説明

2層式燃焼器

【課題】片面加熱に適し、予混合ガスを十分に予熱することが可能な予混合燃焼方式の2層式燃焼器を提供すること。
【解決手段】外部から中心部に予混合ガスを導入する流路を備えた予混合室12と、中心部から外部に排気ガスを排出する流路を備えた燃焼室14と、予混合室12と燃焼室14との間に介在する伝熱隔壁16と、ほぼ中心部に設けられ、燃焼室14側で着火を行う着火手段18と、着火手段18の周囲に配置され、予混合室12と燃焼室14とを連通する消炎孔20とを有する2層式燃焼器10とする。上記両流路は、渦巻状に形成されていると良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2層式燃焼器に関し、さらに詳しくは、電気ヒータの代替品などとして好適な2層式燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、家庭用・業務用の加熱機器として、電気ヒータが広く用いられている。一般に、この種の電気ヒータは、化石燃料の持つエネルギーの多くを発電・送電時に失っているため、化石燃料に対するエネルギー利用効率は約4割程度であると言われている。
【0003】
近年、地球環境に対する負荷を抑制するなど観点から、一層の省エネ化が進められており、加熱機器についてもエネルギーの有効利用を図る試みが盛んに行われるようになっている。
【0004】
このような背景の下、電気ヒータの代替品として、マイクロコンバスタと呼ばれる燃焼器が提案されている。このマイクロコンバスタは、化石燃料の燃焼熱を直接利用することができるので、約6割ものエネルギーを失う発電過程を省略することができる。そのため、大幅な省エネルギー化を図ることができる技術として期待されている。
【0005】
例えば、非特許文献1および特許文献1には、予混合ガスと排気ガスの流路が交互に配置された渦巻状の管の入口から、予混合ガスを送り込み、その中心部で燃焼させた後、高温の排気ガスを外へ放出する過程で、排熱により予混合ガスを予熱する構造のマイクロコンバスタが開示されている。
【0006】
また、特許文献2には、酸化ガス流路と排気ガス流路とを伝熱壁を挟んで交互に渦巻状に配置した燃焼部と、この燃焼部と伝熱板を介して並設された燃料予熱室と、燃料予熱室の燃料を酸化ガス流路に供給する供給孔とを備えたマイクロコンバスタが開示されている。
【0007】
【非特許文献1】“「エネルギー使用合理化技術戦略的開発 エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発 熱源用マイクロコンバスタの研究開発」 平成15年度〜平成16年度成果報告書 受託先 東北大学 委託先 石川島播磨重工業株式会社”、検索バーコード番号100005086、[online]、独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構、成果報告書データベース、[平成17年11月8日検索]、インターネット<URL:http://www.nedo.go.jp/database/index.html>
【特許文献1】特開2005−76973号公報
【特許文献2】特開2005−76974号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来知られるマイクロコンバスタは、以下の点で改善の余地があった。
【0009】
すなわち、非特許文献1および特許文献1に記載のマイクロコンバスタは、上下両面が加熱される両面加熱構造になっている。そのため、例えば、コンロなどの片面加熱機器に上記マイクロコンバスタを適用すると、無効加熱が生じ、加熱効率を損なうなどといった問題があった。
【0010】
また、非特許文献1に記載されるように、従来のマイクロコンバスタは、常温から着火した場合、着火開始から自立燃焼開始までに約7.5分間の連続スパークが必要であり、起動に時間がかかる。
【0011】
この原因としては、予混合ガスと排気ガスとが熱交換する時間が比較的少なく、予混合ガスの予熱が未だ十分でないためであると推測される。
【0012】
一方、特許文献2に記載のマイクロコンバスタは、燃料ガスと酸化剤ガスとを別々に供給し、本体内部で拡散により両者を混合させる拡散燃焼方式のマイクロコンバスタである。したがって、特許文献2には、予混合ガスを供給する予混合燃焼方式のマイクロコンバスタの構成については、具体的に言及されていない。
【0013】
仮に、この技術を、予混合燃焼方式のマイクロコンバスタに適用しようとしても、次のような問題があるため、そのままでの適用は難しい。
【0014】
すなわち、特許文献2に記載のマイクロコンバスタでは、燃焼部で発生した熱は、燃焼部に並設された燃料予熱室に伝わる。
【0015】
しかしながら、一般に、空気に対する燃料の体積比は、等量比でおおよそ1/10程度であるため、燃料予熱室で熱を受け取るガス(燃料)の体積量は極めて少ないといえる。
【0016】
そのため、燃焼部で発生した熱を、燃料予熱室において十分に回収することができず、下面などから、かなりの熱量が放出されていると考えられる。
【0017】
また、特許文献2のマイクロコンバスタでは、燃料供給口に比較的遠い孔から燃焼部に吸い込まれる燃料もあれば、燃料供給口に比較的近い孔から燃焼部へ吸い込まれる燃料もある。
【0018】
そのため、燃料予熱室内に供給されたガスを十分に予熱できているとは考え難い。
【0019】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、片面加熱に適し、予混合ガスを十分に予熱することが可能な予混合燃焼方式の2層式燃焼器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記課題を解決するため、本発明に係る2層式燃焼器は、外部から中心部に予混合ガスを導入する流路を備えた予混合室と、中心部から外部に排気ガスを排出する流路を備えた燃焼室と、前記予混合室と前記燃焼室との間を区画する伝熱隔壁と、ほぼ中心部に設けられ、前記燃焼室側で着火を行う着火手段と、前記着火手段の周囲に配置され、前記予混合室と前記燃焼室とを連通する消炎孔とを有することを要旨とする。
【0021】
この際、前記予混合室の流路および/または前記燃焼室の流路は、渦巻状に形成されていると良い。
【0022】
また、前記予混合室の内壁面のうち、前記伝熱隔壁を除いた部分、および/または、前記予混合室の外壁面は、セラミックス層により被覆されていると良い。
【0023】
また、前記着火手段周囲の伝熱隔壁にセラミックス体が嵌め込まれ、このセラミックス体に前記消炎孔が形成されていると良い。
【0024】
また、前記燃焼室側および/または前記予混合室側の消炎孔周縁には、筒状体が立設されていると良い。
【0025】
一方、本発明に係るコンロは、上述した本発明に係る2層式燃焼器が組み込まれていることを要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
上記2層式燃焼器では、燃焼室の中心部において、消炎孔から吹き出された予混合ガスが、着火手段により着火されて燃焼が始まる。
【0027】
そして、燃焼室における、伝熱隔壁と反対側の面からの熱伝導あるいは輻射熱により、被加熱物を加熱可能となる。また、燃焼による排ガスは、燃焼室内に形成されている流路に沿って、中心部から外部へ排出される。
【0028】
一方、予混合室では、伝熱隔壁を介して伝わる燃焼室の熱を回収して、予混合室内の予混合ガスが予熱される。ここで、予混合ガスは、予混合室内に形成されている流路に沿って、外部から中心部に導入される。そのため、予混合ガスは、中心部に至るまでの間、燃焼室からの熱に比較的長い時間接触している。したがって、中心部において消炎孔より吹き出される前に、予混合ガスは十分に予熱される。また、上記2層式燃焼器では、燃焼室からの熱を受け取るガスが、予混合ガスであるため、熱を有効に回収することができる。
【0029】
このように、上記2層式燃焼器は、燃焼室における、伝熱隔壁と反対側の面が加熱面となるので、片面加熱に適している。そのため、例えば、コンロなどの片面加熱機器に好適に用いることができる。一方、伝熱隔壁を介して並設されている予混合室では、予混合ガスを十分に予熱することができる。そのため、従来に比較して、熱交換効率を向上させることができる。また燃焼性も向上し、起動時間の短縮も図ることができる。
【0030】
また、着火手段の周囲に消炎孔が配置されているので、燃焼室への予混合ガスの分散性も向上する。また、予混合ガスが高温に予熱された場合であっても、予混合室と燃焼室とは消炎孔で連通されているので、火炎が予混合室側に入り込んでしまう逆火現象を防止できる。
【0031】
この際、予混合室の流路が渦巻状に形成されている場合には、燃焼室からの熱と予混合ガスとが接している時間を長くすることができる。そのため、予混合ガスの予熱を一層行いやすくなるなどの利点がある。一方、燃焼室の流路が渦巻状に形成されている場合には、熱をもった排気ガスが排出される時間を長くすることができる。そのため、予混合室側へ排気ガスの熱を一層伝えやすくなるなどの利点がある。
【0032】
また、上記2層式燃焼器において、予混合室の内壁のうち、伝熱隔壁を除いた部分、および/または、予混合室の外壁面が、セラミックス層により被覆されている場合には、予混合室内の断熱性能が向上するので、予混合室に伝わった熱が外部に放出され難くなる。そのため、より片面加熱に適し、熱交換効率も一層向上させることができる。
【0033】
また、上記2層式燃焼器において、着火手段周囲の伝熱隔壁にセラミックス体が嵌め込まれ、このセラミックス体に上記消炎孔が形成されている場合には、消炎孔周辺の耐熱性が向上する。
【0034】
そのため、燃焼室内の高熱により、比較的小さな消炎孔が、酸化されたり、変形が生じたりし難くなり、耐久性が向上する。
【0035】
また、上記2層式燃焼器において、燃焼室側および/または予混合室側の消炎孔周縁に筒状体が立設されている場合には、消炎孔の消炎直径を大きくすることができる。そのため、予混合ガス吹き出し時の圧力損失を低下させることができる利点がある。
【0036】
一方、上記コンロは、上記2層式燃焼器が組み込まれているので、加熱効率などに優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下に、実施形態に係る2層式燃焼器(以下、「本2層式燃焼器」ということがある。)について説明する。なお、ここでは、予混合室および燃焼室の両流路を渦巻状に形成した場合を、好適な形態の一例として示す。
【0038】
図1は、本2層式燃焼器の外観を模式的に示した斜視図である。図2は、本2層式燃焼器の正面図である。図3は、図1におけるA−A断面図である。図4は、図2におけるB−B断面図である。図5は、図2におけるC−C断面図である。
【0039】
本2層式燃焼器10は、例えば、外形が数十センチから数センチ程度の小型燃焼器とすることができ、主として、ステンレス鋼などの金属材料などにより、密閉構造に形成されている。本2層式燃焼器10は、図1〜5に示すように、その基本構成として、予混合室12と、燃焼室14と、伝熱隔壁16と、着火手段18と、消炎孔20とを有している。以下、これら構成につき詳細に説明する。
【0040】
予混合室12は、略円柱状に形成されており、底板22と、外周壁24と、伝熱隔壁16とにより囲まれた密閉空間を有している。予混合室12の外周壁24には、接線方向から予混合ガスFを導入する予混合ガス導入口26が設けられている。
【0041】
予混合室12の内部には、予混合ガスFの通り道となる渦巻状流路28が形成されている。この渦巻状流路28は、渦状壁30または外周壁24と、底板22と、伝熱隔壁16とにより囲まれた空間によって形成されている。
【0042】
上記構成により、燃料と酸化剤ガス(空気や酸素など)との混合割合および流量が調整され、予混合ガス導入口26より導入された予混合ガスFは、渦巻状流路28に沿って、外部から渦中心部まで導かれる。なお、燃料の種類は、特に限定されるものではなく、都市ガス、メタン、プロパンなどの種々の可燃燃料を用いることができる。
【0043】
一方、燃焼室14は、上記予混合室12と同様に、略円柱状に形成されており、天板32と、外周壁34と、伝熱隔壁16とにより囲まれた密閉空間を有している。燃焼室14の外周壁34には、接線方向に向かって排気ガスEを排出する排気ガス排出口36が設けられている。
【0044】
燃焼室14の内部には、排気ガスEの通り道となる渦巻状流路38が形成されている。この渦巻状流路38は、渦状壁40または外周壁34と、天板32と、伝熱隔壁16とにより囲まれた空間によって形成されている。
【0045】
上記構成により、燃焼で生成した排気ガスEは、渦巻状流路38に沿って、渦中心部から外部に排出される。
【0046】
なお、予混合室12、燃焼室14における渦状壁30、40は、伝熱性に優れた材質を選定し、その板厚も可能な限り薄く設定すると良い。また、予混合室12、燃焼室14における渦状壁30、40の間隔は、ともに同じであっても良いし、それぞれ異なっていても良い。
【0047】
ここで、本2層式燃焼器10において、予混合室12の片面側と燃焼室14の片面側とは、伝熱隔壁16を介して接している。つまり、非特許文献1および特許文献1などに記載されるマイクロコンバスタは、単層構造であるのに対し、本2層式燃焼器10は、予混合室12の片面側に、伝熱隔壁16を介して燃焼室14が並設された2層構造になっている。この際、予混合室12と燃焼室14とは、各渦巻状流路28、38の中心部がほぼ一致するように配設されている。
【0048】
本2層式燃焼器10において、上記伝熱隔壁16は、燃焼室14で発生した熱を予混合室12側に伝えるとともに、予混合室12と燃焼室14との間を区画する役割を有している。
【0049】
本2層式燃焼器10において、両渦巻状流路28、38のほぼ中心部には、着火手段18が設けられている。
【0050】
この着火手段18としては、具体的には、例えば、イグナイタ、セラミックヒータなどを例示することができるが、特に限定されるものではない。
【0051】
この際、上記着火手段18は、その着火点42が燃焼室14側になるように配置されている。図1〜5では、予混合室12側から燃焼室14側に向かって着火手段18が挿通され、その着火点42が燃焼室14内に配置された場合を例示している。
【0052】
また、本2層式燃焼器10では、上記着火手段18の周囲に、消炎孔20が複数配置されている。この消炎孔20は、予混合室12と燃焼室14とを連通し、予混合室12内に導入された予混合ガスFを、燃焼室14内に流入させる役割を有している。
【0053】
上記消炎孔20は、具体的には、渦中心部の周囲に位置する渦状壁40と、着火手段18との間にある伝熱隔壁16に形成されている。したがって、本2層式燃焼器10では、渦中心部の渦状壁40により取り囲まれた空間が燃焼空間となる。
【0054】
なお、図3では、例えば、40個の消炎孔20が、着火手段18の周囲を取り囲むように千鳥状に配置された場合を例示している。また、この消炎孔20の数は、特に限定されるものではく、使用する燃料の種類などに応じて、種々調節することができる。
【0055】
ここで、本2層式燃焼器10において、消炎孔20とは、消炎直径以下の直径を有する孔を意味する。予混合室12と燃焼室14とを連通する孔の直径が、消炎直径以下であれば、燃焼室14で生じた炎が予混合室12側へ逆火することを防止することができる。
【0056】
なお、具体的な消炎直径については、燃料の種類、予混合ガスの吹き出し速度、想定される予混合ガスの温度などを考慮して決定することができるものである。
【0057】
次に、上記構成を備えた本2層式燃焼器の作用効果について説明する。
【0058】
本2層式燃焼器10では、燃焼室12の中心部において、消炎孔20から吹き出された予混合ガスFが、着火手段18により着火されると、炎が形成されて燃焼が始まる。
【0059】
炎が一旦形成されると、中心部から熱くなり始め、やがて一定温度の定常状態に至る。そして、燃焼室14の天板32からの熱伝導あるいは輻射熱により、被加熱物(図示されない)を加熱することができる。
【0060】
また、燃焼による排気ガスEは、燃焼室14内に形成されている渦巻状流路38に沿って、中心部から外部に向かって流れ、排気ガス排出口36から排出される。
【0061】
一方、予混合室12では、伝熱隔壁16を介して伝わる燃焼室14の熱を回収して、予混合室12内の予混合ガスFが予熱される。ここで、予混合ガス導入口26から導入された予混合ガスFは、渦巻状流路28に沿って外部から中心部に導入される。
【0062】
そのため、予混合ガスFは、燃焼室14からの熱に接する時間が比較的長く、消炎孔20より吹き出される前には十分に予熱される。また、本2層式燃焼器10では、燃焼室14からの熱を受け取るガスが予混合ガスFであるため、熱を受け取るガスが燃料単体である場合に比較して、熱を有効に回収することができる。
【0063】
このように、本2層式燃焼器10は、燃焼室14における天板32が加熱面となっているので、片面加熱に適している。そのため、例えば、コンロなどの片面加熱機器に好適に用いることができる。また、伝熱隔壁16を介して並設された予混合室12では、予混合ガスFが十分に予熱される。そのため、従来に比較して、熱交換効率を向上させることができ、燃焼性の向上による起動時間の短縮も図ることができる。
【0064】
また、着火手段18の周囲に消炎孔20が配置されているので、燃焼室14への予混合ガスFの分散性も向上する。本2層式燃焼器10では、とりわけ、消炎孔20を千鳥状に配置しているので、予混合ガスFを分散させやすく、燃焼性を向上させやすい。
【0065】
また、予混合ガスFが高温に予熱された場合であっても、予混合室12と燃焼室14とは消炎孔20で連通されているので、火炎が予混合室12側に入り込んでしまう逆火現象を防止できる。
【0066】
このように本2層式燃焼器10は、片面加熱に適しており、予混合ガスFを十分に予熱することができる。そのため、これを例えば、コンロなどの片面加熱機器に、必要に応じて1つまたは2つ以上組み込めば、加熱効率などに優れたコンロなどが得られる。
【0067】
以上、実施形態に係る2層式燃焼器について説明したが、上記実施形態は本発明を何ら限定するものではなく、種々の変形・改良などが可能なものである。
【0068】
例えば、上記実施形態では、予混合室12と燃焼室14との間に伝熱隔壁16を介在させる構成とした場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0069】
伝熱隔壁16は、例えば、予混合室12に設けた天板、および/または、燃焼室14に設けた底板などにより代用することも可能である。
【0070】
また、例えば、上記実施形態では、燃焼室14の天板32を本2層式燃焼器10の一部として構成した場合について説明したが、これに限定されるものではない。
【0071】
燃焼室14の天板32は、例えば、燃焼室14内を気密にできれば、被加熱物自体、あるいは、それを入れる容器の一部(なべ底、鉄板など)などにより代用することも可能である。
【0072】
また、例えば、本2層式燃焼器10は、図6、図7に示すように、予混合室12の内壁面のうち、伝熱隔壁16を除いた部分または予混合室12の外壁面(外周壁24と底板22)、あるいは、その両壁面を、セラミックス層44により被覆しても良い。
【0073】
セラミックス層44の材料としては、具体的には、例えば、コージェライト、炭化珪素などを例示することができる。
【0074】
このような構成とした場合には、予混合室12内の断熱性能が向上するので、予混合室12に伝わった熱が外部に放出され難くなる。そのため、より片面加熱に適し、熱交換効率も一層向上させることができる。
【0075】
また、上記実施形態では、金属製の伝熱隔壁16に消炎孔20を形成した場合について例示したが、その他にも、少なくとも着火手段18周囲の伝熱隔壁16にセラミックス体(図示されず)を嵌め込み、このセラミックス体に消炎孔20を形成するようにしても良い。
【0076】
このような構成とした場合には、消炎孔20周辺の耐熱性が向上する。そのため、燃焼室14内の高熱により、比較的小さな消炎孔20が、酸化されたり、変形が生じたりし難くなり、金属製の伝熱隔壁16に消炎孔20が形成されている場合に比較して、耐久性が向上するなどの利点がある。
【0077】
また、例えば、上記2層式燃焼器10では、図8に示すように、燃焼室14側の消炎孔20周縁に筒状体46が立設されていても良い。また、予混合室12側の消炎孔20周縁に筒状体(図示されない)が立設されていても良い。
【0078】
このような構成とした場合には、筒状体46により熱が吸収され、燃焼に必要な熱量を維持し難くなるので、消炎孔20の消炎直径を大きく形成することができる。そのため、予混合ガスFの吹き出し時の圧力損失を低下させることが可能となる。
【0079】
また、上記実施形態では、本発明に係る2層式燃焼器が有する予混合室の流路、燃焼室の流路を、ともに円形状の渦巻状に形成した場合について説明したが、それ以外にも、4角形や6角形などの多角形状の渦巻形状であっても良い。
【0080】
また、上記実施形態では、予混合ガスFの渦巻状流路28と、排気ガスEの渦巻状流路38とは、同じ方向の渦巻状に形成されている場合について例示したが、互いに異なる方向の渦巻状に形成されていても良い。
【0081】
また、上記実施形態では、本発明に係る2層式燃焼器が有する予混合室の流路、燃焼室の流路を渦巻状に形成した場合について例示したが、それ以外にも、これら流路の何れか一方または両方は、放射状などに形成されていても良い。
【0082】
また、上記実施形態では、予混合ガス導入口26から導入された予混合ガスFは、一つの渦巻状流路28を通って、外部から渦中心部まで導かれるが、これ以外にも、予混合ガス導入口から導入された予混合ガスは、複数列の流路を通って、外部から中心部まで導かれるようにしても良い。
【0083】
同様に、上記実施形態では、排気ガス排出口36から排出される排出ガスEは、一つの渦巻状流路28を通って、渦中心部から外部まで導かれるが、これ以外にも、排気ガス排出口36から排出される排出ガスは、複数列の流路を通って、中心部から外部まで導かれるようにしても良い。
【実施例】
【0084】
以下、本発明に係る2層式燃焼器を実施例を用いて説明する。
【0085】
先ず、ステンレス鋼(SUS430)を用いて、図1〜図5に示す形状の2層式燃焼器を作製した。この際、2層式燃焼器の直径は約120mm、両渦状壁の厚みは2mm、両流路幅は4mm、渦中心部の渦状壁により取り囲まれる燃焼空間の直径は約23mm、消炎孔の直径は0.8mmとした。また、点火手段には、イグナイタを用い、燃料ガスには13Aを用いた。
【0086】
次に、作製した2層式燃焼器の燃焼試験装置の概略について説明する。すなわち、図9に示すように、作製した2層式燃焼器10をセラミックファイバー製断熱材50により覆い、予混合ガス導入口26に予混合ガス導入配管52(ポリテトラフルオロエチレン製)を接続するとともに、排気ガス排出口36に排気ガス排出配管54(ポリテトラフルオロエチレン製)を接続した。
【0087】
本実施例では、燃料源56、空気源58から供給される燃料(最大20L/min)、空気(最大200L/min)が各流量計60、62にて調節され、所定の空気比を有する予混合ガスFとされる。また、予混合ガスFは、圧力計64にて調圧され、所定のインプット量にて予混合ガス導入口26に供給される。
【0088】
次いで、燃焼状態を確認するため、図10に示すように、2層式燃焼器10の天板32に、中心部とその両側を挟んで計5つのK型熱電対66(熱電対間隔25mm)を取り付け、測定位置1〜5における表面温度の測定を可能にした。
【0089】
次に、以下の手順により燃焼試験を行った。すなわち、先ず、燃料および空気の流量を各流量計にて設定する。次いで、2層式燃焼器のイグナイタの放電を開始し、その直後に、ガスと空気の流量計のバルブを開く。これにより、所定インプット量にて所定空気比の予混合ガスが、2層式燃焼器に供給される。そして燃焼室内で着火、燃焼が始まると、天板の表面温度が上昇する。
【0090】
上記燃焼試験により、作製した2層式燃焼器の着火開始から約5分後の表面温度特性、着火開始から約5分間の昇温特性を求めた。また、排気ガスの温度も測定した。なお、予混合ガスのインプット量は、2Kw、3Kw、4Kw、5Kwとした。また、各インプット量において、空気比を約1〜1.3の間で変化させた。
【0091】
図11〜図14に、各インプット量における各測定位置と表面温度との関係を示す。また、図15に、インプット量3Kw、空気比1.21のときの着火開始からの経過時間と各測定位置における表面温度との関係(昇温特性)を示す。
【0092】
図11〜図14によれば、何れのインプット量においても、表面温度曲線は、上に凸の曲線になっている。そして、測定位置3、すなわち、概ね中心部近傍の表面温度が高く、中心部から離れるにつれて表面温度が低くなっていることが分かる。また、中心部の温度は、実用的な空気比約1.1の条件で500℃以上(燃焼開始から約5分)となっていることが分かる。
【0093】
また、図15によれば、経過時間0秒付近で着火、燃焼が生じており、従来よりも起動時間が短くなっていることが分かる。これは、本2層式燃焼器は、予混合ガスを十分に予熱することができるので、燃焼性が向上したためであると思われる。
【0094】
以上の結果から、本発明によれば、片面加熱に適しており、予混合ガスを十分に予熱することができる予混合燃焼方式の2層式燃焼器が得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0095】
【図1】本実施形態に係る2層式燃焼器の外観を模式的に示した斜視図である。
【図2】本実施形態に係る2層式燃焼器の正面図である。
【図3】図1におけるA−A断面図である。
【図4】図2におけるB−B断面図である。
【図5】図2におけるC−C断面図である。
【図6】予混合室の内壁面にセラミックス層を設けた状態の一例を模式的に示した断面図である。
【図7】予混合室の外壁面にセラミックス層を設けた状態の一例を模式的に示した断面図である。
【図8】燃焼室側の消炎孔周縁に筒状体を立設した状態の一例を模式的に示した断面図である。
【図9】2層式燃焼器の燃焼試験装置の概略を模式的に示した図である。
【図10】表面温度の測定位置を模式的に示した図である。
【図11】インプット量2Kwにおける各測定位置と表面温度との関係を示した図である。
【図12】インプット量3Kwにおける各測定位置と表面温度との関係を示した図である。
【図13】インプット量4Kwにおける各測定位置と表面温度との関係を示した図である。
【図14】インプット量5Kwにおける各測定位置と表面温度との関係を示した図である。
【図15】インプット量3Kw、空気比1.21における、着火開始からの経過時間と各測定位置の表面温度との関係(昇温特性)を示した図である。
【符号の説明】
【0096】
10 2層式燃焼器
12 予混合室
14 燃焼室
16 伝熱隔壁
18 着火手段
20 消炎孔
22 底板
24 外周壁(予混合室側)
26 予混合ガス導入口
28 渦巻状流路(予混合室側)
30 渦状壁(予混合室側)
32 天板
34 外周壁(燃焼室側)
36 排気ガス排出口
38 渦巻状流路(燃焼室側)
40 渦状壁(燃焼室側)
42 着火点
44 セラミックス層
46 筒状体
F 予混合ガス
E 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から中心部に予混合ガスを導入する流路を備えた予混合室と、
中心部から外部に排気ガスを排出する流路を備えた燃焼室と、
前記予混合室と前記燃焼室との間を区画する伝熱隔壁と、
ほぼ中心部に設けられ、前記燃焼室側で着火を行う着火手段と、
前記着火手段の周囲に配置され、前記予混合室と前記燃焼室とを連通する消炎孔とを有することを特徴とする2層式燃焼器。
【請求項2】
前記予混合室の流路および/または前記燃焼室の流路は、渦巻状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の2層式燃焼器。
【請求項3】
前記予混合室の内壁面のうち、前記伝熱隔壁を除いた部分、および/または、前記予混合室の外壁面は、セラミックス層により被覆されていることを特徴とする請求項1または2に記載の2層式燃焼器。
【請求項4】
前記着火手段周囲の伝熱隔壁にセラミックス体が嵌め込まれ、このセラミックス体に前記消炎孔が形成されていることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の2層式燃焼器。
【請求項5】
前記燃焼室側および/または前記予混合室側の消炎孔周縁には、筒状体が立設されていることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の2層式燃焼器。
【請求項6】
請求項1から5の何れかに記載の2層式燃焼器が組み込まれていることを特徴とするコンロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2007−155216(P2007−155216A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351386(P2005−351386)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000221834)東邦瓦斯株式会社 (440)
【出願人】(000102348)エイケン工業株式会社 (14)
【出願人】(000115854)リンナイ株式会社 (1,534)
【Fターム(参考)】