約4mL/gである、実施形態A34〜A37のいずれか1つの方法。
【0072】
実施形態A39.好適な溶剤の体積対試薬(1)の重量の比が少なくとも約5mL/gである、実施形態A38の方法。
【0073】
実施形態A40.好適な溶剤の体積対試薬(1)の重量の比が約20mL/g以下である、実施形態A34〜A39のいずれか1つの方法。
【0074】
実施形態A41.好適な溶剤の体積対試薬(1)の重量の比が約15mL/g以下である、実施形態A40の方法。
【0075】
実施形態A42.好適な溶剤の体積対試薬(1)の重量の比が約8mL/g以下である、実施形態A41の方法。
【0076】
実施形態A43.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約100℃以下の温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A34〜A42のいずれか1つの方法。
【0077】
実施形態A44.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約85℃以下の温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A43の方法。
【0078】
実施形態A45.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約80℃以下の温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A44の方法。
【0079】
実施形態A46.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約25℃を超える温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A34〜A45のいずれか1つの方法。
【0080】
実施形態A47.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約55℃を超える温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A46の方法。
【0081】
実施形態A48.試薬(1)、試薬(2)、試薬(3)および少なくとも1種の還元剤が、約70℃を超える温度で好適な溶剤と接触させられる、実施形態A47の方法。
【0082】
実施形態B1.試薬(i)(すなわち、式5の化合物)、試薬(ii)(すなわち、シクロアルカジエン二座リガンド)、試薬(iii)(すなわち、少なくとも1種の金属還元剤)および試薬(iv)(すなわち、ニトリル溶剤)を接触させる工程を含む、式4の化合物を調製するための発明の概要に記載の方法。
【0083】
実施形態B2.試薬(iii)が亜鉛またはマンガンを含む、実施形態B1の方法。
【0084】
実施形態B3.試薬(iii)が亜鉛を含む、実施形態B2の方法。
【0085】
実施形態B4.試薬(ii)が、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2,3,5,6−テトラメチル−2,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジオン(ジュロキノンとしても知られている)およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(ノルボルナジエンとしても知られている)などの、共役または非共役の、任意により置換されている、4員〜12員シクロアルカジエン環を含む、実施形態B1〜B3のいずれか1つの方法。
【0086】
実施形態B5.試薬(ii)が1,5−シクロオクタジエン(従って、RおよびR10は一緒になって1,5−シクロオクタジエンである)である、実施形態B4の方法。
【0087】
実施形態B6.YがClである、実施形態B1〜B5のいずれか1つの方法。
【0088】
実施形態B6a.試薬(iv)が、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルからなる群から選択される1種以上の溶剤を含む、実施形態B1〜B6のいずれか1つの方法。
【0089】
実施形態B6b.試薬(iv)がアセトニトリルを含む、実施形態B6bの方法。
【0090】
実施形態B7.試薬(ii)対試薬(i)のモル比が少なくとも約1である、実施形態B1〜B6bのいずれか1つの方法。
【0091】
実施形態B8.試薬(ii)対試薬(i)のモル比が少なくとも約3である、実施形態B7の方法。
【0092】
実施形態B9.試薬(ii)対試薬(i)のモル比が約10以下である、実施形態B1〜B8のいずれか1つの方法。
【0093】
実施形態B10.試薬(ii)対試薬(i)のモル比が約5以下である、実施形態B9の方法。
【0094】
実施形態B11.試薬(iii)対試薬(i)の当量比が少なくとも約1である、実施形態B1〜B10のいずれか1つの方法。
【0095】
実施形態B12.試薬(iii)対試薬(i)の当量比が少なくとも約2である、実施形態B11の方法。
【0096】
実施形態B13.試薬(iii)対試薬(i)の当量比が少なくとも約5である、実施形態B12の方法。
【0097】
実施形態B14.試薬(iii)対試薬(i)の当量比が約20以下である、実施形態B1〜B13のいずれか1つの方法。
【0098】
実施形態B15.試薬(iii)対試薬(i)の当量比が約15以下である、実施形態B14の方法。
【0099】
実施形態B16.試薬(i)および試薬(iv)が接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(ii)および試薬(iii)が順番に混合物に添加される、実施形態B1〜B15のいずれか1つの方法。
【0100】
実施形態B17.試薬(i)、試薬(ii)および試薬(iv)が接触させられて混合物が形成され、次いで(iii)が混合物に添加される、実施形態B1〜B15のいずれか1つの方法。
【0101】
実施形態B18.試薬(i)、試薬(ii)、試薬(iii)および試薬(iv)が、約50℃以下の温度で接触させられる、実施形態B1〜B17のいずれか1つの方法。
【0102】
実施形態B19.試薬(i)、試薬(ii)、試薬(iii)および試薬(iv)が、約45℃以下の温度で接触させられる、実施形態B18の方法。
【0103】
実施形態B20.試薬(i)、試薬(ii)、試薬(iii)および試薬(iv)が、約25℃を超える温度で接触させられる、実施形態B1〜B19のいずれか1つの方法。
【0104】
実施形態B21.試薬(i)、試薬(ii)、試薬(iii)および試薬(iv)が、約35℃を超える温度で接触させられる、実施形態B20の方法。
【0105】
実施形態C1.試薬(a)(すなわち、式5の化合物)を、試薬(b)(すなわち、シクロアルカジエン二座リガンド)および試薬(c)(すなわち、少なくとも1種の金属還元剤)と接触させて、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座リガンドである式4の化合物を含む混合物を形成する工程であって;式4の化合物を含む混合物が、試薬(1)(すなわち、式2の化合物)および試薬(2)(少なくとも1種の式3の化合物)と接触される工程をさらに含む、式1の化合物を調製するための発明の概要に記載の方法。
【0106】
実施形態C2.試薬(c)が亜鉛またはマンガンを含む、実施形態C1の方法。
【0107】
実施形態C3.試薬(c)が亜鉛を含む、実施形態C2の方法。
【0108】
実施形態C4.試薬(b)が、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2,3,5,6−テトラメチル−2,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジオン(ジュロキノンとしても知られている)およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(ノルボルナジエンとしても知られている)などの、共役または非共役の、任意により置換されている、4員〜12員シクロアルカジエン環を含む、実施形態C1〜C3のいずれか1つの方法。
【0109】
実施形態C5.試薬(b)が1,5−シクロオクタジエン(従ってRおよびR10は一緒になって1,5−シクロオクタジエンである)である、実施形態C4の方法。
【0110】
実施形態C6.YがClである、実施形態C1〜C5のいずれか1つの方法。
【0111】
実施形態C7.試薬(b)対試薬(a)のモル比が少なくとも約1である、実施形態C1〜C6のいずれか1つの方法。
【0112】
実施形態C8.試薬(b)対試薬(a)のモル比が少なくとも約2である、実施形態C7の方法。
【0113】
実施形態C9.試薬(b)対試薬(a)のモル比が約10以下である、実施形態C1〜C8のいずれか1つの方法。
【0114】
実施形態C10.試薬(b)対試薬(a)のモル比が約3以下である、実施形態C9の方法。
【0115】
実施形態C11.試薬(c)対試薬(a)の当量比が少なくとも約5である、実施形態C1〜C10のいずれか1つの方法。
【0116】
実施形態C12.試薬(c)対試薬(a)の当量比が少なくとも約10である、実施形態C11の方法。
【0117】
実施形態C13.試薬(c)対試薬(a)の当量比が少なくとも約15である、実施形態C12の方法。
【0118】
実施形態C14.試薬(c)対試薬(a)の当量比が少なくとも約20である、実施形態C13の方法。
【0119】
実施形態C15.試薬(c)対試薬(a)の当量比が約50以下である、実施形態C1〜C14のいずれか1つの方法。
【0120】
実施形態C16.試薬(c)対試薬(a)の当量比が約30以下である、実施形態C15の方法。
【0121】
実施形態C17.試薬(c)対試薬(a)の当量比が約25以下である、実施形態C16の方法。
【0122】
実施形態C18.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが少なくとも約0.1%である、実施形態C1〜C17のいずれか1つの方法。
【0123】
実施形態C19.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが少なくとも約0.5%である、実施形態C18の方法。
【0124】
実施形態C20.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが少なくとも約0.75%である、実施形態C19の方法。
【0125】
実施形態C21.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが少なくとも約1%である、実施形態C20の方法。
【0126】
実施形態C22.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが約5%以下である、実施形態C1〜C22のいずれか1つの方法。
【0127】
実施形態C23.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが約3%以下である、実施形態C22の方法。
【0128】
実施形態C24.試薬(a)に対する式4の化合物のモルパーセントが約1.5%以下である、実施形態C23の方法。
【0129】
実施形態C25.試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1である、実施形態C1〜C24のいずれか1つの方法。
【0130】
実施形態C26.試薬(2)対試薬(1)のモル比が少なくとも約1.5である、実施形態C25の方法。
【0131】
実施形態C27.試薬(2)対試薬(1)のモル比が約5以下である、実施形態C1〜C26のいずれか1つの方法。
【0132】
実施形態C28.試薬(2)対試薬(1)のモル比が約2以下である、実施形態C27の方法。
【0133】
実施形態C29.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が、好適な溶剤の存在下に接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が混合物に添加される、実施形態C1〜C28のいずれか1つの方法。
【0134】
実施形態C30.好適な溶剤が、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン)およびハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素(例えば、キシレン、トルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン)からなる群から選択される1種以上の溶剤を含む、実施形態C29の方法。
【0135】
実施形態C31.好適な溶剤が、ニトリル(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル)からなる群から選択される1種以上の溶剤を含む、実施形態C30の方法。
【0136】
実施形態C32.好適な溶剤がアセトニトリルを含む、実施形態C31の方法。
【0137】
実施形態C33.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約100℃以下の温度で混合物に添加される、実施形態C29〜C32のいずれか1つの方法。
【0138】
実施形態C34.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約50℃以下の温度で混合物に添加される、実施形態C33の方法。
【0139】
実施形態C36.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約20℃を超える温度で混合物に添加される、実施形態C29〜C34のいずれか1つの方法。
【0140】
実施形態C37.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約25℃を超える温度で混合物に添加される、実施形態C36の方法。
【0141】
実施形態C38.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約35℃を超える温度で混合物に添加される、実施形態C37の方法。
【0142】
実施形態C39.試薬(a)、試薬(b)、および試薬(c)が好適な溶剤と接触させられて混合物が形成され、次いで、試薬(1)および試薬(2)が約40℃を超える温度で混合物に添加される、実施形態C38の方法。
【0143】
実施形態C40.式4の化合物を含む反応混合物がルイス塩基、次いで、試薬(1)および試薬(2)と接触させられる、実施形態C1〜C39のいずれか1つの方法。
【0144】
実施形態C41.ルイス塩基が、第1級、第2級または第3級脂肪族アミンを含む、実施形態C40の方法。
【0145】
実施形態C42.ルイス塩基がトリエチルアミンを含む、実施形態C41の方法。
【0146】
実施形態D1.式2の化合物から調製された式1の化合物を用いる、式6の化合物を調製するための発明の概要に記載の方法。
【0147】
実施形態D2.ZがNである、実施形態D1の方法。
【0148】
実施形態D3.ZがCHである、実施形態D1の方法。
【0149】
実施形態D4.RがCHである、実施形態D1〜D3のいずれか1つの方法。
【0150】
実施形態D5.Rが、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルである、実施形態D1〜D4のいずれか1つの方法。
【0151】
実施形態D6.RがC〜Cアルキルまたはシクロプロピルメチルである、実施形態D5の方法。
【0152】
実施形態D7.Rがメチルである、実施形態D6の方法。
【0153】
実施形態D8.Rがメチルである、実施形態D1〜D7のいずれか1つの方法。
【0154】
実施形態D9.R15がBrである、実施形態D1〜D8のいずれか1つの方法。
【0155】
実施形態D10.R16がClである、実施形態D1〜D9のいずれか1つの方法。
【0156】
実施形態D11.R17がHである、実施形態D1〜D10のいずれか1つの方法。
【0157】
実施形態E1.Rが、R11から独立して選択される3個以下の置換基で任意により置換されたフェニル環である、実施形態A1〜A48、B1〜B21、およびC1〜C42のいずれか1つの方法。
【0158】
実施形態E2.Rが、R12から独立して選択される3個以下の置換基で任意により置換されているフェニル環である、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1のいずれか1つの方法。
【0159】
実施形態E3.Rが、R13から独立して選択される3個以下の置換基で任意により置換されているフェニル環である、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1〜E2のいずれか1つの方法。
【0160】
実施形態E4.Rが、R14から独立して選択される3個以下の置換基で任意により置換されているフェニル環である、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1〜E3のいずれか1つの方法。
【0161】
実施形態E5.各R11、R12、R13およびR14が、独立してフッ素、C〜Cアルキル、C〜CフルオロアルキルまたはC〜Cアルコキシである、実施形態E1〜E4のいずれか1つの方法。
【0162】
実施形態E6.各R11、R12、R13およびR14が、独立してC〜Cアルキルである、実施形態E5の方法。
【0163】
実施形態E7.各R、R、R、Rが未置換フェニル環である、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1〜E6のいずれか1つの方法。
【0164】
実施形態E8.RおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである(両方のアルケン結合を介してニッケル原子に結合している)、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1〜E7のいずれか1つの方法。
【0165】
実施形態E9.式4の化合物が、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケルを含む、実施形態A1〜A48、B1〜B21、C1〜C42、およびE1〜E8のいずれか1つの方法。
【0166】
本発明の実施形態は、いずれかの様式で組み合わされることが可能である。
【0167】
以下のスキーム1〜13において、式1〜17の化合物におけるR、R、R、R、R、R、R、R、R、R10、R15、R16、R17、X、YおよびZの定義は、他に示されていない限りにおいて、発明の概要および実施形態の記載において上記に定義されているとおりである。式1a、1bおよび1cは式1のサブセットである。式2aは式2のサブセットである。
【0168】
スキーム1に示されているとおり、本発明の方法において、式1の化合物は、式2の化合物が少なくとも1種の式3の化合物および式4の化合物と接触させられることにより調製される。
【化9】

【0169】
スキーム1の方法において、式3の化合物は、K、Na、CsまたはRb、より好ましくはKまたはNa、およびもっとも好ましくはNaであることが可能であるMを含む。典型的には、式3の化合物対式2の化合物のモル比は、約1〜約5であり、およびより典型的には約1〜約2である。式3化合物をより高レベルで用いることも可能であるが、そのようにすることに特に利点はなく、より高いレベルでは原料および廃棄物処理コストがかさみ、それ故、最適なモル比は約1〜約1.5である。式3化合物などのアルカリ金属シアン化物が用いられる場合、使用前にアルカリ金属シアン化物の粒径を小さくすることで、式1化合物の最適な収率を促進することが可能である。使用に先立ちアルカリ金属シアン化物を粉砕または磨砕することで、より小さな粒径の材料をもたらすことが可能である。あるいは、スキーム1の方法は、例えば、ホモジナイザなどの高速、高せん断ミキサによるカッティングおよびブレンディングを介して、固形分をより小さなサイズの粒子とする混合装置を用いて行うことが可能である。
【0170】
式4の化合物は、式2の化合物の式1の化合物への転換を触媒する化学種の供給源として作用する。式4中の置換基RおよびR10は、各々、独立して、置換可能なリガンドであるか、または、一緒になって二座の、置換可能なリガンドである。要件は:(1)リガンドは、式4の化合物中のニッケル原子との配位結合に利用可能である少なくとも一対の電子を有するか、または、二座リガンドの場合には少なくとも二対の電子を有すること、および、(2)反応の最中に置き換えられることにより、有効な触媒種を生成することが可能であることのみであるため、広く多様なリガンドが本方法において有用である。好適なリガンドとしては、例えば、C〜Cアルキル、C〜Cアルケニル、5員〜6員炭素環および5員〜6員複素環が挙げられる。RおよびR10が一緒になって二座の
、置換可能なリガンドである場合、好適なリガンドとしては、例えば、シクロアルカジエンが挙げられる。好ましいリガンドは、1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2,3,5,6−テトラメチル−2,5−シクロ−ヘキサジエン−1,4−ジオン(ジュロキノンとしても知られている)およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(ノルボルナジエンとしても知られている)などの、共役または非共役であり、任意により置換されていると共に、4〜12個の炭素原子を環中に有するシクロアルカジエンである。1,5−シクロオクタジエンが特に好ましい。式4は、各々、独立して、任意により置換されているフェニル環である置換基RおよびR、ならびに、各々、独立して、任意により置換されているフェニル環またはナフタレニル環系である置換基RおよびRをさらに含む。各環または環系は、発明の概要に開示されているものから独立して選択される基で任意により置換されている。スキーム1の方法において有用な式4の化合物としては、R、R、RおよびR置換基の種々の組み合わせが挙げられる。例えば、R、R、RおよびRがすべて未置換のフェニルである式4の化合物(すなわち、フェロセン含有リガンドが1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである)が特に有用である。式4の化合物におけるフェロセン含有リガンドの他の例としては、以下の:1,1’−ビス[ビス[2−(1−メチルエチル)フェニル]ホスフィノ]フェロセン、1,1’−ビス[ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]フェロセンおよび1−[ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1’−[ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィノ]フェロセンが挙げられる。1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンが、本方法における式4の化合物中のリガンドとして好ましい。[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケル(すなわち、各R、R、RおよびRがフェニル環であると共に、RおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである)が特に好ましい式4の化合物である。式2の化合物に対する式4の化合物のモル割合は、典型的には、約0.1%〜約5%である。0.1%を超えるモル割合が度々反応を加速させることが可能であるが、その一方、5%超の割合は一般にコストを増加させる一方で追加的な有益性はほとんどもたらさない。この比は、コストを制限しながら簡便な反応速度をもたらす、約1%〜約1.5%であることが好ましい。
【0171】
スキーム1の方法は、典型的には、反応が少なくとも1種の還元剤の存在下に行われる場合にもっとも高い生成物収率を達成する。式1の生成物は還元剤の不在下においても形成されるが、収率は、還元剤の存在下に行われる反応と比して低い場合がある。この還元剤は、例えば、亜鉛もしくはマンガンなどの金属還元剤、または、ポリメチルヒドロシロキサンなどのシラン還元剤であることが好ましい。元素亜鉛が還元剤として用いられる場合、当量割合は、好ましくは式2の化合物に対して約10%〜約100%であり、および、より典型的には、約40%〜約80%である。亜鉛の最適な量は、粒径に応じて様々であることが可能である(しかしながら、典型的には、それでも上述の10〜100%範囲内である)。場合によっては、粉砕または磨砕などの標準的な手段によって、亜鉛の粒径を使用に先立って小さくすることが有益であり得る。ポリメチルヒドロシロキサンが還元剤として用いられる場合、もっとも高い生成物収率は、典型的には、反応が、ポリメチルヒドロシロキサンに追加して、少量の少なくとも1種の金属還元剤(例えば、亜鉛)の存在下に実施される場合に得られる。スキーム1の方法において、ポリメチルヒドロシロキサンが亜鉛と組み合わせて用いられる場合、ポリメチルヒドロシロキサンの当量割合は、好ましくは式2の化合物に対して約1%〜約80%であり、およびより好ましくは約10%〜約60%;ならびに、亜鉛の当量割合は、好ましくは式2の化合物に対して約0.02%〜約0.6%(注目すべきは、約0.01%〜約0.3%)である。より高いレベルの亜鉛をポリメチルヒドロシロキサンと組み合わせて用いることが可能であるが、そのようにすることに特に利点はなく、一般に有利ではない。
【0172】
スキーム1の反応は、典型的には、好適な溶剤中に実施される。多様な溶剤を用いてこの方法について好適な溶剤を形成することが可能である。典型的には、この方法は、用いられる溶剤の体積中に、周囲温度(例えば、約15〜40℃)で、式2の化合物が好ましくは完全にまたは少なくとも実質的に可溶性であると共に、式3の化合物および式4の化合物が、典型的には低い溶解度を有する溶剤を用いて、もっとも良好に実施される。好適な溶剤の例としては、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルなどのニトリル;テトラヒドロフランなどのエーテル;ならびに、キシレン、トルエン、クロロベンゼンおよびこれらの混合物などのハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられる。本方法の反応は、特にこれらに限定されないが、アセトニトリルまたはプロピオニトリルなどのニトリル溶剤中で特によく進行する。アセトニトリルが優れた結果をもたらし、もっとも好ましい。スキーム1の方法において用いられる溶剤の総体積は、好ましくは、式2の化合物の重量に対して約4mL/g〜約20mL/g、およびより好ましくは約4mL/g〜約8mL/gである。
【0173】
スキーム1の方法は、溶剤中に溶解している酸素が式4の化合物の酸化を生じさせてしまう可能性があるために、無酸素溶剤を用いて実施されることが好ましい。例えば、不活性雰囲気(例えば、窒素もしくはアルゴン)中での(任意により、水酸化カルシウムもしくは五酸化リンなどの乾燥剤の存在下に)溶剤の還流/蒸留、不活性ガス(例えば、窒素もしくはアルゴン)での溶剤のスパージング、または、溶剤を(液体窒素を用いて)冷凍し、減圧し、次いで溶剤を室温に温めさせることを含む標準的な技術を用いて無酸素溶剤を得ることが可能である。追加的に、スキーム1の方法は、無酸素環境において実施されることが好ましい。試薬を反応容器に移す最中の大気酸素の存在を低減させることが特に有利である。これは、例えば、グローブボックスまたはシュレンク技術を用いて不活性雰囲気中に試薬を反応容器に移す工程を含む、周知の技術を用いて達成することが可能である。
【0174】
試薬を組み合わせる際、式3の化合物の不存在下での長時間にわたる式2の化合物および式4の化合物の接触を避けることが特に有利である。スキーム1の方法において還元剤が用いられる場合、式3の化合物の不存在下での、式2の化合物、式4の化合物および還元剤の接触を避けることが特に有利である。そうでなければ、試薬は、式2の化合物および式3の化合物が好適な溶剤と組み合わされて混合物が形成され、次いで、式4の化合物がこの混合物に添加されるなどの、多様な順番で組み合わせられることが可能である。式1の化合物を調製するためにもっとも好ましい添加順は、式2の化合物、式3の化合物および式4の化合物を組み合わせ、次いで、好適な溶剤を添加して混合物を形成する工程を含むことが見出された。還元剤が用いられる場合、好ましい順番は、典型的には、式2の化合物、式3の化合物、式4の化合物および還元剤を組み合わせ、次いで、好適な溶剤を添加して混合物を形成する工程を含む。
【0175】
本方法は、典型的には、約25〜100℃およびより典型的には約25〜85℃の温度で実施される。度々、式1の化合物のもっとも高い生成物収率および純度をもたらすもっとも好ましい反応速度は、構成成分が約70〜85℃の範囲の反応温度で接触させられる場合に得られる。この温度範囲内での構成成分の反応を達成するために、構成成分は、おおよそ周囲温度(例えば、約15〜40℃)で組み合わされることが可能であり、次いで、温度が約70〜85℃に昇温されることが可能である。この反応は、この範囲内もしくはこの範囲を超える標準沸点を有する溶剤を用いて実施されることが可能であり、または反応は、高圧で、低沸点溶剤と一緒に実施されることが可能である。反応時間は様々であることが可能であるが、通常は、約3時間以内である。
【0176】
式1の生成物は、ろ過、抽出、蒸発および結晶化を含む当該技術分野において公知である標準的な技術により単離されることが可能である。式1の化合物は、典型的には、周囲温度では固形分であるため、これらは、ろ過により最も容易に単離されるが、任意により、事前に反応混合物が濃縮され、ならびに、任意により、その後、水および/または溶剤(例えば、アセトニトリル)で洗浄される。さらに、生成物は、濾液の減圧下での濃縮、得られた残渣の好適な溶剤(例えばアセトニトリル)中でのスラリー化、ろ過、ならびに、任意により水および/または有機溶剤(例えば、アセトニトリル)での洗浄により単離されることが可能である。生成物は、適切な有機溶剤(例えば、エタノール、メタノール、アセトニトリル)からの再結晶によりさらに精製されることが可能である。
【0177】
本方法の特徴は、式1の化合物を、典型的には、高収率(度々98%)で、約1〜約3時間以内で生成する効率的な手段を提供する。特に注目すべきは、これらの化合物、ならびに、式2の出発化合物が、副反応に潜在的に関与する可能性があるアミノ置換基および場合によってはアミド置換基を含有している場合であっても、本方法は、優れた純度の式1の化合物を著しく高い収率でもたらすために用いられることが可能であることである。また、既に公知であるシアノ化プロセスと比して、本プロセスは、複雑なおよび/または追加的な操作または試薬を関与させることなく、ニッケル触媒の非活性化(非活性ニッケルシアン化物錯体の形成を介する)が回避された5−ハロ安息香酸および誘導体のシアノ化法を提供する。スキーム1の方法が、以下の実施例2〜4に例示されている。
【0178】
式2の出発化合物は、当該技術分野において公知である多数の方法によって形成されることが可能である。スキーム2に示されているとおり、1つの方法によれば、式2の化合物は、臭素、塩素、ヨウ素、塩化スルフリル、N−クロロスクシンイミド(NCS)、N−ブロモスクシンイミド(NBS)、N−ヨードスクシンイミド(NIS)、ならびに、過酸化水素とハロゲン化水素とを含む混合物などのハロゲン化剤などの多様な試薬を用いる式7の化合物のハロゲン化により調製されることが可能である。この方法を記載している最新の文献については、国際公開第2006/068669号パンフレット(スキーム11および実施例1、ステップE)、国際公開第2003/015519号パンフレット(スキーム4および実施例1、ステップA)、国際公開第2006/062978号パンフレット(スキーム15;実施例2、ステップA;実施例4、ステップBおよび実施例5、ステップB)、および国際公開第2004/067528号パンフレット(スキーム11および実施例1、ステップA)を参照のこと。
【化10】

【0179】
式2の化合物(XがBrであると共にRがNHRである)を調製する他の方法は、参照例1の手法により例示されているとおり、臭素を含有するガスでの処理による式7の化合物の臭素化を含む。
【0180】
式2の化合物(RがNHRである)はまた、スキーム3に例示されているとおり、式8のイサト酸無水物を式9のアルキルアミンと、カルボン酸の存在下に接触させることにより調製されることが可能である。
【化11】

【0181】
式9の化合物のようなアミンは塩基であるため、カルボン酸がない場合、式8および式9の化合物の混合物は塩基性となる(例えば、有効pH>7)。カルボン酸は緩衝剤として働き、反応混合物の有効pHを低下させる。唯一の必要条件は、酸性を付与する少なくとも1つのカルボン酸基であるため、多種多様のカルボン酸が有用である。他の官能基が存在してもよく、カルボン酸分子上に2個以上のカルボン酸基が存在してもよい。典型的にカルボン酸の有効pKは約2〜約5の範囲である。カルボン酸としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、クロル酢酸、安息香酸、フタル酸、マレイン酸、酒石酸、およびクエン酸が挙げられる。費用的理由から、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、および安息香酸のような安価なカルボン酸が好ましい。無水物の形態(「氷酢酸」として知られる)で低価格で市販品として入手可能である酢酸が特に好ましい。
【0182】
カルボン酸と式9の塩基性アミンとを組み合わせることによって、カルボン酸のアミン塩が形成する。このアミン塩は、式8のイサト酸無水物化合物の添加の前に予め形成可能であるが、式8の化合物とカルボン酸との混合物中に式9のアミンを計り入れることによって、その場でこのアミン塩を発生させることもできる。いずれの添加の様式であっても、反応間の混合物の有効pHを約3〜約7に維持することが、一般に最適である。
【0183】
混合物の有効pHは、式9のアミンと組み合わせられたカルボン酸の緩衝効果から得られるものであるため、カルボン酸対式9のアミンのモル比を調節することによって、カルボン酸の有効pKによって有効pHを調節することができる。典型的に、式9のアミン対カルボン酸のモル比は約0.8〜約3の範囲である。特に組み合わせの様式が、式8のイサト酸無水物化合物とカルボン酸との混合物中への式9のアミンの計り入れを伴う場合、式9のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.95〜約3である。組み合わせの様式が式8の化合物の添加の前のアミン塩の形成を伴う場合、式9のアミン対カルボン酸のモル比は、好ましくは約0.8〜約1.05である。ほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)の式9のアミン対カルボン酸が使用される限り、形成したアミン塩は、典型的に、式8の化合物に対して約1.1〜約5モル当量の比率で使用される。どのように成分が混合されるかにかかわらず、最適な転化を得るためには、式9のアミン対式8のイサト酸無水物化合物のモル比は、効率や経済的理由から約1.1〜約1.5が好ましいが、少なくとも1.0であるべきである。式9のアミン対式8の化合物のモル量は、特にほぼ等モル比(例えば、約0.95〜約1.05)のアミン対酸が使用される場合、実質的に1.5より大きくてもよい。
【0184】
反応媒体が実質的に無水である場合、最も高い生産収率および純度が達成される。したがって、反応媒体は典型的に、式8および式9の実質的に無水の化合物とカルボン酸とから形成される。好ましくは、反応媒体および形性物質は、約5重量%以下、より好ましくは約1重量%以下、最も好ましくは約0.1重量%以下の水を含有する。カルボン酸が酢酸である場合、氷酢酸の形態が好ましい。
【0185】
スキーム3の反応は典型的に液相で行われる。多くの場合、式2、式8および式9の化合物とカルボン酸以外の溶媒を用いずに反応を行うことができる。しかしながら、好ましい手順では、反応物を懸濁し、少なくとも部分的に溶解することができる溶媒の使用を伴う。好ましい溶媒は、反応成分と非反応性であり、誘電率が約5以上であって、アルキルニトリル、エステル、エーテルまたはケトンのような溶媒である。好ましくは、溶媒は、実質的に無水の反応媒体の達成を容易にするために、実質的に無水であるべきである。溶媒対式8の化合物の重量比は、効率や経済的理由から、典型的に約1〜約20、好ましくは約5である。
【0186】
スキーム3の反応の副生物として二酸化炭素が形成される。形成された二酸化炭素の大部分は反応媒体から気体として放出する。式9のアミンを含有する反応媒体中に式8の化合物を添加すること、または式8の化合物を含有する反応媒体中に式9のアミンを添加することは、好ましくは、二酸化炭素の放出の制御を容易にするような速度および温度で行われる。反応媒体の温度は、典型的に約5℃〜75℃、より典型的には約35℃〜55℃である。
【0187】
pH調節、抽出、蒸発、結晶化およびクロマトグラフィーを含む当該技術分野で既知の標準技術によって、式2の生成物を単離することができる。例えば、式9の出発化合物に対して約3〜15重量部の水を用いて反応媒体を希釈することができ、酸性または塩基性不純物の除去を最適化するために、場合により酸または塩基によってpHを調節することができ、場合により水相を分離することができ、また有機溶媒の大部分を減圧下で蒸留または蒸発することによって除去することができる。式2の化合物は典型的に周囲温度で結晶固体であるため、一般に、場合により水を用いた洗浄とその後の乾燥が続けられる濾過によって最も容易に単離される。
【0188】
スキーム4に記載されているとおり、式8のイサト酸無水物は、式2aのアントラニル酸(RがORであると共にRがHである式2)から、トルエンまたはテトラヒドロフランなどの好適な溶剤中でのトリホスゲンまたはアルキルクロロホルメート(例えば、クロロ蟻酸メチル)などのホスゲンまたはホスゲン等価物でのアントラニル酸の処理を含む環化反応を介して調製されることが可能である。この方法は、スキーム4に関連する特定の実施例を含む国際公開第2006/068669号パンフレットに記載されている。また、Coppola、Synthesis、1980年、505およびFabisら、Tetrahedron、1998年、10789を参照のこと。
【0189】
式2aの化合物は市販されていると共に、スキーム2の方法および化学技術分野において詳細に考証されている他の方法によって調製されることが可能である。
【化12】

【0190】
式4のホスフィノフェロセン化合物は、当該技術分野において公知である多数の方法により調製されることが可能である。スキーム5に例示されているとおり、1つの方法においては、式4の化合物(式中、各RおよびR10は、独立して置換可能なリガンドである)は、式10のホスフィノフェロセン誘導体を、式11のニッケル二ハロゲン化物、式12の化合物および金属還元剤(例えば、亜鉛)と反応させる第1のステップにより調製されることが可能である。得られた式13のニッケル錯体は、その後、メチルリチウム、n−ブチルリチウムまたはsec−ブチルリチウムなどの有機リチウム試薬で処理されて式4の化合物がもたらされることが可能である。第1のステップについての条件には、式10のホスフィノフェロセン誘導体、式11のニッケル二ハロゲン化物および式12の化合物を好適な溶剤中で組み合わせる工程、次いで、金属還元剤を添加する工程が含まれる。好適な溶剤としては、例えば、芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン)、または、芳香族炭化水素とアルコールとの混合物(例えば、トルエンおよびエタノール)が挙げられる。この反応は、おおよそ周囲温度(例えば、約15〜20℃)から60℃で実施される。式13の化合物と有機リチウム試薬との反応である第2のステップは、テトラヒドロフランまたはジエチルエーテルなどの有機溶剤中に、約−20℃〜周囲温度の温度で実施される。スキーム5の方法についての基本手順は、欧州特許第314327−B1号明細書および欧州特許出願公開第613719−A号明細書に記載されている。
【化13】

【0191】
スキーム6は、式4のホスフィノフェロセン化合物(式中、RおよびR10は、各々、同一の置換可能なリガンドである)を調製するための他の方法を例示する。この方法においては、式5のホスフィノフェロセンニッケル二ハロゲン化物は、2当量の、メチルリチウム、n−ブチルリチウムあるいはsec−ブチルリチウムなどの有機リチウム試薬(RLi)、または、臭化エチルマグネシウムあるいは臭化フェニルマグネシウムなどのグリニャール試薬(RMgX)と反応される。式4生成物中のRおよびR10は、RLiまたはRMgX試薬におけるRと同一である。この反応は、典型的には、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフランなどの好適な溶剤中に、約−20℃〜周囲温度(例えば、約15〜20℃)の温度で実施される。スキーム6の方法についての基本手順は、欧州特許第314327−B1号明細書および欧州特許出願公開第613719−A号明細書に記載されている。
【化14】

【0192】
式5の化合物は市販されていると共に、ニッケル二ハロゲン化物(例えば、NiCl、NiBr、NiI;水和形態または無水形態のいずれかを用いることが可能である)および1,1’−ビス(ジアリールホスフィノ)フェロセン(例えば、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン)などの市販されている出発材料から、文献に報告されている方法により容易に調製されることが可能である;例えば、A.W.Rudieら、Inorganic Chemistry、1978年、17(10)、2859〜2863ページ;B.Corainら、Inorganica Chimica Acta、1989年、157、259〜266ページ;および、G.J.Grantら、Journal of Organometallic Chemistry、2001年、637〜639ページ、683〜690ページを参照のこと。
【0193】
他の本発明の態様において、式4の化合物(式中、RおよびR10は一緒になって二座の置換可能なリガンドである)は、スキーム7に示されているとおり、式5のホスフィノフェロセンニッケル二ハロゲン化物、シクロアルカジエン二座リガンド、少なくとも1種の金属還元剤およびニトリル溶剤を接触させることにより調製されることが可能である。
【化15】

【0194】
スキーム7の方法において、式5のホスフィノフェロセンニッケル二ハロゲン化物は、上記発明の概要において開示されているとおり、各々が、独立して、任意により置換されたフェニル環である置換基RおよびRを含む。式5は、上記発明の概要において開示されているとおり、各々が、独立して、任意により置換されたフェニル環またはナフタレニル環系である置換基RおよびRをさらに含む。各環または環系は、発明の概要に列挙されているものから独立して選択される基で任意により置換されている。スキーム7の方法において有用である式5の化合物としては、R、R、RおよびR置換基の種々の組み合わせが挙げられる。例えば、R、R、RおよびRがすべて未置換フェニル(すなわち、フェロセン含有リガンドが1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセンである)である式5の化合物が特に有用である。式5の化合物におけるフェロセン含有リガンドの他の例としては以下が挙げられる:1,1’−ビス[ビス[2−(1−メチルエチル)フェニル]ホスフィノ]フェロセン、1,1’−ビス[ビス(2−メトキシフェニル)ホスフィノ]フェロセンおよび1−[ビス(4−メトキシフェニル)ホスフィノ]−1’−[ビス[4−(トリフルオロメチル)フェニル]ホスフィノ]フェロセン。本方法における使用のために好ましい式5の化合物は、商業的に入手可能である、[1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]ジクロロニッケル(すなわち、各R、R、RおよびRはフェニル環である)である。
【0195】
唯一の要件が、リガンドが、式5の化合物中のニッケル原子との配位結合に利用可能である少なくとも二対の電子を含んでいることであるため、広く多様なシクロアルカジエンリガンドが本方法において有用である。1,5−シクロオクタジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,4−シクロヘキサジエン、2,3,5,6−テトラ−メチル−2,5−シクロヘキサジエン−1,4−ジオン(ジュロキノンとしても知られている)およびビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン(ノルボルナジエンとしても知られている)などの、共役または非共役の、任意により置換されていると共に、4〜12個の炭素原子を環中に有するシクロアルカジエンが好ましい。1,5−シクロオクタジエンが特に好ましい。シクロアルカジエンリガンド対式5の化合物のモル比は、典型的には、約1〜約10、および好ましくは約3〜約5である。
【0196】
本方法に好適な金属還元剤としては、例えば、亜鉛またはマンガンが挙げられる。亜鉛金属が、本方法において特に有用であることが見出された。より大きな表面積をもたらすために、反応媒体中の亜鉛金属は、典型的には、粉末または粉剤(例えば、粒径<100μmまたは<10μm)の形態である。亜鉛金属は、反応媒体に添加する前に、水性酸で処理して亜鉛金属粒子の酸化物皮膜を除去することにより活性化させることが可能である。しかしながら、亜鉛金属粉末または粉剤はまた、事前に活性化することなく用いることが可能である。典型的には、金属還元剤対式5の化合物の当量比は約1〜約20である。亜鉛が金属還元剤として用いられる場合、当量比は、好ましくは約15〜約20である。活性化亜鉛粉剤が用いられる場合、当量比は好ましくは約1〜約5、およびもっとも好ましくは約1〜約2である。
【0197】
スキーム7の方法は、式5の化合物が典型的には低溶解度を有すると共にシクロアルカジエンが完全にまたは少なくとも実質的に可溶性であるニトリル溶剤中で実施される。アセトニトリルまたはプロピオニトリルを含む溶剤が特に良好に機能する。アセトニトリルは、優れた結果をもたらし、コストを含む理由から好ましい。式4の化合物は反応溶剤中に存在する大気酸素と反応し得るため、典型的には、無酸素溶剤が用いられる。無酸素溶剤を得るための技術としては、スキーム1の方法について既に考察されたものが挙げられる。
【0198】
スキーム7の方法において、好ましい組み合わせの順番は、式5の化合物、シクロアルカジエン、少なくとも1種の金属還元剤およびニトリル溶剤を組み合わせる工程を含むと見出された。他の添加順が本方法について許容される;しかしながら、式5の化合物の分解をもたらす可能性があるために、シクロアルカジエンの不存在下で、式5の化合物、金属還元剤およびニトリル溶剤を長時間にわたって組み合わせることは回避されるべきである。
【0199】
スキーム7の方法は、典型的には、周囲温度(例えば、約15〜40℃)、またはその近くで実施される。反応時間は、条件に応じて様々であることが可能であるが、通常は、約24時間以下である。
【0200】
式4の化合物は、典型的には、周囲温度で結晶性の固体であるため、これらは、ろ過によりもっとも簡便に単離される。例えば、冷却すると、反応混合生成物はろ過により回収されることが可能である。任意によりこの固体は、有機溶剤(例えば、アセトニトリル)で洗浄されると共に乾燥されることが可能である。スキーム7の方法は実施例1により例示されている。
【0201】
あるいは、式4の化合物(式中、RおよびR10は一緒になって二座の置換可能なリガンドである)は、スキーム8に示されているとおり、式10のホスフィノフェロセン誘導体、式14のニッケル錯体(式中、RおよびR10は一緒になって二座の置換可能なリガンドである)および好適な溶剤が接触させられることにより調製されることが可能である。この方法は、スキーム8に関連する特定の例を含む欧州特許出願公開第613719−A号明細書中に記載されている。また、スキーム8の方法は、R、R、RおよびRの各々がフェニル環であり、ならびに、RおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである参照例2によって例示されている。
【化16】

【0202】
スキーム9に示されているとおり、本発明の他の方法により、式1の化合物は、先ず、式5の化合物がシクロアルカジエン二座リガンドおよび少なくとも1種の金属還元剤と接触させられて式4の化合物を含む混合物が形成される工程を含む方法により式4の化合物(式中、RおよびR10は一緒になって二座の置換可能なリガンドである)が調製され;次いで、この式4の化合物を含む混合物が、式2の化合物および少なくとも1種の式3の化合物と接触させられて、調製されることが可能である。
【化17】

【0203】
スキーム9の反応順序において、2つのステップは、同一の反応容器中で、すべての反応順序が完了するまで生成物を単離または精製することなく、順番に実施される。両方のステップは好適な溶剤中で実施され、典型的には、同一の溶剤が、反応順序を通して用いられる。この方法に好適な溶剤を形成するために多様な溶剤が用いられることが可能である。この方法は、用いられる溶剤の体積中に、通常の周囲温度(例えば、約15〜40℃)で、シクロアルカジエンおよび式2の化合物が好ましくは完全にまたは少なくとも実質的に可溶性であると共に、式5の化合物、式3の化合物および式4の化合物が、典型的には低い溶解度を有する溶剤を用いて、最も良好に実施される。好適な溶剤としては、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルなどのニトリル;テトラヒドロフランなどのエーテル;ならびに、キシレン、トルエンおよびクロロベンゼン、および、これらの混合物などのハロゲン化および非ハロゲン化芳香族炭化水素が挙げられる。より好ましい溶剤としては、アセトニトリルまたはプロピオニトリルが挙げられる。スキーム9の反応は、アセトニトリル中で特に良好に機能する(すなわち、優れた結果をもたらす)ことが見出された。スキーム9の方法において用いられる溶剤の総体積は、典型的には、式5の化合物の重量に対して約150mL/g〜約200mL/gである。この溶剤は、反応順序の開始時に1回のバッチで、または、反応順序の最中に数回に分けて添加されることが可能である。例えば、所望される場合には、1分量の溶剤が第1のステップの最中に添加されると共に、さらなる分量が第1のステップの完了(すなわち、式4の化合物の調製)の後、いつでも添加されることが可能である。スキーム9の方法は、無酸素溶剤を用いて実施されることが好ましい。無酸素溶剤を得るための技術としては、スキーム1の方法について既に考察されたものが挙げられる。すべての反応順序は、典型的には、約20〜100℃の範囲の温度で実施される。約20〜30℃の温度が第1のステップに好ましく、第2のステップは、約80〜100℃の温度が好ましい。各ステップについての反応期間は様々であるが、典型的には、各々、約2〜4時間の範囲である。
【0204】
第1のステップにおいて、式4の化合物は、好適な溶剤がニトリル溶剤(上記の段落において考察されているとおり)に限定されず、かつ第1のステップの最中に添加される金属還元剤の量が典型的にはその後のシアノ化ステップにも十分であることを除き、スキーム7と同様の方法により調製される。第2のステップ(すなわち、シアノ化ステップ)は金属還元剤を必要とはしないが、式1の化合物のもっとも高い収率は、通常は、(スキーム1に関して上述されているとおり)反応が少なくとも1種の還元剤の存在下に実施されている場合に達成される。金属還元剤として亜鉛が用いられる場合、式5の化合物に対する約5〜約50の初期当量比が、両方のステップについて十分である。注意すべきは、約15〜約25の当量比であり、もっとも注意すべきは、約20〜約25の比である。
【0205】
第1のステップにおける試薬は、シクロアルカジエンの不存在下で式5の化合物、金属還元剤および溶剤を接触させることは回避されるべきであることを除き、多様な順番で組み合わされ得る。好ましい添加順は、式5の化合物、シクロアルカジエン、金属還元剤および溶剤を組み合わせることである。
【0206】
第2のステップにおいては、第1のステップにおいて調製された混合物が式2の化合物および少なくとも1種の式3の化合物と接触させられる。試薬の比(すなわち、式4対式2、および式3対式2)は、スキーム1と同様である。この方法に好適である式3の化合物としては、スキーム1について記述のものが挙げられる。式3化合物の粒径を使用前に低減させること、および、これを行うための技術に関するスキーム1における解説はまた方法スキーム9にも適用される。
【0207】
試薬を組み合わせる場合、式3の化合物の不存在下での長時間にわたる式2の化合物と式4の化合物との接触を避けることが特に有利である。それ故、本方法におけるシアノ化ステップを実施する場合、もっとも好ましい添加順は、式3の化合物を、式4の化合物および好適な溶剤を含む反応混合物に添加し、次いで、式2の化合物を添加することを含むことが見出された。さらなる金属還元剤がシアノ化ステップの最中に添加される場合には、典型的には、式2の化合物の添加の直前に、または最後に、添加される。
【0208】
スキーム9の方法においては、対応する安息香酸誘導体を副産物としてもたらす式2の5−ハロ安息香酸誘導体の還元(すなわち、脱ハロゲン化)を含む望ましくない副反応が潜在的に生じる可能性がある。この副反応はスキーム1の方法においても生じる可能性があるが、この方法の好ましい条件下では、例え生じるとしても、通常はきわめてわずかな程度でしか生じることがない(すなわち、度々、1〜2mol%以下)。特定の理論に束縛されることはないが、亜鉛が金属還元剤として用いられる場合、第1のステップにおける式5の式4への還元の最中に生成される塩化亜鉛が、その後のシアノ化ステップにおいて副反応を促進させると考えられている。塩基の添加がこの副産物の形成を最低限とすることが可能であることが見出された。この塩基は、好ましくは、ルイス塩基であり、およびより好ましくはアミンルイス塩基である。広く多様な第1級、第2級および第3級脂肪族アミンが本方法において有用であり、例えば、メチルアミン、エチルアミンまたはトリエチルアミンが挙げられる。トリエチルアミンが特に好ましい。典型的には、式4の化合物に対する塩基の約1〜約20のモル比が、最終的に所望される生成物における脱ハロゲン化安息香酸誘導体副産物の存在を最低限とするのに有効である。本方法において塩基が用いられる場合、これは、典型的には、新たに調製された式4の化合物を含む反応混合物に、式2の化合物が添加される前に添加されるか、または、式2の化合物の添加と同時に添加される。
【0209】
スキーム9の方法は以下の実施例5に例示されている。以下の実施例6がまた、塩基(トリエチルアミン)の、新たに調製された式4の化合物を含む反応混合物への添加を含むスキーム9の方法を例示する。
【0210】
本発明の他の態様において、スキーム1の方法またはスキーム9によって調製された式1の化合物は、式6の化合物を調製するための中間体として有用である。式6の化合物は、例えば国際公開第2003/015518号パンフレットおよび国際公開第2006/055922号パンフレットに記載されているとおり、殺虫剤として有用である。
【化18】

(式中、
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;
Zは、CR18またはNであり;
15は、Cl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり;
16は、F、ClまたはBrであり;
17はH、FまたはClであり;および
18はH、F、ClまたはBrである)。
【0211】
式1の化合物からの式6の化合物の調製のためには多様な方法が可能である。スキーム10に概説されているとおり、このような方法の1つは、式1aの化合物(RがORであると共にRがHである式1)と式15のピラゾール−5−カルボン酸とのカップリングを含み、式16のシアノベンゾキサジノンが得られる。シアノベンゾキサジノンの式9のアミンとのその後の反応が式6の化合物をもたらす。最初のステップのための条件は、トリエチルアミンまたはピリジンなどの第三級アミンの存在下での式15のピラゾールへのメタンスルホニルクロリドの逐次的な添加、続いて、式1aの化合物の添加、続いて、第三級アミンおよびメタンスルホニルクロリドの2回目の添加を含む。この反応は、そのままで、またはテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジオキサン、トルエン、ジクロロメタンあるいはクロロホルムを含む多様な好適な溶剤中に、周囲温度(例えば、約15〜40℃)から溶剤の還流温度までの範囲の最適な温度で実施されることが可能である。アントラニルアミドを生成するベンゾキサジノンのアミンとの反応である第2のステップは、化学文献中に十分に記載されている。ベンゾキキサジノン化学の一般的な概論に関してはJakobsenら、Biorganic and Medicinal Chemistry 2000年、8、2095〜2103ページおよびこの中の引用文献、ならびに、G.M.Coppola、J. Heterocyclic Chemistry 1999年、36、563〜588ページを参照のこと。また、スキーム10に関連する実験例を含むスキーム10に示される一般的な方法を教示する、国際公開第2004/067528号パンフレットも参照のこと。
【化19】

【0212】
式6の化合物を調製するための他の方法がスキーム11に示されている。この方法においては、式6の化合物は、式1bの化合物(RがNHRである式1)、式15のピラゾールおよび塩化スルホニルを、その全体が本明細書において参照により援用される国際公開第2006/062978号パンフレットに教示されている一般的な方法に準拠して組み合わせることにより調製される。
【化20】

【0213】
国際公開第2006/062978号パンフレットに記載されるように、本変換には様々な反応条件が可能である。典型的に、溶媒および塩基の存在下、式1Bの化合物と式15の化合物との混合物に塩化スルホニルを添加する。塩化スルホニルは一般に、式RS(O)Clで表され、式中、Rは炭素をベースとする基である。通常本方法では、Rは、C〜Cアルキル、C〜Cハロアルキルまたはハロゲン、C〜Cアルキルおよ
びニトロからなる群から独立して選択される3個以下の置換基によって場合により置換されていてもよいフェニルである。市販品として入手可能な塩化スルホニルとしては、塩化メタンスルホニル(RがCHである)、塩化プロパンスルホニル(Rが(CHCHである)、塩化ベンゼンスルホニル(Rがフェニルである)、そして塩化p−トルエンスルホニル(Rが4−メチルフェニルである)が挙げられる。費用がより低いこと、添加の容易さ、および/または廃物の少なさという理由から、注目すべきは塩化メタンスルホニルである。完全な転化を得るためには、式15の化合物1モルあたり、少なくとも1モル当量の塩化スルホニルが化学量論的に必要とされる。典型的に、塩化スルホニル対式15の化合物のモル比は約2.5以下、より典型的に約1.4以下である。
【0214】
式1b、式15の出発化合物と塩化スルホニルがそれぞれ少なくとも部分的に溶解性である組み合わせられた液相中で、それぞれが互いに接触した時に式6の化合物が形成する。式1bおよび式15の出発化合物は典型的に通常の周囲温度で固体であるため、これらの出発化合物の溶解性が高い溶媒を使用することによって、本方法は最も満足に実行される。したがって、典型的に本方法は溶媒を含んでなる液相中で実行される。式15のカルボン酸の溶解性が非常に低い場合、塩基の添加によって形成したその塩が溶媒中でより高い溶解性を有することもある。本方法に適切な溶媒としては、アセトニトリルおよびプロピオニトリルのようなニトリル、酢酸メチル、酢酸エチルおよび酢酸ブチルのようなエステル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)およびメチルブチルケトンのようなケトン、ジクロロメタンおよびトリクロロメタンのようなハロアルカン、エチルエーテル、メチル第三級ブチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)およびp−ジオキサンのようなエーテル、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼンおよびジクロロベンゼンのような芳香族炭化水素、トリアルキルアミン、ジアルキルアニリンおよび場合により置換されていてもよいピリジンのような第三級アミン、ならびに上記の混合物が挙げられる。注目すべき溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、酢酸エチル、アセトン、MEK、ジクロロメタン、メチル第三級ブチルエーテル、THF、p−ジオキサン、トルエンおよびクロロベンゼンが挙げられる。優れた収率および/純度で生成物が得られることが多いため、特に注目すべき溶媒はアセトニトリルである。
【0215】
スキーム11の方法の反応では副産物として塩化水素が生じ、これは式1b、式6および式15の化合物の塩基中心と結合するため、少なくとも1種の添加された塩基が存在する条件で、この方法は最も満足に実行される。塩基は、カルボン酸と塩化スルホニル化合物およびアントラニルアミドとの構成的な相互作用も促進し得る。添加された塩基と式15のカルボン酸との反応によって塩が生じ、この塩は反応媒体中でカルボン酸よりも高い溶解性を有する。塩基は同時に添加されても、交互に添加されても、または塩化スルホニルの添加後に添加され得るが、塩基は典型的に塩化スルホニルの添加前に添加される。第三級アミンのようないくつかの溶媒も塩基として作用し、これらが溶媒として使用される場合、塩基として非常に化学量論的過剰量である。塩基が溶媒として使用されない場合、塩基対塩化スルホニルの公称モル比は典型的に約2.0〜約2.2であり、好ましくは約2.1〜約2.2である。好ましい塩基は、置換ピリジンを含む第三級アミンである。より好ましい塩基としては、2−ピコリン、3−ピコリン、2,6−ルチジンおよびピリジンが挙げられる。式15のカルボン酸との塩がアセトニトリルのような溶媒中で非常に溶解性であることが多いため、特に注目すべき塩基は3−ピコリンである。
【0216】
式6の化合物は、結晶化、ろ過および抽出を含む当業者に公知である方法により、反応混合物から単離されることが可能である。国際公開第2006/062978号パンフレットに開示されているとおり、スキーム11のカップリング反応条件下のいくつかの場合において、式6の化合物は、以下のスキーム12に示されているとおり、部分的に環化されて式17のイミノベンゾキサジン誘導体を形成することが可能である。
【化21】

【0217】
国際公開第2006/062978号パンフレットに開示されているとおり、これらの事例において、度々、単離の前に、式17のイミノベンゾキサジン化合物を式6のアミドに転換し戻すことが有利である。この転換は、反応混合物を酸水溶液(例えば、水性塩酸)で処理し;または式17の混合物および式6の化合物を単離し、次いで、この混合物を、任意により、好適な有機溶剤(例えば、アセトニトリル)の存在下で酸水溶液で処理することにより達成することが可能である。国際公開第2006/062978号パンフレットは、式6の化合物を単離する前の酸水溶液での反応混合物の処理を例示する実施例を含む、スキーム11の方法に関連する特定の実施例を開示する。また、以下の実施例6は、式6生成物を単離する前の反応混合物の水および塩酸での処理を含むスキーム11の方法を例示している。
【0218】
あるいは、式17の化合物は、反応混合物を水と接触させると共に加熱することにより、単離の前に式6の化合物に転換し戻されることが可能である。典型的には、式17の化合物の式6の化合物への転換は、式1の出発化合物の重量に対して約2〜6重量部の水を添加し、次いで、約45〜約65℃に加熱することにより達成することが可能である。式17の化合物の式6の化合物への転換は、通常は、1時間以下で完了する。以下の参照例4は、式6の化合物を単離する前の水および加熱を伴う反応混合物の処理を含むスキーム11の方法を例示している。
【0219】
式15のピラゾール−5−カルボン酸は、ハロゲン化剤での処理により3−ハロ−4,5−ジヒドロ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートがもたらされ、これが、その後、酸化剤で処理されてエステルとされ、次いで、酸に転換される(すなわち、式15)ことにより、5−オキソ−3−ピラゾリジンカルボキシレートから調製されることが可能である。用いることが可能であるハロゲン化剤としては、例えば、リンのオキシハロゲン化物、リンの三ハロゲン化物、リンの五ハロゲン化物、塩化チオニル、ジハロトリアルキルホスホラン、ジハロジフェニルホスホラン、塩化オキサリルおよびホスゲンが挙げられる。酸化剤は、例えば、過酸化水素、有機過酸化物、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、一過硫酸カリウム(例えば、オキソン(登録商標))または過マンガン酸カリウムであることが可能である。ハロゲン化および酸化法の記載、および出発5−オキソ−3−ピラゾリジンカルボキシレートを調製するための手法については、国際公開第2003/016283号パンフレット、国際公開第2004/087689号パンフレットおよび国際公開第2004/011453号パンフレットを参照のこと。無水条件下での求核性開裂、または、酸もしくは塩基の使用が含まれる加水分解を含む、化学文献において報告されている多様な方法を用いてエステルをカルボン酸に転換することが可能である(方法の概説については、T.W.GreeneおよびP.G.M.Wuts、Protective Groups in Organic Synthesis、第2版、John Wiley & Sons,Inc.、New York、1991年、224〜269ページを参照のこと)。塩基触媒加水分解法が、対応するエステルから式15のカルボン酸を調製するために好ましい。好適な塩基としては、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、またはカリウムなど)水酸化物が挙げられる。例えば、エステルは、水とメタノールなどのアルコールとの混合物中に溶解されることが可能である。水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムとの処理で、エステルは鹸化してカルボン酸のナトリウムまたはカリウム塩がもたらされる。塩酸または硫酸などの強酸での酸性化がカルボン酸をもたらす。国際公開第2003/016283号パンフレットは、エステルの酸への転換のための塩基触媒加水分解法を例示する関連する実験例を提供する。
【0220】
あるいは、式15のピラゾール−5−カルボン酸は、酸触媒脱水反応を介して4,5−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートから式15のエステルが得られ、次いで、これが酸に転換されることから出発して調製されることが可能である。典型的な反応条件は、4,5−ジヒドロ−5−ヒドロキシ−1H−ピラゾール−5−カルボキシレートの例えば硫酸といった酸での、酢酸などの有機溶剤中での、約0〜100℃の温度での処理を含む。この方法は、国際公開第2003/016282号パンフレットに記載されている。エステルの酸への転換は、上述の方法を用いて行うことが可能である。また、国際公開第2003/016282号パンフレットは、エステルの酸への転換のための関連する実験例を提供する。
【0221】
式1bのアントラニルアミドはまた、以下のスキーム13に示されているとおり、式1cの対応する酸またはエステル(RがORであると共にRがHまたはC〜Cアルキルである式1)から調製されることが可能である。カルボン酸からのアミドの形成は、典型的には、カップリング剤(例えば、四塩化ケイ素、または、代替的に、度々1−ヒドロキシ−ベンゾトリアゾールの存在下にジシクロヘキシルカルボジイミドあるいは1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド)の添加を含む。アントラニル酸からのアントラニルアミドの調製は、M.J.Kornet、Journal of Heterocyclic Chemistry、1992年、29(1)、103〜5ページ;国際公開第01/66519−A2号パンフレット;T.Asanoら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、2004年、14(9)、2299〜2302ページ;H.L.Birchら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、2005年、15(23)、5335〜5339ページ;およびD.Kimら、Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters、2005年、15(8)、2129〜2134ページに開示されている。また、T.Asanoらは、N−保護アニリン中間体または4H−3,1−ベンゾキサジン−2,4(1H)−ジオン(イサト酸無水物)中間体を介するアントラニル酸からのアントラニルアミドの調製を報告している。エステルからのアミドの形成は、度々、エチレングリコールなどの極性溶剤中での適切なアミンとのエステルの加熱を伴う。アントラニルエステルのアントラニルアミドへの転換のために有用な手法が国際公開第2006/062978号パンフレットに記載されている。また、E.B.Skiboら、Journal of Medicinal Chemistry、2002年、45(25)、5543〜5555ページが、シアン化ナトリウム触媒を用いる、対応するアントラニルエステルからのアントラニルアミドの調製を開示する。
【化22】

【0222】
スキーム10および11の方法は、式1の化合物を式6のカルボキサミドに転換するための多くの方法の単に2つの例示である。広く多様な一般的な方法が、カルボキサミドをカルボン酸およびアミンから調製するために当該技術分野において公知である。一般的な概説については、M.North、Contemporary Org.Synth.1995年、2、269〜287ページを参照のこと。特定の方法は、国際公開第2003/15518号パンフレットに一般に開示されているとおり、式1bの化合物を式15の化合物と、1,1’−カルボニルジイミダゾール、ビス(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)ホスフィン酸塩化物またはベンゾトリアゾール−1−イルオキシ−トリス(ジメチル−アミノ)−ホスホニウムヘキサフルオロリン酸などの脱水カップリング剤;または、ポリマー−結合ジシクロヘキシルカルボジイミドなどのポリマー−結合類似薬の存在下に、典型的にはジクロロメタンまたはN,N−ジメチルホルムアミドなどの不活性溶剤中に接触させる工程を含む。また、国際公開第2003/15518号パンフレットには、式15の化合物を塩化チオニルまたは塩化オキサリルと、触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドの存在下に接触させ、次いで、誘導された塩化アシルを式1bの化合物と、アミン塩基(例えば、トリエチルアミン、N,N−−ジイソプロピルエチルアミン、ピリジン、およびポリマー−担持類似体)または水酸化物またはカーボネート(例えば、NaOH、KOH、NaCO、KCO)などの酸掃去剤の存在下に、典型的には、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、エチルエーテルまたはジクロロメタンなどの不活性溶剤中に接触させることによる、式15の塩化アシル誘導体化合物の調製方法が開示されている。式6の化合物である生成物は、結晶化、ろ過、および抽出を含む当業者に公知の方法により反応混合物から単離されることが可能である。
【実施例】
【0223】
さらなる詳細なしで、前述の記載を利用する当業者は、本発明を最大限に利用することが可能であると考えられている。以下の実施例は、従って、単に例示的であり、本開示を如何様にも限定することはないと解釈されるべきである。以下の実施例におけるステップは全合成形質転換における各ステップについての手法を例示しており、各ステップについての出発材料は、手法が他の実施例またはステップに記載されている特定の調製用試験によって調製されている必要性は必ずしもない。以下の実施例において、「無酸素」という用語は、溶剤に関して用いられている場合、水酸化カルシウムの存在下に不活性雰囲気中で蒸留することにより使用前に大気酸素を除去した溶剤を指す。「活性化亜鉛粉剤」という用語は、以下の実施例において用いられる場合、ゆっくりと窒素をパージしながら塩酸(1N)の溶液中で約10分間攪拌し、次いで、ろ過し、水およびアセトニトリルで洗浄し、および乾燥させることにより、使用前に活性化させた、商業的に入手した亜鉛粉剤を指す。以下の実施例において、粒子メッシュサイズ(例えば、「粒径−200メッシュ(−74μm)」)に対する参照は、特定のメッシュサイズで、所与の量の材料について、材料の10重量%が特定のサイズより大きい粒径を有すると共に、他の90重量%が特定のメッシュサイズよりも小さい粒径を有する(すなわち、材料の90重量%が特定のメッシュサイズを通過することとなる)ことを意味する。実施例2および3において、生成物2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドの純度は、Agilent Technologies製の逆相HPLC(HP Zorbax(登録商標)Eclipse XDB−C8、5μm、4.6mm×75mm)により測定した。溶剤系は、溶剤A:0.1重量%トリフルオロ酢酸を含む水、および溶剤B:0.1%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリルであった(勾配は、0分で95%溶剤Aおよび5%溶剤Bで開始し、および8分間かけて、溶剤Bを95%に増加した;流量は1mL/分であった)。H NMRおよび31P NMRスペクトルが、それぞれ、テトラメチルシランおよびリン酸からの下流にppmで報告されており;sは一重項を意味し、dは二重項を意味し、mは多重項を意味し、およびbr sは幅広の一重項を意味する。
【0224】
参照例1
2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(式2の化合物)の調製
機械的攪拌機、熱電対、コンデンサおよびTeflon(登録商標)フルオロポリマーチューブ(1/16インチ(0.16)cm I.D.×1/8インチ(0.32cm)O.D.)(チューブの端部が反応混合物の表面下に浸るよう位置させた)を備えた1000−mLフラスコに酢酸(226mL)を充填した。水性水酸化ナトリウム(50%、25g)の水(85g)中の溶液を15分間かけて添加し、次いで、2−アミノ−N,3−ジメチル−ベンズアミド(50g、0.305mol)(調製方法については国際公開第2006/062978号パンフレットを参照のこと)を添加し、および、混合物を55℃に加熱した。Teflon(登録商標)チューブ浸漬管を一方の首に取り付けた二首200−mLフラスコに液体臭素(50.1g)を充填し、他方の首を、1000−mLフラスコのTeflon(登録商標)チューブに接続した。次いで、窒素ガスを液体臭素の表面下で、約0.012m(0.4cu ft)/時間の流量で2.5時間浸漬管を通して流し、この時間の間、窒素ガス中に混入した蒸発した臭素および臭素蒸気のすべてが二首200−mLフラスコから流出すると共に、Teflon(登録商標)チューブを介して反応混合物に進入した。反応温度を臭素蒸気添加の最中およびその後30分間は約55℃で維持し、次いで、45℃に冷却して一晩攪拌した。水性水酸化ナトリウム(50%、52g)の水(88mL)中の溶液を反応混合物に0.8mL/分の流量で添加した。水酸化ナトリウム溶液の総体積の約10%が添加された後、添加を停止すると共に、反応混合物を1時間45℃で攪拌した。1時間後、残りの水酸化ナトリウム溶液を0.8mL/分の流量で添加した。添加が完了した後、反応を30分間45℃で攪拌し、次いで、10℃に冷却すると共に1時間攪拌した。混合物をろ過すると共に、回収した固体をメタノール(130mL)および水(260mL)で洗浄し、次いで、一定重量まで真空−オーブン中に45℃で乾燥させて、表題の化合物を、133〜135℃で溶融する固体として得た(67g、HPLCによる99.4面積%純度、89.7%収率)。
H NMR(DMSO−d)δ8.30(m,1H)、7.49(d,1H)、7.22(d,1H)、6.35(br s,2H)、2.70(d,3H)、2.06(s,3H)。
【0225】
参照例2
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]−ニッケル(式4の化合物)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、反応フラスコを、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(1.84g、3.32mmol)、ビス(1,5−シクロオクタジエン)ニッケル(0.75g、2.80mmol)および無酸素トルエン(10mL)で充填した。室温で4時間攪拌した後、ヘキサン(40mL)をこの反応混合物に添加した。この反応混合物を一晩静置させ、次いで、溶剤を傾瀉して、残留したオレンジ−黄色の固体をヘキサンで洗浄した。この固体を減圧下で乾燥させてオレンジ−黄色の固体として表題の化合物を得た(1.86g、78%収率)。
31P NMR(ベンゼン−d):δ38.4(s)。
【0226】
参照例3
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]−ニッケル(式4の化合物)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、磁気攪拌機、熱電対およびコンデンサを備える四首100−mL丸底フラスコに、塩化ニッケル六水和物(3.57g、15.0mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(18.50g、15.0mmol)、無酸素エタノール(35mL)および無酸素トルエン(35mL)を充填した。攪拌混合物を約75℃で30分間加熱し、次いで、室温に冷却し、1,5−シクロオクタジエン(9.21mL、75.1mmol)および活性化亜鉛粉剤(1.29g、19.50mmol)を添加した。およそ30分間攪拌した後、この反応混合物は固形分を含んで極めて粘度が高くなり、無酸素エタノール(10mL)をさらに添加した。さらに8時間攪拌した後、得られたオレンジ色がかったスラリーをろ過し、回収した固体をエタノール(3×10mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させてオレンジ色の粉末として表題の化合物を得た(残存亜鉛を含めて10.80g)。
31P NMR(THF−d)δ37.3(s)。
【0227】
実施例1
[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]−ニッケル(式4の化合物)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、20−mLシンチレーションバイアルに、[1,1’−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)フェロセン)ジクロロニッケル(0.50g、0.709mmol)、1,5−シクロオクタジエン(0.384g、3.55mmol)、無酸素アセトニトリル(10mL)および活性化亜鉛粉剤(0.080g、1.205mmol)を充填した。この反応混合物を室温で約16時間攪拌し、次いで、得られたオレンジ色のスラリーをろ過した。回収した固体をアセトニトリル(3mL)で洗浄し、次いで、減圧下で乾燥させてオレンジ色がかった粉末として表題の化合物を得た(残存亜鉛を含めて0.477g)。
31P NMR(THF−d)δ35.4(s)。
【0228】
実施例2
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(式1の化合物)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、磁気攪拌機、熱電対およびコンデンサを備えた三首250−mL丸底フラスコに、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例1の方法により調製した)(10.0g、41.1mmol)、シアン化ナトリウム(2.26g、44.6mmol、使用前に粉砕した)、亜鉛(0.815g、12.3mmol、23.6meq、粒径−200メッシュ(−74μm))および[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケル(参照例2の方法により調製した)(0.297g、0.41mmol)で充填した。このフラスコをグローブボックスから取り出し、窒素を1時間通気させ、その後、無酸素アセトニトリル(48mL)をシリンジにより添加した。この反応混合物を80℃で約3時間加熱した。3時間後、この反応混合物のHPLC分析は、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを主生成物とすると共に2−アミノ−N,3−ジメチルベンズアミドを副生成物として(モル比98.5対1.5)、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミドの完全な転換を示した。トルエン(55mL)をこの反応混合物に添加し、アセトニトリル溶剤のほとんどを大気圧での蒸留により除去した(80〜82℃で沸騰する67mLの留出物を回収した)。トルエン(20mL)および水(20mL)を濃縮した反応混合物に添加し、この混合物を還流で1.5時間加熱し、次いで、室温に冷却すると共にろ過した。回収した固体を、水(90mL)で洗浄し、減圧下で45℃で乾燥させて、オフホワイトの粉末として表題の化合物を得た(7.96g、HPLCで91.4%純度、93.4%収率)。
【0229】
実施例3
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドの第2の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、磁気攪拌機、熱電対およびコンデンサを備える四首100−mL丸底フラスコに、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例1の方法により調製した)(2.50g、10.28mmol)、シアン化ナトリウム(0.564g、11.16mmol、使用前に粉砕した)、亜鉛(0.204g、6.18meq、3.09mmol、粒径−200メッシュ(−74μm))、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケル(参照例2の方法により調製した)(0.074g、0.10mmol)および無酸素ブチロニトリル(12mL)を充填した。この反応混合物を80℃で約3時間加熱した。3時間後、HPLC分析は、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドおよび2−アミノ−N,3−ジメチル−ベンズアミドの66:31:3のモル比での混合物を示した。
【0230】
実施例4
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドの第3の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、磁気攪拌機、熱電対およびコンデンサを備える四首100−mL丸底フラスコに、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(2.50g、10.28mmol、参照例1の方法により調製した)、シアン化ナトリウム(97%、0.566g、11.21mmol、使用前に粉砕した)、ポリメチルヒドロシロキサン(0.082mL、1.37meq)、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケル(0.074g、0.10mmol、参照例3の方法により調製した)および無酸素アセトニトリル(12mL)を充填した。この反応混合物を70℃で加熱した。約3時間後、この反応混合物のHPLC分析は、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを主生成物とした2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミドの完全な転換を示した。濃い反応混合物を室温に冷却し、グローブボックスから取り出した。キシレン(15mL)およびポリエチレングリコール(0.80mL)を反応混合物に添加し、アセトニトリル溶剤のほとんどを大気圧での蒸留により除去した(80〜85℃で沸騰する11.2mLの留出物を回収した)。キシレン(1mL)を濃縮した反応混合物にさらに添加し、攪拌を約70℃で20分間継続した。この反応混合物を約25℃に冷却し、水(15mL)を添加し、攪拌を約10分間継続した。この混合物をろ過し、回収した固体を、キシレン−水(1:1混合物、2×3mL)およびキシレン(1×3mL)で洗浄し、次いで、減圧下で約55℃で乾燥させて、オフホワイトの粉末として表題の化合物を得た(1.92g、HPLCで97.7%純度、96%収率)。
H NMR(DMSO−d)δ2.10(s,3H)、2.74(d,3H)、7.18(br s,2H)、7.44(d,1H)、7.82(d,1H)、8.43(br m,1H)。
【0231】
実施例5
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(スキーム9の方法により調製した式1の化合物)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、反応フラスコに、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]−ジクロロニッケル(68mg、0.099mmol)、亜鉛(130mg、1.99mmol)、1,5−シクロオクタジエン(28.3mg、0.262mmol)および無酸素アセトニトリル(4mL)を充填した。室温で2時間攪拌した後、シアン化ナトリウム(0.55g、11.22mmol、使用前に粉砕した)、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(参照例1の方法により調製した)(2.43g、9.99mmol)およびさらなる無酸素アセトニトリル(8mL)を反応混合物に添加した。窒素雰囲気を維持しながらフラスコをグローブボックスから取り出し、次いで、この反応混合物を激しく攪拌しながら還流で(約82℃)加熱した。約2時間と25分間の後、この反応混合物のHPLC分析は、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを主生成物とする2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミドの約96%転換を示した。反応混合物(0.05mL)の一部を取り出し、乾燥するまで蒸発させて、H NMR分析用の分析用サンプルを得た。
H NMR(CDCl)δ2.1(s,3H)、2.9(d,3H)、6.0(br s,1H,NH)、6.2(br s、2H,NH)、7.3(s,1H)、7.5(d,1H)。
【0232】
実施例6
2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(スキーム9の方法による式1の化合物の第2の調製)の調製
グローブボックスにおいて窒素雰囲気下で、磁気攪拌機、熱電対およびコンデンサを備える四首100−mL丸底フラスコに、[1,1’−ビス(ジフェニル−ホスフィノ)フェロセン)ジクロロニッケル(97%、0.073g、0.10mmol)、亜鉛(0.204g、3.09mmol、粒径−200メッシュ(−74μm))、1,5−シクロオクタジエン(0.022g、0.21mmol)、および無酸素アセトニトリル(3mL)を充填した。この反応混合物を周囲温度で約1時間攪拌し、その間、最初は濃い緑色の反応混合物が、明るい、黄色−オレンジ色のスラリーを形成した。この反応混合物に、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(2.50g、10.28mmol、参照例1の方法により調製した)、シアン化ナトリウム(97%、0.564g、11.16mmol、使用前に粉砕した)、亜鉛(0.068g、1.0mmol、粒径−200メッシュ)、トリエチルアミン(0.105g、1.03mmol)および無酸素アセトニトリル(9.5mL)を添加した。この反応混合物を80℃で加熱した。約2.5時間後、反応のHPLC分析は、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド、および2−アミノ−N,3−ジメチル−ベンズアミドの、それぞれ、96.7:2.0:1.3のモル比での混合物を示した。
【0233】
実施例7
3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(式6の化合物)の調製
熱電対、機械的攪拌機および還流凝縮器を備える四首300−mL底部ドレイン樹脂ケトルに、2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミド(31.25g、0.128mol、参照例1の方法により調製した)、シアン化ナトリウム(97%、7.079g、0.140mol、使用前に粉砕した)および[1,1’−ビス−(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケル(0.074g、0.10mmol;参照例3の方法により調製した)を充填した。反応容器に減圧することにより脱気し、次いで、窒素で大気圧に再度加圧した(方法を5回反復した)。無酸素アセトニトリル(150mL)およびポリメチルヒドロシロキサン(3.11mL、52meq)をシリンジによって反応混合物に添加し、この混合物を激しく攪拌すると共に、72℃で加熱した。3時間後、HPLC分析は、2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミドを主生成物とすると共に、2−アミノ−N,3−ジメチルベンズアミドを副生成物とする2−アミノ−5−ブロモ−N,3−ジメチルベンズアミドの転換を示した(モル比97.8対1.5)。この反応混合物を室温に冷却させた

【0234】
上記の反応混合物に、3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(調製方法については国際公開第2003/015519号パンフレットを参照のこと)(97.6%純度、37.79g、0.12mmol)、3−ピコリン(34.16g、0.37mol)、およびアセトニトリル(50mL)を添加した。この反応混合物を約15℃に冷却すると共に、メタンスルホニルクロリド(21.71g、0.19mmol)を4回にわけて20分間かけて添加した。この混合物を約2.5時間、23℃で攪拌し、次いで、約2.5時間、38℃で攪拌した。さらなるメタンスルホニルクロリド(1.40g)を添加し、この反応混合物を30℃に冷却し、次いで、水(95mL)、続いて塩酸(12N、6mL)を添加した。この混合物を室温で2日間攪拌し、次いで、反応容器からドレインすると共にろ過し、回収した固体をアセトニトリル−水(2:1混合物、2×30mL)および水(2×30mL)で洗浄した。反応容器中に残された残存固形分をTHF(50mL)中に溶解させ、得られた溶液を乾燥するまで蒸発させた。残渣をアセトニトリル−水(2:1混合物、6mL)と共に粉砕し、固形分をろ過により回収した。組み合わせた固形分を減圧下で、55℃で乾燥させて、オフホワイトの粉末として表題の化合物を得た(55.74g、HPLCにより94.6%純度、91%収率)。
H NMR(DMSO−d)δ2.21(s,3H)、2.67(d,3H)、7.42(s,1H)、7.61(dd,1H)、7.76(d,1H)、7.88(d,1H)、8.18(dd,1H)、8.38(br q,1H)、8.50(dd,1H)、10.53(s,1H)。
【0235】
参照例4
3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−N−[4−シアノ−2−メチル−6−[(メチルアミノ)カルボニル]フェニル]−1H−ピラゾール−5−カルボキサミド(式6の化合物)の調製
3−ブロモ−1−(3−クロロ−2−ピリジニル)−1H−ピラゾール−5−カルボン酸(調製方法については国際公開第2003/015519号パンフレットを参照のこと)(97.4%純度、15.4g、49.6mmol)および2−アミノ−5−シアノ−N,3−ジメチルベンズアミド(10.0g、52.5mmol)のアセトニトリル(80mL)中の混合物に、3−ピコリン(13.9g、148mmol)を添加した。この混合物を15〜20℃に冷却し、次いで、メタンスルホニルクロリド(8.2g、71.2mmol)を15〜20℃で滴下した。1時間後、水(37.3g)をこの反応混合物に滴下する一方で、15〜20℃で温度を維持した。添加が完了した後、混合物を45〜50℃で30分間加熱し、次いで、15〜25℃に1時間冷却した。この混合物をろ過すると共に、回収した固形分をアセトニトリル−水(およそ5:1混合物、2×10mL)およびアセトニトリル(2×10mL)で洗浄し、次いで、窒素下で乾燥させて24.0g(6%の含水量での91.6%のアッセイに基づく93.6%補正収率)の表題の化合物を、オフホワイトの固体として得た。
H NMR(DMSO−d)δ10.53(br s,1H)8.49(dd,1H)、8.36(m,1H)、8.16(dd,1H)、7.87(d,1H)、7.76(d,1H)、7.60(m,1H)、7.41(s,1H)、2.67(d,3H)、2.21(s,3H)。
【0236】
表1は、本発明の方法により式1の化合物を調製する特定の変換を例示する。式2の化合物の式1の化合物への転換は、例えば、スキーム1またはスキーム9の方法により達成することが可能である。これらの形質転換について、各R、R、RおよびRはフェニル環であり、ならびに、RおよびR10は一緒になって1,5−シクロオクタジエンである。表1および以下の表において:tは第3級を意味し、sは第2級を意味し、n
はノルマルを意味し、iはイソを意味し、cはシクロを意味し、Meはメチルを意味し、Etはエチルを意味し、Prはプロピルを意味し、およびBuはブチルを意味する。基の連結は同様に略記されている;例えば、「c−PrCH」はシクロプロピルメチルを意味する。
【0237】
【表1】

【0238】
【表2】

【0239】
【表3】

【0240】
表2は、本発明の方法による式2の化合物から式6の化合物を調製する特定の形質転換を例示する。式2の化合物の式1の化合物への転換は、例えば、スキーム1またはスキーム9の方法により達成することが可能である。式1の化合物の式6の化合物への転換は、例えば、メタンスルホニルクロリドなどの塩化スルホニルを用いる、アセトニトリルなどの溶剤および3−ピコリンなどの塩基の存在下でのスキーム11の方法により達成することが可能である。これらの形質転換について、各R、R、RおよびRはフェニル環であり、RおよびR10は一緒になって1,5−シクロオクタジエンであり、ならびに、MはNaである。
【0241】
【表4】

【0242】
【表5】

【0243】
【表6】

【0244】
【表7】

【0245】
【表8】

【0246】
【表9】

【0247】
【表10】

【0248】
【表11】

【0249】
【表12】

【0250】
【表13】

【0251】
【表14】

【0252】
【表15】

【0253】
【表16】

【0254】
【表17】

【0255】
【表18】

【0256】
【表19】

【0257】
【表20】

【0258】
【表21】

【0259】
【表22】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式1
【化1】

(式中、
はNHRまたはORであり;
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;そして
はHまたはC〜Cアルキルである)
の化合物を製造する方法であって、
(1)式2
【化2】

(式中、各Xは独立してBr、ClまたはIである)
の化合物を、
(2)少なくとも1つの式3
CN 3
(式中、Mは、ナトリウム、カリウム、セシウムまたはルビジウムである)
の化合物、および
(3)式4
【化3】

(式中、
は、任意選択でR11から独立して選択される最大5個の置換基で置換されるフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、各環または環系は、任意選択でR12から独立して選択される最大5個の置換基で置換され;
は、任意選択でR13から独立して選択される最大5個の置換基で置換されるフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、任意選択で各環または環系は、R14から独立して選択される最大5個の置換基で置換され;
およびR10の各々は、独立して置換可能な配位子であるか;または
およびR10は、一緒になって二座の置換可能な配位子であり;そして、
11、R12、R13およびR14の各々は、独立して、フッ素、C〜Cアルキル、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cフルオロアルコキシ、C〜CアルキルアミノまたはC〜Cジアルキルアミノである)
の化合物と接触させる工程を含み、
ただし、XがClである場合、Rはメチルである方法。
【請求項2】
式2の化合物、少なくとも1つの式3の化合物および式4の化合物を、少なくとも1つの還元剤の存在下に接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
還元剤が、金属還元剤およびシラン還元剤からなる群から選択される1つまたはそれ以上の化合物を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
還元剤が、亜鉛およびポリメチルヒドロシロキサンからなる群から選択される1つまたはそれ以上の化合物を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
がNHRである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
がCHであり、RがCHであり、そしてXがBrまたはClである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
が、ナトリウムおよびカリウムからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
各R、R、RおよびRがフェニル環である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
およびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
式4の化合物が、[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン][(1,2,5,6)−1,5−シクロオクタジエン]ニッケルを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
式2の化合物、少なくとも1つの式3の化合物、式4の化合物および還元剤を、適した溶剤の存在下に接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項12】
適した溶剤が1つまたはそれ以上のニトリル溶剤を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
適した溶剤が、アセトニトリル、プロピオニトリルおよびブチロニトリルからなる群から選択される1つまたはそれ以上の溶剤を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
適した溶剤がアセトニトリルを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
(i)式5
【化4】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
の化合物を、
(ii)シクロアルカジエン二座配位子、(iii)少なくとも1つの金属還元剤および(iv)ニトリル溶剤と接触させることにより、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座配位子である式4の化合物を製造する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
各R、R、RおよびRがフェニル環であり、そしてRおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
式4
【化5】

(式中、
は、任意選択でR11から独立して選択される最大5個の置換基で置換されるフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、各環または環系は、任意選択でR12から独立して選択される最大5個の置換基で置換され;
は、任意選択でR13から独立して選択される最大5個の置換基で置換されるフェニル環であり;
は、フェニル環またはナフタレニル環系であって、各環または環系は、任意選択でR14から独立して選択される最大5個の置換基で置換され;
およびR10は、一緒になってシクロアルカジエン置換可能な配位子であり;そして
11、R12、R13およびR14の各々は、独立して、フッ素、C〜Cアルキル、C〜Cフルオロアルキル、C〜Cアルコキシ、C〜Cフルオロアルコキシ、C〜CアルキルアミノまたはC〜Cジアルキルアミノである)
の化合物を製造する方法であって、
(i)式5
【化6】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
の化合物を、
(ii)シクロアルカジエン二座配位子、(iii)少なくとも1つの金属還元剤および(iv)ニトリル溶剤と接触させる工程を含む方法。
【請求項19】
各R、R、RおよびRがフェニル環である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
およびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
ニトリル溶剤がアセトニトリルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
(a)式5
【化7】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
の化合物を、
(b)シクロアルカジエン二座配位子および(c)少なくとも1つの金属還元剤と接触させて、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座配位子である式4の化合物を含む混合物を生成させる工程をさらに含み;ここで式4の化合物を含む混合物を、(1)式2の化合物および(2)少なくとも1つの式3の化合物と接触させる、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
各R、R、RおよびRがフェニル環であり、そしてRおよびR10が一緒になって1,5−シクロオクタジエンである、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
式6
【化8】

(式中、
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;
Zは、CR18またはNであり;
15は、Cl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり;
16は、F、ClまたはBrであり;
17はH、FまたはClであり;そして
18は、H、F、ClまたはBrである)
の化合物を、式1
【化9】

(式中、
はNHRまたはORであり;そして
はHまたはC〜Cアルキルである)
の化合物を用いて製造する方法であって:
該式1の化合物を請求項1に記載の方法により製造することを特徴とする、
上記方法。
【請求項25】
式1の化合物を製造する方法が、(a)式5
【化10】

(式中、各Yは、独立して、Cl、BrまたはIである)
の化合物を、
(b)シクロアルカジエン二座配位子および(c)金属還元剤と接触させて、RおよびR10が一緒になってシクロアルカジエン二座配位子である式4の化合物を含む混合物を生成させる工程をさらに含み;そしてここで式4の化合物を含む混合物を(1)式2の化合物および(2)少なくとも1つの式3の化合物と接触させる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
がCHであり、R15がBrであり、R16がClであり、R17がHでありおよびZがNである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
式6
【化11】

(式中、
はCHまたはClであり;
は、H、C〜Cアルキル、シクロプロピル、シクロプロピルシクロプロピル、シクロプロピルメチルまたはメチルシクロプロピルであり;
Zは、CR18またはNであり;
15は、Cl、Br、CF、OCFHまたはOCHCFであり;
16は、F、ClまたはBrであり;
17はH、FまたはClであり;そして
18は、H、F、ClまたはBrである)
の化合物を、式1
【化12】

(式中、
はNHRまたはORであり;そして
はHまたはC〜Cアルキルである)
の化合物を用いて製造する方法であって:
該式1の化合物として請求項1に記載の方法により製造した式1の化合物を用いることを特徴とする、上記方法。
【請求項28】
がCHであり、R15がBrであり、R16がClであり、R17がHでありそしてZがNである、請求項27に記載の方法。

【公表番号】特表2011−503096(P2011−503096A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−533259(P2010−533259)
【出願日】平成20年11月7日(2008.11.7)
【国際出願番号】PCT/US2008/082739
【国際公開番号】WO2009/061991
【国際公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】