説明

2値化装置およびその方法、並びに電子機器

【課題】チャタリングやノイズを排除できることはもとより、信号のズレの影響も状況に応じて適切な処理が可能な2値化装置およびその方法、並びに電子機器を提供する。
【解決手段】画像データを入力する入力部11と、少なくとも2つ以上の値の異なる閾値を記憶する記憶部12と、閾値のうちの2つと画像データを比較し判定する比較判定部13と、比較判定部13の判定結果に応じて、画素の置換処理を行う置換部15と、を有し、比較判定部13は、画像データの値が大きい方の第1の閾値と同じまたは第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定し、小さい方の第2の閾値と同じまたは第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定し、HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定し、置換部15は、Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号等の2値化を行う2値化装置およびその方法、並びに電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マシンビジョンで製品の検査、測定を行う場合、画像の2値化はよく行われている。
この2値化を単一の閾値で行うと、図1に示すように、閾値付近での輝度ムラによって2値化画像にチャタリングが発生してしまう。
【0003】
これに対して、エンコーダや波形整形器等で閾値付近のノイズ等によるチャタリング防止にヒステリシスを使った回路がよく使われている(たとえば特許文献1,2参照)。
【0004】
この回路は、図2に示すように、ローレベルLになっている時にハイレベルHになるための閾値は高い側の閾値VthHが選択され、いったんハイレベルHになると低い側の閾値VthLの閾値が選択されるように構成されている。
【特許文献1】特開平2−53190号公報
【特許文献2】特開平5−94531号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したヒステリシス回路は、チャタリングはうまく除去できるものの、上がりと下りで閾値が異なるため、同一のアナログ値で観察すると位置ずれ(時間ずれ)を起こしてしまう。
時間軸に対する変化の2値化の場合問題にならないが、画像のようなxy軸の場合、向きによって位置がずれることは好ましくない。
高い側の閾値VthHを基準に考えると立ち下がり側はずれることになり、これも正確に計測するという観点からは問題になる。
一方、上記ヒステリシス回路は1次元を対象にしたもので、2次元、たとえば画像には適応できない。
【0006】
本発明は、チャタリングやノイズを排除できることはもとより、信号のズレの影響についても状況に応じて適切な処理が可能な2値化装置およびその方法、並びに電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の観点の2値化装置は、画像データを入力する入力部と、少なくとも2つ以上の値の異なる閾値を記憶する記憶部と、前記閾値のうちの2つと前記画像データを比較し判定する比較判定部と、前記比較判定部の判定結果に応じて、画素の置換処理を行う置換部と、を有し、前記比較判定部は、前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定し、小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定し、前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定し、前記置換部は、前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える。
【0008】
好適には、前記置換部は、前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換える。
【0009】
好適には、前記置換部は、前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にHに置き換える。
【0010】
好適には、前記置換部は、前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換えるかHに置き換えるかを選択可能である。
【0011】
本発明の第2の観点の2値化方法は、画像データの2値(H/L)化を、値の異なる2つの閾値を用いて行う場合に、前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定するステップと、小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定するステップと、前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定するステップと、前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換えるステップとを有する。
【0012】
本発明の第3の観点の2値化方法は、画像全体を2つの閾値によって、ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別し、各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、前記第1の判定結果Q1がトゥルーでかつ前記Lの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返し、その後、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、前記第3の判定結果Q3がトゥルーでかつ前記Hの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4とし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す。
【0013】
本発明の第4の観点の2値化方法は、画像全体を2つの閾値によって、ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別し、各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、前記第1の判定結果Q1がトゥルーでかつ前記Hの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返し、その後、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、前記第3の判定結果Q3がトゥルーでかつ前記Lの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4とし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す。
【0014】
本発明の第5の観点の電子機器は、画像データを2値化する2値化装置を有し、前記2値化装置は、画像データを入力する入力部と、2つ以上の値の異なる閾値を記憶する記憶部と、前記閾値のうちの2つと前記画像データを比較し判定する比較判定部と、前記比較判定部の判定結果に応じて、画素の置換処理を行う置換部と、を有し、前記比較判定部は、前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定し、小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定し、前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定し、前記置換部は、前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、チャタリングやノイズを排除できることはもとより、信号のズレの影響についても状況に応じて適切な処理が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に関連付けて説明する。
【0017】
図3は、本発明の実施形態に係る2値化装置の構成例を示すブロック図である。
図4は、本実施形態に係る2値化方法の概要を示す図である。
【0018】
本2値化装置10は、図4に示すように、高い側の第1の閾値VthHと第2の閾値VthLで画像をハイレベル(H)領域、中間レベル(M)領域、およびローレベル(L)領域に3値化し、M領域を逐次隣接する領域の結果に変更していき、M領域が無くなるまで継続する2値化方法を採用している。
この2値化方法については後で詳述する。
【0019】
本2値化装置10は、図3に示すように、入力部11、記憶部12、比較判定部13、比較判定結果格納部14、および置換部15を有する。
【0020】
入力部11は、時間的もしくは空間的に連続する信号(データ)、たとえば画像データを入力し、比較判定部13に供給する。
入力部11は、たとえばカメラやスキャナにより形成される。
たとえば入力部11がカメラで形成される場合、図3の破線内に示すように、入力部11は、撮像レンズ111、固体撮像素子112、およびアナログ/デジタル(A/D)変換器113を含んで構成される。
固体撮像素子112は、CCD(Charge Coupled Device),あるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサにより形成される。
【0021】
記憶部12は、比較判定部13で適用する2つの閾値、具体的には高い側の第1の閾値VthHおよび低い側の第2の閾値VthLを記憶する。
この記憶する第1の閾値VthHおよび第2の閾値VthLは、比較判定部13により読み出される。
また、記憶部12は、置換部15の置換処理において、隣接する画素のレベルが異なる場合はどちらを優先するのかを示す優先条件を記憶する。
記憶部12には、たとえば中間レベル(M)と判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合に、その異なる判定をローレベル(L)を優先して行ってMをLに置き換えるL優先条件が記憶される。
たとえば、まず、Lである場合は置き換え、逐次置き換えが終了すると、次にMの隣接画素がHである場合にMをHに置き換える等の処理を行う。
あるいは、記憶部12には、Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合に、その異なる判定をハイレベル(H)を優先して行ってMをHに置き換えるH優先条件が記憶される。
さらにまた、記憶部12には、Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合に、その異なる判定がL優先かH優先かを選択可能で、Lを優先して行ってMをLに置き換えるかHに置き換えるかを選択可能であるとする優先条件が記憶される。
【0022】
比較判定部13は、入力部11から供給される画像データS11と記憶部12に格納されている第1の閾値VthHおよび第2の閾値VthLの2つの閾値とを比較し、H、M、Lの3つの領域(レベル)に区分けし、区分けした結果を判定結果格納部14に一旦格納する。
【0023】
比較判定部13は、画像データS11の各画素の値(レベル)VPXLが、大きい方の第1の閾値VthH以上または第1の閾値VthHより大きい画素をH(ハイレベル)領域にある画素と判定する。
比較判定部13は、画像データS11の各画素の値(レベル)VPXLが、小さい方の第2の閾値VthL以下または第2の閾値VthLより小さい画素をL(ローレベル)領域にある画素と判定する。
比較判定部13は、HまたはLと判定された画素以外の値VPXLをとる画素を一旦M(中間レベル)領域にある画素と判定する。
【0024】
図3の例では、比較判定部13は、画像データS11の各画素の値VPXLが第1の閾値VthHより大きいときに、その画素はH領域にある画素と判定する。
比較判定部13は、画像データS11の各画素の値VPXLが第1の閾値VthH以下で第2の閾値VthLより大きいときに、その画像はM領域にある画素と判定する。
比較判定部13は、画像データS11の各画素の値VPXLが第2の閾値VthL以下のときは、その画像はL領域にある画素と判定する。
【0025】
比較判定結果格納部14は、比較判定部13の判定結果が格納される。
比較判定結果格納部14の格納データは、置換部15によりアクセスされる。
【0026】
置換部15は、比較判定結果格納部14の格納データに応じて、M領域にあると判定した画素を、その画素に隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える処理を繰り返して信号の2値化を行う。
置換部15は、この置換処理に当たっては記憶部12に記憶されている優先条件に従う。
【0027】
以上の置換部15における置換処理は、注目画素と、たとえば注目画素の上下左右の隣接画素との関係に従って行う。
以下、本実施形態に係る置換処理の基本的概念について説明する。
【0028】
図5(A)〜(C)は、注目画素画がMレベルの場合の置換処理の基本概念を説明するための図である。
【0029】
ここでは、3×3のマトリクス配列された9個の画素P1〜P9を有する画像データを例として説明する。
そして、マトリクスの中心にある画素P5を注目画素CPXLとする。
【0030】
図5(A)に示すように、注目画素CPXL(P5)の値がMレベルで、周囲の全ての画素P1〜P4,P6〜P9もMレベルの場合には置換処理は行わない。
【0031】
図5(B)に示すように、注目画素CPXL(P5)の値がMレベルで、周囲にLレベルの画素が存在する場合、注目画素CPXL(P5)をLレベルに置き換える。
図5(B)の例では、注目画素CPXL(P5)の上側に隣接する画素P2がLレベルであることから、注目画素CPXL(P5)がLレベルに置き換えられる。
なお、注目画素CPXL(P5)の左側に隣接する画素P4がLレベルの場合、右側に隣接する画素P6がLレベルの場合、あるいは下側に隣接する画素P8がLレベルの場合も注目画素CPXL(P5)がLレベルに置き換えられる。
また、図5(B)の例では注目画素CPXL(P5)の隣接する画素がLレベルの場合を説明しているが、隣接する画素にHレベルの画素が存在する場合には、注目画素CPXL(P5)はHレベルに置き換えられる。
【0032】
図5(C)に示すように、注目画素CPXL(P5)の値がMレベルで、周囲にLレベルの隣接画素とHレベルの隣接画素が存在する場合、注目画素CPXL(P5)は上述した優先順位に従って置き換えが行われる。
図5(C)の例では、L優先の場合で、注目画素CPXL(P5)の上側に隣接する画素P2はLレベルで、下側に隣接する画素P8はLレベルで、左右に隣接する画像P4,P6はMレベルの場合であり、L優先であることから、注目画素CPXL(P5)は優先順位に従ってLレベルに置き換えられる。
H優先の場合には、注目画素CPXL(P5)は優先順位に従ってHレベルに置き換えられる。
【0033】
なお、ここで隣接対象画素を注目画素の上下左右の画素としたが、斜め上下左右に隣接する画素を置換時の隣接対象画素に含めることも可能である。
【0034】
次に、本実施形態に係る置換処理の高速化の手法について、図6〜図9に関連付けて説明する。
【0035】
ここでは、図6(A)に示すように、4×4のマトリクス配列された16個の画素P1〜P16を有する画像データXを例として説明する。
図6(A)の例では、画像データXの画素P1はLレベル、画素P2はMレベル、画素P3はLレベル、画素P4はLレベル、画素P5はMレベル、画素P6はMレベル、画素P7はMレベル、画素P8はMレベル、画素P9はHレベル、画素P10はMレベル、画素P11はMレベル、画素P12はMレベル、画素P13はLレベル、画素P14はMレベル、画素P15はMレベル、画素P16はLレベルである。
ここでは、注目画素CPXLを集団として扱う。図6の例では、互いに上下左右に隣接する画素P6,P7,P10,P11の4画素を注目画素CPXLGとして扱う。
【0036】
そして、図6(B)に示すように、M=VthL≦X≦VthHを満たす真理値マップをMとする。
真理値マップMでは、Mレベルの画素P2,P5〜P8,P10,P11,P12,P14,P15は「1」が設定される。
真理値マップMでは、Lレベルの画素P1,P3,P4,P13,P16、およびHレベルの画素P9は「0」が設定される。
【0037】
図6(C)に示すように、L優先の場合、L=X<VthLを満たす真理値マップをLとする。
真理値マップLでは、Lレベルの画素P1,P3,P4,P13,P16は「1」に設定される。
真理値マップLでは、Mレベルの画素P2,P5〜P8,P10,P11,P14,P15、およびHレベルの画素P9は「0」に設定される。
【0038】
図6(D)に示すように、H=VthH<Xを満たす真理値マップをHとする。
真理値マップHでは、Hレベルの画素P9は「1」に設定される。
真理値マップHでは、Mレベルの画素P2,P5〜P8,P10,P11,P14,P15、およびLレベルの画素P1,P3,P4,P13,P16は「0」に設定される。
【0039】
ここで、図7に示すように、注目画素の集合体を考え、真理値マップMから中心の集合体Mcと、相対的に上画素の集合体をMa、下画素の集合体をMb、左画素の集合体をMl、右画素の集合体をMrとする。
このようにすると、各集合体の座標(i,j)の要素は、Mc(i,j)に対して、
上画素はMa(i,j)、下画素はMb(i,j)、左画素はMl(i,j)、右画素はMr(i,j)となる。
より具体的には、Ma(i,j)=Mc(i+1,j)、Mb(i,j)=Mc(i−1,j)、Ml(i,j)=Mc(i,j−1)、Mr(i,j)=Mc(i,j+1)となる。
このとき、次の論理式(1)でトゥルー(true:アクティブ)になる画素が、自らがMでかつ周囲にHまたはLが存在する、Mが連続する場所ではないことになる。
【0040】
【数1】

【0041】
つまり、Q1がトゥルー(true)の画素はHまたはLの画素に接するMの端の部分である。
【0042】
LについてもMと同様の集合体を考え、図8に示すように、真理値マップLから中心の集合体Lcと相対的に上画素の集合体をLa、下画素の集合体をLb、左画素の集合体をLl、右画素の集合体をLrとする。
このようにすると、各集合体の座標(i,j)の要素は、Lc(i,j)に対して、上画素はLa(i,j)、下画素はLb(i,j)、左画素はLl(i,j)、右画素はLr(i,j)となる。
このとき、上記式(1)で得られたQ1と次の論理式(2)でトゥルー(true)になる画素がMの端部付近の注目画素でかつLの画素に接していることになる。
【0043】
[数2]
Q2=(La|Lb|Ll|Lr)& Q1
【0044】
これで優先順位のLレベルに接している端部のM画素を画像から一括で検出できた。
【0045】
次に、検出した画素(M判定)を接しているレベルと置き換えていく。
【0046】
[数3]
L(Q2)=TR(true)、M(Q2)=FL(false)
【0047】
再び、図7の説明以降で示した処理と同様の論理計算を繰り返す。
全てフォールス(false)になったとき、Lレベルに接しているMは消滅したことを意味する。
【0048】
次に、反対側のHレベルとの比較判定を行っていく。
【0049】
HについてもLと同様の集合体を考え、図9に示すように、真理値マップHから中心の集合体Hcと相対的に上画素の集合体をHa、下画素の集合体をHb、左画素の集合体をHl、右画素の集合体をHrとする。
このようにすると、各集合体の座標(i,j)の要素は、Hc(i,j)に対して、上画素はHa(i,j)、下画素はHb(i,j)、左画素はHl(i,j)、右画素はHr(i,j)となる。
【0050】
この場合も、Lと同様の処理を繰り返し、Q2が全てフォールス(false)になるまで繰り返す。
全てフォールス(false)になったとき、Hレベルに接しているMは消滅したことを意味する。
【0051】
以上の処理を終えた後の、Hの結果が3値から2値化への変換終了した結果になる。
説明のために、Hも反復の説明を行ったが、Lの処理が終わった時点で残りは単純にH(Q2)=TR(true)としても良い。
【0052】
以上の高速2値化方法は以下のように行われることになる。
画像全体を2つの閾値によって、ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別する。
次いで、各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、第1の判定結果Q1がトゥルーでかつ前記Lの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とする。
そして、第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するMの中心集合をフォールスにし、第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返す。
その後、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、第3の判定結果Q3がトゥルーでかつHの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4する。
そして、第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するMの中心集合をフォールスにし、第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す。
【0053】
なお、ここではL優先の場合について説明したが、H優先の場合には、Hのロジック集合に係る処理を行ってからLのロジック集合に係る処理を行うこととなる。
すなわち、画像全体を2つの閾値によって、ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別する。
次いで、各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、第1の判定結果Q1がトゥルーでかつHの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とする。
そして、第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するMの中心集合をフォールスにし、第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返す。
その後、Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、第3の判定結果Q3がトゥルーでかつLの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4する。
そして、第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するMの中心集合をフォールスにし、第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す。
【0054】
次に、上記注目画素を中心とする置換処理を採用したL優先時の基本動作を図10〜図13のフローチャートに関連付けて説明する。
【0055】
図10は、本実施形態の全体の動作を説明するためのフローチャートである。
図11は、図10のステップST1の処理を示す図である。
図12は、図10のステップST2の処理を示す図である。
図13は、図10のステップST5の処理を示す図である。
【0056】
ステップST1において、比較判定部13が、画像データS11を記憶部12に格納してある2つの閾値VthH,VthLと比較して、H,M,Lの3つのレベル(領域)に区分けする。
比較判定部13は、図11に示すように、ステップST11において、第1の閾値VthHより大きい画素をH領域の画素gHとする。
比較判定部13は、ステップST12において、第2の閾値VthL以下の画素をL領域の画素gLとする。
比較判定部13は、ステップST13において、H領域およびL領域に入らない、すなわち第2の閾値VthLより大きく第1の閾値VthH以下の画素をM領域の画素gMとする。
区分けされた結果は比較判定結果格納部14に一旦格納される。
【0057】
次に、置換部15は、比較判定結果格納部14からデータを読み出し、Mレベルの信号を隣接する画素のレベルに従ってHもしくはLレベルに置き換えていく。その際、隣接する画素のレベルが異なる場合はどちらを優先するのかの条件を記憶部12から読み出してそれに従った処理を行う。これを繰り返し行って信号の2値化を行う。
【0058】
この一連の処理の中で、置換部15は、まずステップST2において、M領域のトゥルー(true)の画素gMで上下左右に隣接するL領域のトゥルー(true)の画素gL(gT)を抽出する。
置換部15は、図12に示すように、ステップST21および下記に示す式に従って画素gTを抽出する。
【0059】
【数4】

【0060】
次に、置換部15は、ステップST3において、隣接するLレベル画素があるかないかを判別する。
置換部15は、隣接するLレベル画素がある場合、ステップST4において、抽出画素のM領域の画素gMをトゥルー(true)からフォールス(false)に変更し、抽出画素のL領域の画素gLをフォールス(false)からトゥルー(true)に変更する。
置換部15は、この処理をステップST3で隣接するLレベル画素がないと判別するまで繰り返す。
そして、置換部15は、ステップST3で隣接するLレベル画素がないと判別すると、ステップST5のH領域側の処理に移行する。
【0061】
置換部15は、ステップST5において、M領域のトゥルー(true)の画素gMで上下左右に隣接するH領域のトゥルー(true)の画素gH(gT)を抽出する。
置換部15は、図13に示すように、ステップST51および下記に示す式に従って画素gHを抽出する。
【0062】
【数5】

【0063】
次に、置換部15は、ステップST6において、隣接するHレベル画素があるかないかを判別する。
置換部15は、隣接するHレベル画素がある場合、ステップST7において、抽出画素のM領域の画素gMをトゥルー(true)からフォールス(false)に変更し、抽出画素のH領域の画素gHをフォールス(false)からトゥルー(true)に変更する。
置換部15は、この処理をステップST6で隣接するHレベル画素がないと判別するまで繰り返す。
そして、置換部15は、ステップST6で隣接するHレベル画素がないと判別すると、ステップST8で処理を終了する。
ステップST8において、H領域とL領域がハイレベルとローレベルを相補的にとり、かつM領域の全てがフォールス(false)になる。
【0064】
以上の置換処理を画像データに適用した場合の例を図14〜図17に示す。
【0065】
図14(A)〜(D)は、本実施形態に係る置換処理に適用した第1の画像データ例およびL優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
図15(A)〜(D)は、本実施形態に係る置換処理に適用した第1の画像データ例およびH優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【0066】
第1の画像IM1は、図14および図15の(A)に示すように、M領域のトゥルー(true)MTRがH領域のトゥルーHTRまたはL領域のトゥルーLTRに囲まれている場合である。
【0067】
この第1の画像IM1を3値化後、L優先でM領域の置き換え処理を行うと、H領域は、図14(B)に示すように、H領域が引き締まったにように2値化される。
M領域は、図14(C)に示すように、置換処理後は全てがフォールス(false)FLになる。
L領域は、図14(D)に示すように、L領域が膨張したように2値化される。
【0068】
この第1の画像IM1を3値化後、H優先でM領域の置き換え処理を行うと、H領域は、図15(B)に示すように、H領域が膨張したように2値化される。
M領域は、図15(C)に示すように、置換処理後は全てがフォールス(false)FLになる。
L領域は、図15(D)に示すように、L領域が引き締まったように2値化される。
【0069】
図16(A)〜(D)は、本実施形態に係る置換処理に適用した第2の画像データ例およびL優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
図17(A)〜(D)は、本実施形態に係る置換処理に適用した第2の画像データ例およびH優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【0070】
第2の画像IM2は、図16および図17の(A)に示すように、H領域またはL領域のトゥルー(true)HTRまたはLTRがM領域のトゥルーMTRに囲まれている場合である。
【0071】
この第2の画像IM2を3値化後、L優先でM領域の置き換え処理を行うと、H領域は、図16(B)に示すように、H領域が引き締まったにように2値化される。
M領域は、図16(C)に示すように、置換処理後は全てがフォールス(false)FLになる。
L領域は、図16(D)に示すように、L領域が膨張したように2値化される。
【0072】
この第2の画像IM2を3値化後、H優先でM領域の置き換え処理を行うと、H領域は、図17(B)に示すように、H領域が膨張したように2値化される。
M領域は、図17(C)に示すように、置換処理後は全てがフォールス(false)FLになる。
L領域は、図17(D)に示すように、L領域が引き締まったように2値化される。
【0073】
図18(A)〜(C)は、第1の画像に対してL優先およびH優先の置換処理を行った場合のH領域の処理結果を示す図である。
【0074】
第1の画像IM1の場合、確定したH領域またはL領域の中に浮かんでいるような島状のM領域は周囲から消し込まれる。
そして、前述したように、L優先の場合、H領域は引き締まったように2値化される。
すなわち、L優先の場合、H部分の引き締まり効果が発現される。
H優先の場合、H領域は膨張したように2値化される。
すなわち、H優先の場合、H部分の膨張効果が発現される。
【0075】
図19(A)〜(C)は、第2の画像に対してL優先およびH優先の置換処理を行った場合のH領域の処理結果を示す図である。
【0076】
第2の画像IM2の場合、M領域に囲まれたH領域またはL領域であっても確実に保持されて2値化される。
そして、第1の画像IM1の場合と同様に、L優先の場合、H領域は引き締まったように2値化される。
すなわち、L優先の場合、H部分の引き締まり効果が発現される。
H優先の場合、H領域は膨張したように2値化される。
すなわち、H優先の場合、H部分の膨張効果が発現される。
【0077】
以上、本実施形態に係る置換処理を概念図およびフローチャートに関連付けて説明した。
以下では、本実施形態に係る置換処理を波形図に関連付けて説明する。
【0078】
図20は、本実施形態の比較判定部および置換部の処理の一例を説明するための波形図である。
【0079】
図20において、H領域においてトゥルー(true:アクティブ)になっている区間は画素の値VPXLが第1の閾値VthHを超えている状態を示す、
L領域がトゥルー(アクティブ)になっている区間は画素の値VPXLが第2の閾値VthLを下回っている状態を示す。
M領域がトゥルー(アクティブ)になっている区間は画素の値VPXLが第1の閾値VthHと第2のVthLの間の値をとっている状態を示している。
【0080】
そして、比較判定部13においては、H領域およびL領域がトゥルー(true)およびフォールス(false)のいずれかをとるが、ある区間において、H領域、M領域、L領域のうちの一つの領域がトゥルー(true)となるように、M領域がトゥルー(true)またはフォールス(false)となるように形成される。
たとえば、図5の<1>〜<5>で示す区間では、H領域およびL領域ともにフォールス(false)であることから、M領域はトゥルー(true)となるように形成される。
区間<1>と区間<2>との間、区間<2>と<3>との間、区間<3>と区間<4>との間の区間は、H領域がトゥルー(true)で、L領域がフォールス(false)であることから、M領域はフォールス(false)となるように形成される。
区間<4>と区間<5>との間の区間は、H領域がフォールス(false)で、L領域がトゥルー(true)であることから、M領域はフォールス(false)となるように形成される。
【0081】
置換部15は、H領域もしくはL領域がトゥルー(true)である区間についてはそれぞれ、H領域およびL領域で2値化の出力を確定するが、M領域がトゥルー(true)の区間は両隣の区間の状態で決定する。
たとえば、置換部15は、区間<2>や区間<3>はH領域のそれぞれ両隣の区間はトゥルー(true)となっているためH領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に形成する。
それに従って、置換部15は、M領域の区間<2>や区間<3>のトゥルー(true)は処理の進行と共にフォールス(false)となるように形成する。
置換部15は、逆に、区間<5>のようにH領域の両隣がフォールス(false)となっている区間はH領域のフォールス(false)に合わせて処理の進行と共にフォールス(false)となるように形成する。
置換部15は、区間<1>や区間<4>のようにH領域の両隣のレベルがトゥルー(true)とフォールス(false)とで相違している区間は、予め決められ記憶部12に記憶されている、HとLのいずれを優先するか優先条件に従う。
図20は、Lが優先される条件に設定されている場合の例である。
【0082】
置換部15は、優先条件に従って隣接する区間を逐次にM領域のトゥルー(true)をフォールス(false)に置き換え、また、信号の真の区間外に位置するL領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に置き換え、あるいは、H領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に置き換える。
【0083】
図21は、L優先の場合の置換部の置換処理の一例を示す波形図である。
図22は、H優先の場合の置換部の置換処理の一例を示す波形図である。
【0084】
L優先の場合、置換部15は、図21の1回目、2回目、3回目の処理に示すように、L領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に逐次に変更していく。
これと並行して、置換部15は、M領域のトゥルー(true)をフォールス(false)に変更していく。
【0085】
次に、置換部15は、図21の4回目、5回目、6回目の処理に示すように、H領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に逐次に変更していく。
これと並行して、置換部15は、M領域のトゥルー(true)をフォールス(false)に変更していく。
以上の処理により、H領域とL領域がハイレベルとローレベルを相補的にとり、かつM領域の全てがフォールス(false)になる。
図21のL優先の場合、H領域の部分が上述した引き締まり効果により区間TLとなる。
【0086】
H優先の場合、置換部15は、図22の1回目、2回目、3回目の処理に示すように、H領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に逐次に変更していく。
これと並行して、置換部15は、M領域のトゥルー(true)をフォールス(false)に変更していく。
【0087】
次に、置換部15は、図22の4回目、5回目の処理に示すように、L領域のフォールス(false)をトゥルー(true)に逐次に変更していく。
これと並行して、置換部15は、M領域のトゥルー(true)をフォールス(false)に変更していく。
以上の処理により、H領域とL領域がハイレベルとローレベルを相補的にとり、かつM領域の全てがフォールス(false)になる。
図22のH優先の場合、H領域の部分が上述した膨張効果により区間THとなる。
【0088】
以上説明したように、本実施形態によれば、2値化装置10は、高い側の第1の閾値VthHと第2の閾値VthLで画像をハイレベル(H)領域、中間レベル(M)領域、およびローレベル(L)領域に3値化し、M領域を隣接する領域の結果に変更していき、M領域が無くなるまで継続する2値化方法を採用している。
したがって、本実施形態によれば、チャタリングやノイズを排除できることはもとより、信号のズレの影響も状況に応じて適切な処理が可能となる。
その結果、スキャンする向き等の影響を受けず、またHとL切り替わりの位置はずれることなく、さらにはHの中の輝度ムラによる誤2値化での“偽像”、たとえば製品内であるにもかかわらず輝度ムラによって穴ができてしまうなどの問題を解決できる。
【0089】
なお、本実施形態に係る2値化装置100は、情報読取装置やデジタルスチルカメラ、ビデオカメラ、デジタルビデオユニット、パーソナルコンピュータ、携帯電話機、携帯情報端末(PDA)、画像検査装置、自動制御用産業カメラ等の各種電子機器に適用することができる。
【0090】
図23は、本発明の実施形態に係る2値化装置を適用可能な電子機器としての情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
図24(A)〜(C)は、情報コードの例を示す図である。
図25は、図23の情報コード読取装置に適用可能な撮像装置の構成例を示すブロックである。
【0091】
本実施形態に係る情報コード読取装置200は、図23に示すように、本体210がケーブル211を介して図示しない電子レジスタ等の処理装置と接続され、たとえば読み取り対象物220に印刷された反射率の異なるシンボル、コード等の情報コード221を読み取り可能な装置である。
読み取り対象の情報コードとしては、たとえば図24A)に示すような、JANコードのような1次元のバーコード222と、図24(B)および(C)に示すようなスタック式のCODE49、あるいはマトリックス方式のQRコードのような2次元のバーコード223が挙げられる。
【0092】
本実施形態に係る情報コード読取装置200は、本体210内に、図示しない照明光源と、図23に示すような撮像装置300とが配置されている。
撮像装置300は、上述した2値化装置100を採用してJANコードのような1次元のバーコードとQRコードのような2次元のバーコードのような情報コードを的確に高精度で読み取ることが可能に構成されている。
【0093】
情報コード読取装置200の撮像装置300は、図25に示すように、光学系310、撮像素子320、アナログフロントエンド部(AFE)330、画像処理装置340、カメラ信号処理部350、画像表示メモリ360、画像モニタリング装置370、操作部380、および制御装置390を有している。
【0094】
図25の撮像装置300において、図3の2値化装置100は、たとえば画像処理装置340の入力部に配置される。
【0095】
撮像素子320は、光学系310で取り込んだ像が結像され、結像1次画像情報を電気信号の1次画像信号として、アナログフロントエンド部330を介して画像処理装置340に出力する。
図14においては、撮像素子320を一例としてCCDとして記載している。
【0096】
アナログフロントエンド部330は、タイミングジェネレータ331、アナログ/デジタル(A/D)コンバータ332と、を有する。
タイミングジェネレータ331では、撮像素子320のCCDの駆動タイミングを生成しており、A/Dコンバータ332は、CCDから入力されるアナログ信号をデジタル信号に変換し、画像処理装置340に出力する。
【0097】
画像処理装置340は、前段のAFE330からくる撮像画像のデジタル信号を入力し、上記した2値化装置100で画像信号の2値化処理を行う。
そして、画像処理装置340は、画像処理を施し、処理した画像信号を後段のカメラ信号処理部(DSP)350に供給する。
【0098】
カメラ信号処理部(DSP)350は、圧縮、ファイリング等の処理を行い、画像表示メモリ360への格納や画像モニタリング装置370への画像表示等を行う。
【0099】
制御装置390は、露出制御を行うとともに、操作部380などの操作入力を持ち、それらの入力に応じて、システム全体の動作を決定し、AFE330、画像処理装置340、DSP350、絞り等を制御し、システム全体の調停制御を司るものである。
【0100】
この場合も、本実施形態の2値化装置100を搭載していることから、チャタリングやノイズを排除できることはもとより、信号のズレの影響も状況に応じて適切な処理が可能となる。
その結果、スキャンする向き等の影響を受けず、またHとLの切り替わりの位置はずれることなく、さらにはHの中の輝度ムラによる誤2値化での“偽像”、たとえばコード内であるのに輝度ムラによって穴ができてしまうなどの問題を解決できる。
【0101】
なお、以上詳細に説明した方法は、上記手順に応じたプログラムとして形成し、CPU等のコンピュータで実行するように構成することも可能である。
また、このようなプログラムは、半導体メモリ、磁気ディスク、光ディスク、フロッピー(登録商標)ディスク等の記録媒体、この記録媒体をセットしたコンピュータによりアクセスし上記プログラムを実行するように構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】単純2値化の課題を説明するための図である。
【図2】一般的なヒステリシスによる2値化法を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態に係る2値化装置の構成例を示すブロック図である。
【図4】本実施形態に係る2値化方法の概要を示す図である。
【図5】注目画素画がMレベルの場合の置換処理の基本概念を説明するための図である。
【図6】本実施形態に係る置換処理の高速化の手法について説明するための第1図である。
【図7】本実施形態に係る置換処理の高速化の手法について説明するための第2図である。
【図8】本実施形態に係る置換処理の高速化の手法について説明するための第3図である。
【図9】本実施形態に係る置換処理の高速化の手法について説明するための第4図である。
【図10】本実施形態の全体の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】図10のステップST1の処理を示す図である。
【図12】図10のステップST2の処理を示す図である。
【図13】図10のステップST5の処理を示す図である。
【図14】本実施形態に係る置換処理に適用した第1の画像データ例およびL優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【図15】本実施形態に係る置換処理に適用した第1の画像データ例およびH優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【図16】本実施形態に係る置換処理に適用した第2の画像データ例およびL優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【図17】本実施形態に係る置換処理に適用した第2の画像データ例およびH優先で置換処理を行った後の状態を説明するための図である。
【図18】第1の画像に対してL優先およびH優先の置換処理を行った場合のH領域の処理結果を示す図である。
【図19】第2の画像に対してL優先およびH優先の置換処理を行った場合のH領域の処理結果を示す図である。
【図20】本実施形態の比較判定部および置換部の処理例を説明するための波形図である。
【図21】L優先の場合の置換部の置換処理の一例を示す波形図である。
【図22】H優先の場合の置換部の置換処理の一例を示す波形図である。
【図23】本発明の実施形態に係る2値化装置を適用可能な電子機器としての情報コード読取装置の一例を示す外観図である。
【図24】情報コードの例を示す図である。
【図25】図23の情報コード読取装置に適用可能な撮像装置の構成例を示すブロックである。
【符号の説明】
【0103】
10・・・2値化装置、11・・・入力部、12・・・記憶部、13・・・比較判定部、14・・・比較判定結果格納部、15・・・置換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像データを入力する入力部と、
2つ以上の値の異なる閾値を記憶する記憶部と、
前記閾値のうちの2つと前記画像データを比較し判定する比較判定部と、
前記比較判定部の判定結果に応じて、画素の置換処理を行う置換部と、を有し、
前記比較判定部は、
前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定し、小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定し、前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定し、
前記置換部は、
前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える
2値化装置。
【請求項2】
前記置換部は、
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換える
請求項1に記載の2値化装置。
【請求項3】
前記置換部は、
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にHに置き換える
請求項1に記載の2値化装置。
【請求項4】
前記置換部は、
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換えるかHに置き換えるかを選択可能である
請求項1に記載の2値化装置。
【請求項5】
画像データの2値(H/L)化を、値の異なる2つの閾値を用いて行う場合に、
前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定するステップと、
小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定するステップと、
前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定するステップと、
前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換えるステップと
を有する2値化方法。
【請求項6】
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換える
請求項5に記載の2値化方法。
【請求項7】
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にHに置き換える
請求項5に記載の2値化方法。
【請求項8】
前記Mと判定された画素の隣接する画素の判定結果が異なる場合にLに置き換えるかHに置き換えるかを選択する
請求項5に記載の2値化方法。
【請求項9】
画像全体を2つの閾値によって、
ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、
ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、
中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別し、
各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、
Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、
前記第1の判定結果Q1がトゥルーでかつ前記Lの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とし、
前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返し、その後、
Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、
前記第3の判定結果Q3がトゥルーでかつ前記Hの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4とし、
前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す
2値化方法。
【請求項10】
画像全体を2つの閾値によって、
ハイレベル(H)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、
ローレベル(L)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)、
中間レベル(M)であるか否か(トゥルーまたはフォールス)にいったん論理回路で選別し、
各々を中心集合、および当該中心集合に隣接する複数の周辺集合を規定し、
Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第1の判定結果をQ1(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、
前記第1の判定結果Q1がトゥルーでかつ前記Hの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第2の判定結果をQ2とし、
前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第2の判定結果Q2がトゥルーの位置に相当するHの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第2の判定結果Q2が全てフォールスになるまで繰り返し、その後、
Mの中心集合とMの周辺集合とからMの端部分に相当する注目画素を算出した第3の判定結果をQ3(トゥルー:Mの端部分、フォールス:Mの非端部分)、
前記第3の判定結果Q3がトゥルーでかつ前記Lの周辺集合のうち少なくとも1つがトゥルーであるか否かを判定する第4の判定結果をQ4とし、
前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当する前記Mの中心集合をフォールスにし、前記第4の判定結果Q4がトゥルーの位置に相当するLの中心集合をトゥルーに一括で置き換える処理を前記第4の判定結果Q4が全てフォールスになるまで繰り返す
2値化方法。
【請求項11】
画像データを2値化する2値化装置を有し、
前記2値化装置は、
画像データを入力する入力部と、
少なくとも2つ以上の値の異なる閾値を記憶する記憶部と、
前記閾値のうちの2つと前記画像データを比較し判定する比較判定部と、
前記比較判定部の判定結果に応じて、画素の置換処理を行う置換部と、を有し、
前記比較判定部は、
前記画像データの値が大きい方の第1の閾値以上または当該第1の閾値より大きい画素をハイレベル(H)と判定し、小さい方の第2の閾値以下または当該第2の閾値より小さい画素をローレベル(L)と判定し、前記HまたはLと判定された画素以外の値をとる画素を一旦中間レベル(M)と判定し、
前記置換部は、
前記Mと判定した画素を隣接する画素の判定結果によってHもしくはLに置き換える
電子機器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate


【公開番号】特開2010−108198(P2010−108198A)
【公開日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−278934(P2008−278934)
【出願日】平成20年10月29日(2008.10.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.QRコード
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】