説明

2−オキサゾリジノン誘導体のワンポット合成

【課題】式(I)の化合物を調製する新規なプロセスを発見した。このプロセスはWO91/18897に開示されるプロセスに対して、最終生成物をワンポット手順を使用することによって高収率で大規模に純粋な形態で生成し得、よって時間の消費およびコスト高な中間体単離の必要性を回避するという利点を有する。この新規プロセスはまた、ホスゲンのような危険試薬や、塩化スズのような環境有害試薬の必要性を回避する。
【解決手段】(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンを調製するワンポット合成による方法など。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偏頭痛の治療および予防に有用な置換インドール誘導体を調製する改良プロセスに関する。より特定すると、本発明は、偏頭痛の治療に効果的であることが知られている、5HT1様レセプターアゴニスト(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンの調製のための改良プロセスを提供する。
【背景技術】
【0002】
選択的5−HT1様レセプターアゴニストは有用な治療剤として公知である。この5−HT1様レセプターは剄動脈血管床において、血管狭窄を仲介し、そしてこれにより血流を変更する。特許文献1は、血管狭窄が剄動脈血管床において示唆される状態(例えば剄動脈血管系の過度の拡張に関連する状態である偏頭痛)の治療または予防に有益な、特定の5−HT1様レセプターアゴニストのクラスを記載する。
【0003】
特許文献2は、非常に優れた「5−HT1様」レセプターアゴニズムを有し、そして経口投与後優れた吸収作用を有する化合物のさらなるクラスを記載する。これらの性質により、特許文献2に開示される化合物が、ある医療的用途、とりわけ、偏頭痛、クラスター頭痛および血管障害に関連する頭痛(本明細書中これ以降、集合的に「偏頭痛」という)の予防および治療に特に有用となる。ある特に好ましい特許文献2に記載される化合物は、(S)−N,N−ジメチル−2−[5−(2−オキソ−1,3−オキサゾリジン−4−イル−メチル)−1H−インドール−3−イル]エチルアミン(これは(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンとしてもまた公知)であり、式(I)によって表し得る:
【0004】
【化7】

式(I)の化合物は、(S)または(R)の鏡像異性体として存在し得、そして特許文献2に特に例示されている。式(I)の化合物を調製するための多数の可能なルートが特許文献2に示唆されている。
【特許文献1】欧州特許第0313397明細書
【特許文献2】国際公開第91/18897号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
式(I)の化合物を調製する新規なプロセスを発見した。このプロセスはWO91/18897に開示されるプロセスに対して、最終生成物をワンポット手順を使用することによって高収率で大規模に純粋な形態で生成し得、よって時間の消費およびコスト高な中間体単離の必要性を回避するという利点を有する。この新規プロセスはまた、ホスゲンのような危険試薬や、塩化スズのような環境有害試薬の必要性を回避する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
従って、本発明は以下を提供する。
1.(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンを調製するプロセスであって、以下の工程を包含するプロセス:
a)炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムおよびn−ブチルクロロホルメートを添加し反応させることにより、式(II)で表されるメチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリドからカルバメートを形成し、
【0007】
【化8】

式(III)で表されるメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネートを得る工程
【0008】
【化9】

b)式(III)の化合物を還元して、式(IV)で表されるメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネートを得る工程
【0009】
【化10】

c)式(IV)の化合物中のメチルエステル基−CO2CH3を還元して、式(V)で表される(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニノールを得る工程
【0010】
【化11】

d)式(V)の化合物を閉環し、式(VI)で表される(S)−4−(4−アミノベンジル)−2−オキサゾリジノンを得る工程
【0011】
【化12】

e)式(VI)の化合物のジアゾニウム塩を調製し、続いて還元し、式(VII)で表されるヒドラジン(S)−4−(4−ヒドラジノベンジル)−2−オキサゾリジノンヒドロクロリドを得る工程
【0012】
【化13】

f)式(VII)の化合物のフィッシャー反応により式(I)の化合物を得る工程。
2.また、本発明の好ましい実施形態では、ワンポット手順を使用して工程a)からf)の1個以上の工程が実施される、上記1に記載のプロセスが提供される。
3.また、本発明の好ましい実施形態では、ワンポット手順によって工程a)からd)が実施され、続いて式(VI)の化合物を単離し、次いで工程e)とf)とが第二のワンポット手順によって実施される、上記1または2に記載のプロセス、が提供される。
4.また、本発明の好ましい実施形態では、炭酸ナトリウムを使用して、水性酢酸エチル溶媒の存在下で工程a)が実施される、上記1〜3のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
5.また、本発明の好ましい実施形態では、工程a)において炭酸ナトリウムを温度約20℃で添加し、およびN−ブチルクロロホルメートを温度約30℃で添加する、上記4に記載のプロセス、が提供される。
6.また、本発明の好ましい実施形態では、工程b)が水素添加によって実施される、上記1〜5のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
7.また、本発明の好ましい実施形態では、工程c)の還元が水素化ホウ素ナトリウムを使用して行われる、上記1〜6のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
8.また、本発明の好ましい実施形態では、工程d)が式(V)の化合物の乾燥ブタノール溶液において実施される、上記1〜7のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
9.また、本発明の好ましい実施形態では、ナトリウムメトキシドの30%メタノール溶液を使用して、50〜120℃の範囲の温度で閉環が実施される、上記1〜8のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
10.また、本発明の好ましい実施形態では、工程e)が
i)式(VI)の化合物を亜硝酸ナトリウムと反応させること、および
ii)i)で生成したジアゾニウム塩を亜硫酸ナトリウムを使用して還元すること
によって実施される、上記1〜9のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
11.また、本発明の好ましい実施形態では、工程f)のフィッシャー反応が相対的に高い希釈度で実施される、上記1〜10のいずれか1つに記載のプロセス、が提供される。
12.また、本発明は、(S)−4−{[3−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノンの精製プロセスであって、以下の工程を包含するプロセス:
a)酢酸エチル中のエタノールの還流混合物中に粗(S)−4−{[3−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノンを溶解し、そしてその熱溶液を濾過する工程
b)この濾過した溶液を約5℃の温度まで徐冷する工程
c)工程b)による生成物を遠心分離し、酢酸エチルで洗浄し、次いで乾燥する工程;および
d)アセトンで処理し、溶媒和した酢酸エチルを除去する工程、を提供する。
13.また、本発明は、溶媒和していない純粋な(S)−4−{[3−(ジメチルアミノエチル)−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノン、を提供する。
14.また、本発明は、式(III)の中間体
【0013】
【化14】

、を提供する。
15.また、本発明は、式(IV)の中間体
【0014】
【化15】

、を提供する。
16.また、本発明は、式(V)の中間体
【0015】
【化16】

、を提供する。
17.また、本発明は、式(VI)の中間体
【0016】
【化17】

、を提供する。
18.また、本発明は、式(III)の化合物を調製するプロセスであって、
【0017】
【化18】

式(II)の化合物を炭酸ナトリウムおよびn−ブチルクロロホルメートと反応させる工程を包含するプロセス
【0018】
【化19】

、を提供する。
19.また、本発明は、式(IV)の化合物を調製するプロセスであって、
【0019】
【化20】

式(III)の化合物を還元する工程を包含するプロセス
【0020】
【化21】

、を提供する。
20.また、本発明は、式(V)の化合物を調製するプロセスであって、
【0021】
【化22】

式(IV)の化合物を還元する工程を包含するプロセス
【0022】
【化23】

、を提供する。
21.また、本発明は、式(VI)の化合物を調製するプロセスであって、
【0023】
【化24】

式(V)の化合物を閉環する工程を包含するプロセス
【0024】
【化25】

、を提供する。
22.また、本発明の好ましい実施形態では、医薬使用のための組成物の製造における、上記14に記載の中間体の使用、が提供される。
23.また、本発明の好ましい実施形態では、医薬使用のための組成物の製造における、上記15に記載の中間体の使用、が提供される。
24.また、本発明の好ましい実施形態では、医薬使用のための組成物の製造における、上記16に記載の中間体の使用、が提供される。
25.また、本発明の好ましい実施形態では、医薬使用のための組成物の製造における、上記17に記載の中間体の使用、が提供される。
26.また、本発明の好ましい実施形態では、上記組成物が偏頭痛の治療および予防において使用される、上記22〜25のいずれか1つに記載の使用、提供される。
(発明の効果)
式(I)の化合物を調製する新規なプロセスが発見された。このプロセスはWO91/18897に開示されるプロセスに対して、最終生成物をワンポット手順を使用することによって高収率で大規模に純粋な形態で生成し得、よって時間の消費およびコスト高な中間体単離の必要性を回避するという利点を有する。この新規プロセスはまた、ホスゲンのような危険試薬や、塩化スズのような環境有害試薬の必要性を回避する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
従って本発明の第一の局面により、(S)−4−{[3−[2(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンの調製のためのプロセスが提供され、このプロセスは以下の工程を含む:
a)炭酸ナトリウムまたは炭酸水素ナトリウムおよびn−ブチルクロロホルメートを添加し反応させることにより、式(II)で表されるメチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリドからカルバメートを形成し、
【0026】
【化26】

式(III)で表されるメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネートを得る工程
【0027】
【化27】

b)式(III)の化合物を還元して、式(IV)で表されるメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネートを得る工程
【0028】
【化28】

c)式(IV)の化合物中のメチルエステル基−CO2CH3を還元して、式(V)で表される(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニノールを得る工程
【0029】
【化29】

d)式(V)の化合物を閉環し、式(VI)で表される(S)−4−(4−アミノベンジル)−2−オキサゾリジノンを得る工程
【0030】
【化30】

e)式(VI)の化合物のジアゾニウム塩を調製し、続いて還元し、式(VII)で表されるヒドラジン(S)−4−(4−ヒドラジノベンジル)−2−オキサゾリジノンヒドロクロリドを得る工程
【0031】
【化31】

f)式(VII)の化合物のフィッシャー反応により式(I)の化合物を得る工程。
【0032】
適切には、ワンポット手順を使用して工程a)からf)の1個以上の工程が実施される。好ましくは、ワンポット手順によって工程a)からd)が実施され、続いて式(VI)の化合物を単離し、次いで工程e)とf)とが第二のワンポット手順によって実施される。
【0033】
工程a)は溶媒(例えば水性酢酸エチルまたはジオキサン)の存在下で簡便に実施される。水性酢酸エチルが好ましい。炭酸水素ナトリウムよりむしろ炭酸ナトリウムが使用され、好ましくはn−ブチルクロロホルメートに先立って加えられる。この反応は極端でない温度、適切には5〜60℃の範囲の温度で簡便に実施される。好ましくはこの反応は15〜35℃で実施される。特に好ましい実施態様において、炭酸ナトリウムの添加は約20℃の温度で起こり、N−ブチルクロロホルメートの添加は約30℃の温度で起こる。
【0034】
還元工程b)は有機溶媒(例えば酢酸エチルまたはエタノール)の存在下で簡便に実施される。好ましくは、工程b)はワンポット手順によって工程a)より得られた式(III)の化合物の酢酸エチル溶液を使用して実施される。適切には工程b)は、好ましくは例えばパラジウムチャコールのような触媒の存在下での水素添加によって実施される。この反応は窒素雰囲気下で、水素を使用して標準気圧、室温で実施され得る。水素添加は好ましくは、約20psiの水素で、高温(例えば30〜50℃)で実施される。得られる式(IV)の化合物の酢酸エチル溶液は、工程c)においてワンポット手順の一部として直接使用され得るブタノール溶液に好ましくは変換される。この変換は、酢酸エチル溶液を部分蒸留してその後ブタノールを加え、そして精留して酢酸エチルを除去することによって簡便に実施され得る。
【0035】
工程c)のメチルエステルの還元は、例えばSVMまたはn−ブタノールのような溶媒の存在下で簡便に実施される。好ましくは、工程c)は、ワンポット手順の一部として式(IV)の化合物の酢酸エチル溶液からn−ブタノール溶液を調製し、次いでn−ブタノール溶液を直接還元することにより実施される。この還元は、好ましくは、水素化ホウ素ナトリウムを使用して行われ、そして極端でない温度(適切には20〜40℃)で簡便に実施される。好ましくは、この還元は二段階で実施される;第一段階は窒素下で約25℃の温度で実施される;および第二段階は約30℃で実施される。次いで得られる式(V)の化合物のn−ブタノール溶液は、塩酸およびアンモニアを使用して乾燥され得る。この乾燥n−ブタノール溶液はワンポット手順の一部として工程d)に直接使用され得る。
【0036】
工程d)は、好ましくは式(V)の化合物の乾燥溶液(例えば乾燥ブタノール溶液)で実施される。このような乾燥ブタノール溶液は、工程c)によって生成するn−ブタノール溶液を乾燥することによって有利に調製される。この乾燥n−ブタノール溶液は、好ましくは、閉環反応を実施する前にチャコールを使用して脱色される。この閉環は、適切にはアルコール溶媒(例えばメタノール)中でナトリウムメトキシドを使用して、簡便に実施され得る。最も好ましくは、閉環はナトリウムメトキシドの30%メタノール溶液を使用して実施される。この反応は好ましくは高温(適切には50〜120℃の範囲の温度)で実施される。好ましくは、この反応は約85℃で実施される。次いで得られる式(VI)の化合物は単離され得る。この単離は、標準的遠心分離、濾過および乾燥の方法によって実施され得る。
【0037】
工程e)は、好ましくは、単離した式(VI)の化合物において実施される。単離は、例えば周知の遠心分離、濾過および乾燥の技術によって達成され得る。ジアゾニウム塩形成は、水性亜硝酸ナトリウム溶液(好ましくは濃塩酸の存在下で)を使用して低温で実施され得る。好ましくは、この塩形成は低温(例えば0〜5℃)で実施される。次いで、ヒドラジン形成は、亜硫酸ナトリウムを還元剤として使用することによってジアゾニウム塩溶液で実施される。亜硫酸ナトリウムは、適切には水性溶液の形態である。この還元は二段階で有利に実施される:第一段階は亜硫酸ナトリウムの添加;第二段階は塩酸の添加である。好ましくは、第一段階は、10℃より低い温度で実施される。好ましくは、第二段階は、高温(例えば55〜60℃)で実施される。
【0038】
工程e)から得られる式(VII)の化合物の溶液は、好ましくは、ワンポット手順として工程f)に直接使用される。工程f)はフィッシャー反応である。最終生成物の純度を最高にするために、この反応を相対的に高い希釈度で実施することが有利であることが見い出された。従って、工程e)から得られる溶液は、好ましくは水で希釈される。次いで、このフィッシャー反応は、4,4−ジエトキシ−N,N−ジメチルブチルアミンを適切には窒素雰囲気下で加えることにより実施される。好ましくは、4,4−ジエトキシ−N,N−ジメチルブチルアミンを加える場合、希釈溶液は高温である。適切な温度は75〜105℃の範囲にあり、そして好ましくは約90℃である。この反応は好ましくは還流下で進行する。
【0039】
反応が完結したのち、式(I)の化合物は、標準的技術を使用して抽出され得る。適切には還流した反応生成物は、冷却され、そして例えば水酸化ナトリウムを使用して約pH7に調節される。次いで、このpHを調整した生成物は、酢酸エチルで抽出され得、そしてその水層は水酸化ナトリウムで約pH10に調整される。次いで、生成物は、約50℃で抽出され得、続いて標準的な脱色、濾過、蒸留、遠心分離および乾燥の技術が実施される。
【0040】
式(I)の化合物を調製する特に好ましい反応スキームは、以下である。
【0041】
【化32】

【0042】
【化33】

本発明の第二の局面により、(S)−4−{[3−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノンの精製プロセスが提供され、このプロセスは以下の工程を包含する:
a)酢酸エチル中のエタノールの還流混合物中に粗(S)−4−{[3−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノンを溶解し、そしてその熱溶液を濾過する工程;
b)その濾過した溶液を約5℃の温度まで徐冷する工程;
c)工程b)による生成物を遠心分離し、酢酸エチルで洗浄し、次いで乾燥する工程;および
d)アセトンで処理し、溶媒和した酢酸エチルを除去する工程。
【0043】
好ましくは、還流混合物は、酢酸エチル中の10%エタノールである。熱溶液は、適切には、濾過助剤を使用する濾過前に脱色チャコールを使用して脱色される。
【0044】
工程b)の冷却し、濾過した溶液は、適切には遠心分離前に長時間に渡って(好ましくは約18時間)撹拌される。
【0045】
工程c)の乾燥工程は、好ましくは真空下で実施される。適切には、生成物は、極端に高くない温度(例えば40〜60℃、好ましくは約50℃)で乾燥される。
【0046】
工程c)の乾燥した固体生成物は、極端でない温度(好ましくは15〜30℃、例えば室温)で、水中20%アセトン混合物で簡便に処理される。次いで、得られる懸濁液は、極端でない低温(好ましくは約5℃)まで冷却され、そして撹拌される。次いで、その生成物は、遠心分離され、酢酸エチルで洗浄され、そして好ましくは真空下、約45℃の温度で乾燥される。
【0047】
得られる生成物は高純度の溶媒和していない固体である。
【0048】
第三の局面において、本発明は溶媒和していない、純粋な(S)−4−{[3−(ジメチルアミノエチル)−1H−インドール−5−イル]−メチル}−2−オキサゾリジノンを提供する。さらなる局面において、本発明は、本明細書中上記で定義した式(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物を提供する。
【0049】
またさらなる局面において、本発明は以下のように、式(III)、(IV)、(V)および(VI)の化合物を調製するプロセスを提供する。
【0050】
化合物(III):本発明の第一の局面のプロセス工程a)および好ましくは4頁に記載のプロセス;
化合物(IV):本発明の第一の局面のプロセス工程b)および好ましくは4、5頁にまたがる段落に記載のプロセス;
化合物(V):本発明の第一の局面のプロセス工程c)および好ましくは5頁に記載のプロセス;および
化合物(VI):本発明の第一の局面のプロセス工程d)および好ましくは5頁に記載のプロセス。
【0051】
本発明を以下の実施例によってさらに記載する。
【実施例】
【0052】

(実施例1:(S)−4−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンを大量に調製するプロセス)
(ステージ1:メチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネート(phenylaninate)ヒドロクロリドの調製)
(反応)
【0053】
【化34】

【0054】
【表1】

(手順)
温度を25℃より低く維持しながら、メタノールを含む反応器中に塩化水素ガスを通過させることによって、塩化水素のメタノール溶液を調製する。反応器に4−ニトロ−(L)−フェニルアラニン(phenylanine)を仕込み、約1時間還流する。約0℃まで冷却し、生成物(メチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリド)を遠心分離する。生成物をメタノールで洗浄して真空中50℃で乾燥する。
【0055】
(ステージ2:メチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネートの調製)
(反応)
【0056】
【化35】


(手順)
反応器に脱塩水、メチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリド、炭酸ナトリウムおよび酢酸エチルを仕込み、撹拌しながら反応器内容物を約20℃まで冷却する。温度を約30℃に維持しながら反応混合物にn−ブチルクロロホルメートを加え、そして約30分間撹拌する。水層を分離して、水で酢酸エチル溶液を洗浄する。そのメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネートの酢酸エチル溶液を次のステージで直接使用する。
【0057】
(ステージ3:メチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネート(aminophenylaninate)の調製)
(反応)
【0058】
【化36】


(手順)
反応器に5%パラジウムチャコール触媒、メチル(S)−Nブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネートの酢酸エチル溶液を仕込み、約20psiの水素で30℃〜50℃の間の温度に維持しながら水素添加する。完了時に、濾過助剤を通して触媒を濾過除去し、酢酸エチルで洗浄する。酢酸エチル溶液を水性炭酸ナトリウム溶液で洗浄する。メチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネートの酢酸エチル溶液を部分的に蒸留し、ブタノールを加えて混合物を精留して酢酸エチルを除去する。このブタノール溶液を次のステージで直接使用する。
【0059】
(ステージ4:(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニノールの調製)
(反応)
【0060】
【化37】

【0061】
【表2】

(手順)
反応器にステージ3からのメチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネートのブタノール溶液を仕込み、n−ブタノールで希釈して所望の体積にする。反応器内容物を約25℃まで冷却する。窒素雰囲気下で、反応温度を約25℃に維持しながら水素化ホウ素ナトリウムの総量の半分を加える。3時間撹拌し、次いで水素化ホウ素ナトリウムの残りの半分を加える。さらに混合物を5時間撹拌して、35℃まで加温する。この後反応混合物を約12時間撹拌し、次いで、約30℃の温度に維持しながら水性塩酸をゆっくりと加えて、任意の過剰の水素化ホウ素ナトリウムを分解する。水を加え、約35℃まで加温し、アンモニア溶液を加えて約pH10に調整する。水層を分離して、約35℃の温度に維持しながら有機層を水で洗浄する。同時に共沸しながらブタノールのいくらかを蒸留し、この溶液を乾燥する。この乾燥ブタノール溶液を次のステージで直接使用する。
【0062】
(ステージ5:(S)−4−(4−アミノベンジル)−2−オキサゾリジノンの調製)
(反応)
【0063】
【化38】

(手順)
反応器にステージ4からの(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニノールの乾燥n−ブタノール溶液を仕込み、脱色チャコールを加える。乾燥溶液を約85℃で、メタノール中のナトリウムメトキシドをゆっくり加えて処理する。反応混合物を、85℃でメタノール中のナトリウムメトキシドをゆっくり加えて加熱する。反応混合物をさらに30分間85℃で加熱し、次いで濾過助剤に通して熱濾過する。溶液を5〜10℃で少なくとも8時間冷却した後、混合物を遠心分離し、濾過した生成物をn−ブタノールで洗浄し、約50℃の真空中で乾燥する。
【0064】
(ステージ6A:(S)−4−{3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンの調製)
(反応)
【0065】
【化39】

【0066】
【表3】

(手順)
反応器に濃塩酸、脱塩水および(S)−4−(4−アミノベンジル)−2−オキサゾリジノンを仕込む。反応器内容物を0〜5℃の間にまで冷却し、5℃より低い温度に維持しながら水性亜硝酸ナトリウム溶液を加える。約30分間撹拌した後、10℃より低い温度に維持しながらジアゾニウム塩溶液を亜硫酸ナトリウムの冷却した水性溶液に加える。15分間撹拌した後、生成混合物を約55〜60℃までゆっくり加熱し、次いで塩酸をゆっくり加える。その溶液を約60℃で約18時間維持する。
【0067】
反応混合物を水で希釈し、そして約90℃まで加熱する。窒素雰囲気下で4,4−ジエトキシ−N,N−ジメチルブチルアミンをゆっくり加え、そして約3時間加熱還流する。冷却し、水酸化ナトリウム溶液を使用して約pH7に混合物を調整する。酢酸エチルで抽出し、次いで再び水酸化ナトリウム溶液を使用して水層を約pH10に調整する。酢酸エチルを使用して約50℃で生成物を抽出する。合わせた酢酸エチル抽出物(生成物を含む)を脱色チャコールで処理し、濾過助剤を通して濾過する。溶媒のほとんどを蒸留除去し、そしてその懸濁液を約5℃まで冷却する。その粗生成物を遠心分離し、酢酸エチルで洗浄して、50℃で真空乾燥する。
【0068】
(ステージ6B:(S)−4−{3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンの精製)
【0069】
【表4】

工程6Aの粗生成物を酢酸エチル中10%エタノールの還流混合物に溶解し、脱色チャコールで処理し、そして濾過助剤を通して熱濾過する。溶液をゆっくり冷却して5℃より上とし、そして18時間撹拌する。次いで、その精製した生成物を遠心分離し、酢酸エチルで洗浄し、そして50℃で真空乾燥する。溶媒和した酢酸エチルを除去するために、水中20%のアセトンの混合物に周囲の温度で乾燥固体を加え、そして1時間撹拌する。その懸濁液を約5℃まで約1時間冷却し、その後生成物を遠心分離し、酢酸エチルで洗浄し、そして約45℃の真空中で乾燥する。
【0070】
(実施例2)
(メチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−ニトロフェニルアラニネート(式(III)の化合物)の別の調製)
メチル−4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリド(40.00g、0.153モル)と炭酸水素ナトリウム(73g、0.870モル)の1,4−ジオキサン(1000ml)中混合物を約10℃で無水条件下で撹拌した。ブチルクロロホルメート(23.12g、21.52ml、0.169モル)の1,4−ジオキサン(200ml)溶液を10分間に渡って加えた(反応温度約13℃)。生成懸濁液を室温まで加温し、そして3時間撹拌した。反応を水(1600ml)中でゆっくりとクエンチし、次いで酢酸エチルで抽出した(3×650ml)。合わせた酢酸エチル抽出物をブライン(1000ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で乾燥し、濾過し、そしてエバポレートしてオイルにした。残留溶媒を、オイルポンプを使用して50℃で除去し、シロップ(51.34g、収率103%)を得た。このシロップは、放置すると徐々に固化した。
【0071】
TLC[SiO2,EtOAc]は均質であった(Rf=0.59)。
【0072】
1H NMR(60MHz,CDCl3)はカルバメートの構造と一致した。
【0073】
(実施例3)
(メチル(S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニネート(式(IV)の化合物)の別の調製)
実施例2によって調製された化合物[45.00g、0.139モル]のエタノール(845ml)溶液を、窒素雰囲気下でカーボン上の湿潤10%パラジウム(タイプ87L、61.1%H2O)[約4.5g]に加えた。反応を標準気圧下、室温での水素添加にセットした。9時間に渡って安定して水素が取り込まれた(約9700ml)。触媒をハイフロ(hyflo)上で濾過除去し、エタノール(100ml)で洗浄した。濾液を真空中で濃縮し(水浴温度<40℃)、そしてオイルポンプを使用して溶媒の最後の微少量を除去して茶色のゴム(41.70g、101%)を得た。
【0074】
TLC[SiO2,EtOAc]は、所望の生成物(Rf=0.49)をより速く溶出する(faster running)微少量の不純物と共に示した。
【0075】
1H NMR(300MHz,CDCl3)は生成物の構造および残留エタノールと一致した。
【0076】
(実施例4)
((S)−N−ブトキシカルボニル−4−アミノフェニルアラニノール(式(V)の化合物)の別の調製)
撹拌した水素化ホウ素ナトリウム(14.80g、0.390モル)のSVM(150ml)中懸濁液に、室温で実施例3によって調製された化合物[76.40g、0.260モル]のSVM(460ml)溶液を滴下した。この反応を一晩中(約18時間)撹拌しながら放置し、その後TLC[SiO2,EtOAc]は出発物質の消費の完結を示した。反応混合物を、約10℃の温度に氷冷しながら2M水性塩酸で約pH4に酸性化した。生成混合物を濃縮して固体残渣とし、そして飽和水性炭酸水素ナトリウム(2000ml)をゆっくり加えた。水性混合物(pH約8)を酢酸エチルで抽出し(2×750ml)、そして合わせた有機抽出物を乾燥し(硫酸マグネシウム)、濾過し、そして濃縮して薄桃色のワックス状固体(64.56g、収率93%)を得た。
【0077】
TLC[SiO2,EtOAc]は、所望の生成物(Rf=0.33)を微少量の不純物と共に示した。
【0078】
1H NMR(60MHz,CDCl3)はアラニノールの構造と一致した。
【0079】
上記のように、本発明は(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンを調製する改良プロセスを提供し、このプロセスは以下の工程を包含する:a)メチル4−ニトロ−(L)−フェニルアラニネートヒドロクロリドから式(III)のカルバメートを形成する工程;b)式(III)の化合物を還元して式(IV)の化合物を得る工程;c)式(IV)の化合物中のメチルエステル基を還元して式(V)の化合物を得る工程;d)式(V)の化合物を閉環して式(VI)の化合物を得る工程;e)式(VI)の化合物からジアゾニウム塩を形成し、続いて還元し、式(VII)の化合物を得る工程;f)式(VII)の化合物のフィッシャー反応により(S)−4−{[3−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−1H−インドール−5−イル]メチル}−2−オキサゾリジノンを得る工程。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
医薬使用のための組成物の製造における、式III:
【化9】

の中間体の使用。
【請求項2】
医薬使用のための組成物の製造における、式IV:
【化13】

の中間体の使用。
【請求項3】
医薬使用のための組成物の製造における、式V:
【化14】

の中間体の使用。
【請求項4】
医薬使用のための組成物の製造における、式VI:
【化15】

の中間体の使用。
【請求項5】
前記医薬における使用が偏頭痛の治療および予防にある、請求項1〜4のいずれか1項に記載の使用。
【請求項6】
明細書に記載の発明。

【公開番号】特開2006−225406(P2006−225406A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−152810(P2006−152810)
【出願日】平成18年5月31日(2006.5.31)
【分割の表示】特願2002−86955(P2002−86955)の分割
【原出願日】平成8年8月2日(1996.8.2)
【出願人】(300022641)アストラゼネカ アクチボラグ (581)
【Fターム(参考)】