説明

2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミドHIVプロテアーゼ阻害剤

本発明は2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体、プロテアーゼ阻害剤としての、特に広域HIVプロテアーゼ阻害剤としてのそれらの使用、それらの製造方法並びにそれらを含んでなる製薬学的組成物および診断キットに関する。本発明はまたこの2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体と別の抗−レトロウイルス剤との組み合わせにも関する。それはさらに検定における対比化合物としてまたは試薬としてのそれらの使用にも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体、プロテアーゼ阻害剤としての、特に広域HIVプロテアーゼ阻害剤としてのそれらの使用、それらの製造方法並びにそれらを含んでなる製薬学的組成物および診断キットに関する。本発明はまたこの2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体と別の抗−レトロウイルス剤との組み合わせにも関する。それはさらに検定における対比化合物としてまたは試薬としてのそれらの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
後天性免疫不全症候群(エイズ)を引き起こすウイルスは、T−リンパ球ウイルスIII(HTLV−III)またはリンパ節疾患−関連ウイルス(LAV)またはエイズ−関連ウイルス(ARV)またはヒト免疫不全ウイルス(HIV)を包含する種々の名称により知られる。現在までに、2つの別個の族、すなわちHIV−1およびHIV−2が同定されている。以下において、HIVはこれらのウイルス類を総称的に示すために使用される。
【0003】
レトロウイルス生活環における重要な経路の1つはアスパラギン酸プロテアーゼによるポリ蛋白質前駆体の処理である。例えば、HIVウイルス性gag−pol蛋白質はHIVプロテアーゼにより処理される。アスパラギン酸プロテアーゼによる前駆体ポリ蛋白質の正確な処理が感染性ビリオンの組み立てに必要であり、そのためアスパラギン酸プロテアーゼは抗ウイルス療法用の魅力的な標的になる。特に、HIV処置用には、HIVプロテアーゼが魅力的な標的である。
【0004】
HIVプロテアーゼ阻害剤(PI類)は普通は例えばヌクレオシド逆トランスクリプターゼ阻害剤(NRTI類)、非−ヌクレオシド逆トランスクリプターゼ阻害剤(NNRTI類)、例えばT−20の如き融合阻害剤、または他のプロテアーゼ阻害剤の如き他の抗−HIV化合物と組み合わせて、エイズ患者に投与される。抗レトロウイルス剤は非常に有用であるという事実にもかかわらず、それらは共通の制限、すなわちHIV中の標的酵素が既知の薬品の有効性が低下するかまたは突然変異HIVウイルスに対して無効にさえなるような方法で突然変異しうることを有する。或いは、換言すると、HIVは利用可能な薬品に対する増え続ける耐性を生ずる。
【0005】
阻害剤に対するレトロウイルス類、そして特にHIVの耐性が療法失敗の主な原因である。例えば、抗−HIV組み合わせ療法を受ける患者の半数は、主に使用する1種もしくはそれ以上の薬品に対するウイルスの耐性のために、処置に対して完全には応答しない。さらに、耐性ウイルスは新たに感染した個体に運ばれて、これらの薬品−過敏性患者に関する療法選択肢の大きな制限をもたらすことが示されていた。従って、レトロウイルス療法に対する、より特にエイズ療法に対する新規化合物に関する要望が当該技術にある。当該技術における要望は、野生型HIVに対してだけでなく増大しつつあるさらに普遍的な耐性HIVに対しても活性である化合物に関しては特に急務である。
【0006】
しばしば組み合わせ療法レジメンで投与される既知の抗レトロウイルス剤は以上で述べたような耐性を実際に引き起こすであろう。これはこの抗レトロウイルス剤が突然変異したHIVに対する有効性を再取得させうるようにしばしば医師をして活性薬品の血漿レベルを高めさせる。その結果は、薬剤負荷における非常に望ましくない増加である。追加の血漿レベル上昇は指定される療法との非−コンプライアンスの危険性増加ももたらしうる
。それ故、広範囲のHIV突然変異体に対する活性を示す化合物があることだけが重要でなく、広範囲の突然変異HIV菌株に関する突然変異HIVウイルスに対する活性と野生型HIVウイルスに対する活性との間の比(折り畳み耐性またはFRとしても定義される)における変動が少ないかまたは全くないことも重要である。それ故、突然変異HIVウイルスが活性成分に対して敏感性である機会が増加しうるため、患者は同じ組み合わせ療法レジメンをより長い期間にわたり持続しうる。
【0007】
野生型および多種の突然変異体に対する高い効力を有する化合物の発見も、治療レベルが最少に保たれているなら薬剤負荷を減じうるため重要である。この薬剤負荷を減ずる1つの方法は、良好なバイオアベイラビリティー、すなわち好ましい薬物動力学的および代謝特徴を有するために1日服用量並びにその結果として薬剤摂取数を最少にしうる抗−HIV化合物の発見である。
【0008】
良好な抗−HIV化合物の他の重要な特徴は、阻害剤の血漿蛋白質結合がその効力に対して最少の影響を有するかまたは全く影響しないことである。
【0009】
これまでに数種のプロテアーゼ阻害剤が市販または開発されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
市販されているプロテアーゼ阻害剤は優れた性質を有するが、折り畳み耐性における変動をほとんど伴うことなく広域HIVの突然変異体を防除することができ、良好なバイオアベイラビリティー、すなわち好ましい薬物動力学的および代謝特徴、を有し、そして血漿蛋白質結合によるそれらの効力に対する影響がほとんどまたは全くなく、且つ人間においてできるだけ少ない副作用を示す新規なプロテアーゼ阻害剤に関する絶えざる高い医学的要望がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本発明の2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体が好ましい薬理学的および薬物動力学的特徴を有することが見出された。
【0012】
さらに、それらは野生型HIVに対して活性であるだけでなく、既知のプロテアーゼ阻害剤に対する耐性を示す種々の突然変異HIVに対する広域活性も示す。
【0013】
本発明に従う化合物は例えば紅斑および/または浮腫の如き皮膚疾患のようないわゆる過敏反応を誘発しない。
【0014】
本発明はプロテアーゼ阻害剤としての式(I)
【0015】
【化1】

【0016】
[式中、
Rは場合により1つもしくはそれ以上の環員上でC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキル−オキシ−C1−6アルキル、−C(=O)−C1−6アルキル−アミノ−C1−6アルキル、−C(=O)−C1−6アルキル−Het、−C(=O)−C1−6アルキル−Het、ベンジル、フェニル、またはHetにより置換されたC1−6アルキルにより置換されていてもよいピペリジンまたはピロリジン環であり、ここで
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上でC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アセチル、オキソ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノアルキル、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリールおよび3〜14個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義され、そしてここで
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上で場合によりC3−7シクロアルキルにより置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリール、Hetおよび3〜12個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義される]
を有する2−(置換された−アミノ)−ベンゾチアゾールスルホンアミド化合物および誘導体、それらの塩類、立体異性体形態および立体異性体混合物に関する。
【0017】
本発明に従う興味ある化合物は、Rが環内のN−原子上でC3−7シクロアルキルにより置換されたピペリジン環である化合物である。
【0018】
好ましい化合物は、C3−7シクロアルキルがC−シクロアルキルであるものである。
【0019】
式(II)
【0020】
【化2】

【0021】
を有する化合物が最も好ましい。
【0022】
さらに、本発明は通常の製薬学的に許容可能な賦形剤および助剤の他に有効量の式(I)または(II)の化合物の少なくとも一方を含んでなる製薬学的組成物および該製薬学的組成物の製造方法にも関する。
【0023】
製薬学的調剤は通常0.1〜90重量%の式(IまたはII)の化合物を含有する。製薬学的調剤は当業者にそれ自体既知である方法で製造することができる。この目的のためには、式(IまたはII)の化合物の少なくとも一方を、1種もしくはそれ以上の固体もしくは液体の製薬学的賦形剤および/または助剤と一緒に、そして、所望するなら、他の製薬学的に活性な化合物と組み合わせて、適当な投与形態または薬用量形態にし、それを次に人間用薬品または動物用薬品中で薬剤として使用することができる。
【0024】
本発明に従う化合物を含有する薬剤は、例えば懸濁剤、カプセル剤、錠剤、サシェ剤、液剤、懸濁剤、乳剤を包含するものを用いて経口的に、例えば皮下、静脈内、筋肉内、胸骨内注射または注入技術を用いて非経口的に、例えば坐剤を用いて直腸に、膣内に、吸入により、或いは局部的に投与することができる。好ましい投与は個別の状況、例えば処置しようとする疾患の特定の経過による。経口投与が好ましい。
【0025】
当業者は、彼の専門知識に基づき、所望する製薬学的調剤に適する助剤に関して通じている。溶媒の他に、ゲル−生成剤、坐剤ベース、錠剤助剤および他の活性化合物担体、酸化防止剤、分散化剤、乳化剤、発泡防止剤、香味矯正剤、防腐剤、溶解剤、沈着効果を得るための剤、緩衝物質または着色剤も有用である。
【0026】
経口投与形態用には、本発明の化合物を適当な添加剤、例えば賦形剤、安定剤または不活性希釈剤と混合し、そして通常の方法により適当な投与形態、例えば錠剤、コーティング錠剤、硬質カプセル剤、水性、アルコール性、または油性液剤にする。適する不活性担体の例はアラビアゴム、マグネシア、炭酸マグネシウム、燐酸カリウム、ラクトース、グルコース、または澱粉、特に、コーンスターチである。この場合には、調合は乾燥および湿潤顆粒の両方として行うことができる。適する油状賦形剤または溶媒は植物性または動物性油類、例えばヒマワリ油または鱈肝油である。水性またはアルコール性液剤に適する溶媒は水、エタノール、糖溶液、またはそれらの混合物である。ポリエチレングリコール類およびポリプロピレングリコール類も他の投与形態用の別の助剤として有用である。
【0027】
皮下または静脈内投与用には、活性化合物を、所望するならそれらのための通常の物質、例えば溶解剤、乳化剤またの他の助剤、を用いて液剤、懸濁剤、または乳剤にする。式(I)または(II)の化合物を凍結乾燥することもでき、そして得られた凍結乾燥物質は、例えば、注射または注入調剤の製造用に使用される。適する溶媒は、例えば、水、生理食塩水溶液またはアルコール類、例えば、エタノール、プロパノール、グリセロール、並びに糖溶液、例えばグルコースまたはマンニトール溶液、或いは上記の種々の溶媒の混合物である。
【0028】
エーロゾル剤または噴霧剤の形態での投与に適する製薬学的調剤は、例えば、式(IもしくはII)の化合物またはそれらの生理学的に許容可能な塩類の製薬学的に許容可能な溶媒、例えばエタノールもしくは水、またはそのような溶媒の混合物中の液剤、懸濁剤または乳剤である。必要なら、調剤は他の製薬学的助剤、例えば界面活性剤、乳化剤および安定剤、並びに放射剤、もさらに含有しうる。そのような調剤は普通は活性化合物を約0.1〜50重量%、特に約0.3〜3重量%の濃度で含有する。
【0029】
それらの好ましい薬理学的性質、特に多剤耐性HIVプロテアーゼ酵素に対するそれらの活性のために、本発明の化合物はHIVが感染した個体の処置においてそしてこれらの個体の予防のために有用である。
【0030】
個体が高いウイルス伝達危険性がある既感染個体と接触した時に起きうるような高いウイルスに対する露呈の危険性に個体がさらされる場合には、予防処置が有用でありうる。一例として、該化合物の予防的投与は健康な看護作業者がHIV−既感染個体からの血液に露呈された状況において、または個体がHIVに潜在的に露呈する高い危険性のある作業に携わる他の状況において有利であろう。
【0031】
一般的に、本発明の化合物はウイルスの存在がプロテアーゼ酵素により介在されるかまたはそれに依存するウイルスに感染した温血動物の処置において有用でありうる。本発明の化合物で予防または処置できる症状は広範囲のHIV感染症である徴候性および非徴候性の両者のエイズ、ARC(エイズ関連合併症)並びにHIVへの実際のまたは潜在的な露呈を包含するが、それらに限定されない。本発明の化合物は、例えば輸血、体液の交換、咬み傷、偶発的な針刺し傷、または手術中の患者血液に対する露呈によるHIVへの疑わしい露呈後のHIVによる感染症の処置において有用である。予防の用語はHIV感染症の予防およびエイズへのHIV感染症の進行の予防を包含する。
【0032】
本発明の化合物またはそれらのいずれかの誘導体は従って上記の症状に対する薬品として使用できる。薬品としての該使用すなわち処置方法は、HIVおよび他の病原性レトロウイルス、特にHIV−1に関連する症状を防除するのに有効な量でのHIV−感染患者に対する全身的投与を含んでなる。従って、本発明の化合物はHIVおよび他の病原性レトロウイルスに関連する症状を処置するために有用な薬品、特に多剤耐性HIVウイルスに感染した患者を処置するために有用な薬品の製造において使用することができる。
【0033】
抗レトロウイルス化合物と本発明の化合物との組み合わせを薬品として使用することができる。それ故、本発明はレトロウイルス感染症の処置における、特に多剤耐性レトロウイルスによる感染症の処置における、同時、別個または順次使用のための組み合わせ調剤としての、(a)(式(IまたはII)に従う)本発明の化合物、および(b)他の抗レトロウイルス化合物を含有する生成物または組成物にも関する。それ故、HIV感染症、またはHIV感染症に関係する感染症および疾病、例えば後天性免疫不全症候群(エイズ)もしくはエイズ関連合併症(ARC)を防除または処置するために、本発明の化合物を例えば結合阻害剤、融合阻害剤、共−受容体結合阻害剤、RT阻害剤、ヌクレオシドRTI類、ヌクレオチドRTI類、NNRTI類、RNアーゼH阻害剤、TAT阻害剤、インテグラーゼ阻害剤、プロテアーゼ阻害剤、またはグリコシル化阻害剤と組み合わせて同時投与することができる。
【0034】
本発明の化合物は個体への薬品適用後に代謝の調節剤と組み合わせて投与することもできる。これらの調節剤は、シトクロム類、例えばシトクロムP450における代謝を妨害
する化合物を包含する。或る種の調節剤はシトクロムP450を阻害する。シトクロムP450の数種のイソ酵素存在が知られており、その中の1種はシトクロムP450 3A4である。リトナビル(Ritonavir)がシトクロムP450を介する代謝の調節剤の一例である。シトクロムP450における効果を有する興味ある化合物は、チアゾリル、イミダゾリルまたはピリジニル部分を含有する化合物を包含する。異なる調剤中でのそのような組み合わせ療法は同時、別個または順次に投与できる。或いは、そのような組み合わせを単一調剤として投与することもでき、それにより活性成分は調剤から同時または別個に放出される。
【0035】
そのような調節剤は本発明の化合物と同一もしくは相異なる比で投与することができる。好ましくは、そのような調節剤対本発明の化合物の重量比(調節剤:本発明の化合物)は1:1もしくはそれ以下であり、より好ましくは比は1:3もしくはそれ以下であり、適切には比は1:10もしくはそれ以下であり、より適切には比は1:30もしくはそれ以下である。
【0036】
組み合わせは相乗効果を与えることができ、それによりウイルス感染性およびそれに関係する徴候を予防するか、実質的に低下させるか、または完全に排除することができる。式(IまたはII)の化合物とシトクロムP450阻害剤としての他のHIVプロテアーゼ阻害剤、またはいわゆるブースター、例えばリトナビルとの組み合わせは、相乗的に、付加方法でまたは拮抗作用的に作用しうる。これは、2種のHIV−プロテアーゼ阻害剤の種々の比の効力を測定する実験設定で評価することができる。結果はChouおよびTalalay(Adv.Enzyme Regul.22:27−55,1984)により記載された方法に従いイソボログラムグラフにプロットすることができる。
【0037】
2種の阻害剤間の相乗性は、望ましくない副作用における増加を伴わないさらに有効な組み合わせ療法を意味するであろう。
【0038】
本発明の一部は、人間におけるHIV感染症またはエイズの抑制または処置のための薬品の製造における、化合物IまたはII、好ましくは化合物IIと組み合わせてのリトナビルまたはその製薬学的に許容可能な塩類の使用であり、それはシトクロムP450により代謝され、ここでリトナビルの量は単独投与時の各化合物IまたはIIの薬物動力学と比べて患者において該化合物IまたはIIの薬物動力学を改良するのに充分なものである。
【0039】
本発明の別の面は、有効な薬剤がHIVプロテアーゼ、HIV成長、または両者を阻害する能力を測定するための試験または検定における標準または試薬としての使用に有効な量で式(IまたはII)の化合物を含んでなるキットまたは容器に関する。本発明のこの面は、製薬学的研究プログラムにおけるその用途を見出しうる。
【0040】
本発明の化合物は、例えばHIVの如き耐性進行性疾病の臨床管理における、表現型耐性監視検定、例えば既知の組み換えウイルス検定において使用することができる。特に有用な耐性監視システムは、AntivirogramTMとして知られる組み換えウイルス検定である。AntivirogramTMは、本発明の化合物に対する感受性、特にウイルス感受性を測定しうる高度に自動化された高い処理量の第二世代の組み換えウイルス検定である。(Hertogs K,de Bethune MP,Miller V
et al.Antimicrob Agents Chemother,1998;42(2):269−276)
【0041】
用語「置換された」が式(IまたはII)の化合物の定義で使用される時には、常に、指示された原子の通常の原子価を越えないこと並びに置換が化学的に安定な化合物、すなわち反応混合物から有用な純度までの単離および治療剤への調合を切り抜けるのに充分に強固な化合物をもたらすことを条件として、「置換された」を用いる表現で示される原子上の1個もしくはそれ以上の水素が指定された群からの選択肢で置換されていることを意
味する。
【0042】
ここで使用される際には、基または基の一部としての用語「ハロ」または「ハロゲン」は、フルオロ、クロロ、ブロモまたはヨードを総称する。
【0043】
基または基の一部としての用語「C1−6アルキル」は、炭素数1〜6の直鎖状および分枝鎖状の飽和炭化水素基、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、2−メチル−プロピル、ペンチル、ヘキシル、2−メチルブチル、3−メチルペンチルなど、を定義する。
【0044】
基または基の一部としての用語「C3−7シクロアルキル」は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルを総称する。
【0045】
ここで使用される際には、用語(=O)はそれが結合された炭素原子と共にカルボニル部分を形成する。
【0046】
変数(例えばハロゲンまたはC1−4アルキル)がいずれかの成分中で1回より多く生ずる時には、各定義は独立している。
【0047】
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上でC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アセチル、オキソ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノアルキル、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリールおよび3〜14個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義される。
【0048】
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上で場合によりC3−7シクロアルキルにより置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリール、Hetおよび3〜12個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義される。
【0049】
用語「アリール」は、簡単な芳香族環から誘導されるいずれかの官能基または置換基をさす。未置換アリール基およびアリール基のサブセット(並びに任意に置換された基)を記述するためには、より特異的な用語、例えばフェニルがあるが、「アリール」が略記法または一般化のために使用される。
【0050】
治療用途のためには、式(I)または(II)の化合物の塩は対イオンが製薬学的にま
たは生理学的に許容可能であるものである。しかしながら、製薬学的に許容不能な対イオンを有する塩も、例えば、式(I)または(II)の化合物の製薬学的に許容可能な化合物の製造または精製における用途を見出しうる。製薬学的に許容可能であるかまたはないかにかかわらずに、全ての塩が本発明の範囲内に包含される。
【0051】
本発明で使用される化合物が生成しうる製薬学的に許容可能なまたは生理学的に耐えうる付加塩形態は、適当な酸、例えば、無機酸、例えばハロゲン化水素酸、例えば塩酸もしくは臭化水素酸、硫酸、半硫酸、硝酸、燐酸および同様な酸、または有機酸、例えば、酢酸、アスパラギン酸、ドデシル硫酸、ヘプタン酸、ヘキサン酸、ニコチン酸、プロパン酸、ヒドロキシ酢酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、マロン酸、琥珀酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メタン−スルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、シクラミン酸、サリチル酸、p−アミノサリチル酸、パモ酸および同様な酸を用いて簡便に製造することができる。
【0052】
逆に、該酸付加塩形態を適当な塩基を用いる処理により遊離塩基形態に転化することができる。
【0053】
酸性プロトンを含有する式(I)または(II)の化合物を適当な有機および無機塩基を用いる処理によりそれらの無毒の金属またはアミン付加塩形態に転化することもできる。適当な塩基塩形態は、例えば、アンモニウム塩、アルカリおよびアルカリ土類金属塩、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム塩など、有機塩基との塩、例えばベンザチン、N−メチル、−D−グルカミン塩、ヒドラバミン酸、並びにアミノ酸、例えば、アルギニン、リシンなどとの塩を含んでなる。
【0054】
逆に、該塩基付加塩形態を適当な酸を用いる処理により遊離酸形態に転化することができる。
【0055】
用語「塩」は、本発明の化合物が生成しうる水和物および溶媒付加形態も含んでなる。そのような形態の例は例えば水和物、アルコレート類などである。
【0056】
本発明で使用される本化合物は、1個もしくは数個の窒素原子がいわゆるN−オキシドに酸化されている式(I)または(II)のそれらのN−オキシド形態でも存在しうる。該N−オキシドを得るためには、3価窒素をそのN−オキシド形態に転化するための当該技術で既知の工程に従い式(IまたはII)の化合物を対応するN−オキシド形態に転化することができる。該N−酸化反応は一般的には、式(IまたはII)の出発物質を適当な有機または無機過酸化物と反応させることにより行うことができる。適する無機過酸化物は、例えば、過酸化水素、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属過酸化物、例えば過酸化ナトリウム、過酸化カリウムを含んでなり、適する有機過酸化物はペルオキシ酸、例えば、ベンゼンカルボペルオキソ酸またはハロ置換されたベンゼンカルボペルオキソ酸、例えば3−クロロ−ベンゼンカルボペルオキソ酸、ペルオキソアルカン酸、例えばペルオキソ酢酸、ヒドロ過酸化アルキル、例えばヒドロ過酸化tert−ブチルを含んでなりうる。適する溶媒は、例えば、水、低級アルカノール類、例えばエタノールなど、炭化水素類、例えばトルエン、ケトン類、例えば2−ブタノン、ハロゲン化された炭化水素類、例えばジクロロメタン、およびそのような溶媒の混合物である。
【0057】
用語「式(I)または(II)を有する1種もしくは複数の化合物」、またはいずれかの同様な用語、例えば「1種もしくは複数の本発明の化合物」などは、式(I)または(II)の化合物が生成しうるいずれかのプロドラッグ類も含んでなることを意味する。用語「プロドラッグ」は、ここで使用される際には、誘導体の生じたインビボ生転換生成物が式(I)または(II)の化合物において定義されている通りの活性薬品となるいずれかの薬理学的に許容可能な誘導体、例えばエステル類、アミド類およびホスフェート類を含んでなる。プロドラッグを一般的に記述しているGoodmanおよびGilmanによる参考文献(The Pharmacological Basis of Therapeutics,8th ed,McGraw−Hill,Int.Ed.1992,“Biotransformation of Drugs”,p13−15)は引用することにより本発明の内容となる。プロドラッグは好ましくは優れた水溶解度、増加したバイオアベイラビリティーを有しそしてインビボで容易に代謝されて活性阻害剤になる。本発明の化合物のプロドラッグは、改変が通例の増殖またはインビボのいずれかにより親化合物に分離されるような方法で化合物中に存在する官能基を改変することにより製造することができる。
【0058】
インビボで加水分解可能でありそしてヒドロキシまたはカルボキシル基を有する式(I)または(II)の化合物から誘導される製薬学的に許容可能なエステルプロドラッグ類が好ましい。インビボ加水分解可能なエステルは、人間または動物の体内で加水分解されて親酸またはアルコールを製造するエステルである。カルボキシ用に適する製薬学的に許容可能なエステルは、本発明の化合物中でいずれかのカルボキシ基のところで生成されうる、C1−6アルコキシメチルエステル、例えばメトキシメチル、C1−6アルカノイルオキシメチルエステル、例えばピバロイルオキシメチル、フタリジルエステル、C3−8シクロアルコキシカルボニルオキシC1−6アルキルエステル、例えば1−シクロヘキシルカルボニル−オキシエチル、1,3−ジオキソレン−2−オニルメチルエステル、例えば5−メチル−1,3−ジオキソレン−2−オニルメチル、並びにC1−6アルコキシカルボニルオキシエチルエステル、例えば1−メトキシカルボニル−オキシエチルを包含する。
【0059】
ヒドロキシ基を含有する式(I)または(II)の化合物のインビボ加水分解可能なエステルは、エステルのインビボ加水分解の結果として分解して親ヒドロキシ基を与える、無機エステル、例えば燐酸エステル、およびα−アシルオキシアルキルエーテル並びに関連化合物を包含する。α−アシルオキシアルキルエーテルの例はアセトキシメトキシおよび2,2−ジメチルプロピオニルオキシ−メトキシを包含する。ヒドロキシに関してインビボ加水分解可能なエステルを生成する基の選択肢はアルカノイル、ベンゾイル、フェニルアセチル並びに置換されたベンゾイルおよびフェニルアセチル、(炭酸アルキルエステルを与えるための)アルコキシカルボニル、(カルバミン酸エステルを与えるための)ジアルキルカルバモイルおよびN−(ジアルキルアミノエチル)−N−アルキルカルバモイル、ジアルキルアミノアセチル並びにカルボキシアセチルを包含する。ベンゾイル上の置換基の例は環窒素原子からメチレン基を介してベンゾイル環の3−または4−位置に結合されているモルホリノおよびピペラジノを包含する。アルカノイルエステルは例えばいずれかのC1−30アルカノイルエステル、特にC8−30アルカノイルエステル、そしてより特にC10−24アルカノイルエステル、さらに特にC16−20アルカノイルエステルであり、ここでアルキル部分は1個もしくはそれ以上の二重結合を有しうる。アルカノイルエステルの例はデカノン酸エステル、パルミチン酸エステルおよびステアリン酸エステルである。
【0060】
用語「式(I)または(II)を有する1種もしくは複数の化合物」、またはいずれかの同様な用語、例えば「1種もしくは複数の本発明の化合物」などは、薬品の投与でインビボで生成されるいずれかの代謝産物も含んでなることを意味する。本発明に従う代謝産物のいくつかの例は(a)式(I)または(II)の化合物がメチル基を含有する場合の、そのヒドロキシメチル誘導体、(b)式(I)または(II)の化合物がアルコキシ基を含有する場合の、そのヒドロキシ誘導体、(c)式(I)または(II)の化合物が第三級アミノ基を含有する場合の、その第二級アミノ誘導体、(d)式(I)または(II)の化合物が第二級アミノ基を含有する場合の、その第一級誘導体、(e)式(I)または(II)の化合物がフェニル部分を有する場合の、そのフェノール誘導体、並びに(f)式(I)または(II)の化合物がアミド基を含有する場合の、そのカルボン酸誘導体を包含するが、それらに限定されない。
【0061】
本発明はまた、本発明の化合物中に存在する原子のいずれかの同位体を包含することも意図する。例えば、水素の同位体はトリチウムおよびジューテリウムを包含しそして炭素の同位体はC−13およびC−14を包含する。
【0062】
本発明で使用される本化合物はそれらの互変異性体形態でも存在しうる。以上の式で明白には示されていないが、そのような形態は本発明の範囲内に包含されることが意図される。
【0063】
本発明で使用される本化合物は、同じ結合順序により結合される同じ原子より構成されるが異なる三次元構造を有する相互変換可能でない全ての可能な化合物を定義するそれらの立体化学的異性体形態でも存在しうる。その他の方法で記載または指示されない限り、化合物の化学的表示は該化合物が有しうる全ての可能な立体化学的異性体形態の混合物を包括する。該混合物は該化合物の基本分子構造の全てのジアステレオマーおよび/またはエナンチオマーを含有しうる。いずれかのラセミ混合物またはラセミ体を包含する純粋形態または互いの混合物状のいずれかの本発明で使用される化合物の全ての立体化学的異性体形態が本発明の範囲内に包括されることが意図される。
【0064】
ここで挙げられた化合物および中間体の純粋な立体異性体形態は、該化合物または中間体の同じ基本分子構造の他のエナンチオマーまたはジアステレオマー形態を実質的に含まない異性体として定義される。特に、用語「立体異性体的に純粋な」は、少なくとも80%の立体異性体過剰率(すなわち最大90%の1種の異性体および最大10%の他の可能な異性体)から100%までの立体異性体過剰率(すなわち100%の1種の異性体および他の可能な異性体なし)を有する化合物または中間体、より特に90%から100%までの立体異性体過剰率を有する、さらにより特に94%から100%までの立体異性体過剰率を有する、そして最も特に97%から100%までの立体異性体過剰率を有する化合物または中間体に関する。用語「エナンチオマー的に純粋な」および「ジアステレオマー的に純粋な」も同様な方法で理解すべきであるが、その場合には当該混合物のエナンチオマー過剰率またはジアステレオマー過剰率に関する。
【0065】
本発明で使用される化合物および中間体の純粋な立体異性体形態は当該技術で既知の工程の適用により得られうる。例えば、エナンチオマーは光学的に活性な酸または塩基を用いるそれらのジアステレオマー塩の選択的結晶化により互いに分離することができる。それらの例は酒石酸、ジベンゾイル酒石酸、ジトルオイル酒石酸および樟脳スルホン酸である。或いは、エナンチオマーをキラル静止相を用いるクロマトグラフィー技術により分離することもできる。該純粋な立体化学的異性体形態は、反応が立体特異的に起きる限り、適当な出発物質の対応する純粋な立体化学的異性体形態から誘導することもできる。好ましくは、特異的な立体異性体が所望される場合には、該化合物は立体特異的な製造方法により合成されるであろう。これらの方法は有利にはエナンチオマー的に純粋な出発物質を使用するであろう。
【0066】
式(IまたはII)のジアステレオマー性ラセミ体は普遍的な方法により別個に得られうる。有利に使用できる適当な物理的分離方法は例えば選択的結晶化およびクロマトグラフィー、例えばカラムクロマトグラフィーである。
【0067】
式(I)または(II)の化合物が5個の非対称的中心を含有しておりそしてそのために異なる立体異性体形態で存在しうることは当業者に明白である。2個の非対称的中心は
式(I)に関する以下の式では星印()で示される。
【0068】
【化3】

【0069】
式(I)の化合物中に存在しうるそれぞれの非対称的中心の絶対的な立体配置は立体化学記号RおよびSにより示すことができ、このRおよびS記号はPure Appl.Chem.1976,45,11−30に記載された規則に相当する。
【0070】
同じことが式(II)に適用可能である。
【実施例】
【0071】
実施例部分
一般的な実験工程
NMRスペクトルは、Hに関して400MHzにおいて溶媒としてCDClを用いて操作されるブルーカー・アバンス(Bruker Avance)400分光計上で記録された。全ての場合にテトラメチルシラン(TMS)が内部標準として使用された。化学シフトはppmでそしてJ値はHzで示される。多項度は以下の略語を用いて示される:二重項に関してはd、三重項に関してはt、多重項に関してはm、など。簡略化するために、化合物の各サブセットの1つの代表例を完全に同定すること(NMRが包含される)が採用された。低−解像質量スペクトル(LRMS)はイオントラップ(サーモフィニガン・LCQ・デカ(ThermoFinnigan LCQ Deca))上でまたは電子噴霧イオン化(ESI)を用いる正方式での飛行時間(time of flight)(ウォーターズ・LCT(Waters LCT))質量分光計上で行われた。全ての試薬は商業的な出所(アクロス(Acros)、アルドリッヒ(Aldrich)、フルオロヘム(Fluorochem)、...)から購入されそして受け取ったままの状態で使用された。カラムクロマトグラフィーはシリカゲル60Å、60−200μm(ROCC)上で行われた。薄層クロマトグラフィーはシリカゲル60F254プレート(メルク(Merck))上で行われた。分析HPLCはウォーターズ996光ダイオード列−検知器(システム1およびシステム2)が装備されたウォーターズ・アライアンス(Waters Alliance)2795(ポンプ+自動サンプラー)システム上で行われた。最終生成物の純度を検査するために、2つのクロマトグラフィーシステムが用いられた。システム1:カラム:ウォーターズ・エクステラ(Waters Xterra)MS C18、(3.5μm、4.60mm×100mm)、移動相A:HO中20mMのCHCOONHおよび5%のCHCN、移動相B:CHCN。分析は55℃において1.5mL/分の流速を用いて以下の勾配を適用して行われた:0分:95%A、5.4分:5%A、7.2分:5%A。全ての場合、10μlの1mM溶液を注入した。2つの実験間の平衡時間は1.8分間であった。溶離されたピークは単一波長(λmax)において検知された。システム2:カラム:ウォーターズ・サンファイアー(Waters SunFire)C18、(3.5μm、4.60mm×100mm)、移動相A:HO中10mMのHCOONHおよび0.1%のHCOOH、移動相B:CHCN。分析は55℃において1.5mL/分の流速を用いて以下の勾配を適用して行われた:0分:95%A、5.4分:5%A、7.2分:5%A。溶離されたピークは単一波長(λmax)において検知された。化合物の各サブセットの1つの代表例に関する保持時間が分で示されそして報告される。1つの代表例(A種では化合物7)の合成が完全に記載されている。他の化合物(それぞれ、AおよびB、CおよびD種)はすでに記載されたものと同じ方法で合成された。
【0072】
【化4】

【0073】
【化5】

【0074】
実施例1
スキーム2に関する化学反応の記述
(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3)
この化合物はアセトニトリル(150mL)中に溶解させた市販のピペリジン−4−イル−カルバミン酸tert−ブチルエステル(2)(5g、25ミリモル、1当量)から、引き続きヨード−シクロペンタン(9.79g、50ミリモル、2当量)およびKCO(3.45g、25ミリモル、1当量)を添加して、合成された。溶液を室温において48時間にわたり撹拌した。反応の不完全性のために、ヨードシクロペンタン(1.70g、8.69ミリモル、0.35当量)およびKCO(1g、7.25ミリモル、0.29当量)を溶液に加えた。溶液を室温において数時間にわたり撹拌した。溶液をジカライト(dicalite)の床の上で濾過しそして濾液を減圧下で蒸発させて3(6.70g、25ミリモル、定量的)を得た。LRMS(ES+):m/z269。
【0075】
塩化1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イル−アンモニウム(4)
(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル(3)(6.70g、25ミリモル、1当量)をメタノール(30mL)中に溶解させ、引き続きイソプロパノール中6N HCl(10mL)を添加した。溶液を室温において24時間にわたり撹拌した。反応の不完全性のために、イソプロパノール中6N HCl(10mL)およびメタノール(50mL)を溶液に加えた。溶液を室温においてさらに24時間にわたり撹拌した。LC−MSは反応の不完全性を示した。テトラヒドロフラン(20mL)、イソプロパノール中6N HCl(10mL)およびメタノール(200mL)を溶液に加えた。溶液を室温において5時間にわたり撹拌し、引き続きイソプロパノール中6N HCl(10mL)を加えた。溶液を室温において72時間にわたり撹拌した。溶液を減圧下で蒸発させて4(4.20g、25ミリモル、定量的)を得た。LRMS(ES+):m/z169。
【0076】
実施例2
スキーム1に関する化学反応の記述
化合物(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(7)(A種)の製造
【0077】
【化6】

【0078】
{1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−[イソブチル−(2−メタンスルホニル−ベンゾチアゾール−6−スルホニル)−アミノ]−プロピル}−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(1)1,2(10g、15ミリモル、1当量)、塩化1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イル−アンモニウム(4)(6.02g、25ミリモル、1.67当量)およびトリエチルアミン(6.10g、60ミリモル、4当量)をテトラヒドロフラン(200mL)中に溶解させ、引き続き水中10%NaCO(50mL)を加えた。溶液を室温において48時間にわたり撹拌した。有機層を分離しそして飽和NaHCO溶液で洗浄した。有機層をMgSO上で乾燥し、濾過しそして減圧下で蒸発させた。粗製生成物をカラムクロマトグラフィーによりメタノール(7N)中のジクロロメタン:アンモニア(100〜95:5)を用いる溶離で精製して標記化合物(4.45g、15ミリモル、39%)を与えた。
【0079】
LRMS(ES+):m/z756[M+H];HPLC(システム1)(290nm)t4.16min、97.11%;H−NMR(CDCl)0.87(d、3H、J=6.48、CH)、0.92(d、3H、J=6.50、CH)、1.33−1.51(m、4H、CH(2x)(シクロペンチル))、1.51−1.77(m、6H、CH(2x)(ピペリジン)およびCH、H4)、1.77−1.96(m、5H、CH(2x)(シクロペンチル)およびCH(イソブチル))、2.09−2.28(m、4H、CH(2x)(ピペリジン))、2.43−2.59(m、1H、CH(シクロペンチル))、2.72−2.85(m、1H、OH)、2.85−2.92(m、1H、CH、H3a)、2.92−3.12(m、5H、CH(ピペリジン)およびCH−NおよびCH(イソブチル)、3.20(dd、2H、J=8.63およびJ=15.16、CCHのCH)、3.58−3.79(m、3H、CH、H5およびCH、H2)、3.79−3.91(m、3H、CH、H2およびCH−NHおよびCH−OH)、4.90−5.10(m、2H、CH、H3およびNH)、5.42−5.59(m、1H、NH)、5.62(d、1H、J=5.04、CH、H6a)、7.12−7.32(m、5H、C)、7.52(d、1H、J=8.54、CH(ベンズチアゾール))、7.67(dd、1H、J=0.99およびJ=8.47、CH(ベンズチアゾール))、7.95−8.02(brs、1H、CH(ベンズチアゾール))。
Surleraux,D.L.N.G.et al.Broad spectrum
2−(substituted−amino)−benzothiazolesulfonamide HIV protease inhibitors/ PCT Int.Apl.2002,WO2002083657.
Surleraux,D.L.N.G.et al.Design of HIV−1 Protease Inhibitors Active on Multidrug−Resistant Virus.;J.Med.Chem.2005,48,1965−1973.
【0080】
化合物(1−ベンジル−3−{[2−(1−ベンジル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(11)(B種)の製造
【0081】
【化7】

【0082】
LRMS(ES+):m/z778[M+H];HPLC(システム1)(296nm)t4.92min、95.51%;HPLC(システム2)(296nm)t3.65min、95.41%;H−NMR(CDCl)δ0.90(d、3H、J=6.52、CH)、0.97(d、3H、J=6.55、CH)、1.55−1.71(m、6H、CH(2x)(ピペリジン)およびCH、H4)、1.71−1.99(m、1H、CH(イソブチル))、2.09−2.19(m、2H、CH(ピペリジン))、2.19−2.35(m、2H、CH(ピペリジン))、2.70−2.93(m、3H、CH(ピペリジン)およびCH、H3aおよびOH)、2.93−3.12(m、4H、CH−NおよびCH(イソブチル))、3.12−3.29(m、2H、CCHのCH)、3.58(s、2H、CCH)、3.61−3.81(m、3H、CH、H5およびCH、H2)、3.81−3.92(m、3H、CH、H2およびCH−NHおよびCH−OH)、4.91−5.11(m、2H、CH、H3およびNH)、5.49−5.61(m、1H、NH)、5.62(d、1H、J=5.15、CH、H6a)、7.08−7.41(m、10H、C)、7.55(d、1H、J=8.55、CH(ベンズチアゾール))、7.67(dd、1H、J=1.63およびJ=8.56、CH(ベンズチアゾール))、7.92−8.10(m、1H、CH(ベンズチアゾール))。
【0083】
化合物[1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−(イソブチル−{2−[1−(2−メトキシ−エチル)−ピロリジン−3−イルアミノ]−ベンゾチアゾール−6−スルホニル}−アミノ)−プロピル]−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(17)(C種)の製造
【0084】
【化8】

【0085】
LRMS(ES+):m/z732[M+H];HPLC(システム1)(286nm)t4.06min、89.02%;HPLC(システム2)(286nm)t3.42min、87.19%;H−NMR(CDCl)δ0.89(d、3H、J=6.49、CH)、0.95(d、3H、J=6.56、CH)、1.55−1.72(m、2H、CH、H4)、1.75−2.03(m、3H、CH(イソブチル)およびCH(ピロリジン))、2.31−2.50(m、6H、CH(2x)(ピロリジン)およびCH)、2.75−2.87(m、1H、OH)、2.87−3.12(m、8H、CH−NおよびCH(イソブチル)およびCH、H3aおよびCH(ピロリジン)およびCH)、3.12−3.27(m、2H、CCHのCH)、3.38(s、3H、CH)、3.60−3.75(m、3H、CH、H5およびCH、H2)、3.81−4.05(m、3H、CH、H2およびCH−NHおよびCH−OH)、4.92−5.08(m、2H、CH、H3およびNH)、5.62(d、1H、J=5.15、CH、H6a)、6.30−6.42(m、1H、NH)、7.12−7.40(m、5H、C)、7.57(d、1H、J=8.54、CH(ベンズチアゾール))、7.68(dd、1H、J=1.96およびJ=6.61、CH(ベンズチアゾール))、8.00(d、1H、J=1.57、CH(ベンズチアゾール))。
【0086】
化合物(1−ベンジル−2−ヒドロキシ−3−{イソブチル−[2−(1−ピリジン−3−イルメチル−ピロリジン−3−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−アミノ}−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステル(21)(D種)の製造
【0087】
【化9】

【0088】
LRMS(ES+):m/z765[M+H];HPLC(システム1)(286nm)t4.28min、95.18%;HPLC(システム2)(286nm)t3.40min、94.56%;H−NMR(CDCl)δ0.88(d、3H、J=6.34、CH)、0.90(d、3H、J=6.38、CH)、1.50−1.65(m、2H、CH、H4)、1.65−1.98(m、3H、CH(イソブチル)およびCH(ピロリジン))、2.20−2.52(m、4H、CH(2x)(ピロリジン))、2.75−3.28(m、11H、CH、H3aおよびOHおよびCH−NおよびCH(イソブチル)およびCH(ピロリジン)およびCCHのCHおよびCH)、3.55−3.75(m、3H、CH、H5およびCH、H2)、3.75−4.05(m、3H、CH、H2およびCH−NHおよびCH−OH)、4.90−5.10(m、2H、CH、H3およびNH)、5.65(d、1H、J=4.50、CH、H6a)、6.18−6.49(m、1H、NH)、7.12−7.40(m、6H、CおよびCH(ピリジン))、7.50−7.60(m、1H、CH(ベンズチアゾール))、7.60−7.75(m、2H、CH(ベンズチアゾール)およびCH(ピリジン))、7.91−8.08(m、1H、CH(ベンズチアゾール))、8.40−8.65(m、2H、CH(ピリジン))。
【0089】
製造された化合物(番号5−25)は以下の表1に記述されそしてそれぞれA、B、CおよびD種に分類される。
【0090】
【表1】

【0091】
【表2】

【0092】
【表3】

【0093】
実施例3
本発明の化合物のウイルス学的性質
化合物を抗−ウイルス活性に関してMT4−LTR−EGFP細胞を用いる細胞検定で試験した。検定は、これらの化合物が野生型研究室HIV菌株(WT IIIB−2−001)に対する有効な抗−HIV活性を示したことを示した。薬品耐性HIV菌株の発生増加のために、本化合物を数個の突然変異を有する臨床的に単離されたHIV菌株に対するそれらの効力に関して試験した。これらの突然変異はプロテアーゼ阻害剤に対する耐性と関係しておりそして例えばサキナビル(saquinavir)、リトナビル、ネルフィナビル(nelfinavir)、インジナビル(indinavir)およびアンプレナビル(amprenavir)の如き最近の市販薬品に対する種々の程度の表現型交差−耐性を示すウイルス類を生ずる。A、B、CおよびDとしてコードされるウイルス菌株は以下の表2に示されるような突然変異を含有する。
【0094】
【表4】

【0095】
細胞検定は以下の工程に従い行われた。
【0096】
HIV−または疑似−感染したMT4−LTR−EGFP細胞を3日間にわたり種々の濃度の本発明に従う化合物の存在下でインキュベートした。感染すると、ウイルス性tat蛋白質がGFPレポーターを活性化する。インキュベーション期間の終了時に、GFP信号が測定された。ウイルス対照試料(いずれかの阻害剤の不存在下)では、最大の蛍光信号が得られた。化合物の阻害活性はウイルス−感染細胞上で監視されそしてEC50として表示された。これらの値は、細胞の50%をウイルス感染から保護するために必要な化合物の量を表す(表3)。
【0097】
この表からわかるように、本化合物は広範囲の突然変異菌株を阻害する際に有効である。
【0098】
【表5】

【0099】
実施例4
バイオアベイラビリティー
腸吸収に関するカコ−2(Caco−2)透過性検定
種々の化合物の透過性をAugustijns他(Augustijns et al.(1998).Int.J.of Pharm,166,45−54)により記載されたようなカコ−2試験プロトコルに従い評価し、それにより32〜45の間の細胞継代数におけるカコ−2細胞を24−ウエル細胞培養プレート中で21〜25日間にわたり成長させた。経上皮電気抵抗(TEER)を測定することにより細胞単層の一体性を検査した。試験はpH7.4および100μMドナー化合物濃度において行われた。
【0100】
異なるpHレベルにおける水溶解度
熱力学的条件下での模造胃腸溶液中の平衡溶解度は胃および種々の腸部分の中の化合物の溶解度特徴に関する良好な測定値である。模造胃液(SGF)(ペプシンなし)を1.5のpHに設定した。模造腸液(SIF)(胆汁塩類なし)はpH5、PH6.5、pH7およびpH7.5に設定された。実験プロトコルは96−ウエル平底マイクロプレートを使用し、その中に1つのウエル当たり1mgの化合物(メタノール中の株溶液)を加えそして蒸発乾固した。化合物をSGFおよびSIFの中に再溶解させそして一晩にわたり水平振盪装置上で37℃においてインキュベートした。濾過後に、化合物濃度をUV−分光写真法により測定した。
【0101】
蛋白質結合分析:
アルブミン(HSA)またはアルファ−1酸糖蛋白質(AAG)のようなヒト血清蛋白質は多くの薬品を結合してこれらの化合物の有効性における可能な減少をもたらすことが知られている。本化合物がこの結合により悪影響を受けるかどうかを判定するために、化合物の抗−HIV活性をヒト血清の存在下で測定して、これらの蛋白質に対するプロテアーゼ阻害剤の結合の影響を評価した。
【0102】
ラットにおける経口アベイラビリティー
化合物をDMSO、PEG400または水中40%シクロデキストリン中の20mg/ml液剤または懸濁剤として調合した。ラット(雄および雌ラット)のほとんどの実験に関して、3つの投薬群を製造した:1/DMSO調剤を用いる20mg/kgの単一腹腔内(IP)服用量;2/PEG400調剤を用いる20mg/kgの単一経口服用量および3/PEG400調剤を用いる20mg/kgの単一経口服用量。血液を投薬後の定期的な時間間隔で採取しそして血清中の薬品濃度をLC−MS生分析方法を用いて測定した。血清濃度はng/mgで表示された。30分間(30’)におけるおよび3時間(180’)における血清濃度を、これらの値が吸収の程度(30’)および排泄の速度(180’)を反映するため、測定した。
【0103】
全身的バイオアベイラビリティーの増強
上記タイプの化合物(プロテアーゼ−阻害剤)に関しては、肝臓内の第一回代謝および血漿からの代謝クリアランスを減ずることにより代謝分解工程の阻害は全身的バイオアベイラビリティーを顕著に増加させうることが知られている。この「増強」原理は薬品の薬理学的作用に対する臨床設定において適用されうる。この原理はラットまたは犬の両方において、Cyt−P450代謝酵素を阻害する化合物の同時投与によっても、探査されうる。既知の遮断剤は例えばリトナビルおよびケトコナゾール(ketoconazole)である。ラットおよび犬におけるリトナビルの5mg/kgの単一経口服用量の投薬は全身的バイオアベイラビリティーの増加をもたらしうる。
【0104】
本発明に従う化合物の過敏性試験
犬における紅斑および浮腫の発生に関して試験するために試験が行われた。構造式(II)を有する化合物がビーグル犬に適当な調剤中で単一−服用量の服用量−拡大試験設定として経口投与された。高い全身的露呈を達成するために、いわゆるブースター化合物(リトナビル、RTV)を同時投与した。血液試料を投薬後の定期的時点で採取した。臨床徴候を少なくとも1日1回処置期間および追跡期間(少なくとも24時間)にわたり記録した。徴候は1−3の目盛りで等級付けされ、0は徴候の不存在であり、1は穏やかであり、2は中程度であり、3は重篤であり、4は非常に重篤である。紅斑および浮腫の発生に対して特別な注意が払われた。
【0105】
犬の血漿中の式(II)を有する化合物の濃度はLC−MS/MS方法を用いて測定された。生データを使用して標準的な薬物動力学的パラメーター(例えばAUC)を全身的露呈の測定値として計算した。犬における同様な単一−服用量実験で犬においてブースター(リトナビル)の不存在下で、式(II)を有する化合物に関する全身的露呈を式(III)を有する対比化合物の露呈と比べた。
【0106】
【化10】

【0107】
以下の表は、紅斑および浮腫に関する関係する観察による、これらの犬における式(II)を有する化合物および式(III)を有する化合物に対する比較血漿露呈を与える。
【0108】
驚くべきことに、構造式IIを有する化合物は犬における単一服用量実験において紅斑および/または浮腫を誘発しなかったが、式(III)を有する化合物はこれらの臨床的徴候を誘発した。
【0109】
【表6】

【0110】
化合物II特徴に対する化合物III紅斑/浮腫の影響の比較
化合物III:
ビーグル犬における単一服用量拡大/5日間繰り返し服用量毒性耐性試験において、化合物IIIで処置された2匹の雄のうちの1匹および2匹の雌のうちの1匹は80mg/kg/日の高い服用量レベルにおいて5日間の連続的処置日後に全般的な紅斑を示した。
【0111】
ビーグル犬における28日間の毒性試験では、化合物IIIで処置されたほとんどの動
物は全ての服用量レベルにおいて皮膚の軽微ないし重篤な赤色化(紅斑;全般的または斑点)を示した。40mg/kg/日の低い服用量レベルではこれらの徴候は試験の第三週に発生し始め、80および120mg/kg/日の服用量レベルではこれらの影響は試験の開始から存在した。ほとんどの場合に、紅斑には頭部、上唇、目および/または耳上の膨潤(浮腫)が伴われ、そしてある場合には頭部、鼻、頸部、腹、耳および/または足上の小節膨潤が伴われた。投薬直後に発生したこれらの所見は一時的であり、最大値は投薬後約1〜2時間の間にあり、その後に消えた。この応答には大きな個人間変動があり、服用量−応答関係はなかった。紅斑に関する原因を明確にするための機能試験は作用のヒスタミンに基づく機構を示さなかった。
【0112】
ビーグル犬における化合物IIIを用いる経口3ヶ月間毒性試験では、膨潤を伴う皮膚の軽微ないし重篤な紅斑は120mg/kg/日で投薬された動物の大部分で見られたが、これらの徴候は斑点状紅斑および/または小節膨潤として始まりそして拡散/全般的紅斑および膨潤に進行した。徴候は、耳、眼窩周囲領域および腹を包含する薄い/まばらな毛のある領域で主として見られた。所見は一時的であり、最大重篤度は投薬後約1時間でありそして投与後4時間で消えるかまたはより低い重篤度に低下した。5週間の処置後に、40mg/kg/日で投薬された4匹の雄のうちの1匹が全般的紅斑を示した。10mg/kg/日の服用量レベルではいずれの動物においても紅斑または浮腫は観察されなかった。
【0113】
化合物II:
単一服用量拡大/5日間繰り返し服用量犬毒性試験において、ビーグル犬を本発明に従う化合物IIで40〜144mg/kg/日の服用量レベルで処置した。試験中の動物のいずれにおいても浮腫または紅斑の形跡は観察されなかった。
【0114】
ビーグル犬における5、20および40mg/kg/日の服用量レベルでの化合物IIを用いるその後の1ヶ月間毒性試験では、試験期間中に紅斑または浮腫のいずれも見られなかった。
【0115】
そのため、1ヶ月までの期間における毒性研究において臨床観察により観察されたように、化合物IIIの経口投与はビーグル犬において紅斑および浮腫を生じた。これらの所見の発生は投薬期間および服用量レベルの増加につれて増加するようであるが、影響の重篤度においては大きな個体間変動があった。対照的に、化合物IIの経口投与はビーグル犬における1ヶ月までの期間における毒性研究では紅斑および/または浮腫を誘発しなかった。
【0116】
10または40mg/kgでの化合物IIの単一経口投与後の供給された雄ビーグル犬における化合物IIの薬物動力学およびリトナビルの増強効果
この試験は、10および40mg/kgでの単一経口投与後の雄ビーグル犬における化合物IIの血漿薬物動力学、および化合物IIのバイオアベイラビリティーに対する10mg/kgでの1日2回投薬されたリトナビルの増強効果を試験するために行われた。
【0117】
供給後のビーグル犬(7−11kg体重)に投薬した。化合物IIおよびリトナビルの両方を経口液剤の胃管栄養により与えた。全ての動物は最初に化合物IIだけを摂取し、そして1週間の排出後に、リトナビルおよび化合物IIの組み合わせを朝に摂取した。リトナビル投薬は夕方および翌朝に繰り返された。血漿を試料採取して化合物IIの投薬後32時間まで化合物IIおよびリトナビル濃度を測定した。
【0118】
試験の結果は、リトナビルが犬における化合物IIに関する有効な薬物動力学的増強剤であることを示す。化合物IIの合計血漿露呈(AUC)およびピーク血漿濃度(Cma
)の両方とも表4に詳細記述されているように10mg/kgのリトナビルの1日2回投薬との同時投与後に顕著に増加し、そして図1はリトナビルの同時投与ありおよびなしの化合物IIに関する平均血漿濃度時間プロットを表す。
【0119】
【表7】

【0120】
AUCは10−倍を超えて増加したが、Cmaxは4〜7−倍増加した。後者はリトナビルの存在下における化合物IIに関する改良された吸収および減じられた第一回影響を示す。AUCにおけるより高い増加は、主なリトナビル影響が化合物IIの排除速度の低下にあることを示す。
【0121】
フィルム−コーティング錠剤
錠剤芯の製造
100gの活性成分、すなわち式(I)の化合物、570gのラクトースおよび200gの澱粉の混合物を良く混合しそしてその後に5gのドデシル硫酸ナトリウムおよび10gのポリビニルピロリドンの約200mlの水中溶液を用いて湿らせる。湿潤粉末混合物をふるいにかけ、乾燥しそして再びふるいにかける。次に、100gの微結晶性セルロースおよび15gの水素化された植物油を加える。全体を良く混合しそして錠剤に圧縮して、各々が10mgの活性成分を含んでなる10,000個の錠剤を与える。
【0122】
コーティング
10gのメチルセルロースの75mlの変性エタノール中溶液に5gのエチルセルロースの150mlのジクロロメタン中溶液を加える。次に75mlのジクロロメタンおよび2.5mlの1,2,3−プロパントリオールを加える。10gのポリエチレングリコールを溶融しそして75mlのジクロロメタン中に溶解させる。後者の溶液を前者に加えそして次に2.5gのオクタデカン酸マグネシウム、5gのポリビニルピロリドンおよび30mlの濃色懸濁液を加えそして全体を均質化する。コーティング装置中で錠剤芯をこのようにして得られたコーティングでコーティングする。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1はリトナビルの同時投与ありおよびなしの化合物IIに関する平均血漿濃度時間プロットを表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
Rは場合により1つもしくはそれ以上の環員上でC1−6アルキル、C3−7シクロアルキル、C1−6アルキル−オキシ−C1−6アルキル、−C(=O)−C1−6アルキル−アミノ−C1−6アルキル、−C(=O)−C1−6アルキル−Het、−C(=O)−C1−6アルキル−Het、ベンジル、フェニル、またはHetにより置換されたC1−6アルキルにより置換されていてもよいピペリジンまたはピロリジン環であり、ここで
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上でC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、アセチル、オキソ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノアルキル、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリールおよび3〜14個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する飽和もしくは部分的不飽和の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義され、そしてここで
基または基の一部としてのHetは、窒素、酸素または硫黄から選択される1個もしくはそれ以上のヘテロ原子環員を含有しそして場合により1個もしくはそれ以上の窒素および/または炭素原子上で場合によりC3−7シクロアルキルにより置換されていてもよいC1−6アルキル、C1−6アルキルオキシ、アミノC1−6アルキル、ハロゲン、ヒドロキシ、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノ、ニトロ、シアノ、ハロC1−6アルキル、カルボキシル、C1−6アルコキシカルボニル、C3−7シクロアルキル、場合によりモノ−もしくはジ置換されていてもよいアミノカルボニル、メチルチオ、メチルスルホニル、アリール、Hetおよび3〜12個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の環または複素環により置換されていてもよい、好ましくは3〜14個の環員、より好ましくは5〜10個の環員そしてより好ましくは5〜6個の環員を有する芳香族の単環式、二環式もしくは三環式の複素環として定義される]
を有する化合物、その塩、立体異性体形態または立体異性体形態。
【請求項2】
Rが環内のN−原子上でC3−7シクロアルキルにより置換されたピペリジン環である請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
3−7シクロアルキルがC−シクロアルキルである請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
式(II)
【化2】

を有する請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
化学名(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−イルエステルを有する請求項4に記載の化合物。
【請求項6】
有効量の少なくとも1種の請求項1〜5のいずれか1項で特許請求された化合物および製薬学的に耐性のある賦形剤を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項7】
請求項6で定義された製薬学的組成物を製造する方法。
【請求項8】
薬品としての使用のための請求項1〜5のいずれか1項で特許請求された化合物。
【請求項9】
プロテアーゼ−阻害量の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物をそれを必要とする多剤耐性レトロウイルスに感染した哺乳動物に投与することを含んでなる該哺乳動物における多剤耐性レトロウイルスのプロテアーゼの阻害方法。
【請求項10】
有効量の少なくとも1種の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物を哺乳動物に投与することを含んでなる該哺乳動物における多剤耐性レトロウイルス感染に関連する感染症または疾病の処置または防除方法。
【請求項11】
レトロウイルスを有効量の少なくとも1種の請求項1〜5のいずれか1項に記載の化合物と接触させることを含んでなる多剤耐性レトロウイルス複製の阻害方法。
【請求項12】
哺乳動物における多剤耐性レトロウイルス感染に関連する感染症または疾病を処置または防除するための薬品の製造における請求項1〜5のいずれか1項で特許請求された化合物の使用。
【請求項13】
同時、別個または順次使用のための、少なくとも(a)請求項1〜5で特許請求された式(I)または(II)の化合物および、(b)第二の抗レトロウイルス剤を含んでなる組成物。
【請求項14】
第二剤がリトナビル(ritonavir)である請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
式IIの化合物が(1−ベンジル−3−{[2−(1−シクロペンチル−ピペリジン−4−イルアミノ)−ベンゾチアゾール−6−スルホニル]−イソブチル−アミノ}−2−ヒドロキシ−プロピル)−カルバミン酸ヘキサヒドロ−フロ[2,3−b]フラン−3−
イルエステルである請求項14に記載の組成物。

【図1】
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【公表番号】特表2009−541272(P2009−541272A)
【公表日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−515891(P2009−515891)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【国際出願番号】PCT/EP2007/056235
【国際公開番号】WO2007/147884
【国際公開日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(504347371)テイボテク・フアーマシユーチカルズ・リミテツド (94)
【Fターム(参考)】