説明

2個の接合素子の低温加圧焼結接合方法およびそれによって製造される構成体

【課題】低温加圧焼結接合時に空洞の形成あるいはそのサイズを低減した2個の接合素子の低温加圧焼結接合方法およびそれによって製造される構成体を提供する。
【解決手段】構成体製造方法は、第1接触面16を有する第1接合素子10を用意するステップ、焼結金属の粒子および溶剤から構成される焼結ペーストからなる層を第1接触面16に施与するステップ、焼結ペーストに温度を加えて、焼結層を形成するように溶剤を追い出すステップ、その焼結層に液体を施与するステップ、第2接合素子50を配置するステップ、接着剤62を、焼結層と第2接合素子50との縁部領域に、第1接合素子10にも接触する状態で塗着するステップ、接合素子10、50間の材料密着結合の低温加圧焼結接合を形成するために、構成体にさらに温度および圧力を加えるステップであって、焼結層が均質な焼結金属層34に転化されるステップ、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれ被接合接触面を有する2つの接合素子/接合要素を低温加圧焼結接合する製造方法と、この方法によって製造される構成体/アセンブリとに関する。
【背景技術】
【0002】
このような構成体は、例えばパワーエレクトロニクス回路の分野で周知されている。この回路分野においては、例えばパワー半導体の素子が基板に材料密着結合(はんだ付け、溶接、粘着剤による接着のような原子や分子の力によって対象物が相互結合される態様)で接合され、パワー半導体モジュールの中に配置される。
【0003】
例えば、特許文献1は、このような接合を形成するサイクル式の方法のための装置を記述している。この装置においては、サイクル操作用の加圧装置が、加圧ラムと加熱可能な加圧テーブルとを備えており、さらに、圧力安定なコンベアベルトが、加圧テーブルの直接上部に走行するように配置される。素子がその上に配置される基板と加圧ラムとの間に、保護膜が付加的に設けられる。
【0004】
しかし、この既知の方法は、接合素子を低温加圧焼結接合用の装置内に配置して初めて溶剤に温度が加えられるので、接合の形成中に空洞が生じるという欠点を有する。このような空洞は、少なくとも30μmの直径の、焼結金属層内のガス封入体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005058794A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、2つの接合素子の低温加圧焼結接合の形態の材料密着結合の接合を含む製造方法と、それによって形成される構成体とであって、低温加圧焼結接合の焼結金属層における空洞の形成が避けられるか、あるいは、少なくともその空洞のサイズが大幅に低減されるような製造方法とそれによる構成体とを提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を含む方法と、請求項7による構成体とによって、本発明に従って達成される。好ましい実施形態はそれぞれの従属請求項に記述される。
【0008】
本発明による方法によって、第1および第2の接合素子を含む構成体が製造され、前記接合素子は、低温加圧焼結接合によって相互に材料密着結合で接合される。その場合、各接合素子は、それぞれ、もう一方の接合素子に接合される接触面を有しており、前期接触面の間に焼結金属層が配置される。この方法は、以下に述べるステップを含む。本発明による方法に関しては、ステップd)およびf)は記述した順序で実施するのが有利であるが、2つのステップd)またはf)のいずれか1つのみを選択的に実施することが好ましい場合もある。
a)第1接触面を有する第1接合素子であって、この接触面は好ましくは貴金属表面を有する第1接合素子を用意するステップ。次に、前記接触面を、超音波の作用によって不純物なしの状態にすることが望ましい。この超音波の作用は方法の次のステップの前に終了させることが可能であるが、別の不純物を防止するため、前記作用を次の処理ステップと一時的に重ね合せ得ることが特に有利である。
b)焼結金属の粒子、好ましくは銀粒子と溶剤とから構成される焼結ペーストからなる層を第1接触面に施与するステップ。
c)焼結ペーストに温度を加えて、まだ相互に接合されていない焼結金属の粒子から構成される焼結層を形成するように溶剤を追い出すステップ。
d)その焼結層に、例えばグリセリンのような好ましくは極性の液体を施与するステップ。前記液体は、溶剤が追い出された後に、第2接合素子を固定するための僅かな接着力のみを有するものであり、第2接合素子を焼結層の上に固定する次のステップにおいて役立つ。
e)第2接合素子を、その第2接触面が焼結ペーストからなる層の上に位置するように、あるいは、正確に言えば、ステップd)による液体が存在する場合は正確にその液体の上に位置するように配置するステップ。
f)接合素子を相互に固定するために、接着剤を、焼結層と第2接合素子との縁部領域に、その接着剤が第1接合素子にも接触する状態で塗着するステップ。この場合、好ましくはシリコーンである接着剤を、構成体の少なくとも2箇所においてのみ施与することで十分である可能性もある。しかし、前記の接着剤を上記の全領域の周囲に塗着することが特に有利である。
g)接合素子の間の材料密着結合の低温加圧焼結接合を形成するために、構成体にさらに温度および圧力を加えるステップ。この場合、ステップd)に従って焼結層と第2接合素子との間に塗着することができる液体は追い出され、焼結層は均質な焼結金属層に転化される。この場合、均質な焼結金属層というのは、最大直径が10μmの空洞を含む金属層を意味すると理解する。
【0009】
従って、本発明による上記の方法は、2つの接合素子の接触面を接合する焼結金属層を含む2つの接合素子の構成体を生成する。本発明によれば、前記焼結金属層は、均質な層として具現化され、最大でも10μmの直径の空洞しか有しない。
【0010】
本発明による方法と、それによって製造される本発明の構成体との本質的な利点は、焼結金属層内の空洞の個数が少なく、および/または、その空洞のサイズが小さい結果として、電気的性質が改善され、特にオーム抵抗が低減され、さらに、接合の長期的な耐久性が改善される点にある。また、超音波の適用と的確に組み合わせると、この接合形成に必要な圧力を、先行技術に比べて10%より多く追加的に低減可能である。印加されるべき必要圧力の低減は、どのようなものであれ、その結果として破損率の低下が可能になるので、方法の収率を直接的に増大させる。
【0011】
以下、本発明を、代表的な実施形態に基づいて、図1に従ってさらに詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1a】本発明による製造方法の異なるステップの内、最初のステップ(上記のステップb)に相当)を示す。
【図1b】本発明による製造方法の第2ステップ(ステップc))を示す。
【図1c】本発明による製造方法の第3ステップ(ステップd))を示す。
【図1d】本発明による製造方法の第4ステップ(ステップf))を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1aは、第1接合素子として、パワーエレクトロニクスの分野で用いられているような典型的な基板(10)の一部分を示す。前記基板(10)は、好ましくは例えば窒化アルミニウムのような工業用セラミックである絶縁材料体(12)と、前記絶縁材料体(12)の主面の少なくとも一方に装着される複数の金属導体トラック(14)とから構成される。図には、前記複数の導体トラックの1つが表現されている。前記導体トラック(14)は、好ましくは銅から形成され、相互に電気絶縁されて、基板(10)の回路構造を形成する。
【0014】
第2接合素子が導電接触されるべき基板の接触面は、低温加圧焼結接合処理し得る表面を有する。このため、接触面(16)は貴金属表面(18)を有することが望ましい。図には、前記接触面(16)に塗着される焼結ペースト(30)が同様に示されているが、前記焼結ペーストそのものは銀粒子および溶剤から構成される。前記焼結ペースト(30)の施与に先立って、表面を超音波(20)に曝露することを実施した。この超音波への曝露は、焼結ペースト(30)を施与する間にも維持された。この手段によって、後に行われる低温加圧焼結接合の形成を損なう可能性がある不純物が除去される。
【0015】
図1bは、引き続く方法のステップとして、温度による焼結ペーストからの溶剤の追い出しを示している。この目的のための温度作用(22)は、任意の所望の態様で具現化できる。例えば、焼結ペースト(30)上への直接作用以外に、基板(10)を加熱することによっても可能である。早くもこの時点で溶剤を追い出すことの本質的な利点は、第2接合素子を配置した後に前記溶剤の追い出しを行うと、上記のような完全な追い出しが得られないという点にある。残留溶剤が空洞をもたらすことになるが、本発明による方法においては、この空洞は、形成されるとしてもそのサイズが大幅に小さくなる。
【0016】
この方法のステップの後、残った焼結ペースト(図1aによれば30)の殆どすべては貴金属の粒子であり、以下これを、焼結層(32)として表示する。焼結ペーストの場合には、その溶剤部分によって、表面上に配置される第2接合素子に対する接着効果がもたらされるが、この焼結ペーストの場合の接着効果に比べると、焼結層(32)は、第2接合素子に対するその自由表面の接着力を全く有しないか、またはごく僅かしか有しない。
【0017】
それにも拘らず第2接合素子の固定を実現するため、図1cに示すように、液体(40)を焼結層(32)の自由表面に施与する。第2接合素子を配置する間に、前記液体(40)は、焼結層(32)と、第2接合素子、この場合パワー半導体素子(50、図1d参照)との間の接着力を形成する非常に薄い層になる。そのため、前記パワー半導体素子(50)は焼結層(32)上の所定位置に固定され、その結果、この方法遂行の間のさらなる取り扱いが大幅に簡素化される。グリセリンのような短鎖の多価アルコールが、低沸点でありながら低蒸気圧を有するというその物理的性質のために、この場合、特に適した液体であることが分かっている。
【0018】
図1cに関して述べた固定方法の代わりの方式として、しかし特に望ましくはその方法に対する追加的な方式として、接触面(56)を含む第2接合素子、すなわちパワー半導体素子(50)を、別の接着剤(60)によって、その縁部領域および焼結層(32)の縁部領域において、かつ、第1接合素子すなわち基板(10)にも接触する状態で、第1接合素子に固定することも可能である。
【0019】
この場合、前記固定方式は、上記の縁部領域の2箇所または3箇所に設けることで十分である可能性もあるが、上記の液体(40)による固定が設けられない場合は、前記接着剤を縁部領域の全周に設けることが有利である。
【0020】
両実施形態において、原理的には、2つの変形態様が等価であり、また等しく好ましいものである。図1dは、左側に、第2接合素子、すなわちパワー半導体素子(50)の頂部の上に右向きに延びる接着剤(60)の施与状態を示し、一方、右側においては、接着剤(62)は、パワー半導体素子(50)に専ら側方から施与されており、その他の点では左側の状況と同じである。
【符号の説明】
【0021】
10 第1接合素子(基板)
12 絶縁材料体
14 導体トラック
16 第1接触面
18 貴金属表面
20 超音波
22 温度作用
30 焼結ペースト
32 焼結層
34 焼結金属層
40 液体
50 第2接合素子(パワー半導体素子)
56 第2接触面
60 接着剤
62 接着剤


【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温加圧焼結接合によって相互に材料密着結合で接合される第1素子(10)と第2接合素子(50)を含む構成体の製造方法であって、前記両方の接合素子(10、50)は、それぞれ、もう一方のそれぞれの前記接合素子に接合されるべき接触面(16、56)を有し、それら接触面(16、56)の間には焼結金属層(34)が配置される構成体の製造方法において、
a)第1接触面(16)を有する第1接合素子(10)を用意するステップと、
b)焼結金属の粒子と溶剤からなる焼結ペースト(30)の層を前記第1接触面(16)に施与するステップと、
c)前記焼結ペースト(30)に温度(22)を加えて、焼結層(32)を形成するように前記溶剤を追い出すステップと、
d)前記焼結層(32)に液体(40)を施与するステップと、
e)第2接合素子(50)を、それらの第2接触面(56)が前記焼結層(32)の上に位置するように配置するステップと、
f)前記両方の接合素子(10、50)を相互に固定するために、接着剤(60、62)を、前記焼結層(32)と前記第2接合素子(50)との縁部領域に、前記第1接合素子(10)にも接触する状態で塗着するステップと、
g)前記両方の接合素子(10、50)の間で材料密着結合の低温加圧焼結接合を形成するために、前記構成体にさらに温度および圧力を加えるステップであって、前記焼結層(32)が均質な焼結金属層(34)に転化されるステップと、
を含み、ステップd)とf)は、連続的に実施するか、あるいは、選択的にいずれかを実施することが可能であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記液体(40)が、極性の液体、好ましくはグリセリンのような短鎖の多価アルコールとして具現化される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記接着剤(60、62)が、好ましくは熱架橋するシリコーンとして具現化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記接着剤(60、62)が、前記縁部領域の少なくとも2箇所に施与されるか、あるいは、全周に施与される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップb)が実行される直前に、前記第1接触面(16)とそれを直接取り巻く領域が超音波(20)に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップb)が実行される直前および実行されている間に、前記第1接触面(16)とそれを直接取り巻く領域が超音波(20)に曝露される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項による方法に従って形成される構成体であり、低温加圧焼結接合によって相互に材料密着結合で接合される第1接合素子(10)と第2接合素子(50)を含む構成体であって、前記両方の接合素子(10、50)は、それぞれ、もう一方のそれぞれの前記接合素子に接合されるべき接触面(16、56)を有しており、さらに、これら接触面(16、56)の間には焼結金属(34)が配置され、この焼結金属(34)は、均質な層として形成され、最大でも10μmの直径の空洞しか有しない構成体。
【請求項8】
接着剤(60、62)が、前記焼結金属層(34)の縁部領域に塗着され、前記接着剤は両方の接合素子(10、50)と接触する、請求項7に記載の構成体。


【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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