説明

2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドおよびその応用

カンゾウから配列番号1で表わされるアミノ酸配列を実質的に有する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼが単離された。また、配列番号2の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドが取得できた。さらに、ダイズからも2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのアミノ酸配列を同定、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチドが取得できた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、2−ヒドロキシイソフラバノンの脱水反応を触媒する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ、それをコードする新規ポリヌクレオチド、及びその応用に関する。
【背景技術】
イソフラボンおよびイソフラボンから誘導される化合物(イソフラボノイド)は、マメ科植物特有の成分で、近年、健康補助食品として注目されている。そして、イソフラボンを含むイソフラボノイドは、抗菌物質や共生シグナルとして植物が生物環境に適応するために極めて重要な役割を果たすことが知られている。
イソフラボノイドの最も簡単な骨格はイソフラボンであって、フラボノイド代謝によって生成されるイソフラボノイドグループのきわめて初期の産物である(図1参照)。イソフラボンとそのグリコシド(配糖体)はマメ科植物の器官に蓄積され、ダイズの種子に含まれるダイゼイン(7,4’−ジヒドロキシイソフラボン)やゲニステイン(5,7,4’−トリヒドロキシイソフラボン)の遊離体および配糖体は健康を促進し、疾病を予防するフィトエストロゲン(植物エストロゲン)として知られている。
イソフラボンは、生態生理学的に活性のあるイソフラボノイド、たとえば、プテロカルパンやイソフラバン骨格を有する抗菌性のフィトアレキシンが生合成される場合の中間体である。イソフラボノイドのうち約50%は4’−メトキシルに由来する官能基を有し、これらは主として4’−メトキシル化されたイソフラボンであるフォルモノネチン(7−ヒドロキシ−4’−メトキシイソフラボン)に由来する。
イソフラボノイド骨格は、シトクロムP450(P450)、すなわち2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)の作用によって、(2S)−フラバノンから生合成される。IFSは1,2−アリル基転位を伴うフラボノイド骨格の2位の炭素のヒドロキシル化を触媒する。生成物である2−ヒドロキシイソフラバノンは脱水されてイソフラボンを形成する(図1参照)。
IFSのcDNAは、マメ科植物であるGlycyrrhiza echinata(以下カンゾウと記載する。)(非特許文献1、特許文献1)およびダイズ(非特許文献2、非特許文献3)から同定されている。酵母のミクロソームで過剰発現させた組換えIFSを用いたインビトロ検定では、最初の生成物である2−ヒドロキシイソフラバノンに加えて、多量のイソフラボンが自発的な脱水によって生成した(非特許文献1、非特許文献3)。さらに、昆虫細胞で発現したIFSは、イソフラボンのみを生産することが報告された(非特許文献2)。このように、IFS反応の直接生成物からイソフラボン生産を非酵素的に進めることができること、およびIFSの基質である(2S)−フラバノンはマメ科および非マメ科植物の共通の成分であることから、IFSを用いてイソフラボノイドを含まない非マメ科植物を形質転換することによって、それらをイソフラボン産生植物に変換することができると推測された(非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6)。
このような知見に基づき、イソフラボンを本来含有しない非マメ科植物(シロイヌナズナやタバコ)にダイズIFS遺伝子を導入して非マメ科植物によるイソフラボン生産が試みられたが、その生産量はダイズ種子の1/1000程度というわずかな量であった(非特許文献3、非特許文献7、非特許文献8)。よって、IFSのみでは、イソフラボンの生産は効率的に行われないということが推測される。
一方、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンをダイゼインに変換する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの酵素活性がPueraria lobata(クズマメ)の細胞で検出され、そのタンパク質が精製された(非特許文献9、非特許文献10)。また、本発明者らの実験によると、カンゾウの無細胞抽出物では、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンはフォルモノネチンに変換されたが、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンはダイゼインに変換されなかった(非特許文献11)。これらの結果は、植物細胞での2−ヒドロキシイソフラバノンからイソフラボンへの脱水が酵素(2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ)に依存しており、酵素が置換基の異なる2−ヒドロキシイソフラバノンに対して基質特異性を有していることを示している。
このように、従来の研究によって、IFSのみでは、イソフラボンの生産は効率的に行えないこと、2−ヒドロキシイソフラバノンからイソフラボンへの脱水には、基質特異的酵素が重要な役割をしていることが解明されてきたが、2−ヒドロキシイソフラバノンからイソフラボンへの脱水に関与する酵素(2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ)の詳細は不明であった。
【特許文献1】国際公開第00/46356号パンフレット
【非特許文献1】Akashi,T.,Aoki,T.and Ayabe,S.(1999)Cloning and functional expression of a cytochrome P450 cDNA encoding 2−hydroxyisoflavanone synthase involved in biosynthesis of the isoflavonoid skeleton in licorice.Plant Physiol.121:821−828.
【非特許文献2】Steele,C.L.,Gijzen,M.,Qutob,D.and Dixon,R.A.(1999)Molecular characterization of the enzyme catalyzing the aryl migration reaction of isoflavonoid biosynthesis in soybean.Arch.Biochem.Biophys.367:146−150.
【非特許文献3】Jung,W.,Yu,O.,Lau,S.M.,O’Keefe,D.P.,Odell,J.,Fader,G.and McGonigle,B.(2000)Identification and expression of isoflavone synthase,the key enzyme for biosynthesis of isoflavones in legumes.Nature Biotechnol.18:208−212.
【非特許文献4】Dixon,R.A.and Steele,C.L.(1999)Flavonoids and isoflavonoids−a gold mine for metabolic engineering.Trends Plant Sci.4:394−400.
【非特許文献5】Humphreys,J.M.and Chapple,C.(2000)Molecular ’pharming’ with plant P450s.Trends Plant Sci.5:271−272.
【非特許文献6】Feldmann,K.A.(2001)Cytochrome P450s as genes for crop improvement.Curr.Opin.Plant Biol.4:162−167.
【非特許文献7】Yu,O.,Jung,W.,Shi,J.,Croes,R.A.,Fader,G.M.,McGonigle,B.and Odell,J.T.(2000)Production of the isoflavones genistein and daidzein in non−legume dicot and monocot tissues,Plant Physiol.124:781−793.
【非特許文献8】Liu,C.J.,Blount,J.W.,Steele,C.L.and Dixon,R.A.(2002)Bottlenecks for metabolic engineering of isoflavone glycoconjugates in Arabidopsis.Proc.Natl.Acad.Sci.USA 99:14578−14583.
【非特許文献9】Sankawa,U.and Hakamatsuka,T.(1997)Biosynthesis of isoflavone and related compounds in tissue cultures of Pueraria lobata.In Dynamic aspects of natural products chemistry.Molecular biological approaches.Edited by Ogura,K.and Sankawa,U.pp.25−48.Kodansha/Harwood Academic,Tokyo.
【非特許文献10】Hakamatsuka,T.,Mori,K.,Ishida,S.,Ebizuka,Y.and Sankawa,U.(1998)Purification of 2−hydroxyisoflavanone dehydratase from the cell cultures of Pueraria lobata.Phytochemistry 49:497−505.
【非特許文献11】Akashi,T.,Sawada,Y.,Aoki,T.and Ayabe,S.(2000)New scheme of the biosynthesis of formononetin involving2,7,4’−trihydroxyisoflavanone but not daidzein as the methyl acceptor.Biosci.Biotechnol.Biochem.64:2276−2279.
【非特許文献12】Akashi,T.,Sawada,Y.,Shimada,N.,Sakurai,N.,Aoki,T.and Ayabe,S.(2003)cDNA cloning and biochemicalcharacterization of S−adenosyl−L−methionine:2,7,4’−trihydroxyisoflavanone 4’−O−methyltransferase,a critical enzyme of the legume isoflavonoid phytoalexin pathway.Plant Cell Physiol.44:103−112.
【非特許文献13】Ayabe,S.,Akashi,T.and Aoki,T.(2002)Cloning of cDNAs encoding P450s in the flavonoid/isoflavonoid pathwayfrom elicited leguminous cell cultures.Methods Enzymol.357:360−369.
【非特許文献14】Nakamura,K.,Akashi,T.,Aoki,T.,Kawaguchi,K.and Ayabe,S.(1999).Induction ofisoflavonoid and retrochalcone branches of the flavonoid pathway in cultured Glycyrrhiza echinata cells treated withyeast extract.Biosci.Biotechnol.Biochem.63:1618−1620.
【発明の開示】
本発明は、植物体においてイソフラボンを生産する工程に重要な役割を果たす脱水酵素を単離し、そのアミノ酸配列およびそれをコードするヌクレオチド配列を解明することを課題とする。より詳細には、本発明は、2−ヒドロキシイソフラバノンからイソフラボンへの脱水反応を触媒する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのアミノ酸構造を決定し、それをコードする遺伝子を提供することを課題とする。さらにまた、本発明は、そのようにして得られた遺伝子をイソフラボンを含むイソフラボノイドの生産に応用することを課題とする。
上記の課題を解決するために、本発明者らは、まず、カンゾウ(フォルモノネチン生産植物)およびダイズ(ダイゼイン生産植物)抽出物の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼを調査し、種特異的な脱水酵素の存在を確認した。次に、生合成酵素のcDNAに関する新しい遺伝子クローニング法「機能発現分画スクリーニング」を用いて(非特許文献12)、カンゾウの2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン2,3−デヒドラターゼ(フォルモノネチン合成酵素)をコードするcDNAを単離した。さらに、配列情報から、基質特異性の異なる相似酵素、すなわちダイズの2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン2,3−デヒドラターゼ(ダイゼイン合成酵素)のcDNAを得た。
2−ヒドロキシインフラバノンデヒドラターゼをコードする新規な遺伝子を取得したことで、該遺伝子を非マメ科の植物に導入し、イソフラボノイドの生産量を増大できる可能性を提供できた。
また、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードする遺伝子とIFSをコードする遺伝子を同時形質転換した微生物を用いてイソフラボノイドを生産できることを確認した。
さらに、本発明者らは、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのアミノ酸配列には、カルボキシルエステラーゼで知られているモチーフが含まれていることを見出した。相似タンパク質は高等植物に広く分布しており、天然産物の生合成における脱水の一部はこの酵素ファミリーによって介在されていることを示唆している。
すなわち、本発明は、カンゾウに含まれる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ、特に、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン2,3−デヒドラターゼ(フォルモノネチン合成酵素)およびそれをコードするヌクレオチド配列に関するものである。カンゾウに含まれる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼは、配列番号1に表わす1−328のアミノ酸配列を含んでいる。カンゾウの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするcDNAの配列は、配列番号2に示した。さらに、本発明は、該新規な遺伝子を発現する組換え体、該遺伝子を組み込んだ形質転換体にも関する。形質転換体としては、酵母、E.coli(大腸菌)が好ましく、該遺伝子を導入したE.coliK12株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−19257(寄託日平成15年3月20日)として寄託した。そして、平成16年3月15日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管され、受託番号FERM BP−08662が付されている。
本発明は、さらにまた、該遺伝子あるいは該遺伝子とIFSをコードする遺伝子とを同時に組み込んだ酵母やE.coliなどの微生物あるいは植物により、イソフラボンを含むイソフラボノイドを生産する方法にも関するものである。形質転換に好ましい酵母はSaccharomyces cerevisiae BJ2168株(ニッポンジーン社,Nippon Gene Co.,Ltd.)、酵母用ベクターとしては、pYES2(インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)、pESC−LEU(ストラタジーン社,Stratagene)、pESC−TRP(ストラタジーン社,Stratagene)、pESC−HIS(ストラタジーン社,Stratagene)などが挙げられる。
本発明は、また、ダイズに含まれる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼである、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ(ダイゼイン合成酵素)およびそれをコードするヌクレオチド配列にも関するものである。ダイズに含まれる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼは、カンゾウに含まれる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼと相似しているが、カンゾウのデヒドラターゼがイソフラバノンの4’−メトキシ体を基質とするのに対して、4’−ヒドロキシ体を基質とするものであって、配列番号3に表わす1−319のアミノ酸配列を含んでいる。ダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするcDNAの配列は、配列番号4に示した。さらに、本発明は、該新規な遺伝子を発現する組換え体、該遺伝子を組み込んだ形質転換体にも関するもので、形質転換体としては、酵母、E.coli(大腸菌)が好ましく、該遺伝子を導入したE.coliK12株は、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受託番号FERM P−19256(寄託日平成15年3月20日)として寄託した。そして、平成16年3月15日にブダペスト条約に基づく国際寄託へ移管され、受託番号FERM BP−08661が付されている。
本発明は、さらにまた、該遺伝子あるいは該遺伝子とIFSをコードする遺伝子とを同時に組み込んだ酵母やE.coliなどの微生物あるいは植物により、イソフラボンを含むイソフラボノイドを生産する方法にも関するものである。形質転換に好ましい酵母はSaccharomyces cerevisiae BJ2168株(ニッポンジーン社,Nippon Gene Co.,Ltd.)、酵母用ベクターとしては、pYES2(インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)、pESC−LEU(ストラタジーン社,Stratagene)、pESC−TRP(ストラタジーン社,Stratagene)、pESC−HIS(ストラタジーン社,Stratagene)などが挙げられる。該遺伝子とIFSをコードする遺伝子とを同時に組み込んだ酵母Saccharomyces cerevisiae BJ2168株はブダペスト条約に基づき日本国茨城県つくば市東1丁目1番地中央第6所在の独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターへ、受託番号FERM BP−08663(寄託日平成16年3月15日)として寄託した。
【図面の簡単な説明】
図1は、フラバノンからイソフラボノイドの生成経路を示す説明図である。
図2は、カンゾウ細胞の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするcDNAクローニングの説明図である。
図3Aは、カンゾウおよびダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのアミノ酸配列を示す。
図3Bは、カンゾウなどマメ科植物の遺伝子の分子系統樹を示す。(G.echinata Dehydratase=カンゾウHIDM,Soybean TC98460=ダイズHIDH)
図4は、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ生成物のHPLCプロフィルを示す。
図5は、遺伝子発現レベルを示すRT−PCR分析パターンを示す。
図6は、IFSとHIDH共発現酵母(上段),IFS発現酵母(中段),コントロール酵母(下段)をナリンゲニンを含む培地でインキュベートし、得られた抽出物のHPLCクロマトグラムを示す。
[発明の実施するための最良の形態]
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明において、カンゾウの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼたんぱく質をHIDM、それをコードする遺伝子をHIDM、ダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼたんぱく質をHIDH、それをコードする遺伝子をHIDHと記することがある。
本発明は、配列番号1あるいは3で表わされるアミノ酸配列を実質的に有する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼに関するが、本発明で、「アミノ酸配列を実質的に有する」とは、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ活性を有する限り、当該アミノ酸配列に欠失、置換、付加、挿入等の変異があるものを含むことを意味する。欠失、置換、付加、挿入されるアミノ酸の数は、例えば、1〜20個、好ましくは1〜10個、特に1〜5個であり得る。特に、アミノ酸残基を同様の特性のアミノ酸残基で置換したものであり、典型的なかかる置換は、Ala、Val、LeuおよびIle間、SerおよびThr間、AspおよびGlu間、AsnおよびGln間、LysおよびArg間、PheおよびTyr間の置換である。
さらに、本発明は、配列番号2あるいは4で表わされるヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実質的に有するポリヌクレオチドに関するが、本発明で、「ヌクレオチド配列を実質的に有する」とは、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードする配列からなるポリヌクレオチドのほか、該配列と縮重による配列の相違、5’末端あるいは3’末端又はその両末端に適当な配列が付加されたポリヌクレオチドを含む意味である。
【実施例】
以下に、実施例によって、本発明を詳細に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。
<材料と方法>
本発明において用いた材料と手法は次のとおりである。
(1)化学物質
ダイゼイン、ゲニステイン、ビオカニンAは、エクストラシンテース社(Extrasynth▲e▼se)から、(RS)−ナリンゲニンおよびp−ニトロフェニル酪酸はシグマ社(Sigma Corporation)から得た。フォルモノネチンは本発明者らの研究室のストックから入手した。
2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン(非特許文献13)および2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン(非特許文献12)は次のように調製した。すなわち、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンは、CYP93C2(IFS)を発現する酵母ミクロソーム、リクイリチゲニン(Liquiritigenin)、NADPHをインキュベートして、酢酸エチルで抽出、シリカゲルTLCで分離し、さらに逆相HPLCで精製して調製した。2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンは、S−アデノシル−L−メチオニン(SAM)、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン、組み換え2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン4’−O−メチルトランスフェラーゼ(HI4’OMT)の反応混合物を酢酸エチルで抽出し、シリカゲルTLCで分離、さらにHPLCで精製して調製した。
2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンは、CYP93C2を発現する酵母のミクロソーム(非特許文献1)と(RS)−ナリンゲニンおよびNADPHとのインキュベーションによって調製した。生成物(Rf0.30)は、シリカゲル薄層クロマトグラフィー(TLC)[Kieselgel F254(メルク社,Merck Ltd.);溶媒はトルエン:酢酸エチル:メタノール:石油エーテル=6:4:1:3]によって精製した。
(2)植物材料
カンゾウの培養細胞(Ak−1系)は文献(非特許文献1)に従って、カンゾウの葉及び葉柄から作製した。α−ナフタレン酢酸(1μg/ml)及びN6−ベンジルアデニン(1μg/ml)を含有する1/2濃度のMurashige−Skoog培地(0.3%(w/v)ジェランガムで固化)中、12時間光照射(6,000ルクス)/12時間暗所サイクルで培養し、エリシター処理した細胞よりcDNAライブラリーを構築した。懸濁培養物は2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(0.1μg/ml)とカイネチン(0.1μg/ml)添加Murashige−Skoog培地中、暗所で維持した。エリシター処理は0.2%(w/v培養液)の酵母抽出物(インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)を使用して行った(非特許文献14)。
ダイズの種子(Glycine max L.中生枝豆:トーホク社,Tohoku Ltd.)は、水に24時間浸漬し、コニカルビーカー内の濾紙の上に撒いた。ダイズの実生は、明12時間/暗12時間という条件で室温で1週間成長させた。
(3)無細胞抽出物の調製
操作はすべて4℃で行った。エリシター処理(24時間)後のカンゾウ細胞(10g)あるいは1週齢のダイズの実生(10g)は、10%スクロースおよび14mM 2−メルカプトエタノールを含む100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)10mlおよび海砂(2.5g)を用いて乳鉢でホモジェナイズした。ホモジェネートはガーゼで濾過し、10,000gで10分間遠心分離した。上清を2.5gのDowex 1−X2(100mM リン酸カリウム緩衝液で平衝化、pH7.5)と混合し、20分間放置した。濾過によって得られた溶液は、硫酸アンモニウムを用いて分画し、30%〜80%飽和画分をSephadex G−25カラムで脱塩し、10%スクロースおよび14mM 2−メルカプトエタノールを含む100mM リン酸カリウム緩衝液(pH7.5)に溶解しアッセイに用いた(約600μgタンパク質/ml)。
(4)2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのアッセイ
2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンまたは2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノン(各5nmol)を含む2−メトキシエタノールに酵素調製液を加え(総容量:100μl)、30℃で10分間インキュベートした。
2,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンデヒドラターゼ(ビオカニンA合成酵素)のアッセイは以下のように行った。2−メトキシエタノールに溶解した2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノン(10nmol)を、カンゾウHI4’OMT(1μg)、1μmol S−アデノシル−L−メチオニン(SAM)とともに30℃で15分間インキュベートした。
濃縮した酢酸エチル抽出物を組換えカンゾウHIDM(1μg)と30℃で10分間インキュベートした。混合物の酢酸エチル抽出物を、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分析した。ダイゼインおよびフォルモノネチン分析のHPLCは、Capcell pak C18 MGカラム(4.6×150mm;資生堂社,Shiseido Co.,Ltd.)を用いて40℃(流量0.8ml/min)で行った(非特許文献12)。溶出溶媒はメタノールと3%酢酸水を用いた。40分の間に35%〜55%になるように直線グラジエントで溶出させた。5−ヒドロキシイソフラボンは、Capcell pak C18 MGカラム(4.6×150mm;資生堂社,Shiseido Co.,Ltd.)を用いて50%メタノール水溶液(ゲニステインの場合)または55%メタノール水溶液(ビオカニンAの場合)によって40℃(流量0.8ml/分)で分析した。
精製した組換えタンパク質(約10ngタンパク質)とカンゾウおよびダイズ(約10μgタンパク質)の無細胞抽出物を用いて比活性を測定した。イソフラボン濃度は、ダイゼイン、フォルモノネチン、ゲニステインの標準試料のHPLCピーク面積から算出した。
(5)カンゾウ細胞の2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするcDNA(HIDM)のクローニング
タンパク質の発現および大腸菌の粗抽出物の調製は既報のように行った(非特許文献12)。
酵母抽出物でエリシター処理(6時間および12時間)したカンゾウ細胞から構築したcDNA発現ライブラリー(非特許文献12)をスクリーニングに使用した。
カンゾウλZapll cDNAライブラリーをExassistヘルパーファージ(ストラタジーン社,Stratagene Corporation)とE.coli DH5α F’IQ(インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)を用いてin vivo excisionによりファージミドに変換した。
ファージミドはDH5α F’IQに導入され、E.coli細胞は、Luria−Bertani(LB)/アンピシリン(50μg/ml)寒天プレート上で増殖した。母プレートからLB/アンピシリン培養液中に約30,000の大腸菌(E.coli)形質転換体をそれぞれ含む5つの独立したcDNA分画プールを調製した。5mM IPTGを含むLB液体培地で培養し、細胞を回収後、粗酵素液を調製した。
2−メトキシエタノール2μlに溶解した2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン(0.4nmol)に組換えカンゾウHI4’OMT(50ng)を加え(非特許文献12)、0.4nmol S−アデノシル−L−[メチル−14C]メチオニン([14C]SAM、2.26GBq/mmol、アマシャム バイオサイエンス社 Amersham Biosciences Corporation)の存在下で30℃で3分間プレインキュベートした(総容量:50μl)。次に、大腸菌プールの粗抽出物(100μl)を混合物に加え、30℃でさらに10分間インキュベートした。酢酸エチルを加えて反応を停止させた後、混合物の酢酸エチル抽出物をシリカゲルTLC[LK6DF(ワットマン社,Whatman Ltd.);溶媒はクロロホルム:アセトン:25%アンモニア水=70:29:1;2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン(Rf0.15)、フォルモノネチン(Rf0.30)]で展開し、画像分析装置(Typhoon 8600、アマシャム バイオサイエンス社,Amersham Biosciences Corporation)によって分析した。[14C]フォルモノネチンを生成した陽性プールを次のスクリーニングのために選択し、小さいサイズ(約3,000クローン/プール)の10プールに分画した。陽性プールの分画と検定は4回繰り返し、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンデヒドラターゼ活性を示すクローン(HIDM)を単離した。(図2参照)
プラスミドを回収し、オートシーケンサー(LIC−4000,アロカ社,Aloka Co.,Ltd.)を用いてヌクレオチド配列を決定した。
(6)HIDMと相同のダイズcDNA(HIDH)のクローニング
ポリ(A)+RNAをRNeasy Plant Mini Kit(キアゲン社,Qiagen Ltd.)を用いてダイズの実生から単離し、cDNAをReady−To−Go T−Primed First Strand Kit(アマシャムバイオサイエンス社,Amersham Biosciences Corporation)を用いて合成した。NdeIまたはBamHI部位(下線で示す)を含む2つのPCR特異プライマーは、開始コドンおよび終止コドン配列を指定するダイズESTのTC98460のコード領域から設計した(TC98−Fow、GTCATATGGCGAAGGAGATAGTGAA(配列番号5);TC98−Rev、AGGGATCCATCAAACCAGAAAAGA(配列番号6))。プライマーおよび鋳型としてダイズcDNAを用いた逆転写(RT)−PCRによって得られたcDNA(HIDH)は、pT7Blue T−ベクター(ノバゲン社,Novagen Ltd.)に組み込み、ヌクレオチド配列を決定した。
(7)大腸菌におけるカンゾウHIDMおよびダイズHIDHの異種発現
NdeIまたはBamHI部位(下線で示す)を含む2つのプライマーは、カンゾウHIDMのコード領域から設計した(GeDchy−F、GTCATATGGCTTCTTCAACCTCAAC(配列番号7);GeDehy−R、CTGGATCCTCAAACAAGGAAGGAAG(配列番号8))。カンゾウHIDMから得られたPCR生成物のNdeI−BamHIフラグメントは、pET28a(ノバゲン社 Novagen Ltd.)の対応する部位にクローニングした。さらに、クローニングしたダイズcDNA(HIDH)のNdeI−BamHIフラグメントは、pET28aの対応する部位にもサブクローニングした。遺伝子組換え2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの発現および精製は、次の方法で行った(非特許文献12)。各ベクターと一緒に形質転換されたE.coliBL21(DE3)細胞は30℃で20mlの50μg/mlカナマイシンあるいはアンピシリン添加のLB/アンシピリン培地中でOD600=0.4まで培養された。IPTGが最終濃度1.0mMになるように添加され、6時間30℃でインキュベートされた。カンゾウHIDMおよびダイズHIDHは、HisTrap Kit(アマシャムバイオサイエンス社,Amersham Biosciences Corporation)を用いてHIDMおよびHIDH発現E.coliの粗抽出物から精製された。
(8)2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)と2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼを共発現させた組換え酵母の調製
マメ科カンゾウのIFS(CYP93C2)を酵母で発現させるためのベクター(pYES−CYP93C2)は非特許文献1と特許文献1に記載したものを用いた(CYP93C2遺伝子のコード領域を、酵母発現ベクター(pYES2,インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)のガラクトース誘導性プロモータGAL1の下流のKpnIとEcoRIサイトに組み込んだもの)。
ダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ(HIDH)を酵母で発現させるためのベクター(pESC−HIDH)は以下のようにして作成した。ApaI、XhoI部位(下線で示す)を付加した2種のプライマー[HIDH−F1(5’−GGGGCCCGGATCCATGGCGAAGGAGATAGTGAAAG−3’(配列番号9)),HIDH−R1(5’−GGGAGCTCGAGTCAAACCAGAAAAGAAGCC−3’(配列番号10))]を、ダイズ2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ(HIDH)のコード領域から設計した。 プライマーとKODポリメラーゼ(東洋紡,Toyobo Co.,Ltd.)、さらに鋳型としてダイズHIDH cDNAを用いてPCR(98℃で15秒,60℃で15秒,74℃で30秒を15サイクル)を行った。増幅産物をApaI、XhoIで処理し、酵母発現ベクター(ρESC−Leu,ストラタジーン社,Stratagene)のガラクトース誘導性プロモータGAL1の下流のApaIとXhoIサイトに組み込んだベクター(pESC−HIDH)を作製した。
エレクトロポレーション装置(Cellject Duo,サーモエレクトロン社,Thermo Electron Corporation)を用いて酵母Saccharomyces cerevisiae_BJ2168株(a;prc1−407,prb1−1122,pep4−3,leu2,trp1,ura3−52)(ニッポンジーン社,Nippon Gene Co.,Ltd.)を形質転換した。エレクトロポレーションはサーモエレクトロン社(Thermo Electron Corporation)が推奨する方法に従って行った。形質転換体は,yeast nitrogen base without amino acids(6.7g/l,インビトロゲン社,Invitrogen Corporation)、グルコース(20g/l),トリプトファン(20mg/l),寒天(20g/l)を含む培地で選択した。以下の3種の組換え酵母を作成した:(1)コントロール酵母(pYES2とpESC−LeuをBJ2168株に導入)、(2)IFS発現酵母(pYES−CYP93C2とpESC−LeuをBJ2168株に導入)、(3)IFSと2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ共発現酵母(pYES−CYP93C2とpESC−HIDHをBJ2168株に導入)
(9)カルボキシルエステラーゼ活性の測定
組換えカンゾウHIDMおよびダイズHIDHタンパク質の特異的カルボキシルエステラーゼ活性は、150mM NaClおよび750nmol p−ニトロフェニル酪酸を含む50mM Tris−HCl緩衝液(pH9.0)1.5ml中における吸光度400nmで30℃で測定したp−ニトロフェノールの生成速度から算出した(Heymann 1981)。市販のブタ肝臓カルボキシルエステラーゼ(シグマ社,Sigma Corporation)を陽性対照として用いた。熱変性(100℃、10分間)させたカンゾウHIDM、ダイズHIDH、ブタ肝臓カルボキシルエステラーゼタンパク質を陰性対照として分析した。
(10)RT−PCR分析
懸濁培養したカンゾウ細胞は、酵母抽出物で処理し、3、6、12、24、48時間後に収集した(非特許文献1)。mRNAはStraight A’s mRNA単離システム(ノバゲン社,Novagen Ltd.)を用いて抽出し、cDNAを合成した。RT−PCRには、カンゾウHIDM、IFS(非特許文献12)、HI4’OMT(非特許文献12)から設計した特異プライマーを使用した。反応は94℃で1分間の変性によって開始し、3工程のインキュベーション(94℃、1分間;55℃、1分間;72℃、1分間)を30サイクル繰り返した。生成物は、1.2%(w/v)アガロースゲルの電気泳動にかけ、臭化エチジウムで染色した。
上記の材料および方法によって得られた本発明の結果を示す。
(1)カンゾウ細胞およびダイズの実生における2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ活性
カンゾウ細胞はエリシター処理後にメディカルピン(4’−メトキシイソフラボノイド、図1参照)を蓄積するが、4’−ヒドロキシイソフラボノイドは蓄積しない(Nakamura et al.1999)。ダイズはイソフラボンの、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン配糖体を産生することが知られており、それらはいずれも4’−ヒドルキシル化体である(Dewick 1986,Dewick 1993,Aussenac 1998)。したがって、カンゾウ細胞およびダイズの実生の抽出物には、それぞれ適切に置換された2−ヒドロキシイソフラバノンからフォルモノネチンおよびダイゼインを生成する活性が存在すると推測される。HPLCを用いて活性を調べた結果を表1に示す。

表1から分かるとおり、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンをカンゾウの無細胞抽出物とインキュベートした場合では、フォルモノネチンが生成した。カンゾウ抽出物による2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンからのダイゼインの生成も少量認められたが、その活性はフォルモノネチンの生成より約160倍低かった。
ダイズ実生の無細胞抽出物では、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン(フォルモノネチンを産生)および2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン(ダイゼインを産生)からほぼ1:2のフォルモノネチンとダイゼインの生成が検出された。さらに、ダイズ抽出物は、ダイゼインの生成の約1/10のレベルで、2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンからのゲニステインの生成を触媒した。
一方、2−ヒドロキシイソフラバノンの自発的な脱水は、中性緩衝液(pH7.5)における50μMの基質濃度による実験条件では無視し得るものであった。これらの結果は、植物細胞でイソフラボンを形成する2−ヒドロキシイソフラバノンの脱水は酵素触媒反応であることを強く示唆している。さらに、カンゾウおよびダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの基質特異性は異なることが推定される。
(2)機能発現分画スクリーニングによるカンゾウの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼcDNAの取得
2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンからフォルモノネチンへの変換の特異的かつ高感度の検出は、酵母の遺伝子組換えIFSによって調製した精製2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン(非特許文献1)、[14C]SAMおよびアフィニティ精製したN末端に6個のヒスチジンを含む組換えカンゾウHI4’OMT(非特許文献12)を組み合わせて用い、検定前に[14C]−2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンを産生することによって可能になった。酵母抽出物で処理したカンゾウ細胞のcDNA発現ライブラリー(非特許文献12)を用いてデヒドラターゼのcDNAのスクリーニングを行った。最初のスクリーニングは、5つのcDNAプール(形質変換体30,000/プール)で実施した。大腸菌プールの抽出物は、[14C]−2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンを産生させた上記の混合物と反応させ、反応混合物の酢酸エチル抽出物をTLCオートラジオグラフィーによって分析した。2つのプールが[14C]フォルモノネチンを産生することが判明し、任意に選択した陽性プールの一方を小さいサイズ(約3,000クローン/プール)の10プールに分画した。タンパク質の発現および分析を再び行い、10プールのうちの1つの陽性プールを同定した。陽性プールの分画および分析を繰り返した。10プールのうちの1つの陽性プールを、3回目(約300クローン/プール)、4回目(30クローン/プール)および5回目(3クローン/プール)のスクリーニングで繰り返し同定した。最後に、2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンデヒドラターゼ活性を示す単一の大腸菌クローンを単離した(図2参照)。
酵素をコードするcDNAを回収し、シーケンサーを用いて配列決定を行った。HIDM(2−ydroxysoflavanone ehydratase ethoxy type)のcDNAは1,178bpのヌクレオチドを有し、328のアミノ酸をコードしていた(図3A)。タンパク質−タンパク質BLAST(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/)検索では、カンゾウのHIDMの推定アミノ酸配列はArabidopsis thaliana(シロイヌナズナ)の推定タンパク質と40%の同一性(受入れ番号At1g47480、AT3g48690、At3g48690)、Nicotiana tabacum(タバコ)hsr203Jと34%の同一性(受入れ番号X77136)(Pontier et al 1994)、エンドウマメE86と31%の同一性(受入れ番号ABO26296)(Ichinose et al.2001)、Archaeoglobus fulgidus(好熱性硫黄細菌)のカルボキシルエステラーゼと32%の同一性(受入れ番号1JJIA)(Manco et al.2000)を示すことが明らかになった。また、カンゾウHIDMはカルボキシルエステラーゼで記録された保存配列のモチーフを有していた(N末端から約40〜180アミノ酸)。
リパーゼおよびエステラーゼとともにオキシアニオンホールを形成する保存配列(His 85−Gly 86−Gly 87:図3Aにおいて枠で囲んだ配列)は、カルボキシルエステラーゼのモチーフに存在していた(Contreras et al,1996,Laurell et al.2000,Hosokawa 2002)。カンゾウHIDMタンパク質では、一般的なリパーゼおよびエステラーゼの触媒トライアードに保存されたSer残基(Osterlund et al 1996,Contreras et al.1996,Manco et al.2000,Hosokawa 2002)がThr残基に置換されているものの、仮想の触媒トライアード(Thr 173、Asp 272およびHis 304)がカルボキシルエステラーゼモチーフの外側に認められた。図3Aにおいて、仮想の触媒トライアード(Thr 173、Asp 272およびHis 304)には*を付した。
(3)マメ科植物ライブラリーにおけるカンゾウデヒドラターゼの相同cDNAの検索
ダイズ(http://www.tigr.org/tdb/tgi/gmgi/)、Medicago truncatula(タルウマゴヤシ)(http://www.tigr.org/tdb/tgi/mtgi/)、Lotus japonicus(ミヤコグサ)(http://www.kazusa.or.jp/cn/plant/lotus/EST/)(Asamizu et al.2000)のエクスプレスドシーケンスタグ(EST)データベースの検索から、これらの植物にカンゾウHIDMと相同(アミノ酸同一性>50%)のcDNAが存在することが明らかになった。しかし、これらの配列はすべて仮想タンパク質としてのみ注釈が付けられていた。分子系統樹では、ダイズBM177194、L.japonicus TC3332、M.truncatula TC43540タンパク質が、カンゾウのデヒドラターゼと同じ分枝を形成(アミノ酸レベルでの同一性>80%)することが示された(図3B)。ダイズTC98460タンパク質は4種類のタンパク質と>60%の同一性を有し、M.truncatula BG456496と密接な分枝を形成した(図3B)。
(4)カンゾウとダイズの遺伝子組換え2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの特性決定
ダイズのEST配列TC98460は、予測された開始コドンおよび終止コドンを有している。cDNAのコード領域をダイズ実生からRT−PCRでクローニングし、HIDH(2−ydroxyisoflavanone ehydratase ydroxy type)と命名した。
カンゾウHIDMおよびダイズHIDHは大腸菌で発現させ、N末端に6つのヒスチジン残基を持つ組換えタンパク質を精製し、2−ヒドロキシイソフラバノンに対する活性を測定した。図4Aに示すように、カンゾウHIDMと2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンとのインキュベーションによってフォルモノネチンが生成された。生成物(フォルモノネチン)の同定は標準サンプルとのRt値の比較および電子衝撃質量分析法(m/z 268の分子イオンピーク、m/z 132のretro−Diels−Alderフラグメントピーク)によって確認した。さらに、カンゾウHIDMによって2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンから少量のダイゼインが産生された。カンゾウHIDMの2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンに対する比活性は2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンに対するものより74倍高く、組換えタンパク質の生化学的特性がカンゾウ無細胞抽出物のものと一致することを示している(表1)。
組換えダイズHIDHを、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンと2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンを用いてアッセイするとHPLC上で、ダイゼインとフォルモノネチンのピークが現われることを確認した(図4A)。イソフラボンの化学構造は電子衝撃質量分析法によって再確認した。さらに、ダイズHIDHは、2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンからのゲニステインの生成を触媒した(図4A)。表1に示すように、HIDHの比活性は2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンに対して最も高かったが、別の4’−ヒドロキシル化された基質に対しては比較的低く(約1/10)、4’−メトキシ基を持つ基質に対してはきわめて低かった。
さらに、カンゾウHI4’OMTと2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンおよびSAMとのインキュベーションによって得られた2,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンと予想される化合物をカンゾウHIDMとインキュベートした場合には、HPLCでビオカニンAが検出された(図4B)。
(5)遺伝子組換えカンゾウおよびダイズの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのカルボキシルエステラーゼ活性
p−ニトロフェニル酪酸は、カルボキシルエステラーゼアッセイで一般に用いられる基質である。遺伝子組換えカンゾウおよびダイズのデヒドラターゼはp−ニトロフェニル酪酸に弱い活性を示した(表1)。これに対して、ブタ肝臓カルボキシルエステラーゼは2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンを脱水しなかった(表1)。
(6)カンゾウ細胞のフォルモノネチン経路における遺伝子発現
RT−PCR分析から、カンゾウ細胞のHIDM、HI4’OMTおよびIFSの転写レベルは酵母抽出物による処理から6〜12時間後に増加することが明らかになった(図5)。
(7)2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)と2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼを共発現させた組換え酵母でのイソフラボン生産
前記2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)と2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼを共発現させた組換え酵母の調製の項で説明した3種の組換え酵母、すなわち、(1)コントロール酵母(pYES2とpESC−Leuを酵母BJ2168株に導入)、(2)IFS発現酵母(pYES−CYP93C2とpESC−Leuを酵母BJ2168株に導入)、(3)IFSと2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ共発現酵母(pYES−CYP93C2とpESC−HIDHを酵母BJ2168株に導入)を用いてイソフラボン生産能を比較した。
3種の酵母をそれぞれ1.5mlのSD最小液体培地[yeast nitrogen base without amino acids(6.7g/l)、グルコース(20g/l)、トリプトファン(20mg/l)]で一晩振とう培養(28℃)した。遠心により菌体を回収後、1μgヘミンを含む3mlのYPG液体培地[イーストエキストラクト(10g/l)、ペプトン(20g/l)、ガラクトース(20g/l)]に菌体を懸濁し、一晩培養してタンパク質発現を誘導させた。遠心により菌体を回収後、50μgナリンゲニン(5μl tween 80と5μlエタノールに溶解)を含む0.5ml YPG液体培地に菌体を懸濁し、一晩培養した。培養液にガラスビーズを加えて細胞を破砕し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を乾固後、メタノールに溶解し、HPLC[カラム:CAPCELL PAK C18 MG column(4.6 x 150mm;資生堂社,Shiseido Co.,Ltd.);40℃;0.8ml/min;溶媒30%メタノール(0分)〜50%メタノール(30分)になるように直線グラジエント]で分析した。ゲニステイン標品のピーク面積を基に、各サンプルのゲニステイン量を求めた。
その結果、IFSと2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼを共発現させた組換え酵母(3)と、IFSを単独で発現させた組換え酵母(2)では、HPLC上でゲニステインと2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンの生成が確認された。コントロール酵母(1)では両化合物の生成は見られなかった。IFSと2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼを共発現させた酵母(3)ではゲニステインを3.2±0.2μg(3回の実験)生産した。IFSを単独で発現させた組換え酵母でのゲニステイン生成量は0.8±0.1μg(3回の実験)であり、IFSと2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼを共発現させるとイソフラボン生産量が増加することがわかった(図6参照)。
以上の結果から、次のことが明らかになった。
本発明では、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするcDNA、カンゾウHIDM、ダイズHIDHをクローニングした。HIDMおよびHIDHは4’−メトキシルおよび4’−ヒドロキシル置換基を有する2−ヒドロキシイソフラバノンに対して異なった基質特異性を示す。これらの酵素は、命名法に各酵素の最も好ましい基質を用いて、カンゾウの2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノン−2,3−デヒドラターゼ(フォルモノネチン合成酵素)およびダイズの2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノン−2,3−デヒドラターゼ(ダイゼイン合成酵素)と呼ぶことができる。重要なことは、基質特異性は各植物種に含まれるイソフラボンの構造(さらには生合成経路の下流のイソフラボノイド)を反映していることである。したがって、植物細胞の2−ヒドロキシイソフラバノンからのイソフラボンの生成は酵素に依存している可能性が非常に高い。
遺伝子組換えカンゾウHIDMタンパク質による2−ヒドロキシイソフラバノン脱水酵素反応の比活性は、カンゾウの粗抽出物よりも約400〜900倍高く、遺伝子組換えタンパク質および粗抽出物はいずれも2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンよりも2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンに対して極めて高い選択性を示した(表1参照)。これは、粗抽出物の主要な活性がHIDMタンパク質にあることを強く示唆している。さらに、誘導したカンゾウ細胞のHIDM mRNAがIFSとHI4’OMTのmRNAと同等に蓄積することは、HIDMがフォルモノネチンの生合成に関与していることを示唆している。
一方、ダイズ抽出物は2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンおよび2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンに対する脱水活性を約1:2の割合で触媒した。これに対して、遺伝子組換えダイズHIDHタンパク質の活性は2−ヒドロキシイソフラバノンの4’−ヒドロキシル化体にきわめて特異的であった(表1参照)。これらのことから、ダイズの4’−ヒドロキシル化イソフラボンの生成はHIDHに起因している可能性が高い。
本発明で、さらに興味深い所見は、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼは加水分解酵素ファミリーのカルボキシルエステラーゼに分類される配列を有するタンパク質であるということである。実際に、ダイズHIDHはp−ニトロフェニル酪酸に対して弱いカルボキシルエステラーゼ活性を有していた(ブタ肝臓酵素の約1/50)(表1参照)。本発明は、このファミリーのタンパク質が脱水を触媒することを最初に実証したものである。
P.Iobata(クズマメ)で報告された2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの特性はダイズHIDHの特性と一致する(Hakamatsuka et al.1998)。P.Iobataのタンパク質の分子量(38kDa)はダイズHIDHの計算値(35,115)と近い。さらに、2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンに対するP.Iobataのデヒドラターゼの比活性(56.8mkatal/kgタンパク質)は、遺伝子組換えダイズHIDHの活性(43.6mkatal/mg)とほぼ同様である。非常に興味深いことに、P.Iobataのタンパク質のHis残基は活性に重要であることが報告されており(Hakamatsuka et al.1998)、Hisはカルボキシルエステラーゼの触媒トライアードのアミノ酸の1つである(Satoh and Hosokawa 1995,Wei et al.1999)。したがって、P.Iobataの2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼはカルボキシルエステラーゼファミリーのタンパク質でもあると考えられる。
いくつかのデヒドラターゼ遺伝子/タンパク質は、数種類の植物から特性が決定されている。これらにはデヒドロキナ酸デヒドラターゼ(Deka et al.1994)、δ−アミノレブリン酸デヒドラターゼ(Kaczor et al.1994)、イミダゾールグリセロールリン酸デヒドラターゼ(Tada et al.1994)、アレンオキシド合成酵素(Song et al.1993)が含まれる。しかし、これらのデヒドラターゼとHIDM/HIDHとの間ではヌクレオチドおよびアミノ酸配列の有意な相同性は認められていない。
HIDM/HIDHとある程度相同のカルボキシルエステラーゼモチーフを有するタンパク質は植物界に広く分布している。さらに、植物性天然産物の生合成では酵素の特性が決定されていない多くの脱水反応があり、たとえばプテロカルパン骨格を生じる2’−ヒドロキシイソフラバン−4−オールの脱水環化がある(Bless and Barz 1988,Guo et al.1994a,Guo et al.1994b)。ヒヨコマメおよびダイズのそれぞれのイソフラボノイドの生合成では各植物のミクロソームの実験から、メチレンジオキシ環の生成およびフェノール環のプレニル置換基の環化はP450によるものである(Clemens and Barz 1996,Welle and Grisebach 1988)。しかし、P450とともにデヒドラターゼがこれらの反応に関与している可能性もあり、その酵素タンパク質はカルボキシルエステラーゼファミリーに分類されるかもしれない。また、触媒機能が未同定のこの種のタンパク質をコードするいくつかの植物遺伝子が病原体に反応して誘導されることが報告されている(Pontier et al.1994,Walden et al.1999,Ichinose et al.2001,Tronchet et al.2001,Bezier et al.2002)。これらは、防御に関わる化合物の生合成に関与するデヒドラターゼであることも考えられる。
2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ遺伝子の同定は、マメ科および非マメ科植物の代謝エンジニアリングにきわめて重要である。これまでのところ、非マメ科植物でイソフラボノイドを生成するために、ダイズIFSを過剰発現する形質転換型Arabidopsis thalianaおよびNicotiana tabacumが構築されているが(非特許文献3、非特許文献7、非特許文献3)、形質転換体のイソフラボノイドの生産性は満足できるものではない。典型的な場合では、シロイヌナズナの生重量1gあたり約2ng〜4ngのゲニステインが生産されるのに対して(非特許文献7、非特許文献8)、ダイズ種子の乾重量1gあたり約4mg〜10mg相当のイソフラボン(Aussenac et al.1998)およびルーピン実生の生重量1gあたり約3mgのイソフラボンが生産される(Katagiri et al.2000)。フラバノンから2−ヒドロキシイソフラバノンへの代謝フローと3−ヒドロキシフラバノンに至る別のフローとの競合は、形質転換型シロイヌナズナにおけるイソフラボン生産のボトルネックになると思われ、実際にIFSで形質変換したシロイヌナズナのフラバノン3−ヒドロキシル化酵素変異体におけるイソフラボン生産は6〜31倍に増加している(Liu et al.2002)。
IFSを単独で発現させた組換え酵母と比べて、IFSとHIDHを同時に発現させた組換え酵母ではイソフラボン生産量が増加したことから、非マメ科植物でIFSとHIDHを同時に発現させることにより、イソフラボン生産量が増大する可能性も期待できる。
さらに、HIDHおよびHIDMを導入遺伝子に用いた遺伝子工学によって、マメ科植物のイソフラボノイド経路を修正することも実現可能である。









【産業上の利用の可能性】
以上、本発明では、植物体においてイソフラボンを生産する工程に重要な役割を果たす脱水酵素を単離し、そのアミノ酸配列およびそれをコードする新規なポリヌクレオチドを提供することができた。さらにまた、本発明は、そのようにして得られた遺伝子をイソフラボンを含むイソフラボノイドの産生に応用することを可能とした。
【配列表】














【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1で表わされる1−328のアミノ酸配列を実質的に有する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項2】
2,7−ジヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンあるいは2,5,7−トリヒドロキシ−4’−メトキシイソフラバノンに作用してフォルモネチンあるいはビオカニンAを生成するための脱水反応を促進する請求項1記載の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項3】
請求項1または2に記載の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実質的に有するポリヌクレオチド。
【請求項4】
配列番号2で表わされる1−1178個の塩基からなる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項5】
配列番号2に含まれるヌクレオチド配列に対して50%以上の相同性を有し、且つ2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項6】
Glycyrrhiza echinata(カンゾウ)からクローニングされた請求項3〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項7】
配列番号2のヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項8】
配列番号2の少なくとも15個の連続した配列またはこれに相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズしうる、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするヌクレオチド配列または2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのcDNAのプライマーまたはプローブとして機能しうるポリヌクレオチド。
【請求項9】
請求項3〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチドでコードされる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項10】
請求項3〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするたんぱく質を用い、2−ヒドロキシイソフラバノンを脱水する方法。
【請求項11】
少なくともフラバノン、2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)と請求項3〜6のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするたんぱく質を用いてイソフラボノイドを生産する方法。
【請求項12】
請求項3〜6のいずれかに記載されたポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
【請求項13】
宿主細胞中で、請求項3〜6のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを発現しうる発現系を含む組換え体DNAまたはRNA。
【請求項14】
請求項12に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項15】
宿主細胞が酵母である請求項14に記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項16】
寄託番号FERM BP−08662の組換え大腸菌細胞である請求項14に記載の宿主細胞。
【請求項17】
請求項14〜16のいずれかに記載された宿主細胞を培養することを含む2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの製造方法。
【請求項18】
請求項14〜16のいずれかに記載された宿主細胞を用いるイソフラボノイドの生産方法。
【請求項19】
請求項3〜6のいずれかに記載されたポリヌクレオチドおよび2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)をコードするポリヌクレオチドで形質転換された宿主細胞を用いるイソフラボノイドの生産方法。
【請求項20】
請求項3〜6のいずれかに記載されたポリヌクレオチドが導入されたトランスジェニック植物。
【請求項21】
マメ科植物である請求項20に記載のトランスジェニック植物。
【請求項22】
請求項20または21に記載の植物を用いるイソフラボノイドの生成方法。
【請求項23】
請求項20または21に記載の植物を用いるイソフラボノイドの改変方法。
【請求項24】
配列番号3で表わされる1−319のアミノ酸配列を実質的に有する2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項25】
2,7,4’−トリヒドロキシイソフラバノンあるいは2,5,7,4’−テトラヒドロキシイソフラバノンに作用してダイゼインあるいはゲニステインを生成するための脱水反応を促進する請求項24記載の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項26】
請求項24または25に記載の2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を実質的に有するポリヌクレオチド。
【請求項27】
配列番号4で表わされる1−960の塩基からなる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項28】
配列番号4に含まれるヌクレオチド配列に対して50%以上の相同性を有し、且つ2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするポリヌクレオチド。
【請求項29】
ダイズからクローニングされた請求項26〜28のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
【請求項30】
配列番号4のヌクレオチド配列または該ヌクレオチド配列に相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドの少なくとも一部にハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項31】
配列番号4の少なくとも15個の連続した配列またはこれに相補的なヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドにハイブリダイズしうる、2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼをコードするヌクレオチド配列または2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼのcDNAのプライマーまたはプローブとして機能しうるポリヌクレオチド。
【請求項32】
請求項26〜29のいずれかに記載のポリヌクレオチドでコードされる2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼ。
【請求項33】
請求項26〜29のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするたんぱく質を用い、2−ヒドロキシイソフラバノンを脱水する方法。
【請求項34】
少なくともフラバノン、2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)と請求項26〜29のいずれかに記載のポリヌクレオチドがコードするたんぱく質を用いてイソフラボノイドを生産する方法。
【請求項35】
請求項26〜29のいずれかに記載されたポリヌクレオチドが挿入されたベクター。
【請求項36】
宿主細胞中で、請求項26〜29のいずれかに記載されたポリヌクレオチドを発現しうる発現系を含む組換え体DNAまたはRNA。
【請求項37】
請求項35に記載のベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項38】
宿主細胞が酵母である請求項37に記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項39】
寄託番号FERM BP−08661の組換え大腸菌細胞である請求項37に記載の宿主細胞。
【請求項40】
2−ヒドロキシイソフラバノンシンターゼ(IFS)をコードするポリヌクレドチドが挿入されたベクターおよび請求項26〜29のいずれかに記載されたポリヌクレオチドが挿入されたベクターにより形質転換された宿主細胞。
【請求項41】
宿主細胞が酵母である請求項40に記載の形質転換された宿主細胞。
【請求項42】
寄託番号FERM BP−08663の組換え酵母である請求項41に記載の宿主細胞。
【請求項43】
請求項37〜42のいずれかに記載された宿主細胞を培養することを含む2−ヒドロキシイソフラバノンデヒドラターゼの製造方法。
【請求項44】
請求項37〜42のいずれかに記載された宿主細胞を用いるイソフラボノイドの生産方法。
【請求項45】
請求項26〜29のいずれかに記載されたポリヌクレオチドが導入されたトランスジェニック植物。
【請求項46】
マメ科植物である請求項45に記載のトランスジェニック植物。
【請求項47】
請求項45または46に記載の植物を用いるイソフラボノイドの生成方法。
【請求項48】
請求項45または46に記載の植物を用いるイソフラボノイドの改変方法。
【請求項49】
カルボキシルエステラーゼのモチーフを持ち脱水反応を触媒する酵素をコードするポリヌクレオチド。
【請求項50】
カルボキシルエステラーゼのモチーフを持ち2−ヒドロキシイソフラバノンの脱水反応を触媒する酵素をコードするポリヌクレオチド。

【国際公開番号】WO2004/087909
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【発行日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504192(P2005−504192)
【国際出願番号】PCT/JP2004/004214
【国際出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】