説明

2つの接合相手を結合するための方法

本発明は、第1接合相手(1)と第2接合相手(2)とを結合するための方法に関する。第1接合相手(1)と第2接合相手(2)とを用意したのち、塗膜(11)が第1接合相手(1)に被着される。次に、第1接合相手(1)と第2接合相手(2)とは、一緒に、含浸樹脂(8)で含浸される。塗膜(11)は、エポキシ樹脂混合物、硬化促進剤、シラン系エポキシ官能性接着剤及び溶剤に基づく塗料組成物から製造される。エポキシ樹脂混合物は、エポキシ価最大2当量/kg以下の少なくとも1つの固体エポキシ樹脂10重量%〜94重量%とエポキシ価>4当量/kgの少なくとも1つの固体多官能エポキシ樹脂1重量%〜50重量%と融点>30℃のフェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラック5重量%〜40重量%とを含有してなる。含浸後に含浸樹脂(8)の粘度が下げられ、こうして第1接合相手(1)と第2接合相手(2)とが互いに結合される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つ以上の接合相手を結合するための方法に関する。接合相手とは、例えば、支持体、例えば製造すべきロータの支持体、のポケットに嵌挿される永久磁石又は磁性体とすることができる。このようなロータは、なかんずく、永久磁石同期機(PMSM)の回転子として使用される。
【背景技術】
【0002】
2つ以上の接合相手のこのような結合部は、しばしば、大きな機械的及び/又は熱的負荷に曝される。このようなロータは、しばしば、例えば5000rpm超の、高い回転数で作動される。これに伴って、結合部に加わる遠心力が相応に高くなる。
【0003】
耐久性のある結合部を製造するために、通常、実質的に薄板を積み重ねた積層薄板から成る支持体のポケットに液状接着剤、例えば一液型又は二液型樹脂、が過剰量注入される。引き続き磁石が液状接着剤に押し込まれ、磁石はポケット内で接着剤によって包み込まれる。
【0004】
しかし、この技術は一連の欠点を有する。一方で、接着剤注入のために各ポケットに個々に注入針でアクセスしなければならない。更に、ポケットの寸法公差の故に、この注入は細心の注意を必要とする。ポケットに注入される接着剤が少なすぎると、磁石が完全には包み込まれず、積層薄板と磁石との間に隙間が生じることがあり、これらの隙間内で腐食を生じることがある。他方で、過度に多くの接着剤を使用すると、過剰量の接着剤がポケットと支持体との間の隙間から溢れ、仕上がったロータのポケット開口部の領域に局所的に接着剤が集積することのないように、手間をかけて取り除かれねばならない。
【0005】
他の問題として、接着剤が硬化時に強く収縮して応力が発生することがあり、高回転数のときに、接着結合部がひび割れる。
【0006】
このような支持体内で磁石を固定するための選択的技術として、支持体の空のポケットに磁石を装着し、引き続きポケットに含浸樹脂を詰めることが知られている。しかし、市販の含浸樹脂は高温で硬化させねばならず、そのため、既に固化してはいるが未だ硬化していない含浸樹脂が再び液化し、一部では再び支持体から流れ出て塗り垂れを形成し、これらの塗り垂れを研削除去しなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、2つ以上の接合相手の間に耐久性のある強固な結合部を製造するための、簡単な方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
これらの課題は、請求項1に記載した方法によって解決される。本発明の諸構成及び諸態様は従属請求項の対象である。
【0009】
第1接合相手を第2接合相手と結合するためのこの方法では、先ず、両方の接合相手が用意される。次に、第1接合相手に塗膜が被着される。この塗膜は、第1接合相手の表面を完全に又は部分的に覆うことができる。第1接合相手への塗膜の被着は、例えば浸漬、噴霧又は塗布によって、行うことができる。
【0010】
第2接合相手は凹部を有していてもよく、この凹部は、塗膜を備えた第1接合相手を、完全に又は部分的に、受容するために、設けられている。このため、塗膜を備えた第1接合相手は、完全に又は少なくとも部分的に、第2接合相手の凹部に挿入される。凹部は、第1接合相手の形状に適合しているように、即ち、完全に又は部分的に凹部に挿入された塗装済み第1接合相手と第2接合相手との間に、隙間が残るように形成されている。この隙間の幅は、隙間のどの箇所でも、例えば1mm以下の、所定値を超えない。第1接合相手を凹部に挿入する時機は、塗膜がBステージ又はCステージにあるように選択しておくことができる。Bステージのとき、塗膜の部分架橋が存在し、塗料は未だ完全には硬化していない。最後にCステージにおいて、塗膜は完全に硬化している。
【0011】
完全に又は部分的に凹部に挿入された塗装済み第1接合相手と第2接合相手とを含む組立体は、次に含浸樹脂で含浸される。含浸樹脂は、凹部、切欠き部及び空隙内に、浸透できる。特に、含浸樹脂は、第1接合相手と第2接合相手との間に生じる隙間内に浸透する。空気混入の生じる虞を最小にするために、含浸過程は、周囲圧力を下げて、例えば1hPa未満の絶対圧力において、行うことができる。このように低下した周囲圧力は、例えば回転翼形油回転ポンプによって、達成することができる。
【0012】
含浸後に含浸樹脂の粘度は、少なくとも、第1接合相手と第2接合相手とが互いに十分強固に結合される程度に低下される。硬化炉に搬送するとき、含浸樹脂は、なお、液状とすることができる。含浸樹脂が流れ出ることは、積層薄板の隣接薄板間に生じる毛管引力によって、及び/又は、一つ又は複数の閉鎖要素によって、例えば既存の凹部、切欠き部及び空隙を覆うゴムマットによって、防止することができる。
【0013】
第1接合相手に被着される塗膜は、第1接合相手と第2接合相手との間に強固な結合部を可能とする特殊な塗料組成物から製造される。この塗料組成物は、エポキシ樹脂混合物、硬化促進剤、シラン系エポキシ官能性接着剤及び溶剤を含有してなり、エポキシ樹脂混合物は、エポキシ価最大2当量/kg以下の少なくとも1つの固体エポキシ樹脂10重量%〜94重量%と、エポキシ価>4当量/kgの少なくとも1つの固体多官能エポキシ樹脂1重量%〜50重量%と、融点>30℃のフェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラック5重量%〜40重量%とを、含有してなる。
【0014】
この特殊なエポキシ樹脂混合物の他に、塗料組成物は、硬化促進剤、例えば第3アミン又はイミダゾール誘導体、を含有してなる。硬化促進剤は、例えば2−エチル−4−メチルイミダゾールである。永久磁石素材への塗装の所望の付着を保証するために、塗料組成物は、更に、シラン系エポキシ官能性接着剤を含有してなる。γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン又はβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランも有利であることが実証された。接着剤は、固体樹脂混合物を基準に、例えば0.1重量%〜5重量%、好ましくは1重量%〜3重量%、の量を利用することができる。
【0015】
塗料用溶剤として適しているのは、例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、グリコールエーテル、アルコール、ケトン及び/又はこれらの物質の2つ以上から成る混合物である。部材の塗装自体は、従来の仕方で塗布、浸漬、噴霧、スピンコーティング、注型又はその他の方法によって行われ、被塗部品の幾何学形状の故に、連続法でも回分法でも、吹付け法が優先的に利用される。この理由から、塗料の固体含量が過度に高くないことが望ましい。塗料の固体含量は、例えば最大50重量%、又は10重量%〜20重量%、とすることができる。塗料組成物の一態様では、エポキシ樹脂混合物がエポキシ価1当量/kg〜2当量/kgの固体エポキシ樹脂を1重量%〜80重量%含有してなる。
【0016】
別の一態様では、塗料組成物が、エポキシ価1当量/kg未満の固体エポキシ樹脂40重量%〜60重量%と、エポキシ価1当量/kg〜2当量/kgの固体エポキシ樹脂20重量%〜40重量%と、エポキシ価4当量/kg超の固体多官能エポキシ樹脂10重量%〜40重量%と、フェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラック10重量%〜20重量%と、を含有してなる。エポキシ価最大2当量/kg以下の固体エポキシ樹脂として適しているのは、例えばビスフェノールA及び/又はビスフェノールFに基づく、エポキシ樹脂である。
【0017】
他の態様において、多官能エポキシ樹脂は、4当量/kg超のエポキシ価を有し、エポキシフェノールノボラック、エポキシクレゾールノボラック、イソシアヌル酸トリグリシジル及び/又はこれらの物質を2つ以上有する混合物を含む群に由来する。
【0018】
防食体としての性質を改善するために、塗料組成物は、防食添加剤、例えばリン酸亜鉛、クロム酸亜鉛又はヒドロキシ亜リン酸亜鉛、を含有してなることができる。
【0019】
例えば可溶性着色剤、流れ調整剤、消泡剤等の付加的添加剤;例えば石英、マイカ、滑石粉等の非金属充填材;例えばカーボンブラック、ルチル等の分散性着色顔料;例えばベントナイト又はアエロジル等の分散助剤及び/又は流動学的添加剤及び/又は沈殿助剤が、塗料組成物内で利用されることによって、塗料組成物の更なる最適化が達成できる。
【0020】
含浸樹脂として使用できるのは、例えば、25℃の温度において、例えば50mPa・s〜1,000mPa・s又は例えば200mPa・s〜300mPa・sの粘度を有し、長期間、例えば1ヶ月、の貯蔵安定性を有し、温度上昇によって硬化を開始させることのできる樹脂である。好適な含浸樹脂は、樹脂成分、硬化剤成分及び所望により硬化促進剤を含有してなる。樹脂成分として適しているのは、例えば、20℃で液状のビスフェノールAエポキシ樹脂、20℃で液状のビスフェノールFエポキシ樹脂、又は20℃で液状のそれらの混合物である。それに加えて、粘度を下げるために、エポキシ官能希釈剤、例えばブタンジオールジグリシジルエーテル、を含浸樹脂に添加することができる。硬化剤成分として利用できるのは、無水物硬化剤、例えば低粘度の無水ジカルボン酸、例えば無水メチルシクロヘキサンジカルボン酸である。硬化促進剤として考慮の対象となるのは、例えばイミダゾール誘導体及び/又は三塩化ホウ素アミン系である。
【0021】
このような含浸樹脂は、硬化時に、例えば2%未満の、僅かな体積収縮率を有するのに対して、従来の不飽和ポリエステル含浸樹脂では、典型的には、体積収縮率は5%超である。この特殊な含浸樹脂は、磁石の塗料被覆との間に、極めて強固な共有結合を形成する。この共有結合は、従来の含浸樹脂において現れるような双極子相互作用による単純な結合よりも、遥かに強固である。
【0022】
本方法を、これまで2つの接合相手間の結合形成に基づいて説明した。しかし、同様に相応する仕方で、3つ以上の接合相手を互いに結合することもできる。本方法は、例えば、接合相手の間のごく良好な接着強度と優れた絶縁性とごく良好な耐熱性と顕著な防食性とを有するセグメント化磁石系を少ない工程で簡単に製造することを可能とする。
【0023】
このような磁石系は、例えば2つ以上の永久磁石又は磁性体から、製造することができ、これらが第1接合相手として、共通の支持体として形成される第2接合相手と、結合される。このような磁石系を製造するとき、永久磁石又は磁性体は、支持体の相応する凹部に挿入され、所望により、そこで固定され、上述したように支持体と結合することができる。薄板を相連続して配置した積層薄板を含む支持体の場合、含浸樹脂が隣接薄板間に浸透するので、強固な結合は特に薄板間でも起きる。更に、これにより、薄板は含浸樹脂によって包み込まれ、こうして相互に電気絶縁され、腐食から保護されている。それに加えて、交流電磁界の故に薄板全体に生じる渦電流は、電気絶縁によって防止される。
【0024】
以下、実施例に基づいて、一部では図を参考に、本発明を詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】永久磁石同期機用の製造すべき回転子の支持体の側面図であり、支持体は、磁石又は磁性体を受容するための連続開口部として形成されたポケットを有する。
【図2】図1による支持体のA部分の拡大図である。
【図3】図2による支持体の部分を目視方向Bに見た側面図であり、この図から明らかとなるように、支持体は相連続して配置される若干数の薄板を含み、図2の図を補足して、支持体の片側に、環状に打ち抜かれた接着フィルムが被着され、この接着フィルムが開口部を片側で閉鎖する。
【図4】図3による支持体の、片側が閉鎖された、開口部に挿入される磁石又は磁性体を示す。
【図5】塗膜被着後の、図4による磁石又は磁性体を示す。
【図6】図2による支持体部分を薄板の1つの横断面図で示しており、図2に示す各開口部に、図5の塗装済み磁石又は磁性体が挿入されている。
【図7】図6による支持体部分を目視方向Bに見た側面図であり、塗装済み磁石又は磁性体用の導入開口部が、接着フィルムによって閉鎖されている。
【図8】塗装済み磁石又は磁性体を装備し、且つ接着フィルムを備えた支持体の側面図である。
【図9】真空化可能な室の横断面図であり、塗装済み磁石又は磁性体を装備し、且つ接着フィルムを備えた支持体が、この室内で、含浸樹脂で含浸される。
【図10】硬化炉の横断面図であり、塗装済み磁石又は磁性体を装備し接着フィルムを備え、且つ含浸樹脂で含浸された支持体が、この硬化炉内で温度を高めて硬化される。
【図11】図10による回転軸を含む切断面における仕上げられた結合部の垂直断面図である。
【図12】前面及び裏面の接着フィルムを取り除いたのちの図1、図2、図3、図6、図7による磁石を装備した支持体のA部分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施例1(塗料溶液の製造)
エポキシ価0.3当量/kgのビスフェノールA固体樹脂25gとエポキシ価1.5当量/kgのビスフェノールA樹脂10gとエポキシ価5.6当量/kgのエポキシフェノールノボラック8gと融点120℃のクレゾールノボラック7gとが、メチルエチルケトン3部とエタノール1部とから成る200gの溶剤混合物に、溶かされる。この溶液に、2−エチル−4−メチルイミダゾール0.25gとγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5gとが、加えられる。こうして得られる透明塗料溶液が、上で述べた塗料組成物であり、他の応用例用の塗料又は塗膜として利用することができる。
【0027】
実施例2(絶縁試験)
実施例1で製造された塗料が、スプレーガンで、ネオジム−鉄−ホウ素合金製の直方体永久磁石に、噴霧された。寸法50mm×12mm×5mmの直方体磁石は、引き続き50℃で30分間乾燥させられた。乾燥後の塗料膜厚は、約15〜25μmであった。それぞれ8つの直方体磁石が締付装置によって1つのブロックへと固定され、接触面は、50mm×12mmであった。こうして仕上げられた磁石系が、循環空気炉において、150℃で3時間硬化された。
【0028】
最も硬い磁石ブロックが引き続き通電試験にかけられ、片側の接着されたブロックから研磨によって塗料が取り除かれ、直流電源により、30ボルトの電圧が印加された。こうして、全ての接着部が優れた絶縁作用を示し、通電を許容しないことを確認することができた。
【0029】
実施例3(腐食試験)
実施例2に従って製造された5つの磁石ブロックが、腐食試験において、130℃、空気湿度100%、圧力2.7barでオートクレーブ内での腐食試験に供された。7日間(168時間)の試験時間後でも、腐食の痕跡は発見されず、膜剥離も観察できなかった。
【0030】
実施例4(塩水噴霧試験)
実施例2に従って製造された5つの磁石ブロックが、DIN50021による塩水噴霧試験に供された。240時間の試験時間後も、磁石ブロックに腐食現象は確認できなかった。
【0031】
実施例5(有害ガス試験)
実施例2の方法に従って製造された5つの磁石ブロックが、DIN50018による有害ガス試験に供された。21回の試験周期後、塗料又は磁石材料に対する腐食作用を確認できなかった。
【0032】
実施例6(塗料の耐熱性)
実施例1に従って製造された塗料が、硬化状態において加熱速度5K/分のサーモグラフ分析に供された。結果として、410℃の分解点が確認された。これは、この塗料が、NdFeB磁石におけるあらゆる高温応用用に、利用できることを、意味する。この素材自体の高温応用の上限は、最高210℃である。というのも、この温度以上では、不可逆的熱損失の発生を予想しなければならないからである。
【0033】
実施例7(接着強度)
実施例2の方法に従って製造された磁石板が、圧縮剪断試験に供された。この試験では、15,000Nで磁石材料が壊れたが、接着自体は損なわれなかった。
【0034】
実施例8(圧縮剪断試験)
実施例1に従って製造された接着塗料を使って、DIN54451に依拠して圧縮剪断試験を行った。磁石−磁石接着について、室温で、圧縮剪断強さは、25N/mm超であった。130℃でも、圧縮剪断強さは5N/mm超であった。
【0035】
実施例9(2つの接合相手間の結合の製造)
以下では、本方法を、例示的に永久磁石同期機用回転子の製造を基に、説明する。このため、図1に例示的に正面図で示した支持体2が用意される。支持体2は、相連続して配置される若干数の薄板を含み、そのうち、この図では、前面2aにある薄板21のみ認めることができる。各薄板は、例えばリングとして、例えば円筒リングとして、形成しておくことができる。更に、これらの薄板が一連の開口部を有し、これらの開口部は、方位角方向で、例えば互いに等間隔に、離間している。相連続して配置されるこれらの薄板は、同一に成形しておくことができる。
【0036】
開口部を有する個々の薄板は、支持体2に開口部6が形成されるように、配置されている。開口部6は、支持体2の前面2aから前面2aとは反対側の裏面まで、連続的に延びている。開口部の形状は、基本的に任意に、製造すべき磁石系に対する各要求に依存して、選択しておくことができ、図示されたような横断面図が、長方形の形状とは違ってもよい。開口部は、例えば円形横断面を有することもできる。
【0037】
支持体2のA部分が図2に拡大図示してある。図3は、図2に見られる目視方向BからのこのA部分の側面図である。図3では、支持体2の個々の薄板21、22、23、24、25、26を十分認めることができる。薄板の数は、任意に選択することができる。隣接する薄板21、22、23、24、25、26の間に、空隙29を設けておくことができ、これらの空隙に後で含浸樹脂が充填される。
【0038】
環状支持体2の外面に向いた開口部6の横側の位置が破線で示してある。この図に認めることができるように、開口部6は、支持体2の前面2aから前面2aとは反対側の裏面2bまで、延びている。
【0039】
図2とは異なり、図3では支持体2の裏面2bに、環状に打ち抜かれた接着フィルム7bが被着されており、この接着フィルムで開口部6が片側を閉鎖される。接着フィルム7bは、図示したように、連続フィルムとして形成しておくことができる。しかし、全ての開口部に亘って延びる接着フィルム7bの代わりに、それぞれ1つ又は複数の開口部6を、それぞれ片側でのみ、閉鎖する接着フィルム部分を使用することも同様に可能である。
【0040】
前面2aから磁石1が開口部6に挿入される。磁石1の代わりに磁性体を設けておくこともできるが、しかし、このことは、支持体2との結合を製造するうえで些細なことである。それ故に、他の実施では、磁石のみを引合いに出す。しかし、磁性体の場合、この磁性体は、後の時点で、例えば製造すべき結合部の硬化後に、磁化されねばならない。
【0041】
図4は、このような磁石1を横断面図で示す。開口部6に導入する前に磁石1は、完全に又は部分的に、塗膜11を与えられ、そのことは図5から明らかとなる。塗膜11は、先に述べた塗料組成物から製造されている。磁石1への塗膜11の被着は、例えば浸漬、噴霧又は塗布によって、行うことができる。磁石1を開口部6に挿入する時機は、塗膜11がAステージ、Bステージ又はCステージにあるように、選択しておくことができる。開口部6の裏面を接着フィルム7bでマスキングすることによって、磁石1は開口部6内で保持される。
【0042】
図6は、支持体2の開口部内にある塗装済み磁石1を含むA部分の横断面図である。磁石1の導入後、開口部は、図3の図に対応した図7から明らかとなるように、前面2aでも接着フィルム7aによって、閉鎖される。接着フィルム7a、7bによって、磁石1の脱落が防止される。磁石1を装備し且つ接着フィルム7a、7bを備えた支持体1全体の前面2aの図を、図8が示す。この図は図1の図に対応している。
【0043】
図8の図とは異なり、前面2aは、完全に接着フィルム7aを貼り付けておくことができる。同様に、裏面2b(図3、図7参照)は、完全に接着フィルム7bを貼り付けておくことができる。そのことの利点として、後で、この組立体に含浸樹脂を含浸した後に、含浸樹脂が磁石1と支持体2との間の隙間から流れ出ることが防止される。更に、接着フィルム7a、7bは、含浸後、含浸樹脂が十分に固化すると、前面2a又は裏面2bから引き剥がすことができ、支持体2の前面2aと裏面2bとは、接着フィルム7a又は7bが貼り付けられていた領域に、含浸樹脂で濡れていない均一な表面を有する。接着フィルム7a、7bの下にある側面2a、2b部分にも防食部を備えるために、接着フィルム7a、7bの除去後に、この組立体に、なお含浸樹脂又は別の好適な塗料から成る膜を被着してもよい。
【0044】
図9に示したように、図8の組立体が次に含浸樹脂8内で含浸される。含浸樹脂は、後の硬化時に、磁石1に被着された塗膜11と所望により結合され、こうして支持体2内で磁石1の強固な固定を引き起こすような性状を有し、この強固な固定は、製造すべき回転子の極端に高い回転数にも耐える。含浸過程は、少なくとも一時的には、真空化可能な室9内で、例えば室9の外側の標準周囲圧力p0に比べて低減された1hPa未満又はそれに等しい絶対圧力p1において、行われる。
【0045】
この組立体の含浸は、磁石1の塗膜11がAステージ、Bステージ又はCステージにある時点で、行うことができる。塗膜11が未だ硬化していないとき、つまりAステージ又はBステージにあるとき、塗膜11と含浸樹脂とは共通の限界範囲内で一層良好に化学結合することができ、これが極めて強力な結合をもたらす。
【0046】
含浸時に含浸樹脂8は外部から、隣接薄板21、22、23、24、25、26間にある空隙29と、塗装済み磁石1と薄板21、22、23、24、25、26との間にある隙間とに、浸透することができ、こうして結合部は、ほぼ空気混入なしに、完全に含浸されている。
【0047】
次に含浸樹脂8と(そして既に事前に硬化されていない限り)塗膜11とは、硬化させることができる。硬化は、図10に例示的に示したように、硬化炉10内で行うことができる。硬化は、2工程で行うことができ、このとき、含浸組立体は、所望により、例えば、高められた、例えば50℃〜100℃の、第1温度での第1硬化工程中に予備硬化される。第1硬化工程のとき、硬化反応開始によって、含浸樹脂の粘度がゆっくりと、(架橋開始とそれに伴う硬化とに起因して)低粘度中間状態なしに増加し、組立体の空隙から溢れるのが防止されることになる。架橋の適切な開始は、エポキシ樹脂に基づく樹脂系を使用することによって、加速された無水物硬化で実現される。このような系は、加熱時に僅かな粘度変化を受けるだけである。というのも、約50℃の温度以降既に含浸樹脂マトリクスの硬化が始まるからである。
【0048】
所望により、後続の第2硬化工程において、次に、第1温度よりも高められた、例えば100℃〜150℃の、第2温度において、完全硬化を行うことができる。
【0049】
含浸樹脂8が空隙29や磁石1と支持体2との間にある隙間から過度に流れ出るのを防止するために、組立体は、含浸後、含浸樹脂8が十分硬化するまで軸線Rの周りで回転させることができる。この回転は、所望ならば、第1硬化工程中に、また、所望ならば、第2硬化工程中にも行うことができる。
【0050】
図11は、図10による回転軸線の平面における仕上げられた回転子の横断面図である。この図において、接着フィルム7a、7bは、未だ支持体2の前面2a又は裏面2bに貼り付けられている。そうする代わりに、接着フィルム7a、7bは、含浸後、例えば第1硬化工程中、第1硬化工程後、第2硬化工程前、又は第2硬化工程中に、含浸樹脂8が十分に結合されたなら取り除くことができる。
【0051】
図12は、磁石1を装備し含浸樹脂8を含浸して硬化した支持体2から前面及び裏面の接着フィルム7a、7bを取り除いたのちの図1、図2、図3、図6、図7によるA部分を示す。前面2a及び裏面2bは、保護する接着フィルム7a、7bの故に含浸樹脂8で覆われていないか又はごく僅かに覆われているにすぎない。一方、環状支持体2の内面及び外面には、それぞれ、含浸樹脂8から成る膜81がある。更に、磁石1上には、含浸樹脂8から成る膜82が有り得る。この膜82は、含浸時に接着フィルム7a、7bと磁石1との間にある空隙内に達した含浸樹脂8から生じる。
【0052】
含浸後に支持体2及び磁石1に付着した過剰な含浸樹脂が過度に厚い膜を形成するのを防止するために、過剰な含浸樹脂は、含浸後、希釈によって洗い落とすことができる。
【符号の説明】
【0053】
1 第1接合相手、磁石
2 第2接合相手、支持体
6 開口部
8 含浸樹脂
11 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1接合相手と第2接合相手とを用意する工程と、第1接合相手に塗膜を被着する工程と、第2接合相手と塗膜を備えた第1接合相手とに含浸樹脂を一緒に含浸させる工程と、含浸樹脂の粘度を下げる工程とでもって第1接合相手を第2接合相手と結合するための方法であって、前記塗膜がエポキシ樹脂混合物、硬化促進剤、シラン系エポキシ官能性接着剤及び溶剤に基づく塗料組成物であり、前記エポキシ樹脂混合物が、エポキシ価最大2当量/kg以下の少なくとも1つの固体エポキシ樹脂10〜94重量%とエポキシ価>4当量/kgの少なくとも1つの固体多官能エポキシ樹脂1〜50重量%と融点>30℃のフェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラック5〜40重量%とを、含有してなる方法。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂混合物が、エポキシ価<1当量/kgの固体エポキシ樹脂1〜80重量%とエポキシ価1〜2当量/kgの固体エポキシ樹脂1〜80重量%とを、含有してなる請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記エポキシ樹脂混合物が、エポキシ価<1当量/kgの固体エポキシ樹脂40〜60重量%とエポキシ価1〜2当量/kgの固体エポキシ樹脂20〜40重量%とエポキシ価>4当量/kgの固体多官能エポキシ樹脂10〜40重量%とフェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラック10〜20重量%とを、含有してなる請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1つの固体エポキシ樹脂が、ビスフェノールA及び/又はビスフェノールFに基づくエポキシ樹脂であり、かつ最大2当量/kgのエポキシ価を有する請求項1ないし3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの多官能エポキシ樹脂が、エポキシフェノールノボラック、エポキシクレゾールノボラック、イソシアヌル酸トリグリシジル及び/又はそれらの混合物を含む群に属し、>4のエポキシ価を有する請求項1ないし4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
前記硬化促進剤が第3アミン及び/又はイミダゾール誘導体を含有してなる請求項1ないし5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
前記硬化促進剤が2−エチル−4−メチルイミダゾールを含有してなる請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記シラン系エポキシ官能性接着剤の含量が、固体樹脂混合物を基準に、0.1重量%〜5重量%である請求項1ないし7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記シラン系エポキシ官能性接着剤の含量が、固体樹脂混合物を基準に、1重量%〜3重量%である請求項8記載の方法。
【請求項10】
前記エポキシ官能性接着剤が、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン及びβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランを含む群に属する請求項1ないし9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
前記溶剤が脂肪族、芳香族炭化水素、エーテル、エステル、グリコールエーテル、アルコール、ケトン及びそれらの混合物を含有してなる請求項1ないし10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記塗料組成物の固体含量が1重量%〜50重量%である請求項1ないし11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記塗料組成物の固体含量が10重量%〜20重量%である請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記塗料組成物が付加的に少なくとも1つの防食添加剤を含有してなる請求項1ないし13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの防食添加剤が、リン酸亜鉛及び/又はクロム酸亜鉛及び/又はヒドロキシ亜リン酸亜鉛を、含有してなる請求項14記載の方法。
【請求項16】
可溶性着色剤及び/又は流れ調整剤及び/又は消泡剤が塗料組成物に添加される請求項1ないし15のいずれか1つに記載の方法。
【請求項17】
非金属充填材が前記塗料組成物に添加される請求項1ないし16のいずれか1項記載の方法。
【請求項18】
前記非金属充填材が少なくとも1つの分散性着色顔料、並びに/又は、石英粉、マイカ及び滑石粉の群のうちの1物質を含有してなる請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記分散性着色顔料がカーボンブラック及び/又はルチル及び/又は分散助剤を含有してなる請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記分散性着色顔料が流動学的添加剤及び/又は沈殿助剤を含有してなる請求項18又は19のいずれか記載の方法。
【請求項21】
前記流動学的添加剤及び/又は沈殿助剤がベントナイト又はアエロジルを含有してなる請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記フェノールノボラック及び/又はクレゾールノボラックが、>100℃の融点を有する請求項1ないし21のいずれか1つに記載の方法。
【請求項23】
前記含浸樹脂が、25℃の温度において50mPa・s〜1,000mPa・sの粘度を、有する請求項1ないし22のいずれか1つに記載の方法。
【請求項24】
前記含浸樹脂が、25℃の温度において200mPa・s〜300mPa・sの、粘度を有する請求項23記載の方法。
【請求項25】
前記含浸樹脂が、20℃の温度において液状のビスフェノールAエポキシ樹脂及び/又は20℃の温度において液状のビスフェノールFエポキシ樹脂を、含有してなる請求項1ないし24のいずれか1つに記載の方法。
【請求項26】
前記含浸樹脂が、粘度を下げるために、エポキシ官能希釈剤を含有してなる請求項1ないし25のいずれか1つに記載の方法。
【請求項27】
前記含浸樹脂が無水物硬化剤を含有してなる請求項1ないし26のいずれか1つに記載の方法。
【請求項28】
前記無水物硬化剤が低粘度無水ジカルボン酸である請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記低粘度無水ジカルボン酸が無水メチルシクロヘキサンジカルボン酸である請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記含浸樹脂が硬化促進剤を含有してなる請求項1ないし29のいずれか1つに記載の方法。
【請求項31】
前記硬化促進剤がイミダゾール誘導体及び/又は三塩化ホウ素アミン系を含有してなる請求項30記載の方法。
【請求項32】
含浸が1hPa未満又はそれに等しい絶対圧力において行われる請求項1ないし31のいずれか1つに記載の方法。
【請求項33】
前記第2接合相手が凹部を有し、塗膜を備えた前記第1接合相手がこの凹部内に少なくとも部分的に挿入される請求項1ないし32のいずれか1つに記載の方法。
【請求項34】
前記凹部が、連続開口部として、前記第2接合相手に形成されている請求項33記載の方法。
【請求項35】
前記第1接合相手を挿入する前に開口部が片側を閉鎖される請求項34記載の方法。
【請求項36】
片側閉鎖のために接着フィルムが使用される請求項35記載の方法。
【請求項37】
前記第1接合相手の挿入後、含浸前に、開口部が完全に閉鎖される請求項33ないし36のいずれか1つに記載の方法。
【請求項38】
完全閉鎖のために接着フィルムが使用される請求項37記載の方法。
【請求項39】
前記第1接合相手と前記第2接合相手と前記塗膜とを含む組立体に含浸後に付着する含浸樹脂が、溶剤によって組立体の外表面から洗い落とされ、組立体の空隙内にある含浸樹脂がそこに留まる請求項1ないし38のいずれか1つに記載の方法。
【請求項40】
空隙が、前記第1接合相手と前記第2接合相手との間に形成される間隙を含む請求項39記載の方法。
【請求項41】
前記第2接合相手が相連続して配置される薄板を含む請求項39又は40記載の方法。
【請求項42】
前記第1接合相手と前記第2接合相手と前記塗膜とが、含浸後にこれらに付着される含浸樹脂と一緒に、第1硬化工程において、高められた第1温度で、予備硬化される請求項1ないし41のいずれか1つに記載の方法。
【請求項43】
前記高められた第1温度が50℃〜100℃である請求項42記載の方法。
【請求項44】
前記第1接合相手と前記第2接合相手と前記塗膜とが、含浸後にこれらに付着される含浸樹脂と一緒に、第1硬化工程中に、回転させられる請求項42又は43のいずれか記載の方法。
【請求項45】
前記第1接合相手と前記第2接合相手と前記塗膜とが、含浸後にこれらに付着される含浸樹脂と一緒に、第2硬化工程において、第1温度よりも高い第2温度で、硬化される請求項42ないし44のいずれか1つに記載の方法。
【請求項46】
前記高められた第2温度が100℃〜150℃である請求項45記載の方法。
【請求項47】
前記第1接合相手と前記第2接合相手と前記塗膜とが、含浸後にこれらに付着される含浸樹脂と一緒に、第2硬化工程中に、回転させられる請求項45又は46のいずれか記載の方法。
【請求項48】
前記第1接合相手が磁石又は磁性体であり、前記第2接合相手が永久磁石同期機用の製造すべき回転子の支持体である請求項1ないし47のいずれか1つに記載の方法。

【図1】
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【図2−3】
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【図4】
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【図5】
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【図6−7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公表番号】特表2010−529819(P2010−529819A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509687(P2010−509687)
【出願日】平成19年6月1日(2007.6.1)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004895
【国際公開番号】WO2008/148402
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(500460379)バクームシュメルツェ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニ コマンディートゲゼルシャフト (7)
【Fターム(参考)】